特許第6016297号(P6016297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016297共縮合物およびそれを含有するゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016297
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】共縮合物およびそれを含有するゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/10 20060101AFI20161013BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20161013BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C08G8/10
   C08L21/00
   C08L61/06
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-229133(P2012-229133)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-80502(P2014-80502A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 一祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸行
(72)【発明者】
【氏名】太田 義輝
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭56−037902(JP,B1)
【文献】 特開昭58−059828(JP,A)
【文献】 特開昭62−212411(JP,A)
【文献】 特公昭52−026275(JP,B1)
【文献】 特開平06−234824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08G 59/00−59/72
C08L 61/00−61/34
C08G 4/00−16/06
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p−tert−ブチルフェノールと、式(1)
【化1】
(式中のRは、炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
で示される置換フェノールと、ホルムアルデヒドとを、アルカリ触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型縮合物に、さらにレゾルシンを反応させて得られる共縮合物であって、前記共縮合物を構成するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)と式(1)で表される置換フェノール成分(ユニット)の合計量に対するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)の割合が、物質量(モル)基準で10〜50%であることを特徴とする共縮合物。
【請求項2】
軟化点が80℃以上160℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の共縮合物。
【請求項3】
請求項1または2記載の共縮合物中に残留するモノマーであるp−tert−ブチルフェノール、式(1)で示される置換アルキルフェノール及びレゾルシンの総量が15重量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の共縮合物。
【請求項4】
式(1)で示される置換アルキルフェノールがp−クレゾールであることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の共縮合物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか一項に記載の共縮合物を含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項6】
p−tert−ブチルフェノールと式(1)で示される置換アルキルフェノールにホルムアルデヒドを加えて反応させることでレゾール型縮合物を得る工程と、得られたレゾール型縮合物にレゾルシンを加えて共縮合させる工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の共縮合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルフェノール等から得られる共縮合物、当該共縮合物を用いたゴム組成物および当該共縮合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、ベルト、ホースなどのように、スチールコード類や有機繊維類等の補強材で補強する必要のあるゴム製品においては、ゴムと補強材との強固な接着が求められている。ゴムとの接着を行うため、補強材を種々の接着剤で処理する方法や、ゴムの加工工程において接着剤を他の各種配合剤とともに配合する方法が知られている。これらの中でも、ゴムの加工工程において接着剤を配合する方法は、補強材の接着剤処理の有無に関わらず、強固に加硫接着することが可能であるため広く採用されている。このようなゴムの加工工程において使用される接着剤として、p−tert−オクチルフェノールやp−ノニルフェノール等のアルキルフェノールとホルマリン類を反応させ共縮合物を得、その共縮合物にレゾルシンを反応させた共縮合物が知られている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−234824号公報
【0004】
ゴムの混練は通常150〜190℃程度で実施されるため、このような接着剤として用いられる共縮合物は、この温度で効率よく分散することが求められ、共縮合物の軟化点がこの温度より高い場合分散性不良の原因となる。また、これら共縮合物は原料であるアルキルフェノール類等揮発成分由来の独特の臭気を有しており、作業環境の観点から揮発成分による臭気が少ないことが好ましい。
【0005】
一方、本願発明者らは新規な、ゴムの加工工程において使用される接着剤を探索する過程において、共縮合物の原料として良く使用されている、p−tert−オクチルフェノールやp−ノニルフェノールといった炭素数の多いアルキルフェノール類に代え、炭素数の少ないp−tert−ブチルフェノールを原料として使用し共縮合物を合成したところ、得られた樹脂の軟化点が非常に高く、接着剤として好ましくないことが判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、補強材で補強するゴム製品の分野に用いられる接着剤用の共縮合物であり、原料のアルキルフェノール類としてp−tert−ブチルフェノールを用いた共縮合物であって、混練時にゴムに効率よく分散する共縮合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、共縮合物の原料としてp−tert−ブチルフェノール単独でなく、p−tert−ブチルフェノールと同時に以下式(1)
【0008】
【化1】
(式中のRは、炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
で示される置換フェノールとホルムアルデヒドとを、アルカリ触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型縮合物に、さらにレゾルシンを反応させた共縮合物であって、前記共縮合物を構成するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)と式(1)で表される置換フェノール成分(ユニット)の合計量に対するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)の割合が、物質量(モル)基準で10〜50%であることを特徴とする共縮合物とすることにより、p−tert−ブチルフェノールを原料として単独で使用した場合に比べ大幅に軟化点が低下し、混練時にゴムに効率よく分散する新規な共縮合物を提供することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には下記〔1〕〜〔6〕記載の発明を含む。
〔1〕p−tert-ブチルフェノールと、式(1)
【0009】
【化2】
(式中のRは、炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
で示される置換フェノールと、ホルムアルデヒドとを、アルカリ触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型縮合物に、さらにレゾルシンを反応させて得られる共縮合物であって、前記共縮合物を構成するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)と式(1)で表される置換フェノール成分(ユニット)の合計量に対するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)の割合が、物質量(モル)基準で10〜50%であることを特徴とする共縮合物。
〔2〕
軟化点が80℃以上160℃以下であることを特徴とする〔1〕に記載の共縮合物。
〔3〕請求項1または2記載の共縮合物中に含まれるp−tert-ブチルフェノール、式(1)で示される置換アルキルフェノール及びレゾルシンの総量が15重量%以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の共縮合物。
〔4〕
式(1)で示される置換アルキルフェノールがp−クレゾールであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕
に記載の共縮合物。
〔5〕
〔1〕〜〔4〕いずれか一項に記載の共縮合物を含むことを特徴とするゴム組成物。
〔6〕
p−tert-ブチルフェノールと式(1)で示される置換アルキルフェノールにホルムアルデヒドを加えて反応させることでレゾール型縮合物を得る工程と、得られたレゾール型縮合物にレゾルシンを加えて共縮合させる工程とを含むことを特徴とする〔1〕〜〔4〕に記載の共縮合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料としてp−tert-ブチルフェノールを使用しても混練時にゴムに効率よく分散し、それを加硫して得られるゴムと補強材との接着を強固にすることが可能である、補強材とゴムとの接着剤として有用な共縮合物が提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
以下式(1)
【0013】
【化3】
(式中のRは、炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
で表される置換フェノールとしては、p−クレゾール、4−エチルフェノール、4−プロピルフェノールが例示されるが、この中でも入手性が良いことからp−クレゾールが好ましい。また、式(1)で表される置換フェノールの使用量は特に限定されないが、p−tert-ブチルフェノール1モルに対し通常1〜10倍モル使用し、好ましくは1.5〜10倍モル使用する。
【0014】
本発明で用いるホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド自体のほか、水溶液であるホルマリン、及びパラホルムアルデヒドやトリオキサンのような、容易にホルムアルデヒドを発生する化合物を使用することができる。ホルムアルデヒドの仕込みモル比は限定されないが、p−tert-ブチルフェノールと上記式(1)で示される置換フェノールの総計に対し、1〜2倍モルであることが好ましく、その中でも1.1〜1.5倍モルの範囲が特に好ましい。1倍モルより少ない場合、未反応モノマーが多くなり臭気や揮発性有機化合物が増加する懸念がある。また、2倍モルよりも多い場合、ホルムアルデヒドが未反応のまま多く残存するため、樹脂が三次元構造化して軟化点が高くなる懸念がある。
【0015】
アルカリ触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、アンモニア、アミンのような、通常のレゾール型縮合物を製造する際に用いられるものを使用することができる。アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。この中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらのアルカリは固体状のものでも、水溶液状のものでも利用可能であるが、反応性、取扱いの面から水溶液のものを使用することが好ましい。水溶液状のものを使用する場合、その濃度は通常、10重量%〜50重量%のものを使用する。アルカリの仕込みモル比としては通常限定されないが、p−tert-ブチルフェノールと上記式(1)の置換フェノールの総量に対し、0.03〜0.2倍モルの範囲が好ましい。
【0016】
レゾール型縮合物を得る反応は、溶媒中で行うことも可能である。使用する溶媒は特に限定されることはなく、水、アルコール、芳香族炭化水素等を用いることが出来る。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、モノクロロベンゼンなどが例示される。中でも水、トルエン、キシレンが好ましい。これらの溶媒は単独あるいは2種類以上を併用して用いることも可能である。また、レゾール型縮合物を得る反応は通常、反応温度40〜100℃、1〜8時間で実施される。
【0017】
レゾルシンの仕込みモル比は通常限定されないが、p−tert-ブチルフェノールと前記式(1)の置換フェノールの総量に対し、0.5〜4.0倍モルの範囲であることが好ましく、その中でも0.8〜1.2倍の範囲が特に好ましい。
【0018】
レゾール型縮合物とレゾルシンとの反応は、溶媒中で行うことも可能である。使用する溶媒は特に限定されることはなく、水、アルコール、芳香族炭化水素等を用いることが出来る。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、モノクロロベンゼンなどが例示される。中でも水、トルエン、キシレンが好ましい。これらの溶媒は単独あるいは2種類以上を併用して用いることも可能である。また、レゾール型縮合物とレゾルシンとの反応は通常、反応温度40〜150℃、1〜8時間で実施される。
【0019】
こうして得られる本発明の共縮合物は、共縮合物を構成するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)と式(1)で表される置換フェノール成分(ユニット)の合計量に対するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)の割合が、物質量(モル)基準で10〜50%となる。この割合は、得られた共縮合物をH−NMRにて分析を行い、以下の計算を行い決定される
(p−tert−ブチル基由来のプロトンの積分値/9)/〔(p−tert−ブチル基由来のプロトンの積分値/9)+(式(1)で表される置換フェノール由来のアルキル基(R)由来のプロトンの積分値)/(アルキル基のプロトン数)〕×100
50%より高いと軟化点が高くなり、混練時にゴムに効率よく分散しなくなる。
【0020】
本発明の共縮合物中に含まれる、未反応モノマーであるp−tert-ブチルフェノール、式(1)で示される置換アルキルフェノール、レゾルシンの総量は特に限定されないが、15重量%以下であることが好ましい。15重量%以下とすることで臭気が低減可能であり、併せて揮発性有機化合物が低減され、環境上好ましい。
【0021】
本発明の共縮合物の軟化点は特に限定されないが、80℃〜190℃の範囲であることが好ましい。中でも90℃〜160℃であることが特に好ましい。80℃より低いと保存中にブロッキングしてしまう懸念があり、190℃より高いとゴム成分と混練するときに分散不良となる懸念がある。
【0022】
本発明のゴム組成物は上記の共縮合物とゴム成分と充填剤とイオウとを混練して得られる。これらとともに加硫促進剤、酸化亜鉛、ホルムアルデヒド発生剤や有機コバルト化合物を混練することが好ましい。
【0023】
上記の共縮合物の使用量は特に限定されるものではないが、通常はゴム成分100重量部あたり0.5〜10重量部の範囲で用いられる。中でも1〜5重量部の範囲が好ましい。0.5重量部より少ない場合補強材とゴムとの接着剤として有用に作用せず、10重量部より多い場合、 前記作用に問題はないが添加量に見合う作用が発現せず経済的に好ましくない。
【0024】
ゴム成分としては、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴムおよびその他の変性天然ゴムのほか、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソプレン・イソブチレン共重合ゴム(IIR)、エチレン・プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(HR)等の各種の合成ゴムが例示されるが、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム等の高不飽和性ゴムが好ましく用いられる。特に好ましくは天然ゴムである。また、天然ゴムとスチレン・ブタジエン共重合ゴムの併用、天然ゴムとポリブタジエンゴムの併用等、数種のゴム成分を組み合わせることも有効である。
【0025】
天然ゴムの例としては、RSS#1、RSS#3、TSR20、SIR20等のグレードの天然ゴムを挙げることができる。エポキシ化天然ゴムとしては、エポキシ化度10〜60モル%のものが好ましく、例えばクンプーラン ガスリー社製ENR25やENR50が例示できる。脱蛋白天然ゴムとしては、総窒素含有率が0.3重量%以下である脱蛋白天然ゴムが好ましい。変性天然ゴムとしては天然ゴムにあらかじめ4−ビニルピリジン、N,N,−ジアルキルアミノエチルアクリレート(例えばN,N,−ジエチルアミノエチルアクリレート)、2−ヒドロキシアクリレート等を反応させた極性基を含有する変性天然ゴムが好ましく用いられる。
【0026】
SBRの例としては、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の210〜211頁に記載されている乳化重合SBRおよび溶液重合SBRを挙げることができる。とりわけ溶液重合SBRが好ましく用いられ、更には日本ゼオン社製「ニッポール(登録商標)NS116」等の4,4’−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンを用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、JSR社製「SL574」等のハロゲン化スズ化合物を用いて分子末端を変性した溶液重合SBR、旭化成社製「E10」、「E15」等シラン変性溶液重合SBRの市販品や、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、または、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記記載の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性して得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、またはそれら複数の元素を有する溶液重合SBRが、特に好ましく用いられる。
【0027】
BRの例としては、シス1,4結合が90%以上の高シスBRやシス結合が35%前後の低シスBR等の溶液重合BRが例示され、高ビニル含量の低シスBRは好ましく用いられる。更には日本ゼオン製「Nipol(登録商標)BR 1250H」等スズ変性BRや、4,4‘−ビス−(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、ハロゲン化スズ化合物、ラクタム化合物、アミド化合物、尿素系化合物、N,N−ジアルキルアクリルアミド化合物、イソシアネート化合物、イミド化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物(トリアルコキシシラン化合物等)、アミノシラン化合物のいずれかを単独で用いて、または、スズ化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物や、アルキルアクリルアミド化合物とアルコキシ基を有するシラン化合物等、前記記載の異なった複数の化合物を2種以上用いて、それぞれ分子末端を変性して得られる分子末端に窒素、スズ、ケイ素のいずれか、またはそれら複数の元素を有する溶液重合BRが、特に好ましく用いられる。これらBRは通常は天然ゴムとのブレンドで使用される。
【0028】
ゴム成分としては天然ゴムが好ましく、ゴム成分に占める天然ゴムの割合は70重量%以上であることが好ましい。
【0029】
充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示されるが、カーボンブラック及びシリカが好ましく用いられ、更にはカーボンブラックが特に好ましく使用される。カーボンブラックとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載されるものが挙げられ、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)等のカーボンブラックが好ましい。タイヤトレッド用ゴム組成物にはCTAB表面積40〜250m2/g、窒素吸着比表面積20〜200m2/g、粒子径10〜50nmのカーボンブラックが好ましく用いられ、CTAB表面積70〜180m2/gであるカーボンブラックが更に好ましく、その例としてはASTMの規格において、N110、N220、N234、N299、N326、N330、N330T、N339、N343、N351等である。またカーボンブラックの表面にシリカを0.1〜50重量%付着させた表面処理カーボンブラックも好ましい。更には、カーボンブラックとシリカの併用等、数種の充填剤を組み合わせることも有効である。
【0030】
シリカとしては、CTAB比表面積50〜180m2/gや、窒素吸着比表面積50〜300m2/gのシリカが例示され、東ソー・シリカ(株)社製「AQ」、「AQ−N」、デグッサ社製「ウルトラジル(登録商標)VN3」、「ウルトラジル(登録商標)360」、「ウルトラジル(登録商標)7000」、ローディア社製「ゼオシル(登録商標)115GR」、「ゼオシル(登録商標)1115MP」、「ゼオシル(登録商標)1205MP」、「ゼオシル(登録商標)Z85MP」、日本シリカ社製「ニップシール(登録商標)AQ」等の市販品が好ましく用いられる。また通常充填剤としてシリカを用いる場合にはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)ジスルフィド、オクタンチオ酸S−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エステル(ジェネラルエレクトロニックシリコンズ社製「NXTシラン」)からなる群から選択される1種以上のシランカップリング剤等、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物を添加することが好ましい。
【0031】
水酸化アルミニウムとしては、窒素吸着比表面積5〜250m2/g、DOP給油量50〜100ml/100gの水酸化アルミニウムが例示される。
【0032】
かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり10〜120重量部の範囲が好ましい。特に好ましいのは30〜70重量部である。
【0033】
充填剤としてはカーボンブラックが好ましく、充填剤に占めるカーボンブラックの割合は70重量%以上であることが好ましい。
【0034】
硫黄成分としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、及び高分散性硫黄等が挙げられる。通常は粉末硫黄が好ましく、タイヤのベルト用部材等の硫黄量が多いタイヤ部材に用いる場合には不溶性硫黄が好ましい。硫黄成分の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり1〜10重量部の範囲が好ましい。タイヤのベルト用部材等では5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0035】
加硫促進剤の例としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人 日本ゴム協会発行)の412〜413ページに記載されているチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
【0036】
具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)が挙げられる。中でも、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、またはジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)とジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましい。
【0037】
加硫促進剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり0.5〜3重量部の範囲が好ましい。中でも0.5〜1.2重量部の範囲が特に好ましい。
【0038】
酸化亜鉛の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり3〜15重量部の範囲が好ましい。中でも5〜10重量部の範囲が特に好ましい。
【0039】
ホルムアルデヒド発生剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、ペンタキス(メトキシメチル)メチロールメラミン、テトラキス(メトキシメチル)ジメチロールメラミン等のゴム工業において通常使用されているものを挙げることができる。中でもヘキサキス(メトキシメチル)メラミン単独又はそれを主成分とする混合物が好ましい。これらのホルムアルデヒド発生剤は、それぞれ単独で、又は組み合わせて用いることができ、その配合量は前記ゴム成分100重量部に対し、0.5〜4重量部程度の範囲が好ましく、1〜3重量部程度の範囲がより好ましい。
【0040】
有機コバルト化合物としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト等の酸コバルト塩や、脂肪酸コバルト・ホウ素錯体化合物(例えば、商品名「マノボンドC(登録商標)」:ローディア社製)等が挙げられる。有機コバルト化合物の使用量は、前記ゴム成分100重量部に対し、コバルト含量にして0.05〜0.4重量部の範囲が好ましい。
【0041】
本発明のゴム組成物は従来よりゴム分野で用いられている各種の配合剤を配合し、混練することも可能である。かかる配合剤としては、例えば、老化防止剤、オイル、リターダー、しゃく解剤、ステアリン酸等が挙げられる。
【0042】
上記の老化防止剤としては、例えば日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の436〜443頁に記載されるものが挙げられる。中でもN−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、アニリンとアセトンの反応生成物(TMDQ)、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−)ジヒドロキノリン)(松原産業社製「アンチオキシダントFR」)、合成ワックス(パラフィンワックス等)、植物性ワックスが好ましく用いられる。
【0043】
上記のオイルとしては、プロセスオイル、植物油脂等が挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。
【0044】
上記のリターダーとしては、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、N−ニトロソジフェニルアミン、N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド(CTP)、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト等が例示され、N−(シクロヘキシルチオ)−フタルイミド(CTP)が好ましく用いられる。
【0045】
本発明の共縮合物を含むゴム組成物は、例えば以下の方法により得ることが出来る。
【0046】
(A)充填剤とゴム成分を混練する工程
充填剤とゴム成分の混練はバンバリーミキサー等の密閉式混練装置を用いて行うことが出来る。かかる混練は、通常、発熱を伴い、混練終了時の温度が140℃〜180℃の範囲であることが好ましく、150℃〜170℃の範囲であることが、さらに(より)好ましい。混練時間は5分〜10分程度である。
【0047】
(B)Aの工程で得た混練物と硫黄成分と加硫促進剤を混練する工程
Aの工程で得た混練物と硫黄成分と加硫促進剤の混練は、例えばバンバリーミキサー等の密閉式混練装置やオープンロールを用いて行うことが出来る。混練終了時の混練物の温度が30℃〜100℃であることが好ましく、60℃〜90℃であることがより好ましい。混練時間は通常5〜10分程度である。
【0048】
本発明の共縮合物、酸化亜鉛、老化防止剤、オイル、脂肪酸類、しゃく解剤は(A)の工程で加えることが好ましい。
【0049】
リターダーは(B)の工程で加えることが好ましい。
【0050】
こうして得られた本発明の共縮合物を含むゴム組成物は、特に補強材との加硫接着において有効である。かかる補強材としては、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アラミド等の有機繊維類、真鍮メッキしたスチールコード、亜鉛メッキしたスチールコード等のスチールコード類が例示される。中でも真鍮メッキしたスチールコードとの加硫接着において特に有効である。
【0051】
本発明の共縮合物を含むゴム組成物を補強材と共に成形し、加硫工程を経ることでゴムと補強材が強固に接着したゴム製品を得ることが出来る。加硫工程は120℃〜180℃で行うことが好ましい。加硫工程は常圧又は加圧下で行われる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例と比較例を示すことで本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
共縮合物の分析および性能評価は以下のようにして行った。
「樹脂の平均分子量の測定」
共縮合物の平均分子量に関しては、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算重量平均分子量として算出した。
【0054】
「残留モノマー、残留溶媒の測定」
残留モノマー及び残留溶媒については、以下の条件に基づくガスクロマトグラフィーにより定量を行った。
使用機器 :島津製作所社製 ガスクロマトグラフ GC−14B
カラム :ガラスカラム外径5mm×内径3.2mm×長さ3.1m
充填剤 :充填剤 Silicone OV-17 10% Chromosorb WHP 80/100meshx, max.temp.340℃
カラム温度:80℃→280℃
気化室温度:250℃
検出器温度:280℃
検出器 :FID
キャリアー:N(40ml/min)
燃焼ガス :水素(60kPa), 空気(60kPa)
注入量 :2μL
樹脂架橋剤1g、標品としてアニソール0.05gをアセトン10mLに溶解させ上記条件にて分析した。内部標準法(GC-IS法)により、樹脂中の残留溶媒、残留モノマーの含有量(%)を測定した。
なお、実施例および比較例の本文中に記載した含有量(%)は、特に断りのない限り重量パーセントとして表すものとする。
【0055】
「軟化点の測定」
JIS-K2207に準拠した方法により測定した。なお、軟化点が190℃を超えるものはゴムへの分散性が悪く、補強材とゴムとの接着剤として好ましくない。
【0056】
「共縮合物を構成するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)と式(1)で表される置換フェノール成分(ユニット)の合計量に対するp−tert−ブチルフェノール成分(ユニット)の割合」
以下条件に基づく方法によりH−NMR分析を行い、〔0019〕に記載される計算式に基づき算出を行った。
装置:日本電子社製「JMN-ECS」(400MHz)
溶媒:重水素置換ジメチルスルホキシド
各成分の化学シフト:テトラメチルシランを基準(0ppm)とし、以下の値に示されるピークをそれぞれの成分のピークとした。
p−tert−ブチルフェノール由来のp−tert−ブチル基のプロトン:1.0〜1.2ppm
p−クレゾール由来のメチル基(式(1)で表される置換フェノール由来のアルキル基(R))のプロトン:1.9〜2.3ppm
【実施例1】
【0057】
還流冷却器および温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度92%のパラホルムアルデヒド43.5g (1.33mol)、p−tert-ブチルフェノール75.0g(0.50mol)、p−クレゾール54.0g(0.50mol)、トルエン75.0gを順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、48%水酸化ナトリウム水溶液4.16g (0.05mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて2時間保温した。その後、内温80℃になるまで再度昇温し、さらに1.5時間保温した。
反応終了後、内温75℃以下になるまで冷却し、シュウ酸二水和物3.15g (0.025mol)を加えて中和した後、レゾルシン110g (1.00mol)を加え、内温108〜111℃まで昇温し4時間かけて共沸脱水を行った。続いて、常圧のまま内温145〜150℃まで昇温し、2時間保温することで溶媒トルエンを留去した。その後、内温140〜150℃に保ったまま16kPaまで減圧し、2時間保温することで溶媒トルエンをさらに留去した。
上記の操作により、橙色の共縮合物259gを得た。
共縮合物の平均分子量:1334、共縮合物の軟化点:184.6℃、共縮合物中の残留トルエン分:1.4%、残留p−tert-ブチルフェノール分:4.4%、残留p−クレゾール分:2.7%、残留レゾルシン分:5.5%。p−tert-ブチル基とRの合計量に対するp−tert-ブチル基の割合:50%。
【実施例2】
【0058】
実施例1において、p−tert-ブチルフェノールの仕込み量を60.0g(0.40mol)、p−クレゾールの仕込み量を64.8g(0.60mol)に変更した以外は、同様の条件にして合成を行った。
上記の操作により、橙色の共縮合物253gを得た。
共縮合物の平均分子量:1425、共縮合物の軟化点:156.4℃、共縮合物中の残留トルエン分:1.5%、残留p−tert-ブチルフェノール分:4.9%、残留p−クレゾール分:3.3%、残留レゾルシン分:4.2%。p−tert-ブチル基とRの合計量に対するp−tert-ブチル基の割合:41%。
【実施例3】
【0059】
実施例1において、p−tert-ブチルフェノールの仕込み量を50.0g(0.33mol)、p−クレゾールの仕込み量を72.0g(0.66mol)に変更した以外は、同様の条件にして合成を行った。
上記の操作により、橙色の共縮合物248gを得た。
共縮合物の平均分子量:1223、共縮合物の軟化点:109.8℃、共縮合物中の残留トルエン分:0.4%、残留p−tert-ブチルフェノール分:3.7%、残留p−クレゾール分:6.4%、残留レゾルシン分:11.5%。p−tert-ブチル基とRの合計量に対するp−tert-ブチル基の割合:33%。
【0060】
<比較例1>
還流冷却器および温度計を備えた四つ口セパラブルフラスコに、純度92%のパラホルムアルデヒド43.5g (1.33mol)、p−tert-ブチルフェノール100g(0.67mol)、p−クレゾール36.0g(0.33mol)、トルエン75.0gを順に加えた。その後、内温45℃まで昇温し、48%水酸化ナトリウム水溶液4.16g (0.05mol)を添加し、発熱が収まるまで攪拌した。発熱が収まったのを確認した後、内温65℃まで昇温し、同温度にて2時間保温した。その後、内温80℃になるまで再度昇温し、さらに1.5時間保温した。
反応終了後、内温75℃以下になるまで冷却し、シュウ酸二水和物3.15g (0.025mol)を加えて中和した後、レゾルシン110g (1.00mol)を加え、内温108〜111℃まで昇温し4時間かけて共沸脱水を行った。続いて、常圧のまま内温145〜150℃まで昇温し、2時間保温することで溶媒トルエンを留去した。その後、内温140〜150℃に保ったまま16kPaまで減圧し、2時間保温することで溶媒トルエンをさらに留去した。
上記の操作により、橙色の共縮合物273gを得た。
共縮合物の平均分子量:1306、共縮合物の軟化点:195℃以上、共縮合物中の残留トルエン分:0.8%、残留p−tert-ブチルフェノール分:2.9%、残留p−クレゾール分:0.9%、残留レゾルシン分:7.5%。p−tert-ブチル基とRの合計量に対するp−tert-ブチル基の割合:67%。
【0061】
<比較例2>
比較例1において、p−tert-ブチルフェノールの仕込み量を150g(1.00mol)、p−クレゾールの仕込みを無しに変更した以外は、同様の条件にして合成を行った。
上記の操作により、橙色の共縮合物286gを得た。
共縮合物の平均分子量:1212、共縮合物の軟化点:195℃以上、共縮合物中の残留トルエン分:2.0%、残留p−tert-ブチルフェノール分:2.6%、残留レゾルシン分:10.0%。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明により得られる共縮合物は、ゴム組成物への練り込みによりゴムと各種補強材との接着剤として利用可能である。