特許第6016263号(P6016263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016263混合気分配構造及びそれを備えた袖火式濃淡燃焼バーナ、並びに混合気分配方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016263
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】混合気分配構造及びそれを備えた袖火式濃淡燃焼バーナ、並びに混合気分配方法
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/08 20060101AFI20161013BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   F23D14/08 H
   F23D14/08 C
   F23C99/00 329
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-202324(P2012-202324)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-55756(P2014-55756A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】野崎 裕典
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2690447(JP,B2)
【文献】 特開2002−139205(JP,A)
【文献】 実開昭54−136644(JP,U)
【文献】 特開2004−301444(JP,A)
【文献】 特開2001−056107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/08
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バーナの火炎口である主炎口の左右に第2バーナの火炎口である袖炎口が配設され、前記第1バーナにエアリッチな混合気を、前記第2バーナにガスリッチな混合気を供給し、前記主炎口及び前記両袖炎口にて濃淡燃焼を行わせしめる袖火式濃淡燃焼バーナに於いて、前記第2バーナに供給される混合気を左右の前記袖炎口へ分配する混合気分配構造であって、
左右対称に形成され、下流側がそれぞれ左右の前記袖炎口に連通する一対の分配管部と、
入口側に前記第2バーナに供給される混合気が供給される吸入口が形成され、出口側が左右の前記分配管部の上流側入口に接続された管状の導入管部と、を備え、
前記導入管部には、流通する混合気流の流束を、該導入管部の管中心軸に垂直な少なくとも一軸に対する流束幅が狭まるように収斂させる管形状の狭隘部と、前記狭隘部の出口側に接続された拡開管部とが設けられ、
前記狭隘部は、管状に形成された収斂管からなり、該収斂管は、前記分配管部の対称面に対し面対称な形状に形成され、且つ該対称面の法線方向の軸に対する幅が、前記導入管部の入口側から出口側に向かって漸次縮小する形状に形成されており、
前記拡開管部は、前記対称面の法線方向の軸に対する幅が、前記狭隘部から湾曲して前記導入管部の出口側に向かって拡開する形状に形成されており、
左右の前記分配管部の上流側入口は、前記狭隘部において混合気流の流束幅が狭められる幅軸方向を法線方向とし且つ該狭隘部の管中心軸を含む平面を対称面として、該対称面に対して面対称に相合され、且つ該狭隘部の下流側出口に対向して配置されており、
前記分配管部の上流側入口は、分配壁を挟んでその左右両側に形成されており、
前記分配管部の上流側入口の管内面と、前記導入管部の前記拡開管部とは離隔しており、
前記導入管部の出口に対向する前記分配壁の上流側入口端には、左右の前記分配管部が互いに連通するように切れ込みが形成されていることを特徴とする混合気分配構造。
【請求項2】
第1バーナの火炎口である主炎口の左右に第2バーナの火炎口である袖炎口が配設され、前記第1バーナにエアリッチな混合気を、前記第2バーナにガスリッチな混合気を供給し、前記主炎口及び前記両袖炎口にて濃淡燃焼を行わせしめる袖火式濃淡燃焼バーナであって、
前記第2バーナに供給される混合気を左右の前記袖炎口へ分配する、請求項1に記載の混合気分配構造を備えたことを特徴とする袖火式濃淡燃焼バーナ。
【請求項3】
第1バーナの火炎口である主炎口の左右に第2バーナの火炎口である袖炎口が配設され、前記第1バーナにエアリッチな混合気を、前記第2バーナにガスリッチな混合気を供給し、前記主炎口及び袖炎口にて濃淡燃焼を行わせしめる袖火式濃淡燃焼バーナに於いて、前記第2バーナに供給される混合気を左右の前記袖炎口へ分配する混合気分配方法であって、
左右の前記袖炎口に連通する一対の分配管部を左右対称に形成し、前記分配管部の上流側入口は分配壁を挟んでその左右両側となるよう形成し、
入口側に前記第2バーナに供給される混合気が供給される吸入口を有し、出口側が左右の前記分配管部の上流側入口に接続されており、前記分配管部の対称面に対し面対称な形状に形成され且つ該対称面の法線方向の軸に対する幅が、前記導入管部の入口側から出口側に向かって漸次縮小する収斂管と、前記収斂管の出口側に接続され、前記対称面の法線方向の軸に対する幅が、前記収斂管の出口から湾曲して出口側に向かって拡開する拡開管部とを備えた管状の導入管部を設け、
前記分配管部の上流側入口の管内面と、前記導入管部の前記拡開管部とは離隔させ、且つ前記導入管部の出口と前記分配管部の上流側入口の前記分配壁とを離隔して配設し、
前記導入管部に供給された前記第2バーナに供給される混合気の気流の流束を、流路中心軸を含む対称面に対し面対称に形成された前記収斂管により一旦収斂させた後、前記拡開管部を通して膨張させ、
前記拡開管部の出口に対向し且つ前記収斂管の対称面に対して対称に、離隔して対接して配置された一対の前記分配管部の上流側入口に向かって、前記混合気の気流を前記拡開管部の出口から開放することにより、前記両分配管部入口に前記混合気の気流を分配流入させ、
前記両分配管部入口に流入する混合気を、該分配管部を通して左右の前記袖炎口に供給することを特徴とする混合気分配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1バーナ火炎口(主炎口)の左右に第2バーナ火炎口(袖炎口)を対称に配設し、第1バーナにエアリッチな混合気、第2バーナにガスリッチな混合気を供給し、第1及び第2バーナの火炎口にて濃淡燃焼を行う袖火式濃淡燃焼バーナに関し、特に、左右の第2バーナに供給する混合気を左右均等に分配供給するための混合気分配供給技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の袖火式濃淡燃焼バーナとして、例えば、特許文献1,2に記載の技術が公知である。袖火式濃淡燃焼バーナは、特許文献1の図1図4及び特許文献2の図1図4に示されているように、中央に配された主炎口(第1バーナ火炎口)においてエアリッチ(又はガスリッチ)な混合気を燃焼させ、主炎口の左右両袖に隣接して配された袖炎口(第2バーナ火炎口)においてガスリッチ(又はエアリッチ)な混合気を燃焼させることにより、不完全燃焼を抑えてNOx発生の抑制を図るガスバーナである。通常、中央の主炎口とその両袖の袖炎口の火炎口組は、前後方向に複数個縦列して配される。
【0003】
尚、本明細書において「ガスリッチな混合気」とは、理論空燃比に対して燃料の含有率が大きい燃料・空気混合気をいい、「エアリッチな混合気」とは、理論空燃比に対して空気の含有率が大きい燃料・空気混合気をいう。例えば、メタン(CH)燃料の場合、空気中の酸素比率を20%とすれば、理論空燃比Rは体積比でR=(空気体積)/(燃料体積)=10となる。従って、R<10の混合気がガスリッチな混合気、R>10の混合気がエアリッチな混合気である。また、「空気比」とは、理論空燃比Rに対する実際の空燃比Rの比をいい、空気比AR=R/R=(送入空気量)/(燃焼に必要な空気量)と定義される。通常の袖火式濃淡燃焼バーナでは、ガスリッチな混合気の空気比はAR=0.4〜0.7程度、エアリッチな混合気の空気比はAR>1.7程度に設定されている。
【0004】
図10は、特許文献1に記載の袖火式濃淡燃焼バーナの斜視図である。燃焼用の燃料ガスは、燃料ガス供給管101,102から供給される。燃料ガス供給管101,102は上下に水平に並べて配設されている。燃料ガス供給管101には等間隔で複数の上部ノズル103が設けられ、燃料ガス供給管102には、上部ノズル103と水平方向の位置を同じくして、複数の下部ノズル104が設けられている。上下1組のノズル103,104の組のそれぞれに対向して、バーナユニット105(袖火式濃淡燃焼バーナ)が縦列して配設されている。尚、ノズル103,104の組とバーナユニット105との間には、バーナユニット105への供給空気量を調節するためのダンパ106が配設されている。ダンパ106は、其々のノズル103,104に対向する位置に、ノズル103,104の先端外径よりも大きめの絞り穴107,108が其々貫設されている。燃料ガスに混合される空気は、この絞り穴107,108を通してバーナユニット105へ供給される。
【0005】
其々のバーナユニット105は、プレート状であり、プレス加工された左右面対称な2枚1組の板金2組で構成されている。中央の2枚の板金109,110を相合したユニットを主バーナ111と呼び、外側の2枚の板金をカバー112,113と呼ぶ。カバー112,113は、主バーナ111の外側から合着され、バーナユニット105が構成される。
【0006】
板金109,110及びカバー112,113の平面視外形は、大きい四角形の左側側辺に、上辺を合わせてもう一つの小さい四角形を合体したL字形状の凹六角形に形成されている。板金109,110は、上辺中央から中央部乃至左辺下部に亘って膨出部が形成されている(特許文献1の図2(イ)参照)。この膨出部で形成される管路が、エアリッチな混合気が流通するマニホールド(以下「淡気マニホールド」と呼ぶ。)となっている。また、板金109,110を相合した主バーナ111の上辺には、この膨出部によって開口が形成されており、この開口が主バーナ111の火炎口である主炎口114となっている。また、主バーナ111の左辺下部にも、この膨出部によって主炎口114に連通する開口が形成されており、この開口がエアリッチな混合気を送入する淡気吸入口117となっている。
【0007】
一方、カバー112,113にも、上辺中央から中央部乃至左辺下部に亘って膨出部が形成されている(特許文献1の図2(ロ)参照)。この膨出部で形成される管路が、ガスリッチな混合気が流通するマニホールド(以下「濃気マニホールド」という。)となっている。また、主バーナ111の両側にカバー112,113を合着して形成される袖火バーナ115の上辺は、この膨出部によって主バーナ111の両袖に位置する開口が形成されており、この開口が袖火バーナ115の火炎口である袖炎口116,116となっている。また、板金109,110を相合した主バーナ111の左辺の淡気吸入口117上方から中央付近にかけて、板金109,110に形成された第2の膨出部によって、主炎口114とは連通しない管路である濃気導入管118が形成されている。この濃気導入管118は、一端が主バーナ111の左辺側に開口し、この開口が濃気吸入口119となっている。また、他端は主バーナ111の左右両側面に向けて開口している。そして、この開口120,120は、濃気導入管118と連通し、濃気吸入口119から両袖の袖炎口116,116にかけての混合気流路が形成されている。濃気導入管118の入口付近には、上下方向に括れたスロート121が形成されており、燃料ガスと空気とがよく混合するように設計されている。
【0008】
燃料ガス供給管102から下部ノズル104へ供給される燃料ガスは、下部ノズル104から噴射され、ダンパ106の絞り穴108を通して淡気吸入口117へ噴射送入される。このとき噴射される燃料ガスは絞り穴108周辺の空気を巻き込んでエアリッチな混合気となり、主バーナ111の淡気マニホールドに流入する。そして、淡気マニホールドから主炎口114へと流通し、主炎口114から噴射され燃焼される。
【0009】
一方、燃料ガス供給管101から上部ノズル103へ供給される燃料ガスは、上部ノズル103から噴射され、ダンパ106の絞り穴107を通して濃気吸入口119へ噴射送入される。このとき噴射される燃料ガスは絞り穴107周辺の空気を巻き込んでガスリッチな混合気となり、濃気導入管118に流入する。ガスリッチな混合気は、濃気導入管118の開口120,120から両袖の濃気マニホールドに流入し、袖炎口116,116から噴射され燃焼される。
【0010】
主炎口114から噴射されるエアリッチな混合気は、燃料ガスが不足しているため、単独では燃焼を持続することができないが、両袖の袖炎口116,116から噴射されるガスリッチな混合気の火炎によって常に保炎されることにより、主炎口114でも持続的な燃焼が行われる。また、濃淡火炎の燃焼を行うことにより燃料ガスの不完全燃焼が低減し、NOxの発生量も抑制される。
【0011】
図11(a)は、図10のバーナユニット105をC−C線で切断し燃料ガス供給管101,102の側から見た断面図である。図11(b)は、図11(a)のバーナユニット105の濃気吸入口119近傍のA−A線矢視断面図である。図11(c)は、図11(a)のバーナユニット105の濃気吸入口119近傍のB−B線矢視断面図である。
【0012】
特許文献1の袖火式濃淡燃焼バーナにおいては、図11(b),(c)に示されているように、濃気吸入口119から送入される燃料ガスと空気は、スロート121付近で混合され、濃気導入管118の開口120,120に形成された分配壁122(板金109,110によりプレス形成されている)によって左右の濃気マニホールドに分配され、両袖の袖炎口116,116へと送られるように構成されている。
【0013】
一方、特許文献2では、左右の袖炎口に供給するガスリッチな混合気の流路が左右に完全に分離され独立した形式の袖火式濃淡燃焼バーナが開示されている。図12は、特許文献2に記載の袖火式濃淡燃焼バーナの斜視図である。図12においては、図10との比較のため、図10の構成部分に対応する構成部分には同符号を付している。図12の袖火式濃淡燃焼バーナでは、濃気導入管118内の分配壁122が濃気吸入口119まで迫り出しており、バーナユニット105内のガスリッチな混合気の流路は、濃気吸入口119から完全に左右に分離されている。従って、この袖火式濃淡燃焼バーナを使用する場合には、燃料ガスを供給するノズル103,104としては、図13のようなノズルが使用されている。図13において、上下1組のノズル103,104の組はノズルベース123上に縦列して配設されている。各バーナユニット105は、上部ノズル103が濃気吸入口119に対向し、下部ノズル104が淡気吸入口117に対向するように配設される。濃気吸入口119に対向する上部ノズル103からは燃料ガスが噴射され、ノズルの周りの空気を巻き込み濃気吸入口119にガスリッチな混合気が供給され、淡気吸入口117に対向する下部ノズル104からは燃料ガスが噴射され、ノズルの周りの空気を巻き込み淡気吸入口117にエアリッチな混合気が供給される。上部ノズル103には、濃気吸入口119の左右の混合気流路に対応して、左右に2つの燃料ガス噴射口124,124が設けられている。これら左右の燃料ガス噴射口124,124は、それぞれ分配壁122の左右の混合気流路へ、燃料ガスを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−42917号公報
【特許文献2】特開2011−202879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記特許文献2の袖火式濃淡燃焼バーナにおける袖炎口への給気方式では、袖炎口への混合気の流路が左右に完全に分離され独立しているため、必然的に上部ノズル103には、図13のように左右に2つの燃料ガス噴射口124,124を設ける必要がある。一方、バーナユニット105は、図10のように、広面を対向させて複数並べて配設されるため、一つのバーナユニット105の厚みは制限されている。従って、上部ノズル103の大きさはバーナユニット105の厚みによって制限され、それに伴い燃料ガス噴射口124,124の口径も制限される。図13に示したような二穴の上部ノズル103の場合、制限されたノズル先端面に2つの開口を設ける必要があるため、一穴の場合に比べて燃料ガス噴射口の総開口面積は小さくせざるを得ない。従って、特許文献1のような一穴の上部ノズル103を使用する場合に比べ、燃料ガス噴出口124の口径が小さいため加工が難しいなどの問題があった。
【0016】
一方、上記特許文献1の袖火式濃淡燃焼バーナでは、図10のように、袖炎口への供給に一穴の上部ノズル103を使用するため、上述のような問題は生じない。しかしながら、上部ノズル103から供給される混合気を主バーナ111の左右に設けられた濃気マニホールドに均等に分配することが難しいという問題がある。以下この問題について説明する。
【0017】
図14は、図10図11に示した袖火式濃淡燃焼バーナの上部ノズル103から濃気導入管118内の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。図14(a)は図11(b)の断面から見た図、図14(b)は図11(c)の断面から見た図である。計算結果の図においては、薄色になるほど気流速度が速いことを表し、図中の格子点上の白矢印は流れの方向、図中の小点は流線を示すために気流と共に流したトレーサー粒子を表す(他の図においても同じ)。上部ノズル103から噴出された燃料ガスは、真っ直ぐにダンパ106の絞り穴107を通過して濃気吸入口119へ流入する。この際、上部ノズル103と絞り穴107の隙間から周辺の空気を巻き込む。実際にはファン(特許文献1の図4参照)により絞り穴107周辺の空気は加圧され、空気の流入量が多くなるように設定されている。濃気吸入口119へ流入した燃料ガスと空気は濃気導入管118内を直進し分配壁122に突き当たり、左右の濃気マニホールドに分配される。燃料ガスの流れは濃気導入管118内を直進する間に徐々に広がるが、計算上は分配壁122の上流側では燃料ガスと空気の混合はあまり見られない。尚、特許文献1には、スロート121は燃料ガスと空気の混合を促すために設けられていることが記載されているが、計算ではスロート121による燃料ガスと空気の混合の効果はあまり大きくは見られず、燃料ガスと空気の流束は濃気吸入口119から分配壁122までほぼ直進することが観察される。
【0018】
ところで、実際の製品では、図10に示されているとおり、燃料ガス供給管101,102とノズル103,104のユニット、ダンパ106、及び各バーナユニット105は、個別の部品として製造され、金具やボルト等によって組み上げられる。従って、必然的に上部ノズル103と濃気導入管118との位置関係には組み立て誤差によるある程度のばらつきが生じる。図15は、上部ノズル103と濃気導入管118に位置ずれがある場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。図15(a)は図11(c)の断面から見た図、図15(b)は分配壁122を濃気吸入口119に近づけた場合を表す図である。上部ノズル103が分配壁122の中心面からずれた場合、図15に示すように、燃料ガスと空気は左右の濃気マニホールドには均等に分配されず、上部ノズル103が偏倚した側の濃気マニホールドには燃料ガスが多く流入し、その反対側の濃気マニホールドには空気が多く流入する。燃料ガスは濃気導入管118内を流れる間に管の断面内で徐々に広がるため、図15(a)のように濃気吸入口119と分配壁122との距離が長ければ、上部ノズル103の偏倚による燃料ガスの分配量の偏りは生じるものの、その程度は小さくなる。しかし、図15(b)のように濃気吸入口119と分配壁122との距離が短くなると、燃料ガスは管の断面内に十分に広がる前に分配壁122に達するため、上部ノズル103の偏倚による燃料ガスの分配量の偏りが大きくなり、袖炎口116での燃焼にバラツキが生じるという問題が顕在化してくる。そのため、特許文献1の袖火式濃淡燃焼バーナの方式では、濃気吸入口119と分配壁122との距離をある程度長くとる必要があるため、その分その下流にある左右の濃気マニホールドの体積や同じケース内に配設された淡気マニホールドの容積を小さくせざるを得ない。一方、総ての袖炎口116や主炎口114に混合気をできるだけ均等に分配するためには濃気マニホールドや淡気マニホールドの体積は大きいほどよい。逆に、マニホールドの体積が小さいほど各袖炎口116や各主炎口114に供給される混合気の流量の不均一性が大きくなる。従って、濃気マニホールド,淡気マニホールドの大きさと濃気導入管118の長さとの間で設計上の相剋が生じ、設計上の体積配分が難しくなるという問題があった。また、濃気導入管118を長くしても、やはり上部ノズル103の偏倚により燃料ガスの分配量の偏りはある程度生じ、完全に上部ノズル103の取り付け誤差の影響を排除できないという問題があった。
【0019】
そこで、本発明の目的は、上述のような一穴の燃料ガス噴射ノズルを使用する袖火式濃淡燃焼バーナにおいて、燃料ガス噴射ノズルとバーナユニットとの間の位置ずれに影響されることなく主炎口の左右の袖炎口に供給する混合気を左右均等に分配することができ、且つ濃気導入管の長さを短くすることが可能な混合気分配構造及びそれを備えた袖火式濃淡燃焼バーナ並びに混合気分配方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る混合気分配構造の第1の構成は、第1バーナの火炎口である主炎口の左右に第2バーナの火炎口である袖炎口が配設され、前記第1バーナにエアリッチな混合気を、前記第2バーナにガスリッチな混合気を供給し、前記主炎口及び前記両袖炎口にて濃淡燃焼を行わせしめる袖火式濃淡燃焼バーナに於いて、前記第2バーナに供給される混合気を左右の前記袖炎口へ分配する混合気分配構造であって、
左右対称に形成され、下流側がそれぞれ左右の前記袖炎口に連通する一対の分配管部と、
入口側に前記第2バーナに供給される混合気が供給される吸入口が形成され、出口側が左右の前記分配管部の上流側入口に接続された管状の導入管部と、を備え、
前記導入管部には、流通する混合気流の流束を、該導入管部の管中心軸に垂直な少なくとも一軸に対する流束幅が狭まるように収斂させる管形状の狭隘部が設けられ、
左右の前記分配管部の上流側入口は、前記狭隘部において混合気流の流束幅が狭められる幅軸方向を法線方向とし且つ該狭隘部の管中心軸を含む平面を対称面として、該対称面に対して面対称に相合され、且つ該狭隘部の下流側出口に対向して配置されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、外部の燃料ガス噴射ノズルから導入管部の吸入口に噴射供給される燃料ガスの気流は、狭隘部において導入管部の管中心軸に垂直な少なくとも一軸(以下「幅軸」という。)に対する流束幅が狭まるように収斂される。従って、外部の燃料ガス噴射ノズルの噴射軸が導入管部の管中心軸からずれている場合であっても、燃料ガスの流束は、幅軸が狭隘部において管中心軸に収斂され加速される。このとき、同時に燃料ガスとともに吸入口から流入する空気の流束も、狭隘部において管中心軸に収斂され加速され、この収斂によって燃料ガスと空気が混合される。次いで、狭隘部を通過した空気と燃料ガスとの混合気は、導入管部の出口側で開放されるとともに、狭隘部の下流側出口に対向して配置された左右の分配管部の上流側入口に流入する。このとき、分配管部の上流側入口は、狭隘部において混合気流の流束幅が狭められる幅軸方向を法線方向とし且つ該狭隘部の管中心軸を含む平面を対称面として、該対称面に対して面対称に相合されているため、導入管部の出口側に開放された混合気の流束はほぼ均等に二分され、左右の分配管部に分配される。
【0022】
また、本発明においては狭隘部によって混合気を強制的に収束・拡散させるため、特許文献1のように燃料ガスの流束の自然拡散を促すために導入管部を長くする必要がない。従って、全体の容積が制限される袖火式濃淡燃焼バーナのバーナユニット内において、導入管部を短くし、第2バーナの分配管部(及び第1バーナの分配管部)の容積を大きくすることが可能となり、前述したような設計上の相剋の問題を解消することが可能となる。
【0023】
ここで、「エアリッチな混合気」,「ガスリッチな混合気」の定義については、〔背景技術〕の欄で述べた通りである。
【0024】
本発明に係る混合気分配構造の第2の構成は、前記第1の構成において、前記狭隘部は、管状に形成された収斂管を備え、
前記収斂管は、前記分配管部の対称面に対し面対称な形状に形成され、且つ該対称面の法線方向の軸に対する幅が、前記導入管部の入口側から出口側に向かって漸次縮小する形状に形成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、収斂管に流入した燃料ガスと空気は、入口側から出口側に向かって漸次縮小する形状の管路によって、大きく流れが乱されることなく収斂される。従って、流路抵抗が小さく、収斂管における圧力損失を極力小さくすることができる。
【0026】
本発明に係る混合気分配構造の第3の構成は、前記第2の構成において、前記収斂管の出口に接続され、前記導入管部の出口側に向かって拡開する拡開管部を備えたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、収斂管を通過した混合気は、拡開管部によって拡散がより大きく誘導されるため、左右の分配管部の上流側入口によりスムーズに流入させることができる。
【0028】
本発明に係る袖火式濃淡燃焼バーナは、第1バーナの火炎口である主炎口の左右に第2バーナの火炎口である袖炎口が配設され、前記第1バーナにエアリッチな混合気を、前記第2バーナにガスリッチな混合気を供給し、前記主炎口及び前記両袖炎口にて濃淡燃焼を行わせしめる袖火式濃淡燃焼バーナであって、
前記第2バーナに供給される混合気を左右の前記袖炎口へ分配する、前記第1乃至第3の何れか一の構成の混合気分配構造を備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明に係る混合気分配方法は、第1バーナの火炎口である主炎口の左右に第2バーナの火炎口である袖炎口が配設され、前記第1バーナにエアリッチな混合気を、前記第2バーナにガスリッチな混合気を供給し、前記主炎口及び袖炎口にて濃淡燃焼を行わせしめる袖火式濃淡燃焼バーナに於いて、前記第2バーナに供給される混合気を左右の前記袖炎口へ分配する混合気分配方法であって、
導入管部に供給された前記第2バーナに供給される混合気の気流の流束を、流路中心軸を含む対称面に対し面対称に形成された収斂管により一旦収斂させた後、
前記収斂管の出口に対向し且つ前記収斂管の対称面に対して対称に、対接して配置された一対の分配管部の上流側入口に向かって、前記混合気の気流を前記収斂管から開放することにより、前記両分配管部入口に前記混合気の気流を分配流入させ、
前記両分配管部入口に流入する混合気を、該分配管部を通して左右の前記袖炎口に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、外部の燃料ガス噴射ノズルの噴射軸のずれに影響されることなく、混合気の流束を左右の分配管部に均等に二分することが可能であるため、袖火式濃淡燃焼バーナと外部の燃料ガス噴射ノズルとの位置ずれ公差が緩和され、図10のように袖火式濃淡燃焼バーナを並列して組み上げたユニットの製造の歩留まりを向上させることができる。
【0031】
また、導入管部の長さを従来に比べて短くすることができるため、第2バーナの分配管部(及び第1バーナの分配管部)の容積を従来の一穴ノズル方式の袖火式濃淡燃焼バーナよりも大きくすることが可能となり、総ての袖炎口や主炎口に混合気がより均等に分配されるように袖火式濃淡燃焼バーナを設計することが可能となる。これにより、袖火式濃淡燃焼バーナを小さく(短く)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例1に係る袖火式濃淡燃焼バーナのバーナユニットの斜視図である。
図2図1のバーナユニットの側面図である。
図3図1のバーナユニットの分解斜視図である。
図4図3の第1バーナ3の側面図である。
図5図1のバーナユニット1を燃料ガス噴射ノズルの前方に設置した状態を示す図である。(a)はバーナユニット1の側面方向から見た図、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
図6】実施例1に係る袖火式濃淡燃焼バーナの上部ノズル14から導入管部11内の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。(a)上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを小さくした場合、(b)上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを大きくした場合。
図7】上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。(a)上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを小さくした場合、(b)上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを大きくした場合。
図8】上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合において、狭隘部17が無い場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。
図9図7(b)の場合において、燃料ガスの噴射開始から定常状態に至るまでの混合気の流れの変化を表す図である。
図10】特許文献1に記載の袖火式濃淡燃焼バーナの斜視図である。
図11】(a)図10のバーナユニット105をC−C線で切断し燃料ガス供給管101,102の側から見た断面図である。(b)図11(a)のバーナユニット105の濃気吸入口119近傍のA−A線矢視断面図である。(c)図11(a)のバーナユニット105の濃気吸入口119近傍のB−B線矢視断面図である。
図12】特許文献2に記載の袖火式濃淡燃焼バーナの斜視図である。
図13図12の袖火式濃淡燃焼バーナに使用される燃料ガス噴射ノズルを表す斜視図である。
図14図10図11に示した袖火式濃淡燃焼バーナの上部ノズル103から濃気導入管118内の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。(a)図11(b)の断面から見た図である。(b)図11(c)の断面から見た図である。
図15】上部ノズル103と濃気導入管118に位置ずれがある場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。(a)図11(c)の断面から見た図である。(b)分配壁122を濃気吸入口119に近づけた場合を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は、本発明の実施例1に係る袖火式濃淡燃焼バーナのバーナユニットの斜視図である。図2は、図1のバーナユニットの側面図である。図3は、図1のバーナユニットの分解斜視図である。図4は、図3の第1バーナ3の側面図である。
【0035】
袖火式濃淡燃焼バーナのバーナユニット1は、上端面に細長い主炎口2を具備する第1バーナ3と、第1バーナ3の左右両袖に配設され主炎口2の左右両袖に位置する細長い袖炎口4,4を具備する第2バーナ5を備えている。第1バーナ3は、左右対称にプレス加工した1枚の鋼板3aを2つ折りして相合させることにより形成されている。また、第2バーナ5は、左右対称にプレス加工した1枚の鋼板からなるカバー6を、図3に示したように、折り曲げて第1バーナ3の外側に被着させることによって形成されている。
【0036】
本実施例においては、第1バーナ3においてエアリッチな混合気を燃焼させ、第2バーナ5においてガスリッチな混合気を燃焼させる。
【0037】
第1バーナ3の主炎口2には、図1図3に示したように、主炎口2の長手方向に沿って4枚の整流板7が挿着されている。また、主炎口2はバーナユニット1の前部側辺に形成された淡気吸入口8に連通している。淡気吸入口8から主炎口2に繋がる管路が淡気マニホールド9である。
【0038】
一方、第2バーナ5の左右の袖炎口4,4は、バーナユニット1の前部側辺の淡気吸入口8上方に形成された濃気吸入口10に連通している。濃気吸入口10は、図3に示すように、第1バーナ3を形成する鋼板3aの前部中央付近をプレス成形で管状に膨出させることにより形成された導入管部11の入口となっている。導入管部11の出口側は、図3図4に示すように、扇形の出口開口12を鋼板3aに形成することによって、第1バーナ3の左右両側の空間に連通している。また、カバー6には、この導入管部11に対向する部分からカバー6の上辺にかけて、図3に示すような膨出部6aが形成されており、カバー6を第1バーナ3の左右両側面に相合させることにより、この膨出部6aと鋼板3aとの間に形成される空間として濃気マニホールド(分配管部)13,13が形成されている。第1バーナ3の左右に形成された濃気マニホールド13,13は、それぞれ、導入管部11の出口から左右の袖炎口4,4に連通する管路である。この濃気マニホールド13,13は、第1バーナ3の中心面を対称面S(図5(b)参照)として、左右対称に形成されている。
【0039】
以上のように形成されたバーナユニット1は、図10と同様に、互いに広面を対向させた状態でケース内に縦列して配置される(特許文献2の図3参照)。図5は、図1のバーナユニット1を燃料ガス噴射ノズルの前方に設置した状態を示す図である。図5(a)はバーナユニット1の側面方向から見た図、図5(b)は図5(a)のA−A線矢視断面図である。図5において、ノズルベース16上に上下1組に配置された上部ノズル14及び下部ノズル15からは、燃料ガスが噴射される。ノズルベース16は、図13と同様に、上部ノズル14及び下部ノズル15が水平に2列に複数配設されている。尚、図13では、上部ノズル103は二穴ノズル、下部ノズル104は一穴ノズルとされているが、本実施例においては、上部ノズル14,下部ノズル15ともに一穴ノズルが使用されている。
【0040】
図5に示すように、バーナユニット1の濃気吸入口10は上部ノズル14に対向し、淡気吸入口8は下部ノズル15に対向するように配置される。濃気吸入口10と上部ノズル14、及び淡気吸入口8と下部ノズル15との間には、等間隔の隙間が設けられており、周辺の空気が濃気吸入口10,淡気吸入口8へ吸入されやすいように設計されている。
【0041】
導入管部11には、流通する混合気流の流束を、導入管部11の管中心軸xに垂直な軸y(以下「幅軸y」という。)に対する流束幅が、濃気吸入口10から導入管部11の出口に向かうにつれて狭まるように収斂させる管形状の狭隘部17が設けられている。ここで、管中心軸xと幅軸yに垂直な座標軸をzとする(図5(b)参照)。狭隘部17は、図3図4に示したように、第1バーナ3を構成する鋼板3aをプレス成形により膨出させることによって、第1バーナ3と一体に形成されている。
【0042】
左右の濃気マニホールド13,13の上流側入口は、狭隘部17において混合気流の流束幅が狭められる幅軸y方向を法線方向とし且つ狭隘部17の管中心軸xを含む平面(x−z平面)を対称面Sとして、対称面Sに対して面対称に相合され、且つ狭隘部17の下流側出口に対向して配置されている。濃気マニホールド13,13の上流側入口は、扇形の出口開口12を鋼板3aに形成することによって形成されており、この鋼板3aの出口開口12の弧の部分が、混合気流を左右の濃気マニホールド13,13に分配する分配壁21となっている。
【0043】
狭隘部17は、濃気吸入口10から下流に向けて漏斗管状に形成された収斂管18、及び収斂管18の出口に接続され導入管部11の出口側に向かって拡開する拡開管部20から構成されている。ここで、収斂管18の幅軸yに対する幅をw(x)と記す。また、収斂管18の先端の最も幅w(x)の狭い部分を絞り部19と呼び、絞り部19における収斂管18の幅w(x)をwyminとする。また、濃気吸入口10における収斂管18の幅w(x)をwymaxとする。この収斂管18が、濃気マニホールド13,13の対称面Sに対し面対称な形状に形成され、且つ対称面Sの法線方向の幅軸yに対する幅w(x)が、導入管部11の入口側から出口側に向かって漸次縮小する形状に形成されている。
【0044】
ymaxに対するwyminの比を絞り比Rw(=wymin/wymax)と呼ぶ。図5(b)に示した例では、Rw=0.23としている。本発明では、絞り比Rwは、収斂管18を流通する混合気流の流束の幅が、濃気吸入口10から導入管部11の出口に向かうにつれて狭まるように収斂させる程度に設計されていればよい。具体的には、Rw=0.1〜0.4とすることが望ましい。
【0045】
尚、ここでいう「混合気流の流束の幅」は、「収斂管18の幅w(x)」とは異なるものを指すことに注意しておく。分かりやすく説明するため、図14の例を使って説明すると、図14(a)において、z軸方向の混合気流の流束の幅wfz(x)は、z軸方向の管の幅w(x)とは明らかに異なっていることが分かる。また、図14(b)では、y軸(幅軸)方向の混合気流の流束の幅wfy(x)は、y軸方向の管の幅w(x)と略同じ程度となっているが、y軸方向の管の幅w(x)が、濃気吸入口119から分配壁122に亘って略均一であるため、混合気流の流束の幅wfy(x)も濃気吸入口119から分配壁122に亘って略均一となっており、混合気流の流束は収斂されてはいない。
【0046】
以上のように構成された本実施例に係る袖火式濃淡燃焼バーナについて、以下その混合気分配過程について詳しく説明する。
【0047】
図6は、実施例1に係る袖火式濃淡燃焼バーナの上部ノズル14から導入管部11内の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。図6(a)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを小さくした場合、図6(b)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを大きくした場合を表している。尚、図6(b)は、燃料ガスの流れを空気の流れから明確に区別できるようにするために、図6(a)に比べて空気比ARを小さくして計算している。
【0048】
上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aから噴射される燃料ガスは、濃気吸入口10に送入される。この際、濃気吸入口10と上部ノズル14の隙間から周辺の空気も流入し、導入管部11には燃料ガスと空気が流入する。尚、濃気吸入口10近傍の空気は、外部のファン(図示せず)からの送風によって加圧されているため、空気の流入量は加圧された分だけ多くなる。濃気吸入口10に流入した燃料ガスと空気は、収斂管18により絞り部19に向けて流束が収斂されるとともに混合・整流される。そして、絞り部19を通過した混合気は、拡開管部20によって再び開放され、左右(幅軸y方向)に対称に広がる。そして、分配壁21により左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配される。
【0049】
図7は、上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。図6と同様、図7(a)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを小さくした場合、図7(b)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを大きくした場合を表している。空気比ARは、図6の場合と同一条件としている。
【0050】
上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合、収斂管18に流入する燃料ガス及び空気の流れは片側に偏倚している。しかしながら、収斂管18によって絞り部19に向けて流束が収斂されるとともに混合・整流されるため、絞り部19においては混合気の流れは左右対称となり燃料ガスと空気はほぼ完全に混合される。そして、絞り部19を通過した混合気は、拡開管部20によって再び開放され、左右(幅軸y方向)に対称に広がる。そして、分配壁21により左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配される。
【0051】
狭隘部17の効果を検証するため、図7(b)の場合において狭隘部17が無い場合との比較を行った。図8は、上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合において、狭隘部17が無い場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。狭隘部17が無い場合、濃気吸入口10に流入した燃料ガスと空気は、殆ど混合されずに分配壁21に向かって直進する。そのため、上部ノズル14が偏倚した側の濃気マニホールド13には燃料ガスが多く流入し、その反対側の濃気マニホールド13には空気が多く流入することになる。この結果から、確かに狭隘部17によって、燃料ガスの混合と整流・均等分配が為されていることが分かる。
【0052】
図9は、図7(b)の場合において、燃料ガスの噴射開始から定常状態に至るまでの混合気の流れの変化を表す図である。上部ノズル14から燃料ガスの噴射が始まるとともに、燃料ガス噴射口14a付近の圧力が収斂管18により絞り部19に収束されて、絞り部19においても空気流の発生が見られる(図9(a))。次いで、燃料ガスの流頭が収斂管18に流入し始めると、同時に絞り部19から左右の濃気マニホールド13,13に向かう空気流(以下「助走流」という。)が生じる(図9(b))。そして、燃料ガスの流頭が絞り部19を通過するときには(図9(c))、既に、絞り部19から左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配する助走流が形成されており、燃料ガスはこの助走流に導かれて左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配する流れを形成する(図9(d))。このように、狭隘部17によって、燃料ガス流の流頭で生じる渦流が抑えられ、燃料ガスの噴射開始直後から濃気マニホールド13,13には混合気が均等に分配される。
【0053】
以上のように、濃気吸入口10に流入した燃料ガスと空気の流束を、流路中心軸xを含む対称面Sに対し面対称に形成された収斂管18(狭隘部17)により、一旦収斂させた後、収斂管18の出口に対向し且つ収斂管18の対称面Sに対して対称に対接して配置された一対の濃気マニホールド13,13の上流側入口に向かって、混合気の気流を収斂管18から開放することにより、両濃気マニホールド13,13に混合気の気流を分配流入させることで、上部ノズル14と導入管部11に位置ずれの有無によらず常に両濃気マニホールド13,13に混合気の気流を均等に分配することが可能となる。尚、収斂管18は、前述したとおり、鋼板3aのプレス成形により濃気マニホールド13,13の入口部分の内壁(分配壁21周辺の部分)と一体に成型されるため、収斂管18と濃気マニホールド13,13の入口(分配壁21)との位置の誤差は無視できる程度に小さいと考えてよい。
【0054】
また、このように狭隘部17によって混合気の気流を収斂・開放することで混合気の流束を左右均等となるように強制的に整流するため、従来のように導入管部11の長さを長くとる必要はない。従って、導入管部11の長さを従来に比べて短くすることで、第2バーナ5の濃気マニホールド13,13(及び第1バーナ3の淡気マニホールド9)の容積を従来よりも大きくすることが可能となり、総ての袖炎口4や主炎口2に混合気がより均等に分配されるようにバーナユニット1を設計することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 バーナユニット
2 主炎口
3 第1バーナ
3a 鋼板
4 袖炎口
5 第2バーナ
6 カバー
6a 膨出部
7 整流板
8 淡気吸入口
9 淡気マニホールド
10 濃気吸入口
11 導入管部
12 出口開口
13 濃気マニホールド(分配管部)
14 上部ノズル
14a 燃料ガス噴射口
15 下部ノズル
16 ノズルベース
17 狭隘部
18 収斂管
19 絞り部
20 拡開管部
21 分配壁
図1
図2
図3
図4
図5
図10
図11
図12
図13
図6
図7
図8
図9
図14
図15