特許第6016417号(P6016417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016417
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/032 20160101AFI20161013BHJP
   B66C 23/44 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   H02P29/032
   B66C23/44 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-86466(P2012-86466)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-219864(P2013-219864A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷東 末和
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−070279(JP,A)
【文献】 特開平07−172772(JP,A)
【文献】 特開2002−142499(JP,A)
【文献】 特開2007−262978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00−29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの動力によって駆動部を駆動させる作業機械であって、
駆動部を駆動させる操作を入力する操作入力手段と、
駆動部の姿勢及び駆動部に作用する荷重を検出する駆動部状態検出手段と、
操作入力手段に入力された駆動部の駆動方向と駆動部状態検出手段によって検出された駆動部の姿勢及び駆動部に作用する荷重に基づいて駆動部に作用する負荷を検出する負荷検出手段と、
操作入力手段に入力された駆動部の駆動速度と負荷検出手段によって検出された駆動部に作用する負荷とに基づいて必要な電動モータの出力を算出し、算出した出力が、電動モータが過負荷となる出力未満の所定出力以下の場合に、算出した出力に対応する電動モータの回転数を設定し、電動モータが過負荷となる出力未満の所定出力より大きい場合に、電動モータが過負荷となる出力未満の所定出力以下の出力に対応する電動モータの回転数を設定する回転数設定手段と、
回転数設定手段によって設定された回転数で電動モータを駆動させる電動モータ駆動手段と、を備えた
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
回転数設定手段は、駆動部状態検出手段によって検出された駆動部の駆動位置が可動範囲の端部であり、操作入力手段に入力された駆動部の駆動方向が駆動部の可動範囲の端部方向の場合に、操作入力手段に入力された駆動部の駆動速度にかかわらず、電動モータの回転数を所定回転数に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
電動モータは、油圧回路に作動油を流通させる油圧ポンプを駆動するものであり、
駆動部は、油圧回路を流通する作動油によって駆動するアクチュエータによって駆動される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
駆動部は、アクチュエータとしての油圧シリンダによって起伏および伸縮が可能なブームである
ことを特徴とする請求項3に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電動駆動の車両搭載型クレーン装置等、電動駆動の駆動部を備えた作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の作業機械としては、駆動部を駆動させる電動モータが予め定められた所定の出力を超えることがないように、電動モータに入力される電流値と、電動モータの回転数と、に基づいて電動モータに入力される電流の制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−70279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記作業機械では、実際に駆動している電動モータに入力された電流値と、実際に駆動している電動モータの回転数に基づいて電動モータを制御している。このため、駆動部に作用する負荷が急激に変動する場合には、電動モータの出力が予め定められた所定の出力を超えるおそれがある。この場合、前記作業機械では、電動モータが過負荷の状態で駆動されることになり、電動モータに損傷が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的とするところは、電動モータが過負荷の状態で運転されることを防止して電動モータの故障を防止することのできる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、電動モータの動力によって駆動部を駆動させる作業機械であって、駆動部を駆動させる操作を入力する操作入力手段と、駆動部の姿勢及び駆動部に作用する荷重を検出する駆動部状態検出手段と、操作入力手段に入力された駆動部の駆動方向と駆動部状態検出手段によって検出された駆動部の姿勢及び駆動部に作用する荷重に基づいて駆動部に作用する負荷を検出する負荷検出手段と、操作入力手段に入力された駆動部の駆動速度と負荷検出手段によって検出された駆動部に作用する負荷とに基づいて必要な電動モータの出力を算出し、算出した出力が、電動モータが過負荷となる出力未満の所定出力以下の場合に、算出した出力に対応する電動モータの回転数を設定し、電動モータが過負荷となる出力未満の所定出力より大きい場合に、電動モータが過負荷となる出力未満の所定出力以下の出力に対応する電動モータの回転数を設定する回転数設定手段と、回転数設定手段によって設定された回転数で電動モータを駆動させる電動モータ駆動手段と、を備えている。
【0007】
これにより、算出された必要な電動モータの出力が所定出力以上の場合に、出力が所定出力以下となる電動モータの回転数が設定されることから、過負荷の状態での電動モータの駆動が防止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、過負荷の状態での電動モータの駆動を防止することができるので、電動モータの故障を防止して長寿命化を図ることが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、過負荷の状態で電動モータが駆動しないため、電動モータに電力を供給するバッテリの過放電を防止することができ、バッテリの劣化を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示すクレーン装置を搭載した車両の斜視図である。
図2】クレーン装置の正面図である。
図3】油圧供給装置の概略構成図である。
図4】操作部の操作に関する制御系を示すブロック図である。
図5】回転数制御処理を示すフローチャートである。
図6】回転数制御処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の他の実施形態の遠隔操作装置の操作に関する制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図6は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0012】
本発明の作業機械としてのクレーン装置10は、図1に示すように、車両1に搭載されるものである。
【0013】
車両1は、図1に示すように、シャシフレーム2の前側に設けられたキャブ3と、シャシフレーム2の後側に設けられた荷台4と、を備えており、キャブ3と荷台4との間のシャシフレーム2にクレーン装置10が搭載されている。
【0014】
クレーン装置10は、図2に示すように、シャシフレーム2(図1)上に固定される基台20と、基台20の左右両側に設けられたアウトリガ30と、基台20の上面に旋回自在に設けられた旋回台40と、旋回台40に対して起伏自在に設けられたブーム50と、ブーム50の先端側から垂下されるワイヤロープ60と、ワイヤロープ60の巻き込みまたは繰り出しを行うためのウインチ70と、を備えている。
【0015】
各アウトリガ30は、基台20に対して幅方向外側に移動可能であるとともに、油圧式のジャッキシリンダ31(図3)によって下方に伸長可能である。アウトリガ30は、下端を接地させることにより車両1を地面に対して安定的に支持する。
【0016】
旋回台40は、ボールベアリング式やローラーベアリング式の旋回サークル(図示せず)によって基台20に対して旋回自在に設けられ、油圧式の旋回モータ41(図3)によって旋回する。また、旋回台40の上面には、上下方向に延びる旋回ポスト42が設けられ、旋回ポスト42の上端側にブーム50が起伏自在に連結されている。
【0017】
ブーム50は、図2に示すように、複数のブーム部材51〜54からなり、最先端側のブーム部材54を除く各ブーム部材51〜53の内部に先端側に隣り合うブーム部材52〜54が収納可能な多段式に構成されている。最基端側のブーム部材51は、基端部が旋回ポスト42の上端側に上下方向に回転自在に連結されている。ブーム部材51の基端側と旋回台40との間には、油圧式の起伏シリンダ55が連結され、起伏シリンダ55の伸縮動作によってブーム50を起伏させる。また、最基端側のブーム部材51内には、油圧式の伸縮シリンダ56(図3)が設けられ、伸縮シリンダ56の伸縮によってブーム50を伸縮させる。
【0018】
ワイヤロープ60は、図2に示すように、先端側にフックブロック61が接続され、フックブロック61がブーム50の先端部から垂下される。フックブロック61には吊荷を係止可能であり、フックブロック61に係止された吊荷がブーム50の先端部から吊り下げられる。
【0019】
ウインチ70は、図2に示すように、ワイヤロープ60が巻き掛けられるドラム71と、ドラム71を正逆回転させるための油圧式のウインチモータ72と、ウインチモータ72の回転数およびトルクを変換してドラム71に伝達する減速機73と、を有している。
【0020】
各ジャッキシリンダ31,31、旋回モータ41、起伏シリンダ55、伸縮シリンダ56およびウインチモータ72等のアクチュエータは、作動油の供給および排出によって作動する。各アクチュエータを作動させる作動油は、図3に示すように、油圧供給装置80によって供給される。
【0021】
油圧供給装置80は、図3に示すように、作動油を吐出するための油圧ポンプ81と、油圧ポンプ81を駆動させるための交流電力駆動の電動モータ82と、電動モータ82に電力を供給するためのバッテリ83と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の流れを制御するためのコントロールバルブユニット84と、を備え、これらは作動油回路85に接続されている。
【0022】
コントロールバルブユニット84は、各アクチュエータのそれぞれに対応する複数のコントロールバルブを有し、各コントロールバルブは、図2に示す操作レバー84a,84b,84c,84d(以下、84a〜84dと記載する)によって操作される。各コントロールバルブは、操作レバー84a〜84dの操作方向に応じて作動油の流路が切り換えられ、操作レバー84a〜84dの操作量に応じて作動油の流量の調整が可能である。また、コントロールバルブユニット84を構成する各コントロールバルブは、ソレノイドからなる切換手段を有し、後述するコントローラからの信号によっても操作可能である。
【0023】
作動油回路85は、油圧ポンプ81の吐出側がコントロールバルブユニット84のポンプ側のポートに接続され、油圧ポンプ81の吸入側が作動油タンク85aに接続されている。また、コントロールバルブユニット84のアクチュエータ側のポートには、各アクチュエータが接続されている。さらに、コントロールバルブユニット84の作動油排出用のポートには、作動油タンク85aに接続されている。
【0024】
また、クレーン装置10は、油圧供給装置80の動作に関する制御を行うためのコントローラ90を備えている。
【0025】
コントローラ90は、CPU、ROM、RAMを有している。コントローラ90は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0026】
コントローラ90の入力側には、図4に示すように、ブーム50の伸縮長さを検出するためのブーム長検出器91と、ブーム50の起伏角度を検出するためのブーム角度検出器92と、起伏シリンダ55内の圧力を検出するためのシリンダ圧検出器93と、操作レバー84a〜84dの操作方向や操作量(アクセル操作量)を検出するための操作状態検出器94と、が接続されている。操作状態検出器94は、操作レバー84a〜84dによって操作されるコントロールバルブユニット84の各コントロールバルブの動作(例えば、スプールの動作位置等)を検出するもので、検出した各コントロールバルブの動作から操作レバー84a〜84dの操作方向および操作量を検出する。
【0027】
コントローラ90の出力側には、電動モータ82の回転数を制御するためのインバータ95が接続されている。
【0028】
また、コントローラ90は、図4に示すように、姿勢・荷重演算部90aと、操作方向検出部90bと、必要トルク演算部90cと、必要流量演算部90dと、電動モータ出力演算部90eと、電動モータ回転数演算部90fと、電動モータ回転数出力部90gと、を備えている。
【0029】
姿勢・荷重演算部90aは、ブーム長検出器91の検出結果、ブーム角度検出器92の検出結果およびシリンダ圧検出器93の検出結果に基づいて、ブーム50の姿勢および吊荷の荷重を算出する。
【0030】
操作方向検出部90bは、操作状態検出器94の検出結果から操作レバー84a〜84dの操作方向を検出する。
【0031】
必要トルク演算部90cは、姿勢・荷重演算部90aの算出結果および操作方向検出部90bの検出結果に基づいて必要な電動モータ82のトルクを算出する。
【0032】
必要流量演算部90dは、操作状態検出器94の検出結果から操作レバー84a〜84dの操作量を取得し、操作レバー84a〜84dの操作量に基づいて必要な作動油の流量を算出する。
【0033】
電動モータ出力演算部90eは、必要トルク演算部90cの算出結果および必要流量演算部90dの算出結果に基づいて必要な電動モータ82の出力を算出し、算出した電動モータ82の出力が所定出力以下の場合には算出した出力を電動モータ82の出力とし、算出した電動モータ82の出力が所定出力より大きい場合には所定出力を電動モータ82の出力とする。
【0034】
電動モータ回転数演算部90fは、電動モータ出力演算部90eにおいて算出された電動モータ82の出力から電動モータ82の回転数を算出する。
【0035】
電動モータ回転数出力部90gは、電動モータ回転数演算部90fの算出結果をインバータ95に出力する。
【0036】
以上のように構成された作業機械としてのクレーン装置において、クレーン作業時の電動モータ82は、電動モータ回転数演算部90fにおいて算出された回転数となるように、インバータ95によって回転数が制御される。
【0037】
コントローラ90は、クレーン作業時に、使用者によって行われた操作が電動モータ82を過負荷の状態で駆動させる操作であることを検出し、電動モータ82が過負荷の状態とならない電動モータ82の回転数を設定する回転数設定処理を行う。このときのコントローラの動作を、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、操作レバー84a〜84dが操作されたか否かを判定する。操作レバー84a〜84dが操作されたと判定した場合にはステップS2に処理を移し、操作レバー84a〜84dが操作されたと判定しなかった場合には回転数設定処理を終了する。
【0039】
(ステップS2)
ステップS1において操作レバー84a〜84dが操作されたと判定した場合に、ステップS2においてCPUは、必要な電動モータ82の出力を算出し、ステップS3に処理を移す。
ここでは、ブーム長検出器91の検出結果、ブーム角度検出器92の検出結果、シリンダ圧検出器93の検出結果および操作レバー84a〜84dの操作状態に基づき、前記の姿勢・荷重演算部90aと、操作方向検出部90bと、必要トルク演算部90cと、必要流量演算部90dと、電動モータ出力演算部90eと、から必要な電動モータの出力を算出する。
【0040】
(ステップS3)
ステップS3においてCPUは、ステップS2において算出された必要な電動モータ82の出力が所定出力以下であるか否かを判定する。電動モータ82の出力が所定出力以下と判定した場合にはステップS4に処理を移し、電動モータ82の出力が所定出力以下と判定しなかった場合にはステップS5に処理を移す。
【0041】
(ステップS4)
ステップS3において必要な電動モータ82の出力が所定出力以下であると判定した場合に、ステップS4においてCPUは、算出した必要な電動モータ82の出力に基づいて電動モータ82の回転数を設定し、回転数設定処理を終了する。
【0042】
(ステップS5)
ステップS3において必要な電動モータ82の出力が所定出力以下であると判定しなかった場合に、ステップS5においてCPUは、所定出力に基づいて電動モータ82の回転数を設定し、回転数設定処理を終了する。
【0043】
また、コントローラ90は、例えば起伏シリンダ55が最大限伸長した状態等、各アクチュエータが可動範囲の端部に位置している状態で、操作レバー84a〜84dによって端部方向に駆動させる操作がなされた場合に、操作レバー84a〜84dの操作量にかかわらず、電動モータ82の回転数を所定の回転数に設定するストロークエンド回転数設定処理を行う。このときのコントローラ90の動作を、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、アクチュエータの駆動位置が可動範囲の端部に位置しているか否かを判定する。アクチュエータの駆動位置が可動範囲の端部に位置していると判定した場合にはステップS12に処理を移し、アクチュエータの駆動位置が可動範囲の端部に位置している判定しなかった場合にはストロークエンド回転数設定処理を終了する。
【0045】
(ステップS12)
ステップS11においてアクチュエータの駆動位置が可動範囲の端部に位置していると判定した場合に、ステップS12においてCPUは、アクチュエータを可動範囲の端部方向に駆動させる操作がされたか否かを判定する。アクチュエータを可動範囲の端部方向に駆動させる操作がされたと判定した場合にはステップS13に処理を移し、アクチュエータを可動範囲の端部方向に駆動させる操作がされたと判定しなかった場合にはストロークエンド回転数設定処理を終了する。
【0046】
(ステップS13)
ステップS12においてアクチュエータを可動範囲の端部方向に駆動させる操作がなされたと判定した場合に、ステップS13においてCPUは、電動モータ82の回転数を所定回転数に設定し、ストロークエンド回転数設定処理を終了する。
【0047】
このように、本実施形態の作業機械としてのクレーン装置によれば、操作レバー84a〜84dの駆動速度に対応する操作量から算出される油圧ポンプ81の作動油の吐出量と、ブーム50の姿勢、吊荷の荷重および操作レバー84a〜84d操作方向に基づいて算出される必要な電動モータ82のトルクと、に基づいて必要な電動モータ82の出力を算出し、必要な電動モータ82の出力が所定出力以下の場合に、出力が必要な電動モータ82の出力となる電動モータ82の回転数を設定し、必要な電動モータ82の出力が所定出力より大きい場合に、出力が所定出力以下となる電動モータ82の回転数を設定している。これにより、過負荷の状態での電動モータ82の駆動を防止することができるので、電動モータ82の故障を防止して長寿命化を図ることが可能となる。また、過負荷の状態で電動モータ82が駆動しないので、電力の消費量を低減することが可能となる。さらに、事前に設定された回転数で電動モータ82を駆動させるので、クレーン作業中に電動モータ82の回転数が変化しない。このため、クレーン作業時の動作速度の急激な変化を防止でき、安全性を向上させることが可能となる。また、過負荷の状態で電動モータ82が駆動しないため、バッテリ83の過放電を防止することができ、バッテリ83の劣化を防止することが可能となる。
【0048】
また、アクチュエータの駆動位置が可動範囲の端部に位置している場合に、可動範囲の端部方向に操作レバー84a〜84dが操作されると、操作レバー84a〜84dの操作量にかかわらず、電動モータ82の回転数を所定回転数に設定している。これにより、アクチュエータが駆動しない位置において、不必要な電動モータ82の駆動を制限することができるので、電力の消費量を低減することが可能となる。
【0049】
図7は、本発明の他の実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0050】
このクレーン装置10は、油圧供給装置80を遠隔操作するための遠隔操作装置100を備えている。
【0051】
このクレーン装置10のコントローラ90には、図示しない無線通信部が設けられ、遠隔操作装置100から操作信号が入力される。
【0052】
コントローラ90は、姿勢・荷重演算部90a1と、操作状態検出部90b1と、必要トルク演算部90c1と、必要流量演算部90d1と、電動モータ出力演算部90e1と、電動モータ回転数演算部90f1と、電動モータ回転数出力部90g1と、バルブ切換出力部90h1と、を備えている。
【0053】
姿勢・荷重演算部90a1は、ブーム長検出器91の検出結果、ブーム角度検出器92の検出結果およびシリンダ圧検出器93の検出結果に基づいて、ブーム50の姿勢および吊荷の荷重を算出する。
【0054】
操作状態検出部90b1は、遠隔操作装置100から入力された操作信号に基づいて入力された各アクチュエータの駆動方向および駆動速度を検出する。
【0055】
必要トルク演算部90c1は、姿勢・荷重演算部90a1の算出結果および操作状態検出部90b1で検出した駆動方向に基づいて必要な電動モータ82のトルクを算出する。
【0056】
必要流量演算部90d1は、操作状態検出部90b1で検出した駆動速度に基づいて必要な作動油の流量を算出する。
【0057】
電動モータ出力演算部90e1は、必要トルク演算部90c1の算出結果および必要流量演算部90d1の算出結果に基づいて必要な電動モータ82の出力を算出し、算出した電動モータ82の出力が所定出力以下の場合には算出した出力を電動モータ82の出力とし、算出した電動モータ82の出力が所定出力より大きい場合には所定出力を電動モータ82の出力とする。
【0058】
電動モータ回転数演算部90f1は、電動モータ出力演算部90e1において算出された電動モータ82の出力から電動モータ82の回転数を算出する。
【0059】
電動モータ回転数出力部90g1は、電動モータ回転数演算部90f1の算出結果をインバータ95に出力する。
【0060】
バルブ切換出力部90h1は、操作状態検出部90b1によって検出された各アクチュエータの駆動方向および駆動速度に対応するバルブの切換え信号をコントロールバルブユニット84に出力する。
【0061】
以上のように構成された作業機械としてのクレーン装置において、クレーン作業時の電動モータ82は、前記実施形態と同様に、電動モータ回転数演算部90f1において算出された回転数となるように、インバータ95によって回転数が制御される。
【0062】
このように、本実施形態の作業機械としてのクレーン装置によれば、前記実施形態と同様に、過負荷の状態での電動モータ82の駆動を防止することができるので、電動モータ82の故障を防止して長寿命化を図ることが可能となる。また、過負荷の状態で電動モータ82が駆動しないので、電力の消費量を低減することが可能となる。さらに、事前に設定された回転数で電動モータ82を駆動させるので、クレーン作業中に電動モータ82の回転数が変化しない。このため、クレーン作業時の動作速度の急激な変化を防止でき、安全性を向上させることが可能となる。
【0063】
なお、前記実施形態では、作業機械の一例として車両搭載型のクレーン装置を示したが、例えば、移動式クレーン、高所作業車、固定式クレーン、車両運搬車等、電動駆動の作業機械であれば本発明を適用可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、電動モータを駆動源とした油圧駆動システムを示したが、電動モータによって直接駆動部を駆動させる電動アクチュエータを備えた作業機械にも本発明を適用可能である。
【0065】
また、前記実施形態では、コントローラ90において電動モータ82の回転数の設定を行うようにしたものを示したが、インバータ95において電動モータ82の回転数の設定を行うようにしてもよい。
【0066】
また、前記実施形態において、インバータ95から実際の電動モータ82の負荷をフィードバックし、電動モータ82出力と回転数との関係を補正することにより、より確実に過負荷とならず、効率のよい電動モータ82の駆動が可能となる。
【0067】
また、前記実施形態では、油圧ポンプ81の駆動源として交流の電動モータ82を示したが、インバータ95を使用せず、直流の電動モータに対しても本発明を適用可能である。
【0068】
また、前記実施形態では、起伏シリンダ55内の圧力を検出することによって吊荷の荷重を検出するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、ブーム50の先端部にロードセルを設け、ロードセルによって吊荷の荷重を検出するようにしてもよい。
【0069】
また、前記実施形態では、アクチュエータが可動範囲の端部に位置している場合に、可動範囲の端部方向に操作レバー84a〜84dが操作されると、電動モータ82の回転数を所定回転数に設定するようにしたものを示したが、電動モータ82を停止させるものも含まれる。
【0070】
また、前記実施形態では、電動モータ82の駆動源としてバッテリ83を用いたものを示したが、電動モータ82の駆動源としては、商用電源を用いることも可能である。
【0071】
なお、前記実施形態において、操作レバー84a〜84dおよび遠隔操作装置100が、本発明の操作入力手段に相当する。
また、前記実施形態において、姿勢・荷重演算部90a,90a1が、本発明の駆動部状態検出手段に相当する。
また、前記実施形態において、必要トルク演算部90c,90c1が、本発明の負荷検出手段に相当する。
また、前記実施形態において、電動モータ出力演算部90e,90e1および電動モータ回転数演算部90f,90f1が、本発明の回転数設定手段に相当する。
【符号の説明】
【0072】
10…クレーン装置、40…旋回台、50…ブーム、70…ウインチ、80…油圧供給装置、81…油圧ポンプ、82…電動モータ、84…コントロールバルブユニット、84a〜84d…操作レバー、85…作動油回路、90…コントローラ、90a,90a1…姿勢・荷重演算部、90b…操作方向検出部、90b1…操作状態検出部、90c,90c1…必要トルク演算部、90d,90d1…必要流量演算部、90e,90e1…電動モータ出力演算部、90f,90f1…電動モータ回転数演算部、90g,90g1…電動モータ回転数出力部、91…ブーム長検出器、92…ブーム角度検出器、93…シリンダ圧検出器、94…操作状態検出器、95…インバータ、100…遠隔操作装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7