(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
空気調和機に多用されているスクロール型の圧縮機は、渦巻状のスクロール壁をそれぞれ有する固定スクロールと旋回スクロールとを備える。そして、固定スクロールに対して旋回スクロールを公転旋回運動させ、双方のスクロール壁の間に形成される圧縮室の容積を減少させることで、圧縮室内の流体の圧縮を行う。
【0003】
近年、車両用の空気調和機において、電動機により駆動する方式の電動圧縮機が用いられつつある。このような電動圧縮機においては、インバータ回路において、バッテリから供給される直流電流を交流電流に変換し、この交流電流を電動機に供給することで電動機を回転駆動させて圧縮機を駆動する。
【0004】
車両用の空気調和機においては、車両のエンジンルーム内に各機器を収容するため、省スペース性が要求されている。そこで、圧縮機と、電動機と、コンデンサ、コイル、インバータ回路等からなるインバータ回路部とが一体化された電動の圧縮機が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
図4に特許文献1に開示されるインバータ一体型の電動圧縮機300を示している。
電動圧縮機300は、その外殻をなすアルミニウム合金製のハウジング302を有し、このハウジング302は、圧縮機側ハウジング303と電動機側ハウジング304とを、その間に軸受ハウジング305を挟んでボルト306により締め付け固定されている。
圧縮機側ハウジング303内にはスクロール圧縮機構308が、また、電動機側ハウジング304内には電動機310を構成するステータ311およびロータ312が収容されている。このスクロール圧縮機構308と電動機310は、主軸314を介して連結され、電動機310を回転させることにより、スクロール圧縮機構308が駆動されるよう構成されている。主軸314は、軸受ハウジング305に保持されたメインベアリング315と、電動機側ハウジング304の端部に保持されたサブベアリング316とによって回転自在に軸支されている。
【0005】
電動機側ハウジング304の端部には、図示しない冷媒吸入口が設けられており、この冷媒吸入口を介して冷凍サイクルから低圧の冷媒ガスが電動機側ハウジング304内に吸入される。この冷媒ガスは、電動機側ハウジング304内を流通して電動機310を冷却した後にスクロール圧縮機構308に吸い込まれ、そこで圧縮されて高温高圧の冷媒ガスとなり、圧縮機側ハウジング303の端部に設けられている図示しない吐出口から冷凍サイクルへと吐出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1をはじめとするインバータ一体型の電動圧縮機は小型化に寄与するが、小型化の要求は絶え間なく続いている。
そこで本発明は、従来よりも小型化できる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図4に示す従来の電動圧縮機を例に、本発明者らは小型化を阻んでいる要因を検討した。その結果、サブベアリング316を保持するために設けられたボス317が電動機310に向けて突出している結果として、ボス317の周囲に利用目的のないスペースSが存在していることに着目した。つまり、このスペースSをつめることで、電動圧縮機300を軸方向に小型化することが可能になる。ただし、このボス317は、サブベアリング316を保持するために必須の要素であり、それ自体をなくすことはできない。そこで本発明者は、ボス317を電動機310の内側に収容することを着想した。そうすれば、ボスの周囲に無駄なスペースSが生まれるのを阻止できるからである。
【0009】
そこでなされた本発明の電動圧縮機は、スクロール式の圧縮機構と、圧縮機構を駆動する電動機と、電動機の回転動力を圧縮機構に伝達する主軸と、主軸を回転自在に支持する第1軸受と、第1軸受よりも電動機側において主軸を回転自在に支持する第2軸受と、を備える。
そして本発明の電動圧縮機は、電動機が、ステータと、ステータの周囲に配置されるロータとを備えており、このステータの内側において、主軸が第2軸受により支持され
ており、ロータは、円筒状のロータ本体と、ロータ本体の一端側を繋ぐ固定端板と、を備え、固定端板が、第1軸受に支持される主軸の大径部に、固定されることを特徴とする。
【0010】
本発明の電動圧縮機によると、主軸を電動機側で支持する第2軸受をステータの内側で保持することができるので、従来の電動機のように軸受(第2軸受)を保持するボスが電動機の外側(軸方向の外側)に設けられるのに比べて、軸方向の寸法を短くできる。
【0011】
本発明の電動圧縮機において、圧縮機構及び電動機を収容するとともに、ステータを固定状態にする柱状の固定部材が一体的に設けられるハウジングを備えることができる。この場合、固定部材は、ステータの内側に圧入されるとともに、第2軸受を保持する構成とすることが好ましい。
そうすることで、格別な部材を設けることなく、ステータをハウジングに対して確実に固定することができる。
【0012】
本発明の電動圧縮機にお
けるロータは、固定端板が、第1軸受に支持される主軸の大径部に締結手段により固定することができる。
そうすることで、主軸に対してロータを強固に固定することができる。
【0013】
本発明の電動圧縮機において、
固定部材における第2軸受を保持する領
域は、ステータの内側への圧入により生ずる荷重が、他の
領域よりも軽減されることが好ましい
。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第2軸受をステータの内側に収容することで、電動圧縮機の軸方向の寸法を短くすることができる。また、本発明によれば、通常は鉄系材料で構成される主軸を短くできるので、電動圧縮機の軽量化に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、電動圧縮機10は、その外郭をなすハウジング11を備える。ハウジング11は、スクロール式の圧縮機構30を収容する圧縮機側ハウジング12と、電動機20を収容する電動機側ハウジング13と、図示を省略するインバータを収容するインバータ収容ハウジング14とからなる。これらのハウジングの構成要素は、アルミニウム合金を鋳造(Die Cast)することで作製される。
【0017】
電動圧縮機10は、電動機側ハウジング13の側面に形成された冷媒吸入ポート(図示無し)からハウジング11内に冷媒が導入され、圧縮機側ハウジング12の端面に形成された冷媒吐出ポートP2から、圧縮機構30によって圧縮された冷媒を吐出する。
【0018】
電動機20は、主軸40に一体に設けられたロータ21と、ステータ22とから構成されている。電動圧縮機10は、ステータ22の周囲にロータ21が配置されているところに特徴の一つがある。
ロータ21は、円筒状のロータ本体21aと、ロータ本体21aの軸方向の一端側を繋ぐ円板状の固定端板21bとから構成される。ロータ21は、永久磁石を収容するためのスリットが形成された電磁鋼板を積層した積層体と、この積層体(電磁鋼板)のスリットに配置された永久磁石と、からなるところは公知技術と同じである。なお、永久磁石はロータ本体21aにのみ配置される。
固定端板21bの軸心周りには表裏を貫通する軸孔21cが形成されている。主軸40の電動機側軸40aはこの軸孔21cを貫通して、ロータ本体21a(ステータ22)の軸方向の中心付近まで延びている。
ロータ21は、固定端板21bを貫通するボルトB1により、主軸40のジャーナル部40bに固定されることで、主軸40と一体に回転自在とされている。
【0019】
ステータ22は、ロータ本体21aの内側の空隙に配置されている。ステータ22は、コイルが巻き回された一般的な構成を有しており、円筒状の外観をなしている。ステータ22の外周22aは、ロータ本体21aに微小間隔を隔てて対向している。ステータ22の内周22bにはインバータ収容ハウジング14と一体に形成されている固定柱14bが隙間なく圧入されている。そうすることで、ステータ22は、固定柱14bとの圧入を介して、ハウジング11に対して固定される。
【0020】
ここで、圧入は焼嵌めにより行うことができる。ステータ22が鉄系の電磁鋼板、固定柱14bがアルミニウム合金で構成されていると、焼嵌めによる圧入にとって有利である。つまり、アルミニウムの線膨張係数が鉄の2倍程度あるため、ステータ22を加熱して焼嵌めすると、電動機20の周囲の温度が上昇したとしても、圧入による圧力が大きくなることはあっても緩むことはない。
【0021】
主軸40は、メインベアリング41、サブベアリング42を介してハウジング11に回転自在に支持されている。メインベアリング41には、大径とされた主軸40のジャーナル部40bが支持され、サブベアリング42には電動機側軸40aが支持される。そして、ロータ21は、メインベアリング41とサブベアリング42の間において、主軸40と一体に設けられている。
【0022】
圧縮機構30は、主軸40とともに回転する旋回スクロール32と、ハウジング11に固定された固定スクロール33と、を備える。
旋回スクロール32、固定スクロール33は、それぞれ円板状の端板32a、33aの一面側に、渦巻状のスクロール壁32b、33bが立設されている。これら旋回スクロール32と固定スクロール33は、スクロール壁32b、33bを互いに組み合わせて、双方のスクロール壁32b、33b間に圧縮室35を形成している。
【0023】
主軸40の圧縮機構30側の端部(一端)には、主軸40の中心軸から予め定められた寸法だけ偏心した位置に、偏心軸40cが突出形成されている。この偏心軸40cに、ドライブブッシュ44、ドライブベアリング45を介し、旋回スクロール32が回転自在に保持されている。これにより、旋回スクロール32は、主軸40の中心に対し、予め定められた寸法だけ偏心しており、主軸40がその軸線周りに回転すると、旋回スクロール32は、主軸40の中心に対し、偏心した寸法を半径とした回転(公転)を行う。これにより、圧縮室35の容積が減少し、冷媒が圧縮される。なお、旋回スクロール32が、公転しつつも、自転はしないよう、旋回スクロール32と主軸40との間には、オルダムリング36が介在している。
また、旋回スクロール32と主軸40との間には、主軸40に対して偏心した旋回スクロール32によるアンバランスを解消するため、バランサ46が設けられている。
【0024】
さて、インバータ収容ハウジング14は、インバータ収容部14aと、固定柱14bと、を備えている。インバータ収容部14aは、一方が開口する箱型の形状をなしており、その内部に図示を省略したインバータ回路が収容される。このインバータ回路は、電動機20に供給する電力を制御する。インバータ収容部14aの開口端は蓋15により閉じられ、開口端と対向する背面は、電動機側ハウジング13と接することによりその開口を閉じる。
円柱状の固定柱14bは、インバータ収容部14aの背面から電動機側ハウジング13に向けて突出する。固定柱14bは、ステータ22の一方のコイルエンド22cを貫通してコア22dの圧縮機構30側の端面に達する突出高さを有している。固定柱14bの先端には、主軸40の先端を受け入れる円筒状の受容溝14cが形成されている。受容溝14cは、先端側に設けられる大径部14dと、大径部14dよりも底側の小径部14eとからなり、大径部14dにはサブベアリング42が圧入される。サブベアリング42に回転自在に支持された主軸40は、その先端が小径部14eにまで達している。
【0025】
ここで、ステータ22を焼嵌めすることにより固定柱14bには圧縮方向の圧力が生じる。この圧力がサブベアリング42に負荷されるのを避けることが好ましい。サブベアリング42による回転自在に支持するという機能を担保するためである。そこで、本実施形態では、固定柱14bの先端から受容溝14cの底までの領域に対応する部分は、固定柱14bとステータ22の間に微小な間隙を設けている。ただしこれは本発明の好ましい形態であり、サブベアリング42の機能を担保できるのであれば、当該領域において固定柱14bとステータ22が接することを本発明は許容する。
【0026】
以上のように構成された電動圧縮機10において、冷凍サイクル中を循環した後の低圧冷媒ガスは、図示しない冷媒吸入口から電動機側ハウジング13内に吸入され、電動機側ハウジング13内を流通して圧縮機構30に吸い込まれる。圧縮機構30で圧縮され、高温高圧となった冷媒ガスは、圧縮機側ハウジング12の端部に設けられている吐出ポートP2から吐出配管を経て冷凍サイクルへと循環される。
この過程で、インバータ回路(図示省略)により制御されながら電力がステータ22に供給されると、ロータ21が回転駆動される。そうすると、ロータ21に対して固定された主軸40が、ロータ21と一体的に回転駆動され、旋回スクロール32が旋回運動する。そして、主軸40は、他の部分よりも大径とされたジャーナル部40bがメインベアリング41で支持され、かつ、ステータ22の内部に保持されるサブベアリング42に電動機側軸40aが支持されながら、回転駆動される。
【0027】
以上説明した電動圧縮機10によると、以下の効果を奏する。
主軸40の電動機側軸40aをサブベアリング42で回転自在に支持する機構を、ステータ22の内側に設けることにより、軸方向に余分なスペースが生じなくなった。したがって、電動圧縮機10は、軸方向の寸法を小さくすることができる。このような支持機構を可能にしたのは、ロータ21の内側にステータ22を配置する構成を採用したからである。このことについて、
図2を参照して説明する。なお、
図2(A)は従来の電動圧縮機200を、また、
図2(B)は本実施形態による電動圧縮機10を示している。なお、従来の電動圧縮機200は、以下説明する部分を除けば、本実施形態による電動圧縮機10と同じ構成を備えている。
【0028】
図2(A)に示すように、従来の電動圧縮機200は、ロータ221の外側にステータ222を設けたインナ・ロータ型の電動機220を備えている。インナ・ロータ型の電動機220の場合、主軸240をロータ221に貫通させてサブベアリング242で支持する必要がある。したがって、サブベアリング242を保持するボス250が必要になり、前述したように、その周囲に利用されないスペースが生じてしまう。仮に、主軸240を短くしてその先端がロータ221の内部に留まるようにし、ロータ221の内部でサブベアリング242により主軸240を支持しようとしたとする。しかし、
図2(A)から容易に理解できるように、サブベアリング242で支持される主軸240の径を極めて細くしなければならないか、ロータ221の内径を相当大きくしなければ、ボス250までロータ221の内部に配置できないので、実現は困難である。
【0029】
これに対して電動圧縮機10によればアウタ・ロータ型の電動機20とすることにより、上記した不都合はない。そして、
図2(A)と(B)とを比較すれば分かるように、本実施形態による電動圧縮機10は、電動圧縮機200に比べて軸方向の寸法を短くすることができる。
また、
図2(A)と(B)とを比較すれば分かるように、本実施形態による電動圧縮機10は、主軸40、特に電動機側軸40aの部分を、電動圧縮機200に短くできる。したがって、電動圧縮機10は軽量化にも寄与する。特に、主軸40は強度の観点からアルミニウム合金に比べて比重の大きい鉄系材料で作製されているので、固定柱14bの部分を考慮したとしても、軽量化の効果は顕著である。
【0030】
また、電動圧縮機10は、アウタ・ロータ型の電動機20を用いているが、ロータ21が回転すると周囲の冷媒を撹拌する。インバータ一体型の電動圧縮機10において、電動機側ハウジング13内を流れる冷媒は、発熱するインバータ回路の冷却に寄与するが、冷媒が撹拌されることで、インバータ回路の冷却効果が向上する。これに対して、インナ・ロータ型の電動機はロータがステータの内側に配置されていること、及び、ロータからインバータ回路まで離れていることから、ロータの回転による冷媒の撹拌効果がインバータ回路まで及びにくい。
【0031】
ロータ21の回転によるインバータ回路の冷却性向上の効果をより発揮させるため、ロータ21の外周に撹拌を助長させる突起、その他の構成を設けることができる。本実施形態の場合、ロータ21に設けられるバランスウェイト23がその役割を果たすことができる。
【0032】
以上の説明は、インバータ収容部が圧縮機構30、電動機20と同軸上に配置された電動圧縮機10を例にして説明したが、本発明は
図3に示すようにインバータ収容部が電動機側ハウジング13の側方に配置された形態の電動圧縮機100についても適用できることは言うまでもない。
電動圧縮機100は、ハウジング110が、圧縮機構30を収容する圧縮機側ハウジング120と、電動機20を収容する電動機側ハウジング130とからなり、電動機側ハウジング130にインバータ収容部135が一体的に形成されている。ハウジング110は、電動機側ハウジング130の後端側の開口を閉じる封止蓋140を備えるが、この封止蓋140に固定柱14bと対応する固定柱140bが一体的に形成されている。
電動圧縮機100は、電動圧縮機10と同様の効果を奏するのに加えて、ロータ21の回転によるインバータ回路の冷却性能向上の効果は、インバータ収容部135が電動機側ハウジング130の側方に配置されているため、電動圧縮機10よりも顕著である。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の趣旨に変更を加えない限り、要素を変更し、または省略することができる。
例えば、以上ではインバータ一体型の電動圧縮機について説明したが、本発明の効果はインバータ一体型の電動圧縮に限らず得ることができる。
また、圧縮機構についても、スクロール型に限らず、ロータリ型の圧縮機構にも本発明を適用できるし、スクロール型圧縮機構とロータリ型圧縮機構の両者を備える多段圧縮機構にも本発明を適用できる。