特許第6016354号(P6016354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016354
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】スパウト付き収容体
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   B65D33/38
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-269713(P2011-269713)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-121844(P2013-121844A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-247467(P2011-247467)
(32)【優先日】2011年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228408
【氏名又は名称】日本キム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸夫
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−263354(JP,A)
【文献】 実開昭56−109939(JP,U)
【文献】 特開2011−225272(JP,A)
【文献】 特開2011−051644(JP,A)
【文献】 特開2011−189968(JP,A)
【文献】 実開昭48−026137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を重ね、周囲を溶着することで収容物を収容する収容体と、
前記シート状部材間に介在され、収容体内の収容物を注出するスパウトと、
を有するスパウト付き収容体において、
前記スパウトは、前記収容物を外部に注出する流路と、前記シート状部材が溶着される第1溶着部と、前記第1溶着部に溶着されたシート状部材に対して外方に向けて筒状に突出し、前記流路と連通する注出流路を具備した筒状の流路筒部とが一体形成された本体部を有しており、
前記流路筒部の外周面は、三方が溶着され収容物が貯留可能な袋状部材が被せられると共に、前記流路筒部の外周面と前記袋状部材の側縁との間で隙間を有するように前記袋状部材の開口領域が溶着される第2溶着部を有しており、
前記第2溶着部に溶着された袋状部材内に空洞部と密着部が形成されており
前記空洞部は、前記流路筒部の先端の上方から前記隙間に形成されており、
前記収容体を押圧した際、前記収容物は前記袋状部材内を介して、袋状部材の切断された先端部から注出可能であり、
前記収容体の押圧を解除した際、前記空洞部に収容物が貯留された状態となることを特徴とするスパウト付き収容体。
【請求項2】
前記本体部には、前記流路筒部が突出する平坦面が形成され、
前記袋状部材は、平坦面によって規制された状態で前記第2溶着部に溶着されており、
前記流路筒部の突出端は錐状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパウト付き収容体。
【請求項3】
前記筒状の流路筒部の外周面には、前記袋状部材の内面が密着する部分に、前記注出流路から収容物を流出させる開口が形成されており、
前記流出筒部の突出端は閉塞されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパウト付き収容体。
【請求項4】
前記流路筒部は断面円形状に形成されると共に、前記第2溶着部は断面略舟形形状に形成され、
前記流路筒部の外周面に形成された開口は、前記袋状部材の溶着部となっている側縁を結ぶラインに対して直交する方向上に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のスパウト付き収容体。
【請求項5】
前記本体部には、前記袋状部材を収容する開閉キャップが着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有する合成樹脂製のシートを重ねた収容体に関し、詳細には、樹脂等によって一体形成された注出口(スパウトと称される)を溶着して、収容物を注出可能としたスパウト付き収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製のシート状部材(プラスチックフイルム)を重ね、その周縁部を溶着(熱溶着)した収容体が知られている。このような収容体は、安価であると共に軽量で取扱性に優れるため、医療分野、化粧品やサニタリー用品などの日用品分野、事務用品分野、食品分野等、様々な分野で使用されている。ところで、このような収容体には、嫌気性の液体を収容する場合があり、そのような収容物は、開封して注出操作をした後に、そのまま残しておくことがあるため、開封した後は、外気の流入を阻止できるように、再シール構造を備えていることが好ましい。
【0003】
このような再シール構造を備えたものとして、例えば、特許文献1には、密着性のノズルを形成した収容体が開示されている。このノズルは、2枚の柔軟性シートを重ね、その内面が収容物を充填した後の常態において密着するように構成されており、収容部の内圧を高めて収容物を注出操作した後は、少なくとも一方の柔軟性シートが屈曲することで密着度を高め、再シールできるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−192045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した収容体は、収容物を充填した後、常態時において、常にノズル部分が密着し、かつ、収容物を注出した後は、少なくとも一方側が屈曲してシール性が得られるように、ノズルを構成する柔軟性シートに折り癖となる境界線を付与する構造であるため、製造するのが容易ではなく、製造コストも高くなってしまう。また、実際の注出操作後において、上記したような機能が十分に発揮できない可能性があり、シール性能が十分でない可能性もある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、構造が簡単で容易に製造することができ、収容物を注出する際に、収容部内に外気が流入することを確実に防止することが可能なスパウト付き収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、シート状部材を重ね、周囲を溶着することで収容物を収容する収容体と、前記シート状部材間に介在され、収容体内の収容物を注出するスパウトと、を有するスパウト付き収容体において、前記スパウトは、前記収容物を外部に注出する流路と、前記シート状部材が溶着される第1溶着部と、前記第1溶着部に溶着されたシート状部材に対して外方に向けて筒状に突出し、前記流路と連通する注出流路を具備した筒状の流路筒部とが一体形成された本体部を有しており、前記流路筒部の外周面は、三方が溶着され収容物が貯留可能な袋状部材が被せられると共に、前記流路筒部の外周面と前記袋状部材の側縁との間で隙間を有するように前記袋状部材の開口領域が溶着される第2溶着部を有しており、前記第2溶着部に溶着された袋状部材内に空洞部と密着部が形成されており、前記空洞部は、前記流路筒部の先端の上方から前記隙間に形成されており、前記収容体を押圧した際、前記収容物は前記袋状部材内を介して、袋状部材の切断された先端部から注出可能であり、前記収容体の押圧を解除した際、前記空洞部に収容物が貯留された状態となることを特徴とする。
【0008】
上記した構造のスパウト付き収容体では、スパウトの本体部から突出形成された筒状の流路筒部に被せて溶着された袋状部材を介して収容物が注出される。前記袋状部材は三方が溶着されており、その開口側を流路筒部に被せた状態で前記第2溶着部に溶着されている。第2溶着部は、袋状部材の開口領域を溶着した際、流路筒部の外周面と袋状部材の溶着縁部との間で隙間が形成されるように構成されており、前記袋状部材を第2溶着部に溶着することで、前記袋状部材には、空洞部(袋状部材の内面が密着しない非密着部分)と密着部(内面同士が引張力によって密着する部分)が形成される。このため、袋状部材の先端部を切断し、収容体部分を押圧して内圧を高めることで、収容物は、空洞部から前記密着部を拡げるように移動して切断した部分から注出される。そして、収容体部分の押圧を解除すると、袋状部材の空洞部には、収容物が貯留されると共に、それより先の密着部は、引張力が回復して再び密着するようになる。この場合、密着部では、毛細管力によって収容物のシール膜が形成された状態となっており、前記空洞部に貯留された収容物とともに、外気が流路筒部の開口から収容体側に入り込むことを阻止してシール機能を発揮する。
【0009】
また、収容体に溶着されるスパウトは、本体部に収容物を収容した収容体を溶着する第1溶着部と、注出が成される袋状部材を溶着する第2溶着部を有する流路筒部とを一体形成した簡単な構造であり、そのような一体形成されている第1溶着部に収容体を溶着すると共に、第2溶着部に袋状部材を溶着するため、シール機能を有する収容体を容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造が簡単で容易に製造することができ、収容物を注出する際に、収容部内に外気が流入することを確実に防止することが可能なスパウト付き収容体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るスパウト付き収容体の第1の実施形態を示す全体構成図。
図2】スパウト部分を拡大して示す図。
図3】(a)はスパウト部分を拡大して示す正面図、(b)はその側面図。
図4】収容物の注出操作を説明する図。
図5】スパウト部分の正面図であり、収容物を注出する際の収容物の移動状態を示す正面図。
図6】収容物を別の容器に詰め替える状態を示す図。
図7】本発明に係るスパウト付き収容体の第2の実施形態を示し、スパウト部分を拡大して示す図。
図8】本発明に係るスパウト付き収容体の第3の実施形態を示し、スパウト部分を拡大して示す図。
図9】本発明に係るスパウト付き収容体の第4の実施形態を示し、スパウト部分を拡大して示す図。
図10図9のA−A線に沿った断面図。
図11】収容物の注出状態を示す図であり、スパウト部分を拡大した正面図。
図12】収容物の注出状態を示す図であり、スパウト部分を拡大した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係るスパウト付き収容体の実施形態について説明する。
図1から図3は、本発明に係るスパウト付き収容体の第1の実施形態を示す図であり、図1は、全体構成を示す図、図2は、スパウト部分を拡大して示す図、そして、図3(a)は、スパウト部分を拡大して示す正面図、図3(b)は、その側面図である。
【0013】
本実施形態に係るスパウト付き収容体1は、例えば、図1に示すような形態で構成されており、矩形のシート状部材2a,2bを重ね合わせることで形成された収容体2と、前記シート状部材2a,2b間に介在され、収容体の収容部S内に収容された収容物50を注出するスパウト(注出口)10と、を有している。
【0014】
前記シート状部材2a,2bは、柔軟性を有する合成樹脂製のシート(プラスチックフイルム)、例えば、溶着し易いように、ポリエチレンやポリプロピレンなどによって構成されており、その表面側に、収容物に対するバリア性を高めるように、ナイロン、アルミホイルなどを積層した、いわゆる複合層で構成されている。
【0015】
前記シート状部材2a,2bは、図に示す斜線領域(上縁部5、側縁部6,7、及び下縁部8)をヒートバーによって熱溶着することで、収容物50が収容される収容部Sを有する収容体2が形成される。なお、本実施形態では、下縁部8を溶着するに際して、底部8aが溶着されており、自立体として構成されているが、単に、シート状部材2a,2bの周縁部を溶着した非自立体(二方体、三方体など)として構成されていても良い。すなわち、溶着する部分や、袋体を構成するシート状部材の配置、収容部Sの形状等については、使用用途などに応じて適宜変形することができ、図に示す構成に限定されることはない。
【0016】
前記シート状部材2a,2bの周縁を溶着する際、その上縁部5には、前記スパウト10が介在される。この場合、スパウト10の溶着は、シート状部材2a,2bを重ね合わせ、上記した周囲の溶着工程と同時に行うことが可能であり、更には、スパウト10の溶着工程と同時に、後述する袋状部材を溶着しても良い。また、収容部S内の収容物50は、溶着領域の一部、例えば、図1に示すように、上縁部5の一部5aを未溶着としておき、この部分から充填し、これにより、収容物50が充填されたスパウト付き収容体1が形成される。
【0017】
本実施形態のスパウト10は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって一体形成された本体部11を有している。前記本体部11には、前記シート状部材2a,2bが溶着される第1溶着部12と、前記第1溶着部12に溶着されたシート状部材2a,2bに対して外方に向けて筒状に突出する筒状の流路筒部15が一体形成されている。また、本体部11には、前記第1溶着部12の内部を貫通して収容部Sに収容された収容物50を外部に向けて流出する流路14が形成されており、この流路14は、流路筒部15によって形成される注出流路15aと同軸状(直線状)に連通している。これにより、収容部Sに収容されている収容物50は、本体部11に形成された流路14、及び流路筒部15の注出流路15aを介して、流路筒部15の先端開口15bから注出されるようになっている。
【0018】
なお、前記第1溶着部12は、重ねた状態のシート状部材2a,2bの内面と溶着し易いような形状となっていれば良く、例えば、断面が舟形形状、楕円形状、円形状のようなものが該当し、これにより、重ね合わせたシート状部材2a,2bの上縁部5は、溶着部12の表面部に対して一体的に溶着される。
【0019】
前記流路筒部15は、前記第1溶着部12と直交する本体部11の上面(平坦面)11aから、所定長さLを有して上方に向けて突出形成されており、その部分には、三方(側縁20a,20b及び底縁20c)が溶着された袋状部材20の開口側が被せられ、かつ、上面11aに規制された状態(位置決めされた状態)で、開口側の内面が熱溶着されている。この場合、流路筒部15の基端側は、前記袋状部材の開口側の内面が熱溶着される第2溶着部15cとなっており、この第2溶着部15cには、袋状部材20を溶着した際、流路筒部15の外周面と袋状部材の溶着縁部(側縁20a,20b)との間で隙間Gが形成されるように、溶着突片15dが一体形成されている。
【0020】
具体的に、本実施形態では、流路筒部15は、断面円形状に形成されると共に、その基端側の第2溶着部15cは、断面が略舟形形状に形成されており、これにより、流路筒部15に袋状部材20の開口側を被せて第2溶着部15cに溶着すると、流路筒部15の外周面と袋状部材の側縁20a,20bとの間に隙間G(この隙間Gは、後述する空洞部を構成する)が形成されるようになっている。
【0021】
前記流路筒部15の先端開口15bには、突出側に向けて次第に縮径するテーパ15eを形成しておいても良い。このようなテーパ15eを形成しておくことで、三方が溶着された袋状部材20を被せ易くなって、製造コストを低減することが可能となる。また、この場合、スパウト10の本体部11の上面部11aを、第1溶着部12と第2溶着部15cを区画するようにフランジ状に形成しておくことで、収容体2と袋状部材20の溶着工程が容易になる。さらに、袋状部材20については、前記シート状部材2a,2bと同様な材料で構成することが可能である。
【0022】
上記したようなスパウト10の流路筒部15に対して、袋状部材20が溶着されると、その内部には、先端開口15bの上方の所定範囲、及び、前記流路筒部15の外周面と袋状部材の側縁20a,20bとの間に存在する隙間Gが、非密着領域(空洞部;図面において、白抜きで示す領域R)となる。このような非密着領域(空洞部)Rは、流路筒部15に膨らみ(袋状部材20に対して直交する方向の厚み)があること、及び、第2溶着部15cに溶着突片15dを形成したことで、流路筒部15の先端開口15bの近傍に必然的に生じさせることができ、袋状部材20の内面同士が密着することのない領域(空洞部)となっている。そして、この空洞部Rよりも上方側は、袋状部材20の側縁20a,20b及び底縁20cの溶着によって、互いの内面同士が引張力によって密着し、密着部R1(斜線で示す部分)を形成するようになる。また、前記袋状部材20の先端側には、密着部R1を横切るようにして破断ライン20fが形成されている。
【0023】
前記空洞部Rの大きさについては、流路筒部15の突出長さ、その径、形状、袋状部材を構成する素材、肉厚等によって種々変形することが可能である。また、流路筒部15に被せられる袋状部材20の長さについては適宜変形することが可能であり、後述するシール効果(外気遮断効果)は、袋状部材20の密着部R1の長さによって決定されるため、袋状部材20のシール形状は直線で良く、変形部や屈曲部等を設ける必要性はない。
【0024】
上記した構造のスパウト付き収容体1によれば、前記破断ライン20fを切り取った後、図4に示すように、収容体2を押圧して収容部Sの内圧を高めることにより、収容物50は、スパウト10の流路筒部15に被せて溶着されている袋状部材20を介して注出することが可能となる。この場合、袋状部材20には、上記したように、先端開口15bの近傍に空洞部(内面同士が密着していない非密着部部分)Rと、密着部(内面同士が引張力によって密着している部分)R1が形成されており、収容体2を押圧して内圧を高めることで、図5に示すように、収容物は、空洞部Rから密着部R1を拡げるように移動して切断した部分から注出されるようになる。また、押圧力を変えることで、密着部R1における吐出幅Wは、その押圧力に応じて自動的に変化することが可能となる。
【0025】
なお、上記した注出操作時では、図6に示すように、袋状部材20を、別の収容容器であるボトル60の開口部60aに容易に差し込むことができるため、収容物の詰め替え作業を容易に行うことが可能となる。
【0026】
そして、収容物の注出操作後に、収容体2の押圧力を解除すると、袋状部材20の空洞部Rには、収容物がそのまま貯留されると共に、それより先の密着部R1は、引張力が回復して再び密着するようになる。この場合、密着部R1では、毛細管力によって収容物のシール膜が形成された状態となっており、空洞部Rに貯留された収容物とともに、外気が流路筒部15の先端開口15bから収容体2側に入り込むことを確実に阻止してシール効果(外気遮断効果)を発揮する。特に、空洞部Rは、図3(b)に示すように、先端開口15bの上方から、流路筒部15の周囲領域(流路筒部15の外周面と袋状部材の側縁20a,20bとの間の隙間G)にも形成されており、この部分にも押圧力を解除した際に、収容物が貯留された状態となることから、シール効果が確実に維持されるようになる。
【0027】
また、上記のように構成されるスパウト付き収容体1によれば、スパウト10は、本体部11に収容物を収容した収容体2を溶着する第1溶着部12と、注出が成される袋状部材20を溶着する第2溶着部15cを有する流路筒部15とを一体形成した簡単な構造となっており、このように一体形成されているスパウト10の第1溶着部12に収容体2を溶着すると共に、第2溶着部15cに袋状部材20を溶着するため、シール機能を有する収容体を容易に製造することが可能となる。特に、収容物を注出するためのスパウト10を取着したことで、収容物を注出する際、フィルム閉塞によって生じる吐出阻害を防止することができる。さらに、上記した袋状部材20は、収容体2を構成するシート状部材2a,2bと同じ素材を用いても、上記したような空洞部と密着部を形成することが可能であり、加工コストを低減することが可能となる。
【0028】
次に、本発明に係るスパウト付き収容体の別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、前記実施形態と同一の構成部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0029】
図7は、本発明に係るスパウト付き収容体の第2の実施形態を示す図である。
この実施形態では、スパウト10の本体部11に、前記袋状部材20を収容できるように開閉キャップ70が着脱可能となるように装着されている。
【0030】
具体的には、本体部11に、前記流路筒部15と同軸状となるように装着部(雄螺子部)17を形成しており、この部分に開閉キャップ70の雌螺子部70aを螺合することで、開閉キャップ70を開閉可能としている。この場合、開閉キャップ70は、前記袋状部材20を収容して装着することが可能となっており、このような開閉キャップ70を設けることで、収容物50を全て注出しないような場合、袋状部材20を開閉キャップ70内に収容し、開閉キャップ70を本体部11に形成された雄螺子部17に装着することで、衛生面の向上が図れると共に、保管管理性の向上が図れるようになる。
【0031】
図8は、本発明に係るスパウト付き収容体の第3の実施形態を示す図である。
この実施形態では、スパウト10の本体部11に対して、フランジ部分の形状と同様な開口形状を有する開閉キャップ80を着脱可能としている。この場合、本体部11のフランジ部分の側縁には、係止部(突起)18が複数形成されており、この部分に、前記開閉キャップ80の開口部内面に形成された凹部80aを係脱可能にして、開閉キャップ80を着脱可能にしている。
【0032】
このように、袋状部材20を収容する開閉キャップの構成については、適宜変形することが可能であり、かつ、スパウト10の本体部11に対する着脱構造についても適宜変形することが可能である。
【0033】
図9から図12は、本発明に係るスパウト付き収容体の第4の実施形態を示す図であり、図9は、スパウト部分を拡大して示す図、図10は、図9のA−A線に沿った断面図、図11は、収容物の注出状態を示す図であり、スパウト部分を拡大した正面図、そして、図12は、収容物の注出状態を示す図であり、スパウト部分を拡大した側面図である。
【0034】
この実施形態では、流路筒部15の外周面に、注出流路15aから収容物を流出させる開口15mを形成したことを特徴としている。この場合、袋状部材20の開口側の内面を前記第2溶着部15cに溶着することで、流路筒部15の外周面に対して袋状部材20の内面が密着するようになるが、前記開口15mは、このように袋状部材20の内面が密着する領域に形成されている。具体的に、本実施形態における開口15mは、袋状部材20の溶着部となっている側縁20a,20bを結ぶラインXに対して直交する方向Y上に形成されており、この方向でも最も距離が長くなる位置(この位置では袋状部材20の内面が最も強い力で流路筒部15の外周面に密着される)に形成されており、図に示すように、この方向における対向する位置の2箇所に形成されている。
【0035】
また、本実施形態では、前記流路筒部15の突出端は閉塞されると共に、錐状に膨出形成されており(突出側に円錐部15hが形成されている)、前記スパウトの本体部11に形成された流路14から流れる収容物は、流路筒部15の注出流路15aを介して、最終的に2つの開口15mから注出されるようになっている。
【0036】
本実施形態のスパウト付き収容体によれば、収容体2を押圧して収容部Sの内圧を高めることにより、収容物は、図11及び図12の矢印で示すように、開口15mを介して密着状態にある袋状部材20を押し広げて、上記した実施形態と同様、空洞部R及び密着部R1を介して注出することが可能となる。
【0037】
そして、収容物の注出操作後に、収容体2の押圧力を解除すると、袋状部材20の空洞部Rには、上記した実施形態と同様、収容物がそのまま貯留されると共に、それより先の密着部R1は、引張力が回復して再び密着するようになる。また、流路筒部15の開口15mが形成されている部分は、収容体側の負圧、及び側縁20a,20bによる引張力(流路筒部15の外周面に作用する引張力)によって、再び袋状部材20の内面が密着するようになり、開口15mは封止される。この結果、前記空洞部Rに貯留されている内容物が流路14側に逆流することが防止され、空洞部R内には、常時、内容物が一定量保持されることから、外気の遮断、及び気密性をより高めることが可能となる。なお、本実施形態の開口15mは、流路筒部15の外周面において、袋状部材20の引張力が最も大きくなる位置に形成されていることから、袋状部材20の密着力が高く、高いシール効果を発揮することができる。
【0038】
また、本実施形態では、上述したように、流路筒部15の突出端を閉塞して円錐部15hを形成したため、外気が収容部側に流入することを確実に防止でき、さらに、円錐部によって袋状部材20を流路筒部15に対して被せ易くなり、製造が容易に行えるようになる。
【0039】
なお、本実施形態では、上記した流路筒部15に形成される開口15mの位置、及び、開口の形成個数については、適宜変形することが可能である。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。
上記したように構成されるスパウト10は、収容体の形状に応じて、その取着位置を適宜変更することが可能である。また、本体部11と一体形成される流路筒部15は、その断面形状、突出量について適宜変形することが可能である。この場合、流路筒部15における長さや径によって、袋状部材20の密着部R1の具体的な密着力を変えることが可能であるが、収容部Sに収容物50が収容された状態で押圧力(収容部Sを手によって押圧する)を付与して内圧を高めることで収容物50が流出する流路を生じさせ、かつ、押圧力を解除して収容部Sの内圧が下がった際に、引張力が回復して、再び袋状部材の内面同士が密着し、収容部内に外気が流入することを阻止できるように設定されていれば良い。
【符号の説明】
【0041】
1 スパウト付き収容体
2 収容体
2a,2b シート状部材
10 スパウト
11 本体部
12 第1溶着部
12 溶着部
15 流路筒部
15c 第2溶着部
15m 開口
20 袋状部材
50 収容物
70,80 開閉キャップ
R 空洞部
R1 密着部
図1
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