特許第6016293号(P6016293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016293
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/40 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   B41F15/40 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-162480(P2012-162480)
(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公開番号】特開2014-19123(P2014-19123A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】近藤 輔
(72)【発明者】
【氏名】小室 恵佐夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩輔
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−027501(JP,B1)
【文献】 特開昭53−126381(JP,A)
【文献】 特開昭49−135712(JP,A)
【文献】 特開2012−030462(JP,A)
【文献】 実開昭53−162887(JP,U)
【文献】 特開昭61−035952(JP,A)
【文献】 特開2003−191434(JP,A)
【文献】 特公昭48−011407(JP,B1)
【文献】 実公昭35−019791(JP,Y1)
【文献】 実開昭49−108987(JP,U)
【文献】 国際公開第2006/118126(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00−15/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体の表面に一方面を当接させると共に孔を複数形成された版材と、
前記版材の他方面に当接して当該版材の他方面に送給された液体を前記孔から前記対象体の表面へ押し出すスキージと
を備えている液体供給装置において、
前記版材の前記孔から液体を押し出す際の当該版材と前記スキージとの相対移動における当該スキージの移動方向下流側に配設されて当該スキージの当該版材との当接部分の上記移動方向下流側の空間に液体を留めるように液体の移動を規制する液体移動規制部材を備え
前記液体移動規制部材が、前記版材に対して接触することなく隙間を有するように配設されている
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給装置において、
前記液体移動規制部材が、前記空間の少なくとも一部を覆うものである
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体供給装置において、
前記液体移動規制部材が、前記スキージに対して隙間を有することなく繋がるように延設されたものである
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項4】
回転可能に支持されて対象体であるシートを外周面に保持する圧胴と、
前記圧胴に対接するように回転可能に支持されて前記版材であるスクリーンを円筒状にした中空胴と
を備えると共に、
前記スキージが、前記中空胴の内部に当該中空胴の軸方向に沿って長手方向を向けるように配設されて当該中空胴の内周面に当接して液体であるインキを前記孔から押し出すものである
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体供給装置を利用するロータリスクリーン装置であって、
前記液体移動規制部材が、前記スキージにインキが衝突して跳ね返されながら撹拌されることを抑制するものである
ことを特徴とするロータリスクリーン装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象体の表面に版材からスキージを介して液体を供給する液体供給装置に関し、特に、シートやウエブの表面にロータリスクリーンからスキージを介してインキの印刷やニスのコーティングを行うロータリスクリーン装置に適用すると有効なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、シートの表面にインキを印刷するロータリスクリーン装置は、ロータリスクリーンに形成された複数の孔から内部のインキをスキージで押し出すことにより、圧胴の外周面に保持されているシートに対して上記インキをスクリーン印刷することができるようになっている(例えば、下記特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4508686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような従来のロータリスクリーン装置においては、前記ロータリスクリーン等を高速度で回転させて高速スクリーン印刷を行うと、当該ロータリスクリーンの内部に送給された前記インキが、前記スキージに激しく衝突して跳ね返されながら大きく撹拌されて内部に空気を抱き込んで泡立ちやすくなってしまっていた。このようにインキが泡立ってしまうと、前記ロータリスクリーンの前記孔から押し出されるインキにムラを生じやすくなって、印刷品質の低下を招いてしまうおそれがあった。
【0005】
このような問題は、シートの表面にインキをスクリーン印刷するロータリスクリーン装置に限らず、例えば、ウエブの表面にインキをスクリーン印刷するロータリスクリーン装置や、シートやウエブの表面にニスをスクリーンコーティングするロータリスクリーン装置を始めとして、シートやウエブの表面にインキのスクリーン印刷やニスのスクリーンコーティングを行う平版式のスクリーン装置を含め、版材の孔からスキージを介して液体を押し出して対象体の表面に供給する液体供給装置であれば、上述した場合と同様にして生じ得ることである。
【0006】
このようなことから、本発明は、液体を対象体の表面にムラなく供給することができる液体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、本発明に係る液体供給装置は、対象体の表面に一方面を当接させると共に孔を複数形成された版材と、前記版材の他方面に当接して当該版材の他方面に送給された液体を前記孔から前記対象体の表面へ押し出すスキージとを備えている液体供給装置において、前記版材の前記孔から液体を押し出す際の当該版材と前記スキージとの相対移動における当該スキージの移動方向下流側に配設されて当該スキージの当該版材との当接部分の上記移動方向下流側の空間に液体を留めるように液体の移動を規制する液体移動規制部材を備え、前記液体移動規制部材が、前記版材に対して接触することなく隙間を有するように配設されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る液体供給装置は、上述した液体供給装置において、前記液体移動規制部材が、前記空間の少なくとも一部を覆うものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る液体供給装置は、上述した液体供給装置において、前記液体移動規制部材が、前記スキージに対して隙間を有することなく繋がるように延設されたものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、回転可能に支持されて対象体であるシートを外周面に保持する圧胴と、前記圧胴に対接するように回転可能に支持されて前記版材であるスクリーンを円筒状にした中空胴とを備えると共に、前記スキージが、前記中空胴の内部に当該中空胴の軸方向に沿って長手方向を向けるように配設されて当該中空胴の内周面に当接して液体であるインキを前記孔から押し出すものである上述した液体供給装置を利用するロータリスクリーン装置であって、前記液体移動規制部材が、前記スキージにインキが衝突して跳ね返されながら撹拌されることを抑制するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体供給装置によれば、液体移動規制部材が、スキージの版材との当接部分の前記移動方向下流側の空間に液体を留めるように液体の移動を規制することから、液体が、内部に空気を抱き込んで泡立ってしまうことを大幅に抑制できるので、版材の孔から押し出される液体にムラを生じにくくすることができ、液体を対象体の表面にムラなく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る液体供給装置をロータリスクリーン装置に適用した場合の主な実施形態の要部の概略構成図である。
図2図1の矢線II方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る液体供給装置の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明に係る液体供給装置は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
[主な実施形態]
本発明に係る液体供給装置をロータリスクリーン装置に適用した場合の主な実施形態を図1,2に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、回転可能に支持されて対象体であるシートを外周面に着脱可能に保持する圧胴110には、回転可能に支持されたロータリスクリーン120が対接しており、当該ロータリスクリーン120は、以下のような構造となっている。
【0016】
図1,2に示すように、絵柄に応じた小さな孔を複数形成された薄いスクリーン(版材)を円筒状にして回転可能に支持した中空胴121の内部には、当該中空胴121の軸方向に沿って長手方向を向けた支持軸122が配設されている。前記支持軸122には、ブラケット123が当該支持軸122の長手方向に沿って設けられている。前記ブラケット123には、前記中空胴121の軸方向に沿って長手方向を向けた板状のスキージ124の基端側が固定板125を介してボルト126によって固定支持されており、当該スキージ124は、先端側を前記中空胴121の内周面(他方面)に当接させるように、その位置が設定されている。
【0017】
前記スキージ124の、前記中空胴121の回転方向上流側の面、すなわち、前記スキージ124と前記中空胴121との相対移動における当該スキージ124の移動方向下流側の面(図1中、右側)の基端寄り(図2中、上寄り)には、当該スキージ124の当該中空胴121との当接部分の上記回転方向上流側、すなわち、上記相対移動における当該スキージ124の移動方向下流側の空間121aを覆う液体移動規制部材である規制板127が、上記空間121aの上記スキージ124及び上記中空胴121で形成される開口のごく一部のみ開放しつつ当該開口の大部分を塞ぐように、基端側(図1中、左側)を隙間なく取り付けられて先端側(図1中、右側)を当該中空胴121の内周面に接触させることなく隙間を有する程度にまで当該中空胴121の内周面へ向けて延設されている。
【0018】
前記規制板127の長手方向中程に一方面側と他方面側との間を連通するように形成された接続穴には、液体であるインキ1を送給するインキ送給管129の先端側が接続されている。前記インキ送給管129の基端側は、前記中空胴121の外部に設置された図示しないインキ送給装置に接続されており、当該インキ送給装置を作動させることにより、上記インキ送給管129を介して前記中空胴121の内周面(他方面)側の前記空間121a内に前記インキ1を送給することができるようになっている。
【0019】
なお、本実施形態においては、前記インキ送給管129、前記インキ送給装置等により給液手段を構成している。
【0020】
このような本実施形態に係るロータリスクリーン装置100においては、前記インキ送給装置を作動して前記インキ1を前記中空胴121の前記空間121a内に前記インキ送給管129を介して送給すると共に、前記圧胴110及び前記ロータリースクリーン120の前記中空胴121を回転させると、前記スキージ124が、前記中空胴121の前記空間121a内に送給された前記インキ1を当該中空胴121の前記孔から外周面(一方面)へ押し出すことにより、前記圧胴110に保持されて上記中空胴121の外周面(一方面)に当接するシートの表面に上記インキ1をスクリーン印刷することができる。
【0021】
このとき、前記圧胴110及び前記ロータリスクリーン120の前記中空胴121を高速度で回転させて高速スクリーン印刷を行うと、前記規制板127が、前記中空胴121の前記空間121a内に前記インキ1を留めるように当該中空胴121の回転方向上流側、すなわち、前記相対移動における前記スキージ124の移動方向下流側への当該インキ1の移動を規制することから、当該インキ1が前記スキージ124に激しく衝突して跳ね返されながら大きく撹拌されることを抑制できるので、当該インキ1が内部に空気を抱き込んで泡立ってしまうことを大幅に抑制できる。
【0022】
したがって、本実施形態に係るロータリスクリーン装置100によれば、前記中空胴121の前記孔から押し出されるインキ1にムラを生じにくくすることができるので、インキ1をムラなくシートの表面に印刷することができ、印刷品質の低下を防止することができる。
【0023】
また、前記規制板127の基端側が、前記スキージ124に対して隙間を有することなく繋がるように延設されているので、当該スキージ124と当該規制板127の基端側との間から前記インキ1を漏出させることなく前記空間121a内に留めておくことが確実にできる。
【0024】
また、前記規制板127の先端側が、前記中空胴121の内周面に対して接触することなく隙間を有するように設定されているので、スクリーン印刷を行う際や、前記圧胴110に対して前記ロータリスクリーン120を移動(胴抜き、胴入れ)させる際に、上記中空胴121に傷を付けてしまうことを防止できる。
【0025】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態では、前記インキ送給装置を作動させることにより、前記インキ送給管129を介して前記中空胴121の内周面(他方面)側の前記空間121a内に前記インキ1を送給するようにしたが、他の実施形態として、前記インキ送給管129や前記インキ送給装置等を省略して、例えば、印刷運転開始前に、オペレータが、前記スキージ124と前記規制板127との間の前記空間121aに前記インキ1を柄杓等によって予め供給して対応するようにすることも可能である。
【0026】
また、前述した実施形態においては、前記規制板127を前記スキージ124に取り付けて固定支持するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記中空胴121の内部にサポートシャフトを別途配設し、当該サポートシャフトに前記規制板127を固定支持するようにすることも可能である。
【0027】
このとき、前記スキージ124と上記規制板127の基端側との間から前記インキ1を漏出させることなく前記空間121a内に留めておくことが確実にできるように、前記スキージ124に対して隙間を有することなく繋がるように上記規制板127の基端側を設定すると共に、スクリーン印刷を行う際や、前記圧胴110に対して前記ロータリスクリーン120を移動(胴抜き、胴入れ)させる際に、上記中空胴121に傷を付けてしまうことを防止できるように、前記中空胴121の内周面に対して接触することなく隙間を有するように前記規制板127の先端側を設定すると、非常に好ましい。
【0028】
また、前述した実施形態においては、シートの表面にインキ1をスクリーン印刷するロータリスクリーン装置100の場合について説明したが、本発明に係る液体供給装置は、これに限らず、例えば、ウエブの表面にインキをスクリーン印刷するロータリスクリーン装置や、シートやウエブの表面にニスをスクリーンコーティングするロータリスクリーン装置を始めとして、シートやウエブの表面にインキのスクリーン印刷やニスのスクリーンコーティングを行う平版式のスクリーン装置を含め、版材の孔からスキージを介して液体を押し出して対象体の表面に供給する液体供給装置であれば、前述した実施形態の場合と同様にして適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る液体供給装置は、液体を対象体の表面にムラなく供給することができるので、例えば、シートやウエブの表面にロータリスクリーンからスキージを介してインキの印刷やニスのコーティングを行うロータリスクリーン装置に適用すれば、印刷産業等において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 インキ
100 ロータリスクリーン装置
110 圧胴
120 ロータリスクリーン
121 中空胴
121a 空間
122 支持軸
123 ブラケット
124 スキージ
125 固定板
126 ボルト
127 規制板
129 インキ送給管
図1
図2