【実施例】
【0018】
図1、
図2において、マイクロホンケース1の上端部には、マイクロホンケース1の内周に固着されたクッション材13の介在のもとにマイクロホンユニット2が取り付けられている。マイクロホンユニット2の電気音響変換方式は限定されないが、図示の実施例ではコンデンサマイクロホンユニットを使用している。マイクロホンケース1の下端部にはマイクロホンコネクタ15が取り付けられている。マイクロホンケース1は導電性の素材で製作されている。
【0019】
円筒形状のマイクロホンケース1の上端にはフランジ11が一体に形成されている。上記フランジ11の上面には、フランジ11の内周寄りの位置にリング状の導電性クッション材8がフランジ11の内周に沿って配置されている。導電性クッション材8は、クッション性と導電性を併せ持った素材からなり、本実施例においては、導電フォーム(例えば、セーレン株式会社製、Sui−78−5030T)を用いた。
【0020】
導電性クッション材8の上面には、導電リング9が配置され、導電リング9の上には前カバー5の下端が接している。前カバー5は金属メッシュをボウル状に成形したもので、ボウルを伏せた姿勢で配置されている。したがって、前カバー5の下端が開口端になっていて、前カバー5の上記開口端に上記導電リング9が固着されている。導電リング9と導電性クッション材8は互いに固着してもよいし、導電性クッション材8の上に導電リング9が載っているだけでもよい。前カバー5と導電性クッション材8との間に導電リング9が介在し、前カバー5と導電リング9と導電性クッション材8とマイクロホンケース1は電気的に導通している。
【0021】
前カバー5は、マイクロホンユニット2を、マイクロホンユニット2との間に適宜の空間をおいて囲んでいる。前カバー5は、音波を通す構造になっていて、例えば金属メッシュを素材としている。導電性クッション材8は前カバー5とマイクロホンケース1との間に介在し、弾性力によって前カバー5をマイクロホンケース1から離間させる向きに付勢している。前カバー5は、導電性クッション材8の弾性力に抗して押圧されることにより、マイクロホンケース1に対し相対移動可能な構造になっている。
【0022】
マイクロホンケース1のフランジ11の上面には、導電性クッション材8の外側に、かつ、導電性クッション材8の外周に隣接してリング状の回路基板3が固着されている。回路基板3には発光素子が実装されている。回路基板3の上には、上記発光素子を挟んでライトリング4が配置されている。
【0023】
図4乃至
図6に示すように、ライトリング4は、前カバー5の外周に沿う円弧状に形成され、円弧の一部が切断されて平面から見た形がC字状になっている。実施例では、ライトリング4として、アクリル樹脂による一体成形品を用いた。C字状のライトリング4の両端下部は切除されて庇状の切除面41が形成されている。ライトリング4の底面は、両端部から一定の距離まで平坦底面44になっていて、切除面41は平坦底面44と平行に形成されている。切除面41は鏡面仕上げされている。
【0024】
ライトリング4の平坦底面44が回路基板3の上面に密着して配置されている。回路基板3には、ライトリング4の両端部の各切除面41に対応する位置にそれぞれ2個の発光素子31,32が発光面を上に向けて実装されている。本実施例では、発光素子31として緑色光を発光するLED、発光素子32として赤色光を発光するLEDを用いた。
【0025】
ライトリング4の両端部の上面、したがって、切除面41および発光素子31,32の発光面に対向する面は、約45度の傾斜面42になっていて、各傾斜面42も鏡面仕上げされている。各傾斜面42は、発光素子31,32から放射される光をライトリング4の内方に向かって反射させる反射面になっている。各傾斜面42には、例えば反射シールを貼り付けるとよい。
【0026】
ライトリング4の縦断面の上部は
図4(d)に示すように半円状になっていて、この半円状の上面43はブラスト処理によって荒らされて光拡散面となっている。ライトリング4の底面もブラスト処理によって荒らされて光拡散面となっている。
【0027】
発光素子31,32から放射される光は、ライトリング4の両端部の切除面41からライトリング4内に導かれ、各傾斜面42でライトリング4の内方に向かって反射さる。この反射光は、光拡散面であるライトリング4の上面43あるいは下面で乱反射しながらライトリング4内を進行し、ライトリング4全体が発光素子31,32の発光色によって明るくなる。発光素子31が発光すればライトリング4の上面43全体が緑色に光り、発光素子32が発光すればライトリング4の上面43全体が赤色に光る。
【0028】
ライトリング4の底面は、両端部からある程度の距離までは前述のように平坦底面44になっているが、そこから遠ざかるにしたがってライトリング4の厚みが薄くなるように、緩やかな逆V字状を描く傾斜面45になっている。発光素子31,32から遠ざかるにしたがって到達する光量が低下する。そこで、ライトリング4の底面を傾斜面45とし、発光素子31,32から遠ざかるにしたがってライトリング4の厚みを薄くして光を集め、ライトリング4から放射される光量のばらつきをなくしている。
【0029】
マイクロホンがオンのときは発光素子31を点灯させてライトリング4を緑色に光らせ、音声信号出力がオフのときは発光素子32を点灯させてライトリング4を赤色に光らせる。こうして、マイクロホンの動作状態を表示することができる。発光素子の数は任意である。発光素子が点灯しているときはマイクロホンがオン、発光素子が消灯しているときはマイクロホンオフというように、発光素子は最低1個あれば動作状態を表示することができる。
【0030】
図1に示すように、前記導電リング9は、その一部が半径方向外側に向かって形成された突出部91を有している。マイクロホンケース1のフランジ11には突出部91の下方においてスイッチ7が配置され、スイッチ7の操作ボタンが上記突出部91の下面に近接している。導電リング9とスイッチ7は、導電リング9の突出部91の移動によってスイッチ7が作動するように位置関係が設定されている。
【0031】
スイッチ7が作動するたびに発光素子31,32が交互に切り替えられて発光色が赤色と緑色に切り替わり、ライトリング4から放射される光の色も発光素子の発光色と同じ色に切り替わる。あるいは、スイッチ7の作動によって発光素子が点灯と消灯に切り替わるようにしてもよい。要するに、スイッチ7の作動によってマイクロホンの出力信号がオン、オフすると、発光素子の動作が切り替わるように構成されている。
【0032】
マイクロホンケース1のフランジ11には、フランジ11を外周側から覆うサイドカバー6が被せられている。サイドカバー6は、フランジ11の外周に嵌る円筒形状の部分とこれに続く円錐形状の部分を有し、円錐形状の部分の上端内周縁はライトリング4の上端部外周に沿っている。サイドカバー6の上記上端内周縁と前カバー5の外周との間からライトリング4の上端部が露呈している。
【0033】
サイドカバー6は、平面形状がC字状のライトリング4の前記切断部に進入してこの切断部を覆う補完部16を一体に有している。サイドカバー6の補完部16は、サイドカバー6の上記円錐形状の一部が内方に向かって突出して形成されており、周方向には円弧状で、上下面は平坦面になっている。上記補完部16の下面に前記導電リング9の突出部91の上面が当たり、導電性クッション材8の反発力による導電リング9および前カバー5の上方への移動を規制している。
【0034】
バウンダリーマイクロホンの大半をなすマイクロホンケース1は、テーブルなどの天板に埋め込まれる。マイクロホンケース1のフランジ11は緩衝材12を介在させて上記天板上に載せられ、天板に固定される。上記天板上には前カバー5、サイドカバー6、ライトリング4が露呈する。前カバー5を通り抜けた音波がマイクロホンユニット2に入って電気音響変換される。ライトリング4の光る色を見ることにより、そのマイクロホンが動作中であるか否か、すなわち音声信号の出力動作中であるかまたは待機中であるかを判別することができる。マイクロホンケース1内には、マイクロホン回路を組み込んだ回路基板14が固定されている。
【0035】
以上の説明からわかるように、スイッチ7の切り替えは前カバー5の押圧操作で行い、スイッチ7の切り替えにより、マイクロホンユニット2で電気音響変換される音声信号の出力をオン、オフするようになっている。マイクロホンの前カバー5は一般的には金属メッシュからなり、従来、前カバー5をスイッチ操作部材として利用する発想はなかった。本発明の上記実施例によれば、金属メッシュからなる前カバー5をスイッチ操作部材として利用している。そこで、
図2に破線で示すように、前カバー5の前面に押圧操作板18を貼り付けておけば、前カバー5を直接操作することに対する抵抗感を軽減することができる。押圧操作板18に例えば「Push」というような文字を表記するとなおよい。
【0036】
図1に示す態様は、前カバー5が押されない通常の状態を示す。この状態では、導電性クッション材8の反発力により導電リング9および前カバー5が押し上げられ、スイッチ7は非作動状態にある。
【0037】
導電性クッション材8の反発力に抗して前カバー5を押し下げると、
図3に示すように、前カバー5と実質一体の導電リング9の突出部91がスイッチ7の操作ボタンを押し、スイッチ7を作動させる。回路基板14に組み込まれているマイクロホン回路は、スイッチ7を作動させると、マイクロホンをオン状態に切り替えるとともにこの状態を維持し、マイクロホンユニット2で電気音響変換された音声信号を出力する。また、発光素子31を発光させて、発光色を例えば緑色に切り替え、そのマイクロホンがオンであることを表示する。上記スイッチ7をもう1度作動させると、上記マイクロホン回路はマイクロホンをオフ状態に切り替え、音声信号の出力を遮断する。また、発光素子32を発光させて、発光色を赤色に切り替え、そのマイクロホンがオフであることを表示する。
【0038】
以上のように、前カバー5を押してスイッチ7を作動させるごとにマイクロホンの音声出力がオンとオフに交互に切り替わる。音声出力のオン、オフに対応して発光素子31,32が交互に点灯し、発光素子31または発光素子32の発光色と同じ色の光がライトリング4から放射される。ライトリング4の発光色によってマイクロホンの作動、非作動を判別することができる。
【0039】
以上説明した実施例によれば、マイクロホンが備えている前カバー5に、音声出力をオン、オフするスイッチ7の操作部材を兼ねさせたため、スイッチ操作部材を新たに設ける必要がなく、かつ、マイクロホンの大型化を回避することができる。
【0040】
前カバー5、導電性クッション材8、マイクロホンケース1は導電性素材で製作され、これらの部材は電気的に導通し、マイクロホンユニット2の周囲を囲んでいる。したがって、前カバー5、導電性クッション材8、マイクロホンケース1は、マイクロホンユニット2を電磁シールドし、電磁波に対するシールド効果を高めている。本実施例に係るマイクロホンの近傍で携帯電話などが使用されても、電磁波を要因とするノイズが音声信号に混入することを防止することができる。
【0041】
図示の実施例では、マイクロホンケース1のフランジ11に回路基板3を配置し、この回路基板3に、導電性クッション材8、発光素子31,32、さらにはスイッチ7が配置されている。このような構成にすることにより、上記各部品の電気的接続を簡単化することができる。
【0042】
本発明に係るマイクロホンの特徴は、前カバーをマイクロホンケースに対し相対移動可能とし、前カバーにスイッチ操作部材を兼ねさせた構成になっていることである。したがって、上記の特徴を備えていれば、図示の実施例のような埋め込み型バウンダリーマイクロホンに限らず、テーブル上に載置して使用する形式のバウンダリーマイクロホンにも適用可能である。また、バウンダリーマイクロホンに限らず、手持ち型マイクロホンを含むあらゆる形式のマイクロホンに適用可能である。そのほか、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術思想を逸脱しない範囲で任意に設計変更可能である。
【0043】
図示の実施例におけるスイッチ7は、押すことによって切り替わり、押し込みを解除することによって復帰するプッシュスイッチである。このプッシュスイッチを押すことによって切り替わった状態を回路的に保持し、もう1回押すと上記保持が解除されるように構成した自己保持回路が設けられている。あるいは、1回押すと切り替わってその状態が維持され、もう1回押すと復帰してその状態が維持される機構を持ったプッシュ・プッシュスイッチであってもよい。この場合、上記自己保持回路は不要である。