特許第6016466号(P6016466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016466リチウムイオン電池用セパレータ用塗液およびリチウムイオン電池用セパレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016466
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用セパレータ用塗液およびリチウムイオン電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20161013BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20161013BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   H01M2/16 M
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   B32B5/24
   B32B27/12
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-133756(P2012-133756)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-258069(P2013-258069A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真
(72)【発明者】
【氏名】鍛治 裕夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 宏明
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−305783(JP,A)
【文献】 特開2010−146839(JP,A)
【文献】 特開2011−154937(JP,A)
【文献】 特開2010−202987(JP,A)
【文献】 特開2012−232518(JP,A)
【文献】 特表2013−511806(JP,A)
【文献】 特表2013−541128(JP,A)
【文献】 特開2011−082148(JP,A)
【文献】 特開2012−003873(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093368(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14 − 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布基材への塗工に用いるリチウムイオン電池用セパレータ用塗液であって、無機顔料、有機ポリマーバインダー、繊維長0.10mm〜1.20mm、繊維径1.0μm以下の非フィブリル化繊維を含み、非フィブリル化繊維の材質が熱可塑性樹脂であることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータ用塗液。
【請求項2】
不織布基材の少なくとも1面に、無機顔料、有機ポリマーバインダー、繊維長0.10mm〜1.20mm、繊維径1.0μm以下の非フィブリル化繊維を含む塗層を設けてなり、非フィブリル化繊維の材質が熱可塑性樹脂であることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用セパレータ用塗液およびかかる塗液を不織布基材に塗工してなるリチウムイオン電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(以下、「電池」と略記する場合がある)には、正負極間の接触を防ぐためのセパレータが用いられている。
【0003】
リチウムイオン電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と略記する場合がある)として従来用いられているポリエチレンまたはポリプロピレンからなる多孔性フィルムは、耐熱性が低く、安全上重大な問題を抱えている。すなわち、かかる多孔性フィルムをセパレータとして用いた電池は、内部短絡等の原因により電池内部で局部的な発熱が生じた場合、発熱部位周辺のセパレータが収縮して内部短絡がさらに拡大し、暴走的に発熱して発火・破裂等の重大な事象に至ることがある。
【0004】
このような問題に対し、ベーマイト等の無機粒子および繊維状物を含有してなるセパレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、2以上の層からなる不織布基材に無機粒子を含有せしめてなるセパレータが提案されており(例えば、特許文献2参照)、かかる技術の実施態様として、塗液に繊維状物を含有せしめることが提案されている(例えば、特許文献1の段落0036〜0041、0086、特許文献2の段落0084参照)。
【0005】
しかし、これら技術によってセパレータを製造する場合、塗工装置における強い動圧のために、塗液が基材の内部に押し込まれやすく、また、高速で乾燥させるための多量の熱風からくる風圧によっても、塗液が基材の内部に押し込まれやすい。とりわけ、セパレータを高速で製造しようとする場合、この傾向が顕著である。そのため、塗液を付与したのとは反対面から、押し込まれた塗液が滲出する現象(以下、「塗液の裏抜け」と記す場合がある)が生じ、塗工装置のロールを汚したり、ロールに付着した汚れがセパレータに再転写して、その表面を不均一にするために、これら技術によるセパレータは、高速で生産することが著しく困難であった。
【0006】
さらに、塗液に繊維を含有せしめた場合、塗工装置に繊維が付着し、対応する部分の塗液付着量が不十分になったり、過剰になったりして、均一な塗層が得られない現象(以下、「ストリーク」と記す場合がある)が発生する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−4439号公報
【特許文献2】特開2008−4442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、不織布基材上に、無機粒子および有機ポリマーバインダーを含む塗層を設けるにあたり、塗液が不織布基材から裏抜けするのを抑制し、もってセパレータの生産性を高められるリチウムイオン電池用セパレータ用塗液、および該塗液を不織布基材に塗工して得られる、生産性が高く、ピンホールの少ないセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、不織布基材への塗工に用いるリチウムイオン電池用セパレータ用塗液が、無機顔料、有機ポリマーバインダー、繊維長0.10mm〜1.20mm、繊維径1.0μm以下の非フィブリル化繊維を含み、非フィブリル化繊維の材質が熱可塑性樹脂であること、および、不織布基材の少なくとも1面に、無機顔料、有機ポリマーバインダー、繊維長0.10mm〜1.20mm、繊維径1.0μm以下の非フィブリル化繊維を含む塗層を設けてなり、非フィブリル化繊維の材質が熱可塑性樹脂であるリチウムイオン二次電池用セパレータによって、上記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリチウムイオン電池用セパレータ用塗液を用いることで、塗工した際に、塗液の裏抜けやピンホールの生成がなくなり、塗液の裏抜けにより塗工装置のロールが汚れたり、ピンホールが生じたりすることを防げるので、よって高速での塗工や高速での乾燥が可能になって、著しく高い生産性で、ピンホールの無いリチウムイオン電池用セパレータを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリチウムイオン電池用セパレータ用塗液(以下、「塗液」と略記する場合がある)は、無機顔料、有機ポリマーバインダーを含む塗液に、さらに繊維長0.10mm〜1.20mmで、繊維径1.0μm以下の非フィブリル化繊維(以下、「本発明に係わる非フィブリル化繊維」と略記する場合がある)が加えられてなることを特徴とする。本発明に係わる非フィブリル化繊維について、より好ましい繊維径は0.8μm以下であり、繊維径の下限値は0.1μmであることが好ましい。本発明の塗液は、細孔径の大きな不織布基材上に塗工された場合でも、本発明に係わる非フィブリル化繊維が不織布基材の繊維に交絡し、塗液を不織布基材中に保持して、裏抜けを抑制する。繊維径が1.0μmを超えると、質量あたりの繊維本数が少なくなり、塗液の裏抜け抑制の効果が発現しない。
【0012】
本発明に係わる非フィブリル化繊維の繊維長は0.10mm〜1.20mmであり、好ましくは0.10mm〜0.50mmである。本発明に係わる非フィブリル化繊維が短すぎると、基材の繊維に交絡しなくなり、本発明の効果である裏抜けの抑制が不十分になる。本発明に係わる非フィブリル化繊維の繊維長が長すぎると、塗工装置の表面に引っかかりやすくなり、ストリークの原因になる。本発明に係わる非フィブリル化繊維の繊維長が短すぎると、塗液の裏抜けを防止する効果が不十分になる。また、塗液に加えられる繊維がフィブリル化繊維であると、塗液の粘度が上昇して塗工操作が困難になるし、形成される塗層の細孔を閉塞して、製造されたセパレータを用いた電池の内部抵抗が高くなる。本発明に係わる非フィブリル化繊維の繊維径・繊維長は、繊維を走査型電子顕微鏡で観察し、画像解析により解析して求める。繊維径は等価円直径であり、繊維長は繊維の一端から他の一端までの経路長(繊維を直線に伸ばしたときの長さ)である。それぞれ10本の繊維について測定し、測定値のメジアン値をもって繊維径・繊維長とする。
【0013】
本発明の塗液において、本発明に係わる非フィブリル化繊維の含有量は、溶媒、分散媒を含む塗液全体に対して0.005質量%〜0.050質量%が好ましい。含有量が低すぎると、本発明の塗液に本発明に係わる非フィブリル化繊維を含有せしめた効果が十分に発現しない場合がある。逆に、含有量が高すぎると、塗工時にストリーク等の欠陥が発生しやすくなる。本発明に係わる非フィブリル化繊維の材質は、電池動作に影響を及ぼさない熱可塑性樹脂であれば特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド等の各種合成繊維が例示できる。一方、ガラス繊維やウィスカー状の各種無機繊維は、剛直すぎて塗液の裏抜けを抑制する作用が弱いし、塗工時のストリークも生じやすく、本発明に係わる非フィブリル化繊維としては使用できない。
【0014】
本発明の塗液およびリチウムイオン電池用セパレータに含まれる無機顔料は、セパレータの塗層に用いるのに好適なものであれば、特に制限はされない。その例としては、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ等のアルミナ、ベーマイト等のアルミナ水和物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等を挙げることができる。これらの中でも、リチウムイオン電池に用いられる電解質に対する安定性が高い点で、α−アルミナまたはアルミナ水和物が好ましく用いられる。
【0015】
本発明の塗液には、塗工層の強度を高めるため、有機ポリマーバインダーを含有せしめるが、かかる有機ポリマーバインダーは、セパレータの塗層に用いるのに好適なものであれば特に制限はされない。その例としては、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー、スチレン−ブタジエン系ポリマー等を挙げることができる。
【0016】
本発明のセパレータは、本発明の塗液を不織布基材に塗工してなる。本発明のセパレータの製造において、塗液を不織布基材に塗工する方法としては、各種の塗工装置を用いることができる。かかる塗工装置としては、グラビアコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ロールコーター等の各種コーターを用いることができる。塗液が裏抜けしてしまうため、塗工時に深さ方向の動圧が加わる塗工装置の使用が困難であった従来の塗液と比較して、より多様な塗工装置を生産性等の観点から選択可能になることも、本発明の塗液の優れた特徴である。
【0017】
本発明のセパレータに用いる不織布基材は特に制限されないが、耐熱性の高いセパレータを製造するという目的を達成するためには、不織布基材についても耐熱性の高いものであることが好ましく、かかる観点からは、融点の高い繊維から構成されることが好ましい。本発明のセパレータに用いる不織布基材を形成する繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル等のアクリル、6,6−ナイロン、6−ナイロン等のポリアミド等の各種合成繊維、木材パルプ、麻パルプ、コットンパルプ等の各種セルロースパルプ、レーヨン、リヨセル等のセルロース系再生繊維等が例示される。これらの中で、耐熱性、低吸湿性等の理由から、ポリエステルまたはポリプロピレンを主体とした不織布基材が好ましい。不織布基材を形成する繊維の好ましい繊維径は、用いる塗液の物性にも依存するが、2〜8μmの範囲にあることが好ましい。不織布基材の厚みとしては、15〜30μmの範囲にあることが好ましい。また、{1−(坪量÷繊維密度)÷厚み}×100で求められる不織布基材の空隙率は、低すぎると電池の内部抵抗が上昇し、高すぎると十分な機械的強度が得られないことから、30%〜70%程度が好ましい。
【0018】
本発明に用いる不織布基材の製造において、繊維をシート状に形成せしめる方法としては、スパンボンド法、メルトブロー法、静電紡糸法、湿式法等の各種製造方法によることができる。これらの中で、湿式法によれば、薄くて緻密な構造を得ることができるため好ましい。繊維間を接合する方法としては、ケミカルボンド法、熱融着法等の各種方法によることができる。これらの中で、熱融着法によることで、表面が平滑な不織布基材が得られることから好ましい。
【0019】
本発明の塗層を形成せしめるのに用いる塗液には、前記無機顔料および有機ポリマーバインダーの他に、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の各種分散剤、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキサイド等の各種増粘剤、各種の濡れ剤、防腐剤、消泡剤等の各種添加剤を、必要に応じ配合せしめることもできる。
【0020】
本発明のセパレータは、前記の不織布基材に、乾燥後の塗工量として好ましくは5〜20g/mの本発明の塗液を塗布してなる塗層が設けられている。塗工量が少なすぎると、ピンホールを十分に充填できないことがある。塗工量が多すぎると、内部抵抗が高くなりすぎることがあるし、セパレータの厚みが厚くなる。本発明のセパレータの厚みは好ましくは15〜35μmである。厚みが厚すぎると、内部抵抗が高くなりすぎることがあるし、厚みが薄すぎると、安全性が確保できないことがある。本発明のセパレータの製造に際し、本発明の塗液は不織布基材の片面にのみ塗工しても良いし、両面に塗工しても良い。また、各面において、2回以上塗布しても良い。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において%及び部は、断りのない限り全て質量基準である。
【0022】
<不織布基材の作製>
繊度0.1dtex(平均繊維径3.0μm)、繊維長3mmの配向結晶化PET短繊維50質量部と繊度0.2dtex(平均繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用PET短繊維(軟化点120℃、融点230℃)50質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、円網型抄紙機にて、湿式方式で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用PET系短繊維同士、およびバインダー用PET系短繊維と配向結晶化PET系短繊維の交点を融着させて引張強度を発現させ、目付12g/mの不織布とした。更に、この不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダーを使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度30m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚み18μmの不織布基材を作製した。用いたPET繊維の密度は1.38g/cm、この不織布基材の空隙率は52%である。
【0023】
<塗液Aの調製>
体積平均粒子径0.9μm、BET比表面積5.5m/gのベーマイト100部を、水150部に分散したものに、その1質量%水溶液の25℃における粘度が200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩2%水溶液75部を添加・攪拌混合し、ガラス転移点−18℃、体積平均粒子径0.2μmのカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合樹脂エマルション(固形分濃度50%)10部を添加・攪拌混合し、繊維径0.8μm、繊維長0.30mmのPET繊維の0.5%分散液20部を添加・混合し、最後に調整水を加えて固形分濃度を25%に調整し、塗液Aを作製した。
【0024】
<塗液B〜Mの調製>
添加する繊維を、表1に記載の通り変更した以外は、塗液Aと同様にして塗液B〜Mを調製した。なお、フィブリル化繊維であるアラミド、セルロースに関しては、繊維のフィブリル化されていない部分の径をもって、繊維径とした。
【0025】
【表1】
【0026】
<塗工>
前記不織布基材に、塗工装置としてリバースグラビアコーターを用い、30m/minのライン速度にて、液としての付着量が47g/mとなるように塗工した。塗工された基材は、リバースグラビアコーターに直結されたフローティングエアドライヤーで、90℃の熱風を吹き付けて乾燥させ、セパレータを得た。「塗液裏抜け」の評価として、塗工装置のガイドロールおよびフローティングエアドライヤー内部への塗工液の付着状態により、次の3段階に分類した。
【0027】
○:ガイドロールまたはフローティングエアドライヤー内部への塗工液の付着がほとんど無い。
△:ガイドロールまたはフローティングエアドライヤー内部に塗工液が付着しているが、セパレータに再転写はしない。
×:裏抜けした塗工液がガイドロールまたはフローティングエアドライヤー内部に付着しており、得られたセパレータに再転写による面の不均一性が生じている。
【0028】
さらに、得られた「塗層均一性」を、次の3段階に分類した。
○:塗層に欠陥が無く、均一である。
△:塗層に不均一性が認められるが、ストリークはない。
×:塗層にストリークがある。
【0029】
<評価用電池の作製>
前記の各セパレータを用い、正極にマンガン酸リチウム、負極にメソカーボンマイクロビーズ、電解液にヘキサフルオロリン酸リチウムの1mol/L炭酸ジエチル/炭酸エチレン(容量比7/3)混合溶媒溶液を用いた設計容量30mAhの評価用電池を作製した。
【0030】
<内部抵抗の評価>
作製した各電池について、60mA定電流充電→4.2V定電圧充電(1時間)→60mAで定電流放電→2.8Vになったら次のサイクル、のシーケンスにて、5サイクルの慣らし充放電を行った後、60mA定電流充電→4.2V定電圧充電(1時間)→6mAで30分間定電流放電(放電量3mAh)→放電終了直前の電圧を測定(電圧a)→60mA定電流充電→4.2V定電圧充電(1時間)→90mAで2分間定電流放電(放電量3mAh)→放電終了直前の電圧(電圧b)の測定を行い、内部抵抗Ω=(電圧a−電圧b)/(90mA−6mA)の式で内部抵抗を求めた。結果を表1に記す。
【0031】
○:内部抵抗4Ω未満
△:内部抵抗4Ω以上5Ω未満
×:内部抵抗5Ω以上
【0032】
塗液A〜Gの評価結果から分かるように、無機顔料と有機ポリマーバインダーを含む塗液に、更に繊維長0.10mm〜1.20mm、繊維径1.0μm以下の非フィブリル化繊維を含有せしめることによって、塗液の裏抜けを抑制でき、かつ得られる塗層均一性や製造されるセパレータの内部抵抗に優れる塗液となる。繊維長が0.50mm以下の塗液A〜DおよびGでは、塗層均一性が良好である。繊維径0.8μm以下の塗液A〜Fでは、塗液裏抜けが良好である。とりわけ繊維長が0.50mm以下かつ繊維径が0.8μm以下である塗液A〜Dは、塗液裏抜けおよび塗層均一性の両方において非常に良好である。
【0033】
これに対し、塗液に添加した繊維の繊維長が長い塗液Hや、繊維径が太い塗液Iでは、塗層均一性が悪い。繊維径が太い塗液Iでは、塗液裏抜けも悪い。繊維長が短いJでは、塗液の裏抜けが悪い。塗液に添加した繊維がフィブリル化繊維である塗液KおよびLは、塗層均一性が悪く、内部抵抗も高い。塗液に繊維が添加されていない塗液Mは、塗液の裏抜けが悪い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のリチウムイオン電池用セパレータ用塗液およびリチウムイオン電池用セパレータは、安全性が高く、かつ内部抵抗が良好なリチウムイオン電池の製造に用いることができる。