特許第6016284号(P6016284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016284
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ジスピロピロリジン誘導体の結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/10 20060101AFI20161013BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C07D487/10CSP
   A61K31/4439
   A61P35/00
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-534398(P2014-534398)
(86)(22)【出願日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2013073865
(87)【国際公開番号】WO2014038606
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-195761(P2012-195761)
(32)【優先日】2012年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113583
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 範子
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【弁理士】
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100164460
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100119622
【弁理士】
【氏名又は名称】金原 玲子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祥子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雄一
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5792279(JP,B2)
【文献】 国際公開第2006/091646(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/038307(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

で表される(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその塩の結晶。
【請求項2】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.78、9.14、10.06、10.78、12.18、13.42、14.34、15.50、16.62、17.06、17.66、18.18、18.74、20.18、22.46、24.90、25.54、26.94、27.5828.90に特徴的ピークを示す請求項に記載の化合物の結晶。
【請求項3】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.62、13.06、15.10、17.22、21.98に特徴的ピークを示す請求項に記載の化合物の結晶。
【請求項4】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=9.18、12.18、15.58、16.22、17.22、18.42、18.82、19.86に特徴的ピークを示す請求項に記載の化合物の結晶。
【請求項5】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.46、7.86、9.12、13.00、14.42、19.32、20.34、20.42、21.98に特徴的ピークを示す請求項1に記載の化合物の塩酸塩の結晶。
【請求項6】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.56、8.26、14.00、16.26、16.78、17.72、18.42、18.62、20.28、23.06に特徴的ピークを示す請求項1に記載の化合物のメタンスルホン酸塩の結晶。
【請求項7】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.28、7.72、12.62、14.06、15.50、16.62、16.96、19.68、21.18、25.82に特徴的ピークを示す請求項1に記載の化合物のエタンスルホン酸塩の結晶。
【請求項8】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.22、7.34、7.90、12.46、13.60、14.22、15.56、18.86、19.04、19.52、19.72、
20.54に特徴的ピークを示す請求項1に記載の化合物のベンゼンスルホン酸塩の結晶。
【請求項9】
銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.16、7.18、7.88、12.38、13.50、13.88、15.46、18.46、19.10、19.28、19.66、20.28、21.88、24.68に特徴的ピークを示す請求項1に記載の化合物のトルエンスルホン酸塩の結晶。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の結晶を含有する医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Mdm2(murine double minute 2)阻害による抗腫瘍活性を有するジスピロピロリジン化合物またはその塩の結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の癌化を抑制する重要な因子の1つとして、p53が知られている。p53は、細胞周期や細胞のアポトーシスに関与する遺伝子の発現を、様々なストレスに応答して誘導する転写因子である。p53は、この転写調節機能により細胞の癌化を抑制すると考えられており、実際、ヒトの癌の約半数にp53遺伝子の欠失または変異が観察されている。
【0003】
一方、p53が正常であるにもかかわらず癌化している細胞の癌化の要因の1つとして、E3ユビキチンリガーゼの1種であるMdm2(murine double minute 2)の過剰発現が知られている。Mdm2は、p53によって発現が誘導される蛋白質である。Mdm2は、p53の転写活性ドメインに結合してp53の転写活性を低下させるとともに、p53を核外に排出し、さらには、p53に対するユビキチン化リガーゼとして作用してp53の分解を媒介することにより、p53を負に制御している。このため、Mdm2が過剰発現している細胞では、p53機能の不活化および分解が促進され、癌化が引き起こされると考えられている(非特許文献1)。
【0004】
このようなMdm2の機能に着目し、Mdm2によるp53の機能抑制を阻害する物質を抗腫瘍剤の候補とするアプローチが多数なされてきた。Mdm2とp53との結合部位を標的としたMdm2阻害剤としては、スピロオキシインドール誘導体(特許文献1〜15、非特許文献1〜3)、インドール誘導体(特許文献16)、ピロリジン−2−カルボキサミド誘導体(特許文献17)、ピロリジノン誘導体(特許文献18)、イソインドリノン誘導体等(特許文献19、非特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/091646号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/136606号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/104664号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2007/104714号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2008/034736号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2008/036168号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2008/055812号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2008/141917号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2008/141975号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2009/077357号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2009/080488号パンフレット
【特許文献12】国際公開第2010/084097号パンフレット
【特許文献13】国際公開第2010/091979号パンフレット
【特許文献14】国際公開第2010/094622号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2010/121995号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2008/119741号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2010/031713号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2010/028862号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2006/024837号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,2005,127,10130−10131
【非特許文献2】J.Med.Chem.,2006,49,3432−3435
【非特許文献3】J.Med.Chem.,2009,52,7970−7973
【非特許文献4】J.Med.Chem.,2006,49,6209−6221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジスピロピロリジン誘導体は優れたMdm2阻害活性を示し、医薬、特に抗癌剤としての利用が期待される。さらにこれら誘導体の結晶を見出すことは工業的に有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、Mdm2阻害活性を示し、抗腫瘍活性を有するジスピロピロリジン誘導体の医療上の有用性を高めるため、固体物性を向上させるべく、鋭意検討した結果、下記式(1)に示すジスピロピロリジン誘導体またはその塩の結晶を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記[1]から[14] に関する。
[1]下記式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
で表される(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその塩の結晶。
[2]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図1に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物の結晶。
[3]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図2に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物の結晶。
[4]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図3に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物の結晶。
[5]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図4に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物の塩酸塩の結晶。
[6]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図6に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物のメタンスルホン酸塩の結晶。
[7]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図7に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物のエタンスルホン酸塩の結晶。
[8]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図8に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物のベンゼンスルホン酸塩の結晶。
[9]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図9に示すX線回折パターンを有する[1]に記載の化合物のトルエンスルホン酸塩の結晶。
[10]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.78、9.14、10.06、10.78、12.18、13.42、14.34、15.50、16.62、17.06、17.66、18.18、18.74、20.18、22.46、24.90、25.54、26.94、27.58,28.90に特徴的ピークを示す[2]に記載の結晶。
[11]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.62、13.06、15.10、17.22、21.98に特徴的ピークを示す[3]に記載の結晶。
[12]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=9.18、12.18、15.58、16.22、17.22、18.42、18.82、19.86に特徴的ピークを示す[4]に記載の結晶。
[13]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.46、7.86、9.12、13.00、14.42、19.32、20.34、20.42、21.98に特徴的ピークを示す[5]に記載の結晶。
[14]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.56、8.26、14.00、16.26、16.78、17.72、18.42、18.62、20.28、23.06に特徴的ピークを示す[6]に記載の結晶。
[15]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.28、7.72、12.62、14.06、15.50、16.62、16.96、19.68、21.18、25.82に特徴的ピークを示す[7]に記載の結晶。
[16]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.22、7.34、7.90、12.46、13.60、14.22、15.56、18.86、19.04、19.52、19.72、20.54に特徴的ピークを示す[8]に記載の結晶。
[17]銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.16、7.18、7.88、12.38、13.50、13.88、15.46、18.46、19.10、19.28、19.66、20.28、21.88、24.68に特徴的ピークを示す[9]に記載の結晶。
[18][1]から[17]のいずれか1に記載の結晶を含有する医薬。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、Mdm2阻害活性を有する、(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその塩の結晶が提供される。本発明の結晶は、固体物性に優れ、抗腫瘍剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1−1で得られた結晶(フリー体)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図2】実施例1−2で得られた結晶(フリー体)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図3】実施例1−3で得られた結晶(フリー体)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図4】実施例2で得られた結晶(塩酸塩)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図5】実施例3で得られた化合物(硫酸塩)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図6】実施例4で得られた結晶(メタンスルホン酸塩)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図7】実施例5で得られた結晶(エタンスルホン酸塩)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図8】実施例6で得られた結晶(ベンゼンスルホン酸塩)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図9】実施例7で得られた結晶(トルエンスルホン酸塩)の粉末X線回折図。図の縦軸は、回折強度をカウント/秒(cps)単位で示し、横軸は回折角度2θの値を示す。
図10】実施例1−1で得られた結晶(フリー体)の等温吸湿脱湿曲線図。図の縦軸は、化合物の重量変化(%)を示し、横軸は湿度(%RH)を示す。
図11】実施例1−2で得られた結晶(フリー体)の等温吸湿脱湿曲線図。図の縦軸は、化合物の重量変化(%)を示し、横軸は湿度(%RH)を示す。
図12】実施例2で得られた結晶(塩酸塩)の等温吸湿脱湿曲線図。図の縦軸は、化合物の重量変化(%)を示し、横軸は湿度(%RH)を示す。
図13】実施例4で得られた結晶(メタンスルホン酸塩)の等温吸湿脱湿曲線図。図の縦軸は、化合物の重量変化(%)を示し、横軸は湿度(%RH)を示す。
図14】実施例5で得られた結晶(エタンスルホン酸塩)の等温吸湿脱湿曲線図。図の縦軸は、化合物の重量変化(%)を示し、横軸は湿度(%RH)を示す。
図15】実施例6で得られた結晶(ベンゼンスルホン酸塩)の等温吸湿脱湿曲線図。図の縦軸は、化合物の重量変化(%)を示し、横軸は湿度(%RH)を示す。
図16】実施例7で得られた結晶(トルエンスルホン酸塩)の等温吸湿脱湿曲線図。図の縦軸は、化合物の重量変化(%)を示し、横軸は湿度(%RH)を示す。
図17】実施例1−1で得られた結晶(フリー体)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
図18】実施例1−2で得られた結晶(フリー体)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
図19】実施例1−3で得られた結晶(フリー体)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
図20】実施例2で得られた結晶(塩酸塩)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
図21】実施例4で得られた結晶(メタンスルホン酸塩)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
図22】実施例5で得られた結晶(エタンスルホン酸塩)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
図23】実施例6で得られた結晶(ベンゼンスルホン酸塩)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
図24】実施例7で得られた結晶(トルエンスルホン酸塩)の熱分析データを示した図。図の縦軸は、温度差(DTA)および重量変化(TG)を示し、横軸は温度(℃)を示す。実線がDTA曲線、破線がTG曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記式(1)
【0015】
【化2】
【0016】
で表される(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド(以下、本明細書において、化合物(1)と記載する場合がある。)またはその塩の結晶に関する。ここで、結晶とは、その内部構造が三次元的に構成原子(またはその集団)の規則正しい繰り返しでできている固体をいい、そのような規則正しい内部構造を持たない無定形固体とは区別される。
【0017】
さらに、化合物(1)の塩としては、実施例のいずれかが挙げられ、 化合物(1)またはその塩は、遊離体もしくは溶媒和物として存在することもある。空気中の水分を吸収すること等により水和物として存在することもある。溶媒和物としては、医薬的に許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、水和物、エタノール和物、2−プロパノール和物等が挙げられる。
【0018】
同じ化合物の結晶であっても、結晶化の条件によって、複数の異なる内部構造及び物理化学的性質を有する結晶(結晶多形)が生成することがあるが、本発明の結晶は、これら結晶多形のいずれであってもよく、2以上の結晶多形の混合物であってもよい。
【0019】
本発明の結晶は、大気中に放置しておくことにより、水分を吸収し、付着水が付く場合や通常の大気条件下において25乃至150℃に加熱すること等により、水和物を形成する場合がある。さらには、本発明の結晶は付着残留溶媒または溶媒和物中に、結晶化時の溶媒を含む場合もある。
【0020】
本明細書において、本発明の結晶を粉末X線回折のデータに基づき表すことがあるが、粉末X線回折は、通常、当該分野において用いられる手法により測定・解析を行えばよく、例えば、実施例に記載の方法により行うことができる。また、一般に、水和物や脱水物は結晶水の着脱によって、その格子定数が変化し、粉末X線回折における回折角(2θ)に変化を与えることがある。また、ピークの強度は、結晶の成長面等の違い(晶癖)等によって変化することもある。従って、本発明の結晶を粉末X線回折のデータに基づき表した場合、粉末X線回折におけるピークの回折角および粉末X線回折パターンが一致する結晶のほか、それらから得られる水和物および脱水物も本発明の範囲に包含される。
【0021】
本発明の結晶の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図1に示す粉末X線回折パターンを有する結晶(フリー体)である。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.78、9.14、10.06、10.78、12.18、13.42、14.34、15.50、16.62、17.06、17.66、18.18、18.74、20.18、22.46、24.90、25.54、26.94、27.58、28.90に特徴的ピークを示す結晶である。
【0022】
本発明の結晶の別の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図2に示す粉末X線回折パターンを有する結晶(フリー体)である。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.62、13.06、15.10、17.22、21.98に特徴的ピークを示す結晶である。
【0023】
本発明の結晶の別の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図3に示す粉末X線回折パターンを有する結晶(フリー体)である。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=9.18、12.18、15.58、16.22、17.22、18.42、18.82、19.86に特徴的ピークを示す結晶である。
【0024】
本発明の結晶の別の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図4に示す粉末X線回折パターンを有する結晶(塩酸塩)である。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.46、7.86、9.12、13.00、14.42、19.32、20.34、20.42、21.98に特徴的ピークを示す結晶である。
【0025】
本発明の結晶の別の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図6に示す粉末X線回折パターンを有する結晶である(メタンスルホン酸塩)。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=7.56、8.26、14.00、16.26、16.78、17.72、18.42、18.62、20.28、23.06に特徴的ピークを示す結晶である。
【0026】
本発明の結晶の別の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図7に示す粉末X線回折パターンを有する結晶(エタンスルホン酸塩)である。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.28、7.72、12.62、14.06、15.50、16.62、16.96.19.68.21.18、25.82に特徴的ピークを示す結晶でもある。
【0027】
本発明の結晶の別の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図8に示す粉末X線回折パターンを有する結晶(ベンゼンスルホン酸塩)である。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.22、7.34、7.90、12.46、13.60、14.22、15.56、18.86、19.04、19.52、19.72、20.54に特徴的ピークを示す結晶である。
【0028】
本発明の結晶の別の1つの好適な形態は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、図9に示す粉末X線回折パターンを有する結晶(トルエンスルホン酸塩)である。また、本結晶は、銅のKα線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、回折角度2θ=6.16、7.18、7.88、12.38、13.50、13.88、15.46、18.46、19.10、19.28、19.66、20.28、21.88、24.68に特徴的ピークを示す結晶である。
【0029】
本発明の別の態様は、本発明の結晶を有効成分として含有する医薬に関する。
【0030】
本願発明の結晶を有効成分として含む医薬は、好ましくは、本発明の結晶と1種または2種以上の薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物の形態で提供される。本発明の医薬の投与形態は特に制限されず、経口的または非経口的に投与することができるが、好ましくは、経口的に投与される。
【0031】
本発明の医薬組成物は、化合物(I)として本発明の結晶を少なくとも一部含む。当該医薬組成物には、化合物(I)として本願発明の結晶以外の結晶形が存在していてもよい。当該医薬組成物に含まれる本願発明の結晶の割合は、当該医薬組成物中の化合物(I)全体に対して、0.01重量%〜99.9重量%の範囲、例えば、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.6重量%以上、99.7重量%以上、99.8重量%以上または99.9重量%以上含まれていればよい。本願発明の結晶が医薬組成物に含まれているかどうかは、本明細書に記載される機器分析方法(例えば、粉末X線回折、熱分析、赤外吸収スペクトル等)により確認することができる。
【0032】
本発明の結晶は、Mdm2阻害剤として用いることができ、本発明の結晶を含有する医薬、特に好ましくは抗癌剤として用いることができる。
【0033】
本発明の1つの実施形態において、化合物(1)は、p53とMdm2との結合を阻害し、Mdm2によるp53のユビキチン化を阻害するので、本発明の結晶はp53とMdm2の結合阻害剤および/またはMdm2ユビキチンリガーゼ阻害剤として使用することができる。
【0034】
p53とMdm2の結合状態は、蛋白質間の結合状態を調べるために当業者に通常用いられる方法(例えば、免疫学的手法または表面プラズモン共鳴技術等)を用いて検出することができる。免疫学的手法を用いてMdm2とp53の結合状態を調べる方法としては、例えば、免疫沈降法またはELISA(Enzyme−Linked Immuno Sorbent Assay)が挙げられる。このような免疫学的手法に用いる抗体は、Mdm2および/またはp53を直接検出することができる抗Mdm2抗体および/または抗p53抗体であってもよいし、Mdm2および/またはp53をタグ(例えば、GSTタグまたはヒスチジンタグ)等で標識する場合は、標識に適した抗体(例えば抗GST抗体または抗ヒスチジン抗体)を用いればよい。免疫学的手法を用いてp53とMdm2の結合状態を調べる方法は、例えば、国際公開第2003/51359号パンフレット、国際公開第2003/51360号パンフレット、米国特許出願公開第2004/259867号明細書または米国特許出願公開第2004/259884号明細書または国際公開第2005/110996号パンフレットに記載されている。表面プラズモン共鳴技術を用いてp53とMdm2の結合状態を調べる方法については、例えば、Science、第303巻、844−848頁、2004年に記載されている。
【0035】
p53に対するMdm2のユビキチンリガーゼ活性は、当業者に通常用いられるユビキチンリガーゼアッセイを用いて調べることができる。ユビキチンリガーゼ活性は、例えば、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)およびユビキチンリガーゼ(E3)(Mdm2)によるp53のユビキチン化を、試験化合物の存在下と非存在下とで比較することによって検出することができる(例えば、国際公開第2001/75145号パンフレットまたは国際公開第2003/76608号パンフレット)。
【0036】
別の実施形態において、化合物(1)は、p53転写活性化ドメインへのMdm2の結合を阻害することにより、Mdm2によって抑制されていたp53の転写因子としての機能を回復させるので、本発明の結晶はp53転写活性抑制の阻害剤として使用することができる。p53転写活性抑制の阻害剤は、例えば、試験化合物の存在下または非存在下において、p53によって転写が制御される蛋白質(例えば、p21Waf1/Cip1)のmRNA量または蛋白質量を当業者に通常用いられるmRNA測定法(例えば、ノーザンブロット法)または蛋白質測定法(例えば、ウエスタンブロット法)を用いて測定し、試験化合物の存在下における該mRNA量または蛋白質量が試験化合物の非存在下における場合と比較して増加している場合に、該試験化合物をp53転写活性抑制の阻害剤として選択することにより得ることができる。また、p53転写活性抑制の阻害剤は、p53応答配列を含むレポーター遺伝子のレポーター活性を指標としたレポーターアッセイにより同定することもできる。
【0037】
別の実施形態において、化合物(1)は、Mdm2によるp53のユビキチン化を阻害し、p53のプロテアソームにおける分解を防ぐので、本発明の結晶は、p53分解の阻害剤として使用することができる。p53分解の阻害剤は、例えば、試験化合物の存在下または非存在下において、p53の蛋白質量を当業者に通常用いられる蛋白質測定法(例えば、ウエスタンブロット法)を用いて測定し、試験化合物の存在下における該蛋白質量が試験化合物の非存在下における場合と比較して増加している場合に、該試験化合物をp53分解の阻害剤として選択することにより得ることができる。
【0038】
別の実施形態において、化合物(1)は、Mdm2とp53の結合阻害および/またはMdm2によるp53ユビキチン化の阻害により、p53の癌抑制遺伝子としての機能を正常化させるので、本発明の結晶は抗腫瘍剤として使用することができる。
【0039】
細胞の増殖阻害活性は、当業者に通常用いられる増殖阻害試験法を用いて調べることができる。細胞の増殖阻害活性は、例えば、下記の試験例2に記載されるように、試験化合物の存在下または非存在下における細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖の程度を比較することによって実施することができる。増殖の程度は、例えば、生細胞を測定する試験系を用いて調べることができる。生細胞の測定方法としては、例えば、[H]−チミジンの取り込み試験、BrdU法またはMTTアッセイ等が挙げられる。
【0040】
また、in vivoでの抗腫瘍活性は、当業者に通常用いられる抗腫瘍試験法を用いて調べることができる。例えば、マウス、ラット等に各種腫瘍細胞を移植し、移植細胞の生着が確認された後に、本発明の化合物を経口投与、静脈内投与等し、数日〜数週間後に、薬剤無投与群における腫瘍増殖と化合物投与群における腫瘍増殖とを比較することにより本発明のin vivoでの抗腫瘍活性を確認することができる。
【0041】
本発明の結晶は、腫瘍または癌、例えば、肺癌、消化器癌、卵巣癌、子宮癌、乳癌、前立腺癌、肝癌、頭頚部癌、血液癌、腎癌、皮膚癌(悪性黒色腫等)、網膜芽細胞腫、睾丸腫瘍、肉腫等、より好ましくは、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫または肉腫の治療に使用することができるがこれらの癌に限定されない。
【0042】
本発明の医薬は、本発明の結晶と薬学的に許容し得る担体を含み、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射等の各種注射剤として、あるいは、経口投与または経皮投与等の種々の方法によって投与することができる。薬学的に許容し得る担体とは、本発明の結晶を含む組成物を、ある器官または臓器から他の器官または臓器に輸送することに関与する、薬学的に許容される材料(例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、溶媒等)を意味する。
【0043】
製剤の調製方法としては投与法に応じ適当な製剤(例えば、経口剤または注射剤)を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製できる。経口剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または油性ないし水性の懸濁液等を例示できる。経口投与の場合では遊離体のままでも、塩の型のいずれでもよい。水性製剤は薬学的に許容される酸と酸付加物を形成させるか、ナトリウム等のアルカリ金属塩とすることで調製できる。注射剤の場合は製剤中に安定剤、防腐剤または溶解補助剤等を使用することもできる。これらの補助剤等を含むこともある溶液を容器に収納後、凍結乾燥等によって固形製剤として用時調製の製剤としてもよい。また、一回投与量を一の容器に収納してもよく、また複数回投与量を一の容器に収納してもよい。
【0044】
固形製剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、またはトローチ剤が挙げられる。これらの固形製剤は、本発明の結晶とともに薬学的に許容し得る添加物を含んでもよい。添加物としては、例えば、充填剤類、増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類または滑沢剤類が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
【0045】
液体製剤としては、例えば、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または懸濁剤が挙げられる。これらの液体製剤は、本発明の結晶とともに薬学的に許容し得る添加物を含んでもよい。添加物としては、例えば、懸濁化剤または乳化剤が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
【0046】
本発明の結晶は、哺乳類、特にヒトの癌治療に用いることができる。投与量および投与間隔は、疾患の場所、患者の身長、体重、性別または病歴によって、医師の判断により適宜選択され得る。本発明の化合物をヒトに投与する場合、投与量の範囲は、1日当たり、約0.01mg/kg体重〜約500mg/kg体重、好ましくは、約0.1mg/kg体重〜約100mg/kg体重である。ヒトに投与する場合、好ましくは、1日あたり1回、あるいは2から4回に分けて投与され、適当な間隔で繰り返すのが好ましい。また、1日量は、医師の判断により必要によっては上記の量を超えてもよい。
【0047】
本発明の結晶は他の抗腫瘍剤と併用して用いてもよい。例えば、抗腫瘍抗生物質、抗腫瘍性植物成分、BRM(生物学的応答性制御物質)、ホルモン、ビタミン、抗腫瘍性抗体、分子標的薬、その他の抗腫瘍剤等が挙げられる。
【0048】
より具体的に、アルキル化剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN − オキシドもしくはクロラムブチル等のアルキル化剤、カルボコンもしくはチオテパ等のアジリジン系アルキル化剤、ディブロモマンニトールもしくはディブロモダルシトール等のエポキシド系アルキル化剤、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンハイドロクロライド、ストレプトゾシン、クロロゾトシンもしくはラニムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤、ブスルファン、トシル酸インプロスルファンまたはダカルバジン等が挙げられる。
【0049】
各種代謝拮抗剤としては、例えば、6−メルカプトプリン、6−チオグアニンもしくはチオイノシン等のプリン代謝拮抗剤、フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン若しくはエノシタビン等のピリミジン代謝拮抗剤、メトトレキサートもしくはトリメトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤等が挙げられる。
【0050】
抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、THP−アドリアマイシン、4 ’−エピドキソルビシンもしくはエピルビシン等のアントラサイクリン系抗生物質抗腫瘍剤、クロモマイシンA 3 またはアクチノマイシンD 等が挙げられる。
【0051】
抗腫瘍性植物成分としては、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン若しくはビンブラスチン等のビンカアルカロイド類、パクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン類、またはエトポシドもしくはテニポシド等のエピポドフィロトキシン類が挙げられる。
【0052】
BRMとしては、例えば、腫瘍壊死因子またはインドメタシン等が挙げられる。
【0053】
ホルモンとしては、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プラステロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、オキシメトロン、ナンドロロン、メテノロン、ホスフェストロール、エチニルエストラジオール、クロルマジノンまたはメドロキシプロゲステロン等が挙げられる。
【0054】
ビタミンとしては、例えば、ビタミンCまたはビタミンA等が挙げられる。
【0055】
抗腫瘍性抗体、分子標的薬としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、デノスマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、メシル酸イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ等が挙げられる。
【0056】
その他の抗腫瘍剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、タモキシフェン、カンプトテシン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、L−アスパラギナーゼ、アセクラトン、シゾフィラン、ピシバニール、プロカルバジン、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン、ヒドロキシウレア、ウベニメクスまたはクレスチン等が挙げられる。
【0057】
本発明には、本発明の結晶を投与することを特徴とする癌の予防方法及び/または治療方法も含まれる。
【0058】
本発明の結晶の原料となる(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミドまたはその塩は、例えば以下に述べる実施例にしたがって製造することができる。
また、粉末X線回折の測定は、実施例1についてはBruker Axs株式会社 D8 Discover with GADDS CSTにより、波長:CuKα、λ=1.54オングストローム、透過法により測定した(管電圧:40 kV、管電流:40 mA、走査範囲:2〜40、走査速度:20°/min)。その他の実施例については、株式会社リガク社製の反射型粉末X線回折装置(RINT−TTRIII)により、波長:CuKα、λ=1.54オングストローム、検体は無反射サンプルホルダーを用いて測定した(管電圧50kV、管電流300mA、走査範囲2〜40°、走査速度20°/min、サンプリング幅0.02°、回転速度120rpm)。
【0059】
吸湿脱湿測定装置はTA instruments SGA−CX(実施例2,6,7)、TA instruments VTI−SA(実施例1,4,5)を用いた(温度:25℃、湿度:40、60、70、80、90、80、70、60、40、20、10、20、40、60、70%RH)。
【0060】
熱分析(TG/DTA)分析は、SIIナノテクノロジー(株)製のTG/DTA6200を用いた(昇温速度:10℃/min、雰囲気ガス:窒素、窒素ガス流量:200 mL/min)。
【実施例】
【0061】
実施例1
【0062】
【化3】
【0063】
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド
参考例1の工程3で得た化合物(100mg,0.20mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(4ml)溶液に、参考例2の工程3で得た化合物(35mg,0.24mmol)、トリエチルアミン(0.04ml,0.30mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(27mg,0.20mmol)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(46mg,0.24mmol)を加え、50℃にて1時間撹拌した。放冷後、反応液を酢酸エチルにて希釈し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をNH−シリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=50:1(v/v)]にて精製し、得られた精製物をメタノール(10ml)に溶解し、60℃にて24時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、標記化合物94mg(76%)を固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.68(3H,s),0.95(3H,s),1.11-1.27(2H,m),1.35-1.81(8H,m),2.10-2.17(1H,m),2.25-2.32(1H,m),3.15(1H,t,J=10.5Hz),3.27(1H,br s),3.80(1H,dd,J=11.0,2.3Hz),3.85-3.95(1H,m),4.13(1H,ddd,J=10.8,4.5,1.3Hz),4.44(1H,d,J=9.2Hz),4.64(1H,d,J=9.2Hz),5.46(1H,d,J=3.7Hz),6.49(1H,d,J=3.7Hz),6.74(1H,d,J=1.8Hz),7.07(1H,dd,J=8.2,1.8Hz),7.31(1H,dd,J=8.2,2.3Hz),7.48-7.52(2H,m),7.62(1H,s),8.05(1H,d,J=5.5Hz).
MS(ESI)m/z:618(M+H)+.
【0064】
実施例1−1
実施例1で得た化合物(302mg,0.49mmol)に、トリクロロエチレン/エタノール混合液(95/5)(4.75ml)を加えた後、約50℃に加温し溶解した。室温で静置し結晶を析出させた。析出した結晶をろ取し室温で乾燥し本結晶を得た。本結晶について、粉末X線回折、示差熱・熱重量同時測定(TG/DTA)及び吸脱湿挙動を測定した。
【0065】
本結晶は他にぎ酸エチル、アセトニトリルからも得ることができる。
粉末X線回折図を図1に、等温吸湿脱湿曲線図を図10に、熱分析データ(TG/DTA)を図17に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1−2
実施例1で得た化合物(301mg,0.49mmol)に、メタノール(3.6ml)を加えた後、約50℃に加温し溶解した。室温で静置し結晶を析出させた。析出した結晶をろ取し室温で乾燥し本結晶を得た。本結晶について、粉末X線回折、TG/DTA及び吸脱湿挙動を測定した。
【0068】
本結晶は他に2−ブタノンからも得ることができる。
粉末X線回折図を図2に、等温吸湿脱湿曲線図を図11に、熱分析データ(TG/DTA)を図18に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
実施例1−3
実施例1で得た化合物(100mg,0.16mmol)に、トリクロロエチレン(1.5ml)を加えた後、約50℃に加温し溶解した。室温で静置し結晶を析出させた。析出した結晶を濾取し室温で乾燥し本結晶を得た。本結晶について、粉末X線回折及びTG/DTAを測定した。
粉末X線回折図を図3に、熱分析データ(TG/DTA)を図19に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
実施例2
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド 塩酸塩 水および2−プロパノール(IPA)和物 結晶
実施例1で得た化合物(192mg,0.31mmol)の2−プロパノール(2.0ml)溶液に濃塩酸(0.026ml,0.31mmol)を加えた後、室温にて18時間撹拌した。析出物をろ取し、標記結晶173mg(85%)を得た。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ:0.62(3H,s),0.92(3H,s),1.09-1.58(6H,m),1.65-2.07(5H,m),2.53-2.94(1H,m),3.29-3.73(5H,m),4.56-4.76(1H,m),4.85-5.23(1H,m),6.80(1H,s),7.01-7.13(2H,m),7.14-7.20(1H,m),7.49-7.74(2H,m),8.19-8.42(1H,m),8.61-9.08(1H,m),10.41(1H,br s),11.25(1H,br s).
Anal. Calcd for C30H34Cl2FN5O4・HCl・0.75H2O・IPA: C, 54.48; H, 6.03; N, 9.63. Found: C, 54.47; H, 6.14; N, 9.65.
標記結晶の粉末X線回折図を図4に、等温吸湿脱湿曲線図を図12に、熱分析データ(TG/DTA)を図20に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
実施例3
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド 硫酸塩 水および2−プロパノール(IPA)和物
実施例1で得た化合物(52mg,0.08mmol)の2−プロパノール(0.5ml)溶液に濃硫酸(0.005ml,0.08mmol)を加えた後、室温にて2日間撹拌した。析出物をろ取し、標記化合物20mg(34%)を固体として得た。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ:0.62(3H,s),0.92(3H,s),1.13-1.61(6H,m),1.67-2.09(5H,m),2.45-2.88(1H,m),3.47-4.01(5H,m),4.58-4.77(1H,m),4.83-5.11(1H,m),6.79(1H,s),6.98-7.25(3H,m),7.51-7.73(2H,m),8.20-8.41(1H,m),8.51-8.73(1H,m),8.79-9.05(1H,m),10.35(1H,br s),11.18(1H,br s).
Anal. Calcd for C30H34Cl2FN5O4・H2SO4・0.25H2O・IPA: C, 49.94; H, 5.71; N, 8.82. Found: C, 49.74; H, 5.71; N, 8.85.
標記化合物の粉末X線回折図を図5に示す。
【0075】
実施例4
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド メタンスルホン酸塩 水和物 結晶
実施例1で得た化合物(221mg,0.36mmol)の2−プロパノール(3ml)溶液にメタンスルホン酸(0.026ml,0.39mmol)を加えた後、室温にて16時間撹拌した。析出物をろ取し、標記結晶48mg(19%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:0.62(3H,s),0.92(3H,s),1.03-2.01(11H,m),2.30(3H,s),2.47-2.56(1H,m),3.72-3.65(4H,m),4.62-4.75(1H,m),5.95-5.09(1H,m),6.73-6.85(1H,m),7.04-7.20(3H,m),7.54-7.73(2H,m),8.23-8.36(1H,m),8.60-8.75(1H,m),8.83-8.98(1H,m),10.83(1H,br s),11.22(1H,br s).
Anal. Calcd for C30H34Cl2FN5O4・CH3SO3H・2H2O: C, 49.60; H, 5.64; N, 9.33. Found: C, 49.63; H, 5.45; N, 9.30.
標記結晶の粉末X線回折図を図6に、等温吸湿脱湿曲線図を図13に、熱分析データ(TG/DTA)を図21に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
実施例5
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド エタンスルホン酸塩 水和物 結晶
実施例1で得た化合物(221mg,0.36mmol)の2−プロパノール(3ml)溶液にエタンスルホン酸(0.032ml,0.39mmol)を加えた後、室温にて23時間撹拌した。析出物をろ取し、標記結晶128mg(49%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:0.62(3H,s),0.92(3H,s),1.05(3H,t,J=7.4Hz),1.09-1.59(6H,m),1.62-2.06(5H,m),2.38(2H,q,J=7.4Hz),2.59-3.07(1H,m),3.27-3.79(5H,m),4.53-4.76(1H,m),4.78-5.16(1H,m),6.79(1H,s),7.00-7.23(3H,m),7.51-7.75(2H,m),8.21-8.41(1H,m),8.48-9.07(1H,m),10.35(1H,br s),11.19(1H,br s).
Anal. Calcd for C30H34Cl2FN5O4・C2H5SO3H・4H2O: C, 48.00; H, 6.04; N, 8.75. Found: C, 47.97; H, 5.93; N, 8.56.
標記結晶の粉末X線回折図を図7に、等温吸湿脱湿曲線図を図14に、熱分析データ(TG/DTA)を図22に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
実施例6
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド ベンゼンスルホン酸塩 水和物 結晶
実施例1で得た化合物(104mg,0.17mmol)の2−プロパノール(1ml)溶液にベンゼンスルホン酸一水和物(30mg,0.17mmol)を加えた後、室温にて24時間撹拌した。析出物をろ取し、標記結晶116mg(89%)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.69(3H,s),0.88(3H,s),1.09-1.85(7H,m),1.88-2.19(4H,m),2.53-2.77(1H,m),2.95-3.10(1H,m),3.53-3.69(1H,m),3.71-3.89(2H,m),4.68-4.85(1H,m),5.47-5.80(2H,m),6.52(1H,s),6.77-6.90(1H,m),7.03-7.11(1H,m),7.24-7.44(5H,m),7.63-7.98(4H,m),8.09-8.43(1H,m),10.16(1H,br s),10.96(1H,br s).
Anal. Calcd for C30H34Cl2FN5O4・C6H5SO3H・1.5H2O: C, 53.80; H, 5.39; N, 8.71. Found: C, 53.89; H, 5.40; N, 8.80.
【0080】
標記結晶の粉末X線回折図を図8に、等温吸湿脱湿曲線図を図15に、熱分析データ(TG/DTA)を図23に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
実施例7
(3’R,4’S,5’R)−N−[(3R,6S)−6−カルバモイルテトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル]−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボキサミド p−トルエンスルホン酸塩 水和物 結晶
【0083】
実施例1で得た化合物(300mg,0.50mmol)のアセトニトリル(4ml)懸濁液に、p−トルエンスルホン酸一水和物(85mg,0.45mmol)のアセトニトリル(4ml)溶液を加えた後、約50℃で加熱し溶解した。室温にて1日撹拌した。析出物をろ取し、標記結晶255mg(66%)を得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:0.63(3H,s),0.92(3H,s),1.09-1.59(6H,m),1.66-2.03(5H,m),2.29(3H,s),2.70-2.91(1H,m),3.34-3.74(5H,m),4.67(1H,d,J=10.1Hz),4.80-5.11(1H,m),6.80(1H,s),7.02-7.22(5H,m),7.43-7.52(2H,m),7.55-7.70(2H,m),8.23-8.39(1H,m),8.45-8.74(1H,m),10.33(1H,br s),11.14(1H,br s).
Anal. Calcd for C30H34Cl2FN5O4・C6H4CH3SO3H・1.5H2O: C, 54.34; H, 5.55; N, 8.56. Found: C, 54.06; H, 5.45; N, 8.50.
【0084】
標記結晶の粉末X線回折図を図9に、等温吸湿脱湿曲線図を図16に、熱分析データ(TG/DTA)を図24に示す。
【0085】
【表8】
【0086】
参考例1
【0087】
【化4】
【0088】
[工程1](3E/Z)−6−クロロ−3−[(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)メチレン]−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン
6−クロロ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(2.20g,13.11mmol)および2−クロロ−3−フルオロイソニコチンアルデヒド(2.20g,13.8mmol)のメタノール(130ml)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.46ml,2.63mmol)を加え16時間加熱還流した。放冷後、析出物をろ取、冷メタノールで洗浄し乾燥させることにより、標記化合物3.37g(83%)を固体として得た。
MS(APCI)m/z:309(M+H)+.
【0089】
[工程2](3’S,4’R,7’S,8’S,8a’R)−6”−クロロ−8’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−3’,4’−ジフェニル−3’,4’,8’,8a’−テトラヒドロ−1’H−ジスピロ[シクロヘキサン−1,6’−ピロロ[2,1−c][1,4]オキサジン−7’,3”−インドール]−1’,2”(1”H)−ジオン
窒素雰囲気下、工程1で得た化合物(1.86g,6.00mmol)、(5R,6S)−5,6−ジフェニルモルホリン−2−オン(1.67g,6.60mmol)、4,4−ジメチルシクロヘキサノン(0.83g,6.60mmol)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.15ml,1.20mmol)、モレキュラーシーブ4A(粉末)(3g)を加え、70℃にて、7日間加熱撹拌した。放冷後、不溶物をセライトろ去し、ろ液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1→1:1(v/v)]にて精製し、標記化合物3.39g(84%)を固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.21(3H,s),0.53(3H,s),0.89-1.08(3H,m),1.28-1.43(3H,m),1.73-1.81(1H,m),2.23-2.33(1H,m),4.58(1H,d,J=11.0Hz),4.86(1H,d,J=3.2Hz),5.31(1H,d,J=11.0Hz),6.25(1H,d,J=8.3Hz),6.67(1H,dd,J=8.3,1.8Hz),6.72-6.77(2H,m),6.93(1H,d,J=1.8Hz),7.04-7.17(6H,m),7.18-7.25(3H,m),7.79(1H,t,J=4.6Hz),7.99(1H,s),8.29(1H,d,J=5.0Hz).
MS(APCI)m/z:670(M+H)+.
【0090】
[工程3](4’S,5’R)−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボン酸
工程2で得た化合物(630mg,0.94mmol)をアセトニトリル(10ml)と水(4ml)に溶解し、炭酸カリウム(130mg,0.94mmol)を加え、85℃で16時間加熱還流した。放冷後、無水硫酸マグネシウム(113mg,0.94mmol)を加え室温で15分間撹拌した。酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して(4’S,5’R)−6”−クロロ−4’−(2−クロロ−3−フルオロピリジン−4−イル)−1’−[(1R,2S)−2−ヒドロキシ−1,2−ジフェニルエチル]−4,4−ジメチル−2”−オキソ−1”,2”−ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン−1,2’−ピロリジン−3’,3”−インドール]−5’−カルボン酸(650mg,100%)を固体として得た[MS(ESI)m/z:688(M+H)+]。得られたカルボン酸(650mg,0.94mmol)をメタノール(30ml)と水(8ml)に溶解し、氷冷下、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(1.55g,2.82mmol)を加え、同温で30分間撹拌した。氷冷下、炭酸カリウム(780mg,5.64mmol)を加え、同温にて1時間撹拌した。不溶物をセライトろ去後、ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=20:1→4:1(v/v)]より精製し、標記化合物152mg(33%)を固体として得た。
1H-NMR(500MHz,CD3OD)δ:0.74(3H,s),0.9(3H,s),1.29-1.44(2H,m),1.48-1.58(2H,m),1.64-1.76(1H,m),1.94-2.02(1H,m),2.11(1H,ddd,J=14.0,14.0,4.0Hz),2.43-2.53(1H,m),5.07(1H,d,J=10.3Hz),5.32(1H,d,J=10.3Hz),6.84(1H,d,J=1.7Hz),7.16(1H,dd,J=8.3,2.0Hz),7.63(1H,dd,J=8.0,2.3Hz),7.75(1H,t,J=5.2Hz),8.15(1H,d,J=5.2Hz).
MS(ESI)m/z:492(M+H)+.
【0091】
参考例2
【0092】
【化5】
【0093】
[工程1]2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−5−(ジベンジルアミノ)−L−エリスロ−ヘキソン酸
メチル 2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−5−(ジベンジルアミノ)−L−エリスロ−ヘキソネートメチル 2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−5−(ジベンジルアミノ)−L−エリスロ−ヘキソネート(1.60g,4.70mmol)をメタノール(30ml)に溶解し、1規定水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を氷冷下徐々に加え、その後室温で3時間撹拌した。反応液にDowex50W−X8を加えpHを5〜6に調製し、不溶物をろ去した後、ろ液を減圧濃縮し、標記化合物1.7g(100%)を固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:1.18-1.26(1H,m),1.36-1.48(1H,m),1.79-1.97(2H,m),2.62(1H,t,J=11.0Hz),3.18(1H,t,J=10.4Hz),3.40(1H,d,J=11.5Hz),3.51-3.61(4H,m),3.90-3.99(1H,m),7.12-7.38(10H,m).
MS(ESI)m/z:326(M+H)+.
【0094】
[工程2](2S,5R)−5−(ジベンジルアミノ)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボキサミド
上記工程1で得た化合物(870mg,2.67mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)に溶解し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(361mg,2.67mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(614mg,3.20mmol)を加え、室温で15分間撹拌した。塩化アンモニウム(285mg,5.44mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(l.86ml,10.7mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。酢酸エチルで希釈し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、標記化合物495mg(57%)を固体として得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:1.35-1.45(1H,m),1.60-1.70(1H,m),2.10-2.18(1H,m),2.21-2.28(1H,m),2.76(1H,tt,J=11.4,4.0Hz),3.44(1H,t,J=10.9Hz),3.67(4H,q,J=14.2Hz),3.71-3.73(1H,m),4.04(1H,dq,J=11.0,2.1Hz),5.35(1H,s),6.40(1H,s),7.21-7.36(10H,m).
MS(ESI)m/z:325(M+H)+.
【0095】
[工程3](2S,5R)−5−アミノテトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボキサミド
上記工程2で得た化合物(490mg,1.51mmol)をエタノール(10ml)に溶解し、20%水酸化パラジウム(100mg)を加え、水素雰囲気下、室温で16時間撹拌した。触媒をセライトろ去後、ろ液を減圧留去、乾燥し、標記化合物215mg(99%)を固体として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:1.11-1.22(1H,m),1.25-1.35(1H,m),1.83-1.91(2H,m),2.51-2.60(1H,m),2.90(1H,t,J=10.5Hz),3.52(1H,d,J=11.9Hz),3.78-3.84(1H,m),6.99(1H,br s),7.09(1H,br s).
MS(ESI)m/z:145(M+H)+.
【0096】
(試験例1 Mdm2/p53結合アッセイ)
蛋白質緩衝液(20mM HEPES pH7.4,150mM NaCl,0.1% BSA)を用いて、His−p53(p53の1〜132番目のアミノ酸からなるp53部分蛋白質とヒスチジン蛋白質との融合蛋白質)およびGST−Mdm2(Mdm2の25〜108番目のアミノ酸であって、33番目のロイシン残基をグルタミン酸に変換したMdm2部分蛋白質とグルタチオントランスフェラーゼとの融合蛋白質)の蛋白質をそれぞれ6.25nM含む蛋白質希釈溶液を作成した。この蛋白質希釈溶液を、384ウェルプレート(384−well low volume NBC,Corning、カタログ番号3676)の各ウェルに8μLずつ添加した。
【0097】
次に、DMSOを用いて試験化合物を希釈し、この希釈液を10%含む蛋白質緩衝液を作製し、各ウェルに4μLずつ添加した。
【0098】
続いて、抗体希釈緩衝液(20mM HEPES pH7.4, 150mM NaCl, 0.1% BSA,0.5M KF)を用いて、XL665標識抗His抗体(HTRF monoclonal anti−6HIS antibody labeled with XL665(カタログ番号61HISXLB)、Schering/Cisboio Bioassays)およびユーロピウム(Eu)標識抗GST抗体(HTRF monoclonal anti−GST antibody labeled with europium cryptate、Schering/Cisboio Bioassays、カタログ番号61GSTKLB)をそれぞれ2.5μg/mLおよび0.325μg/mLの濃度で含む溶液を作製し、各ウェルに8μLずつ添加した(反応液総量:20μl/ウェル)。その後、プレートを25℃で1時間放置した。
【0099】
励起波長320nmにおける620nmおよび665nmの時間分解蛍光をプレートリーダー(ARVOsx、PerkinElmer、またはPHERAstar, BMGLABTECH)を用いて測定した。計測値(RFU 620nmとRFU 665nm)を用いて、以下の式にてRatio(R)を算出した。
R=(RFU 665nm−BI−C×RFU 620nm)/RFU 620nm
BI:各蛋白質、化合物、および抗体を添加していない反応液(各緩衝液のみ)の665nmの計測値
C(補正係数)=(A−BI)/D
AおよびDは、Eu標識抗GST抗体溶液のみを添加した反応液の665nmおよび620nmの各計測値
His−p53、GST−Mdm2、試験化合物および各抗体を添加した ウェルから算出したR値をR(sample)とし、His−p53、GST−Mdm2および各抗体を添加したが試験化合物を添加していないウェルから算出したR値をR(control)とし、GST−Mdm2、試験化合物および各抗体を添加したがHis−p53を添加していないウェルから算出したR値をR(background)として、下記の式からT/Cを算出し、シグモイドフィッティングを行い、Mdm2/p53結合に対するIC50値を算出した。


【0100】
T/C=(R(sample)−R(background))/(R(control)−R(background))
化合物(1)は0.1μM以下のIC50値を示した。
【0101】
(試験例2 抗細胞試験)
野性型p53を有するヒト肺癌由来細胞株NCI−H460を用いて抗細胞試験を実施した。
【0102】
NCI−H460細胞を、培地(10%牛胎児血清を含むRPMI1640培地)に懸濁し、96ウェルのマルチウェルプレートにそれぞれ500細胞/150μL/ウェルで播種した。試験化合物をDMSOに溶解し、これを培地で希釈して検体溶液とした(DMSO濃度 1%以下)。播種の翌日、試験化合物を添加していない培地または検体溶液を、各ウェルに50μLずつ添加した。細胞播種翌日に培地を50μLずつ添加した直後と、検体溶液または培地を細胞に添加し、37℃、5% COで3日間培養した後に、MTTアッセイを実施した。MTTアッセイは以下のように実施した。
【0103】
リン酸緩衝液(Dulbecco’s Phosphate−buffered Salines)を用いて5mg/mLのMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド,Sigma,M−2128)溶液を作製し、このMTT溶液を20μLずつ各ウェルに添加した。その後、プレートを37℃、5% CO下で4時間培養した。プレートを1200rpmで5分間遠心処理した後、培養上清をディスペンサーにて吸引除去した。DMSOを各ウェルに150μLずつ添加し、生成されたフォルマザンを溶解した。プレートミキサーを用いてプレートを撹拌することにより、各ウェルの発色を均一にした。各ウェルの吸光度をOD 540nm、reference 660nmの条件下、プレートリーダー(SpectraMaxPLUS384,Molecular Devices,CA USA)を用いて測定した。
【0104】
検体溶液添加当日に測定したOD値をSとし、検体溶液添加の3日後に測定したOD値をTとし、DMSO希釈液添加の3日後に測定したOD値をCとし、下記の計算式より各濃度におけるT/C(%)を求めて用量反応曲線を描き、50%増殖抑制濃度(GI50値)を算出した。
【0105】
T/C(%)=(T−S)/(C−S)×100
化合物(1)は、GI50(μM)<0.1の抗細胞効果を示した。
【0106】
(製剤例1)<カプセル剤>
実施例で得られた結晶5g、乳糖115g、トウモロコシデンプン58gおよびステアリン酸マグネシウム2gをV型混合機を用いて混合した後、3号カプセルに180mgずつ充填するとカプセル剤が得られる。
(製剤例2)<錠剤>
実施例で得られた結晶5g、乳糖90g、トウモロコシデンプン34g、結晶セルロース20gおよびステアリン酸マグネシウム1gをV型混合機を用いて混合した後、1錠当り150mgの質量で錠剤機で打錠すると錠剤が得られる。
(製剤例3)<懸濁剤>
メチルセルロースを精製水に分散、溶解させた分散媒を調製し、実施例で得られた結晶を乳鉢に量りとり、前述した分散媒を少量ずつ加えながらよく練り合わせ、精製水を加えて懸濁液100gを調製する。
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