(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤と、前記反応容器内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料と、水を加熱する加熱手段と、
前記反応容器内の気圧を測定する気圧測定手段と、
前記測定された気圧が常圧以上である時間を計測する時間計測手段と、
前記計測された時間が予め設定された上限時間に達した場合に、前記反応容器内から水素を排出させて、前記反応容器内の気圧を低下させる気圧制御手段と、
前記反応容器内を冷却するための冷却手段と、
前記測定された気圧が上昇している際に、前記冷却手段を作動させる冷却制御手段と、
を備えることを特徴とする水素発生装置。
空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤と、前記反応容器内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料を加熱する加熱手段と、
前記反応容器内の気圧を測定する気圧測定手段と、
前記測定された気圧が予め設定された上限値まで上昇した場合に前記反応容器内から水素を排出させて、前記反応容器内の気圧を低下させる気圧制御手段と、
前記反応容器内を冷却するための冷却手段と、
前記測定された気圧が上昇している際に、前記冷却手段を作動させる冷却制御手段と、
を備えることを特徴とする水素発生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記出願の技術では、水素を発生させる反応が特殊反応であるため、常圧(減圧も加圧もしないときの気圧)以上の気圧下で反応容器内に水素を一定時間以上滞留させておくと反応容器を損傷させてしまう場合があった。
【0005】
本発明は、このような問題等に鑑みて為されたもので、反応容器内の気圧を常圧以上に保持することを避けることにより反応容器を損傷してしまうことのない水素発生装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤と、前記反応容器内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料と、水を加熱する加熱手段と、前記反応容器内の気圧を測定する気圧測定手段と、前記測定された気圧が常圧以上である時間を計測する時間計測手段と、前記計測された時間が予め設定された上限時間に達した場合に、前記反応容器内から水素を排出させて、前記反応容器内の気圧を低下させる気圧制御手段と、を備えることを特徴とする水素発生装置である。
【0007】
この発明によれば、反応容器内の気圧が常圧以上である時間が予め設定された上限時間に達した場合に、反応容器内から水素が排出されることから、反応容器内の気圧が一定時間以上常圧より高い状態が継続することがなくなり、反応容器が損傷してしまう危険性を回避することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤と、前記反応容器内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料を加熱する加熱手段と、前記反応容器内の気圧を測定する気圧測定手段と、前記測定された気圧が予め設定された上限値まで上昇した場合に前記反応容器内から水素を排出させて、前記反応容器内の気圧を低下させる気圧制御手段と、を備えることを特徴とする水素発生装置である。
【0009】
この発明によれば、反応容器内の気圧が予め設定された上限値まで上昇した場合に、反応容器内から水素が排出されて反応容器内の気圧が低下することから、上限値を適切に設定することにより、反応容器内の気圧が一定時間以上常圧より高い状態が継続することを避けることができ、反応容器が損傷してしまう危険性を回避することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水素発生装置であって、前記上限値は、常圧を示す値以下に設定されていることを特徴とする。反応容器内が常圧より高い気圧であると、発生した水素が反応容器の内壁付近に滞溜して反応容器を損傷することがあるが、この発明によれば反応容器の損傷を避けることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の水素発生装置であって、前記反応容器内に予め設定された設定量の水又は水蒸気を供給する水供給手段、を更に備えることを特徴とする。この発明によれば、反応容器内に供給された水蒸気(又は水が熱せられてできた水蒸気)は、反応容器の内壁に接触し電離して水素を放出することから、水素の発生量を増加させることができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の水素発生装置であって、前記水供給手段は、前記測定された気圧の単位時間当たりの上昇値が予め設定された下限値を下回った場合に、水又は水蒸気を供給することを特徴とする。この発明によれば、水素の発生量が減少した場合(反応容器内の気圧の上昇値が低下した場合)に、水又は水蒸気が供給されることから、水素の発生量が減少している時間を短くすることができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の水素発生装置であって、前記水供給手段は、予め設定された設定時間毎に、水又は水蒸気を供給することを特徴とする。この発明によれば、設定量の水(又は水蒸気)を供給してから水素の発生反応が活発化し、反応が鈍くなるまでの時間を予め求めておき、その時間を設定時間として設定することで、水素の発生量が減少している時間を短くすることができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6の何れか一項に記載の水素発生装置であって、前記水供給手段が、n回(n>1)に一回は、前記設定量より多くの水又は水蒸気を供給することを特徴とする。この発明によれば、水を多く供給した回では、他の回よりも反応容器内の水蒸気量が急激に増加することにより、水素発生反応を刺激し、水素の発生量を増加させることができる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一項に記載の水素発生装置であって、前記反応容器内を冷却するための冷却手段と、前記測定された気圧が上昇している際に、前記冷却手段を作動させる冷却制御手段と、を更に備えることを特徴とする。この発明によれば、反応容器内が水素発生反応中に一時的に冷却されることとなり、水素発生反応を刺激し、水素の発生量を増加させることができる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤と、前記反応容器内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料と、水を加熱する加熱工程と、前記反応容器内の気圧を測定する気圧測定工程と、前記測定された気圧が常圧以上である時間を計測する時間計測工程と、前記計測された時間が予め設定された上限時間に達した場合に、前記反応容器内から水素を排出させて、前記反応容器内の気圧を低下させる気圧制御工程と、を含むことを特徴とする水素発生方法。
【0017】
請求項10に記載の発明は、空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤と、前記反応容器内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料を加熱する加熱工程と、前記反応容器内の気圧を測定する気圧測定工程と、前記測定された気圧が予め設定された上限値まで上昇した場合に前記反応容器内から水素を排出させて、前記反応容器内の気圧を低下させる気圧制御工程と、を含むことを特徴とする水素発生方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、反応容器内の気圧が予め設定された上限値まで上昇した場合に、反応容器内から水素が排出されて反応容器内の気圧が低下することから、反応容器が損傷してしまう危険性を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態における水素発生装置Mは、密閉性の反応容器2を備え、反応容器2は加熱手段としての加熱装置3(マントルヒーター、面状ヒーター等を用いることができる。ガス加熱でもよい。)により少なくとも350℃以上に加熱される。なお、加熱装置3は反応容器2を500℃程度の温度に加熱するのが好ましい。また、反応容器2内には気圧測定手段としての気圧計Bが設けられている。
【0022】
反応容器2には水素排出管22が設けられ、水素排出管22は真空ポンプ25に接続されている。水素発生装置Mの運転開始前には真空ポンプ25により反応容器2内の空気中の酸素を除去するために減圧処理がなされる。減圧処理により反応容器2内の酸素が除去された後には、バルブ24が閉じられ、反応容器2内には無酸素状態雰囲気が形成され、この状態を初期状態として運転が開始される。真空ポンプ25としては、例えば、ドライポンプを用いることとし、水素とともに排出される水蒸気によって作動不能にならないように耐水処理をなしておくのが好ましい。なお、真空ポンプ25の代わりに、吸引ファンを用いることとしてもよい。
【0023】
反応容器2の少なくとも内壁は、表面に酸化被膜を作る金属材料で構成される。例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等の板状構造体となり得る単体金属、あるいは、ステンレス鋼(SUS304、430、316等)、ニッケル合金(インコネル)、チタン合金(航空機用)、アルミニウム合金(ジェラルミン)、銅合金(黄銅、青銅、白銅)等の合金、更には、鉄に亜鉛(Zn)、スズ(Sn)をメッキしたトタン、ブリキ等が含まれる。これらは、その表面に酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)、酸化銅(CuO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニッケル(NiO)の酸化膜をそれぞれ形成する。
【0024】
また、合金としてのステンレス鋼は酸化クロムの不動態膜、ニッケル合金は酸化ニッケル(NiO)チタン合金は酸化チタン(TiO2)、アルミニウム合金は酸化アルミニウム(Al2O3)、銅合金又は酸化銅、トタンは酸化亜鉛(ZnO)、ブリキは酸化スズ(SnO2)の膜をそれぞれ形成する。
【0025】
さらに、金属材料で形成された反応容器2の内壁には、酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする水性塗料又は酸化鉄(Fe2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化マンガン(MnO2)、酸化銅(CuO)、酸化ケイ素(SiO2)を均等に配分した塗料を塗布すると水素の発生量が増大する。
【0026】
なお、反応容器2の材料は、金属ではなく、酸化物で構成されたセラミック材、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、又は酸化ジルコニウム(ZrO2)等を主成分とするものでもよい。
【0027】
これらの材料が350℃以上、特に500℃前後に加熱されると、反応容器2の内壁から水素が発生してくる。水素が発生すると反応容器2内の気圧が上昇するとともに特殊反応故に熱線等の影響により放置すると反応容器2が破損するおそれがある。そのため、反応容器2内での水素の滞留時間を制御する必要がある。
【0028】
反応容器2には同様の材料で形成された水供給管21が設けられ、水供給手段としての水供給装置4から設定量の水が供給される。反応容器2内に水が供給されると、水は直ちに120℃程度の水蒸気となり、反応容器2内の水蒸気は、反応容器2の内壁に接触し電離して水素を放出する。水供給装置4内には図示しない貯水タンクが設けられており、制御装置1からの制御の下、貯水タンクから水を抽出し、反応容器2内に水を供給する。なお、水供給装置4は、水を加熱して生成した水蒸気を反応容器2内に供給することとしてもよい。
【0029】
反応容器2には、反応剤8を収納する収納皿7が出入自在に配置されている。反応剤8としては、300℃以上で溶融塩を作る水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)が最も好ましい。固体反応剤としては、チタン酸カリウム(K2TiO3)、チタン酸ナトリウム(Na2TiO3)が好ましい。これらの反応剤は大きな親水性を示す。すなわち、反応剤8はアルカリ金属と酸素を含むものである。反応剤8の表面からは、ナノオーダーの目には見えない無数の微細粒子が飛散し、この微細粒子が反応容器2の内壁と反応して水素が発生する。更に、水蒸気と親水性の微細粒子とが接触して著しく大量の水素を発生させる。なお、微細粒子の飛散量は、反応容器2内の温度が高い程増加するため、反応容器2内の温度が低下しないように管理することが重要となる。
【0030】
本実施形態では、反応容器2が水素発生反応に寄与しているが、反応容器2を水素発生反応に寄与しない上述の材料以外の材料、例えば炭素(C)、あるいはコンクリートブロック等で形成されている場合には、反応容器2内に前述の金属材料又はセラミック材の収納物を収納する必要がある。
【0031】
真空ポンプ25の下流には水タンク5が設けられている。反応容器2内で発生した水素と未反応の水蒸気は真空ポンプ25を通過し水タンク5内の水Wの中に流入する。水蒸気は水タンク5に入って水となる。一方、水素は水素採集管23を介して更にその下流側に配置された流量計Fを通って水素タンク6に採集される。なお、水タンク5内の水Wは、水供給装置4の貯水タンクに戻してやっても良い。
【0032】
水素発生装置Mを制御する制御装置1は、気圧計B、流量計F、加熱装置3、水供給装置4、真空ポンプ25及びバルブ24と接続されている。制御装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ等により構成され、
図2に示すように、気圧制御手段の一例である制御部11、記憶部12、インターフェース部13、表示部14及び操作部15を備えている。
【0033】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard disk drive)等により構成されており、オペレーティングシステムや、アプリケーションプログラム等の各種プログラムを記憶する。特に、本実施形態の記憶部12には、水素発生装置Mを制御するための各種処理を実行するアプリケーションプログラムが記憶されている。なお、各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されるようにしても良いし、記録媒体に記録されて外付けドライブ装置を介して読み込まれるようにしても良い。
【0034】
インターフェース部13は、他の装置、機器、計測器との間で送受信されるデータの窓口の役割を果たす。具体的には、インターフェース部13は、気圧計Bから送信された反応容器2内の気圧を示す気圧情報や、流量計Fから送信された水素採集管23を通過した水素の量を示す水素量情報を制御部11が処理可能なデータに変換する。また、インターフェース部13は、加熱装置3、水供給装置4、真空ポンプ25及びバルブ24に対して各々を制御するための制御情報を送信する際のデータ変換を行う。なお、バルブ24は、制御装置1より受信する制御情報に基づいて水素排出管22を開閉するようになっている。また、バルブ24は、必要に応じて手動で開閉可能な構造となっている。
【0035】
表示部14は、例えば、液晶ディスプレイ等により構成されており、オペレータが水素発生装置M或いは制御装置1を操作する際の操作画面や、反応容器2内の温度、水素採集管23を通過した水素の量などを逐次表示する画面等を表示する。また、操作部15は、例えば、キーボードやマウス等により構成されており、オペレータの操作を受け付け、操作内容を示す操作信号を制御部11に送信する。
【0036】
制御部11は、演算機能を有するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、作業用のRAM(Random Access Memory)、及び図示しない発振回路等を備えて構成されており、操作部15から受信した操作信号に基づいて、オペレータの操作内容に応じた処理を行う。
【0037】
水素発生装置Mにおいては、反応容器2内の気圧が常圧の場合でも減圧された状態の場合でも、水素が発生するが、反応容器2内に注入された水が全て瞬間的に反応して水素が発生するわけではない。また、発生した水素は一定時間、反応容器2内に滞留させておくのが好ましいが、常圧より高い気圧下で長時間滞留させておくと、特殊反応時に熱線等の影響で反応容器2が破損することから、滞留時間を適切に制御する必要がある。特に、減圧下においては、特殊反応が生じやすいことから、より適切に滞留時間を制御して反応容器2への影響を軽減する必要がある。
【0038】
よって、制御部11は、減圧下にある反応容器2内における水素の滞留時間を適切に制御するように、真空ポンプ25及びバルブ24を制御する。ここで、
図3を用いて、制御部11が、気圧計Bから受信した気圧情報に基づいて、水素発生装置Mを制御する制御処理について説明する。なお、本実施形態では、制御部11は継続的に気圧情報を受信する。また、反応容器2が設置される場所における常圧の値は予め記憶部12に記憶されているものとする。
【0039】
まず、制御部11は、水素発生装置Mの運転開始前の反応容器2内を初期状態とするために減圧処理を行う(ステップS11)。具体的には、反応容器2内の気圧が−0.5気圧から−1気圧程度になるまで減圧処理を行う。初期状態になったら、制御部11は、水素発生装置Mの運転を開始すべく、加熱装置3に反応容器2に対する加熱を開始させ(ステップS12)、水供給装置4に設定量分の水を供給させる(ステップS13)。
【0040】
次に、制御部11は気圧情報を参照し、反応容器2内の気圧が常圧を超えているか否かを判定する(ステップS14)。制御部11は、反応容器2内の気圧が常圧を超えていないと判定した場合(ステップS14:NO)には、ステップS18の処理に移行する。一方、制御部11は、反応容器2内の気圧が常圧を超えていると判定した場合(ステップS14:YES)には、時間の計測を開始する(ステップS15)。なお、時間の計測は、システム時計などを用いて行うことができる。
【0041】
次いで、制御部11は、ステップS15の処理で時間の計測を開始してから、予め設定された上限時間に達したか否かを判定する(ステップS16)。上限時間は、反応容器2内に常圧を超えた気圧下で水素を滞留させておいても反応容器2を損傷させない時間からマージン(余裕値)を差し引いた時間を実験的に取得して設定することとする。制御部11は、計測時間が上限時間に達したと判定するまでステップS16の処理を繰り返し(ステップS16:NO)、計測時間が上限時間に達したと判定した場合には(ステップS16:YES)、反応容器2内の気圧を減圧するために、減圧処理を行い(ステップS17)、ステップS14の処理に移行する。
【0042】
一方、制御部11は、ステップS14の処理で、反応容器2内の気圧が常圧を超えていないと判定した場合(ステップS14:NO)には、次いで、単位時間当たりの気圧の上昇度を算出して、気圧の上昇度が予め定められた設定値を下回っているか否かを判定する(ステップS18)。このとき、制御部11は、気圧の上昇度が予め定められた設定値を下回っていないと判定した場合には(ステップS18:NO)、ステップS14の処理に移行する。一方、制御部11は、気圧の上昇度が予め定められた設定値を下回っていると判定した場合には(ステップS18:YES)、水供給装置4に設定量分の水(又は水蒸気)を供給させ(ステップS19)、ステップS14の処理に移行する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の水素発生装置Mは、加熱装置3が、空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器2内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤8と、反応容器2内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料と、水を加熱し、気圧計Bが反応容器2内の気圧Pを測定し、制御部11が、気圧計Bにより測定された気圧が常圧以上である時間を計測し、計測時間が予め設定された上限時間に達した場合に反応容器2内から水素を排出させて、反応容器2内の気圧を低下させる。したがって、本実施形態の水素発生装置Mによれば、反応容器2内の気圧が上限時間(一定時間)以上常圧より高い状態が継続することがなくなり、反応容器2が損傷してしまう危険性を回避することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、単位時間当たりの気圧の上昇度を算出して、気圧の上昇度が予め定められた設定値を下回っている場合に、反応容器2内に新たに水を供給することとしたが、これに代えて又はこれに加えて、制御部11が、気圧の上昇度が予め定められた設定値を下回っている場合に、加熱装置3による加熱温度を上昇させたり、気圧の上昇度が予め定められた設定値を下回っている旨を示す警告メッセージ(または、水素の発生量が減少している旨を示す警告メッセージ)を表示部14に表示させたり、新たに反応剤8を供給させる指示内容を示すメッセージ(例えば「反応剤を追加して下さい。」)を表示部14に表示させたりすることとしてもよい。
【0045】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、反応容器2内の気圧が常圧以上である時間が予め設定された上限時間に達した場合に、反応容器2内から水素を排出させて、反応容器2内の気圧を低下させることとしたが、本変形例では反応容器2内の気圧が予め設定された上限値に達した場合に、反応容器2内から水素を排出させて、反応容器2内の気圧を低下させることとする。本変形例の気圧制御について
図4を用いて説明する。運転開始前のT0の時点における反応容器2内の気圧P0は常圧である。まず、制御部11は、反応容器2内を初期状態とするために、バルブ24を開けるとともに真空ポンプ25を作動させる減圧処理を行い、反応容器2内の気圧PをP1(本変形例では−1気圧とする。なお、P1は−0.5〜−1気圧に設定するのが好ましい。)まで減圧させる(T1〜T2)。
【0046】
初期状態になったら、制御部11は水素発生装置Mの運転を開始する。具体的には、制御部11は、加熱装置3に反応容器2の加熱を開始させるとともに、水供給装置4に予め設定された設定量分の水を供給させる。反応容器2が熱せられると、水素が発生して徐々に反応容器2内の気圧Pが上昇し始める(T3〜T4)。制御部11は、気圧PがP0に達すると減圧処理、すなわち、バルブ24を開けるとともに真空ポンプ25を作動させ、水素及び水蒸気を排出する処理を行い、反応容器2内の気圧PをP1まで減圧させる(T4〜T5)。制御部11は、反応容器2内の気圧PがP1まで下がったら、バルブ24を閉じるとともに真空ポンプ25を停止させ、減圧処理を停止する。
【0047】
このように、制御部11は、水素が発生することにより反応容器2内の気圧PがP0に達する度に減圧処理を行い、気圧PをP1まで減圧させる(T5〜T7)。一方で、制御部11は、単位時間当たりの気圧Pの上昇度が予め定められた設定値を下回った場合に(T7〜T8)、水供給装置4に水を設定量分、新たに供給させる(T8)。但し、収納皿7内の反応剤8は十分に残っているものとし、反応剤8の残量が少ない場合には反応剤8を追加する必要がある。以降、制御部11は、反応容器2内の気圧Pに応じて、減圧処理及び水供給処理を行う。つまり、制御部11は、反応容器2内の気圧PをP0からP1の範囲内に制御するとともに、単位時間当たりの気圧Pの上昇度が予め定めた設定値を下回った場合(反応容器2内の水蒸気の量が減った場合)に、水を供給するようになっている。なお、ここでは、気圧Pの上限値をP0(常圧)としたが、上限値を常圧より低い値に設定することとしてもよい。
【0048】
次に、
図5を用いて、制御部11が、気圧計Bから受信した気圧情報に基づいて、水素発生装置Mを制御する制御処理について説明する。なお、制御部11は継続的に気圧情報を受信するものとする。
【0049】
まず、制御部11は、水素発生装置Mの運転開始前の反応容器2内を初期状態とするために減圧処理を行う(ステップS31)。初期状態になったら、制御部11は、水素発生装置Mの運転を開始すべく、加熱装置3に反応容器2に対する加熱を開始させ(ステップS32)、水供給装置4に設定量分の水を供給させる(ステップS33)。
【0050】
次に、制御部11は気圧情報を参照し、反応容器2内の気圧PがP0(常圧)に達しているか否かを判定する(ステップS34)。このとき、制御部11は、反応容器2内の気圧PがP0(常圧)に達していると判定した場合(ステップS34:YES)には、反応容器2内の気圧PをP1まで減圧するために、減圧処理を行い(ステップS35)、ステップS34の処理に移行する。一方、制御部11は、反応容器2内の気圧PがP0(常圧)に達していないと判定した場合(ステップS34:NO)には、次いで、単位時間当たりの気圧Pの上昇度を算出して、気圧Pの上昇度が予め定められた設定値を下回っているか否かを判定する(ステップS36)。このとき、制御部11は、気圧Pの上昇度が予め定められた設定値を下回っていないと判定した場合には(ステップS36:NO)、ステップS34の処理に移行する。一方、制御部11は、気圧Pの上昇度が予め定められた設定値を下回っていると判定した場合には(ステップS36:YES)、水供給装置4に設定量分の水(又は水蒸気)を供給させ(ステップS37)、ステップS34の処理に移行する。
【0051】
以上説明したように、本変形例の水素発生装置Mは、加熱装置3が、空気中の酸素を除去した無酸素状態の反応容器2内に配置されたアルカリ金属及び酸素を含む反応剤8と、反応容器2内に配置された表面に酸化物の膜を形成する金属材料又は酸化物から形成される酸化物材料を加熱し、気圧計Bが反応容器2内の気圧Pを測定し、制御部11が、気圧計Bにより測定された気圧Pが
図4におけるP0(「予め設定された上限値」の一例。)まで上昇した場合に反応容器2内から水素を排出させて、反応容器2内の気圧を低下させる。したがって、本変形例の水素発生装置Mによれば、反応容器2内の気圧PがP0まで上昇した場合に、反応容器2内から水素が排出されて反応容器2内の気圧Pが低下することから、P0を適切に設定することにより、反応容器2内の気圧Pが一定時間以上常圧より高い状態が継続することを避けることができ、反応容器2が損傷してしまう危険性を回避することができる。
【0052】
また、本変形例では、反応容器2内の気圧PがP0(常圧)以下である状態で水素発生装置Mを運転するために、減圧処理を開始する気圧としてP0を設定した。これは、反応容器2内が常圧以上の気圧であると、発生した水素が反応容器2の内壁付近に滞溜して反応を妨げたり、反応容器2を損傷させたりする場合があるためである。したがって、本変形例のように減圧環境下で運転した場合、発生した水素がその内壁から除去され、反応が活性化し、より大量の水素を採集することができるとともに、反応容器2を損傷させない。また、水素発生装置Mの運転中、常時、反応容器2内の気圧が常圧以下の気圧(例えば、−1気圧)となるよう真空ポンプ25を作動させることもできるが、本変形例のように反応容器2内の気圧が一定の値まで上昇した場合にのみ真空ポンプ25を作動させることにより運転コストを下げることができる。
【0053】
さらに、本変形例の水素発生装置Mは、水供給装置4が、反応容器2内に予め設定された設定量の水又は水蒸気を供給する。したがって、本変形例の水素発生装置Mによれば、反応容器2内に供給された水蒸気(又は水が熱せられてできた水蒸気)は、反応容器2の内壁に接触し電離して水素を放出することから、水素の発生量を増加させることができる。
【0054】
さらにまた、本変形例の水素発生装置Mは、水供給装置4が、気圧計Bにより測定された気圧の単位時間当たりの上昇値が予め設定された下限値を下回った場合に、水又は水蒸気を供給する。したがって、本変形例の水素発生装置Mによれば、水素の発生量が減少した場合(反応容器2内の気圧の上昇値が低下した場合)に、水又は水蒸気が供給されることから、水素の発生量が減少している時間を短くすることができる。
【0055】
なお、本変形例では、上述したように、水素発生装置Mを減圧環境下で運転するために、減圧処理を開始させる気圧の上限値としてP0を設定したが、減圧処理を開始させる気圧の上限値は、P0以外の常圧より低い気圧を示す値(例えば、−0.1気圧等)を設定することとしてもよい。
【0056】
その一方で、反応容器2内の気圧が常圧以上の気圧である場合であっても、水素は発生する。よって、
図6に示すように、反応容器2内の気圧PがP0(常圧)の状態で水素発生装置Mの運転を開始し、反応容器2内の気圧PがP2に達したら、反応容器2内の気圧PをP0(常圧)になるまで減圧処理を行う構成としてもよい。このとき、P2(減圧処理を開始する気圧)は、反応容器2内の気圧(内圧)により損傷する値からマージン(余裕値)を差し引いた値に設定するのが好適である。これにより、反応容器2が内圧により損傷することなく、安全に水素発生装置Mを運転させることができる。
【0057】
また、
図7に示すように、反応容器2の外周に冷却手段としての水冷ジャケットJを巻き付け、冷却制御手段としての制御部11が、反応容器2内で水素が発生している際に、水冷ジャケットJに水を供給し、反応容器2を冷却することしてもよい。この場合、制御部11は、反応容器2を絶えず冷却するのではなく、
図8に示すように、水素が発生している期間(例えば、
図8におけるT3〜T4、T5〜T6、T7〜T9)の一部の期間について、反応容器2内の気温Tを低下させることとする。これにより、反応容器2内が、水素発生反応中に一時的に冷却されることとなり、水素発生反応を刺激し、水素の発生量を増加させることができる。
【0058】
さらに、本変形例では、気圧の上昇度が予め定められた設定値を下回った場合に(
図5のステップS36:NO)、水(又は水蒸気)を設定量分供給することとしたが、ステップS36の処理を行うことなく、設定量分の水(又は水蒸気)を供給してから水素の発生反応が活発化し、反応が鈍くなるまでの時間を予め求めておき、その時間が経過する毎に水(又は水蒸気)を設定量分供給することとしてもよい(すなわち、定期的に水(又は水蒸気)を供給することとしてもよい)。また、
図5のステップS37の処理において水(又は水蒸気)を供給する場合、又は一定時間毎に水(又は水蒸気)を供給する場合において、所定回数(例えば、5回)に一回は設定量より多くの水(又は水蒸気)を供給することとしてもよい。具体的には、所定回数おき(例えば、5回目、10回目、15回目、・・・)に、設定量の2倍の水を供給することとしてもよい。水を多く供給した回では、他の回よりも反応容器2内の水蒸気量が急激に増加することにより、水素発生反応を刺激し、水素の発生量を増加させることができる。