【文献】
西川 敦彦,高度ヒューマンインタフェースを備えた監視制御システム,日立評論 Vol.77 No.7,日本,日立評論社,1995年 7月 1日,Vol.77 No.7,P.19-24,ISSN 0367-5874
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記情報重畳部は、前記全体領域重畳画像を前記全体領域の輪郭を少なくとも識別可能とするよう生成し、前記作業領域重畳画像を前記作業対象領域の輪郭を少なくとも識別可能にするよう生成することを特徴とする請求項1または2に記載のフィールド作業支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の説明においては、フィールド作業支援の例として以下を想定する。
通信局舎内にタブレット端末のような可搬型端末を持ち込み、その可搬型端末に本発明の装置を搭載し、主にラックにマウントされて収納されている交換機・光配電盤・サーバ等の通信機器に対して、配線・ユニット交換・設定に代表される、フィールドでの作業を支援する。
【0020】
しかしながら、本発明はその他の分野におけるフィールド作業支援についても適用可能であり、特に、作業箇所や順番を間違えることなく正確に且つ迅速に作業を行うと共に、作業が行われた旨の記録を後から容易に参照可能な形として残すことが要求される場合において、本発明は好適である。
【0021】
図1は一実施形態に係るフィールド作業支援措置の機能ブロック図である。フィールド作業支援装置100は、入力部101、撮影部102、記憶部103、検索部104、基準測定部105、情報重畳部106、表示部107、認識部108、照合部109、通知部110、時刻計測部111、映像記録部112及び作業進捗入力部115を備える。
【0022】
なお
図1では、当該各部の間にはやりとりされるデータの流れに対応する矢印が設けられており、上流側(に存在する1つ以上の処理部)で得たデータは全て下流側において利用可能である旨を表している。当該やりとりは本発明の理解の促進のために主要なもののみを表示しており、矢印が存在しない部分でもやりとりが存在することはある。
【0023】
図2は、フィールド作業支援装置100の実装される各種の例を(1)〜(3)として示す図である。(1)に示すように、カメラ付きのタブレット(又はスマートフォン)のような撮影部102(詳細は後述)を一体型として有する形態で提供される場合がある。また(2)に示すように、別途設置した撮影部102が表示部107(詳細は後述)等から離れた場所に設置された形態でもよい。さらに、(3)に示すように、表示部107(詳細は後述)がHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)で提供され、作業者が身に着けて利用する形態でもよい。
【0024】
以下、
図1のフィールド作業支援装置100の各部を説明する。
【0025】
入力部101には、作業対象となる機器の機器情報および当該機器において作業対象となりうる領域を識別するための領域識別情報が入力される。当該入力は、作業者などがマニュアル入力してもよいし、別途存在しているサーバなどからデータを読み込むようにしてもよい。
【0026】
例えば、作業対象となる機器を識別する機器情報としては、ビル名「丸の内第6ビル」、部屋名「12階サーバルーム」、ラック名「H12ラック」、機器名「ND-091982(J)」が入力され、これらに対応する識別子へと変換される。作業対象となりうる領域を識別するための領域識別情報としては、機器の配線差込口、交換・増設・撤去対象となるユニット番号、設定変更の対象となるスイッチ番号等、これらが識別子へと変換され、入力される。
【0027】
さらに、当該機器情報及び領域識別情報の入力の際に、作業手順書に従う各作業内容(作業の際の注意事項なども含む)及び当該各作業の順番も、当該機器情報及び領域識別情報と対応付けられた形で、前述と同様にマニュアル入力又はサーバなどから読み込むことによって、入力される。
【0028】
図3に、当該入力される機器情報及び領域識別情報と作業内容及び順番との例を示す。欄C1は、「工事件名:ハードディスク交換作業」として、当該機器における作業内容全体の見出しとなっている。当該見出しのような付随情報がさらに入力されてもよい。欄C2及びC3に機器情報が示されている。表C4は、「手順」欄によって実施する順番が付与された作業内容を示しており、「対象」欄において各作業対象となる箇所の領域識別情報が「スロットA〜C」等として示され、「作業内容」欄において当該作業対象の各々に対して実施すべき作業内容が、示されている。
【0029】
さらに、「コメント等」の欄として示すように、当該各手順に対応するコメントが入力されてもよい。当該コメントは例えば各手順における注意事項などであり、作業者あるいは管理者によって入力されてもよい。
【0030】
作業進捗入力部115は、入力部101にて上記のように入力された機器に対する作業を開始する旨などの作業進捗に関する情報を、作業者からの入力として受け付ける。当該入力は、
図3に機器「ND-091982(J)」として例示したような、一連の作業内容が割り当てられている各機器において、一連の作業を開始しようとする最初の合図としての情報を少なくとも含む。
【0031】
作業者は実際の機器の存在する場所(フィールド)に出向いて、当該機器を撮影部102で撮影した状態を作ってから、当該開始合図を作業進捗入力部115に入力することにより、フィールド作業支援装置100は当該機器を対象とした一連の支援動作を開始することができる。こうして対象機器がフィールド作業支援装置100に認識された後は、
図3に示すような当該対象機器に対する各手順について、自動で支援動作がなされてもよいし、各手順を開始する旨の入力をさらに、作業者からの入力として作業進捗入力部115において受け付けてもよい。
【0032】
撮影部102はCMOSやCCD等の撮像素子を使った一般的なカメラであり、作業現場で実物の作業対象となる機器が一連の映像として撮影され、撮影画像が一定間隔でフレーム出力される。なお、本発明は基本的には一連の映像を対象として実施されるが、一連の映像としての特徴を利用しない処理については、各時点の撮影画像のみを個別に対象として実施することも可能である。
【0033】
記憶部103には、入力部101で入力される領域識別情報に対応した形で予め準備されている当該機器の図面データが格納されている。機器全体としての幅・高さ・奥行きの寸法を始めとして、当該機器内にある配線差込口、交換・増設・撤去対象となるユニット設置用スロットの配置、設定変更の対象となるスイッチ等の各寸法の詳細が、例えば機器全面音左上頂点を原点とする相対座標データとして、領域識別情報に対応させて格納される。
【0034】
図4に、当該図面データの具体例を示す。機器の一例として上段側[1]に示す「機器ND-091982(J)」にはA〜Cの3つのスロットが設けられると共に、前面中央寄りの場所に1つの2次元コードが貼り付けられることで、4つの対象領域が設定され、それぞれ領域識別情報として与えられている。ここで、xy座標軸を[1]のような所定位置及び方向に予め定めておくことで、領域識別情報に対応する当該機器の図面データは[2]の欄C10〜C15のように与えられる。
【0035】
すなわち、当該所定座標軸のもとで、項目欄C10に示すように左上座標(LTx、LTy)並びに幅W及び高さHを定めることで、図面データが得られる。欄C11に示すように、当該[1]の機器「ND-091982(J)」は、その全体領域の左上座標が(0, 0)であり、当該座標軸の原点及び各方向を定め、幅W=1000,高さH=600(長さの単位は任意)となっている。
【0036】
当該欄C11で与えられる全体領域の中で、欄C12に示すようにスロットAに関する図面データが、左上座標を機器全体に対する相対座標で測定した(750、50)として、また、幅W=180、高さH=500として与えられ、スロットB〜2次元コードに関する図面データも同様に、欄C13〜C15に示すように与えられる。また、欄C16以降に示すように、その他の機器についてもそれぞれ同様に、全体領域を定めたうえで各対象領域が相対的に与えられる。
【0037】
検索部104は、入力部101より受け取った機器情報及び領域識別情報に基づいて、作業進捗入力部115より入力されたユーザ指定の作業対象の機器に対応する作業領域の座標データを、記憶部103から検索する。
【0038】
基準測定部105は撮影部102で得た撮影画像と、検索部104で検索された座標データとの間で位置ずれや大きさの違いを正規化して正確な位置合わせを行うため、撮影画像から基準点を測定する。すなわち、
図4で説明したような作業の対象となる機器の図面データが、撮影画像上の座標としてどう表現されるかを特定するために、撮影画像より基準点を測定する。基準測定部105はさらに、上記位置合わせの際に用いる関係として、当該測定した基準点と撮影画像上の対応座標との変換関係を求める。
【0039】
なお、基準点は機器に対して所定のものを、その撮影画像内から基準測定部105にて測定し抽出する手法と共に予め定めておくものとし、当該基準点及びその測定法は領域識別情報(機器全体の領域の情報でもよい)と対応づけたうえで入力部101で入力されるか、記憶部103に予め図面データと対応付けて記録しておいて検索部104の検索の際に抽出するものとする。
【0040】
基準点を定める手法をいくつか紹介する。
【0041】
図4で例示したような長方形状の機器、例えばラックにマウントされたサーバ等(をある一面から見たもの)は、撮影画像内から機器前面の前面パネルの外枠の位置、すなわち対象領域全体をなす長方形を把握できればよい。当該全体の撮影画像上における座標を把握すれば、図面データを参照し、残りの対象領域(当該機器の交換・増設・撤去対象となるユニット設置用スロットの配置、設定変更の対象となるスイッチ等)の撮影画像上における座標を自動算出できる。
【0042】
従って、第1実施形態では当該長方形の外枠から基準点を定めることができ、この場合、撮影画像より長方形の4頂点を認識できればよい。このためあらかじめ作業対象機器の四隅に、通信機器工事で頻繁に用いられる赤や緑などの所定色特徴を有する峻別テープを貼り、画像処理で赤や緑の当該所定色特徴の領域を認識することで、座標データを正規化するための作業対象機器の基準点が測定できるようになる。なお、赤や緑は比較的軽い処理で認識できるので、当該色の峻別テープを利用すれば、計算負荷を低減する効果がある。
【0043】
例えば、
図5の(1)に示すように、対象機器を囲むように長方形の額縁状に峻別テープを貼った領域R1を色特徴より自動認識して、さらにエッジ検出及び線分検出を施すことで、その内部の4頂点P1〜P4を自動で求めてもよい。あるいは(2)に示すように、頂点P1〜P4の近辺のみにテープ領域R10〜R40を設けておいてもよい。(1)及び(2)の場合において、内部側の4頂点の代わりに外部側の4頂点あるいはその他形成されている所定の頂点を用いてもよい。
【0044】
また、第2実施形態では、撮影画像内から測定する基準点として、機器の管理目途で貼り付けられているQRコード(登録商標)やARマーカ等の2次元バーコードを利用することができる。撮影画像内から2次元バーコードを検索する方法及びその内容を読みとる方法は公知の技術が使える。
【0045】
この場合、撮影画像内から検索された2次元バーコードの位置と大きさから、第1実施形態における4頂点と同様に利用可能な、座標データを正規化するための作業対象機器の基準点が測定できるようになる。例えば、当該コードの4頂点を基準点として予め設定しておけばよい。
【0046】
さらに、2次元バーコードに文字情報によって機器情報を予め埋め込んでおき、当該文字情報を基準測定部105が読みとることで、作業対象となる機器の機器情報が得られるようにしてもよい。また、当該2次元コードより読みとられた機器情報を後述の情報重畳部106を介して表示部107に表示させることにより、作業者は入力部101にて入力した機器の識別情報との同一性を確認することもでき、誤りをより確実に防止できる。ここで、不一致の場合はその旨を明示する情報を表示部107に表示させてもよい。
【0047】
例えば、
図4の例では、第1実施形態を適用すると、赤色などを有することで検出可能な峻別テープから測定された領域の左上座標、幅および高さが、欄C11に示す当該機器「ND-091982(J)」 全体の左上座標、幅および高さの座標系に合うように基準を合わせる。また、
図4の例において第2実施形態を適用して2次元バーコードを使用する場合は、画面内から検出された2次元バーコードの左上座標、幅および高さが、図面データに記載された、欄C15に示す2次元バーコードの左上座標、幅および高さの座標系に合うように基準を合わせる。
【0048】
なお、基準を合わせる際には、図面データ及び画像上の対応位置のそれぞれにおける4点(例えば長方形の4頂点)同士の間の、所定の変換関係を算出すればよい。例えば、概ね正面から撮影するよう予め取り決めてある場合であれば、回転及び拡大縮小の変換関係を算出すればよく、斜めから撮影することも認めてある場合には、透視投影変換の関係を算出すればよい。4点以上同士を用いて変換関係を算出してもよい。各場合に応じた所定の算出法を、予め基準測定部105に設定しておけばよい。
【0049】
なお、上記2次元コードからの機器情報読み取りにおける追加的な実施形態として次がある。すなわち、当該2次元コードより読みとられた機器情報を直接、入力部101にて入力する機器情報として使用することにより、作業者による機器情報のマニュアル入力等の手間を省くようにしてもよい。この場合さらに同様に、当該2次元コードによって、当該機器の領域識別情報等といった作業自体の情報(
図3や
図4の情報)が自動で読みとられ入力部101への入力となるようにしてもよい。この際、情報量が多くコードに埋め込めない場合は、所定のサーバの所在情報を埋め込み、ネットワーク経由で当該サーバから自動で読み込まれるようにしてもよい。
【0050】
情報重畳部106は、基準測定部105の求めた変換関係より座標データの撮影画像上での位置を求めることにより、作業対象機器の全体を撮影画像内において視覚的に区別可能とするための全体領域重畳画像を生成し、また同様にして、作業対象となる領域を当該全体の内部において視覚的に区別可能とするための対象領域重畳画像を生成する。
【0051】
当該各重畳画像は、具体的例を後述するように、枠組などの形で撮影画像に重畳させる画像である。各領域が区別可能となる任意の手法によって、例えば領域の重心等の所定点を識別可能とすることで重畳画像を生成してよいが、少なくとも各領域の輪郭を識別可能とするような重畳画像を生成することが好ましい。
【0052】
表示部107は、情報重畳部106によって当該生成された各重畳画像を、撮影部102より得た撮影画像に重畳して表示する。当該重畳して合成された画像(ナビゲーション表示)によって、作業者は作業対象領域を見たままの直感的な形で把握可能となる。表示部107はまた後述するように、作業の正確さ等をより向上させるための各種の情報も同様に撮影画像に重畳して表示する。
【0053】
図6に、フィールド作業支援に本発明を適用する際の表示部107のナビゲーション表示及びその遷移の一例を示す。以下、
図6を適宜参照して本発明を説明する。
図6では、少なくとも
図4の[2]の欄C10〜C14を識別情報及び図形データとして入力及び検索し、
図3の作業手順(機器名「ND-091982(J)」を対象としたハードディスク交換の作業手順)に従う形でフィールド作業がなされることを想定している。
【0054】
図6の(1)及び(2)は次のような経緯の後の表示の例である。ここで、当該経緯の説明により、特に検索部104,基準測定部105,情報重畳部106の各処理の連携を説明してから、再度、
図1の各部の説明に戻ることとする。
【0055】
まず、作業者の第1ステップとして、作業者がフィールド作業対象となる機器「ND-091982(J)」の前に出向いて、撮影部102に当該機器を撮影させると共に、作業進捗入力部115に当該機器を対象とした作業を開始する旨を入力する。当該入力を受け、検索部104は当該機器の全体領域の情報を検索し、
図3の欄C11に示す図形データを得る。基準測定部105は当該検索結果を用いて当該機器に対応する前記基準点を測定すると共に、当該機器に対応する前記変換関係を求める。情報重畳部106は当該変換関係を用いて、当該機器に対応する全体領域重畳画像を生成する。
【0056】
そして、
図6の(1)におけるフレーム枠F10が、当該機器「ND-091982(J)」に対応して生成された全体領域重畳画像であり、表示部107によって当該機器の撮影画像に重畳して表示されているところを当該(1)は表している。全体領域重畳画像F10は、このような機器を囲むフレーム枠であってもよいし、枠の外部は所定色となす又は所定色で透過させる等のマスク状であってもよい。
【0057】
欄C61に示すように、当該作業対象とする機器「ND-091982(J)」の名称を、表示部107が重畳表示することで、作業者が対象とする機器をより確実に把握することを補助するようにしてもよい。当該名称は、作業進捗入力部115にて当該作業開始の旨の入力を受けたことによって重畳表示されてもよいし、当該機器に
図4の欄C15に示すような付随情報を提供するための2次元コードが予め配置されているのであれば、当該2次元コードを読みとることによって重畳表示されてもよい。
【0058】
[機器誤り通知機能]
2次元コードを読みとる場合は、機器自体を誤っていた場合に誤りをただちに通知することができる。すなわち、作業進捗入力部115で作業者が作業開始の旨を入力した機器と、基準測定部105によって当該2次元コードから読みとられた機器とが異なっていた場合、フィールド作業支援装置100は当該誤りを自動検出してただちに通知することができる。当該誤りの通知も欄C61などを用いて表示部107により可能である。
【0059】
また、作業者の第2ステップとして、当該機器における手順を順次実行する旨を作業進捗入力部115に入力する。最初は、「手順1」が入力され、当該手順1は
図3に示すように「スロットA」を対象として「新規HDD(ハードディスクドライブ)を挿入する」ものである。当該入力を受けると
図4の欄C12の図面データが検索部104に検索され、情報重畳部106が全体領域に対して適用したのと同様の変換を施すことにより、「スロットA」の対象領域重畳画像が生成される。
【0060】
あるいは、当該第2ステップの作業者による「手順1」の開始入力を不要としてもよい。この場合、第1ステップで当該機器を対象として作業開始する旨が入力され、機器の全体領域が認識された後に、上記[機器誤り通知機能]による誤り通知などがない限り自動で当該「手順1」における対象領域重畳画像が生成されるよう予め設定しておいてもよい。
【0061】
図6の(2)に示すフレーム枠F11が、当該「スロットA」に対する対象領域重畳画像であり、表示部107によって当該機器の撮影画像に全体領域重畳画像F10などと共に重畳して表示されているところを当該(2)は表している。この際、当該作業が「手順1」である旨も欄C64に示すように、重畳表示してもよい。
【0062】
当該(2)においてはさらに欄C63に示すように、当該作業における注意事項「静電気除去を行ってから作業開始」、申し送り事項「転倒事故が昨月多発しています」、保守履歴「2012年3月点検時に冷却ファン交換」等の情報も重畳して表示されている。こうして、誤りの少ない正確な作業の促進を図ることができる。なお、
図6の(5)は、欄C63のみを見やすいように別途拡大したものである。
【0063】
上記欄C63の注意事項その他は、
図3の作業手順書におけるコメント欄に管理者などが予め記載しておけばよく、上記説明したように検索部104の検索などを経て表示部107に重畳表示することができる。なお、当該コメントを表示するか否かに関しては、
図6の(2)等に示す「情報」ボタンC62等を作業者が(タッチパネルの場合)タップすることによって、作業者の当該コメント要求を受けてから表示されるようにしてもよい。
【0064】
図1の各部の説明に戻り、認識部108は、撮影部102の撮影画像から作業者が実際に作業を行っているもしくは作業を行おうとしている箇所を認識する。当該箇所の認識は、予め決めておく所定の指示手段を作業者が撮影画像の当該箇所に配置し、撮影画像から当該箇所の当該指示手段を認識することによって、なされる。当該所定の指示手段の各実施形態を紹介する。
【0065】
一実施形態では、指先を指示手段として用いることができる。指先の認識は、公知の技術が利用できる。簡単には、前記撮影画像の画像信号をHSV色空間に変換し、色相Hの値が0〜30°に含まれる画素を肌色画素と認識し、さらに肌色画素の集合領域に対して、楕円あてはめにより、指の先端にある第一関節の領域を検出することができる。その他各種の公知の指ないし指先検出技術を用いてもよい。
【0066】
当該実施形態の利点は次の通りである。特にフィールド作業では、作業を開始する際には、対象箇所への指差しと共に「指差し確認、良いか?良し!」等の発生を行い、指差呼称(または指差喚呼)が行われる。当該認識部108及び後述する照合部109等によって、この指差呼称を自動で特定し、さらに後述する映像記録部112の連携処理によって映像上にイベント情報として記録できるようになり、後日検索の際には、作業開始・終了・指差呼称のシーンを効率良く検索できるようになる。
【0067】
同様に、一実施形態では、先端に所定の色特徴を有する球体などが配置された指示棒を作業者が持って作業箇所を指すことで、認識がなされてもよい。当該球体が指示手段となり、色特徴などにより公知の検出技術で検出可能である。さらに同様に、一実施形態では所定の色特徴を有するレーザポインタで当該箇所に照射したレーザの像を、指示手段としてもよい。
【0068】
指示手段に何を用いるかによらず、次のようにすることで認識部108の指示手段の認識における計算負荷を低減することができる。すなわち、指示手段を撮影画像の全体から探索する代わりに、当該時点における作業手順で指定されている対象領域の内部のみに限定して、指示手段を探索する。こうして、指示手段の探索領域を対象領域に限定することで、計算量を低減することができる。
【0069】
照合部109は、認識部108が認識した指示手段(作業者が実際に作業を行っているもしくは作業を行おうとしている箇所を表す)が、当該時点における作業対象の領域と一致しているか否かを確認する。例えば、指示手段である指先などの所定点(重心など)が、作業領域の範囲内にあれば一致、と判定すればよい。
【0070】
照合部109は撮影部102が一定間隔でフレーム出力する各時点の撮影画像について、当該判定を行い、当該時系列からなる判定結果を逐次、通知部110へと知らせる。
【0071】
なお、上述の計算量削減の観点から認識部108が対象領域に限定して指示手段を探索している場合は、当該領域内で探索された場合には直ちに一致判定を下すことで、照合部109の処理負荷も大幅に低減することができる。
【0072】
通知部110は、照合部109の出力する各時点の判定結果を逐次解析し、作業領域の範囲内にある旨の判定(一致判定)が所定の期間に渡って継続することを確認することによって、作業者が当該時点における作業箇所を指示することを完了したものと判断し、照合完了の旨を種々の実施形態によって作業者に通知する。
【0073】
一実施形態では、当該判断は照合完了通知として映像記録部112及び情報重畳部106に伝えられ、特に情報重畳部106及び表示部107によって視覚的に作業者に通知がなされる。一実施形態では、音声によって作業者に通知がなされてもよい。
【0074】
さらに、通知部110はまた、照合完了通知を出力するまでの途中において、各時点における当該途中である情報及びあとどの程度で最終的な照合完了通知に到達するかの情報(具体的には、後述する「カウンタ」の値として与えられる)を、情報重畳部106に伝えてもよい。情報重畳部106は当該カウンタに応じて、当該時点の作業箇所に対する対象領域重畳画像を加工してもよい。
【0075】
当該加工されて表示部107に表示される例が、
図6の(3)の斜線付与されたフレームF110である。当該フレームF110は、(2)のフレームF11で重畳表示された「スロットA」に、作業者による指差しなどが多少なりともあったことを反映して、フレームF11の領域の内部を、色付けするなどして変化させて表示したものである。
【0076】
図7は、
図6の(3)のフレームF110における変化する表示の具体例であり、当該重畳表示の途中における加工例と、最終的に照合完了通知が出された際の表示例を概念的に示す図である。
【0077】
図7の説明の前提として、通知部110は、一致判定の継続時間に応じて増加するカウンタを管理する。当該カウンタの管理の詳細は後述するが、カウンタは、一致判定が継続する間は増加し、一致判定がない間は減少して、減少がある程度継続すると、初期値のゼロにリセットされる。
【0078】
図7の(1)はカウンタC=0で、その値が初期値としてのゼロの場合である。ここでは、
図6の(2)と同様の、全体領域重畳画像F10で囲まれた対象領域の全体と、その内部で現時点における作業対象の「スロットA」を囲む対象領域重畳画像F11と、が示されている。カウンタC=0の状態は、指差しなどが全くない状態がしばらく続いている状態に対応し、当該フレームF11はそのままの状態(加工されていない状態)で表示されている。
【0079】
ここで、フレームF11で囲まれる対象領域において、
図7の手H10として示すような、指差しなどによる一致判定がなされると、カウンタCの値は一致判定が継続する間、増加し続ける。
図7では、一致判定が途切れることなく継続した場合を表しており、カウンタCの値に応じて、フレームF11の対象領域が、所定色に染まっていく(領域内の画素値が一定の所定値に近づいていく)ことで表示の変化を施す例が示されている。
【0080】
(2)に示すカウンタC=5の状態では、手H10(の指先)が置き続けられることで、枠F112に示すように、枠F10が所定色に淡く染まった状態となる。さらに後の、(3)に示すカウンタC=15の状態では、枠F113に示すように、所定色で濃く染まった状態となる。最終的にカウンタが閾値(ここでは例として20とする)に達した(4)のC=20の状態では、枠F114に示すように完全に所定色で染まった状態となる。
【0081】
当該「染める」際は、重ねる所定色の透過性を変化させ、(1)にて撮影画像の対象領域がそのまま見えている状態(透過率100%)から、(4)にて対象領域が見えなくなる状態(透過率0%)へと変化させるようにしてもよい。
【0082】
当該(4)に示す状態において、前述の照合完了通知がなされると共に、後述する映像記録部112による記録などが開始される。(4)では、枠F20に、照合完了通知の旨を伝える重畳文字情報F20「スロットA、照合完了」が情報重畳部106によって生成され、表示部107に表示されているところが描かれている。
【0083】
このように、作業者は、所定時間に渡って確実に指差しなどをすることを要求されるので、作業箇所を間違える可能性を下げることができる。すなわち、カウンタの利用により、作業者が指先を作業箇所に短時間のみ偶然向けたような場合を、正しい指示がなされたものと誤判定することを防止することができる。
【0084】
なお、当該カウンタの値による情報重畳部106による重畳は、以上
図7の例のように色の濃淡を変化させて表示を加工すること以外の手法を用いてもよい。
図7の(1)に示すフレーム枠F11の色を赤(C=0の場合)から次第に青(C=20;閾値の場合)へと変えるなど、枠F11の内部は撮影画像をそのまま見えるようにしたうえで、枠F11に所定色間の遷移を施すようにしてもよい。また、カウンタCの値に対応するメータ表示(棒グラフ型や、円ないし円弧状に先端が動くメータ針の方式など)を別途設けるようにしてもよい。
【0085】
あるいは、表示部107を介して視覚的に重畳させる代わりに、別途スピーカを用いて、発生する音の高さなどをカウンタCの値に応じて所定方式で変化させる(Cの値が大きいほど、高い音を発生するなど)ようにしてもよい。照合完了通知も同様に、スピーカを用いて、前述の重畳文字情報F20「スロットA、照合完了」等を合成した音声として出力されるようにしてもよい。さらに、「指差し確認完了!作業を開始して下さい。転倒に注意のこと。」等、作業に付随する情報を音声として出力させてもよい。
【0086】
当該音声と表示部107による視覚とを組み合わせてもよい。なお、当該視覚及び/又は音声による重畳及び照合完了通知の手法も、対象領域ごとに所定のものを予め入力部101で管理者によって入力しておくか、あるいは記憶部103に同様に登録しておけばよい。
【0087】
以上のように、作業の対象領域を作業者が作業手順通りに間違いなく指示手段で指示していることが確認されると、通知部110は照合完了通知を出力した。
【0088】
映像記録部112は、当該出力された照合完了通知を受け、撮影部102で撮影されている映像を記録する。すなわち、照合完了通知をトリガとして、撮影部102における録画を開始する。時刻計測部111は計時機能を有し、当該録画の際の時刻を、当該録画される映像に対応づけて記録する。この際、映像に対してタグ情報として、当該機器情報や、作業の対象領域の情報や、作業自体の情報(
図3や
図4の情報)を、付与するようにしてもよい。
【0089】
図6の(4)の欄C65は、このような録画が開始された旨をその時刻と共に伝える情報を情報重畳部106で生成して、表示部107で表示させている例である。なお、一実施形態においては録画される映像は撮影部102で撮影されたそのままの映像であり、当該各種の情報が重畳された表示部107の表示とは異なる。別の一実施形態では、表示部107で表示される映像が記録されるようにしてもよいし、また、重畳されないそのままの映像と、重畳された映像とを再生する際に切り替え可能な形で映像を記録するようにしてもよい。
【0090】
作業者が作業進捗入力部115を介して当該作業が終了した旨を入力すると、映像記録部112は録画を終了し、フィールド作業支援装置100は当該機器の次の作業手順に関するナビゲーションを開始する。
図6の(4)では、
図3における「手順1」が終了した後に、次の手順として「スロットB」を対象とした「手順2」において以上の説明と同様の処理が開始され、「スロットB」の対象領域重畳画像としてフレーム枠F12が表示されている。以降同様にして「スロットB」が指差しなどによって認識されると、「スロットB」の「手順2」の録画が開始される。同様に継続して、当該機器の全ての作業手順を終えると、録画も終了する。
【0091】
こうして、
図8の(1)に模式的に示すように、撮影部102で得られる一連の映像データの全体D10のうち、映像記録部112によって各作業手順の個別の録画D1,D2,…を残すことができる。すなわち、時刻T
1に開始し時刻T
10に終了する手順1の映像D1と、すなわち、時刻T
2に開始し時刻T
20に終了する手順2の映像D2と、…といった個別作業手順の映像が関連情報のタグと共に得られる。
【0092】
なお、映像記録部112の録画の別の一実施形態として、上記
図8の(1)のように作業手順ごとに個別の録画を作成する代わりに、
図8の(2)に模式的に示すように、撮影部102における映像を連続する映像データD10としてそのまま記録して、当該連続する映像において通知部110から照合完了通知を受けた際の時刻及び開始された作業手順の情報を対応づけるようにしてもよい。
図9では、映像データD10上に時刻T
1〜T
3と、当該各時刻において開始された手順1〜3の情報が対応づけられている。
【0093】
図8の(2)の例ではさらに、(1)の場合のように作業者が作業進捗入力部115を介して当該作業手順が終了した旨を入力した場合であれば、同様にその時刻と終了手順の情報とを対応づけて記録するようにしてもよい。これにより手順開始時刻の記録と共に、後日再生する際に容易に頭出しが可能となる。
【0094】
以上のような映像記録部112の録画の各実施形態により、作業が指示通りに間違いなく遂行したことを証明し、後日必要が生じた場合には容易に機器情報及び領域情報によって検索可能なエビデンスとして、重要度の高い作業イベントを映像から特定し、時刻と共に適切なタイミングで作業内容を映像記録できるようになる。
【0095】
図9は、通知部110によるカウンタ値の管理手順の一例の詳細のフローチャートである。当該管理されたカウンタ値によって
図7のような表示制御が可能となる。各ステップは以下の通りである。
【0096】
(ステップS1) カウンタCを初期化して、すなわち、カウンタCの値を初期値のゼロに設定して、ステップS2へ進む。
(ステップS2) 時刻tを当該時点の時刻に更新して、ステップS3へ進む。なお、当該時刻更新によって、当該最新時刻にて撮影部102が撮影した撮影画像を対象として以降のステップが実施されることとなる。再度ステップS2に至った際は、その次の最新時刻へと時刻が更新され、同様に以降のステップが実施される。当該ステップS2の時刻更新は、撮影部102の撮影画像のフレーム出力の間隔と同じでよい。
【0097】
(ステップS3) 当該最新時刻tにおける撮影画像における所定の対象領域に対して、指差しなどがあるものとして照合部109が一致判定を下しているか否かを調べる。一致判定であればステップS4へ進み、一致判定でなければステップS7へ進む。
(ステップS4) 一致判定であったので、カウンタCの値を1だけ加算し、ステップS5へと進む。
(ステップS5) カウンタCの値が所定の閾値TH以上であるか否かを調べる。閾値TH以上であればステップS6へ進み、そうでなければステップS8へ進む。
【0098】
(ステップS6) カウンタCが閾値に達したので、情報重畳部106及び映像記録部112へと当該対象領域についての照合完了通知を出力して、あるいは音声を利用する実施形態であれば所定の音声を出力するなどして、ステップS1へ戻る。
(ステップS7) 指示手段が未検出状態となっている期間、すなわちステップS3で一致判定が連続して「否」となっている当該最新時刻までの期間が、一定期間に到達したかを調べる。一定期間に到達していればステップS1へ戻り、到達していなければステップS2へ戻る。
(ステップS8) カウンタCの値が0(ステップS1で設定した初期値)より大きいかを調べ、大きい場合はステップS9へ進み、そうでない場合(当該フローでは初期値のC=0となる場合)は、ステップS2へ戻る。
(ステップS9) カウンタCの値から1だけ減算して、ステップS2へ戻る。
【0099】
次に、基準測定部105における追加的な実施形態を説明する。以上の説明では、撮影画像上において基準点が全て見えている、あるいは、少なくとも座標データの変換関係を算出可能な個数だけ見えている必要があった。
図5の例であれば、機器の四隅に峻別テープを設け、当該四隅が全て見えている必要があった。当該実施形態では、一部が見えなくなっても基準点が全て見えている場合と同様に変換関係を求め、情報重畳部106及び表示部107にて対応する処理が可能となる。
【0100】
図10は当該実施形態において利用される、
図1の基準測定部105と情報重畳部106との間に追加的に設けられる、補助測定部の機能ブロック図である。補助測定部150は、局所特徴量抽出部151、特徴点対応比較部152及びホモグラフィ行列推定部153を含む。
【0101】
当該実施形態では、基準測定部105は所定の4点以上の基準点を利用して、透視投影変換(ホモグラフィ行列)の関係を求めるものとし、画像範囲内から逸脱するなどして、撮影画像内において測定される基準点の数が4点未満となり、透視投影変換を算出不可能な際に、補助測定部150に算出不能の旨を伝える。当該算出不能の通知を受け、補助測定部150は本来算出すべきであった透視投影変換の代理となり、同等に利用可能な変換関係を求める。
【0102】
当該代理の変換関係を用いることで、情報重畳部106は以上の実施形態と全く同様に、全体領域重畳画像及び対象領域重畳画像を生成することが可能となる。当該重畳画像は、撮影画像の範囲を超えて生成される場合もあるが、表示部107での重畳の際には、当該撮影画像の範囲内のみで重畳させればよい。以下、その詳細を説明する。
【0103】
局所特徴量抽出部151は、基準測定部105が透視投影変換を算出可能であった過去時点における撮影画像と、当該算出が不可能である現時点における撮影画像と、の両者において、局所特徴(局所特徴量及び特徴点)を抽出する。すなわち、各撮影画像より、エッジや凹凸などの信号変化の大きい点をキーポイント(特徴点)として複数抽出し、各キーポイント付近の色、形、模様などから算出される局所特徴量を出力する。当該局所特徴量には、周知のSIFT特徴量、SURF特徴量、HOG特徴量などを利用することができる。
【0104】
なお、基準測定部105が透視投影変換を算出可能であった過去時点における撮影画像からの局所特徴の抽出に際しては、当該機器の全体領域の内部のみに抽出範囲を限定して抽出するようにしてもよい。また、当該過去時点には、透視投影変換が算出可能であって、且つ現時点に最も近い時点などの、所定の過去時点を採用することができる。
【0105】
特徴点対応比較部152は、局所特徴量抽出部151が抽出した過去時点の撮影画像の局所特徴と、現在時点の撮影画像の局所特徴と、のマッチングを取り、当該両撮影画像間において同一であると考えられる局所特徴量を有する特徴点同士を対応づける。この際、局所特徴量同士の距離を差分二乗和などの所定方式で定義して、距離が所定値より小さい局所特徴量同士を互いに類似するものとして対応づければよい。
【0106】
ホモグラフィ行列推定部153は、特徴点対応比較部152にて対応付けられた特徴点同士の透視投影変換を表すホモグラフィ行列を求める。当該ホモグラフィ行列の算出の詳細は後述する。なおここで、対応付けられた特徴点は4点以上あることが前提である。
【0107】
ホモグラフィ行列推定部153はさらに、当該求めたホモグラフィ行列と、基準測定部105が透視投影変換を算出可能であった過去時点における撮影画像において算出した当該透視投影変換のホモグラフィ行列と、を合成することによって、補助測定部150による最終的な出力としての、前記代替の変換関係を求めて、情報重畳部106へと出力する。
【0108】
図11及び
図12は当該実施形態を説明するための図である。ここでは、基準点は
図5の(2)と同様の峻別テープR10〜R40によって四隅として与えられるものとする。
図11の(1)に示す前時刻撮影画像F100では、峻別テープR10〜R40が4つ全て見えており、基準測定部105は変換関係を算出可能であり、情報重畳部106は全体領域重畳画像及び対象領域重畳画像を生成可能である。
【0109】
ところが(2)に示す現時刻撮影画像F200では、峻別テープは4つのうち2つR10及びR20しか見えておらず、残り2つR30及びR40が撮影画像の範囲の外に消えてしまっている。従って、基準測定部105は変換関係を算出できない。ここで、補助測定部150が代替となる変換関係を算出することによって、撮影画像の範囲の外にあるR30及びR40で指定される基準点を求めたのと同様の情報が得られる。これにより、当該現時刻撮影画像F200内においても情報重畳部106が全体領域重畳画像及び対象領域重畳画像を生成可能となる。
【0110】
図11の(1)における点P101〜P105と、(2)における点P201〜P205とはそれぞれ、局所特徴量抽出部151が前時刻撮影画像F100と現時刻撮影画像F200とから抽出した局所特徴の特徴点の例であり、且つ互いに点線で結ばれているように、特徴点対応比較部152にて対応付けられた例である。
【0111】
ホモグラフィ行列推定部153は、
図11の(3)に示すように、当該(1)の点P101〜P105と、(2)の点P201〜P205と、の間の透視投影変換の関係としてホモグラフィ行列を算出する。なお当該算出は、両画像F100及びF200間におけるカメラワークの推定に対応する。
【0112】
当該算出によって、
図12の(2)に示すように、(2−1)の現時刻で見える範囲F200を拡張して、(2−2)に示すように見えない範囲F201内に存在する見えない峻別テープR30及びR40が、当該現時刻の座標系において見えているものと同等の処理が可能となる。従って、F200の範囲内において、全体領域重畳画像及び対象領域重畳画像が生成可能となる。
【0113】
具体的には、
図12の(1)に示す前時刻撮影画像F100にて既に基準測定部105が求めた図面データを撮影画像上に変換する変換関係(透視投影変換)と、ホモグラフィ行列推定部153が求める両画像F100及びF200の間で対応する特徴点同士の透視投影変換と、を当該ホモグラフィ行列推定部153が合成することによって、図面データを当該現時刻撮影画像F200上に変換する透視投影変換が定まる。
【0114】
以下、ホモグラフィ行列推定部153によるホモグラフィ行列の算出の詳細を説明する。
図11等の前時刻の画像F100における座標系をU
bとし、現時刻の画像F200における座標系をU
aとすると、以下の(式1)又はその成分表示として(式2)のように、前時刻座標系U
bを現時刻座標系U
aへと変換する行列H
abが算出すべきホモグラフィ行列である。sはスケールファクターである。
【0116】
4点以上の対応点があれば、両画像間のホモグラフィ行列を算出することができる。当該対応点は前述のように、特徴点対応比較部152で対応づけられたものを採用すればよい。
図11の例であれば、互いに対応付けられた前時刻座標系U
bにおける点P101〜P105と、現時刻座標系U
aにおける点P201〜P205とを利用することができる。
【0117】
(式2)を展開して、以下の(式3)が得られる。当該(式3)は3つの式からなるが、sに関する従属性があるので、独立な方程式は以下の(式4)の2つとなる。
【0119】
上記(式4)をさらに行列の形に戻して表現すると、以下の(式5)となる。
【0121】
上記(式5)の連立方程式を解くことができれば、ホモグラフィ行列の8つのパラメータh11、h12、h13、h21、h22、h23、h31、h32が求まる。しかしながら、1つの対応点から得られる方程式は2つ、したがって、8つの未知のパラメータを求めるためには8÷2=4組の特徴点ペアの座標群(xa1、ya1)と(xb1、yb1)、(xa2、ya2)と(xb2、yb2)、(xa3、ya3)と(xb3、yb3)、(xa4、ya4)と(xb4、yb4)が必要であり、この場合以下の(式6)が得られる。
【0123】
なお、対応点が4組より多い場合は、当該4組より多い座標群に対する上記(式6)と同様の関係(対応点がn組あるとすると、当該n組を用いて左辺の行列を2n×8行列として同様に設ければよい)のうち誤差を最小にするものを周知の特異値分解などの手法によって求めればよい。
【0124】
なおまた、以上の計算は、U
bを図面データの座標系とし、U
aを撮影画像における座標系とすると、当該両座標系の間で所定の基準点を対応付ける透視投影変換を基準測定部105が求める場合にも全く同様に適用できる。