特許第6016210号(P6016210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016210
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】高炉吹込み炭の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20161013BHJP
   C21B 3/04 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C21B5/00 320
   C21B5/00 302
   C21B3/04
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-179240(P2012-179240)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-37560(P2014-37560A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】大本 節男
(72)【発明者】
【氏名】中川 慶一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 務
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雅一
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−152508(JP,A)
【文献】 特開2001−323307(JP,A)
【文献】 特開2001−294911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00
C21B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉設備の高炉本体の内部に羽口から吹き込む高炉吹込み炭を製造する高炉吹込み炭の製造方法であって、
石炭の灰の組成及び融点を分析すると共に、鉄鋼製造工程で発生する鉄鋼スラグの組成を分析する分析工程と、
前記鉄鋼スラグが、前記石炭の灰よりも酸化カルシウムを多く含有するものであり、前記石炭の灰の組成及び融点と前記鉄鋼スラグの組成とに基づき、当該石炭の灰及び当該鉄鋼スラグの主成分である二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化アルミニウムと酸化カルシウムの4元系状態図にて酸化カルシウムの含有量が灰の融点で1400℃以上となるように、前記石炭と前記鉄鋼スラグとを混合する混合工程を行う
ことを特徴とする高炉吹込み炭の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載された高炉吹込み炭の製造方法であって、
前記石炭は、平均粒径1mm以下に粉砕したものであり、
前記鉄鋼スラグが、粒径20μm〜100μmに粉砕したものである
ことを特徴とする高炉吹込み炭の製造方法。
【請求項3】
請求項に記載された高炉吹込み炭の製造方法であって、
前記混合工程にて、バインダ及び水をさらに加え前記石炭及び前記鉄鋼スラグと共に混合し、
前記混合工程で得られた混合物をブリケット状に成形する成形工程を行う
ことを特徴とする高炉吹込み炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉吹込み炭製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉設備は、鉄鉱石や石灰石やコークスの原料を高炉本体の頂部から内部に装入すると共に、当該高炉本体の側部の下方寄りの羽口から熱風及び補助燃料として高炉吹込み炭(微粉炭)を吹き込むことにより、鉄鉱石から銑鉄を製造することができるようになっている。
【0003】
ところで、前記高炉設備の操業を安定に行うために、前記高炉吹込み炭が前記高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは当該高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することが求められている。
【0004】
例えば、微粉炭の灰の軟化点が1300℃未満のものに石灰石や蛇紋岩などCaO源の造滓剤を添加して、微粉炭中の灰の軟化点を1300℃以上に調整処理し、次いで、微粉炭中の灰の軟化点が1300℃以上の微粉炭のみを高炉本体の羽口から内部に吹き込むことにより、高炉吹込み炭の燃焼性を向上させることが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
また、例えば、富化酸素量を増減するか、微粉炭の組成や粒径などを調節してより燃焼しにくく制御して、レースウェイ内で最高到達温度を下げて、微粉炭の吹き込み量が極めて大きい操業でも、通気性を改善できる高炉微粉炭吹き込み操業方法が提案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−156330号公報(例えば、明細書の段落[0014]−[0023]、[図1]など参照)
【特許文献2】特開平11−152508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載される微粉炭(高炉吹込み炭)は、上述したような造滓剤を微粉炭にわざわざ添加して、灰の軟化点を1300℃以上に調整処理した微粉炭のみを使用しているため、ランニングコストの増加を招くものとなっている。
【0008】
また、前記特許文献2に記載される高炉微粉炭吹き込み操業方法では、微粉炭の吹き込み量が極めて大きく、微粉炭の組成や粒径をわざわざ調節する必要があるため、やはりランニングコストの増加を招くものとなってしまう。
【0009】
このようなことから、本発明は、前述した課題を解決するために為されたものであって、低コストにて高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる高炉吹込み炭製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決する第の発明に係る高炉吹込み炭の製造方法は、高炉設備の高炉本体の内部に羽口から吹き込む高炉吹込み炭を製造する高炉吹込み炭の製造方法であって、石炭の灰の組成及び融点を分析すると共に、鉄鋼製造工程で発生する鉄鋼スラグの組成を分析する分析工程と、前記鉄鋼スラグが、前記石炭の灰よりも酸化カルシウムを多く含有するものであり、前記石炭の灰の組成及び融点と前記鉄鋼スラグの組成とに基づき、当該石炭の灰及び当該鉄鋼スラグの主成分である二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化アルミニウムと酸化カルシウムの4元系状態図にて酸化カルシウムの含有量が灰の融点で1400℃以上となるように、前記石炭と前記鉄鋼スラグとを混合する混合工程を行うことを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決する第の発明に係る高炉吹込み炭の製造方法は、前述した第の発明に係る高炉吹込み炭の製造方法であって、前記石炭は、平均粒径1mm以下に粉砕したものであり、前記鉄鋼スラグが、粒径20μm〜100μmに粉砕したものであることを特徴とする。
【0015】
上述した課題を解決する第の発明に係る高炉吹込み炭の製造方法は、前述した第の発明に係る高炉吹込み炭の製造方法であって、前記混合工程にて、バインダ及び水をさらに加え前記石炭及び前記鉄鋼スラグと共に混合し、前記混合工程で得られた混合物をブリケット状に成形する成形工程を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
発明に係る高炉吹込み炭の製造方法によれば、酸化カルシウムの含有量で灰の融点が1400℃以上となるように、石炭と鉄鋼スラグとを混合したことで、灰の融点が高炉本体の羽口から内部に吹き込む熱風の温度よりも100〜150℃以上高くなり、また、前記鉄鋼スラグが鉄鋼製造プロセスで排出されるものであることから、当該鉄鋼スラグを有効に利用することができ、石炭に混合する酸化カルシウム源を別途用意する必要がなく、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる高炉吹込み炭を低コストで容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る高炉吹込み炭の製造方法の第一番目の実施形態の手順を表すフローチャート図である。
図2】本発明に係る高炉吹込み炭の製造方法の第二番目の実施形態の手順を表すフローチャート図である。
図3】高炉吹込み炭についてSiO2−CaO−MgO−20%Al23の4元系状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る高炉吹込み炭製造方法の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0020】
[第一番目の実施形態]
本発明に係る高炉吹込み炭製造方法の第一番目の実施形態を図1に基づいて説明する。
【0021】
本実施形態に係る高炉吹込み炭は、石炭の灰の組成及び融点を予め分析すると共に、高炉設備で排出される高炉スラグの組成を予め分析しておき、前記高炉スラグが前記石炭の灰よりも酸化カルシウムを多く含有するものであり、前記石炭の灰の組成及び融点と前記高炉スラグの組成とに基づき、当該石炭の灰及び当該高炉スラグの主成分である二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化アルミニウムと酸化カルシウムとの4元系状態図で酸化カルシウムの含有量で灰の融点で高炉設備の高炉本体の側部の下方側の羽口から内部に吹き込む熱風(1200℃)よりも高い1400℃以上となるように、前記石炭と前記高炉スラグとを混合したものである。
【0022】
このような本実施形態に係る高炉吹込み炭13は、図1に示すように、亜瀝青炭や褐炭等の低品位石炭である石炭11の組成及び灰の融点を分析する(分析工程S11−1)と共に、高炉設備から排出される高炉スラグ12の組成を分析し(分析工程S11−2)、次いで石炭11を微粉砕する(微粉砕工程S12−1)と共に、高炉スラグ12を微粉砕した(微粉砕工程S12−2)後、石炭11と高炉スラグ12とを混合し(混合工程S13)、混合物を粉砕する(粉砕工程S14)ことにより、容易に製造することができる。なお、粉砕工程S14は、高炉設備に吹き込む直前で行うことが望ましい。
【0023】
前記高炉スラグ12は、酸化カルシウム含有量が、例えば41.7wt.%であり、前記石炭11の灰の酸化カルシウム含有量よりも多いものである。
【0024】
前記微粉砕工程S12−1では、石炭11を平均粒径1mm以下に微粉砕するようにしている。これは、石炭11が平均粒径1mmよりも大きいと、混合工程S13で高炉スラグ12と混合したときに均一化しにくくなるからである。
【0025】
前記微粉砕工程S12−2では、高炉スラグ12を粒径20μm〜100μmに微粉砕するようにしている。これは、高炉スラグ12が粒径20μmよりも小さいと、高炉本体の内部に吹き込むと、高炉本体の内部をガス気流に乗ったまま通過して燃焼することなく排出されてしまうからである。高炉スラグ12が粒径100μmよりも大きいと、混合工程S13で石炭11と混合したときに均一化しにくくなるからである。
【0026】
このような本実施形態に係る製造方法により製造された高炉吹込み炭13においては、酸化カルシウムの含有量で灰の融点が1400℃以上となるように、石炭11と高炉スラグ12とを混合したことで、灰の融点が高炉本体の羽口から内部に吹き込む熱風の温度よりも100〜150℃以上高くなり、高炉吹込み炭13の灰(高炉吹込み炭灰)が熱風で溶融しないことから、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる。また、前記高炉スラグ12が高炉設備の銑鉄製造プロセスで排出されるものであることから、当該高炉スラグ12を有効に利用することができ、石炭11に混合する酸化カルシウム源を別途用意する必要がなく、低コストである。
【0027】
このため、本実施形態に係る高炉吹込み炭13では、新たに石灰石や蛇紋岩等の造滓剤を含有させることをしなくても、高炉設備から排出される、石炭11の灰よりも酸化カルシウムを多く含有する高炉スラグ12を当該石炭11に含有させるだけで、石炭11の灰の融点が1100〜1300℃と低かったものを、高炉吹込み炭13の灰(高炉吹込み炭灰)の融点で1400℃以上まで高めることができ、熱風でも当該高炉吹込み炭13の灰(高炉吹込み炭灰)が溶融しなくなることから高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる。
【0028】
したがって、本実施形態によれば、低コストで、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる。
【0029】
なお、本実施形態に係る高炉吹込み炭製造方法においては、石炭11と混合する鉄鋼スラグとして、酸化カルシウム含有量が石炭の灰組成の酸化カルシウム含有量よりも多い高炉スラグ12を用いた場合について説明したが、鉄鋼製造工程で発生し、酸化カルシウム含有量が石炭の灰組成の酸化カルシウム含有量よりも多い鉄鋼スラグであれば良く、例えば、転炉設備で排出される転炉系スラグ(例えば、酸化カルシウム含有量が45.8wt.%程度)や、例えば、鉄スクラップを溶解・還元製錬して生成する還元スラグ(例えば、酸化カルシウム含有量が55.1wt.%程度)を用いることも可能である。
【0030】
[第二番目の実施形態]
本発明に係る高炉吹込み炭製造方法の第二番目の実施形態を図2に基づいて説明する。なお、前述した実施形態の場合と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係る高炉吹込み炭は、石炭の灰の組成及び融点を予め分析すると共に、高炉設備で排出される高炉スラグの組成を予め分析しておき、前記高炉スラグが前記石炭の灰よりも酸化カルシウムを多く含有するものであり、前記石炭の灰の組成及び融点と前記高炉スラグの組成とに基づき、当該石炭の灰及び当該高炉スラグの主成分である二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化アルミニウムと酸化カルシウムとの4元系状態図で酸化カルシウムの含有量で灰の融点で高炉設備の高炉本体の側部の下方側の羽口から内部に吹き込む熱風(1200℃)よりも高い1400℃以上となるように、前記石炭と前記高炉スラグとを混合し、さらにバインダ及び水を混合したものである。
【0032】
このような本実施形態に係る高炉吹込み炭23は、図2に示すように、前記低品位石炭である石炭11を前述した実施形態と同様にして組成及び灰の融点を分析する(分析工程S11−1)と共に、高炉設備から排出される高炉スラグ12の組成を前述した実施形態と同様にして分析し(分析工程S11−2)、次いで前述した実施形態と同様にして石炭11を微粉砕する(微粉砕工程S12−1)と共に、前述した実施形態と同様にして高炉スラグ12を微粉砕した(微粉砕工程S12−2)後、石炭11及び高炉スラグ12とバインダ24及び水25とを混合し(混合工程S13)、混合物をブリケット状に成形し(成形工程S25)、ブリケット状の成形物を粉砕する(粉砕工程S14)ことにより、容易に製造することができる。なお、粉砕工程S14は、高炉設備に吹き込む直前で行うことが望ましい。
【0033】
つまり、本実施形態においては、前記混合工程S13で前記石炭11及び前記高炉スラグ12と前記バインダ24及び前記水25とを混合してなる混合物を前記成形工程S25でブリケット状に成形することで、石炭11の灰及び高炉スラグ12の主成分である二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化アルミニウムと酸化カルシウムとを均一化し粉砕工程S14で粉砕して高炉吹込み炭23を得るようにしたものである。
【0034】
前記高炉スラグ12は、酸化カルシウム含有量が、例えば41.7wt.%であり、前記石炭11の灰の酸化カルシウム含有量よりも多いものである。
【0035】
前記バインダ24としては、成形工程S25で、混合物をブリケット状に成形可能で、高炉吹込み炭23の灰(高炉吹込み炭灰)の融点に影響を及ぼしにくく、高炉内で完全燃焼するものであれば良く、例えば、コーンスターチ、糖蜜、アスファルトなどが挙げられる。
【0036】
前記バインダ24の混合量は、石炭11及び高炉スラグ12の混合物をペレット状に成形可能な量であって、例えば、前記石炭11と前記高炉スラグ12の混合物に対して1wt.%以上5wt.%以下の範囲である。これは、バインダ24の混合量が1wt.%よりも少ないと、前記石炭11及び前記高炉スラグ12の混合物をブリケット状に成形できないからであり、バインダ24の混合量が5wt.%よりも多いとランニングコストの悪化を招くからである。また、前記水25の混合量は、石炭11及び高炉スラグ12の混合物をペレット状に成形可能な量であって、例えば、前記石炭11と前記高炉スラグ12の混合物に対して2wt.%以上8wt.%以下の範囲である。これは、水25の混合量が2wt.%よりも少ないと、前記石炭11及び前記高炉スラグ12の混合物をブリケット状に成形できないからであり、水25の混合量が8wt.%よりも多いと水分の蒸発のために高炉設備での粉砕、乾燥工程で余分なエネルギを消費してしまうからである。
【0037】
つまり、本実施形態においては、前記石炭11及び前記高炉スラグ12の混合物にバインダ24及び水25を加えてさらに混合してから、前記成形工程S25で当該混合物をペレット状に成形することにより、主成分である二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化アルミニウムと酸化カルシウム等を均質化すると共に、取扱い性(輸送や貯蔵など)を向上させるようにしている。
【0038】
このような本実施形態に係る製造方法により製造された高炉吹込み炭23においては、前述した実施形態の場合と同様に、酸化カルシウムの含有量で灰の融点が1400℃以上となるように、石炭11と高炉スラグ12とを混合したことで、灰の融点が高炉本体の羽口から内部に吹き込む熱風の温度よりも100〜150℃以上高くなり、高炉吹込み炭23の灰(高炉吹込み炭灰)が熱風で溶融しないことから、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる。また、前記高炉スラグ12が高炉設備の銑鉄製造プロセスで排出されるものであることから、当該高炉スラグ12を有効に利用することができ、石炭11に混合する酸化カルシウム源を別途用意する必要がなく、低コストである。
【0039】
前記石炭11と前記高炉スラグ12と前記バインダ24と前記水25を混合したものを成形工程S25でブリケット状に成形した後に粉砕工程S14で粉砕していることから、二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化アルミニウムと酸化カルシウムとが均質化することになり、前述した実施形態の場合よりも、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞をさらに生じることなく高炉本体の側部の下方寄りの羽口から内部に吹き込むことができる。
【0040】
このため、本実施形態に係る高炉吹込み炭23では、新たに石灰石や蛇紋岩等の造滓剤を含有させることをしなくても、高炉設備から排出される、石炭11の灰よりも酸化カルシウムを多く含有する高炉スラグ12を当該石炭11に含有させるだけで、石炭11の灰の融点が1100〜1300℃と低かったものを、前述した実施形態の場合よりも、高炉吹込み炭23の灰(高炉吹込み炭灰)の融点で1400℃以上まで確実に高めることができ、熱風でも当該高炉吹込み炭23の灰(高炉吹込み炭灰)が溶融しなくなることから、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、前述した実施形態の場合よりも、低コストで、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することがさらに確実にできる。
【実施例】
【0042】
本発明に係る高炉吹込み炭製造方法の作用効果を確認するために行った実施例を以下に説明するが、本発明は、各種データに基づいて説明する以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
前述した第二番目の実施形態に係る高炉吹込み炭の製造方法で用いられる石炭の灰の組成分析(元素分析)を行った。この石炭は、亜瀝青炭を400℃で不活性雰囲気(例えば、窒素ガス)下で0.5時間熱処理して得られた改質炭である。前記石炭中の灰分含有量が7wt.%であった。前記石炭の灰(主成分)の組成分析の結果を下記の表1に示す。また、二酸化ケイ素と酸化マグネシウムと酸化カルシウムと酸化アルミニウムの4元系状態図を示す図3から、下記表1のときに点P1の位置となることから、前記石炭の灰の融点が1215℃であることが明らかとなった。
【0044】
【表1】
【0045】
前述した第二番目の実施形態に係る高炉吹込み炭の製造方法で用いられる高炉スラグの組成分析(元素分析)を行った。前記高炉スラグ(主成分)の組成分析の結果を下記の表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
上述の図3において、灰の融点が1400℃となる酸化カルシウムの含有量が35wt.%(点P2の位置)であることから、前記石炭を95wt%、前記高炉スラグを5wt.%で混合することで、混合後の灰組成が、下記の表3に示すように、酸化カルシウムの含有量が35wt.%となり、灰の融点が1400℃となることが明らかとなった。なお、バインダとしてコーンスターチを前記石炭と前記高炉スラグの混合物に対して3wt.%添加し、水を6wt.%添加した。
【0048】
【表3】
【0049】
よって、本実施例によれば、前記石炭の灰の組成及び灰の融点を分析すると共に、高炉スラグの組成を分析し、分析結果に基づき、酸化カルシウムの含有量が灰の融点で1400℃となるように、前記石炭と前記高炉スラグとを混合した高炉吹込み炭とすることで、高炉設備の高炉本体の側部の下方寄りの羽口から内部に吹き込む熱風よりも灰の融点を高めることができ、低コストで、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができる。
【0050】
なお、上記では、SiO2−CaO−MgO−20%Al23の4元系状態図を用いて、石炭と高炉スラグとの混合量を特定する高炉吹込み炭の製造方法について説明したが、これは、灰の融点が、二酸化ケイ素や酸化マグネシウムや酸化アルミニウムの含有量と比べて酸化カルシウムの含有量に大きく依存しており、酸化カルシウムの含有量を基準に石炭と高炉スラグとの混合量を調整しているからである。また、SiO2−CaO−MgO−Al23の4元系にて酸化アルミニウムの含有量が20wt.%の場合の状態図を用いたのは、石炭に対して高炉スラグを5〜10%程度混合してもほとんど酸化アルミニウムの含有量の変化は小さく、酸化アルミニウムの含有量が20wt.%の場合とほぼ同じ状態図となるからである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る高炉吹込み炭製造方法は、低コストで、高炉吹込み炭が高炉本体の内部へ至る経路で高炉吹込み炭灰の付着あるいは高炉吹込み炭灰による閉塞を抑制することができるので、製鉄産業において極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
11 石炭
12 高炉スラグ
13,23 高炉吹込み炭
24 バインダ
25 水
P1 石炭の灰の溶融温度
P2 混合物の灰の溶融温度
S11−1,S11−2 分析工程
S12−1、S12−2 微粉砕工程
S13 混合工程
S14 粉砕工程
S25 成形工程
図1
図2
図3