(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
90質量%以上がエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、かつ(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が(1:1.5)〜(1.5:1)であるプラズマローゲンを含む、脳神経細胞の新生作用を付与するための食品添加剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規な脳神経細胞新生効果を有する物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、驚くべき事に、プラズマローゲンが脳神経細胞新生効果を有することを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。なお、当業者なら当然に理解することであるが、以下「質量%」と記載するところは「重量%」と置き換えてもよい。
【0010】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
プラズマローゲンを有効成分として含む脳神経細胞新生剤。
項2−1.
生体組織から抽出されたプラズマローゲンを有効成分として含む請求項1に記載の脳神経細胞新生剤。
項2−2.
プラズマローゲン含有生体組織抽出物を有効成分として含む項1に記載の脳神経細胞新生剤。
項3−1.
鳥組織から抽出されたプラズマローゲンを有効成分として含む請求項2−1に記載の脳神経細胞新生剤。
項3−2.
プラズマローゲン含有鳥組織抽出物を有効成分として含む項2−2に記載の脳神経細胞新生剤。
項4.
前記プラズマローゲンにエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンが含有される、項1〜3−2のいずれかに記載の脳神経細胞新生剤。
項5.
前記プラズマローゲンの90質量%以上がエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンである、項4に記載の脳神経細胞新生剤。
項6.
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含有し、(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が(1:5)〜(1:0.01)である、項4又は5に記載の脳神経細胞新生剤。
項7−1.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患の治療及び/又は予防用である、項1〜6のいずれかに記載の脳神経細胞新生剤。
項7−2.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患が、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症、及び認知症からなる群より選択される少なくとも1種の神経疾患である、項7−1に記載の脳神経細胞新生剤。
項8−1.
プラズマローゲン、及び薬学的に許容される担体又は食品衛生学上許容される担体を含む、組成物。
項8−2.
プラズマローゲン含有鳥組織抽出物、及び薬学的に許容される担体又は食品衛生学上許容される担体を含む、組成物。
項9−1.
プラズマローゲンを対象に有効量摂取させる工程を含む、脳神経細胞新生方法。
項9−2.
プラズマローゲン含有鳥組織抽出物を対象に有効量摂取させる工程を含む、脳神経細胞新生方法。
項9−3.
項1〜7のいずれかに記載の脳神経細胞新生剤を対象に有効量摂取させる工程を含む、脳神経細胞新生方法。
項10.
前記対象が、ヒトを含む哺乳動物である、項9−1〜9−3のいずれかに記載の脳神経細胞新生方法。
項11−1.
前記対象が、脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患を患った対象である、項9−1〜10のいずれかに記載の脳神経細胞新生方法。
項11−2.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患が、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症、及び認知症からなる群より選択される少なくとも1種の神経疾患である、項11−1に記載の脳神経細胞新生方法。
項12−1.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患の治療又は予防における使用のためのプラズマローゲン。
項12−2.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患の治療又は予防における使用のためのプラズマローゲン含有鳥組織抽出物。
項12−3.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患の治療又は予防における使用のための項1〜7のいずれかに記載の脳神経細胞新生剤。
項12−4.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患の治療又は予防における使用のための項8−1又は8−2に記載の組成物。
項12−5.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患が、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症、及び認知症からなる群より選択される少なくとも1種の神経疾患である、項12−1に記載のプラズマローゲン、項12−2に記載のプラズマローゲン含有鳥組織抽出物、項12−3に記載の脳神経細胞新生剤、又は項12−4に記載の組成物。
項13−1.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患の治療のための医薬の製造におけるプラズマローゲンの使用。
項13−2.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患の治療のための医薬の製造におけるプラズマローゲン含有鳥組織抽出物の使用。
項13−3.
前記プラズマローゲンにエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンが含有される、項13−1又は13−2に記載の使用。
項13−4.
前記プラズマローゲンの90質量%以上がエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンである、項13−3に記載の使用。
項13−5.
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含有し、(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が(1:5)〜(1:0)である、項13−3又は13−4に記載の使用。
項13−6.
脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少を伴う神経疾患が、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症、及び認知症からなる群より選択される少なくとも1種の神経疾患である、項13−1〜項13−5のいずれかに記載の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、プラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤により、脳神経細胞(特に歯状回の脳神経細胞)を新生させ、増加させることができる。また、このため、当該脳神経細胞新生剤により、各種神経疾患の治療を行うことができると考えられる。特に、脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少等が観察され得る神経疾患(例えばアルツハイマー病、うつ病、統合失調症、及び認知症等)の治療及び/又は予防に優れた効果を奏すると考えられる。
【0012】
また、本発明の脳神経細胞新生剤は特に歯状回の脳神経細胞を新生し得る。歯状回は記憶を司る海馬の一領域であり海馬への情報入力に重要な役割を果たしていると考えられているため、本発明の脳神経細胞新生剤は、記憶障害の改善及び治療、あるいは学習記憶などの学習能力の向上という効果をも奏すると考えられる。
【0013】
なお、本発明の脳神経細胞新製剤の有効成分はプラズマローゲンであり、プラズマローゲンは生体組織に多く含まれる成分であるため、従来から食用とされる生体組織から抽出されたプラズマローゲンを用いる場合は、当該剤は副作用等の心配はほとんどなく、安全性が極めて高いと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0016】
本発明は、プラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤に係る。
【0017】
プラズマローゲンとは、通常、グリセロール骨格の1位にビニルエーテル結合を介した長鎖アルケニル基をもつグリセロリン脂質をいう。以下にプラズマローゲンの一般式を示す。
【0019】
〔式中、R
1及びR
2は脂肪族炭化水素基を示す。R
1は通常炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であり、例えばドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコサニル基等が挙げられる。R
2は通常脂肪酸残基由来の脂肪族炭化水素基であり、例えばオクタデカジエノイル基、オクタデカトリエノイル基、イコサテトラエノイル基、イコサペンタエノイル基、ドコサテトラエノイル基、ドコサペンタエノイル基、ドコサヘキサエノイル基等が挙げられる。また、式中、Xは極性基を示す。Xは好ましくは、−CH
3CH
3NH
2、−CH
3CH
3N
+(CH
3)
3、−CH
3CH
2(NH
2)COOH、或いは、Xは好ましくは、XにHが結合した化合物(H−X)がイノシトール、又はグリセロールである基である。〕
【0020】
特に、上記式中Xがアミノエチル基(−CH
3CH
3NH
2)であるエタノールアミンプラズマローゲンと、Xがトリメチルアミノエチル基(−CH
3CH
3N
+(CH
3)
3)であるコリンプラズマローゲンが、自然界に存在するプラズマローゲンの中で主要である。本発明の脳神経細胞新生剤に含まれるプラズマローゲンとしても、これら2種は特に好ましい。すなわち、本発明の脳神経細胞新生剤は、プラズマローゲンとしてエタノールアミンプラズマローゲン及び/又はコリンプラズマローゲンを含むことが好ましい。
【0021】
本発明に用いるプラズマローゲンは、生体組織から抽出されるものが好ましい。ここでの生体組織とは、生物におけるプラズマローゲンを含有する組織である。プラズマローゲンを抽出するために用いる生物としては例えば動物及び微生物が挙げられる。微生物としては嫌気性細菌が好適であり、例えば腸内細菌のAcidaminococcaceae科の細菌などは特に好ましい。細菌の場合、“生体組織”は細菌そのものである。動物としては鳥類、哺乳類、魚類、貝類等が好適である。哺乳類としては供給安定性と安全性の両面から家畜が好ましく、例えば牛、豚、馬、羊、山羊等が挙げられる。哺乳類の場合、プラズマローゲンを含有している主な組織としては、皮膚、脳、腸、心臓、生殖器などが挙げられ、これらの組織からプラズマローゲンを抽出できる。また、鳥類としては鶏、家鴨、鶉、鴨、雉、駝鳥、七面鳥などが挙げられる。入手のし易さ、コストの面、及び口にすることへの抵抗感等も考慮すると、従来から食用に用いられ、広く市場に流通している鶏が特に好ましい。また、鳥組織としては、特に制限はされないが、例えば鳥肉(特に鳥ムネ肉)、鳥皮、鳥の内臓等を用いるのが好適である。なお、1又は複数種の生物の異なる組織を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明では、生体組織から抽出されたプラズマローゲンとして、鳥組織から抽出されたプラズマローゲンを用いるのが特に好ましい。中でも従来から食用とされてきた鳥(食鳥)は、安全性が確認されており、安定供給も行い易いため、好適である。最適なのは鶏である。
【0023】
生体組織からプラズマローゲンを抽出する方法としては、プラズマローゲンが抽出(及び必要に応じて精製)できる限り特に制限されない。従来から知られているプラズマローゲン抽出法を適宜選択することができる。例えば、水、有機溶媒、又は含水有機溶媒により抽出した抽出物を、プラズマローゲン含有生体組織抽出物として用いることができる。またさらに、抽出物に対し、例えば以下に詳述するようにして抽出及び精製を行うことが好ましい。当該抽出及び精製方法は、以下の工程(1)〜(3)を含む方法である。
(1)生体組織抽出物から中性脂質及びスフィンゴ脂質を除去する工程
(2)工程(1)を経た前記抽出物を加水分解処理する工程
(3)工程(2)を経た前記抽出物からジアシル型グリセロリン脂質分解物を除去する工程
この抽出及び精製方法によれば、ジアシル型グリセロリン脂質を分解・除去できるため、プラズマローゲンの純度をより一層高めることができ、この点でも好ましい。このようにして得られる抽出物は、プラズマローゲン含有生体組織抽出物として好ましく用い得る。なお、以下“生体組織から抽出されたプラズマローゲン”を“生体組織抽出プラズマローゲン”と記載することがある。また、例えば“鳥組織から抽出されたプラズマローゲン”を“鳥組織抽出プラズマローゲン”と記載することがある。
【0024】
抽出は、水又は有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アセトン、及びヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種)、あるいは含水有機溶媒による抽出を行うことが好ましい。含水有機溶媒の含水率(v/v%)は特に制限されず、例えば10〜90%であり得る。なかでも、エタノール又は含水エタノールで抽出することが好ましい。また、抽出に供される鳥組織は、生でも、予め何らかの処理が施されたものでもよい。例えば、予め乾燥処理及び/又は脱油処理された鳥組織であってもよい。
【0025】
抽出処理条件については、特に制限されないが、冷浸、温浸等の浸漬法、パーコレーション法等により行うことができる。好適な一例として、鶏ムネ肉にエタノールを加え、30℃以上で60分以上、好ましくは40℃以上で180分以上、静置又は撹拌を行う方法が例示される。例えば、乾燥処理された鶏ムネ肉1kgに対して、エタノールを例えば1〜10L、好ましくは1〜6L、さらに好ましくは2〜4L用いて行うことができる。
【0026】
得られた有機溶媒抽出液は、濃縮乾固した後、加水分解処理工程に供されることが好ましい。濃縮乾固は公知の方法に従って行うことができ、例えばエバポレーターを用いて行い得る。このようにして有機溶媒抽出物(有機溶媒抽出乾固物)が得られる。当該有機溶媒抽出乾固物にはプラズマローゲン等の脂質が濃縮されて含まれている。
【0027】
さらに当該有機溶媒抽出乾固物を、例えば、アセトンで遠心処理後沈殿を回収し、さらにヘキサン/アセトン混合溶媒で遠心処理後液層を回収することが好ましい。限定的な解釈を望むものではないが、アセトンで遠心処理後沈殿を回収することで中性脂質が除去され得、ヘキサン/アセトン混合溶媒で遠心処理後液層を回収することでスフィンゴ脂質が除去され得る。
【0028】
このようにして得られた液層を濃縮乾固することで、リン脂質濃縮乾固物が得られる。当該リン脂質濃縮乾固物を加水分解処理工程に供し、ジアシル型リン脂質を加水分解することで、プラズマローゲンを好ましく濃縮することができる。
【0029】
このような加水分解処理としては、例えばホスホリパーゼA1(PLA1)による処理が挙げられる。PLA1はジアシル型リン脂質において、sn-1脂肪酸とグリセリン骨格との結合部を特異的に加水分解する。一方、プラズマローゲンはsn-1がエーテル結合であるため、PLA1の作用を受けない。よって、PLA1で処理することにより、ジアシル型グリセロリン脂質は分解されるが、プラズマローゲンは分解されない。PLA1により処理すれば、ジアシル型グリセロリン脂質は遊離脂肪酸及びリゾリン脂質へと分解される。プラズマローゲンと共存しているジアシル型グリセロリン脂質をPLA1でリゾ体へと変換し、遊離脂肪酸及びリゾリン脂質を除去することで、プラズマローゲンを精製することができる。
【0030】
PLA1は、上述の効果が得られるものであれば、その由来等は特に制限されない。例えば、アスペルギウス・オリゼ由来のPLA1が挙げられる。また、このようなPLA1は、例えば三菱化学フーズ株式会社等から購入可能である。また、その使用量も、用いる有機溶媒抽出乾固物量に応じて適宜設定することができる。好ましくは、0.2〜200unit/(有機溶媒抽出乾固物1mg)を使用でき、さらに好ましくは 2〜200unit/(有機溶媒抽出乾固物1mg)を使用できる。なお、1unitは、1分間当り1μmolの基質(ジアシル型グリセロリン脂質)を変化させる量(1μmol/min)を意味する。
【0031】
また、使用バッファーも、使用するPLA1に応じて適宜選択できる。例えば0.1M クエン酸-HClバッファー(pH4.5)を用いることができる。この場合、有機溶媒抽出乾固物に当該バッファーを加えて溶解させてから、これにPLA1を加えればよい。また、使用バッファー量としては、酵素反応が進行し得るものであれば特に制限されないが、好ましくは有機溶媒抽出乾固物1gあたり1〜30mL、さらに好ましくは5〜15mL程度である。
【0032】
反応条件も適宜設定できるが、好ましくは50℃で撹拌しながら1〜2時間反応させる。
【0033】
なお、加水分解反応後、酵素の失活処理を行っても良い。好ましくは、加水分解反応後、温度を70℃程度まで上昇させることで当該処理を行う。
【0034】
このようにして、ジアシル型グリセロリン脂質が分解された処理液(加水分解処理液)を得ることができる。当該加水分解処理液に例えば2〜3倍量のヘキサンを加え遠心処理後液層(ヘキサン層)を回収することで、酵素バッファー及び酵素タンパク質を除去することができる(酵素バッファー及び酵素タンパク質は水層ヘ溶解し、ヘキサン層には含まれない)。
【0035】
さらに、プラズマローゲンは、ヘキサンに溶解するがアセトンには難溶性であることから、ヘキサン及びアセトン並びに水を適宜組み合わせて分配を行い、さらに水または水溶液(水系溶液)により溶液分配することで、リゾリン脂質を除去してプラズマローゲンを濃縮することができる。(アセトンによりリン脂質以外の中性脂質を除去でき、水系溶液分配によりプラズマローゲンとリゾリン脂質を分離できる。)
【0036】
例えばこのようにして抽出及び精製された生体組織抽出プラズマローゲンは、好ましく本発明の脳神経細胞新生剤の有効成分として用いることができる。また、プラズマローゲンを含有する生体組織から抽出された組成物(すなわち、プラズマローゲン含有生体組織抽出物)も、本発明の脳神経細胞新生剤の有効成分として用いることができる。
【0037】
生体組織抽出プラズマローゲンは、主にエタノールアミンプラズマローゲン及び/又はコリンプラズマローゲンを含む。特に制限されないが、生体組織抽出プラズマローゲンにおける、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンの質量比(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)は、(1:5)〜(1:0)であることが好ましく、(1:5)〜(1:0.01)であることがより好ましく、(1:5)〜(5:1)であることがさらに好ましく、(1:3)〜(3:1)であることがよりさらに好ましく、(1:2)〜(2:1)であることがいっそう好ましく、(1:1.5)〜(1.5:1)であることがよりいっそう好ましい。
【0038】
なお、脳に存在する主要なプラズマローゲンはエタノールアミンプラズマローゲンであり、コリンプラズマローゲンはほとんど存在しないことが知られている。よって、コリンプラズマローゲンを含む生体組織抽出プラズマローゲンが、脳神経細胞新生に好ましく用いることができるのは、全く意外であるといえる。
【0039】
また、特に制限されないが、本発明に用いる生体組織抽出プラズマローゲンは、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンの含有量が、50質量%以上のものが好ましく、60質量%以上のものがより好ましく、70質量%以上のものがさらに好ましく、80質量%以上のものがよりさらに好ましく、90質量%以上のものが特に好ましい。
【0040】
エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンの質量比並びに含有量は、例えば、生体組織抽出プラズマローゲンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で解析することで求めることができる。具体的には、HPLCにおいて、蒸発光散乱検出(ELSD:Evaporative Light Scattering Detector)により(すなわちHPLC−ELSDにより)クロマトグラムを得、当該クロマトグラムにおけるエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを示すそれぞれのピークの面積比を求めることで、質量比を求めることができる。また、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを示すピーク面積がクロマトグラム全体のピーク面積の何%にあたるかを算出することで含有量を求めることができる。ELSDでは、類似した構造を有する物質であれば同様のエリアレスポンスを示すためである。なお、コリン型は電気的に中性であり、一方エタノールアミンはリン酸のマイナス電荷を有するため弱酸性であることから、例えば溶媒として酢酸及びトリエチルアミンを用いて酸性脂質をチャージさせて分析することが好ましい。チャージさせることで、より同様のエリアレスポンスを示し得るからである。
【0041】
また、例えばLC−MS等により分析してエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンの量を定量し、質量比並びに含有量を求めることもできる。
【0042】
本発明の脳神経細胞新生剤は、医薬分野及び食品分野で好ましく用いられる。当該剤は、プラズマローゲン(好ましくは生体組織抽出プラズマローゲン)を含有する。当該剤は、以下に詳述するように、プラズマローゲンのみからなるものでもよいし、プラズマローゲン及び他の成分(各種基剤、担体、添加剤等)を含む組成物であってもよい。プラズマローゲン含有生体組織抽出物そのものも当該組成物に含まれる。つまり、プラズマローゲン含有生体組織抽出物(及び必要に応じて他の成分が配合されたもの)も当該剤として用い得る。
【0043】
本発明の脳神経細胞新生剤を医薬分野にて用いる場合、当該剤(以下「本発明に係る医薬剤」と記載することがある)は、プラズマローゲンのみからなるものでもよいし、他の成分を配合した医薬組成物でもよい。例えば、本発明に係る医薬剤においては、有効成分であるプラズマローゲンに、必要に応じて薬学的に許容される基剤、担体、添加剤(例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、甘味剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、保湿剤、保存剤、pH調整剤、粘稠化剤等)等を配合することができる。このような基材、担体、添加剤等は、例えば医薬品添加物辞典2000(株式会社薬事日報社)に具体的に記載されており、例えばこれに記載されるものを用いることができる。また製剤形態も特に制限されず、常法により有効成分及びその他の成分を混合し、例えば錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、チュアブル剤、ソフト錠剤等の製剤に調製することができる。
【0044】
例えば、錠剤の製造は打錠法により行い得る。混合した原料をそのまま打錠する直接打錠法、混合した原料を顆粒にしてから打錠する顆粒打錠法、のいずれも用い得る。
【0045】
本発明に係る医薬剤におけるプラズマローゲンの配合量は、脳神経細胞新生作用が発揮される限り特に制限されず、一日当たりの好ましいプラズマローゲンの摂取量に応じて適宜設定できる。好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
【0046】
本発明に係る医薬剤を投与する対象としては、制限はされないが、例えば脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少等の変化が観察される神経疾患を患った患者であることが好ましい。このような神経疾患としては、例えば、認知症(アルツハイマー病、パーキンソン病等)、統合失調症、うつ病等を挙げることが出来る。また、当該患者の重症度は特に制限されず、初期患者、中期患者、後期患者いずれの患者にも好ましく用いることができる。さらに、高齢者等、このような神経疾患を患う可能性の高い人に対して、予防的に用いることもできる。
【0047】
さらには、本発明に係る医薬剤を投与する対象には、ヒトのみならず、非ヒト哺乳動物も含まれる。上述の人の症状と同様の症状を示す哺乳動物が例示でき、特にペット及び家畜として飼育される哺乳動物が好ましい。具体的には、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ、リャマ等が例示できる。哺乳動物の場合も、人の場合と同様、本発明に係る医薬剤を予防的に用いることもできる。
【0048】
本発明の脳神経細胞新生剤の投与時期は特に限定されず、例えば製剤形態、投与対象の年齢、投与対象の症状の程度等を考慮して適宜投与時期を選択することが可能である。また、投与形態も特に限定されないが、特に経口投与が好適である。
【0049】
本発明の脳神経細胞新生剤の投与量は、投与対象の年齢、投与対象の症状の程度、その他の条件等に応じて適宜選択され得る。通常当該剤中のプラズマローゲンの量が、好ましくは成人一日あたり1〜1000mg、より好ましくは10〜100mgの範囲となる量を目安とするのが好ましい。なお、1日1回又は複数回(好ましくは2〜3回)に分けて投与することができる。哺乳動物の場合も、当該人の場合を参考として適宜投与量を設定できる。
【0050】
本発明の脳神経細胞新生剤を脳神経細胞新生用の食品添加剤として用いる場合、当該剤(以下「本発明に係る食品添加剤」と記載することがある)は、プラズマローゲンそのものであってもよいし、これらと食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤や、その他食品添加剤として利用され得る成分・材料が適宜配合された食品添加用組成物でもよい。また、このような食品添加剤の形態としては、例えば液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状のものが挙げられるがこれらに限定されない。具体的には、調味料(醤油、ソース、ケチャップ、ドレッシング等)、フレーク(ふりかけ)、焼き肉のたれ、スパイス、ルーペースト(カレールーペースト等)等が例示できる。このような食品添加剤は、常法に従って適宜調製することができる。本発明に係る食品添加剤におけるプラズマローゲンの配合量は、脳神経細胞新生作用が発揮される限り特に制限されないが、好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
【0051】
このような本発明に係る食品添加剤は、該食品添加剤が添加された食品を食べることにより摂取される。なお、当該添加は食品調理中又は製造中に行ってもよいし、調理済みの食品を食べる直前又は食べながら行ってもよい。当該食品添加剤はこのようにして経口摂取することにより、脳神経細胞新生効果を発揮する。なお、本発明に係る食品添加剤の摂取量、摂取対象、含有プラズマローゲン量の測定等は、特に制限されないが、例えば上述した本発明に係る医薬剤と同様であることが好ましい。
【0052】
本発明の脳神経細胞新生剤を脳神経細胞新生用の飲食品として用いる場合、当該剤(以下「本発明に係る飲食品」と記載することがある)は、プラズマローゲン、及び食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤、その他飲食品として利用され得る成分・材料等が適宜配合されたものである。例えば、プラズマローゲンを含む、脳神経細胞新生用又は神経疾患の症状改善用若しくは予防用の加工食品、飲料、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品(病院食、病人食又は介護食等)等の食品組成物が例示できる。特に制限はされないが、当該剤に配合されるプラズマローゲンが家畜又は家禽(例えば牛、豚、鶏等)の組織から抽出された生体組織抽出プラズマローゲンである場合は、例えば当該プラズマローゲンが配合されたハンバーグ、ミートボール、ウインナー、鳥そぼろ、鳥皮チップス等の加工肉食品、及び加工された肉食品を含んでなる健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品等であることが好ましい。また、プラズマローゲンを例えば粉末状にする等して、飲料類(ジュース等)、菓子類(例えばガム、チョコレート、キャンディー、ビスケット、クッキー、おかき、煎餅、プリン、杏仁豆腐等)、パン類、スープ類(粉末スープ等を含む)、加工食品等の各種飲食品に含有させたものであってもよい。
【0053】
なお、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメントとして、本発明に係る飲食品を調製する場合は、継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒、カプセル、錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(ドリンク剤)等の形態に調製することが好ましく、なかでもカプセル、タブレット、錠剤の形態が摂取の簡便さの点からは好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。顆粒、カプセル、錠剤等の形態の、本発明に係る飲食品からなる脳神経細胞新生剤は、薬学的及び/又は食品衛生学的に許容される担体等を用いて、常法に従って適宜調製することができる。また、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
【0054】
本発明に係る飲食品におけるプラズマローゲンの配合量は、脳神経細胞新生作用が発揮され得る限り特に制限されないが、好ましくは0.0005〜100質量%、より好ましくは0.005〜90質量%、さらに好ましくは0.05〜80質量%である。
【0055】
本発明に係る飲食品は、神経疾患の症状改善又は予防のために好ましく用いることができる。また、摂取量、摂取対象、含有プラズマローゲン量の測定等は、特に制限はされないが、例えば上述した本発明に係る医薬剤と同様であることが好ましい。
【0056】
なお、病院食とは病院に入院した際に供される食事であり、病人食は病人用の食事であり、介護食とは被介護者用の食事である。本発明に係る飲食品は、特に神経疾患で入院、自宅療養等されている患者、あるいは介護を受けられている患者用の病院食、病人食又は介護食として好ましく用いることができる。また、高齢者など、神経疾患を患う可能性の高い人が予防的に摂取することもできる。
【0057】
本発明は、神経疾患患者及び神経疾患を患う可能性の高い人又は哺乳動物等に対し、本発明の脳神経細胞新生剤を経口投与又は摂取することを特徴とする神経疾患の予防方法、改善方法及び治療方法をも提供する。当該方法は、具体的には、前述の本発明の脳神経細胞新生剤を投与又は摂取することで実施される。なお、当該方法における、対象、投与経路又は摂取量等の各条件は前述の通りである。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0059】
調製例1:生体組織抽出プラズマローゲン含有画分の製造
鳥組織である鶏ムネ肉を常法に従って採取し、約8mmのミンチへチョッピングし、微生物制御のために加熱工程を経た後、これをチルド冷凍保存した。その後、常法により凍結乾燥を行い、グラインダー処理により粉砕した。乾燥胸肉粉末は、抽出に使用するまで脱酸素剤と共に密封保存した。
【0060】
<有機溶媒抽出工程>
工程(1)
上述のようにして得た乾燥ムネ肉粉末1kgにエタノール4Lを加えて12時間、40℃で撹拌・静置し、その後抽出液を固形物と分離した。固形物には再度エタノール2.5Lを加えて前述のとおり抽出し、得られた抽出液を合わせて濾紙で濾過後、減圧乾燥して濃縮された抽出乾固物を得た。
工程(2)
上述の抽出乾固物に水8mLを加えて撹拌、遠心し、上層を除去した。この沈殿にアセトン200mLを加えて撹拌、4℃で遠心し、アセトン層を除去した。さらにこの沈殿にアセトン100mLを加えて撹拌、遠心し、沈殿を回収した。さらにこの沈殿にヘキサン/アセトン(7:3)混合溶媒100mLを加えて撹拌、遠心し、液層(プラズマローゲン含有画分)20gを回収した。液層は速やかにロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。なお、遠心は3000rpm×10minで行い、アセトン単一及びヘキサン/アセトン混合溶媒を用いたものは4℃、他は15℃で行なった。
工程(3)
上述のようにして得たプラズマローゲン含有画分20gを、ホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ)溶液400mL(10mg/mL 0.1Mクエン酸-HClバッファー)中に分散させ、窒素ガス充填下で50℃で2時間撹拌した。その後、冷却し、2倍容量のヘキサンを加えて2回撹拌、分配し、上層を回収して濃縮乾固した。さらに、当該乾固物にアセトンを60mL加えて撹拌、遠心し、沈殿を回収する操作を2回繰り返した。さらに当該沈殿にヘキサン/アセトン(7:3) 60mL加えて撹拌、遠心し、液層(高純度プラズマローゲン含有画分)を回収した。この液層に、ヘキサン198mLとアセトン222mL(すなわち、合計でヘキサン/アセトン(1:1)となる)を加えて分液ロートに移し、水を72mL添加して撹拌・分配した。下層(アセトン層)を除去し、上層(ヘキサン層)にアセトン/水(5:3)192mLを添加して、撹拌・分配した。上層(ヘキサン層)を回収し、速やかに減圧乾燥して鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を得た。
【0061】
<鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物の純度の検討>
上述のようにして得た鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を下記条件のHPLCにて解析し、クロマトグラムを得た。
[HPLC解析条件]
機器;Shimadzu LC-10AD
カラム;LiChrospher Diol 100(250-4, Merck社)(プレカラム無し)
溶媒;A液:ヘキサン/2-プロパノール/酢酸(82:17:1. v/v),B液:2-プロパノール/水/酢酸(85:14:1, v/v)+0.2%トリエチルアミン
グラジエント条件:
【0062】
【表1】
流速;1.0ml/min
検出;ELSD蒸発光散乱検出器 (島津製作所,京都,日本)
【0063】
結果を
図1に示す。鶏ムネ肉から得られるプラズマローゲンはエタノールアミンプラズマローゲン(plPE)とコリンプラズマローゲン(plPC)の混合物であることが分かった。検出された全ピークの面積を100%としたとき、プラズマローゲンの面積比率は94.6%であり、前者が47.9%、後者が46.7%であった。従って、得られた鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物は、プラズマローゲンを94.6質量%含有することが分かった。なお、プラズマローゲンのピーク位置は、例えば、予め標品を分析することにより知ることができる。
【0064】
以下の実験では、当該鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を鳥組織抽出プラズマローゲンとして使用した。
【0065】
実施例1:生体組織抽出プラズマローゲンの脳神経細胞に与える影響の検討
鳥組織抽出プラズマローゲンが脳神経細胞に及ぼす影響を検討するため、以下の実験を行った。
【0066】
<試料の調製>
実験に使用するマウスの飼料として、AIN-93M(米国国立栄養研究所により1993年に発表されたマウス・ラットの栄養研究用標準飼料)を購入した(以下「通常飼料」と表記することがある)。また、特別注文により、鳥組織抽出プラズマローゲンを0.1質量%含有するAIN-93M(以下「0.1%pl含有飼料」と表記することがある)も購入した(いずれもオリエンタル酵母株式会社)。
【0067】
<脳神経細胞に与える影響検討実験>
老化促進マウスSenescence-Accelerated Mouse-Prone 8 (SAMP8)14匹を、日本エスエルシー株式会社から購入し、プラズマローゲン投与群(n=7)及び非投与群(n=7)に群分けした。SAMP8は、学習・記憶障害をはじめとする行動生理学的障害、免疫応答能低下を示すモデルマウスである。投与群には、0.1%pl含有飼料を25週間自由摂取させて飼育した。非投与群には、通常飼料を25週間自由摂取させて飼育した。なお、飼育中、水は自由摂取とした。飼育後、投与群2匹及び非投与群2匹について、灌流固定を行い、凍結切片を常法に従って作成し、これを免疫染色して比較検討した。
【0068】
免疫染色は、具体的には次のようにして行った。20μmの脳切片をブロッキング溶液にて30分間室温で処置した後、適切に希釈した1次抗体(DCX(1:500)、NeuN (1:1000))を反応させ、4℃で一晩静置した。その後、数回PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、2次抗体を適切に希釈(1:500)して反応させ、室温で6時間静置し、PBSで数回洗浄して脳切片標本を作成した。標本は共焦点顕微鏡にて観察・解析を行った。なお、用いた抗体は次の通りである。神経細胞核染色には、1次抗体として抗神経細胞核抗体(Anti-Neuronal Nuclei(NeuN) monoclomal antibody, マウス由来,Millipore製)を、2次抗体として蛍光標識抗マウスIgG抗体(Labeled Anti-Mouse IgG antibody, Alexa Fluor 568, ヤギ由来,Molecular Probes製)を用いた。未成熟な神経細胞染色には、1次抗体としてダブルコルチン抗体(DCX;Doublecortin(N-19):sc-8067,ヤギ由来, Santa Cruz Biotechnology製)を、2次抗体として蛍光標識抗ヤギIgG抗体(Labeled Anti-Goat IgG antibody,ロバ由来,Molecular Probes製)を用いた。
【0069】
なお、免疫染色法は、神経新生に対する研究が盛んに行われるようになり評価法や実験技術も日々向上している現状において、最も一般的かつ信頼性が高い実験法といえる。免疫染色法は、本来は不可視化の抗原抗体反応を可視化する方法であり、神経新生の評価に最も良く用いられる手法の一つである。ここで用いた神経前駆細胞の分子マーカーであるダブルコルチン(Doublecortin;DCX)は、多くの論文で頻用される分子マーカーであり、信頼性が最も高い分子マーカーの一つであるといえる。よって、今回得られた実験結果もまた、信頼性が非常に高い結果であると言える。
【0070】
結果を
図2に示す。なお、
図2は海馬歯状回を観察した画像である。
【0071】
その結果、海馬歯状回において、プラズマローゲン非投与群に比べてプラズマローゲン投与群では、未成熟の脳神経細胞のマーカーであるdoublecortin (DCX)陽性細胞数が増加したことがわかった。これらの細胞は、脳神経細胞のマーカーであるNeuNに対する抗体によっても染色され、未成熟の神経前駆細胞であることが示された。このことから、プラズマローゲン投与群では脳神経細胞が新生していることがわかった。