特許第6016236号(P6016236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016236
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】マイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/04 20060101AFI20161013BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   H04R1/04 B
   H04R19/04
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-6114(P2013-6114)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-138288(P2014-138288A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】古屋 裕章
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−069368(JP,U)
【文献】 実開平04−078890(JP,U)
【文献】 特開2008−078703(JP,A)
【文献】 特開2010−278988(JP,A)
【文献】 AKG"Modular Plus Series"を発売,日本,ヒビノ株式会社,2012年12月21日,[オンライン], [検索日 2016/6/30], インターネット:<URL: http://proaudiosales.hibino.co.jp/information/2218.html>,URL,http://proaudiosales.hibino.co.jp/information/2218.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/04
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホンケースと、
上記マイクロホンケースの一端側に取り付けられているマイクロホンユニットと、
上記マイクロホンケースの一端側に上記マイクロホンユニットを覆いかつ上記マイクロホンケースに対し相対移動可能に取り付けられている前カバーと、
上記マイクロホンケースに対する上記前カバーの相対移動で作動し上記マイクロホンユニットの出力信号をオン、オフするスイッチと、
上記前カバーと上記マイクロホンケースとの間に介在している導電性クッション材と、
を備えているマイクロホン。
【請求項2】
上記前カバーは、上記導電性クッション材の弾性力に抗して押圧されることにより上記マイクロホンケースに対し相対移動可能である請求項1記載のマイクロホン。
【請求項3】
上記前カバーと上記導電性クッション材との間に導電リングが介在している請求項1または2記載のマイクロホン。
【請求項4】
上記導電リングと上記スイッチは、上記導電リングの移動によって上記スイッチが作動するように位置関係が設定されている請求項3記載のマイクロホン。
【請求項5】
上記出力信号のオン、オフによって動作が切り替わる発光素子を有する請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項6】
上記前カバーの外周に沿って円弧状に形成されたライトリングが、上記発光素子に重ねて配置されている請求項5記載のマイクロホン。
【請求項7】
上記ライトリングは、円弧の一部が切除されてC字状に形成され、上記切除された部分に上記スイッチが配置されている請求項6記載のマイクロホン。
【請求項8】
上記マイクロホンケースは一端側にフランジを有し、上記フランジに上記導電性クッション材および上記発光素子が配置されている請求項乃至7のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項9】
上記前カバーは金属メッシュで製作されていて、上記金属メッシュに押圧操作板が固着されている請求項1乃至8のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項10】
上記マイクロホンケースおよび上記前カバーは導電性の素材からなり、上記導電性クッション材を介して上記マイクロホンケースおよび上記前カバーが導通し、上記マイクロホンケースと上記導電性クッション材および上記前カバーで上記マイクロホンユニットを電磁シールドしている請求項1乃至9のいずれかに記載のマイクロホン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、会議場や教室などにおいてテーブルや机などに設置する会議用マイクロホンのように、電気音響変換した音声信号をオン・オフするスイッチを備えたマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
会議場や教室などにおいて、テーブルや机などの天板に、目立たないように設置して使用するマイクロホンをバウンダリーマイクロホンと称している。バウンダリーマイクロホンには、全体が扁平で上記天板上に載置して使用する形式のものと、マイクロホンの大半を上記天板に埋め込み、収音部のみを天板上に露呈させた埋め込み型がある。
【0003】
バウンダリーマイクロホンは、会議場や教室などにおいて複数の出席者に対応することができるように複数設置され、発言する人に対応しているバウンダリーマイクロホンのみを選択してその出力信号をオンにするようになっている。また、会議システム用のグースネック型マイクロホンには、発言中であるか否かを視覚的に表示するために、発光部をマイクロホンケースに設けたものがある。上記発光部を、出力信号がオンのマイクロホンは例えば緑色に発光させ、その他のマイクロホンは例えば赤色に発光させる、というように、発光色で出力信号のオン、オフを区別するものである。
【0004】
天板状に載置して使用する扁平形のバウンダリーマイクロホンの従来例として特許文献1記載の発明がある。特許文献1記載のバウンダリーマイクロホンは、マイクロホンユニットを組み込んだ扁平状のベースと、ベースの底部に配置された台座と、マイクロホンユニットの出力信号をオン、オフする感圧スイッチを備えたものである。上記感圧スイッチは、上記ベースと台座との間で押圧されるように少なくとも一つ配置され、バウンダリーマイクロホン本体を押すとマイクロホンが全体として沈み、上記スイッチを作動させることができる。
【0005】
特許文献1には、マイクロホンユニットの出力信号を感圧スイッチでオン、オフすることが記載されているが、バウンダリーマイクロホンがオンかオフかを表示することに関しては記載がない。
【0006】
次に、埋め込み型バウンダリーマイクロホンの従来例について説明する。図7において、円筒形状のマイクロホンケース101の上端部にはクッション材113の介在のもとにマイクロホンユニット102が取り付けられている。マイクロホンケース101の下端部にはマイクロホンコネクタ115が取り付けられている。マイクロホンケース101の上端はフランジ111になっていて、フランジ111に埋め込まれるようにして前カバー105が取り付けられている。前カバー105は、音波が通り抜けるように金属メッシュからなっていてボウル状に成形され、前カバー105の開口端が上記フランジ111に固着されている。前カバー105はマイクロホンユニット102を囲んでいる。
【0007】
バウンダリーマイクロホンの大半をなすマイクロホンケース101は、テーブルなどの天板に埋め込まれ、マイクロホンケース101のフランジ111が上記天板上に載り、天板に固定される。天板上には前カバー105が露呈し、前カバー105を通った音波がマイクロホンユニット102に入って電気音響変換される。マイクロホンケース101内には、マイクロホン回路を組み込んだ回路基板114が固定されている。この従来例はマイクロホンユニット102の出力信号をオン、オフするスイッチを備えておらず、オン、オフの表示に関しても記載がない。図7に示す従来例とほぼ同じ構成のバウンダリーマイクロホンが特許文献2に記載されている。
【0008】
図7および特許文献2に記載されているような埋め込み型バウンダリーマイクロホンにおいて、出力信号をオン、オフするスイッチを付加するとともに、オン、オフの表示を行うことは不可能ではない。例えば、マイクロホンケースのフランジの一部を外周側に拡大し、この拡大部分にオン、オフの切り換え操作スイッチを設けることが考えられる。また、上記操作スイッチの切り換え操作によって発光色が切り替わるLEDなどの発光素子をマイクロホンケースに組み込むことが考えられる。
【0009】
上記のように、埋め込み型バウンダリーマイクロホンに出力信号をオン、オフするスイッチを付加し、さらには、発光色が切り替わる発光素子をマイクロホンケースに組み込むと、以下のような問題が生じる。すなわち、切り替え操作スイッチを付加するために、マイクロホンケースの一部を外周側に拡大するという発想では、付加する操作スイッチの占める空間およびマイクロホンケースの占める空間が増大し、バウンダリーマイクロホンが大型化する。
【0010】
近年のバウンダリーマイクロホンに求められる技術的課題として、電磁波に対する耐性の向上がある。近年のように携帯電話が普及すると、携帯電話がバウンダリーマイクロホンの直近に置かれ、また、バウンダリーマイクロホンの直近で携帯電話が使用されるケースが頻繁に生じる。バウンダリーマイクロホンが携帯電話から放射される電磁波に晒されている状況が日常的に生じており、電磁波がマイクロホンユニット内に進入しないように、シールド効果を高める工夫が求められている。
【0011】
以上、従来のバウンダリーマイクロホンの概要とその技術的課題について説明したが、上記技術的課題はバウンダリーマイクロホンに限らず、あらゆる形式のマイクロホンにも共通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−278988号公報
【特許文献2】特許第4638853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、信号出力のオン、オフを切り替えるスイッチを備えながら大型化することを回避することができるマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るマイクロホンは、
マイクロホンケースと、
上記マイクロホンケースの一端側に取り付けられているマイクロホンユニットと、
上記マイクロホンケースの一端側に上記マイクロホンユニットを覆いかつ上記マイクロホンケースに対し相対移動可能に取り付けられている前カバーと、
上記マイクロホンケースに対する上記前カバーの相対移動で作動し上記マイクロホンユニットの出力信号をオン、オフするスイッチと、
上記前カバーと上記マイクロホンケースとの間に介在している導電性クッション材と、
を備えていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
マイクロホンケースに対し前カバーを相対移動可能として、前カバーにスイッチ操作部材としての役目を持たせたため、スイッチを備えたマイクロホンの大型化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るマイクロホンの実施例を示す側面断面図である。
図2】上記実施例の正面図である。
図3】上記実施例のスイッチ動作態様を示す側面断面図である。
図4】上記実施例中のライトリングを示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は(a)中のA−A線に沿う断面図である。
図5】上記実施例中のライトリングと発光素子と回路基板を拡大して示す正面図である。
図6】上記実施例中のライトリングと発光素子と回路基板を拡大して示す平面図である。
図7】従来のバウンダリーマイクロホンの例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るマイクロホンの実施例について図面を参照しながら説明する。図示の実施例はバウンダリーマイクロホンの実施例であるが、本発明に係るマイクロホンはバウンダリーマイクロホンに限らず、あらゆる形式のマイクロホンに適用することができる。
【実施例】
【0018】
図1図2において、マイクロホンケース1の上端部には、マイクロホンケース1の内周に固着されたクッション材13の介在のもとにマイクロホンユニット2が取り付けられている。マイクロホンユニット2の電気音響変換方式は限定されないが、図示の実施例ではコンデンサマイクロホンユニットを使用している。マイクロホンケース1の下端部にはマイクロホンコネクタ15が取り付けられている。マイクロホンケース1は導電性の素材で製作されている。
【0019】
円筒形状のマイクロホンケース1の上端にはフランジ11が一体に形成されている。上記フランジ11の上面には、フランジ11の内周寄りの位置にリング状の導電性クッション材8がフランジ11の内周に沿って配置されている。導電性クッション材8は、クッション性と導電性を併せ持った素材からなり、本実施例においては、導電フォーム(例えば、セーレン株式会社製、Sui−78−5030T)を用いた。
【0020】
導電性クッション材8の上面には、導電リング9が配置され、導電リング9の上には前カバー5の下端が接している。前カバー5は金属メッシュをボウル状に成形したもので、ボウルを伏せた姿勢で配置されている。したがって、前カバー5の下端が開口端になっていて、前カバー5の上記開口端に上記導電リング9が固着されている。導電リング9と導電性クッション材8は互いに固着してもよいし、導電性クッション材8の上に導電リング9が載っているだけでもよい。前カバー5と導電性クッション材8との間に導電リング9が介在し、前カバー5と導電リング9と導電性クッション材8とマイクロホンケース1は電気的に導通している。
【0021】
前カバー5は、マイクロホンユニット2を、マイクロホンユニット2との間に適宜の空間をおいて囲んでいる。前カバー5は、音波を通す構造になっていて、例えば金属メッシュを素材としている。導電性クッション材8は前カバー5とマイクロホンケース1との間に介在し、弾性力によって前カバー5をマイクロホンケース1から離間させる向きに付勢している。前カバー5は、導電性クッション材8の弾性力に抗して押圧されることにより、マイクロホンケース1に対し相対移動可能な構造になっている。
【0022】
マイクロホンケース1のフランジ11の上面には、導電性クッション材8の外側に、かつ、導電性クッション材8の外周に隣接してリング状の回路基板3が固着されている。回路基板3には発光素子が実装されている。回路基板3の上には、上記発光素子を挟んでライトリング4が配置されている。
【0023】
図4乃至図6に示すように、ライトリング4は、前カバー5の外周に沿う円弧状に形成され、円弧の一部が切断されて平面から見た形がC字状になっている。実施例では、ライトリング4として、アクリル樹脂による一体成形品を用いた。C字状のライトリング4の両端下部は切除されて庇状の切除面41が形成されている。ライトリング4の底面は、両端部から一定の距離まで平坦底面44になっていて、切除面41は平坦底面44と平行に形成されている。切除面41は鏡面仕上げされている。
【0024】
ライトリング4の平坦底面44が回路基板3の上面に密着して配置されている。回路基板3には、ライトリング4の両端部の各切除面41に対応する位置にそれぞれ2個の発光素子31,32が発光面を上に向けて実装されている。本実施例では、発光素子31として緑色光を発光するLED、発光素子32として赤色光を発光するLEDを用いた。
【0025】
ライトリング4の両端部の上面、したがって、切除面41および発光素子31,32の発光面に対向する面は、約45度の傾斜面42になっていて、各傾斜面42も鏡面仕上げされている。各傾斜面42は、発光素子31,32から放射される光をライトリング4の内方に向かって反射させる反射面になっている。各傾斜面42には、例えば反射シールを貼り付けるとよい。
【0026】
ライトリング4の縦断面の上部は図4(d)に示すように半円状になっていて、この半円状の上面43はブラスト処理によって荒らされて光拡散面となっている。ライトリング4の底面もブラスト処理によって荒らされて光拡散面となっている。
【0027】
発光素子31,32から放射される光は、ライトリング4の両端部の切除面41からライトリング4内に導かれ、各傾斜面42でライトリング4の内方に向かって反射さる。この反射光は、光拡散面であるライトリング4の上面43あるいは下面で乱反射しながらライトリング4内を進行し、ライトリング4全体が発光素子31,32の発光色によって明るくなる。発光素子31が発光すればライトリング4の上面43全体が緑色に光り、発光素子32が発光すればライトリング4の上面43全体が赤色に光る。
【0028】
ライトリング4の底面は、両端部からある程度の距離までは前述のように平坦底面44になっているが、そこから遠ざかるにしたがってライトリング4の厚みが薄くなるように、緩やかな逆V字状を描く傾斜面45になっている。発光素子31,32から遠ざかるにしたがって到達する光量が低下する。そこで、ライトリング4の底面を傾斜面45とし、発光素子31,32から遠ざかるにしたがってライトリング4の厚みを薄くして光を集め、ライトリング4から放射される光量のばらつきをなくしている。
【0029】
マイクロホンがオンのときは発光素子31を点灯させてライトリング4を緑色に光らせ、音声信号出力がオフのときは発光素子32を点灯させてライトリング4を赤色に光らせる。こうして、マイクロホンの動作状態を表示することができる。発光素子の数は任意である。発光素子が点灯しているときはマイクロホンがオン、発光素子が消灯しているときはマイクロホンオフというように、発光素子は最低1個あれば動作状態を表示することができる。
【0030】
図1に示すように、前記導電リング9は、その一部が半径方向外側に向かって形成された突出部91を有している。マイクロホンケース1のフランジ11には突出部91の下方においてスイッチ7が配置され、スイッチ7の操作ボタンが上記突出部91の下面に近接している。導電リング9とスイッチ7は、導電リング9の突出部91の移動によってスイッチ7が作動するように位置関係が設定されている。
【0031】
スイッチ7が作動するたびに発光素子31,32が交互に切り替えられて発光色が赤色と緑色に切り替わり、ライトリング4から放射される光の色も発光素子の発光色と同じ色に切り替わる。あるいは、スイッチ7の作動によって発光素子が点灯と消灯に切り替わるようにしてもよい。要するに、スイッチ7の作動によってマイクロホンの出力信号がオン、オフすると、発光素子の動作が切り替わるように構成されている。
【0032】
マイクロホンケース1のフランジ11には、フランジ11を外周側から覆うサイドカバー6が被せられている。サイドカバー6は、フランジ11の外周に嵌る円筒形状の部分とこれに続く円錐形状の部分を有し、円錐形状の部分の上端内周縁はライトリング4の上端部外周に沿っている。サイドカバー6の上記上端内周縁と前カバー5の外周との間からライトリング4の上端部が露呈している。
【0033】
サイドカバー6は、平面形状がC字状のライトリング4の前記切断部に進入してこの切断部を覆う補完部16を一体に有している。サイドカバー6の補完部16は、サイドカバー6の上記円錐形状の一部が内方に向かって突出して形成されており、周方向には円弧状で、上下面は平坦面になっている。上記補完部16の下面に前記導電リング9の突出部91の上面が当たり、導電性クッション材8の反発力による導電リング9および前カバー5の上方への移動を規制している。
【0034】
バウンダリーマイクロホンの大半をなすマイクロホンケース1は、テーブルなどの天板に埋め込まれる。マイクロホンケース1のフランジ11は緩衝材12を介在させて上記天板上に載せられ、天板に固定される。上記天板上には前カバー5、サイドカバー6、ライトリング4が露呈する。前カバー5を通り抜けた音波がマイクロホンユニット2に入って電気音響変換される。ライトリング4の光る色を見ることにより、そのマイクロホンが動作中であるか否か、すなわち音声信号の出力動作中であるかまたは待機中であるかを判別することができる。マイクロホンケース1内には、マイクロホン回路を組み込んだ回路基板14が固定されている。
【0035】
以上の説明からわかるように、スイッチ7の切り替えは前カバー5の押圧操作で行い、スイッチ7の切り替えにより、マイクロホンユニット2で電気音響変換される音声信号の出力をオン、オフするようになっている。マイクロホンの前カバー5は一般的には金属メッシュからなり、従来、前カバー5をスイッチ操作部材として利用する発想はなかった。本発明の上記実施例によれば、金属メッシュからなる前カバー5をスイッチ操作部材として利用している。そこで、図2に破線で示すように、前カバー5の前面に押圧操作板18を貼り付けておけば、前カバー5を直接操作することに対する抵抗感を軽減することができる。押圧操作板18に例えば「Push」というような文字を表記するとなおよい。
【0036】
図1に示す態様は、前カバー5が押されない通常の状態を示す。この状態では、導電性クッション材8の反発力により導電リング9および前カバー5が押し上げられ、スイッチ7は非作動状態にある。
【0037】
導電性クッション材8の反発力に抗して前カバー5を押し下げると、図3に示すように、前カバー5と実質一体の導電リング9の突出部91がスイッチ7の操作ボタンを押し、スイッチ7を作動させる。回路基板14に組み込まれているマイクロホン回路は、スイッチ7を作動させると、マイクロホンをオン状態に切り替えるとともにこの状態を維持し、マイクロホンユニット2で電気音響変換された音声信号を出力する。また、発光素子31を発光させて、発光色を例えば緑色に切り替え、そのマイクロホンがオンであることを表示する。上記スイッチ7をもう1度作動させると、上記マイクロホン回路はマイクロホンをオフ状態に切り替え、音声信号の出力を遮断する。また、発光素子32を発光させて、発光色を赤色に切り替え、そのマイクロホンがオフであることを表示する。
【0038】
以上のように、前カバー5を押してスイッチ7を作動させるごとにマイクロホンの音声出力がオンとオフに交互に切り替わる。音声出力のオン、オフに対応して発光素子31,32が交互に点灯し、発光素子31または発光素子32の発光色と同じ色の光がライトリング4から放射される。ライトリング4の発光色によってマイクロホンの作動、非作動を判別することができる。
【0039】
以上説明した実施例によれば、マイクロホンが備えている前カバー5に、音声出力をオン、オフするスイッチ7の操作部材を兼ねさせたため、スイッチ操作部材を新たに設ける必要がなく、かつ、マイクロホンの大型化を回避することができる。
【0040】
前カバー5、導電性クッション材8、マイクロホンケース1は導電性素材で製作され、これらの部材は電気的に導通し、マイクロホンユニット2の周囲を囲んでいる。したがって、前カバー5、導電性クッション材8、マイクロホンケース1は、マイクロホンユニット2を電磁シールドし、電磁波に対するシールド効果を高めている。本実施例に係るマイクロホンの近傍で携帯電話などが使用されても、電磁波を要因とするノイズが音声信号に混入することを防止することができる。
【0041】
図示の実施例では、マイクロホンケース1のフランジ11に回路基板3を配置し、この回路基板3に、導電性クッション材8、発光素子31,32、さらにはスイッチ7が配置されている。このような構成にすることにより、上記各部品の電気的接続を簡単化することができる。
【0042】
本発明に係るマイクロホンの特徴は、前カバーをマイクロホンケースに対し相対移動可能とし、前カバーにスイッチ操作部材を兼ねさせた構成になっていることである。したがって、上記の特徴を備えていれば、図示の実施例のような埋め込み型バウンダリーマイクロホンに限らず、テーブル上に載置して使用する形式のバウンダリーマイクロホンにも適用可能である。また、バウンダリーマイクロホンに限らず、手持ち型マイクロホンを含むあらゆる形式のマイクロホンに適用可能である。そのほか、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術思想を逸脱しない範囲で任意に設計変更可能である。
【0043】
図示の実施例におけるスイッチ7は、押すことによって切り替わり、押し込みを解除することによって復帰するプッシュスイッチである。このプッシュスイッチを押すことによって切り替わった状態を回路的に保持し、もう1回押すと上記保持が解除されるように構成した自己保持回路が設けられている。あるいは、1回押すと切り替わってその状態が維持され、もう1回押すと復帰してその状態が維持される機構を持ったプッシュ・プッシュスイッチであってもよい。この場合、上記自己保持回路は不要である。
【符号の説明】
【0044】
1 マイクロホンケース
2 マイクロホンユニット
3 回路基板
4 ライトリング
5 前カバー
6 サイドカバー
7 スイッチ
8 導電性クッション材
9 導電リング
11 フランジ
12 緩衝材
15 コネクタ
18 押圧操作板
31 発光素子
32 発光素子
41 傾斜面
42 発光面
43 緩傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7