(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016394
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】反射防止フィルムを備えた情報表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/118 20150101AFI20161013BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
G02B1/118
G02F1/1335
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-59453(P2012-59453)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-195465(P2013-195465A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094019
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 雅房
(72)【発明者】
【氏名】大角 吉正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉則
(72)【発明者】
【氏名】中川 武彦
(72)【発明者】
【氏名】高木 佳彦
【審査官】
加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−070164(JP,A)
【文献】
特開2011−154674(JP,A)
【文献】
特開2012−037622(JP,A)
【文献】
特開2006−331757(JP,A)
【文献】
特開2007−178873(JP,A)
【文献】
特開2010−117694(JP,A)
【文献】
特開平08−075928(JP,A)
【文献】
特開平08−297202(JP,A)
【文献】
特開2000−137442(JP,A)
【文献】
特開2000−156182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 − 1/18
G02F 1/1335 − 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報表示モジュールと、カバーパネル又はタッチパネルモジュールと、反射防止フィルムとを備えた情報表示装置において、
前記反射防止フィルムは、フィルム基板と、前記フィルム基板の表面に形成された複数の微細な光学突起からなる反射防止構造と、前記フィルム基板の表面に形成された、前記光学突起よりも高さの大きな複数の凸部とを有し、
前記凸部は、底面の面積よりも先端面の面積が小さな円錐台状であり、その底面の直径が60μmよりも小さく、かつ、200μm以上の間隔で配置され、
前記反射防止フィルムは、前記情報表示モジュールと前記カバーパネル又はタッチパネルモジュールとの間に配置され、空隙を隔てて前記凸部の先端面を前記情報表示モジュールに対向させて前記凸部を設けられた面と反対側の面を前記カバーパネル又は前記タッチパネルモジュールに貼り付けられたことを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
前記凸部の底面の直径が、40μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の情報表示装置。
【請求項3】
前記凸部の高さが、2μm以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の情報表示装置。
【請求項4】
前記反射防止フィルムを前記情報表示モジュールである液晶パネルと重ねて用いる場合において、前記凸部の配列方向を前記液晶パネルの画素の配列方向に対して傾けて用いることを特徴とする、請求項1に記載の情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止フィルム
を備えた情報表示装置に関する。本発明は、たとえばディスプレイ装置に用いて太陽光や室内照明、外乱光などの反射を防止し、画面の視認性を高めて画面がくっきりと見えるようにするための反射防止フィルム
を備えた情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(反射防止フィルムの働き)
携帯電話やモバイルコンピュータ、パソコンなど種々の機器は、精細な画像を表示することのできるディスプレイ装置を備えている。しかし、ディスプレイ装置は、太陽光や室内照明光などの外光が画面に入射すると、その一部が画面で反射することによって画像のコントラストが低下し、画面が白っぽくなるという不都合がある。
【0003】
このように外光が反射する現象は、たとえば
図1Aに示すようにして起きる。
図1Aは、液晶表示パネル12の前面に、エアギャップ(空間)を介してカバーパネル13を重ねたディスプレイ装置11を表している。このディスプレイ装置11に外光が入射した場合、入射した外光のうち4%の光量がカバーパネル13の前面で反射し、また入射した外光のうち3.8%の光量がカバーパネル13の裏面で反射し、入射した外光のうち3.7%の光量が液晶表示パネル12の前面で反射する。その結果、このディスプレイ装置11に100%の光量の外光が入射した場合、合計すると入射した外光の11.5%の光量が正面側へ向けて反射される。よって、液晶表示パネル12で表示している画像に反射光(白色光)が重なって画像のコントラストが低下し、表示品質が低下することになる。
【0004】
このような現象を防止するためには、反射防止フィルム(ARS)が用いられる。反射防止フィルムとしては、たとえば特許文献1や特許文献3に開示されたものがある。この反射防止フィルムは、透明なフィルム基板の表面に、フィルム基板と等しい屈折率を有する微細な光学突起を密集させて形成したものである。光学突起は、円錐形状や円錐台形状、四角錐形状などの形状を有している。
【0005】
図1Bは、カバーパネル13の裏面に反射防止フィルム14を貼った場合を示す。この場合には、入射した外光のうち4%の光量がカバーパネル13の前面で反射し、また入射した外光のうち0.34%の光量がカバーパネル13の裏面で反射し、入射した外光のうち3.83%の光量が液晶表示パネル12の前面で反射する。この結果、反射防止フィルム14を貼ったカバーパネル13の裏面における反射が大幅に抑制され、合計では入射した外光の8.17%の光量しか正面側へ向けて反射されない。よって、1枚の反射防止フィルム14を貼ることにより、反射光量は、反射防止フィルム14を貼っていない場合の約2/3倍になる。
【0006】
また、
図1Cは、カバーパネル13の裏面と液晶表示パネル12の前面にそれぞれ反射防止フィルム14を貼った場合を示す。この場合には、入射した外光のうち4%の光量がカバーパネル13の前面で反射し、また入射した外光のうち0.34%の光量がカバーパネル13の裏面で反射し、入射した外光のうち0.33%の光量が液晶表示パネル12の前面で反射する。この結果、反射防止フィルム14を貼ったカバーパネル13の裏面と液晶表示パネル12の前面における反射が抑制され、合計では入射した外光の4.67%の光量しか正面側へ向けて反射されない。よって、2枚の反射防止フィルム14を貼ることにより、反射光量は、反射防止フィルム14を貼っていない場合の約1/3倍になる。
【0007】
よって、ディスプレイ装置に反射防止フィルムを貼っておけば、外光の反射を少なくでき、画像のコントラストを高めて画像を鮮やかに表示させることができる。なお、上記記載では、反射防止フィルムを貼っていない面での反射率を4%とし、反射防止フィルムを貼っている面での反射率を0.35%としたが、これらは典型的な値を用いたものであって、反射率の値は反射防止フィルムの種類やカバーパネルの材質などによって若干異なりうる。
【0008】
(反射防止フィルムの弱点)
携帯電話やモバイルコンピュータ等に用いられるディスプレイ装置は、汚れや皮脂などが付着しやすい。そのため、ディスプレイ装置の表面は、汚れや皮脂などを拭い取るために、柔らかい布やクリーナーなどでたびたび擦られる。表面の汚れや皮脂などを拭うときにはカバーパネルが指で押されるので、
図1Bや
図1Cのように反射防止フィルムを貼っていると、反射防止フィルムの微細な光学突起が対向面に押圧されて潰れやすくなる。また、表面にタッチパネルを備えたディスプレイ装置では、指やタッチペンでタッチパネルを押圧するので、反射防止フィルムを貼っているとやはり反射防止フィルムの光学突起が対向面に押圧されて潰れやすい。こうして光学突起が潰れてしまうと、反射防止フィルムの反射防止機能が低下したり、損なわれたりする。
【0009】
(反射防止フィルムの保護柱)
そのため、特許文献2に開示された反射防止フィルムでは、表面にナノオーダーの光学突起を密集して形成された反射防止フィルムに、光学突起の高さよりも高いミクロンオーダーの保護柱を散在させている。そして、保護柱によって光学突起を保護し、ディスプレイ装置の表面が押えられても光学突起が潰れにくくしている。特許文献2には、円錐、四角錐、三角錐などの錐形の保護柱と、四角柱、円柱、楕円柱などの柱形の保護柱とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−122702号公報
【特許文献2】特開2004−70164号公報
【特許文献3】特許第4539759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図2Aは、液晶表示パネルのような対向部材22に対向配置された反射防止フィルム21を表している。反射防止フィルム21は、フィルム基板23の表面に微細な光学突起からなる反射防止構造とともに、光学突起よりも高さの大きな、光学突起保護用の保護柱24を設けたものである。ただし、
図2Aにおいては光学突起は図示を省略している。また、保護柱24の間隔は約50μmである。
【0012】
図2Aの向かって左側の保護柱24は、対向部材22から離れた状態のものを示している。一方、
図2Aの向かって右側の保護柱24は、反射防止フィルム21が押されて対向部材22との間で押し潰された状態のものを示している。反射防止フィルム21に保護柱24が設けられていると、保護柱24の先端面で反射した光(反射率4%)とフィルム基板23の下面で反射した光(反射率0.35%)
が干渉を起こす。しかし、干渉は起こっていても、その視覚的影響については、干渉を起こす2つの光線の光強度とその2つの光線の距離差(光路差)が効いてくる。
図2Aの場合では、光強度が0.35%という微弱な反射光と保護柱24の先端面での4%という反射光との間での、相当強度の異なる光線どうしの干渉であるので、干渉光の強度が目視的に確認できるレベルに達するには、相当距離差が短くなる必要がある。実験及び検討の結果、0.35%の反射光と4%の反射光との干渉が目視的に確認できるレベルに達するためには、光線の距離差が2μm程度まで短くなる必要のあることがわかった。
【0013】
図2Aの左側の保護柱24では、保護柱24の高さが通常2μmよりも大きいので、フィルム基板23の下面で反射した光と保護柱24の先端面で反射した光が干渉を起こしていても、それが目視できるレベルにまでは達しない。これに対し、反射防止フィルム21がたとえば指などで押さえられ、右側の保護柱24のように保護柱24が押し潰されて高さが2μm以内になると、フィルム基板23の下面で反射した光と保護柱24の先端面で反射した光との干渉が、目視できるレベルになる。こうして干渉が目視できるレベルに達すると、干渉による色(干渉色)が観察されるようになる。このため、押さえられていない領域では反射防止フィルム21は色づいておらず、押さえられた領域だけが干渉色のために色づいて見えるようになる。
【0014】
図5Aは、円で囲まれた領域を押さえられた反射防止フィルムを示す写真である(円の直径は、成人の指の幅程度である。)。押さえられた領域に発生する干渉色の色は薄いものである。しかし、干渉色自体は色の薄いものであっても、その周囲の干渉色が生じていない領域との間に生じる色の変化が目障りとなって、視覚的な問題を生じていた。
【0015】
本発明は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、凸部(保護柱)を有する反射防止フィルムにおいて、押さえられた領域に発生する干渉色と、干渉色の生じていない周囲の領域との間の色変化が目立たないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る
情報表示装置は、情報表示モジュールと、カバーパネル又はタッチパネルモジュールと、反射防止フィルムとを備えた情報表示装置において、前記反射防止フィルムは、フィルム基板と、前記フィルム基板の表面に形成された複数の微細な光学突起からなる反射防止構造と、前記フィルム基板の表面に形成された、前記光学突起よりも高さの大きな複数の凸部とを
有し、前記凸部は、底面の面積よりも先端面の面積が小さな円錐台状であり、その底面の直径が60μmよりも小さく、かつ、200μm以上の間隔で配置され、
前記反射防止フィルムは、前記情報表示モジュールと
前記カバーパネル又はタッチパネルモジュールとの間に配置され、
空隙を隔てて前記凸部の先端面を前記情報表示モジュールに対向させて前記凸部を設けられた面と反対側の面を前記カバーパネル又は前記タッチパネルモジュールに貼り付けられたことを特徴とする。
本発明に係る
情報表示装置においては、
前記反射防止フィルムが情報表示モジュールとカバーパネル又はタッチパネルモジュールとの間に配置
されているので、表示デバイスの画面が太陽光や照明光の反射で光って見えにくくなるのを防ぐことができる。
【0017】
前記
底面の直径は、特に40μm以下であることが望ま
しい。
【0020】
本発明に係る
情報表示装置の別な実施態様においては、前記凸部の高さが、2μm以上であることが好ましい。凸部の高さが2μm以下であると、押さえられていなくても干渉によって凸部が色づくためである。
【0022】
また、本発明に係る
情報表示装置のさらに別な実施態様においては、
前記反射防止フィルムを前記情報表示モジュールである液晶パネルと重ねて用いる場合において、前記凸部の配列方向を前記液晶パネルの画素の配列方向に対して傾けて用いてもよい。かかる実施態様によれば、反射防止フィルムにおける凸部の配列ピッチと液晶パネルの画素ピッチとがほぼ等しい場合でもモアレ縞が発生しにくくなる。
【0023】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、反射防止フィルムが押えられて保護柱が押し潰されたときに生じる干渉による色づきを目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1Aは、反射防止フィルムを設けていないディスプレイ装置の概略断面図である。
図1Bは、1枚の反射防止フィルムを用いたディスプレイ装置の概略断面図である。
図1Cは、2枚の反射防止フィルムを用いたディスプレイ装置の概略断面図である。
【
図2】
図2Aは、従来の反射防止フィルムにおいて、その一部が押さえられて対向部材との間で保護柱が押し潰された状態を示す概略図である。
図2Bは、
図2Aに対応する色度の変化を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1による反射防止フィルムの一部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4Aは、本発明の実施形態1の反射防止フィルムにおいて、その一部が押さえられて対向部材との間で保護柱が押圧された状態を示す概略図である。
図4Bは、
図4Aに対応する色度の変化を示す図である。
【
図5】
図5A、
図5B及び
図5Cは、保護柱の間隔をそれぞれ50μm、200μm、500μmと変化させた反射防止フィルムにおいて、その一部を押さえたときの様子を示す。
【
図6】
図6A、
図6B及び
図6Cは、保護柱の直径をそれぞれ20μm、40μm、60μmと変化させた反射防止フィルムにおいて、その一部を押さえたときの様子を示す。
【
図8】
図8Aは、液晶パネルに対向する反射防止フィルムが撓んだ様子を示す図である。
図8Bは、高さが2μm以上の保護柱を有する反射フィルムの場合を示す図である。
【
図9】
図9Aは、保護柱のない反射防止フィルムに生じた干渉縞(ニュートンリング)を示す図である。
図9Bは、高さが3μmの保護柱を有する反射防止フィルムを示す図である。
【
図10】
図10は、反射防止フィルムと画像表示パネルの配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更することができる。
【0027】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1を説明する。
図3は、本発明に係る反射防止フィルム31の一部を拡大して示す斜視図である。反射防止フィルム31は、透明なフィルム基板32の平滑な表面に、フィルム基板32と等しい屈折率を有する透明な光学突起33を密集させて多数形成したものである。また、フィルム基板32の表面には、フィルム基板32と等しい又はほぼ等しい屈折率を有する円錐台状の透明な保護柱34(密着防止用の凸部)が一定ピッチで配列されている。
【0028】
フィルム基板32は、屈折率の高い透明樹脂、たとえばポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂などによって板状に成形されている。フィルム基板32は、硬質の樹脂基板でもよく、厚みの薄い柔軟なフィルム基板であってもよく、特に厚みは問わない。
【0029】
光学突起33はナノサイズの微小突起であって、円錐状や円錐台状、四角錐状などの形状を有している。また、光学突起33の形状は、回転楕円面の一部となっていてもよい。
【0030】
保護柱34は、底面の面積よりも先端面の面積が小さな円錐台状をしており、光学突起33よりも大きな高さを有している。保護柱34は、側面34aと先端面34bを有しており、先端面34bはフィルム基板32の表面と平行となっている。保護柱34は、基端面の直径φが60μmよりも小さくなっている。特に、保護柱34の直径φは、40μm以下であることが望ましい。また、保護柱34は、100μm以上、好ましくは200μm以上の間隔Tをあけてフィルム基板32に配置されている。
【0031】
本発明の実施形態1による反射防止フィルム31では、従来例よりも保護柱34の間隔が大きくなっている。
図5Aは従来例の反射防止フィルム21を示す写真であって、この反射防止フィルム21では保護柱24がT=50μmの間隔で配置されている。
図5B及び
図5Cは、本発明の実施形態1の反射防止フィルム31を示す写真であって、それぞれ保護柱34がT=200μm、500μmの間隔で配置されている。また、いずれの保護柱24、34も、その直径Tは100μm以下である。
図5A、
図5B、
図5Cでは、いずれも成人の指の幅程度の領域を押さえられており、押えられている領域は円で囲んで示している。
図5Aの場合(T=50μm)では、押さえた領域がうっすらと色づいていて周囲と区別できるが、
図5Bの場合(T=200μm)では、押さえた領域の色づきがかなり薄くなっていて周囲の色に溶け込んでおり、
図5Cの場合(T=500μm)では、押さえた領域でもほとんど色づきがなくなっている。
【0032】
図2及び
図4により、この理由を説明する。
図2Aは従来例の反射防止フィルム21の一部を押さえた状態を表しており、
図2Bはそのときの反射防止フィルム21に沿った位置における色度(色づきの強度)を表している。図
4Aは本発明の実施形態1の反射防止フィルム31の一部を押さえた状態を表しており、図
4Bはそのときの反射防止フィルム31に沿った位置における色度を表している。人の肉眼による識別能力(分解能)は約100μmであるので、
図2のように保護柱24の間隔が100μmよりも短い場合には、保護柱24における色づきを個々に認識できず、押さえている領域全体が面状に色づいて見える。また、押さえた領域の縁の部分では、
図2Bに示すように、色度が短い距離で急激に変化するため、色づいた領域の縁がくっきりとし、目立ちやすくなる。これに対し、
図4のように保護柱34の間隔が100μm以上になると、個々の保護柱34を分離して認識できるので、色づいている部分の面積が小さく感じられる。また、押さえた領域の縁の部分では、
図4Bに示すように、色度(色づきの強度)が緩やかに変化するため、色づいた領域の縁がぼんやりとし、目立ちにくくなる。
【0033】
よって、理論的には、保護柱の間隔Tは100μm以上であればよい。しかし、高い品質を望む場合には、
図5A−5Cを参照すれば、保護柱を配置する間隔Tは200μm以上であることが望ましい。
【0034】
図6Aは、直径が20μmの保護柱を200μmの間隔で配置した反射防止フィルム21を示す写真である。
図6Bは、直径が40μmの保護柱を200μmの間隔で配置した反射防止フィルム31を示す写真である。
図6Cは、直径が60μmの保護柱を200μmの間隔で配置した反射防止フィルム31を示す写真である。保護柱の直径を次第に大きくしていった場合、直径φが20μmや40μmの場合には、
図6A及び
図6Bに示すように、保護柱34は目立たない。しかし、保護柱34の直径が60μmになると、
図6Cに示すように、保護柱34によるぶつぶつ感がかなり顕著になる。よって、保護柱34の直径φとしては、60μmよりも小さいことが望ましく、特に40μm以下ではほとんど保護柱34が目立た
なくなる。
【0035】
以上より、保護柱34は、その間隔Tが100μm以上で、かつ、直径φが60μmよりも小さいことが望ましい。また、保護柱34の間隔Tは、特に200μm以上であることが望ましい。保護柱34の直径φは、強度が保持される限度で、小さければ小さいほどよく、特に40μm以下であることが望ましい。また、保護柱34は、面積密度(フィルム基板のある面積に対する、その面積内に含まれる保護柱の面積の合計の百分率)がほぼ1%程度となるようにするとよい。
【0036】
(ディスプレイ装置の構成)
図7A−7Cは、本発明に係る反射防止フィルム31を貼ったディスプレイ装置のいくつかの形態を表している。
図7Aに示すディスプレイ装置41は、液晶表示パネル(LCD)や有機EL(OLED)などの画像表示パネル42の前面に、エアギャップ(空間)を介してカバーパネル43を重ねたものであり、カバーパネル43の裏面と画像表示パネル42の前面に反射防止フィルム31を貼っている。また、
図7Bに示すディスプレイ装置44は、カバーパネル43の前面及び裏面と画像表示パネル42の前面に反射防止フィルム31を貼っている。
図7Bのようにカバーパネル43の前面にも反射防止フィルム31を貼れば反射防止の効果は高くなるが、カバーパネル43の前面の反射防止フィルム31が使用者によって触れられるので、損傷したり汚れたりするおそれがある。
図7Cに示すディスプレイ装置45は、カバーパネル43の裏面と画像表示パネル42の前面のうち一方にだけ反射防止フィルム31を貼っている。
図7Cのように形態では、反射防止の効果は高くなるが、コストが下がるので、用途によっては有効である。なお、画像表示パネル42はモノクロ表示用のものであってもよく、カラー表示用のものであってもよい。カバーパネル43は、透明樹脂からなる均一な厚みの保護シートである。
【0037】
上記のように反射防止フィルム31を画像表示パネル42と組み合わせて用いる場合には、反射防止フィルム31における保護柱34の配列ピッチと、画像表示パネル42の画素ピッチとがほぼ同じになることがある。保護柱34の配列ピッチと画素ピッチがほぼ同じになると、ディスプレイ装置の画面にモアレ縞が発生することがある。
【0038】
このようにしてモアレ縞が発生する場合には、
図10に示すように、反射防止フィルム31のピッチが同じ方向を画像表示パネル42に対して約90°回転させ、さらに、保護柱34の配列方向を画素の配列方向に対して少し傾けて用いるようにすればよい。なお、
図10の画像表示パネル42では、赤色画素、緑色画素及び青色画素が一組で1つの画素を構成している。
【0039】
また、画像表示パネル42にカバーパネル43が対向しているとき、カバーパネル43に反射防止フィルムが貼られていない場合には、カバーパネル43が押されてカバーパネル43と画像表示パネル42の隙間が60μmくらいになると干渉縞(ニュートンリング)が発生する。
図9Aは、カバーパネル43を指先で押さえて干渉縞が生じたものである。これに対し、カバーパネル43の内面に反射防止フィルム31を貼っている場合には、隙間が2μm程度にならなければ干渉縞は発生しない。
【0040】
従って、
図8Bのように高さが2μm以上の保護柱34、好ましくは3μm程度の高さの保護柱34を設けておけば、干渉縞の発生を防止することができる。
図9Bは、高さが3μmの保護柱34を有する反射防止フィルム31をカバーパネル43の裏面に貼ったものである。
図9Bも、
図9Aと同様に指で押さえたときの写真であるが、干渉縞は発生していない。よって、干渉縞を防止するためには、高さが2μm以上、好ましくは3μm程度の高さの保護柱34を反射防止フィルム31に設けることが有効である。また、保護柱34を設ける場合には、単位面積あたりで1%以上の密度で保護柱34を設けるのが有効である。保護柱34の密度が小さいと、保護柱34と保護柱34の中間領域が画像表示パネル42に密着するおそれがあるためである。
【符号の説明】
【0041】
31 反射防止フィルム
32 フィルム基板
33 光学突起
34 保護柱
34a 側面
34b 先端面
41、44、45 ディスプレイ装置
42 画像表示パネル
43 カバーパネル