特許第6016196号(P6016196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016196廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016196
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/24 20060101AFI20161013BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20161013BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   F23G5/24 BZAB
   F23G5/50 F
   F23G5/50 J
   F23G5/44 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-65823(P2013-65823)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190599(P2014-190599A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀内 聡
(72)【発明者】
【氏名】奥山 契一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 肇
(72)【発明者】
【氏名】脇元 一政
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−090923(JP,A)
【文献】 特開昭57−019308(JP,A)
【文献】 特開2002−130632(JP,A)
【文献】 特開昭60−023714(JP,A)
【文献】 特開2008−241181(JP,A)
【文献】 特開2004−293993(JP,A)
【文献】 特開2002−147749(JP,A)
【文献】 特公昭53−025127(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 1/00 − 7/14
F23N 1/02 − 1/06
F23N 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉のコークス床へ、酸素富化空気と燃料ガスとを、上記廃棄物ガス化溶融炉の炉体に設けられた羽口から吹き込むこととする廃棄物ガス化溶融装置において、
上記羽口は炉体の周方向で複数位置に設けられ、酸素富化空気を羽口へ吹込み供給するように各羽口に対して設けられた酸素富化空気供給装置と、燃料ガスを上記複数の羽口へ供給するように各羽口に対して設けられた燃料ガス供給装置と、それぞれの燃料ガス供給装置を独立して制御する制御装置とを有し、各羽口における酸素富化空気供給装置は、該各羽口への酸素富化空気の送風量を計測する流量計を有し、制御装置は、各羽口での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比を所定範囲内とするように、各羽口における酸素富化空気供給装置の流量計による酸素富化空気の送風量の計測値に応じて対応羽口における燃料ガス供給装置からの燃料ガス供給量を制御し、
燃料ガス供給量を変化させつつコークス床の温度を計測して、コークス床にて熱分解残渣を十分に溶融し溶融スラグとし炉から溶融スラグを円滑に排出できる適正な温度範囲にコークス床の温度を維持することができる燃料ガス供給量を求めることにより、酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比の所定範囲が酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比の適正な範囲として設定されて制御装置に予め記憶されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項2】
コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉のコークス床へ、酸素富化空気と燃料ガスとを、上記廃棄物ガス化溶融炉の炉体に設けられた羽口から吹き込むこととする廃棄物ガス化溶融方法において、
炉体の周方向複数位置で炉体に設けられた羽口のそれぞれで互いに独立して、酸素富化空気そして燃料ガスを各羽口に供給し、各羽口への酸素富化空気の送風量を計測し、各羽口での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比を所定範囲内とするように制御装置により上記酸素富化空気の送風量の計測値に応じて該羽口への燃料ガス供給量を制御し、
燃料ガス供給量を変化させつつコークス床の温度を計測して、コークス床にて熱分解残渣を十分に溶融し溶融スラグとし炉から溶融スラグを円滑に排出できる適正な温度範囲にコークス床の温度を維持することができる燃料ガス供給量を求めることにより、酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比の所定範囲を酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比の適正な範囲として設定して制御装置に予め記憶していることを特徴とする廃棄物ガス化溶融方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉のコークス床へ、酸素富化空気と燃料ガスとを、上記廃棄物ガス化溶融炉の炉体に設けられた羽口から吹き込むこととする廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、燃焼して、熱分解残渣を溶融しスラグにして排出する廃棄物溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、熱分解残渣を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような溶融処理方法には幾つかの方式があるが、その一つとして、竪型をなすシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉による方法がある。
【0004】
このシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉下部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス上へ廃棄物を投入して、熱分解及び部分酸化させてガス化するとともに残渣を溶融してスラグにする処理を行なう炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の機能が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉下部にコークスを堆積させたコークス床を有する高温燃焼帯が形成され、この高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、炉体の上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部をなしている。
【0006】
かかるガス化溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれでは酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。炉下部における高温燃焼帯には主羽口が設けられていて、投入されて堆積されたコークス床のコークスを燃焼させて、廃棄物の熱分解残渣を溶融する溶融熱源を得るために酸素富化空気が吹き込まれる。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させると共に、廃棄物を熱分解及び部分酸化させるために空気が吹き込まれる。また、フリーボード部には三段目羽口が設けられ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持するために空気が吹き込まれる。
【0007】
このようにシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解され、ガスと残渣が生成される。主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス床のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の熱分解残渣が溶融されスラグとメタルとして排出される。コークス床はコークス同士間に生ずる空隙で、主羽口からの酸素富化空気やコークス燃焼により発生した高温ガスを通ガスさせるとともに、溶融したスラグとメタルを通液させる高温火格子としても機能している。高温燃焼帯のコークス燃焼により発生した高温ガスが高温燃焼帯の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出煙道より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出されたガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【0008】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部にコークスを堆積させたコークス床が形成され、コークスが燃焼して熱分解残渣の溶融熱源となっているが、近年、化石燃料に由来するコークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することが要望されている。
【0009】
そこで、コークスの一部の代替としてLNG、LPG、廃棄物ガス化溶融炉にて熱分解により発生する可燃ガス等の燃料ガスを利用することが検討され、例えば、特許文献2では、主羽口(送風羽口)から酸素富化空気とともに燃料ガスを吹き込むことが提案されている。
【0010】
特許文献2では、酸素富化空気を炉内へ送入する主羽口(送風羽口)の先端(開口)が炉内に進入してコークス床内にまで突入して位置するようにして該主羽口が設けられている。燃料ガスはこの羽口の先端位置で主羽口内へ供給されて、主羽口先端から酸素富化空気とともにコークス床に吹き出され燃焼され、燃料ガスの燃焼熱がコークス床での溶融熱源の一部として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−060830
【特許文献2】特開2001−090923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
二酸化炭素排出量を削減するため、廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減するべく、特許文献2のようにコークスの一部の代替として燃料ガスを吹き込むとしても、次のような問題がある。すなわち、特許文献2では、燃料ガスと酸素富化空気が吹き出される主羽口の先端はコークス床内に位置していてコークス堆積層に直面しているのでコークス粒による通気抵抗が大きい。したがって、主羽口から吹き込まれる酸素富化空気の送風流量が低下してしまうので、燃料ガスの燃焼に必要な酸素量が不足し、その結果、燃料ガスの燃焼率が低下するという問題が生じる。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、コークス床に吹き込まれる酸素富化空気量の送風流量が低下しても、燃料ガスの燃焼率の低下を防止できる廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題は、本発明によると、廃棄物ガス化溶融装置及び廃棄物ガス化溶融方法に関し次のように構成することで解決される。
【0015】
<廃棄物ガス化溶融装置>
本発明に係る廃棄物ガス化溶融装置は、コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉のコークス床へ、酸素富化空気と燃料ガスとを、上記廃棄物ガス化溶融炉の炉体に設けられた羽口から吹き込むこととする。
【0016】
かかる廃棄物ガス化溶融装置において、本発明では、上記羽口は炉体の周方向で複数位置に設けられ、酸素富化空気を羽口へ吹込み供給するように各羽口に対して設けられた酸素富化空気供給装置と、燃料ガスを上記複数の羽口へ供給するように各羽口に対して設けられた燃料ガス供給装置と、それぞれの燃料ガス供給装置を独立して制御する制御装置とを有し、各羽口における酸素富化空気供給装置は、該各羽口への酸素富化空気の送風量を計測する流量計を有し、制御装置は、各羽口での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比を所定範囲内とするように、各羽口における酸素富化空気供給装置の流量計での計測値に応じて対応羽口における燃料ガス供給装置からの燃料ガス供給量を制御することを特徴としている。
【0017】
本発明では、制御装置が、各羽口における酸素富化空気供給装置の流量計での計測値に応じて対応羽口における燃料ガス供給装置からの燃料ガス供給量を制御することにより、各羽口での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比が所定範囲内に収められる。したがって、燃料ガスの十分な燃焼率を確保できるように上記所定範囲を設定しておくことにより、仮に、各羽口から吹き込まれる酸素富化空気の送風流量が低下しても、燃料ガスの燃焼率の低下を確実に防止できる。また、上記制御装置は、炉体の周方向の複数位置に設けられた各羽口にそれぞれ対応する燃料ガス供給装置を独立して制御しているので、酸素富化空気の送風流量低下の程度が各羽口によって異なっていても、それぞれの各羽口において、燃料ガスの十分な燃焼率を確実に確保できる。
【0018】
<廃棄物ガス化溶融方法>
本発明に係る廃棄物ガス化溶融方法は、コークス床を有する炉体内で廃棄物を熱分解し残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉のコークス床へ、酸素富化空気と燃料ガスとを、上記廃棄物ガス化溶融炉の炉体に設けられた羽口から吹き込むこととする。
【0019】
かかる廃棄物ガス化溶融方法において、本発明では、炉体の周方向複数位置で炉体に設けられた羽口のそれぞれで互いに独立して、酸素富化空気そして燃料ガスを供給し、各羽口への酸素富化空気の送風量を計測し、各羽口での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比を所定範囲内とするように上記送風量の計測値に応じて該羽口への燃料ガス供給量を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のように、制御装置が、各羽口での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比が所定範囲内となるように、各羽口における酸素富化空気供給装置の流量計での計測値に応じて対応羽口における燃料ガス供給装置からの燃料ガス供給量を制御するので、各羽口から吹き込まれる酸素富化空気の送風流量が低下しても、燃料ガスの燃焼率の低下を確実に防止できる。また、上記制御装置による燃料ガス供給量の制御は、炉体の周方向の複数位置に設けられた各羽口にそれぞれ対応する燃料ガス供給装置に対して独立して行われるので、酸素富化空気量の送風流量低下の程度が各羽口によって異なっていても、それぞれの羽口において、燃料ガスの十分な燃焼率を確実に確保できる。また、燃料ガスをコークスの一部の代替として用い、燃焼熱を溶融熱源として用いることが効率よくできるため、コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としての廃棄物ガス化溶融装置の概要構成を示す図である。
図2図1の廃棄物ガス化溶融装置について、各羽口における燃料ガスの供給量を制御する形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉のコークス床へ酸素含有ガスとしての酸素富化空気と燃料ガスとを混合した混合気体を吹き込む際に、酸素富化空気の送風量に応じて燃料ガス供給量を制御することを特徴としているが、これらの特徴についての説明に先立ち、図1にもとづき、このシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉の概要構成を説明する。
【0023】
図1に示される本発明の一実施形態で採用されているシャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉には、ガス化溶融炉1の炉上部に、処理対象物としての廃棄物、燃料としてのコークス、スラグの成分調整材としての石灰石を炉内へ投入するための投入口2が設けられ、また、上部側方には炉内のガスを炉外へ排出するためのガス排出口3が設けられている。また、ガス化溶融炉1の炉底部には溶融スラグと溶融金属を排出するための出滓口4が設けられている。
【0024】
シャフト炉式廃棄物ガス化溶融炉は、そのガス化溶融炉1の内部空間が縦方向で3つの領域に大別されていて、下方から、炉下部に形成された下部シャフト部I、その上に位置する中部シャフト部II、上部に形成されたフリーボード部IIIを有する領域となっている。これらの各部I,II,IIIは、それぞれ次のような機能を有する領域となっている。す
なわち、下部シャフト部Iは、堆積されたコークスでコークス床を形成し、コークスを燃焼させて高温燃焼帯を形成する領域、中部シャフト部IIは、この高温燃焼帯上に投入された廃棄物の堆積により形成された廃棄物層の廃棄物を熱分解させる領域、フリーボード部IIIは、生成した可燃性ガスを部分燃焼させる領域である。
【0025】
廃棄物ガス化溶融炉1の上方には、都市ごみ等の廃棄物、コークス、生成するスラグの成分調整材として使用する石灰石をそれぞれ供給する供給装置(図示せず)が配設されており、この供給装置から供給された廃棄物、コークス、石灰石は搬送コンベア(図示せず)により搬送され炉上部の上記投入口2から炉内に投入される。
【0026】
廃棄物ガス化溶融炉1に形成された上記下部シャフト部I、中部シャフト部II、フリーボード部IIIの各部に対して、それぞれ酸素含有ガスを吹き込む羽口が炉壁に設けられている。すなわち、下部シャフト部Iには、堆積されたコークスを燃焼させて高温燃焼帯を形成し、熱分解残渣を溶融するための混合気体を吹き込む主羽口5が設けられ、中部シャフト部IIには、投入されて堆積された廃棄物を部分燃焼させると共に廃棄物を緩やかに流動させながら熱分解、燃焼させるための空気を吹き込む副羽口6が設けられ、フリーボード部IIIには、廃棄物が熱分解して生成した可燃性ガスを部分燃焼させて炉内部を所定温度に維持するための空気を吹き込む三段羽口7が設けられている。主羽口5、副羽口6および三段羽口7はそれぞれ炉体の周方向で複数位置に設けられている(主羽口5については図2参照)。
【0027】
複数の主羽口5のそれぞれには、各主羽口5に対応して、混合気体を炉内へ吹き込むための送気管(図示せず)が接続されており、該送気管には酸素富化空気供給装置14および燃料ガス供給装置15が接続されている。酸素富化空気供給装置14は、空気に酸素を混入して得られた酸素含有ガスとしての酸素富化空気を上記送気管に供給し、燃料ガス供給装置15は、燃料ガスを上記送気管に供給するようになっている。上記送気管内では、酸素富化空気と燃料ガスとが混合されて混合気体が形成される。該送気管は、酸素富化空気と燃料ガスとを管内で混合できる構成を有していればよく、例えば、単管、二重管、三重管等を用いることができる。
【0028】
また、本実施形態の廃棄物ガス化溶融装置には制御装置16を有しており、該制御装置16は、後述するように、燃料ガス供給装置15からの主羽口5への燃料ガス供給量を、酸素富化空気供給装置14から主羽口5への酸素富化空気の送風量に応じて制御するようになっている。この燃料ガス供給量の制御は、各主羽口5に対して設けられた燃料ガス供給装置15について独立して行われる。
【0029】
図2は、図1の廃棄物ガス化溶融装置について、各主羽口5における燃料ガスの供給量を制御する形態を示す概略図である。図2では、後述の送風流量計17から制御装置16への信号の流れが細い破線の矢印で、制御装置16から後述の燃料ガス供給量調整装置18への信号の流れが太い破線の矢印で示されている。また、制御装置16は、複数の主羽口5(図2の例では四つ)のそれぞれと対応しており、図2では、制御装置16と各主羽口5との対応関係が、同一のアルファベット(A〜D)を付すことにより示されている。
【0030】
各主羽口5に対応して設けられた酸素富化空気供給装置14(図1参照)は、対応する主羽口5への酸素富化空気の送風量を計測する送風流量計17を有している。また、各主羽口5に対応して設けられた燃料ガス供給装置15(図1参照)は、対応する主羽口5への燃料ガス供給量を調整するための燃料ガス供給量調整装置18を有している。該燃料ガス供給量調整装置18は、主羽口5への燃料ガスの流量を調整するための流量調整バルブ又はダンパ(図示せず)を有している。制御装置16は、各主羽口5における酸素富化空気供給装置14の送風流量計17での計測値に応じて、対応羽口における燃料ガス供給装置15の流量調整バルブ又はダンパの開度を調整することにより、燃料ガス供給量を制御するようになっている。制御の詳細については後述する。
【0031】
図1に見られるように、ガス排出口3に二次燃焼室10が接続して設けられており、廃棄物を熱分解して生成した可燃性ガスを燃焼する。二次燃焼のための空気を吹き込む空気送風口11が設けられている。また、この二次燃焼室10には、該二次燃焼室10で可燃性ガスを燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12が隣接して設けられている。
【0032】
また、ボイラ12からの排気は、排気管13で排出され、後流側に設けられた減温装置や集塵機、さらには排ガス処理装置(いずれも図示せず)を経て無害化された後に大気に放出されるようになっている。
【0033】
次に、制御装置16による燃料ガス供給量の制御について説明する。本実施形態では、主羽口5での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量との比について、燃焼ガスの十分な燃焼率を確保するために許容可能な所定の範囲が設定されており、この所定範囲についてのデータが制御装置16に予め記憶されている。本実施形態では、上記「所定範囲」は、コークス床にて熱分解残渣を十分に溶融し、炉から溶融スラグを円滑に排出できる程度に、燃料ガスの十分な燃焼率を確保できる範囲として設定されている。また、この「所定範囲」は、例えば、燃料ガス供給量を変化させつつコークス床の温度を計測して、コークス床の温度が適正な範囲に維持するために必要な酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比を算出することにより得られる。
【0034】
酸素富化空気供給装置14は、送風流量計17での計測値、すなわち主羽口5への酸素富化空気の送風量のデータを連続的にあるいは定期的に制御装置16へ送る。制御装置16は、上記所定範囲についてのデータを参照して、酸素富化空気供給装置14から得られた送風量との比が上記所定範囲内にとなるような燃料ガス供給量を算出する。そして、該制御装置16は、その算出した燃料ガス供給量にもとづいて、燃料ガス供給装置15の燃料ガス供給量調整装置18を制御する。
【0035】
このように、本実施形態では、制御装置16が、各主羽口5での酸素富化空気の送風量と燃料ガス供給量の比が所定範囲内となるように、各羽口における酸素富化空気供給装置14の送風流量計17での計測値に応じて対応主羽口5における燃料ガス供給装置15からの燃料ガス供給量を制御するので、コークス床における通気抵抗が増加し各主羽口5から吹き込まれる酸素富化空気の送風流量が低下しても、燃料ガスの燃焼率の低下を確実に防止できる。また、上記制御装置16による燃料ガス供給量の制御は、炉体の周方向の複数位置に設けられた各主羽口5にそれぞれ対応する燃料ガス供給装置15の燃料ガス供給量調整装置18に対して独立して行われるので、酸素富化空気量の送風流量低下の程度が各主羽口5によって異なっていても、それぞれの主羽口5において、燃料ガスの十分な燃焼率を確実に確保できる。また、燃料ガスをコークスの一部の代替として用い、燃焼熱を溶融熱源として用いることが効率よくできるため、コークスの使用量を低減して二酸化炭素排出量を削減することができる。
【0036】
このように構成される本実施形態装置では、廃棄物のガス化溶融処理は次の要領で行われる。
【0037】
供給装置からの廃棄物、コークス、石灰石がガス化溶融炉1の上部に設けられた投入口2を経て、それぞれ所定量ずつ炉内へ投入され、主羽口5、副羽口6、及び三段羽口7から、それぞれ混合気体又は空気が炉内へ吹き込まれる。特に、主羽口5からは、酸素富化空気供給装置14から供給される酸素富化空気と燃料ガス供給装置15から供給される燃料ガスとの混合により得られた混合気体が炉内へ吹き込まれる。ここで、燃料ガス供給装置15から供給される燃料ガス供給量は、既述したように酸素富化空気の送風量の計測値に応じて調整される。上記投入口2から投入された廃棄物は、炉内で中部シャフト部IIに堆積して廃棄物層を形成し、下部シャフト部Iの高温燃焼帯から上昇してくる高温ガス及び副羽口から吹き込まれる空気によって乾燥され、次いで部分燃焼および熱分解される。熱分解により生成した可燃性ガスは、フリーボード部IIIにて、三段羽口7から吹き込まれる空気により一部が燃焼され、フリーボード部IIIが850℃以上の高温の還元雰囲気に保たれ、有害ガスとタール分を分解させる処理が施され、可燃性ガスを含むガスは炉外に設けられた二次燃焼室10へ送られ二次燃焼され、ボイラ12でその燃焼ガスから熱回収される。
【0038】
コークスは下部シャフト部Iに下降して高温燃焼帯(コークス床)を形成する。廃棄物層で廃棄物が熱分解した残渣は下降し、下部シャフト部Iのコークス床に達する。熱分解残渣(灰分、不燃物)は、コークス床でコークスと燃料ガスの燃焼により加熱され、溶融し溶融スラグと溶融金属になる。溶融スラグと溶融金属は出滓口4から排出され、炉外に設けられた水砕装置に供給され冷却固化され、冷却固化された水砕スラグと水砕金属が回収される。
【0039】
本実施形態では、主羽口5から混合気体のみを吹き込むこととしたが、これに代えて、二次燃焼室10やボイラ12から回収したダストを混合気体とともに吹き込むこととしてもよい。このように混合気体とともにダストをも吹き込んだ場合、該混合気体中のダストは主羽口5から高温燃焼帯へ達すると、溶融して熱分解残渣の溶融物とともに炉底部の出滓口4から抜き出される。このように、ダストを溶融処理することにより減容化して、埋立処分量を大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 廃棄物ガス化溶融炉
5 (主)羽口
14 酸素富化空気供給装置
15 燃料ガス供給装置
16 制御装置
17 (送風)流量計
図1
図2