(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6016313
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物及びコンクリート構造物構築工法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
E04G23/02 F
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-139415(P2015-139415)
(22)【出願日】2015年7月13日
【審査請求日】2016年6月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506277982
【氏名又は名称】槇谷 榮次
(73)【特許権者】
【識別番号】504079601
【氏名又は名称】新日本建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】槇谷 栄次
【審査官】
油原 博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−004252(JP,A)
【文献】
特開2013−181332(JP,A)
【文献】
特開2008−240368(JP,A)
【文献】
特開2011−026786(JP,A)
【文献】
特開2014−136924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床構造から立設するコンクリート柱とコンクリート柱と直交する方向に伸びるコンクリート梁からなるコンクリート構造物において、
構築されるコンクリート柱及びコンクリート梁の外周部を構成する水平部と垂直部からなる断面L字形部材を矩形状に連結して形成される水平補強枠と、フランジ部とウェブ部からなる断面T字形部材を前記水平補強枠の水平部にウェブ部の上下端部が連結固定される垂直補強枠と、
前記水平補強枠と前記垂直補強枠により形成される矩形状枠の外周に巻き付け固定される繊維シートと、
繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠に囲まれた空間に充填され固化し前記水平補強枠と前記垂直補強枠と一体化するコンクリートと、
からなることを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
前記水平補強枠と前記垂直補強枠の外周に型枠部材を配置し、前記型枠部材の外周に繊維シートを巻く付けることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
前記断面L字形部材、前記断面T字形部材及び必要に応じて用いられる型枠部材を鋼又はFRPで形成することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
前記断面L字形部材と前記断面T字形部材を連結して矩形状の水平補強枠と垂直補強枠を形成する際、コーナー部に位置する前記断面L字形部材と前記断面T字形部材の端部を45度の角度で切除することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
断面T字形部材のフランジ部の上下部を、ウェブ部の上下端が連結固定される断面L字形部材の水平部から垂直部上下端までの長さだけ切除することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記水平補強枠と前記垂直補強枠で形成される矩形状の補強枠の外周は、断面L字形部材の垂直部と断面T字形部材のフランジ部で閉じた形状とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間に軸方向筋、必要に応じてフープ筋を配筋することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
構築するコンクリート柱及びコンクリート梁の外周部を水平部と垂直部で構成される断面L字形部材を矩形状に連結して形成される水平補強枠と、ウェブ部とフランジ部で構成される断面T字形部材のウェブ部の上下端を前記水平補強枠の水平部に連結固定し、外周が水平補強枠の垂直部と垂直補強枠のフランジ部で閉じられた矩形状の補強枠で形成する工程と、
外周が閉じられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠の外周に繊維シートを巻き付け配置する工程と、
繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間に軸方向筋、必要に応じてフープ筋を配筋する工程と、
前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間にコンクリートを充填し、コンクリートを固化させ繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠とを一体化する工程と、
を少なくとも備えることを特徴とするコンクリート構造物構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート柱、コンクリート梁からなるコンクリート構造物及びコンクリート構造物構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート柱やコンクリート梁からなるコンクリート構造物として、構築するコンクリート柱やコンクリート梁の外周部に鋼製の永久型枠を配置し、永久型枠で囲まれた空間に軸方向筋とフープ筋を配筋し、コンクリートを打設して、コンクリートを固化させ、永久型枠とコンクリートを一体化したコンクリート構造物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240368号公報
【特許文献2】特開2011−26786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコンクリート柱や既存コンクリート梁のコンクリート構造物においては、永久型枠に囲まれた空間に打設固化されるコンクリートと永久型枠との一体化が不十分であるという問題と、永久型枠の地震時の変位に対する耐久性が十分でないという問題があり、その結果、永久型枠に囲まれた空間に配筋される軸方向筋やフープ筋の量を増やさなければならないという問題を有していた。
【0005】
本発明は、従来技術の持つ課題を解決するもので、構造が簡単で、組み立て、設置が容易で、打設固化されるコンクリートとの一体化に優れ、地震時の耐震性能を向上させることが可能なコンクリート構造物及びコンクリート構造物構築工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンクリート構造物は、前記課題を解決するために、床構造から立設するコンクリート柱とコンクリート柱と直交する方向に伸びるコンクリート梁からなるコンクリート構造物において、構築されるコンクリート柱及びコンクリート梁の外周部を構成する水平部と垂直部からなる断面L字形部材を矩形状に連結して形成される水平補強枠と、フランジ部とウェブ部からな
る断面T字形部材を前記水平補強枠の水平部にウェブ部の上下端部が連結固定される垂直補強枠と、前記水平補強枠と前記垂直補強枠により形成される矩形状枠の外周に巻き付け固定される繊維シートと、繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠に囲まれた空間に充填され固化し前記水平補強枠と前記垂直補強枠と一体化するコンクリートと、からなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコンクリート構造物は、前記水平補強枠と前記垂直補強枠の外周に型枠部材を配置し、前記型枠部材の外周に繊維シートを巻く付けることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のコンクリート構造物は、前記断面L字形部材、前記断面T字形部材及び必要に応じて用いられる型枠部材を鋼又はFRPで形成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコンクリート構造物は、前記断面L字形部材と前記断面T字形部材を連結して矩形状の水平補強枠と垂直補強枠を形成する際、コーナー部に位置する前記断面L字形部材と前記断面T字形部材の端部を45度の角度で切除することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のコンクリート構造物は、断面T字形部材のフランジ部の上下部を、ウェブ部の上下端が連結固定される断面L字形部材の水平部から垂直部上下端までの長さだけ切除することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のコンクリート構造物は、前記水平補強枠と前記垂直補強枠で形成される矩形状の補強枠の外周は、断面L字形部材の垂直部と断面T字形部材のフランジ部で閉じた形状とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のコンクリート構造物は、前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間に軸方向筋、必要に応じてフープ筋を配筋することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のコンクリート構造物構築工法は、構築するコンクリート柱及びコンクリート梁の外周部を水平部と垂直部で構成される断面L字形部材を矩形状に連結して形成される水平補強枠と、ウェブ部とフランジ部で構成される断面T字形部材のウェブ部の上下端を前記水平補強枠の水平部に連結固定し、外周が水平補強枠の垂直部と垂直補強枠のフランジ部で閉じられた矩形状の補強枠で形成する工程と、外周が閉じられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠の外周に繊維シートを巻き付け配置する工程と、繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間に軸方向筋、必要に応じてフープ筋を配筋する工程と、前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間にコンクリートを充填し、コンクリートを固化させ繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠とを一体化する工程と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
床構造から立設するコンクリート柱とコンクリート柱と直交する方向に伸びるコンクリート梁からなるコンクリート構造物において、構築されるコンクリート柱及びコンクリート梁の外周部を構成する水平部と垂直部からなる断面L字形部材を矩形状に連結して形成される水平補強枠と、フランジ部とウェブ部からな
る断面T字形部材を前記水平補強枠の水平部にウェブ部の上下端部が連結固定される垂直補強枠と、前記水平補強枠と前記垂直補強枠により形成される矩形状枠の外周に巻き付け固定される繊維シートと、繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠に囲まれた空間に充填され固化し前記水平補強枠と前記垂直補強枠と一体化するコンクリートと、からなることで、構造が簡単で組み立てが容易で、コンクリートと一体化した水平補強枠の水平部と垂直補強枠のウェブ部が補強リブとして機能し、補強筋の量を少なくして耐震性能を向上させ、型枠部材の外周に巻き付けられる繊維シートが地震時のエネルギーを減衰することが可能となる。
水平補強枠と垂直補強枠の外周に型枠部材を配置し、型枠部材の外周に繊維シートを巻く付けることで、より強固な補強構造とすることが可能となる。
断面L字形部材、断面T字形部材及び必要に応じて用いられる型枠部材を鋼又はFRPで形成することで、鋼製でもFRP製でも高強度の補強構造とすることが可能となる。
断面L字形部材と断面T字形部材を連結して矩形状の水平補強枠と垂直補強枠を形成する際、コーナー部に位置する断面L字形部材と断面T字形部材の端部を45度の角度で切除することで、矩形状に連結される補強枠のコーナー部が隙間なく連結することが可能となる。
断面T字形部材のフランジ部の上下部を、ウェブ部の上下端が連結固定される断面L字形部材の水平部から垂直部上下端までの長さだけ切除することで、水平補強枠の垂直部と垂直補強枠のフランジ部が面一となり繊維シート又は必要に応じて配置される型枠部材の配置が容易にすることが可能となる。
水平補強枠と垂直補強枠で形成される矩形状の補強枠の外周は、断面L字形部材の垂直部と断面T字形部材のフランジ部で閉じた形状とすることで、型枠部材を配置しなくても、水平補強枠と垂直補強枠で囲まれた空間に打設されるコンクリートの漏出を防止することが可能となる。
水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間に軸方向筋、必要に応じてフープ筋を配筋することで、高強度のコンクリート構造物とすることが可能となる。
構築するコンクリート柱及びコンクリート梁の外周部を水平部と垂直部で構成される断面L字形部材を矩形状に連結して形成される水平補強枠と、ウェブ部とフランジ部で構成される断面T字形部材のウェブ部の上下端を前記水平補強枠の水平部に連結固定し、外周が水平補強枠の垂直部と垂直補強枠のフランジ部で閉じられた矩形状の補強枠で形成する工程と、外周が閉じられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠の外周に繊維シートを巻き付け配置する工程と、繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間に軸方向筋、必要に応じてフープ筋を配筋する工程と、前記水平補強枠と前記垂直補強枠で囲まれた空間にコンクリートを充填し、コンクリートを固化させ繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠とを一体化する工程と、を少なくとも備えることで、構造が簡単で組み立て作業が容易で、コンクリートと一体化した水平補強枠の水平部と垂直補強枠のウェブ部が補強リブとして機能し、補強筋の配筋量を少なくしても耐震性能を向上させることが可能で、型枠部材の外周に巻き付けられる繊維シートが地震時のエネルギーを減衰することが可能となり、低コストのコンクリート構造物構築工法とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】(a)(b)(c)本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図により説明する。
図1は、コンクリート柱及びコンクリート梁からなるコンクリート構造物の一実施形態を示す図である。
【0017】
コンクリート構造物は、床構造1からコンクリート柱2が鉛直に立設し、コンクリート柱2にコンクリート梁3が水平に交差する。コンクリート柱2はコンクリート梁3の上部にも鉛直方向に立設する。
【0018】
床構造1から鉛直方向に伸びるコンクリート柱2及びコンクリート柱2と直交する方向に伸びるコンクリート梁3の構造を、
図2(
図1A−A線水平切断面図)、
図3(
図1B−B線水平切断面図)、
図4、
図5、
図6(a)(b)(c)により説明する。
【0019】
床構造1から鉛直方向に立設するコンクリート柱2は、水平部5aと垂直部5bからなる断面L字形部材5の水平部5aが床構造1に接触するよう配置し、複数の断面L字形部材5を連結して矩形状の水平補強枠6を形成する。断面L字形部材5を矩形状に連結する際、コーナー部に位置する断面L字形部材5の端部を45度の角度で切除して連結する。水平補強枠6の床構造1と接する水平部5aと床構造1をアンカーボルト7で固定する。断面L字形部材5で形成された水平補強枠6の水平部5aには、垂直補強枠8を連結固定するためのL字形の連結部材9が連結部材固定ピン17で固定される。連結部材9には、垂直補強枠固定ピン挿通孔9a形成される。
【0020】
水平補強枠6の水平部5aに連結固定される垂直補強枠8は、断面T字形部材10により形成される。断面T字形部材10は、ウェブ部10aとウェブ部10aと直交するフランジ部10bにより構成される。フランジ部10bの上下部は、ウェブ部10aの上下端が固定される断面L字形部材5の水平部5aから垂直部5b上下端までの長さだけ切除する。ウェブ部10aの一部を切除することにより、断面T字形部材10のウェブ部10aを、断面L字形部材5の水平部5aに連結部材9と垂直補強枠固定ピン11で連結固定すると、断面L字形部材5の垂直部5bと断面T字形部材10のフランジ部10bの表面が面一になる。
【0021】
複数の断面L字形部材5を矩形状に連結して構成される水平補強枠6の一辺をなす水平部5aに複数の断面T字形部材10を連結固定して垂直補強枠8を形成する場合、
図6(a)に示すように、隣接するフランジ部10bの端部が接触するように配置する。コーナー部に位置する断面T字形部材10のフランジ部10bの端部を45度の角度で切除して連結すると、矩形状に連結された水平補強枠6の上に垂直補強枠8のフランジ部10bが矩形状に配置される。隣接するフランジ部10bの端部が互いに密着するように配置されるので、水平補強枠6と垂直補強枠8で形成される矩形状の外周は、垂直部5bとフランジ部10bにより閉じられた滑らかな外周面となる。
【0022】
図3に示すように、上部に位置する水平補強枠8は、1対の断面L字形部材5の水平部5a同士を接触させ、上下の水平部5aを水平補強枠連結ピン12で固定する。床構造1から立設するコンクリート柱2の外周部は、水平補強枠6と垂直補強枠8を矩形状に連結して形成される。
【0023】
床構造1から鉛直に立設するコンクリート柱2の外周部である水平補強枠6と垂直補強枠8の連結配置が終了すると、水平補強枠6と垂直補強枠8の外周に繊維シート14を巻きつける。必要に応じて、矩形状に連結した水平補強枠6と垂直補強枠8の外周に型枠部材13を配置しても良い。型枠部材13を配置する場合、型枠部材13の外周に繊維シート14を巻きつける。水平補強枠6の垂直部5aと垂直補強枠8のフランジ部10bが面一になっているので型枠部材13の配置が容易になる。その後、既存コンクリート柱2と水平補強枠6、垂直補強枠8との間には、軸方向筋15と必要に応じてフープ筋16を配筋する。
【0024】
軸方向筋15と必要に応じて配置されるフープ筋16が配筋された空間に未硬化のセメントモルタルを打設する。セメントモルタルに金属繊維、有機繊維を混合したものを用いると強度の大きいコンクリートとすることが可能となる。セメントモルタルが固化することにより、水平補強枠、垂直補強枠8、型枠部材13、繊維シート14が固化したコンクリートにより一体化してコンクリート柱2が構築される。
【0025】
セメントモルタルが打設される側の水平補強枠6と垂直補強枠8には、断面L字形部材5の水平部5aと断面T字形部材10の垂直なウェブ部10aが水平方向、垂直方向の補強リブとして機能して耐震性能を向上させると共に、水平補強枠6と垂直補強枠8の外周に巻き付けられた繊維シート14も地震時のエネルギーを減衰する機能を有する。コンクリート梁3の上から立設するコンクリート柱2も同様である。
【0026】
断面L字形部材5、断面T字形部材10、型枠部材13は、鋼又は高強度なRRPで形成しても良い。構造が簡単な規格部材で水平補強枠6と垂直補強枠8が形成することが可能であるため、組み立て作業が容易で低コストの既存コンクリート構造物補強構造とすることが可能となる。
【0027】
図3は、コンクリート柱2とコンクリート柱2に直交するコンクリート梁3の構造を示す図である。コンクリート柱2と直交する方向に伸びるコンクリート梁3の外周部に沿って水平補強枠6と垂直補強枠8を矩形状に連結する。コンクリート柱2の外周部を形成する水平補強枠6と垂直補強枠8が鉛直方向に連接されるのに対して結固定されるのに対して、コンクリート梁3の外周部を形成する水平補強枠6と垂直補強枠8は、水平方向に連接される。
アンカーボルト7で固定する。
【0028】
矩形状に連結した水平補強枠6と垂直補強枠8の外周に繊維シート14を巻きつける。必要に応じて、矩形状に連結した水平補強枠6と垂直補強枠8の外周に型枠部材13を配置しても良い。型枠部材13を配置する場合、型枠部材13の外周に繊維シート14を巻きつける。
【0029】
コンクリート梁3の外周部を形成する水平補強枠6、垂直補強枠8との間には、軸方向筋15と必要に応じて水平筋16を配筋する。
【0030】
軸方向筋15と必要に応じて配置される水平筋16が配筋された空間に未硬化のセメントモルタルを打設する。セメントモルタルに金属繊維、有機繊維を混合したものを用いると強度の大きいコンクリートとすることが可能となる。セメントモルタルが固化することにより、水平補強枠、垂直補強枠8、型枠部材13、繊維シート14が固化したコンクリートにより一体化してコンクリート梁3の耐震性能が大幅に向上する。
【0031】
断面L字形部材5、断面T字形部材10、型枠部材13は、鋼又は高強度なRRPで形成しても良い。構造が簡単な規格部材で水平補強枠6と垂直補強枠8が形成することが可能であるため、組み立て作業が容易で低コストの既存コンクリート構造物補強構造とすることが可能となる。
【0032】
以上のように、本発明のコンクリートコンクリート構造物及びコンクリート構造物構築工法によれば、構造が簡単で組み立てが容易で、コンクリートと一体化した水平補強枠の水平部と垂直補強枠のウェブ部が補強リブとして機能し、補強筋の量を少なくして耐震性能を向上させ、外周に巻き付けられる繊維シートが地震時のエネルギーを減衰することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1:床構造、2:コンクリート柱、3:コンクリート梁、5:断面L字形部材、5a:水平部、5b:垂直部、6:水平補強枠、7:アンカーボルト、8:垂直補強枠、9:連結部材、9a:垂直補強枠固定ピン挿通孔、10:断面T字形部材、10a:ウェブ部、10b:フランジ部、11:垂直補強枠固定ピン固定ピン、12:水平補強枠連結ピン、13:型枠部材、14:繊維シート、15:軸方向筋、16:フープ筋、17:連結部材固定ピン
【要約】
【課題】構造が簡単で、組み立て、設置が容易で、打設固化されるコンクリートとの一体化に優れ、地震時の耐震性能を向上させることが可能なコンクリート構造物及びコンクリート構造物構築工法を提供することを目的とする。
【解決手段】床構造から立設するコンクリート柱とコンクリート柱と直交する方向に伸びるコンクリート梁からなるコンクリート構造物において、構築されるコンクリート柱及びコンクリート梁の外周部を構成する水平部と垂直部からなる断面L字形部材を矩形状に連結して形成される水平補強枠と、フランジ部とウェブ部からなり前記水平補強枠の水平部にウェブ部の上下端部が連結固定される垂直補強枠と、 前記水平補強枠と前記垂直補強枠により形成される矩形状枠の外周に巻き付け固定される繊維シートと、繊維シートが巻き付けられた前記水平補強枠と前記垂直補強枠に囲まれた空間に充填され固化し前記水平補強枠と前記垂直補強枠と一体化するコンクリートと、からなることを特徴とする。
【選択図】
図1