【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示し、
図2は、本実施例による鳥類衝突数評価の動作フローチャートを示す。本実施例では、コンピュータ上のソフトウエアにより実現されうるが、もちろん、そのようなソフトウエアで実現される機能を組み込んだ専用装置によっても実現可能である。
【0017】
本実施例では、風力発電設備の風車に対して全球方向から鳥類が進入する可能性が一般的に存在することを考慮し、個々の風車に対して衝突可能性のある鳥類の進入エリアとして風車ブレードの回転に外接する球体を風車接触可能域として想定する。
【0018】
コンピュータ10は、CPU12、主記憶としてのメモリ14、補助記憶としてのHDD16、表示装置18、キーボード20及び、ポインティングデバイスとしてのマウス22を具備し、鳥類衝突数評価装置の一実施例として機能する。
図2に示すフローチャートに相当する鳥類衝突数評価のコンピュータプログラムがHDD16に格納されており、CPU12は、その鳥類衝突数評価プログラムをHDD16からメモリ14に読み出し、実行する。これにより、CPU12は、
図2に示すフローチャートで説明される各機能を実現する。
【0019】
コンピュータ10には、予め、設置しようとする風力発電設備情報と、風力発電設備を設置しようとする地域に生息し、衝突可能性のある鳥類の情報が格納される。HDD16の風力発電設備情報テーブル16aには風力発電設備情報が格納され、鳥類情報テーブル16bには鳥類情報が格納される。
【0020】
図3は、風力発電設備情報テーブル16aの構造例を示す。設置面積(Sa)は、風力発電設備情報を設置しようとする地域の面積であって、例えば、設置する風車に衝突する可能性のある鳥類の生息域をカバーする範囲で設定される。明確さの点で、設置面積(Sa)を、設置する複数の風力発電設備を外接する多角形その他の線図で定義しても良い。稼働率は1年で風車が回転する時間の割合を示す。風車軸高度(H
axis)は、風車の回転軸の、地上からの高度を示す。ブレード半径(Ra)は、風車を構成する羽(ブレード)の半径、即ち、風車軸からブレードの端までの距離を示す。平均回転速度は、想定される風速に対する平均的な回転速度を示す。平均回転速度は、風車を通過する鳥類がブレードに接触する接触確率を計算するのに使用される。
図5は、風車を正面から見た状態の模式図であって、風車軸高度(H
axis)、ブレード半径(Ra)及び風車回転高度幅(2Ra)の関係を示す。
【0021】
図4は、鳥類情報テーブル16bのデータ構造例を示す。鳥類情報テーブル16bは、衝突可能性のある鳥類毎に、サイズ(体長I,翼開長W)、飛翔高度範囲(Ha〜Hb)、飛翔速度(v)、
全飛翔距離(Md)及び回避率(P
L)の各データからなり、専ら実測により決定される。サイズは、羽を拡げた飛翔時の飛翔方向の大きさ(体長:I)と羽方向の大きさ(翼開長W)を示す。飛翔高度範囲(Ha〜Hb)は、通常、飛翔する高度の範囲を示す。飛翔速度(v)は、風車のブレードが回転する範囲の高度での飛翔速度を示す。
全飛翔距離(Md)は、単位期間(例えば、1年)内に風車回転高度範囲(Ha〜Hb)を飛翔する場合の設置地域内での全飛翔個体の合計距離を示す。回避率(P
L)は、
風車設置前に風車回転高度範囲(Ha〜Hb)に侵入することが観察された個体数のうち、回転する風車に向かって飛びつつも風車を回避する
割合を示
す。風車を回避する個体数は、より具体的には、
後述するように、設置された風車を忌避して設置地域に入らなくなる個体数と、設置地域に入っても風車接触可能域に入らない個体数と、風車接触可能域に入ってもブレード回転面に進入しない個体数の合計に相当する。例えば、オジロワシの場合、回避率は95%程度と言われている。
【0022】
図2を参照して、本実施例による鳥類衝突数の定量評価動作を説明する。先ず、オペレータは、キーボード20及びマウス22を使い、設置しようとする風力発電設備情報とその地域の鳥類情報をHDD16に格納する(S1)。これにより、HDD16に風力発電設備情報テーブル16aと鳥類情報テーブル16bが格納され、準備される。勿論、遠隔地のサーバにある同様のテーブルを参照してもよいが、ここでは理解を容易にするために、ローカルにこれらテーブル16a,16bが存在するものとしている。
【0023】
CPU12は、風力発電設備情報テーブル16aを参照し、風車回転高度容積(Va)を算出する(S2)。風車回転高度容積(Va)は、テーブル16aの設置面積(Sa)に風車回転高度幅(Hc)を乗算して得られる。すなわち、
Va=Sa×Hc
とする。風車回転高度幅(Hc)は、
図5に示すように、回転する風車の上端から下端までの距離であり、一般的には、ブレード半径(Ra)の2倍に相当する。風車回転高度容積(Va)は、高度で見た空間的な存在可能性を示す指数となる。
【0024】
風車回転高度幅の範囲に鳥類が飛翔していたとしても、ある程度に風車に接近しない限り、風車に衝突することはあり得ない。また、鳥類が風車に衝突するのは、鳥類が風車の正面から風車に向かって進入する場合に限らず、斜めに進入する場合もありうる。却って、風車回転面に直角に進入する場合に比べ、斜めに入射する方が、風車のブレードに接触する時間的空間的確率が高いので、風車に衝突する確率が高くなる。そこで、本実施例では、個々の風車に対して、風車のブレード回転面を中心とする球体を風車接触可能域として想定する球体モデルを採用する。
【0025】
CPU12は、風車接触可能域として想定される全球体の容積を風車接触可能容積(Vs)として、
Vs=M×(4π/3)Ra
3
を計算する(S3)。但し、Mは風車台数を示し、Raは、風車のブレード半径(又は風車軸からブレード端までの距離)を示す。
【0026】
風車回転高度容積(Va)に対する風車接触可能容積(Vs)の比は、空間的な広さだけから見た場合に風車に衝突する可能性のある風車接触可能域に鳥類が存在する確率を示す。この確率を空間占有率と定義し、CPU12は、下記式に従い、設置地域におけ
る空間占有率(Pv)を算出する(S4)。すなわち、
Pv=Vs/Va
とする。
【0027】
空間占有率(Pv)は、鳥類の種別に依存しない指数であり、本実施例は、この空間占有率(Pv)に鳥類毎の事情を加味して、個々の鳥類の衝突羽数を推計する。
【0028】
先ず、CPU12は、鳥類情報テーブル16bを参照し、鳥類情報テーブル16bから評価対象の鳥類を選択し、選択した鳥類の緒データ(サイズ(I,W)、飛翔高度範囲(Ha〜Hb)、
全飛翔速度(v)、飛翔距離(Md)及び回避率(P
L))を読み込む(S5)。
【0029】
CPU12は、選択された鳥類が風車接触可能域を通過する通過頻度(Fq)を算出する(S6)。
通過頻度(Fq)は、選択された鳥類
の全個体が所定の期間内に風車接触可能域(風車接触可能容積(Vs))を通過する回数であ
る。選択された鳥類について、風車回転高度幅Ha〜Hbを飛翔する全個体の
全飛翔距離(Md)
に空間占有率(Pv)を乗算した結果は、風車接触可能域を通過するのべ距離であるから、1台の風車の風車接触可能域を通過する平均距離(davg)に風車接触可能域の通過頻度(Fq)を乗算した結果に等しい。すなわち、
Fq×davg=Pv×Md
であり、これを変形して、
Fq=Pv×Md/davg
となる。選択された鳥類について
、CPU12は、
上式により通過頻度(Fq)を算出する。
通過頻度(Fq)の単位は、鳥類種類別の所定期間内の回数となる。
【0030】
球体をランダムに通過するとした場合の平均距離(d
avg)は、球体にランダムに1本の線を通過させたときの、始点(入口)から終点(出口)までの距離の平均であり、通過軌跡の総和を軌跡数で除算することで得られる。従って、平均距離(d
avg)は、球の体積、すなわち、風車接触可能域を構成する球体の体積を、その中心を通る円の面積で除算した値となる。
【0031】
次に、CPU12は、何れかの風車の風車接触可能域に進入した鳥類が更に、そのブレード回転面を通過する回数(Cn)を算出する(S7)。ステップS6で計算した通過頻度(Fq)は、風車のブレード回転面を中心とする球体に進入する頻度を示すが、球体に進入した鳥がそのまま直進したとしても、全てがブレード回転面に進入するわけではなく、以下に説明するように、ブレード回転面に進入する確率は1/2となる。従って、ブレード回転面通過回数(Cn)は、
Cn=Fq/2=Pv×Md/(d
avg×2)
となる。
【0032】
図6を参照して、ブレード回転面に進入する確率が1/2であることを説明する。
図6は、風車をその上空から見た平面図を示す。本実施例の球体モデルでは、ブレード回転面50に対して、外接する球体52を想定する。この球体52の内部が風車接触可能域に対応する。この球体52に外部から任意の角度で鳥が線54で示すように進入するとする。入射点とブレード回転面の両端を結ぶ線のなす角は周知の通り90度となり、球体52の球面への進入点での接線で見ると、余角、すなわちブレード面方向に進まない角度も90度である。これは、進入する個体がブレード面を見込む立体角と、ブレード面以外を見込む立体角の比で見ても、同様である。従って、先に説明したように、風車接触可能域を構成する球体52に進入した鳥類がブレード面に突入する確率は常に1/2となる。
【0033】
ここまでは、鳥類が直進することを前提としてきた。しかし、実際には、ブレード回転面に向かって飛翔する鳥類が全てブレード回転面に進入するとは限らない。回避行動があり、回避しない個体も、ブレード回転面を無事に通過できる場合がある。回避できず、ブレード回転面を無事に通過できなかった個体が、ブレードに衝突することになる。
【0034】
ブレード回転面に接近した鳥類も、その飛翔能力によりブレード回転面への進入を回避できる。このような回避率は、経験的又は実測により定量評価可能であ
るが、風車設置前の調査で設置域(設置前であるので、いわば「設置予定域」である。)に風車回転高度範囲に侵入することが観察された個体数(Tx)のうち、風車ブレード面への進入を回避する個体数(回避個体数)の割合である。回避個体数は、設置された風車を忌避して設置域に入らなくなる個体数と、設置域に入っても風車接触可能域に入らない個体数と、風車接触可能域に入ってもブレード回転面に進入しない個体数の合計として算出または計測できる。すなわち、
回避率=(回避個体数)/Tx
である。なお、(Tx?回避個体数)がブレード面に進入する個体数に相当するので、(Tx?回避個体数)/Txが回転面進入率に相当する。本実施例でも、既存の方法で計測又は決定された知られた数値を採用する。例えば、オジロワシの場合で
、回避率は、95%程度と言われている。
【0035】
回避せずにブレード回転面に進入しても、一部は、ブレード回転面を無事に通過できる。無事に通過できるかどうかは、鳥類のサイズ(I,W)と、飛翔速度(v)、ブレード面への入射角度(θ)、風車の回転速度及びブレード数に依存する。
図7は、ブレード回転面を上方から見た場合の2種類の進入角度例であって、
図7(a)はブレード回転面への進入角度が浅い(θが小さい)場合を示し、同(b)は進入角度が大きい(θが大きい)場合を示す。
【0036】
鳥類の頭がブレード回転面に入ってから尾が抜けるまでの間にブレードが鳥類に接触する場合に、鳥類がブレードに衝突したことになる。進入角度θが小さいほどブレード回転面に位置する時間が長くなるので、接触確率が増大する。進入角度θが大きくなると、短時間でブレード回転面を通過することが可能になり、接触確率が低下する。進入角度θを0度から90度の範囲で接触確率を算定すると、平均接触率Tを算定できる。すなわち、進入角度θの接触確率は、{(ブレード回転面通過距離)/(飛翔速度v)}×{(ブレード羽数)/(1回転の時間)}で計算できる。平均衝突率Tは、各進入角度の衝突確率を進入角度で積分して平均化することで得られる。平均の代わりに、代表的な進入角度における接触確率を代表値として採用しても良い。
【0037】
ブレード回転面通過距離は、以下のように算出できる。進入角度θで野鳥がブレード面に進入する場合で、体長Iの1/2の箇所で翼開長Wを十字クロスさせると、
通過距離=W/tanθ
となる。但し、オジロワシ、オオワシ、イヌワシ及びチュウヒの4種で推定した通過距離は、進入角度θが約68度以上で各種類の体長(I)と同じ値になる。ブレード厚みbを考慮する場合、
通過距離=W/tanθ+b/sinθ
となる。
【0038】
オジロワシを例に説明する。オジロワシのオスメス平均の体長及び翼開長から求めたブレード面を通過するのに要する距離、すなわちブレード面通過距離は、平均で2.3m程であり、飛翔速度は10.6m/sである。このとき、ブレード回転面を垂直に通過する時間tは、
t=(ブレード面通過距離)/飛翔速度
であるから、0.217秒(=2.3/10.6)となる。
【0039】
風車のブレードが2.5秒に1回転すると仮定すると、ブレード1枚がt秒間に移動する間にブレード回転面を掃引する面積率は0.217/2.5となる。風車のブレードが3枚である場合、合計の掃引面積率は、
3×0.217/2.5=0.26
となる。つまり、合計の掃引面積率は、
t×(ブレード数)/(1回転の秒数)
で得られる。この合計掃引面積率が90度進入の場合の接触確率となる。進入角度θを変更して同様の計算を行い、0〜90度の角度別の接触確率を平均化することで、平均接触率が得られる。
図8は、進入角度対接触確率の一例を示す。
【0040】
以上を踏まえて、CPU12は、所定期間内に風車に衝突する羽数、すなわち期間内衝突羽数を、下記式に従って算定する(S8)。すなわち、
期間内衝突羽数=Cn×(接触率)×(稼働率)×(回転面進入率)
ただし、
回転面進入率=1−回避率
である。
【0041】
別種の野鳥についても衝突羽数を算定すべき場合(S9)、CPU12は、別の鳥類を選択して、緒データを鳥類情報テーブル16bから読み込み(S10)、当該鳥類について、ステップS6〜S8を実行する。
【0042】
全ての野鳥について衝突羽数を算出したら(S9)、CPU12は、所定書式のレポートを生成し、HDD16に保存して(S11)、終了する。
【0043】
オペレータは、算出結果に疑問がある場合には、テーブル16a,16bのデータを修正して
図2に示すフローを再実行すればよい。
【0044】
上記実施例では、ステップS6で通過頻度の計算にS4で得られた空間占有率を乗算しているが、ステップS6、S7では割合のみを計算し、最終的にステップS8において空間占有率を乗算するようにしてもよいことは、明らかである。
【0045】
このように、本実施例によれば、個々の風車に対して球体モデルによる風車接触可能域を設定したことで、全球方向から風車に向かう個体の衝突確率を適切に定量評価することが可能になり、従って、衝突羽数をより精確に見込むことが可能になる。
【0046】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。