特許第6016471号(P6016471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016471
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】床シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20161013BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20161013BHJP
   E04F 15/10 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B32B27/30 101
   E04F15/10 104A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-137669(P2012-137669)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-723(P2014-723A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116481
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 利郎
(72)【発明者】
【氏名】新居 太志
【審査官】 岸 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−000562(JP,A)
【文献】 特開2006−299598(JP,A)
【文献】 特開2007−106972(JP,A)
【文献】 特開2007−085149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E04F15/00−15/22
D06N 1/00− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂製の表層シート、中間層シート、下層シートから選ばれたシートを積層して得られる床シート本体(ただし、表層シートを必ず含み、各層のシートを複数枚用いてもよい)の裏面に、糸の太さが0.10〜0.25mmで、糸の間隔が1.8〜2.5mmの寒冷紗を積層した、5℃における床材長手方向のテーバー剛性単位が460〜560[gf・cm]である塩化ビニル樹脂製床シート。
【請求項2】
塩化ビニル樹脂製の表層シート、中間層シート、下層シートから選ばれたシートを積層して得られる床シート本体(ただし、表層シートと下層シートを必ず含み、各層のシートを複数枚用いてもよい)であって、塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を50〜70重量部配合した材料からなる下層シートを最下層とする床シート本体の裏面に、糸の太さが0.10〜0.25mmで、糸の間隔が1.8〜2.5mmの寒冷紗を積層した、5℃における床材長手方向のテーバー剛性単位が460〜560[gf・cm]である塩化ビニル樹脂製床シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂製床シートに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂製床シートは、寸法安定性、施工時の脱気性、接着性の向上等の目的で床シート本体の裏面に繊維層が積層される。繊維層として寒冷紗を用いることも公知であり、コストの点から広く利用されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−228600号公報
【特許文献2】特開平10−45962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
寒冷紗を積層する利点は、床シートの寸法安定性の向上、施工時の空気の巻き込み防止、接着性の向上等であるが、寒冷紗を積層すると床シート自体の柔軟性が低下し、特に、冬季の施工性が損なわれるという欠点があった。
そこで、本発明は、冬季においても施工性がよく、且つコストを削減できる、寒冷紗を用いた塩化ビニル樹脂製床シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、寒冷紗の糸の太さと糸の間隔を特定の範囲に限定することにより上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
即ち、上記課題は、次の1)〜2)の発明によって解決される。
1) 塩化ビニル樹脂製の表層シート、中間層シート、下層シートから選ばれたシートを積層して得られる床シート本体(ただし、表層シートを必ず含み、各層のシートを複数枚用いてもよい)の裏面に、糸の太さが0.10〜0.25mmで、糸の間隔が1.8〜2.5mmの寒冷紗を積層した、5℃における床材長手方向のテーバー剛性単位が460〜560[gf・cm]である塩化ビニル樹脂製床シート。
2) 塩化ビニル樹脂製の表層シート、中間層シート、下層シートから選ばれたシートを積層して得られる床シート本体(ただし、表層シートと下層シートを必ず含み、各層のシートを複数枚用いてもよい)であって、塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を50〜70重量部配合した材料からなる下層シートを最下層とする床シート本体の裏面に、糸の太さが0.10〜0.25mmで、糸の間隔が1.8〜2.5mmの寒冷紗を積層した、5℃における床材長手方向のテーバー剛性単位が460〜560[gf・cm]である塩化ビニル樹脂製床シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、柔軟性が良好で、冬季の低温下でも施工性が良く、且つコストを抑えた塩化ビニル樹脂製床シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
塩化ビニル樹脂製床シートは周知であり、床シート本体の裏面に塩化ビニル樹脂を主成分とする下層シートを積層することも周知であるが、本発明は、特定の要件を満たす寒冷紗を積層した点に特徴を有する。
本発明で使用する寒冷紗の糸の種類は特に限定されず、市販されている周知のものから適宜選択すれば良い。例えば、綿、麻、ポリエステル、レーヨン等の単独糸、又は、これらを組み合わせた混合糸が挙げられる。特にポリエステルとレーヨンを一定比率で使用した寒冷紗は入手が容易である。
寒冷紗の糸の太さは、0.10〜0.25mmとする。0.10mmよりも細いと十分な寸法安定性が得られず、0.25mmよりも太いとコストが高くなる。
また、寒冷紗の目の粗さ、即ち糸の間隔は、1.8〜2.5mmとする。1.8mmよりも狭いと、施工に適した柔軟性が得られず、2.5mmよりも広いと、十分な寸法安定性が得られない。
上記寒冷紗を適用する塩化ビニル樹脂製床シートの種類は特に限定されず、例えば導電性を付与した帯電防止塩化ビニル樹脂製床シートや耐荷重性を付与した塩化ビニル樹脂製床シートにも適用できる。
また、床シート本体の最下層として塩化ビニル樹脂からなる下層シートを積層する場合には、塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を50〜70重量部配合したものを使用する必要がある。可塑剤の配合割合がこの範囲を外れると、冬季の施工性が悪くなる。
【実施例】
【0008】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0009】
実施例1〜15、比較例1〜6
カレンダー加工機を用いて、巾1850mm、厚さ0.5mmの下記の床用塩化ビニル樹脂製シートを作製した。
・表層シート(模様入り)
・中間層シート(無地)
・下層シート(無地)

各シートの代表的配合例は表1に示す通りである。(表1中の数値は重量部)
【表1】
次に、ラミネート装置を用い、表層シートに中間層シートを2枚積層し、更に下層シートを積層して床シート本体とし、その裏面(下層シートの下)にポリエステルとレーヨンの混合糸からなる寒冷紗(栗田煙草苗育布製造社製)を積層して、厚さ約2mmの実施例及び比較例の塩化ビニル樹脂製床シートを作製した。
寒冷紗の糸の太さ、糸の間隔、及び下層シートの可塑剤量は、表2、表3に示すとおりである。
【0010】
実施例16
実施例1で用いたのと同じ表層シート4枚を積層して床シート本体とし、その裏面にポリエステルとレーヨンの混合糸からなる寒冷紗(栗田煙草苗育布製造社製)を積層して、厚さ約2mmの塩化ビニル樹脂製床シートを作製した。
【0011】
実施例17
実施例1で用いたのと同じ表層シートに中間層シート3枚を積層して床シート本体とし、その裏面にポリエステルとレーヨンの混合糸からなる寒冷紗(栗田煙草苗育布製造社製)を積層して、厚さ約2mmの塩化ビニル樹脂製床シートを作製した。
【0012】
上記実施例及び比較例の各塩化ビニル樹脂製床シートについて、以下のようにして特性を評価した。施工性については、冬季の低温下での施工性を評価するため5℃で行った。
結果を纏めて表2、表3に示す。
【0013】
<施工性>
施工性は、ISO2493に規定するTaber社のStiffness Tester Model 150−Dを使用し、5℃における床材長手方向(Y方向)のテーバー剛性単位[gf・cm]で評価した。経験上、5℃でのテーバー剛性単位が460〜560[gf・cm]の範囲にあると、施工者は床シートを取扱いやすいと感じる。しかし、560[gf・cm]を超えると、硬くて取扱いにくいと感じ、460[gf・cm]未満では、柔かくて取扱いにくいと感じる。
そこで、次の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:テーバー剛性単位が460〜560の場合
△:テーバー剛性単位が460未満、又は560を超える場合
【0014】
<寸法安定性>
寸法安定性は、JIS A 1454に規定する加熱寸法変化試験に基づき、次の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:寸法変化率が0.66%以下のもの
△:寸法変化率が0.66%を超え、0.70%以下のもの
×:寸法変化率が0.70%を超えるもの
【0015】
<コスト>
コストは、糸の間隔が1.6mmのごく一般的な寒冷紗を使用した場合を100として、コスト削減効果を、次の基準で評価した。
〔評価基準〕
○:コスト削減効果が5%以上
△:コスト削減効果が3%以上、5%未満
×:コスト削減効果が3%未満
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】