【実施例1】
【0034】
図1は、本発明の実施例1に係る袖火式濃淡燃焼バーナのバーナユニットの斜視図である。
図2は、
図1のバーナユニットの側面図である。
図3は、
図1のバーナユニットの分解斜視図である。
図4は、
図3の第1バーナ3の側面図である。
【0035】
袖火式濃淡燃焼バーナのバーナユニット1は、上端面に細長い主炎口2を具備する第1バーナ3と、第1バーナ3の左右両袖に配設され主炎口2の左右両袖に位置する細長い袖炎口4,4を具備する第2バーナ5を備えている。第1バーナ3は、左右対称にプレス加工した1枚の鋼板3aを2つ折りして相合させることにより形成されている。また、第2バーナ5は、左右対称にプレス加工した1枚の鋼板からなるカバー6を、
図3に示したように、折り曲げて第1バーナ3の外側に被着させることによって形成されている。
【0036】
本実施例においては、第1バーナ3においてエアリッチな混合気を燃焼させ、第2バーナ5においてガスリッチな混合気を燃焼させる。
【0037】
第1バーナ3の主炎口2には、
図1,
図3に示したように、主炎口2の長手方向に沿って4枚の整流板7が挿着されている。また、主炎口2はバーナユニット1の前部側辺に形成された淡気吸入口8に連通している。淡気吸入口8から主炎口2に繋がる管路が淡気マニホールド9である。
【0038】
一方、第2バーナ5の左右の袖炎口4,4は、バーナユニット1の前部側辺の淡気吸入口8上方に形成された濃気吸入口10に連通している。濃気吸入口10は、
図3に示すように、第1バーナ3を形成する鋼板3aの前部中央付近をプレス成形で管状に膨出させることにより形成された導入管部11の入口となっている。導入管部11の出口側は、
図3,
図4に示すように、扇形の出口開口12を鋼板3aに形成することによって、第1バーナ3の左右両側の空間に連通している。また、カバー6には、この導入管部11に対向する部分からカバー6の上辺にかけて、
図3に示すような膨出部6aが形成されており、カバー6を第1バーナ3の左右両側面に相合させることにより、この膨出部6aと鋼板3aとの間に形成される空間として濃気マニホールド(分配管部)13,13が形成されている。第1バーナ3の左右に形成された濃気マニホールド13,13は、それぞれ、導入管部11の出口から左右の袖炎口4,4に連通する管路である。この濃気マニホールド13,13は、第1バーナ3の中心面を対称面S(
図5(b)参照)として、左右対称に形成されている。
【0039】
以上のように形成されたバーナユニット1は、
図10と同様に、互いに広面を対向させた状態でケース内に縦列して配置される(特許文献2の
図3参照)。
図5は、
図1のバーナユニット1を燃料ガス噴射ノズルの前方に設置した状態を示す図である。
図5(a)はバーナユニット1の側面方向から見た図、
図5(b)は
図5(a)のA−A線矢視断面図である。
図5において、ノズルベース16上に上下1組に配置された上部ノズル14及び下部ノズル15からは、燃料ガスが噴射される。ノズルベース16は、
図13と同様に、上部ノズル14及び下部ノズル15が水平に2列に複数配設されている。尚、
図13では、上部ノズル103は二穴ノズル、下部ノズル104は一穴ノズルとされているが、本実施例においては、上部ノズル14,下部ノズル15ともに一穴ノズルが使用されている。
【0040】
図5に示すように、バーナユニット1の濃気吸入口10は上部ノズル14に対向し、淡気吸入口8は下部ノズル15に対向するように配置される。濃気吸入口10と上部ノズル14、及び淡気吸入口8と下部ノズル15との間には、等間隔の隙間が設けられており、周辺の空気が濃気吸入口10,淡気吸入口8へ吸入されやすいように設計されている。
【0041】
導入管部11には、流通する混合気流の流束を、導入管部11の管中心軸xに垂直な軸y(以下「幅軸y」という。)に対する流束幅が、濃気吸入口10から導入管部11の出口に向かうにつれて狭まるように収斂させる管形状の狭隘部17が設けられている。ここで、管中心軸xと幅軸yに垂直な座標軸をzとする(
図5(b)参照)。狭隘部17は、
図3,
図4に示したように、第1バーナ3を構成する鋼板3aをプレス成形により膨出させることによって、第1バーナ3と一体に形成されている。
【0042】
左右の濃気マニホールド13,13の上流側入口は、狭隘部17において混合気流の流束幅が狭められる幅軸y方向を法線方向とし且つ狭隘部17の管中心軸xを含む平面(x−z平面)を対称面Sとして、対称面Sに対して面対称に相合され、且つ狭隘部17の下流側出口に対向して配置されている。濃気マニホールド13,13の上流側入口は、扇形の出口開口12を鋼板3aに形成することによって形成されており、この鋼板3aの出口開口12の弧の部分が、混合気流を左右の濃気マニホールド13,13に分配する分配壁21となっている。
【0043】
狭隘部17は、濃気吸入口10から下流に向けて漏斗管状に形成された収斂管18、及び収斂管18の出口に接続され導入管部11の出口側に向かって拡開する拡開管部20から構成されている。ここで、収斂管18の幅軸yに対する幅をw
y(x)と記す。また、収斂管18の先端の最も幅w
y(x)の狭い部分を絞り部19と呼び、絞り部19における収斂管18の幅w
y(x)をw
yminとする。また、濃気吸入口10における収斂管18の幅w
y(x)をw
ymaxとする。この収斂管18が、濃気マニホールド13,13の対称面Sに対し面対称な形状に形成され、且つ対称面Sの法線方向の幅軸yに対する幅w
y(x)が、導入管部11の入口側から出口側に向かって漸次縮小する形状に形成されている。
【0044】
w
ymaxに対するw
yminの比を絞り比Rw(=w
ymin/w
ymax)と呼ぶ。
図5(b)に示した例では、Rw=0.23としている。本発明では、絞り比Rwは、収斂管18を流通する混合気流の流束の幅が、濃気吸入口10から導入管部11の出口に向かうにつれて狭まるように収斂させる程度に設計されていればよい。具体的には、Rw=0.1〜0.4とすることが望ましい。
【0045】
尚、ここでいう「混合気流の流束の幅」は、「収斂管18の幅w
y(x)」とは異なるものを指すことに注意しておく。分かりやすく説明するため、
図14の例を使って説明すると、
図14(a)において、z軸方向の混合気流の流束の幅w
fz(x)は、z軸方向の管の幅w
z(x)とは明らかに異なっていることが分かる。また、
図14(b)では、y軸(幅軸)方向の混合気流の流束の幅w
fy(x)は、y軸方向の管の幅w
y(x)と略同じ程度となっているが、y軸方向の管の幅w
y(x)が、濃気吸入口119から分配壁122に亘って略均一であるため、混合気流の流束の幅w
fy(x)も濃気吸入口119から分配壁122に亘って略均一となっており、混合気流の流束は収斂されてはいない。
【0046】
以上のように構成された本実施例に係る袖火式濃淡燃焼バーナについて、以下その混合気分配過程について詳しく説明する。
【0047】
図6は、実施例1に係る袖火式濃淡燃焼バーナの上部ノズル14から導入管部11内の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。
図6(a)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを小さくした場合、
図6(b)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを大きくした場合を表している。尚、
図6(b)は、燃料ガスの流れを空気の流れから明確に区別できるようにするために、
図6(a)に比べて空気比ARを小さくして計算している。
【0048】
上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aから噴射される燃料ガスは、濃気吸入口10に送入される。この際、濃気吸入口10と上部ノズル14の隙間から周辺の空気も流入し、導入管部11には燃料ガスと空気が流入する。尚、濃気吸入口10近傍の空気は、外部のファン(図示せず)からの送風によって加圧されているため、空気の流入量は加圧された分だけ多くなる。濃気吸入口10に流入した燃料ガスと空気は、収斂管18により絞り部19に向けて流束が収斂されるとともに混合・整流される。そして、絞り部19を通過した混合気は、拡開管部20によって再び開放され、左右(幅軸y方向)に対称に広がる。そして、分配壁21により左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配される。
【0049】
図7は、上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。
図6と同様、
図7(a)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを小さくした場合、
図7(b)は、上部ノズル14の燃料ガス噴射口14aを大きくした場合を表している。空気比ARは、
図6の場合と同一条件としている。
【0050】
上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合、収斂管18に流入する燃料ガス及び空気の流れは片側に偏倚している。しかしながら、収斂管18によって絞り部19に向けて流束が収斂されるとともに混合・整流されるため、絞り部19においては混合気の流れは左右対称となり燃料ガスと空気はほぼ完全に混合される。そして、絞り部19を通過した混合気は、拡開管部20によって再び開放され、左右(幅軸y方向)に対称に広がる。そして、分配壁21により左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配される。
【0051】
狭隘部17の効果を検証するため、
図7(b)の場合において狭隘部17が無い場合との比較を行った。
図8は、上部ノズル14と導入管部11に位置ずれがある場合において、狭隘部17が無い場合の燃料ガス及び空気の流れの様子を計算した結果である。狭隘部17が無い場合、濃気吸入口10に流入した燃料ガスと空気は、殆ど混合されずに分配壁21に向かって直進する。そのため、上部ノズル14が偏倚した側の濃気マニホールド13には燃料ガスが多く流入し、その反対側の濃気マニホールド13には空気が多く流入することになる。この結果から、確かに狭隘部17によって、燃料ガスの混合と整流・均等分配が為されていることが分かる。
【0052】
図9は、
図7(b)の場合において、燃料ガスの噴射開始から定常状態に至るまでの混合気の流れの変化を表す図である。上部ノズル14から燃料ガスの噴射が始まるとともに、燃料ガス噴射口14a付近の圧力が収斂管18により絞り部19に収束されて、絞り部19においても空気流の発生が見られる(
図9(a))。次いで、燃料ガスの流頭が収斂管18に流入し始めると、同時に絞り部19から左右の濃気マニホールド13,13に向かう空気流(以下「助走流」という。)が生じる(
図9(b))。そして、燃料ガスの流頭が絞り部19を通過するときには(
図9(c))、既に、絞り部19から左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配する助走流が形成されており、燃料ガスはこの助走流に導かれて左右の濃気マニホールド13,13に均等に分配する流れを形成する(
図9(d))。このように、狭隘部17によって、燃料ガス流の流頭で生じる渦流が抑えられ、燃料ガスの噴射開始直後から濃気マニホールド13,13には混合気が均等に分配される。
【0053】
以上のように、濃気吸入口10に流入した燃料ガスと空気の流束を、流路中心軸xを含む対称面Sに対し面対称に形成された収斂管18(狭隘部17)により、一旦収斂させた後、収斂管18の出口に対向し且つ収斂管18の対称面Sに対して対称に対接して配置された一対の濃気マニホールド13,13の上流側入口に向かって、混合気の気流を収斂管18から開放することにより、両濃気マニホールド13,13に混合気の気流を分配流入させることで、上部ノズル14と導入管部11に位置ずれの有無によらず常に両濃気マニホールド13,13に混合気の気流を均等に分配することが可能となる。尚、収斂管18は、前述したとおり、鋼板3aのプレス成形により濃気マニホールド13,13の入口部分の内壁(分配壁21周辺の部分)と一体に成型されるため、収斂管18と濃気マニホールド13,13の入口(分配壁21)との位置の誤差は無視できる程度に小さいと考えてよい。
【0054】
また、このように狭隘部17によって混合気の気流を収斂・開放することで混合気の流束を左右均等となるように強制的に整流するため、従来のように導入管部11の長さを長くとる必要はない。従って、導入管部11の長さを従来に比べて短くすることで、第2バーナ5の濃気マニホールド13,13(及び第1バーナ3の淡気マニホールド9)の容積を従来よりも大きくすることが可能となり、総ての袖炎口4や主炎口2に混合気がより均等に分配されるようにバーナユニット1を設計することが可能となる。