(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明インキを蓄えるインキ壺と、前記インキ壺内の透明インキを引き出す壺ローラと、前記壺ローラに対接する振りローラと、前記壺ローラ又は前記振りローラに対接する着けローラと、前記着けローラに対接する版胴と、前記版胴に対接すると共に被転写体を支持して搬送する第一の支持胴とを有して、被転写体の一方面に透明インキをコーティングする第一のコーティングユニットと、
前記第一のコーティングユニットの被転写体の搬送方向下流側に配設されて被転写体の他方面に接触するように被転写体を支持して搬送する第二の支持胴と、前記第二の支持胴に対接するコータ胴と、前記コータ胴へニスを供給するニス供給手段とを有して、被転写体の一方面にニスをコーティングする第二のコーティングユニットと
を備え、
前記第一のコーティングユニットの前記版胴が、前記第一の支持胴の軸心位置よりも下方で当該第一の支持胴に対接するものであり、
前記第二のコーティングユニットの前記コータ胴が、前記第二の支持胴の軸心位置よりも下方で当該第二の支持胴に対接するものである
ことを特徴とするコーティング機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載されているコーティング装置においては、上述したスポットコーティング及び全面コーティングにより、スポットコーティングされた部分と他の部分とで視覚的に差異を生じるコーティングが可能になると共に、触感を与えるコーティング、すなわち、スポットコーティングされた部分と他の部分との指で触ったときの触感に差を生じさせることが可能になり、視覚効果だけでなく、さらに付加価値の高いコーティングを提供することができる。例えば、目の不自由な人への情報伝達に利用する等、適用範囲を拡大することができ、市場を広げることができる。
【0005】
ところで、このような触感を与えるコーティングを確実に行うためには、スポットコーティングを厚盛りで行う、すなわち、コーティング用液体を厚い層でスポットコーティングする必要がある。しかしながら、前記特許文献1に記載されているような従来の装置では、粘度の低いラッカしか利用することができないため、触感を十分に与え得るような厚い層のスポットコーティングを施すことが難しくなっていた。
【0006】
さらに、前記特許文献1に記載されているコーティング装置は、コーティング装置の操作作業や清掃作業や部品の交換作業やメンテナンス等の各種作業を上方から行うために作業者がステップを昇降しなければならず、特に、大型部品や重量部品等を交換するときには作業者に大きな負担を強いるものであった。
【0007】
このような問題は、シートにコーティングを施す場合に限らず、ウエブ等を始めとする各種の被転写体にコーティングを施す場合であれば、上述した場合と同様にして生じ得ることであった。
【0008】
このようなことから、本発明は、被転写体に対して厚い層でスポットコーティングすることができると共に、メンテナンス等の各種作業を容易に行うことができるコーティング機及びこれを使用するコーティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための、本発明に係るコーティング機は、透明インキを蓄えるインキ壺と、前記インキ壺内の透明インキを引き出す壺ローラと、前記壺ローラに対接する振りローラと、前記壺ローラ又は前記振りローラに対接する着けローラと、前記着けローラに対接する版胴と、前記版胴に対接すると共に被転写体を支持して搬送する第一の支持胴とを有して、被転写体の一方面に透明インキをコーティングする第一のコーティングユニットと、前記第一のコーティングユニットの被転写体の搬送方向下流側に配設されて被転写体の他方面に接触するように被転写体を支持して搬送する第二の支持胴と、前記第二の支持胴に対接するコータ胴と、前記コータ胴へニスを供給するニス供給手段とを有して、被転写体の一方面にニスをコーティングする第二のコーティングユニットとを備え、前記第一のコーティングユニットの前記版胴が、前記第一の支持胴の軸心位置よりも下方で当該第一の支持胴に対接するものであり、前記第二のコーティングユニットの前記コータ胴が、前記第二の支持胴の軸心位置よりも下方で当該第二の支持胴に対接するものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るコーティング機は、上述したコーティング機において、被転写体がシートであり、前記第一のコーティングユニットの前記第一の支持胴が、シートを保持して搬送する第一の圧胴であり、前記第二のコーティングユニットの前記第二の支持胴が、シートを保持して搬送する第二の圧胴であると共に、前記第一のコーティングユニットの前記第一の圧胴のシート搬送方向上流側に配設されて当該第一の圧胴へシートを搬送する上流部シート搬送手段と、前記第一のコーティングユニットの前記第一の圧胴のシート搬送方向下流側と前記第二のコーティングユニットの前記第二の圧胴のシート搬送方向上流側との間に配設されて当該第一の圧胴からのシートを当該第二の圧胴へ搬送する中間部シート搬送手段と、前記第二のコーティングユニットの前記第二の圧胴のシート搬送方向下流側に配設されて当該第二の圧胴からのシートを搬送する下流部シート搬送手段とを備え、前記第一のコーティングユニットの前記版胴が、前記第一の圧胴の、前記上流部シート搬送手段からシートを受け取る受取位置と、当該第一の圧胴の、前記中間部シート搬送手段へシートを受け渡す受渡位置との間で、当該第一の圧胴に対接するものであり、前記第二のコーティングユニットの前記コータ胴が、前記第二の圧胴の、前記中間部シート搬送手段からシートを受け取る受取位置と、当該第二の圧胴の、前記下流部シート搬送搬送手段へシートを受け渡す受渡位置との間で、当該第二の圧胴に対接するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るコーティング機は、上述したコーティング機において、前記下流部シート搬送手段が、前記第二のコーティングユニットの前記第二の圧胴からのシートを受け取る受取位置と当該第二の圧胴から離反する離反位置との間を周回走行できるように掛け渡されて当該受取位置から当該離反位置へ向かって上側を走行すると共に当該離反位置から当該受取位置へ向かって下側を走行するように配向されたエンドレスチェーンと、前記エンドレスチェーンの走行に伴って移動するように当該エンドレスチェーンに取り付けられて前記第二のコーティングユニットの前記第二の圧胴からのシートを受け取って保持する爪竿とを備え、前記エンドレスチェーンの上側を走行移動する前記爪竿に保持されたシートの一方面のニスを乾燥させるニス乾燥手段と、前記エンドレスチェーンよりも下方に配設されて前記爪竿から解放されたシートが積載されるシート積載手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るコーティング機は、上述したコーティング機において、前記シート積載手段が、前記エンドレスチェーンの走行方向に沿って複数並設されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るコーティング機は、上述したコーティング機において、前記第二のコーティングユニットの前記ニス供給手段が、前記コータ胴に対接するアニロックスローラと、前記アニロックスローラにニスを供給するチャンバとを備えていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るコーティング機は、上述したコーティング機において、前記第二のコーティングユニットの前記ニス供給手段が、ニスを溜める液溜と、前記コータ胴に対接する着けローラと、前記着けローラに対接する調量ローラと、前記調量ローラに対接して前記液溜の内部のニスを引き出す元ローラとを備えていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るコーティング方法は、上述したコーティング機を使用するコーティング方法であって、記第一のコーティングユニットの前記第一の支持胴上の被転写体の一方面の一部のみに対して、前記インキ壺内から前記壺ローラで引き出された透明インキを、前記振りローラと前記着けローラと前記版胴とだけを介してスポットコーティングした後に、前記第二のコーティングユニットの前記第二の支持胴に支持されている被転写体の一方面に対して、スポットコーティングされた透明インキを覆うようにニスをコーティングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るコーティング機によれば、第一のコーティングユニットのインキ壺内から壺ローラで引き出された高粘度な透明インキを、振りローラと着けローラと版胴とだけを介して被転写体にコーティングすることから、インキ壺内から被転写体に至るまでの透明インキの送出経路、すなわち、ローラ間での転写回数を必要最小限に抑えて、壺ローラから被転写体にコーティングされるまでの透明インキの膜厚の減少を必要最小限に抑えることができるので、被転写体に対して透明インキの厚さを厚くしてスポットコーティングすることが容易にでき、被転写体に触感を十分に与えるコーティングを容易に施すことができると共に、第二のコーティングユニットがコータ胴で被転写体の一方面にニスをコーティングすることから、被転写体にスポットコーティングされた透明インキの層をニスの層で覆うことができ、透明インキの厚盛りの層が被転写体から脱落してしまうことを防止できる。
【0017】
さらに、第一のコーティングユニットの版胴が、第一の支持胴の軸心位置よりも下方で第一の支持胴に対接すると共に、第二のコーティングユニットのコータ胴が、第二の支持胴の軸心位置よりも下方で第二の支持胴に対接することから、版胴やコータ胴を始めとして、インキ壺や壺ローラや振りローラや着けローラやニス供給手段等を前記支持胴の軸心位置よりも下方へ位置させることができるので、操作作業や清掃作業や部品の交換作業やメンテナンス等の各種作業を下方側(設置床側)から行うことができ、作業の容易化を図って作業者の負担を軽減することができる。
【0018】
このため、本発明に係るコーティング方法によれば、第一のコーティングユニットで被転写体の一方面の一部のみに透明インキを厚盛りでスポットコーティングすることにより、被転写体に光沢等の視覚効果を与えることが容易にできると共に、被転写体に触感を与えることも容易にでき、例えば、目の不自由な人が紙幣の種類を識別するためのマークやドットへの利用等、適用範囲を拡大して市場を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るコーティング機の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0021】
〈第一番目の実施形態〉
本発明に係るコーティング機の第一番目の実施形態を
図1〜4に基づいて説明する。
【0022】
図1に示すように、給紙台111上の被転写体であるシート1を一枚ずつ送給するシート供給ユニットである給紙装置110のフィーダボード112の先端側には、シート1を保持して搬送する渡胴120aが配設されており、当該渡胴120aは、スイング装置113を介して上記フィーダボード112からのシート1を一枚ずつ受け取ることができるようになっている。前記渡胴120aには、シート1を保持して搬送する渡胴120bが対接している。前記渡胴120bには、第一のコーティングユニット120の第一の支持胴である第一の圧胴121が対接している。
【0023】
前記第一の圧胴121の、前記渡胴120bとの対接位置、すなわち、前記渡胴120bからのシート1の受取位置よりも回転方向下流側(シート1の搬送方向下流側)には、外周面に刷版(コータ版)を装着した版胴122が当該第一の圧胴121の軸心位置よりも下方で対接している。前記版胴122には、透明インキを当該版胴122に供給する着けローラ123が対接している。前記着けローラ123には、インキ壺126内から高粘度な透明インキを引き出す壺ローラ125が対接している。前記壺ローラ125の、前記着けローラ123との対接位置よりも回転方向上流側には、軸方向に沿って往復移動可能な振りローラ124が対接している。上記インキ壺126は、前記特許文献2に記載されているような
図2〜4に示す構造をなしている。
【0024】
図2において、10は壷キー支持台14の前端側の上端部に設けた溝11に、前記壺ローラ125の軸線方向に延在するように取り付けられた保持バーであって、当該壺ローラ125の胴長と略同じ長さに形成されている。この保持バー10には、
図3に示すように大径孔12とこれと連通する小径孔13とが前後方向に貫通するように形成されており、これら大径孔12と小径孔13とは、後述する複数のインキ壷キー16に対応して前記壺ローラ125の軸線方向に複数対設けられている。
【0025】
15は細長い略円柱状で保持バー10と同じ長さに形成された支点ピンである。16は角柱状に形成されたインキ壷キーであって、前記壺ローラ125の周面に近接するように当該壺ローラ125の軸線方向に複数設けられており、これら複数のインキ壷キー16の全体の幅方向の長さは、上記壺ローラ125の胴長と同じ長さに形成されている。このインキ壷キー16には、上記した保持バー10の小径孔13と同じ径に形成された貫通孔17が設けられており、この貫通孔17の一方の開口縁には、
図3に示すように略半球状に形成された凹部17aが設けられている。
【0026】
20は保持バー10の小径孔13とインキ壷キー16の貫通孔17とに遊挿された壷キー開き用ピンであって、一端部に頭部20aが設けられ、他端部にインキ壷キー16の凹部17aに係合する略半球状に形成された膨出部20bが設けられている。21は壷キー開き用ピン20の頭部20aと、保持バー10の大径部12の底部12aとの間に圧縮状態で介装された皿ばねである。この皿ばね21の弾発力によって、インキ壷キー16は支点ピン15を介して保持バー10に揺動自在となるように弾持される。この状態で、壷キー開き用ピン20は、皿ばね21の弾発力によって、インキ壷キー16を壷ローラ125の周面から離間させる方向、すなわち支点ピン15を回動中心としてインキ壷キー16を図中時計方向に付勢している。
【0027】
図2において、22は壷キー支持台14の上面に固定され、インキ壷キー16の上面と共にインキ壷の底面を形成する底板である。24は側面視で三角形に形成されたインキせきであって、壷キー支持台14の幅方向の両端部(一方は図示を省略)に互いに対向するように立設されている。これらインキせき24、底板22、インキ壷キー16と壺ローラ125の周面とで囲まれたインキ壷126内に、透明インキが蓄えられている。
【0028】
壷キー支持台14の下部には、
図2に示すように背面側に開口を有する凹部27が壷キー支持台14の両端部間に延在するように設けられている。この凹部27と連通され壷キー支持台14の前端部を貫通する貫通孔28が上記した複数のインキ壷キー16と対応して複数設けられている。29は凹部27に収納され複数のインキ壷キー16と対応して複数設けられたモータであって、凹部27の開口縁に取り付けられた支持板30に支持されている。
【0029】
このモータ29の出力軸には、
図4に示すようにモータギア31が軸着されており、このモータギア31には伝達ギア32が噛合している。33は支持板30に取り付けられたねじ棒支持ブロックであって、中央部にねじ孔33aが設けられている。34はインキ壷キー16に対応して設けられた複数の壷キー開閉用ねじ棒であって、中央部に設けたねじ部34aがねじ棒支持ブロック33のねじ部33aに螺合している。この壷キー開閉用ねじ棒34の支持板30から突出した一端部には、伝達ギア32に噛合するギア35が軸着されている。また、この壷キー開閉用ねじ棒34の他端部には押圧子36が設けられており、この押圧子36は、
図2に示すように壷キー支持台14の貫通孔28に嵌挿され、先端がインキ壷キー16の下端部に当接している。
【0030】
このような構成において、モータ29を一方向に駆動することにより、モータ29の出力軸の回転がモータギア31から伝達ギア32を介してギア35に伝達され、ギア35が
図2において時計方向に回転する。このギア35の時計方向の回転によって、ねじ棒支持ブロック33のねじ孔33aにねじ部34aが螺合している壷キー開閉用ねじ棒34が、
図3中、矢印D方向に移動するため、押圧子36が貫通孔28から前進する。この押圧子36の前進によって、インキ壷キー16が支点ピン15を揺動支点として
図3中、実線で示すように皿ばね21の弾発力に抗して反時計方向に揺動するため、壺ローラ125の周面とインキ壷キー16の角部16aとの間の隙間、すなわち、壺ローラ125の周面と底板22との間の開口が狭くなり、インキ壷126からの透明インキの引き出し量を少なくするように調整される。
【0031】
一方、モータ29を一方向と反対方向の他方向に駆動することにより、モータ29の出力軸の回転がモータギア31から伝達ギア32を介してギア35に伝達され、ギア35が
図2において反時計方向に回転する。このギア35の反時計方向の回転によって、ねじ棒支持ブロック33のねじ孔33aにねじ部34aが螺合している壷キー開閉用ねじ棒34が、
図4中、矢印E方向に移動するため、押圧子36が貫通孔28内に後退する。この押圧子36の後退によって、インキ壷キー16が支点ピン15を揺動支点として
図3中、二点鎖線で示すように皿ばね21の弾発力によって時計方向に揺動するため、壺ローラ125の周面とインキ壷キー16の角部16aとの間の隙間、すなわち、壺ローラ125の周面と底板22との間の開口が拡がり、インキ壷126からの透明インキの引き出し量を多くするように調整される。
【0032】
図1に示すように、前記第一のコーティングユニット120の前記第一の圧胴121の、前記版胴122との対接位置よりも回転方向下流側(シート1の搬送方向下流側)と前記渡胴120bとの対接位置よりも回転方向上流側(シート1の搬送方向上流側)との間には、シート1を保持して搬送する渡胴130aが対接している。前記第一の圧胴121の、前記版胴122との対接位置よりも回転方向下流側(シート1の移動方向下流側)と前記渡胴130aとの対接位置、すなわち、前記渡胴130aへのシート1の受渡位置よりも回転方向上流側(シート1の搬送方向上流側)との間には、前記版胴122によってシート1にスポットコーティングされたコーティング面(一方面)の透明インキを乾燥(硬化)させる透明インキ乾燥手段である第一の乾燥器141が当該圧胴121に対向するようにして配設されている。
【0033】
前記渡胴130aには、第二のコーティングユニット130の第二の支持胴である第二の圧胴131が対接している。前記第二の圧胴131の、前記渡胴130aとの対接位置、すなわち、前記渡胴130aからのシート1の受取位置よりも回転方向下流側(シート1の搬送方向下流側)には、外周面にゴム製のブランケットを巻き付けたコータ胴132が当該第二の圧胴131の軸心位置よりも下方で対接している。前記コータ胴132には、外周面に凹形のセルを複数形成されたアニロックスローラ133が対接している。前記アニロックスローラ133の外周面には、当該アニロックスローラ133の前記セルにニスを供給するチャンバ134が当接している。
【0034】
前記第二のコーティングユニット130の前記第二の圧胴131の、前記コータ胴132との対接位置よりも回転方向下流側(シート1の搬送方向下流側)には、シート排出ユニットである排紙装置150の排紙胴151が対接している。前記排紙胴151には、図示しないスプロケットが同軸をなして設けられている。前記スプロケットには、エンドレスチェーンである排紙チェーン153が巻き掛けられており、当該排紙チェーン153は、スプロケット152にも巻き掛けられている。前記排紙チェーン153には、前記排紙胴151を介して前記第二の圧胴131からのシート1を受け取って保持する爪竿153aが当該排紙チェーン153の走行方向に沿って所定の間隔ごとに複数取り付けられている。
【0035】
つまり、前記排紙チェーン153は、前記排紙胴151の前記第二の圧胴131との対接位置、すなわち、前記第二の圧胴131からのシート1を受け取る受取位置と、前記スプロケット152の位置、すなわち、上記第二の圧胴131から離反する離反位置との水平方向での間を周回走行できるように掛け渡され、上記受取位置から上記離反位置へ向かって上側を走行すると共に上記離反位置から上記受取位置へ向かって下側を走行するように配向されることにより、前記爪竿153を上記受取位置から上記離反位置へ向かって上側で走行移動させると共に、上記離反位置から上記受取位置へ向かって下側で走行移動させることができるようになっているのである。
【0036】
前記排紙チェーン153の下方には、前記爪竿153aから解放されたシート1を積載するシート積載手段である排紙台154A〜154Cが当該排紙チェーン153の走行方向に沿って複数(本実施形態では3つ)並設されている。前記排紙胴151に同軸をなして設けられた上記スプロケットと上記スプロケット152との間、すなわち、前記排紙チェーン153の走行する上側と下側との間には、前記爪竿153aに保持されたシート1の全面に前記第二のコーティングユニット130でコーティングされたコーティング面(一方面)のニスを乾燥(硬化)させるニス乾燥手段である第二の乾燥器142が配設されている。
【0037】
なお、本実施形態においては、前記渡胴120a,120b等により、上流部シート搬送手段を構成し、前記渡胴130a等により、中間部シート搬送手段を構成し、前記排紙胴151、前記スプロケット152、前記排紙チェーン153等により、下流部シート搬送手段を構成し、前記アニロックスローラ133、前記チャンバ134等により、ニス供給手段を構成している。
【0038】
このような本実施形態に係るコーティング機100の作動を次に説明する。
【0039】
前記給紙装置110から前記給紙台111上のシート1を一枚ずつ送給すると、当該シート1は、前記フィーダボード112から前記スイング装置113によって前記渡胴120aを介して前記第一のコーティングユニット120の前記第一の圧胴121に受け渡されて一方面を外側に向けるようにして保持されて搬送されながら前記版胴122との間を通過すると共に、前記インキ壺126内から前記壺ローラ125で引き出された透明インキが、当該壺ローラ125上において前記振りローラ124で軸方向にムラなく引き伸ばされてから前記着けローラ123に着けられて上記版胴122の前記刷版(コータ版)に供給されることにより、当該刷版(コータ版)の絵柄に対応した当該シート1の一方面の所定の箇所に透明インキがスポットコーティングされた後、前記第一の乾燥器141で乾燥(硬化)される。
【0040】
次に、シート1は、前記第一のコーティングユニット120の前記第一の圧胴121から前記渡胴130aを介して前記第二のコーティングユニット130の前記第二の圧胴131に他方面を接触させるように受け渡されて一方面を外側に向けるように保持されて搬送されながら、前記ドクタチャンバ134内から前記アニロックスローラ133に供給されたニスを前記コータ胴132で一方面の全体にわたって、すなわち、一方面にスポットコーティングされた透明インキが覆われるように、さらにコーティングされる。
【0041】
続いて、シート1は、前記第二のコーティングユニット130の前記第二の圧胴131から前記排紙装置150の前記排紙胴151を介して前記排紙チェーン153の前記爪竿153aに受け渡され、当該排紙チェーン153の上側を移動するように搬送されながら、前記第二の乾燥器142によって、前記第二のコーティングユニット130で一方面の全体にわたって、すなわち、一方面にスポットコーティングされた透明インキを覆うようにさらにコーティングされたニスを乾燥(硬化)された後、当該排紙チェーン153の下側を折り返して移動するように搬送され、前記排紙台154A〜154C上で前記爪竿153aが解放されることにより、当該排紙台154A〜154C上に排紙されて積載される。
【0042】
なお、前記第二の乾燥器142は、ニスを乾燥(硬化)させるだけでなく、透明インキをさらに乾燥(硬化)させるようにしたものであってもよい。
【0043】
つまり、本実施形態に係るコーティング機100では、前記第一のコーティングユニット120の前記インキ壺126内から前記壺ローラ125で引き出した高粘度な透明インキを、前記振りローラ124と前記着けローラ123と前記版胴122とだけを介してシート1の一方面の一部のみにスポットコーティングするようにしたのである。
【0044】
このため、本実施形態に係るコーティング機100においては、前記インキ壺126内からシート1に至るまでの透明インキの送出経路、すなわち、ローラ間での転写回数を必要最小限に抑えて、前記壺ローラ125からシート1にスポットコーティングされるまでの透明インキの膜厚の減少を必要最小限に抑えることができるので、シート1に対して透明インキを厚い層でスポットコーティングすることができ、シート1に触感を十分に与えるコーティングを容易に施すことができる。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、シート1に光沢等の視覚効果を与えることが容易にできると共に、シート1に触感を与えることも容易にでき、例えば、目の不自由な人が紙幣の種類を識別するためのマークやドットへの利用等、適用範囲を拡大して市場を広げることができる。
【0046】
また、シート1の一方面にスポットコーティングされた透明インキの層を前記第二のコーティングユニット130の前記コータ胴132によってニスの層で覆うようにコーティングすることができるので、透明インキの厚盛りの層がシート1から脱落してしまうことを防止できる。
【0047】
また、前記第一のコーティングユニット120の前記版胴122、前記着けローラ123、前記振りローラ124、前記壺ローラ125、前記インキ壺126を前記第一の圧胴121の軸心位置よりも下方に位置させると共に、前記第二のコーティングユニット130の前記コータ胴132、前記アニロックスローラ133、前記チャンバ134を前記第二の圧胴131の軸心位置よりも下方に位置させたことから、当該版胴122、当該着けローラ123、当該振りローラ124、当該壺ローラ125、当該インキ壺126、当該コータ胴132、当該アニロックスローラ133、当該チャンバ134に対する操作作業や清掃作業や部品の交換作業やメンテナンス等の各種作業を下方側(設置床側)から行うことができ、作業の容易化を図って作業者の負担を軽減することができると共に、前記圧胴121,131や前記渡胴130aと設置床との間の空間が大きくなり、当該圧胴121,131や当該渡胴130aの下方に十分な作業空間を確保することができ、シート1やシート1の破片の回収等の作業を容易に行うことができる。
【0048】
また、前記第一のコーティングユニット120の前記インキ壺126が、モータ29の作動により、前記壺ローラ125の周面と底板22との間の開口の大きさを調整して、透明インキの引き出し量を調整する透明インキ引出量調整手段を有しているので、シート1の一方面の所定の箇所にスポットコーティングする透明インキの厚さの調整を行うことが容易にできる。
【0049】
また、前記排紙装置150の前記排紙チェーン153が、前記受取位置から前記離反位置へ向かって上側を走行すると共に前記離反位置から前記受取位置へ向かって折り返して下側を走行するように配向されることにより、前記爪竿153を上記受取位置から上記離反位置へ向かって上側で走行移動させると共に、上記離反位置から上記受取位置へ向かって折り返して下側で走行移動させることから、前記爪竿153aに保持されたシート1を上側で搬送しているときに、前記第二のコーティングユニット130でシート1にコーティングされたニスを前記第二の乾燥器142によって乾燥(硬化)させた後、折り返して下側で搬送し、前記排紙台154A〜154C上で前記爪竿153aを解放して当該排紙台154A〜154C上にシート1を積載することができるので、当該排紙チェーン153の下方の走行方向全長にわたって複数の排紙台154A〜154Cを設置することができ、設置スペースを有効に利用することができる(省スペース化)。
【0050】
〈第二番目の実施形態〉
本発明に係るコーティング機の第二番目の実施形態を
図5に基づいて説明する。なお、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0051】
図5に示すように、前記版胴122には、透明インキを当該版胴122に供給する着けローラ223が対接している。前記着けローラ223には、軸方向に沿って往復移動可能な振りローラ224が対接している。前記振りローラ224には、インキ壺126内から高粘度な透明インキを引き出す壺ローラ125が対接している。
【0052】
また、前記コータ胴132には、着けローラ233が対接している。前記着けローラ233には、調量ローラ234が対接している。前記調量ローラ234には、元ローラ235が対接している。前記元ローラ235は、ニスを溜める液溜であるニス舟236の内部に位置しており、当該ニス舟236内のニスを引き出すことができるようになっている。
【0053】
つまり、本実施形態に係るコーティング機200の第一のコーティングユニット220は、前記振りローラ224が、前記壺ローラ125だけでなく前記着けローラ233に対接すると共に、当該着けローラ233が、前記壺ローラ125に対して上記振りローラ224を介するようにし、第二のコーティングユニット230は、前述した実施形態に係るコーティング機100の前記第二のコーティングユニット130における前記アニロックスローラ133及び前記チャンバ134に代えて、前記着けローラ233、前記調量ローラ234、前記元ローラ235、前記ニス舟236等によってコータ胴用液体供給手段を構成するようにしたものなのである。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、前述した実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができる。
【0055】
〈他の実施形態〉
なお、透明インキが、例えば、ニスよりも表面張力の小さい撥液性を有しているものであると、透明インキとニスとの表面張力の差により、透明インキによるスポットコーティングが、ニスをはじいて、ニスによるコーティングの、透明インキによるコーティングに重なる部分だけが微細な凹凸となる一方、ニスによるコーティングの、透明インキによるコーティングに重ならない部分が平滑になる。
【0056】
このため、ニスによるコーティングは、透明インキによるコーティングと重なる部分が粗面になって、「ざらざら」した触感になると共に、その他の部分が平滑面になって、「つるつる」した触感になるので、当該触感の違いによって、シート1の識別力をさらに高めることができる。
【0057】
さらに、ニスによるコーティングは、透明インキによるコーティングと重なる部分が艶消し表面になると共に、その他の部分が光沢表面になるので、さらなる光沢差を利用したデザインを施すことができ、より付加価値の高いコーティングを施すことができる。
【0058】
また、前述した実施形態においては、前記第二のコーティングユニット130,230の前記コータ胴132にゴム製のブランケットを巻き付けることにより、シート1の一方面にスポットコーティングされた透明インキを覆うようにシート1の一方面の全体にわたってニスをコーティングするようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記第二のコーティングユニット130,230の前記コータ胴132に凸版を巻き付けることにより、シート1の一方面にスポットコーティングされた透明インキを覆うようにシート1の一方面のスポットコーティングの周辺のみにニスをコーティングするようにすることも可能である。
【0059】
また、前述した実施形態においては、前記第一のコーティングユニット120及び前記第二のコーティングユニット130を備えたコーティング機100及び前記第一のコーティングユニット220及び第二のコーティングユニット230を備えたコーティング機200の場合について説明したが、本発明はこれに限らず、他の実施形態として、例えば、前記第一のコーティングユニット120及び前記第二のコーティングユニット230を備えたコーティング機や、前記第一のコーティングユニット220及び前記第二のコーティングユニット130を備えたコーティング機であっても、前述した実施形態に係るコーティング機100,200の場合と同様な作用効果を得ることができる。
【0060】
また、前述した実施形態においては、シート1に対してコーティングを施す場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、帯状のウエブに対してコーティングを施す場合であっても、前述した実施形態の場合と同様な作用効果を得ることができる。