【実施例】
【0074】
続いて、本発明の実施例について説明する。尚、以下の実験に用いた各種ゴキブリの平均体長は次の通りである。雄のチャバネゴキブリが12.7mm、雌のチャバネゴキブリが11.6mm、雄のクロゴキブリが29.1mm、雌のクロゴキブリが31.4mmである。
【0075】
−実験I−
図5は、実験Iに用いた装置の斜視図を示す。実験Iでは、ゴキブリが降り易い距離を調べる実験を行った。具体的には、
図5に示すような容器510内に、実験用のゴキブリ捕獲器401を設置した。
【0076】
容器510は、透明なアクリル板で構成された、24cm×24cm×10cmの略直方体の箱状容器である。
【0077】
ゴキブリ捕獲器401は、基本的には実施形態1と同様の構成をしている。詳しくは、ゴキブリ捕獲器401は、上部が開口する円筒状の容器本体402、及び、容器本体402の上部開口に取り付けられる蓋部材403を有する容器410と、容器410に隣接された2つのスロープ(図示省略)とを備えている。容器410は、PET製のカップ状容器である。
【0078】
容器本体402には、粘着剤24が設けられていない。その代わりに、容器本体402の底には、粘着シートを敷き詰めている。そして、粘着シートの上に、誘引剤が設置されている。スロープは、ゴキブリが容器410の蓋部材403上まで登り易くするためのものである。具体的には、スロープは、2つの細長い板を十字に組んで構成したものであって、容器本体402に立て掛けている。
【0079】
蓋部材403には、赤色のセロファンが貼られている。蓋部材403の中央には、容器本体402の内方へ鉛直方向に延びる円筒状の侵入路432が形成されている。侵入路432の先端に侵入口433が形成されている。容器本体402の底面のうち侵入口433の直下の部分には、着地台の代わりに、紙製の着地部(図示省略)が設けられている。この着地部を設けることによって、ゴキブリが容器本体402内へ降りる際の警戒心を軽減することができる。
【0080】
容器410は、チャバネゴキブリ用とクロゴキブリ用との2種類ある。チャバネゴキブリ用の容器410は、直径80mm×高さ34mmである。クロゴキブリ用の容器410は、直径100mm×高さ64mmである。侵入路432及び侵入口433の直径は、チャバネゴキブリ用及びクロゴキブリ用ともに、25mmである。侵入路432の長さを、後述するように、適宜調整している。
【0081】
容器510内にゴキブリを放ち、5時間後に、ゴキブリ捕獲器401内に捕獲されたゴキブリの数を計数した。実験室内の温度は、24℃であり、容器510の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。この実験を、侵入路432の長さを変えることによって、侵入口433から、容器本体402における、侵入口433の直下の部分までの距離Dを変更しながら行った。各距離Dについて、10回の実験を行った。また、チャバネゴキブリとクロゴキブリの2種類のゴキブリに対して前記の実験を行った。このとき、各種類において雄と雌とで別々に実験を行った。具体的には、チャバネゴキブリについては、雄雌それぞれ、10匹のチャバネゴキブリを用いて実験を行った。クロゴキブリについては、雄雌それぞれ、6匹のチャバネゴキブリを用いて実験を行った。
【0082】
−実験II−
図6は、実験IIに用いた装置の斜視図を示す。実験IIでは、ゴキブリが逃げ難い距離を調べる実験を行った。具体的には、
図6に示すような容器520内に、実験用のゴキブリ捕獲器401と、別の確認用のゴキブリ捕獲器521とを設置した。
【0083】
容器520は、透明なアクリル板で構成された、70cm×35cm×18cmの略直方体の箱状容器である。この容器520内に、2つのゴキブリ捕獲器401,401と、3つのゴキブリ捕獲器521,521,521とを配置した。3つのゴキブリ捕獲器521,521,521は、2つのゴキブリ捕獲器401,401をそれぞれ挟むように配置した。
【0084】
ゴキブリ捕獲器401は、基本的には実験Iで用いたゴキブリ捕獲器と同様の構成をしている。ただし、容器本体2内には、粘着シートが設けられていない。そのため、容器本体2内のゴキブリは、容器本体2内を自由に動き回ることができる。また、容器本体2内には、誘引剤が設けられていない。さらに、容器本体2の側壁の内周面には、ゴキブリが側壁をよじ登らないように、ワセリンが塗布されている。
【0085】
容器410は、実験Iと同様に、チャバネゴキブリ用とクロゴキブリ用との2種類ある。チャバネゴキブリ用の容器410は、直径80mm×高さ34mmである。クロゴキブリ用の容器410は、直径100mm×高さ64mmである。侵入路432及び侵入口433の直径は、チャバネゴキブリ用及びクロゴキブリ用ともに、25mmである。侵入路432の長さを、後述するように、適宜調整している。
【0086】
ゴキブリ捕獲器521は、側方に侵入口が設けられた紙製の容器を備え、容器内の床となる面に粘着シートが設けられた、一般的な捕獲器である。このゴキブリ捕獲器521は、ゴキブリ捕獲器401から脱出したゴキブリが再びゴキブリ捕獲器401に侵入しないように、脱出したゴキブリを確保しておくためのものである。
【0087】
各ゴキブリ捕獲器401に、1匹のゴキブリを入れ、24時間後に、ゴキブリ捕獲器1を脱出したか否かを確認した。実験室内の温度は、25℃であり、容器520の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。
【0088】
この実験を、侵入路432の長さを変えることによって、侵入口433から、容器本体402における、侵入口433の直下の部分までの距離Dを変更しながら行った。各距離Dについて、10回の実験を行った。詳しくは、容器520内に2つのゴキブリ捕獲器401,401を設けているため、各距離Dについて1度に2回の実験を行うことができる。それを、5回繰り返すことで、各距離Dに対して計10回の実験を行った。この実験を、チャバネゴキブリとクロゴキブリとの雄と雌のそれぞれについて、行った。
【0089】
−チャバネゴキブリの結果−
チャバネゴキブリについての実験Iと実験IIの結果を、
図7〜9に示す。
図7は、雄のチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、
図8は、雌のチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、
図9は、雌雄合わせたチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率である。
【0090】
図7からわかるように、距離Dが7〜29mmであれば、雄のチャバネゴキブリが略50%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜27mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリの降り率を略90%(詳しくは、略80〜100%)とすることができる。一方、距離Dを15mm以上とすることによって、雄のチャバネゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを17mm以上とすることによって、雄のチャバネゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを15〜29mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは、距離Dを17〜27mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリがより降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。
【0091】
尚、降り率が距離Dが15mm未満、さらには7mm未満で減少しているのは、容器本体402の底面と侵入路432との配置によるものと考えられる。すなわち、侵入路432が容器本体402の底面に対して垂直に延び且つ侵入口433と容器本体402の底面との距離が短いため、侵入口433の直下に容器本体402の底面が広がっているというよりはむしろ、侵入口433が容器本体402の底面で塞がれている状態となっている。そのため、侵入路432を降りてきたゴキブリは、侵入路432の先端が塞がっているとして、容器本体402の底面に降りることなく、侵入路432を引き返すものと考えられる。侵入路432が容器本体402の底面と平行に延びる場合には、降り率はより高いと考えられる。
【0092】
また、
図8からわかるように、距離Dが5〜31mmであれば、雌のチャバネゴキブリが略50%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを13〜29mmとすることによって、雌のチャバネゴキブリの降り率を略90%(詳しくは、略80〜100%)とすることができる。一方、距離Dを19mm以上とすることによって、雌のチャバネゴキブリの脱出率を略20%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを21mm以上とすることによって、雌のチャバネゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを19〜31mmとすることによって、雌のチャバネゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは、距離Dを21〜29mmとすることによって、雌のチャバネゴキブリがより降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現できる。
【0093】
以上のことから、距離Dを15〜31mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のチャバネゴキブリに対して降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、当該範囲における距離Dが短い領域では、特に雄のチャバネゴキブリに有効であり、当該範囲における距離Dが長い領域では、特に雌のチャバネゴキブリに有効である。例えば、距離Dを15mmとすることによって、少なくとも雄のチャバネゴキブリにとっては降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができるため、少なくとも雄のチャバネゴキブリを効率よく捕獲することができる。また、15mmという距離は、雌のチャバネゴキブリにとっても、降り易い距離である。そして、距離Dが15mmであれば、雌のチャバネゴキブリであっても、必ず脱出できるわけではなく、脱出率を略60%に抑えることができる。つまり、雌のチャバネゴキブリを容易に容器内に侵入させ、そのうちの一部については容器内に捕獲し続けることができる。さらに、前記実施形態によれば、容器内には粘着剤24が設けられているため、侵入口から脱出する前に粘着剤24に触れたゴキブリは粘着剤24により捕獲されるため、脱出率をさらに低減させることができる。一方、距離Dを31mmとすることによって、少なくとも雌のチャバネゴキブリの降り率を向上させ且つ脱出率を低減させることができるため、少なくとも雌のチャバネゴキブリを効率良く捕獲することができる。また、距離Dが31mmの場合の雄のチャバネゴキブリの降り率は略10%である。すなわち、距離Dが31mmであっても、雄のチャバネゴキブリが容器内に全く降りないわけではなく、一部の雄のチャバネゴキブリは容器内に降りる。そして、この31mmという距離は、雄のチャバネゴキブリにとっては脱出率略0%であるため、容器内に降りた、一部の雄のチャバネゴキブリを容器内に確実に捕獲することができる。よって、距離Dを15〜31mmとすることによって、雄雌のうち少なくとも一方のチャバネゴキブリを効率よく捕獲することができる。
【0094】
好ましくは、距離Dを17〜29mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のチャバネゴキブリに対して、より一層、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。すなわち、距離Dの下限値である17mmにおいては、雄のチャバネゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。一方、距離Dの上限値である29mmにおいては、雌のチャバネゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。つまり、雄及び雌の少なくとも一方のチャバネゴキブリをより一層効率良く捕獲することができる。
【0095】
さらに、チャバネゴキブリの雌雄の平均については、
図9からわかるように、距離Dが7〜29mmであれば、チャバネゴキブリが略50%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを13〜27mmとすることによって、チャバネゴキブリの降り率を略90%(詳しくは、略80〜100%)とすることができる。一方、距離Dを15mm以上とすることによって、チャバネゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを19mm以上とすることによって、チャバネゴキブリの脱出率を略10%以下とすることができる。したがって、距離Dを15〜29mmとすることによって、チャバネゴキブリに対して、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを19〜29mmとすることによって、チャバネゴキブリに対して、さらに降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。さらに好ましくは、距離Dを21〜27mmとすることによって、チャバネゴキブリに対して、より一層降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。
【0096】
尚、降り率の方が脱出率よりも高く且つその乖離が大きい場合には、ゴキブリを効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器ということができる。この観点から、実験I,IIの結果を考察すると、距離Dを15〜29mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略30%以上とすることができ、チャバネゴキブリを効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを17〜27mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略50%以上とすることができ、チャバネゴキブリをより一層効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。さらに好ましくは、距離Dを21〜27mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略90%以上とすることができる。
【0097】
−クロゴキブリの結果−
クロゴキブリについての実験Iと実験IIの結果を、
図10〜12に示す。
図10は、雄のクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、
図11は、雌のクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、
図12は、雌雄合わせたクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率である。
【0098】
図10からわかるように、距離Dが15〜47mmであれば、雄のクロゴキブリが略40%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜45mmとすることによって、雄のクロゴキブリの降り率を略50%以上とすることができる。一方、距離Dを29mm以上とすることによって、雄のクロゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを31mm以上とすることによって、雄のクロゴキブリの脱出率を略25%以下とすることができる。より好ましくは、距離Dを39mmとすることによって、雄のクロゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを29〜47mmとすることによって、雄のクロゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは距離Dを31〜45mmと、より好ましくは距離Dを39〜45mmとすることによって、雄のクロゴキブリがより一層降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。
【0099】
また、
図11からわかるように、距離Dが15〜49mmであれば、雌のクロゴキブリが略40%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜47mmとすることによって、雌のクロゴキブリの降り率を略50%以上とすることができる。一方、距離Dを33mm以上とすることによって、雌のクロゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを39mm以上とすることによって、雌のクロゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを33〜49mmとすることによって、雌のクロゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは距離Dを39〜47mmとすることによって、雌のクロゴキブリがより一層降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現できる。
【0100】
以上のことから、距離Dを29〜49mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、当該範囲における距離Dが短い領域では、特に雄のクロゴキブリに有効であり、当該範囲における距離Dが長い領域では、雄及び雌の両方のクロゴキブリに有効である。例えば、距離Dを29mmとすることによって、少なくとも雄のクロゴキブリにとっては降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができるため、少なくとも雄のクロゴキブリを効率よく捕獲することができる。また、29mmという距離は、雌のクロゴキブリにとっても、降り易い距離である。そして、距離Dが29mmであれば、雌のクロゴキブリであっても、必ず脱出できるわけではなく、脱出率を略75%に抑えることができる。つまり、雌のクロゴキブリを容易に容器内に侵入させ、そのうちの一部については容器内に捕獲し続けることができる。さらに、前記実施形態によれば、容器内には粘着剤24が設けられているため、侵入口から脱出する前に粘着剤24に触れたゴキブリは粘着剤24により捕獲されるため、脱出率をさらに低減させることができる。一方、距離Dを49mmとすることによって、少なくとも雌のクロゴキブリの降り率を向上させ且つ脱出率を低減させることができるため、少なくとも雌のクロゴキブリを効率良く捕獲することができる。また、距離Dが49mmの場合の雄のクロゴキブリの降り率は略20%である。すなわち、距離Dが49mmであっても、雄のクロゴキブリが容器内に全く降りないわけではなく、一部の雄のクロゴキブリは容器内に降りる。そして、この49mmという距離は、雄のクロゴキブリにとっては脱出率略0%であるため、容器内に降りた、一部の雄のクロゴキブリを容器内に確実に捕獲することができる。よって、距離Dを29〜49mmとすることによって、雄雌のうち少なくとも一方のクロゴキブリを効率よく捕獲することができる。
【0101】
好ましくは、距離Dを31〜47mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して、さらに降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。すなわち、距離Dの下限値である31mmにおいては、雄のクロゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。一方、距離Dの上限値である47mmにおいては、雌のクロゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。つまり、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリをさらに効率良く捕獲することができる。
【0102】
また、距離Dを39〜47mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して、より一層、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。つまり、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリをより一層効率良く捕獲することができる。
【0103】
さらに、クロゴキブリの雌雄の平均については、
図12からわかるように、距離Dが15〜49mmであれば、クロゴキブリが略30%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜47mmとすることによって、クロゴキブリの降り率を略40%とすることができる。一方、距離Dを31mm以上とすることによって、クロゴキブリの脱出率を略45%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを35mm以上とすることによって、クロゴキブリの脱出率を略30%以下とすることができる。したがって、距離Dを31〜49mmとすることによって、クロゴキブリに対して、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを35〜47mmとすることによって、クロゴキブリに対して、より一層降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。
【0104】
尚、降り率が脱出率よりも高い側に乖離しているか否かという観点で
図10〜12を考察すると、距離Dを29〜53mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して、降り率と脱出率との乖離を略20%以上とすることができ、クロゴキブリを効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを31〜49mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略30%以上とすることができ、クロゴキブリをさらに効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。さらに好ましくは、距離Dを39〜47mmとすることによって、雄及び雌の何れのクロゴキブリに対しても、降り率と脱出率との乖離を略40%以上とすることができる。
【0105】
−実験I,IIのまとめ−
したがって、距離Dを15〜53mmの範囲で設定することによって、雄のチャバネゴキブリ、雌のチャバネゴキブリ、雄のクロゴキブリ及び雌のクロゴキブリの少なくとも1つを効率良く捕獲することができる。
【0106】
すなわち、日本における、家屋、ビル、乗物等の屋内に生息する多くのゴキブリは、チャバネゴキブリかクロゴキブリである。つまり、屋内にはチャバネゴキブリとクロゴキブリとの少なくとも二種類のゴキブリがよく生息している。チャバネゴキブリとクロゴキブリとでは、体格に加えて、警戒心の強弱も異なり、適切なゴキブリ捕獲器の構成も異なり得る。さらに、同一種類のゴキブリであっても、雄と雌とでは、体格が異なるため、適切なゴキブリ捕獲器の構成も異なり得る。すなわち、屋内には、雄のチャバネゴキブリ、雌のチャバネゴキブリ、雄のクロゴキブリ及び雌のクロゴキブリの4種類の、体格及び警戒心の強弱が異なるゴキブリが多く生息している。
【0107】
つまり、距離Dを15〜53mmとすることによって、日本の屋内によく生息している前記4種類のゴキブリの少なくとも1つを効率良く捕獲することができる。
【0108】
そして、距離Dを当該範囲の中から適宜設定することによって、前記4種類のゴキブリの何れかに対して特に効果的なゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、距離Dを15〜31mmに設定することによって、特にチャバネゴキブリに有効とすることができる。また、距離Dを29〜53mmに設定することによって、特にクロゴキブリに有効とすることができる。
【0109】
好ましくは、距離Dを15〜49mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリ、雌のチャバネゴキブリ、雄のクロゴキブリ及び雌のクロゴキブリの少なくとも1つに対して、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。そして、距離Dを当該範囲の中から適宜設定することによって、前記4種類のゴキブリの何れかに対して特に効果的なゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、距離Dを15〜31mmに設定することによって、特にチャバネゴキブリに有効とすることができる。また、距離Dを29〜49mmに設定することによって、特にクロゴキブリに有効とすることができる。そして、両範囲の重複する29〜31mmに距離Dを設定することによって、チャバネゴキブリにもクロゴキブリにも有効とすることができる。尚、ここで、「有効」とは、該当するゴキブリに特に効果があることを意味するのであって、それ以外のゴキブリにとっては効果がないことを意味するのではなく、それ以外のゴキブリにも効果があり得る。
【0110】
さらに、チャバネゴキブリに適した15〜31mmの範囲のうち15〜19mmに距離Dを設定することによって、特に雄のチャバネゴキブリに対して有効とすることができる。一方、距離Dを当該範囲のうち29〜31mmに設定することによって、特に雌のチャバネゴキブリに対して有効とすることができる。そして、距離Dを当該範囲のうち19〜29mmに設定することによって、雄及び雌の何れのチャバネゴキブリに対しても有効とすることができる。好ましくは、距離Dを当該範囲のうち21〜27mmに設定することによって、雄及び雌の何れのチャバネゴキブリに対してより一層有効とすることができる。
【0111】
また、クロゴキブリに適した29〜53mmの範囲のうち29〜31mmに距離Dを設定することによって、特に雄のクロゴキブリに対して有効とすることができる。一方、距離Dを当該範囲のうち51〜53mmに設定することによって、特に雌のクロゴキブリに対して有効とすることができる。そして、距離Dを当該範囲のうち31〜51mmとすることによって、雄及び雌の何れのクロゴキブリに対しても有効とすることができる。好ましくは、距離Dを当該範囲のうち39〜47mmとすることによって、雄及び雌の何れのクロゴキブリに対してより一層有効とすることができる。
【0112】
−実験III−
続いて、ゴキブリに容器内への侵入を促すために好適な侵入路の長さを調べる実験を行った。具体的には、実験Iと同様の容器510内に、実験用のゴキブリ捕獲器401を設置した。
【0113】
ゴキブリ捕獲器401は、基本的には実験Iと同様の構成をしている。実験IIIでは、侵入路432の長さが異なる5種類のゴキブリ捕獲器401が用意されている。具体的には、5種類の侵入路432の長さは、0mm(即ち、侵入路432がなく、蓋部材403に侵入口433となる開口が形成されている。),2mm,4mm,9mm,13mmである。また、ゴキブリ捕獲器401には、着地台423が設けられている。着地台423は、侵入路432の長さに応じて5種類、用意されている。侵入路432の長さに応じて着地台423を変えることによって、侵入口433から着地台423までの距離Dを21mmで一定となるように調整している。
【0114】
ゴキブリ捕獲器401は、実験Iと同様に、チャバネゴキブリ用とクロゴキブリ用との2種類がある。
【0115】
チャバネゴキブリについては、容器510内に雄5匹、雌5匹のチャバネゴキブリを放し、全てのチャバネゴキブリがゴキブリ捕獲器1内に侵入するまでの時間を計測した。実験室内の温度は、24℃であり、容器510の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。
【0116】
この実験を、侵入路432の長さを0,2,4,9,13mmで変えて行った。このとき、着地台423を適宜選択することによって、距離Dが21mmで一定となるようにしている。侵入路432の各長さについて、5回の実験を行った。
【0117】
クロゴキブリについては、容器510内に雄3匹、雌3匹のクロゴキブリを放し、全てのクロゴキブリがゴキブリ捕獲器1内に侵入するまでの時間を計測した。実験室内の温度は、24℃であり、容器510の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。
【0118】
この実験を、侵入路432の長さを0,2,6,15,25mmで変えて行った。このとき、着地台423を適宜選択することによって、距離Dが39mmで一定となるようにしている。侵入路432の各長さについて、4回の実験を行った。
【0119】
−チャバネゴキブリの結果−
チャバネゴキブリについての実験IIIの結果を
図13に示す。
図13は、チャバネゴキブリについての、侵入路の長さに対する、ゴキブリを捕獲するまでの所要時間を示すグラフである。
【0120】
図13からわかるように、侵入路432が0mm、即ち、侵入路432が無いゴキブリ捕獲器401と比べて、侵入路432が設けられたゴキブリ捕獲器401の方がチャバネゴキブリを捕獲するまでの所要時間が短い。また、侵入路432が4mm以上の場合には、侵入路432が無い場合と比べて有意な差がある。したがって、侵入路432を2mm以上とすることによって、チャバネゴキブリを捕獲するまでの所要時間が短くなることがわかる。好ましくは、侵入路432を4mm以上とすることによって、チャバネゴキブリを捕獲するまでの所要時間が大幅に短くなることがわかる。
【0121】
−クロゴキブリの結果−
クロゴキブリについての実験IIIの結果を
図14に示す。
図14は、クロゴキブリについての、侵入路の長さに対する、ゴキブリを捕獲するまでの所要時間を示すグラフである。
【0122】
図14からわかるように、侵入路432が0mm、即ち、侵入路432が無いゴキブリ捕獲器401と比べて、侵入路432が設けられたゴキブリ捕獲器401の方がクロゴキブリを捕獲するまでの所要時間が短い。また、侵入路432が2mm以上の場合には、侵入路432が無い場合と比べて有意な差がある。したがって、侵入路432を2mm以上とすることによって、クロゴキブリを捕獲するまでの所要時間が大幅に短くなることがわかる。
【0123】
−実験IIIのまとめ−
したがって、侵入路432を設けることによって、侵入路432を設けない構成と比較して、ゴキブリをゴキブリ捕獲器401内へ誘導することができる。
【0124】
そして、チャバネゴキブリに対しては、侵入路432の長さを2mm以上とすることが好ましく、4mm以上とすることがさらに好ましい。
【0125】
クロゴキブリに対しては、侵入路432の長さを2mm以上とすることが好ましい。