特許第6016209号(P6016209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016209
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】燃料集合体
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/328 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   G21C3/30 TGDB
   G21C3/30 X
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-86978(P2012-86978)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-217715(P2013-217715A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229461
【氏名又は名称】株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100122921
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 博
(72)【発明者】
【氏名】本間 雄滋
(72)【発明者】
【氏名】永野 護
(72)【発明者】
【氏名】笹川 勝
(72)【発明者】
【氏名】山中 章広
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−246488(JP,A)
【文献】 特開平10−221474(JP,A)
【文献】 特開平07−333374(JP,A)
【文献】 特開2005−098924(JP,A)
【文献】 特開平10−206582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/328
G21C 3/30
G21C 3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルトニウム酸化物及びウラン酸化物を混合した複数のMOX燃料棒と複数のウラン酸化物燃料棒からなる燃料集合体において、
前記複数のMOX燃料棒は所定のプルトニウム富化度と異なるウラン濃縮度を有する複数種類のMOX燃料棒からなり、ウラン濃縮度が最も高いMOX燃料棒を燃料集合体の内部に配置し、前記ウラン濃縮度が最も高いMOX燃料棒よりもウラン濃縮度の低い複数種類のMOX燃料棒を燃料集合体の外周に配置したことを特徴とする燃料集合体。
【請求項2】
前記プルトニウム富化度はMOX燃料棒で許容される富化度の上限値であることを特徴とする請求項1記載の燃料集合体。
【請求項3】
前記異なるウラン濃縮度を有する複数種類のMOX燃料棒のうち、最も高いウラン濃縮度を有するMOX燃料棒のウラン濃縮度は天然ウランと同等か又は天然ウランよりも高いことを特徴とする請求項1又は2記載の燃料集合体。
【請求項4】
燃料集合体の外周に配置したMOX燃料棒のうち、燃料集合体の角部に位置するMOX燃料棒のウラン濃縮度が最も低いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料集合体。
【請求項5】
プルトニウム酸化物及びウラン酸化物を混合した複数のMOX燃料棒と複数のウラン酸化物燃料棒からなる燃料集合体において、
前記複数のMOX燃料棒はプルトニウム富化度が異なる複数種類のMOX燃料棒からなり、前記プルトニウム富化度が最も高いMOX燃料棒のウラン濃縮度は他のMOX燃料棒のウラン濃縮度よりも高いことを特徴とする燃料集合体。
【請求項6】
前記プルトニウム富化度が最も高いMOX燃料棒のプルトニウム富化度は、MOX燃料棒で許容される富化度の上限値であることを特徴とする請求項5記載の燃料集合体。
【請求項7】
前記プルトニウム富化度が最も高いMOX燃料棒を燃料集合体の内部に配置し、当該MOX燃料棒以外のMOX燃料棒を前記燃料集合体の外周に配置したことを特徴とする請求項5又は6記載の燃料集合体。
【請求項8】
記燃料集合体の外周に配置したMOX燃料棒のウラン酸化物として劣化ウラン又は再処理後の回収ウランを用いることを特徴とする請求項7記載の燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料集合体に関し、特にMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)を用いた沸騰水型軽水炉((BWR)の燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の原子力発電プラントにおいては、運転経済性を向上させるために燃料の高燃焼度化が図られている。MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)についても、原子力発電プラントの運転経済性を向上させるために、将来的にウラン燃料と同程度の取出平均燃焼度になるように燃焼度を増大させることが考えられている。
【0003】
従来の沸騰水型原子炉(BWR)に装荷される燃料集合体を図16(a)、(b)により説明する。燃料集合体1は、被覆管9内に多数の燃料ペレットを充填した複数の燃料棒2から構成される。
【0004】
ウラン酸化物燃料の高燃焼度化を図る手法としては、燃料ペレット中のウラン235の濃縮度を高めるか、又は機械的設計の変更によりウラン積載重量を増加する方法が一般的である。これらの方法の目的は燃料集合体あたりの核分裂性物質の積載重量を増加させることにある。
【0005】
また、MOX燃料の場合、母材となるウランは劣化ウラン又は燃料再処理工程において回収された回収ウランが用いられ、母材ウランの濃縮度は燃料集合体中のすべての燃料棒で同等とするのが一般的である。また、MOX燃料の平均核分裂性物質濃度はプルトニウム富化度の調整によって行われる。
【0006】
このようなMOX燃料においても、燃料体あたりの核分裂性物質の積載重量を増加させることが高燃焼度化に有効な手法であることはウラン燃料と同様である。したがって、MOX燃料において機械的設計を変更することなく高燃焼度化を進めるには、当該燃料ペレットのプルトニウム富化度を高め、主たる核分裂性物質であるプルトニウム239の含有率を増加させることが必要となる。
【0007】
また、MOX燃料においては、余剰プルトニウムを持たないようにプルトニウム消費を促進するという観点、並びにMOX燃料特有の成型加工の困難性及び輸送コストの低減化の観点から、できる限り燃料集合体一体あたりに積載するプルトニウムの量を多くしたいというニーズもある。
【0008】
一方、従来より沸騰水型原子炉では、ウラン燃料及びMOX燃料の両方において、燃料集合体を構成する燃料棒を核分裂性濃度が異なる複数の種類の燃料棒から構成し、燃料集合体内で分布をつけて配置するのが一般的である。
【0009】
その理由は、軽水型原子炉の場合、核分裂で発生した高速中性子は水によって熱中性子に減速された後に核分裂性物質に吸収され、次々と核分裂連鎖反応を繰り返している。沸騰水型原子炉の例では、燃料集合体を覆うチャンネンルボックスの外側に非沸騰領域が存在するため、燃料集合体の外周や、特にコーナー部においては中性子の減速効率が高く、当該箇所に配置される燃料棒はその他の燃料棒に比べて出力が高くなりやすい。このため、燃料集合体を核分裂性物質濃度の異なる複数種類の燃料棒から構成し、出力が高くなりやすい位置に配置される燃料棒の核分裂性物質濃度を低めに設定することで、燃料棒の出力ピーキングが過大にならないようにしている。
【0010】
MOX燃料においては、熱的余裕を改善しようとする観点から、例えば、MOX燃料棒の出力ピークが生じ易い燃料集合体外周の燃料棒のプルトニウム富化度を他の領域の燃料棒より低くし、出力分担の平坦化を図る手段や(特許文献1)、MOX燃料の出力のピークが生じ易い周辺部のMOX燃料棒の母材ウランの濃縮度を他の領域の燃料棒よりも低くし、出力分布の平坦化を図る手段が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭60−147685号公報
【特許文献2】特開平7−33374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、MOX燃料は、半減期の短いα崩壊核種を多く含んでいるため、ウラン燃料よりも発熱量が多くなる傾向があるという特徴や、プルトニウムの自発核分裂や(α,n)反応による中性子やアメリシウム241等からのガンマ線の放出により、ウラン燃料より放射線強度が高くなるという特徴を有する。
【0013】
このようなMOX燃料の高燃焼度を図るためには、上述したように燃料ペレットのプルトニウム富化度を高めることが有効であるが、プルトニウム富化度に係る制約として、MOX燃料の臨界性の制約、及び上述した発熱、放射能特性等の観点によるMOX燃料取扱い設備上の制約が存在する。
【0014】
このため、プルトニウム富化度を高めることによる高燃焼度化には限界がある。すなわち、燃料集合体を構成する複数のMOX燃料棒のプルトニウム富化度を漸次高めていくと、最終的に全てのMOX燃料棒においてプルトニウム富化度が上限値に達してしまうためこれが限界となる。
【0015】
さらに前述のように、出力が大きくなりやすい領域に配置される燃料棒の核分裂性物質濃度は低くしておく必要があるため、実際には全てのMOX燃料棒においてプルトニウム富化度が上限に達する前に、プルトニウム富化度を高めることによる高燃焼度化は事実上の限界を迎えてしまうことになる。
【0016】
すなわち、プルトニウム富化度の分布が熱的余裕の観点から適切に設定されており、かつプルトニウム富化度の分布のピークがプルトニウム富化度の上限値に達している状態が、現実的なプルトニウム富化度を高める限界であると言える。
【0017】
例えば、図14(a)は熱的余裕の観点からプルトニウム富化度分布を適切に設定した8行8列の燃料集合体の例であり、このようなプルトニウム富化度分布を有する燃料集合体を、プルトニウム含有量を増やすために許容される上限値のプルトニウム富化度まで高めていくことは、図14(b)に示すように、制御棒の近傍の出力が高くなりやすい位置のMOX燃料棒のプルトニウム富化度を高めることに他ならない。これにより燃焼初期局所出力ピーキングは図15(a)から図15(b)のように変化し、外周部の燃料棒の出力ピーキングが過大になり燃料の熱的余裕の悪化を招く結果となる。
【0018】
さらに、燃料集合体の核分裂性物質の積載重量を増加して高燃焼度化を図ることと、燃料の熱的余裕を改善することを両立させるという観点においては、上述の特許文献1や特許文献2に示される従来技術は、核分裂性物質の積載重量を少なくするものであるため好ましくない。
【0019】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、従来のMOX燃料を用いた燃料集合体に比較して熱的余裕を悪化させずにMOX燃料の高燃焼度化を図るとともに、核分裂性プルトニウムの積載量及び消費量の増加を図ることができる燃料集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明に係る燃料集合体は、プルトニウム酸化物及びウラン酸化物を混合した複数のMOX燃料棒と複数のウラン酸化物燃料棒からなる燃料集合体において、前記複数のMOX燃料棒は所定のプルトニウム富化度と異なるウラン濃縮度を有する複数種類のMOX燃料棒からなり、ウラン濃縮度が最も高いMOX燃料棒を燃料集合体の内部に配置し、前記ウラン濃縮度が最も高いMOX燃料棒よりもウラン濃縮度の低い複数種類のMOX燃料棒を燃料集合体の外周に配置したことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る燃料集合体は、プルトニウム酸化物及びウラン酸化物を混合した複数のMOX燃料棒と複数のウラン酸化物燃料棒からなる燃料集合体において、前記複数のMOX燃料棒はプルトニウム富化度が異なる複数種類のMOX燃料棒からなり、前記プルトニウム富化度が最も高いMOX燃料棒のウラン濃縮度は他のMOX燃料棒のウラン濃縮度よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来のMOX燃料を用いた燃料集合体に比較して熱的余裕を悪化させずにMOX燃料の高燃焼度化を図るとともに、核分裂性プルトニウムの消費量の増加を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係る8行8列の燃料集合体の横断面図。
図2】第1の実施形態に係る9行9列の燃料集合体の横断面図。
図3】第1の実施形態に係る10行10列の燃料集合体の横断面図。
図4】第1の実施形態に係る水ロッド形状が異なる9行9列の燃料集合体の横断面図。
図5】第1の実施形態に係る水ロッド形状が異なる10行10列の燃料集合体の横断面図。
図6】第1の実施形態に係る水ロッド形状が異なる10行10列の燃料集合体の横断面図。
図7】第2の実施形態に係る8行8列の燃料集合体の横断面図。
図8】第2の実施形態に係る9行9列の燃料集合体の横断面図。
図9】第2の実施形態に係る10行10列の燃料集合体の横断面図。
図10】第2の実施形態に係る水ロッド形状が異なる9行9列の燃料集合体の横断面図。
図11】第3の実施形態を示す8行8列の燃料集合体の横断面図。
図12】第2の実施形態に係る燃料集合体の母材ウラン濃縮度と無限増倍率の変化割合を示す図。
図13】第2の実施形態に係る燃料集合体の母材ウラン濃縮度に対する局所出力ピーキングとプルトニウム富化度を示す図。
図14】(a)、(b)は燃料集合体のプルトニウム富化度分布を示す図で、(b)は(a)のプルトニウム富化度分布を有する燃料集合体のプルトニウム富化度を高くした例を示す模式図。
図15】(a)、(b)は図14(a)、(b)のプルトニウム富化度分布を有する燃料集合体の燃焼初期局所出力ピーキング分布を示す模式図。
図16】(a)、(b)は燃料集合体及び燃料棒の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る燃料集合体の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では上述した種々の制約による設計上のプルトニウム富化度の上限値が10%であると仮定して説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る燃料集合体を図1乃至図6により説明する。
図1は本実施形態を8行8列の燃料集合体に適用した例、図2は9行9列の燃料集合体に適用した例、図3は10行10列の燃料集合体に適用した例、また、図4は水ロッドの形状が異なる9行9列の燃料集合体に適用した例、図5は水ロッドの形状が異なる10行10列の燃料集合体に適用した例、及び図6は水ロッドの形状がさらに異なる10行10列の燃料集合体に適用した例、を示している。
【0027】
図1乃至図6において、符号P1、P1’、P1’’、P1’’’はすべてプルトニウム富化度10%のMOX燃料棒であり、アポストロフィの数が多いほど母材ウラン濃縮度が小さくなっている。また、符号G1、G2は可燃性毒物を混入したウラン酸化物燃料棒、符号Wは内部を冷却材が流通する水ロッドを示している。
【0028】
図1乃至図6に示すように、本第1の実施形態の燃料集合体は、燃料集合体を構成するMOX燃料棒のプルトニウム富化度は全て同等であるが、母材ウランは複数種類の濃縮度を有し、少なくとも最も濃縮度の高い母材ウランは濃縮ウランを用いる構成としている。
【0029】
また、出力が高くなりやすい燃料集合体の外周部に位置するMOX燃料棒の母材ウランの濃縮度を燃料集合体の内部に位置するMOX燃料棒よりも低くしている。さらに、燃料集合体の外周角部に位置するMOX燃料棒の母材ウランの濃縮度を、他の外周に位置するMOX燃料棒よりも低くしている。これにより、燃料の高燃焼度化と熱的余裕の改善を図ることができる。
【0030】
本第1の実施形態によれば、全てのMOX燃料棒のプルトニウム富化度が上限値(例えば10%)に達しているMOX燃料集合体において、熱的余裕を悪化させることなく核分裂物質積載重量の増加による高燃焼度化を図ることができる。また、プルトニウムの積載量を増加させることにより、余剰プルトニウムを減らすことができるとともに、燃料集合体の製造コストや輸送コストを低減することができる。
【0031】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る燃料集合体を図7乃至図10により説明する。
図7は本実施形態を8行8列の燃料集合体に適用した例、図8は9行9列の燃料集合体に適用した例、図9は10行10列の燃料集合体に適用した例、また、図10は水ロッドの形状が異なる9行9列の燃料集合体に適用した例を示している。
【0032】
図7乃至図10において、符号P1、P2、P3、P4はプルトニウムを含有するMOX燃料棒を示し、P1燃料棒のプルトニウム富化度は上限値の10%、その他のMOX燃料棒P2〜P4は添え字番号が大きいほどプルトニウム富化度が小さくなっている。すなわち、プルトニウム富化度はP1(10%)>P2>P3>P4である。
【0033】
また、P1の母材ウランは濃縮ウランであり、P2、P3及びP4の母材ウランの濃縮度は同等であり、いずれも劣化ウラン又は燃料再処理工程において回収された回収ウランを用いている。
【0034】
また、符号G1、G2は可燃性毒物を混入したウラン酸化物燃料棒、符号Wは内部を冷却材が流通する水ロッドを示している。なお、図7には短尺燃料棒6を含む燃料集合体の例を同時に示している。
【0035】
本第2実施形態の係る燃料集合体は、燃料体集合体を構成するMOX燃料棒が複数の種類のプルトニウム富化度を有し、また、母材ウランも複数の種類の濃縮度を有するとともに少なくとも一番濃縮度の高い母材ウランは濃縮ウランとするものである。
【0036】
これにより、例えばプルトニウム富化度が上限値に達しているMOX燃料棒と上限値に達していないMOX燃料棒が混在するMOX燃料集合体において、核分裂物質積載重量の増加による高燃焼度化、及びプルトニウム消費促進の点で最大の効果を得ることができる。
すなわち、プルトニウム富化度が上限に達している燃料集合体の内部に位置しているMOX燃料棒に関しては母材ウランの濃縮度を高めている。
【0037】
また、出力が高くなり易い位置の核分裂性物質濃度は低くなるようにするのが一般的であり、また従来のMOX燃料棒においてはプルトニウムの富化度で核分裂性物質濃度を調整するため、上記のプルトニウム富化度が上限値に達していないMOX燃料棒P2〜P4は通常出力が高くなり易い燃料集合体の外周に配置されている。これらの出力が高くなりやすい位置のMOX燃料棒の母材ウランは従来のMOX燃料棒と同様に劣化ウラン又は回収ウランが用いられる。これにより、燃料の高燃焼度化と熱的余裕の改善を図ることができる。
【0038】
ここで、本実施形態に係るMOX燃料集合体が熱的余裕を悪化させずにMOX燃料の高燃焼度化及びプルトニウム消費の促進に有効であることを図12及び図13により説明する。
【0039】
図12はプルトニウム富化度が10%のMOX燃料棒の母材ウラン濃縮度を高くし、局所出力ピーキングが過大にならない範囲でその他のMOX燃料棒のプルトニウム富化度を高くした場合の、MOX燃料の目標取出平均燃焼度における無限増倍率の増加割合を示している。例えば、プルトニウム富化度が10%のMOX燃料棒の母材ウラン濃縮度を4.9%まで高め、それに伴いその他のMOX燃料棒のプルトニウム富化度を高くした場合、無限増倍率は7%Δk程度増加している。
【0040】
また、母材ウラン濃縮度に対する燃焼初期の局所出力ピーキング及び燃焼初期における局所出力ピーキング位置のプルトニウム富化度の増加割合の変化を図13に示す。プルトニウム富化度が上限値に達しているMOX燃料棒の母材ウラン濃縮度を高め、プルトニウム富化度が上限値に達していないMOX燃料棒のプルトニウム富化度を高めることにより、熱的余裕を悪化させずにプルトニウム積載量を大きくできることがわかる。
【0041】
本第2の実施形態によれば、出力が高くなりやすい位置のMOX燃料棒P2〜P3のプルトニウム富化度をプルトニウム富化度が上限値に達しているMOX燃料棒P1よりも低くし、かつ、母材ウランの濃縮度もプルトニウム富化度が上限値に達してるMOX燃料棒よりも低くすることで、熱的余裕を悪化させることなく、MOX燃料集合体の高燃焼度化を図ることができるとともに、プルトニウムの積載量を増加させ消費を促進させることができる。
【0042】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る燃料集合体を図11により説明する。
図11は本実施形態を8行8列の燃料集合体に適用した例を示している。
【0043】
図11において、符号P1はプルトニウム富化度が10%であるMOX燃料棒を示し、符号1〜4の燃料棒はプルトニウムを含まないウラン酸化物燃料棒であり、番号が大きいほどウラン濃縮度が小さくなっている。すなわち、ウラン酸化物燃料棒1〜3のウラン濃縮度は1>2>3である。
【0044】
このように、本第3の実施形態では、燃料集合体を構成するMOX燃料棒が上限値の10%であるプルトニウム富化度を有し、プルトニウムを含まない燃料棒の母材ウランは複数の種類の濃縮度を有し、少なくとも最も濃縮度の高い母材ウランは濃縮ウランとしている。
【0045】
本第3の実施形態は、炉心の熱的余裕の改善等の観点から、MOX燃料の設計概念として燃料集合体の外周にMOX燃料棒ではなくウラン酸化物燃料棒を用いるという制約がある場合や、すべての燃料棒をMOX燃料棒から構成することができない燃料集合体に適用することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、MOX燃料棒P1をプルトニウム富化度が10%の燃料棒としているが、これに限定されず、複数種類のプルトニウム富化度を有するMOX燃料棒から構成してもよい。
【0047】
本第3の実施形態によれば、熱的余裕を悪化させることなく、MOX燃料集合体の高燃焼度化を図ることができるとともに、プルトニウムの積載量を増加させ消費を促進させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態の例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的な対象となる液体金属冷却炉等は、適宜変更可能である。また、実施形態やその変更例に記載された作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1…燃料集合体、2…燃料棒、3…チャンネンルボックス、4…水ロッド、5…可燃性毒物入り燃料棒、6…短尺燃料棒、7…ウラン燃料棒、8…燃料ペレット、9…被覆管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
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