(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の画素からなる画像データに基づく画像が表示される表示画面を有する表示部と、前記表示画面を分割した領域ごとに設けられ、対応する各前記領域に向けて光を出射することで前記表示画面に画像を表示させる複数の発光部を備える発光装置と、を備え、ローカルディミング機能による輝度制御値に基づいて前記複数の発光部の輝度を制御する表示装置において、
前記領域に表示される画像に対応する画素の画素値と当該領域に対応する前記輝度制御値とに基づいて、当該輝度制御値を補正するか否かを、前記領域ごとに判断する判断部と、
前記判断部によって、前記領域の少なくとも1つの領域について前記輝度制御値を補正すると判断されると、当該輝度制御値を、輝度が小さくなるように補正する補正部と、をさらに備え、
前記発光装置は、各前記領域に向けて、前記補正部によって補正された輝度制御値に基づいて、前記複数の発光部の輝度を制御することを特徴とする表示装置。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、2枚の透明基板の間に液晶が封入され、電圧が印加されることにより液晶分子の向きが変えられ光透過率を変化させることで予め定められた映像等が光学的に表示される。この液晶表示装置には、液晶自体が発光体ではないので、たとえば透過型の液晶パネルの背面側に陰極管(CFL)、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などを光源とした光を照射するバックライトユニットが備えられる。
【0003】
バックライトユニットには、たとえば、陰極管やLED等の光源を底面に並べて光を出す直下型がある。
【0004】
液晶パネルと、直下型のバックライトユニットとを備える表示装置においては、視認性など表示品質の向上が要求される。表示品質に影響を及ぼす特性としてコントラスト比がある。コントラスト比は、表示画面における明るい部分と暗い部分の明度差であり、明度差が大きければ表示される画像の色彩や輪郭がはっきりして表示品質が向上するとされている。
【0005】
液晶表示装置は、上記のように光透過率を変化させて画像を表示させるため、コントラスト比は、液晶パネルの光透過率によって自ずと限界が決まってしまう。そこで、直下型バックライトにおいて、照射領域を複数の領域に分割し、領域ごとに光源の輝度を制御して、明るい部分は光源の輝度を高くしてより明るくし、暗い部分は光源の輝度を低くしてより暗くすることで、液晶パネルの光透過率の制御とバックライトの輝度の制御との組合せによってコントラスト比をさらに向上させるローカルディミング機能が実用される。
【0006】
ローカルディミングでは、明るい部分をより明るく、暗い部分をより暗くするために、表示させようとする画像データの画素値に基づき、明るくすべき領域と暗くすべき領域を特定し、特定した領域に対応する光源の輝度を高くするか、または低くする。
【0007】
特許文献1には、単位ピクセル別の最大値を基に、各領域の平均値を検出し、その平均値から最大平均値、最小平均値、全体平均値を算出し、これらの値と、入力される最小ディミングカーブ値および最大ディミングカーブ値に基づいてディミングカーブを生成してバックライトを制御する技術が記載されている。
【0008】
表示装置における表示品質の向上としては、単に明るさを制御するだけでなく、たとえば特許文献2に記載されるように、人間の視覚の非直線性や目の錯覚によって起こる外部刺激と脳で知覚される感覚量のずれに伴う諸問題を考慮し、LEDの輝度の補正を行う技術が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ローカルディミング機能により、コントラスト比の向上は可能となったが、コントラスト比の向上だけを考えてしまい、表示画面において明るくすべきところをより明るくしようとして、表示装置で表示される画像を見ている人間の目に悪影響を及ぼすほどの明るさで画像を表示してしまうというおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、コントラスト比を低下させることなく、人間の目に与える刺激を抑制した表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の画素からなる画像データに基づく画像が表示される表示画面を有する表示部と、前記表示画面を分割した領域ごとに設けられ、対応する各前記領域に向けて光を出射することで前記表示画面に画像を表示させる複数の発光部を備える発光装置と、
を備え、ローカルディミング機能による輝度制御値に基づいて前記複数の発光部の輝度を制御する表示装置において、
前記領域に表示される画像に対応する画素の画素値と当該領域に対応する前
記輝度制御値とに基づいて、
当該輝度制御値を補正するか否かを、前記領域ごとに判断する判断部と、
前記判断部によって、前記領域の少なくとも1つの領域について前
記輝度制御値を補正すると判断されると、
当該輝度制御値を
、輝度が小さくなるように補正
する補正部と、を
さらに備え
、
前記発光装置は、各前記領域に向けて、前記補正部によって補正された輝度制御値に基づいて、前記複数の発光部の輝度を制御することを特徴とする表示装置である。
【0013】
また本発明は、前記判断部は、前記領域に表示される画像に対応する画素の画素値と当該領域に対応する前
記輝度制御値とに基づいて、
人間の目に対する刺激の度合を示す値であって、当該領域における画面の明るさを示す刺激値を算出し、算出された刺激値と予め定める閾値とを比較して、算出された刺激値が閾値よりも大きければ、前
記輝度制御値を補正すると判断することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記補正部は、前
記輝度制御値を補正すると判断されると、全ての領域に対して、同じ補正係数を用いて前
記輝度制御値
を、輝度が小さくなるように補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、判断部が、表示画面を分割した領域に表示される画像に対応する画素の画素値と当該領域に対応す
る輝度制御値とに基づいて、輝度制御値を補正するか否かを、前記領域ごとに判断し、前記判断部によって、前記領域の少なくとも1つの領域について前
記輝度制御値を補正すると判断されると、補正部は、輝度制御値を補正し、前記発光
装置は、補正後の輝度制御値に基づいて前記複数の発光部の輝度を制御
する。
【0016】
画素値と輝度制御値とに基づいて判断し、必要に応じて輝度制御値の補正を行うので、コントラスト比を低下させることなく、人間の目に与える刺激を抑制することができる。
【0017】
また本発明によれば、前記判断部は、前記領域に表示される画像に対応する画素の画素値と当該領域に対応する前
記輝度制御値とに基づいて、
人間の目に対する刺激の度合を示す値であって、当該領域における画面の明るさを示す刺激値を算出し、算出された刺激値と予め定める閾値とを比較して、算出された刺激値が閾値よりも大きければ、前
記輝度制御値を補正すると判断する。これにより、表示画面の明るさによって人間の目に与える刺激を抑制することができる。
【0018】
また本発明によれば、前記補正部は、全ての領域に対して、同じ補正係数を用いて、輝度制御値
を、輝度が小さくなるように補正を行うので、1つのエリアだけが補正されて、他のエリアとの明るさの差ができることを防止する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態である表示装置1の構成を示すブロック図である。
表示装置1は、映像抽出部2、ディスプレイ設定抽出部3、LEDバックライト制御マップ作成部4、刺激値マップ作成部5、LEDバックライト制御マップ補正部6、視覚保護条件データベース(DB)7、表示制御部8、表示パネル9およびバックライト10を備える。また、表示装置1には、外部の映像発信部20から画像データを示す映像信号が入力され、ディスプレイ設定発信部30からディスプレイの表示に関する設定を示す設定信号が入力される。
【0021】
表示装置1に入力される画像データは、動画像を表示するための画像データ(動画像データ)でも、静止画像を表示するための画像データ(静止画像データ)でもよい。映像発信部20は、たとえば、パーソナルコンピュータ、ハードディスクレコーダ、DVDプレーヤ、デジタルカメラ、スマートホンなど動画像データおよび静止画像データにかかわらず、どのような方式、どのような形式の画像データであってもよい。
【0022】
映像抽出部2は、映像発信部20から入力される画像データを受信し、必要に応じて受信した画像データを記憶する。また、映像抽出部2は、表示パネル9で画像を表示することが可能となるように、受信した画像データの中からたとえば1フレームごとの画像データを抽出する。抽出した1フレームごとの画像データは、LEDバックライト制御マップ作成部4へ出力される。
【0023】
画像データは、複数の画素からなり、各画素は1画面内における位置を示す座標値と、表示すべき色相および濃度などを示す画素値とからなる。
【0024】
ディスプレイ設定抽出部3は、ディスプレイ設定発信部30から入力される設定データを受信し、必要に応じて、ディスプレイの表示に関連する設定値を更新して記憶する。記憶した設定値は、刺激値マップ作成部へ出力される。
【0025】
ディスプレイ設定発信部30は、たとえばリモートコントローラなどで実現され、ケーブル接続による有線通信および赤外線通信などの無線通信のいずれかによってユーザが所望するディスプレイの設定値を表示装置1に対して発信する。ディスプレイ設定抽出部3は、ディスプレイ設定発信部30から入力される設定値の全てを刺激値マップ作成部5へ出力する必要はなく、後述する刺激値マップの作成に必要な設定のみを刺激値マップ作成部5へ出力すればよい。
【0026】
LEDバックライト制御マップ作成部4は、いわゆるローカルディミング機能を実現するために、バックライト10に備えられる各LED(Light Emitting Diode)光源の輝度制御値をLED光源ごとに設定した制御マップを作成する。制御マップの作成は、従来公知のローカルディミング機能に用いられる手順によって作成することができる。
【0027】
ローカルディミング機能では、ディスプレイの表示画面を複数のエリアに分割し、この分割されたエリアごとに割り当てられたLED光源の輝度を、エリアごとに制御することで、高いコントラスト比を実現するものである。高いコントラスト比を実現するには、表示画面に表示される画像に応じて輝度を制御することになる。たとえば、月の出た夜空や太陽の出た青空などの画像を画面に表示する場合、月や太陽の部分をより明るく、多くの光量が表示画面からユーザに照射されるように表示し、空の部分をより暗く、少ない光量が表示画面からユーザに照射されるように表示すれば、コントラスト比は高くなる。
【0028】
上記の例において、より明るく表示すべき月や太陽の部分は、画像データにおいて月や太陽に相当する画素の画素値は、明るさを示す明度値などが高く、周りの空に相当する画素の画素値は、明度値などが低く設定されている。したがって、ローカルディミング機能では、エリアに対応する画素の画素値を参照して、各エリアに割り当てられたLED光源の輝度を、LED光源ごとにどの程度高くするか、どの程度低くするかを考慮して、輝度制御値を決定し、各LED光源の輝度を制御する。
【0029】
バックライト10に備えられる各LED光源の配置位置は予め決まっており、表示画面の各エリアの配置位置も、バックライト10の各LED光源に応じて予め決まっている。したがって、バックライトの制御マップは、予め決められたエリアごとに、映像抽出部2から入力される画像データに基づいてLED光源の輝度を制御するための輝度制御値を決定する。
【0030】
制御マップは、縦にm個、横にn個区切られたm×nのマトリクス状のエリア配置を示すエリア配置情報と、エリアごとの輝度制御値とからなる。エリア配置情報は、座標値のように表わすことができ、たとえば、表示画面の左上隅または左下隅のエリアを配置位置(1,1)として、そこから水平方向に並ぶ各エリアの配置位置を(2,1)、(3,1)・・・(n−1,1)、(n,1)として表わし、垂直方向に並ぶ各エリアの配置位置を(1,2)、(1,3)・・・(m−1,1)、(m,1)として表わす。
【0031】
輝度制御値は、各エリアに対応して配置されているLED光源の輝度値を制御するための目安となる値であればどのような値でもよく、LED光源に印加する電圧値、電流値などであってもよく、最大輝度で発光させる場合を100%として、相対的な輝度を示す百分率の値などであってもよい。本実施形態では、最大輝度での発光を100%とする百分率値を輝度制御値とする。
【0032】
LEDバックライト制御マップ作成部4は、入力された画像データを参照し、各エリアにおける画素値などから、エリアごとの輝度制御値を決定し、エリア配置情報とエリアごとの輝度制御値とを関連付けて、制御マップとして記憶する。
【0033】
刺激値マップ作成部5は、入力された画像データの各画素値と、LEDバックライト制御マップ作成部4で作成された制御マップと、ディスプレイ設定抽出部3から入力される設定値と、に基づいて刺激値マップを作成する。刺激値マップは、輝度制御のための制御マップと同じエリア配置情報と、エリアごとの刺激値とからなる。
【0034】
ここで、刺激値とは、表示装置1によって表示された画像を人間が視認したときに、人間の目に対する刺激の度合いを示す値である。刺激値は、刺激の度合いに対する目安に過ぎないものであり、刺激値よりも大きな値となる条件で画像を表示したからといって、必ず人間の目に悪影響を及ぼすとは限らない。
【0035】
刺激値は、基本的に表示すべき画像データにおける画素値と、輝度制御値とに基づき、設定値の中から人間の目に影響を及ぼすパラメータとして画面の明るさ設定値などを考慮してエリアごとに算出される。本実施形態では、刺激値として、画素値、輝度制御値および画面の明るさ設定値に基づいて算出する例について説明する。
【0036】
画像データにおける画素の解像度と、輝度制御値マップにおけるエリアの解像度と比較すると、画素の解像度のほうが高いので、1つのエリアには、対応する複数の画素が含まれることになる。刺激値を算出するにあたっては、1つのエリアに1つの値が割り当てられる必要があるので、画素値については、1つのエリアに1つの値となるように代表値を算出する。代表値は、たとえば、1つのエリアに対応する複数の画素の画素値の中央値としてもよく、平均値としてもよい。フルカラー画像を表示する場合、1つのエリアには、RGBの三色の画素が含まれるので、平均値は、たとえば(エリア内全画素のR成分の和+エリア内全画素のG成分の和+エリア内全画素のB成分の和)/3で算出する。このように画素値についてもエリアごとに1つの値が割り当てられた画素値マップを作成しておく。
【0037】
刺激値の算出は、エリアごとにこれらの値を全て乗算すればよい。たとえば、画素値が120であり、輝度制御値が50%であり、画面の明るさ設定値が10であれば、そのエリアにおける画面の明るさを示す刺激値=120×50%×10=600と算出される。このような演算を、エリアごとに行いエリア配置情報と、エリアごとの刺激値とを関連付けて刺激値マップとして記憶しておく。
【0038】
LEDバックライト制御マップ補正部6は、LEDバックライト制御マップ作成部4で一旦作成された制御マップを必要に応じて補正する。LEDバックライト制御マップ補正部6は、刺激値マップ作成部5によって作成された刺激値マップに基づいて、作成された制御マップを補正するか否かを判断する。
【0039】
上記のように、刺激値は、人間の目に対する刺激の度合いを示すものであるので、刺激値が予め定める閾値以上であれば、人間の目に対して悪影響を及ぼす可能性が高いと考えられる。そこで、人間の目に悪影響を及ぼすことが懸念されるような場合には、LEDバックライト制御マップを補正して、閾値よりも下回るように刺激値を低くする。
【0040】
刺激値マップの補正をするか否かを決めるための閾値は、視覚保護条件として、視覚保護条件データベース7に記憶されている。
【0041】
LEDバックライト制御マップ補正部6は、LEDバックライト制御マップ作成部4から、制御マップが入力され、刺激値マップ作成部5から、刺激値マップが入力されると、視覚保護条件データベース7から保護条件となる閾値を読み出す。読みだした閾値を用いて、刺激値マップのエリアごとに刺激値と閾値との比較を行う。複数のエリアのうち、1つでも刺激値が閾値以上であるエリアがあれば、制御マップの補正を行う。
【0042】
制御マップの補正は、各エリアの輝度制御値を補正する。輝度制御値の補正は、たとえば、予め定める補正係数を用いて輝度制御値をより小さい値にする。
【0043】
刺激値マップにおいて、複数のエリアのうち刺激値が閾値以上であるエリアのみ補正すれば、少なくとも人間の目に対する悪影響を防ぐことができる。しかし、1部のエリアのみを補正して、輝度制御値を小さくした場合、補正しなかったエリアの輝度制御値と補正をしなかったエリアの輝度制御値との差が小さくなる。すなわち、補正後の制御マップに基づいて輝度が制御されたLED光源のうち、輝度制御値が補正されたLED光源の輝度は低くなり、輝度制御値が補正されなかったLED光源の輝度はそのままであるから、輝度の差が小さくなる。これによって、表示装置1として画像を表示したときのコントラスト比が小さくなってしまう。
【0044】
したがって、刺激値が閾値以上であるエリアが1つでもあった場合には、全てのエリアに対して輝度制御値を補正することが好ましい。さらに、各エリアの輝度制御値を補正するための補正係数を全て同じ係数とすることが好ましい。
【0045】
表示制御部8は、画像データに基づいて表示パネル9の各画素に印加する電圧を制御して表示パネル9における画素ごとの光透過率を制御して画像を表示させる。また、バックライト10の輝度制御を、LEDバックライト制御マップに基づいて行う。
【0046】
図2は、LEDバックライト制御処理を示すフローチャートである。
LEDバックライト制御処理は、映像発信部20から画像データが入力されると開始される。ステップS1では、入力された画像データに基づいて、LEDバックライト制御マップ作成部4が、制御マップを作成する。ステップS2では、刺激値マップ作成部5が刺激値マップを作成する。
【0047】
図3は、刺激値マップ作成処理を示すフローチャートである。ステップS11で、LEDバックライト制御処理のステップS1で作成されたLEDバックライト制御マップを取得する。ステップS12では、映像抽出部2で抽出された画像データに基づいて画素値マップを作成する。ステップS13では、ディスプレイ設定抽出部3で抽出された設定値を取得する。ステップS14では、LEDバックライト制御マップの各輝度制御値と、画素値マップの各画素値と、設定値とに基づいてエリアごとに刺激値を算出して刺激値マップを作成する。
【0048】
図4は、各マップの例を示す図である。
図4(a)は、LEDバックライト制御マップ40を示す図であり、
図4(b)は、画像データの画素値マップ41を示す図であり、
図4(c)は、刺激値マップ42を示す図である。
【0049】
図4に示す例では、各マップは、縦に3個、横に3個の3×3のマップである。各マップにおいて、左下隅のエリアの位置を(1,1)とすると、LEDバックライト制御マップ40において、たとえば、位置(2,3)のエリアにおいて輝度制御値を最大の100%とし、位置(1,1)および(3,1)の輝度制御値を10%としている。画素値マップ41では、位置(2,3)のエリアにおいて画素値が240で最大となり、位置(1,1)および(3,1)のエリアにおいて画素値が30で最小となっている。刺激値の算出は、上記のような算出式で行う。算出に用いる明るさ設定値は、10とする。位置(2,3)のエリアにおいて刺激値=240×100%×10=2400であり、位置(1,1)および(3,1)のエリアにおいて刺激値=30×10%×10=30である。
【0050】
図2のフローチャートに戻って、ステップS3では、刺激値マップと視覚保護条件とを比較して刺激値の判定を行う。
【0051】
図5は、刺激値判定処理を示すフローチャートである。ステップS21では、LEDバックライト制御処理のステップS2で作成された刺激値マップを取得する。ステップS222では、視覚保護条件データベース7から視覚保護条件として刺激値を判定するための閾値を取得する。ステップS23では、ステップS21で取得した刺激値マップに対して、ステップS22で取得した閾値を用いて閾値処理を行い、視覚保護条件を満たすか否かを判断する。具体的には、刺激値マップのエリアごとに、エリアに対応する刺激値と閾値とを比較し、刺激値が閾値以上となるエリアが1つでもあれば、刺激値マップが視覚保護条件を満たさない、すなわち輝度制御値の補正が必要となると判断し、ステップS25に進む。全てのエリアにおいて、刺激値が閾値よりも小さければ、刺激値マップが視覚保護条件を満たす、すなわち輝度制御値の補正が必要ないと判断し、ステップS24に進む。
【0052】
ステップS24では、判定結果として、刺激値に問題がないとし、ステップS25では、判定結果として、刺激値に問題があるとする。
【0053】
図2のフローチャートにおいて、ステップS4では、刺激値マップに問題がないかどうかを判断する。
図5に示した上記の刺激値判定処理において、刺激値に問題がないと判定されていればステップS6に進み、刺激値に問題があると判定されていればステップS5に進む。
【0054】
ステップS5では、LEDバックライト制御マップを補正する。
図6は、LEDバックライト制御マップ補正処理を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS31では、制御マップの輝度制御値を補正するために減衰率を算出する。減衰率は、閾値を超える刺激値について、その刺激値が閾値以下となるような係数を算出する。人間の目に与える影響を考慮すると、刺激値は可能な限り小さいほうがよいが、刺激値を小さくすることは、表示画面の明度を小さくすることになるので、表示品質としては低下してしまう。表示品質の低下を最小限にとどめたうえで、人間の目にも悪影響を与えないように、刺激値が閾値と同じ値となるように減衰率を決めればよい。
【0056】
閾値を超える刺激値をSとし、閾値をT(<S)とすると、減衰率Rは、R=(S−T)/Sで算出できる。
図4(c)に示した刺激値マップ42を一例として説明する。閾値Tを、たとえば1920であるとすると、閾値と刺激値マップ42との比較により、各エリアにおける刺激値のうち、閾値を超える刺激値Sとして2400が検出される。このとき減衰率Rは、R=(2400−1920)/2400=0.2と算出される。
【0057】
図4に示した例では、閾値Tを超える刺激値Sが、刺激値マップ42の各エリアの刺激値のうち1つのみであったので、その1つの刺激値Sに基づいて減衰率Rを算出すればよい。しかしながら、刺激値マップにおいて、2以上の刺激値が閾値Tを超える場合も考えられる。このような場合、人間の目に与える影響を考慮すると、当然ながら最も大きな刺激値を閾値以下にまで下げる必要があるので、減衰率Rは、2以上の刺激値Sの中で最大値となるSmaxを選択し、R=(Smax−T)/Smaxで算出する。
【0058】
ステップS32では、ステップS31で算出した減衰率Rを用いて、LEDバックライト制御マップ40を補正する。
【0059】
図4(a)に示したLEDバックライト制御マップ40を例として説明する。ステップS31で算出した減衰率Rに基づいて、LEDバックライト制御マップ40で設定された輝度制御値に乗算するための補正係数CをC=1−Rで算出する。LEDバックライト制御マップ40において、各エリアに設定された全ての輝度制御値(百分率)に対して同じ補正係数Cを一律に乗算して補正後のLEDバックライト制御マップを作成する。補正前の輝度制御値をL0(%)とすると、補正後の輝度制御値L1(%)は、L1=L0×Cで算出される。
【0060】
図7は、補正前のLEDバックライト制御マップ40と補正後のLEDバックライト制御マップ40aを示す図である。
図7(a)は、補正前のLEDバックライト制御マップ40を示し、
図7(b)は、補正後のLEDバックライト制御マップ40aを示す。上記の例では、減衰率Rが0.2であるので、補正係数はC=1−0.2=0.8と算出される。この補正係数Cを用いてLEDバックライト制御マップ40の各エリアの輝度制御値を補正する。補正前の最大の輝度制御値であった、位置(2,3)のエリアの輝度制御値は、100(%)に補正係数C=0.8を乗算して100(%)×0.8=80(%)に補正される。その他の全てのエリアについて同じ補正係数C=0.8を用いて輝度制御値を補正する。たとえば補正前の最小の輝度制御値であった、位置(1,1)のエリアおよび位置(3,1)のエリアの輝度制御値は、10(%)に補正係数C=0.8を乗算して10(%)×0.8=8(%)に補正され、位置(1,3)のエリア、位置(3,3)のエリアおよび位置(2,2)のエリアの輝度制御値は、50(%)に補正係数C=0.8を乗算して50(%)×0.8=40(%)に補正され、位置(1,2)のエリア、位置(3,2)のエリアおよび位置(2,1)のエリアの輝度制御値は、20(%)に補正係数C=0.8を乗算して20(%)×0.8=16(%)に補正される。
【0061】
図2のフローチャートにおいて、ステップS6では、補正後のLEDバックライト制御マップを用いてバックライト10の各LED光源に対して輝度制御を行う。補正前の制御マップでは、単に画像データに基づいて明るく表示すべきエリアの輝度をより高く、暗く表示すべきエリアの輝度をより低くしようとするので、刺激値が大きくなりすぎて画像を表示したときに、人間の目に悪影響を与えるおそれがあった。これに対して補正後の制御マップを用いてバックライト10の輝度制御を行うことで、刺激値は閾値以下となっているので、人間の目に悪影響を与えないように画像を表示することができる。
【0062】
図8は、補正前の刺激値マップ42と補正後の刺激値マップ42aを示す図である。
図8(a)は、補正前の刺激値マップ42を示し、
図8(b)は、補正後の刺激値マップ42aを示す。補正前の刺激値マップ42では、位置(2,3)のエリアにおける刺激値が閾値を超える2400であったが、補正後の刺激値マップ42aでは、位置(2,3)のエリアにおける刺激値が閾値と同じ1920に下がっている。
【0063】
このように、LEDバックライト制御マップを補正することで、コントラスト比を低下させることなく、人間の目に与える刺激を抑制した表示装置を実現することができる。
【0064】
なお、
図8(b)に示す補正後の刺激値マップ42aは、本発明の効果がわかりやすいように示しているだけであって、本発明のLEDバックライト制御処理において作成する必要はない。
【0065】
次に本発明の他の実施形態について説明する。上記の実施形態では、刺激値マップにおいて、刺激値と閾値とを比較し、閾値を超えるような刺激値が設定される場合は、人間の目に悪影響を与えるおそれがあるものとして、刺激値が閾値以下となるように輝度制御値を補正している。
【0066】
人間の目に悪影響を与える刺激としては、一定以上の光量を照射する場合だけではなく、光量の変化が急峻である場合も考えられる。したがって、本実施形態では、一定期間における刺激値の変化を検出し、変化量が閾値より大きいときは、変化量が小さくなるように輝度制御値の補正を行う。
【0067】
ここで、一定期間は、たとえば、LEDバックライト制御マップの更新周期と同じ1/60秒間である。この一定期間における刺激値の変化を検出し、変化量と予め定める閾値とを比較する。刺激値の算出を、少なくとも一定期間の開始時と終了時に行えば、2つの刺激値が得られるので、得られた刺激値の差分から変化量を求めることができる。なお、一定期間は、必ずしも1/60秒間である必要はなく、より長くすることもできる。1フレームの画像データの更新周期であるフレーム更新周期が一定期間よりも短い場合には、一定期間において、3以上の刺激値が得られる場合があるが、この場合には、一定期間において得られる全ての刺激値から最大値と最小値を抽出し、これらの差分から変化量を求めることができる。
【0068】
たとえば、変化量の閾値を「500」とし、一定期間において、刺激値が「200」から「1000」に変化する場合を想定する。一定期間における刺激値の変化量は、1000−200=800であり、閾値と比較すると、変化量「800」は閾値「500」を超える値であるので、輝度制御値の補正が必要であると判断する。補正は、上記の実施形態と同様に閾値と同じ値にまで刺激値が低下するように、補正係数を算出して、輝度制御値に補正係数を乗算すればよい。上記の例では、変化量の閾値が「500」であるので、変化後の刺激値である「1000」を200+500=700にまで低下させる。輝度制御値を低下させて、刺激値が「1000」から「700」となるように、輝度制御値の補正係数を算出する。なお、補正係数の算出は、変化量が閾値を超える1つのエリアに注目して行ったが、複数のエリアで変化量が閾値を超える場合は、最も変化量が大きなエリアを選択し、選択したエリアの刺激値の変化量が閾値以下となるように補正係数を算出する。また、1つのエリアに注目して算出した補正係数と同じ係数を用いて他のエリアについても補正することが好ましい。