(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016314
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】複式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/14 20060101AFI20161013BHJP
B43K 24/18 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
B43K24/14
B43K24/18 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-143570(P2015-143570)
(22)【出願日】2015年7月21日
(62)【分割の表示】特願2010-205092(P2010-205092)の分割
【原出願日】2010年9月14日
(65)【公開番号】特開2015-180558(P2015-180558A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅也
【審査官】
藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−292069(JP,A)
【文献】
実開昭57−153586(JP,U)
【文献】
特開2006−272666(JP,A)
【文献】
特開平10−16479(JP,A)
【文献】
特開2010−76340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 1/12
B43K 5/00− 8/24
B43K 21/00−21/26
B43K 24/00−24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に複数の筆記体が収容された筆記具において、前記筆記体の後端に連結された摺動コマと、軸周りに回転自在に設けられ、前記摺動コマが摺動可能な円筒カムとを具備し、前記円筒カムの回転により前記摺動コマを前後移動させ、選択的に一つの筆記体の先端部を軸先から突出させる複式筆記具であって、
前記円筒カムは、
周方向に沿って円弧断面状に形成されたカム平坦部と、
前記カム平坦部の両端側から前方に尖形するように延設された一対のカム斜面と、
前記一対のカム斜面の先端が繋がる所定幅のカム頂部と、
少なくとも前記カム平坦部に少なくとも一つ設けられ、前記摺動コマの斜面を有する凸部が着脱自在に嵌合可能な凹部状のカム底部と、を有し、
前記カム底部と前記摺動コマとの間に粘稠性のあるグリスが塗布されていることを特徴とする複式筆記具。
【請求項2】
前記カム底部が、少なくとも前記カム平坦部に一つ設けられていることを特徴とする請求項1記載の複式筆記具。
【請求項3】
前記カム底部はカム平坦部の両端部に設けられ、
前記円筒カムにおいて、前記カム頂部は、緩やかな凹状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された複式筆記具。
【請求項4】
軸筒内に複数の筆記体が収容された筆記具において、前記筆記体の後端に連結された摺動コマと、軸周りに回転自在に設けられ、前記摺動コマが摺動可能な円筒カムとを具備し、前記円筒カムの回転により前記摺動コマを前後移動させ、選択的に一つの筆記体の先端部を軸先から突出させる複式筆記具であって、
前記円筒カムは、
周方向に沿って円弧断面状に形成されたカム平坦部と、
前記カム平坦部の両端側から前方に尖形するように延設された一対のカム斜面と、
前記一対のカム斜面の先端が繋がる所定幅のカム頂部と、
少なくとも一つ設けられ、前記摺動コマの斜面を有する凸部が着脱自在に嵌合可能な凹部状のカム底部と、を有し、
前記カム底部と前記摺動コマとの間に粘稠性のあるグリスが塗布されていることを特徴とする複式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に複数の筆記体を収容し、円筒カムの回転により摺動コマを前方に移動させ、前記摺動コマに結合された筆記体の先端部を軸先から突出させる複式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸筒の中に複数の筆記体を収容し、所定の繰り出し操作により、軸筒の先端から、筆記体の先端部を突出させる構造の筆記具が広く用いられている。
軸筒に収容された複数の筆記体のうち、一つを選択的に繰り出す機構(繰り出し機構)の方式として、回転繰り出し式と呼ばれるものがある。この回転繰り出し式は、特許文献1に開示されるように、前軸に対して後軸を回転させることにより、前軸の先端から筆記体の先端部を選択的に出没させるものである。
【0003】
より具体的には、軸筒の中に円筒カムが装填され、前軸に対して後軸を回転させることにより筆記体の後端に設けられた摺動コマがカム斜面を摺動する。そして、カム頂部に設けられた所定深さ(例えば0.7mm)の凹部に、摺動コマの凸部が嵌ることによって、選択された筆記体の先端部が軸筒先端から突出した状態に維持される。
また、この状態から、更に前軸に対して後軸を回転させることによって、前記円筒カムにおけるカム頂部の凹部から、摺動コマの凸部が外れ、軸筒内に筆記体が没入される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−15748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記構造の回転繰り出し式の筆記具にあっては、円筒カムにおけるカム頂部の凹部に摺動コマの凸部が嵌ることでクリック感が生じるようになされている。
しかしながら、摺動コマの凸部がカム頂部の凹部に嵌る際には、その筆記具に設けられたリターンバネが最も圧縮された状態となっており、円筒カムに対し高い荷重が加わる。このため、摺動コマの凸部がカム頂部の凹部に嵌る際に、筆記具全体に大きな衝撃が発生し、作動質感を大きく低下させていた。
【0006】
また、筆記体の後端に設けられた摺動コマの凸部が、カム頂部に形成された凹凸を乗り越え可能とするためのストロークを確保する必要があるため、そのストローク分、軸長を長く形成しなければならないという課題があった。
更には、前記のように筆記体に設けられたリターンバネが強く圧縮された状態で、摺動コマの凸部が、カム頂部に形成された凹凸を乗り越えるため、使用を重ねるうちに、摩耗によりカム頂部が平坦化し、摺動コマの凸部がカム頂部から外れやすくなるという課題もあった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、軸筒内に筆記体を収容し、円筒カムの回転により摺動コマを前方に移動させ、前記摺動コマに連結された筆記体の先端部を軸先から突出させる筆記具において、作動質感を格段に向上させることのできる筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る筆記具は、
軸筒内に複数の筆記体が収容された筆記具において、前記筆記体の後端に連結された摺動コマと、軸周りに回転自在に設けられ、前記摺動コマが摺動可能な円筒カムとを具備し、前記円筒カムの回転により前記摺動コマを前後移動させ、選択的に一つの筆記体の先端部を軸先から突出させる複式筆記具であって、前記円筒カムは、周方向に沿って円弧断面状に形成されたカム平坦部と、前記カム平坦部の両端側から前方に尖形するように延設された一対のカム斜面と、前記一対のカム斜面の先端が繋がる所定幅のカム頂部と、
少なくとも前記カム平坦部に少なくとも一つ設けられ、前記摺動コマ
の斜面を有する凸部が着脱自在に嵌合可能な凹部状のカム底部と
、を有し
、前記カム底部と前記摺動コマとの間に粘稠性のあるグリスが塗布されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、選択された筆記体ではない他の筆記体に連結された摺動コマが円筒カムのカム底部に嵌り込むことにより、選択された筆記体は、その後端に連結された摺動コマがカム頂部から位置ずれすることなく保持される。
また、選択された筆記体ではない他の筆記体に連結された摺動コマが円筒カムのカム底部に嵌り込むことでクリック感を得ることができ
る。また、カム底部周辺の凹凸に加わる負荷が低減され、摩耗を抑制することができる。
更に、カム底部と摺動コマの凸部との間に、粘稠性のあるグリスが塗布されることでクリック音を低下することができ、高級感のあるクリック感を得ることができる。
尚、前記カム底部が、少なくとも前記カム平坦部に一つ設けられていることが望ましい。
【0010】
また、前記カム底部はカム平坦部の両端部に設けられ、前記円筒カムにおいて、前記カム頂部は、緩やかな凹状に形成されていることが望ましい。
前記カム頂部が緩やかな凹状に形成されていることで、選択された筆記体の保持安定性が向上する。
【0011】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る筆記具は、軸筒内に複数の筆記体が収容された筆記具において、前記筆記体の後端に連結された摺動コマと、軸周りに回転自在に設けられ、前記摺動コマが摺動可能な円筒カムとを具備し、前記円筒カムの回転により前記摺動コマを前後移動させ、選択的に一つの筆記体の先端部を軸先から突出させる複式筆記具であって、前記円筒カムは、周方向に沿って円弧断面状に形成されたカム平坦部と、前記カム平坦部の両端側から前方に尖形するように延設された一対のカム斜面と、前記一対のカム斜面の先端が繋がる所定幅のカム頂部と、少なくとも一つ設けられ、前記摺動コマの斜面を有する凸部が着脱自在に嵌合可能な凹部状のカム底部と、を有し、前記カム底部と前記摺動コマとの間に粘稠性のあるグリスが塗布されていることを特徴としている。
このような構成によれば、選択された筆記体ではない他の筆記体に連結された摺動コマが円筒カムのカム底部に嵌り込むことにより、選択された筆記体は、その後端に連結された摺動コマがカム頂部から位置ずれすることなく保持される。
また、選択された筆記体ではない他の筆記体に連結された摺動コマが円筒カムのカム底部に嵌り込むことでクリック感を得ることができる。また、カム底部周辺の凹凸に加わる負荷が低減され、摩耗を抑制することができる。
更に、カム底部と摺動コマの凸部との間に、粘稠性のあるグリスが塗布されることでクリック音を低下することができ、高級感のあるクリック感を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸筒内に筆記体を収容し、円筒カムの回転により摺動コマを前方に移動させ、前記摺動コマに連結された筆記体の先端部を軸先から突出させる筆記具において、作動質感を格段に向上させることのできる筆記具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は、本発明に係る複式筆記具の外観を示した正面図であり、
図1(b)はその軸方向に沿って中央で破断した状態の断面図である。
【
図2】
図2(a)は、内部構造を説明するために外装である軸筒を取り外した状態の平面図、
図2(b)は、その側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の複式筆記具が備えるガイド筒の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の複式筆記具が備える摺動コマの斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の複式筆記具が備える円筒カムの正面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の側面図であり、
図5(c)は、
図5(b)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明にかかる複式筆記具について、
図1に示す実施の形態に基づいて説明する。尚、
図1(a)は複式筆記具の外観を示した正面図であり、
図1(b)はその軸方向に沿って中央で破断した状態の断面図である。尚、
図1(a)、
図1(b)は共に、収容するシャープペンシル筆記体の先端部を軸先(口金)から突出させた状態を示している。
また、
図2(a)は、内部構造を説明するために外装である軸筒を取り外した状態の平面図、
図2(b)は、その側面図である。
【0015】
図1(a)、
図1(b)に示すように、複式筆記具1の軸筒は、前軸2および後軸3により構成されている。
即ち、前軸2の後端部に設けられた円筒状の連結螺子2aが、ガイド筒4の前部周面に形成された螺子部4aに螺合して連結され、後軸3の前端部内周面に形成されたリング状突起3aが、ガイド筒4の外周面に形成された溝部4bに軸周りに摺動自在に嵌ることによって軸筒が構成されている。即ち、後軸3は、前軸2及びガイド筒4に対して軸周りに回動自在となされている。
また、前軸2の前端部には、テーパ状に径を細くして、その端部に形成された先口部5aから筆記体の先端が出没可能な口金5が螺着されている。
また、後軸3の後端部には、蓋部材6が装着され、これによりクリップ部7が固定されている。
【0016】
また、本実施の形態にあっては、
図2(a)に示すように、筆記体として、シャープペンシル筆記体11、ボールペン筆記体12、13の3本が軸筒内に収容される。
図3に前記ガイド筒4の斜視図を示す。このガイド筒4は、前記のように、その前端部に前軸2に連結される螺子部4aが形成され、螺子部4aよりも後側の周面に、前記後軸3を回動自在に装着するための溝部4bが形成されている。
【0017】
前記ガイド筒4において、前記溝部4b付近には、軸筒に収容される筆記体を軸方向に挿通可能な貫通孔4cが筆記体の本数に合わせて形成されている。そして、それら貫通孔4cよりも後方には、それぞれ軸方向に延びるガイド溝4dが設けられている。
即ち、シャープペンシル筆記体11、及びボールペン筆記体12、13の各筆記体は、ガイド筒4の貫通孔4cにそれぞれ挿通され、前記ガイド溝4dに沿って軸方向に移動可能に配置される。
また、ガイド筒4の後端には、後述の円筒カム20を軸周りに回動自在に連結するための突起部4eが形成されている。
【0018】
また、
図2(a)、
図2(b)に示すように、前記ガイド筒4のガイド溝4dには、筆記体11、12、13をそれぞれ捲装するようにしてリターンバネ15が配置されている。
リターンバネ15の後端は、筆記体の後端部に装着される摺動コマ8に当接し、リターンバネ15の前端は、前記ガイド筒4における貫通孔4cに係止している。
前記摺動コマ8は、
図4の斜視図に示すように、筆記体後端に嵌着するための突出部8aと、ガイド筒4のガイド溝4dを軸方向に摺動自在な本体部8bと、本体部8bの前面に形成され、筆軸後方に向けて突起した凸部8cとを有する。凸部8cの左右両側には、カム斜面8dがそれぞれ形成されている。また、本体部8bの前端側には、リターンバネ15が係止される係止部8eが設けられている。
【0019】
図5(a)は、後端部に前記蓋部材6が螺着されることによって後軸3に結合される円筒カム20の正面図であり、
図5(b)は、その側面図である。また、
図5(c)は、
図5(b)の断面図である。
この円筒カム20は、円筒状の円筒部21と、円筒部21の前端から前方へ延びるカム部22とからなる。前記円筒部21には、
図5(c)に示すように、その内周面に螺子部21aが形成されており、この螺子部21aに対し、前記したように蓋部材6が螺着される。
【0020】
また、
図5(c)に示すように、円筒部21の内周面において、前記螺子部21aよりも筆軸前方側には、リング状突起21bが形成されており、前記螺子部21aに蓋部材6が螺着されることにより溝部21cが形成されるようになっている。この溝部21cには、前記ガイド筒4の後端に設けられた突起部4eが軸周りに回動自在に嵌められる。
【0021】
一方、カム部22は、円筒部21の前端において、周方向に沿って円弧断面状に形成されたカム平坦部22aを有する。更に、前記カム平坦部22aの両端側から前方に尖形するように延設された一対のカム斜面22bを有する。この一対のカム斜面22bは、それぞれの断面が円弧状であり、その先端は、所定幅を有するカム頂部22cの両端にそれぞれ繋がっている。
尚、カム頂部22cは、選択された筆記体に連結された摺動コマ8の凸部8cが当接する部位であるため、図面においては、安定性向上のために緩やかな凹状に形成されているが、平坦に形成されもよい。
【0022】
また、図示するように、カム平坦部22aの両端には、摺動コマ8の凸部8cが着脱自在に嵌合可能な凹部状のカム底部22dがそれぞれ設けられている。図示するように、カム底部22dの一方の側面はカム斜面22bと面一に形成されている。
尚、このカム底部22dは、選択されていない筆記体の後端に連結された摺動コマ8の凸部8cをそれぞれ嵌めるために設けられており、その嵌る動作によってクリック感が得られるという効果を得ることができる。
また、前記のようにカム底部22dがカム平坦部22aの端部に形成されていることにより、摺動コマ8がカム底部22dに嵌合する際の衝撃、或いはカム底部22dから外れる際の衝撃のいずれかを無くすことができる。
更にカム底部22dと摺動コマ8の凸部8cとの間に粘稠性のあるグリスを塗布することでクリック音を低下することができ、高級感のあるクリック感を得ることができる。
【0023】
前記した構成の複式筆記具1において、例えば、シャープペンシル筆記体11を選択し、その先端を軸先から突出させた場合、
図2(a)に示すように、シャープペンシル筆記体11の後端に連結された摺動コマ8の凸部8cが円筒カム20のカム頂部22cに当接する状態となる。このとき、シャープペンシル筆記体11において、その後部に捲装されたリターンバネ15は最も圧縮された状態となっている。
一方、他の筆記体(ボールペン筆記体12,13)にあっては、
図2(b)に示すように、その後端に連結された摺動コマ8の凸部8cが円筒カム20のカム底部22dに嵌った状態となる。また、このときシャープペンシル筆記体12,13において、その後部に捲装されたリターンバネ15は長く伸びた状態であり、摺動コマ8に対し軸後方に向けて、比較的緩い付勢力を与えている。
【0024】
この状態から、例えばボールペン筆記体12を選択する場合、前軸2に対し後軸3を軸周りに回動させると、ボールペン筆記体12の後端に連結された摺動コマ8が、円筒カム20のカム斜面22bに沿って摺動開始し、それにより、その凸部8cがカム底部22dから外れる。
一方、円筒カム20のカム頂部22cに当接していたシャープペンシル筆記体11に連結された摺動コマ8は、カム頂部22cから外れ、(前記ボールペン筆記体12に連結された摺動コマ8が摺動するカム斜面22bとは反対側の)カム斜面22bをカム底部22dに向けて摺動開始する。
更に、選択されない他の筆記体であるボールペン筆記体13にあっては、その後端に連結された摺動コマ8の凸部8cは、カム底部22dから外れ、カム平坦部22aを摺動開始する。
【0025】
そして、ボールペン筆記体12の後端に連結された摺動コマ8が円筒カム20のカム斜面22bを摺動し、カム頂部22cに達すると、その凸部8cがカム頂部22cに当接し、ボールペン筆記体12の先端が軸先から突出した状態で保持される。
一方、前記ボールペン筆記体12の摺動コマ8が円筒カム20のカム頂部22cに到達すると同時に、シャープペンシル筆記体11に連結され、カム斜面22bを摺動していた摺動コマ8がカム底部22dに到達し、その凸部8cがカム底部22dに嵌る状態となる。
更に、同時に、ボールペン筆記体13に連結され、カム平坦部22aを摺動していた摺動コマ8が他方のカム底部22dに到達し、その凸部8cがカム底部22dに嵌る状態となる。
【0026】
このように、選択されたボールペン筆記体12ではない他の筆記体に連結された摺動コマ8が円筒カム20のカム底部22dに嵌り込むことにより、ボールペン筆記体12は、その後端に連結された摺動コマ8がカム頂部22cから位置ずれすることなく保持される。
また、選択されたボールペン筆記体12ではない他の筆記体に連結された摺動コマ8が円筒カム20のカム底部22dに嵌り込むことでクリック感が得られるが、それら筆記体に捲装されたリターンバネ15は比較的長く伸びた状態で嵌るため、強い衝撃が生じることなく上質な作業質感を得ることができる。更には、カム底部22d周辺の凹凸に加わる負荷が低減され、摩耗を抑制することができる。
【0027】
また、カム頂部22cは略平坦に形成すればよいため、従来のように、筆記体に設けられた摺動コマ8の凸部8cが、カム頂部の凹凸を乗り越えるためのストロークを確保する必要がなく、そのストローク分、軸長を長く形成しなくてもよい。
したがって、この出願の発明にかかる筆記具によると、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの独自の作用効果を得ることができる。
【0028】
尚、本実施の形態においては、軸筒に収容される筆記体は3本であるため、選択されない筆記体の数に合わせて、カム平坦部22aの両端2カ所にカム底部22dが設けられるものとしたが、例えば、4本の筆記体を収容する場合には、
図5(a)に二点鎖線(想像線)で示すように、更にカム平坦部22aの中央にカム底部22dを設けてもよい。
或いは、少なくとも一つのカム底部22dが設けられることにより、クリック感の獲得、及び筆記体の固定が可能となるため、軸筒に収容される筆記体の数に拘わらず、カム平坦部22aに設けるカム底部22dの数により、クリック感(作動質感)を調整してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 複式筆記具
2 前軸(軸筒)
3 後軸(軸筒)
8 摺動コマ
11 シャープペンシル筆記体(筆記体)
12 ボールペン筆記体(筆記体)
13 ボールペン筆記体(筆記体)
15 リターンバネ
20 円筒カム
22a カム平坦部
22b カム斜面
22c カム頂部
22d カム底部