特許第6016478号(P6016478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016478電解コンデンサ用の圧力弁、および、これを用いた電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016478
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用の圧力弁、および、これを用いた電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/12 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   H01G9/12 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-145508(P2012-145508)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-11249(P2014-11249A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安坂 毅
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−015391(JP,A)
【文献】 特開2004−095457(JP,A)
【文献】 特開2003−297324(JP,A)
【文献】 特開平11−162798(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/158822(WO,A1)
【文献】 特開平09−167606(JP,A)
【文献】 実開昭52−134047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 2/08
H01G 2/24
H01G 9/00−9/004
H01G 9/012
H01G 9/04
H01G 9/052
H01G 9/06−9/14
H01G 9/15−9/18
H01G 9/21−11/86
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサにおけるコンデンサ素子を収容するケースを封止する封口体に設けられ、前記ケース内のガスを放出する、電解コンデンサ用の圧力弁であって、
薄肉部および前記薄肉部の外側に設けられた前記薄肉部よりも厚みが大きい厚肉部を含む作動部を有し、
前記作動部のうち少なくとも前記薄肉部が、ガス透過性を有する材料からなり、
前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部の外縁が、角部を有さず、前記薄肉部の内側に向かって凸となる複数の第1円弧を有する形状であることを特徴とする、圧力弁。
【請求項2】
前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部の外縁が、前記薄肉部の外側に向かって凸となる複数の第2円弧をさらに有する形状であることを特徴とする、請求項1に記載の圧力弁。
【請求項3】
前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部の外縁が、前記薄膜部の中心線に関して対称な形状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧力弁。
【請求項4】
前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部が十字状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧力弁。
【請求項5】
前記作動部の厚み方向から見て、前記作動部が円形であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧力弁。
【請求項6】
前記厚肉部よりも厚みが大きく、前記作動部を当該作動部の外縁から支持する環状の支持部をさらに備えたことを特徴とする、請求項5に記載の圧力弁。
【請求項7】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容するケースと、
前記ケースを封止する封口体と、
前記封口体に設けられた、請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧力弁と、
を備えたことを特徴とする、電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用の圧力弁、および、当該圧力弁を用いた電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサに関する技術文献として、下記特許文献1がある。特許文献1には、電解コンデンサの長寿命化を図るため、内部ガス放出用の弁として圧力弁およびガス抜き弁という2つの弁を設け、通常使用時はガス抜き弁で内部ガスを適宜放出し、急激な内圧上昇時には圧力弁を作動(破断)させて内部ガスを放出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−108185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、内部ガスを放出するのに圧力弁およびガス抜き弁という2つの弁を用いているため、部品点数が多く、その分コストも上昇してしまう。
当該問題を回避するため、1つの弁のみを用いることも考えられるが、この場合、通常使用時に生じる内部ガスの放出に対応するためには、弁の厚みを小さくする必要がある。
しかしながら、弁の厚みを小さくすると、弁が破断し易くなり、電解コンデンサの長寿命化を実現することができない。
【0005】
本発明の目的は、内部ガス放出用の部品の点数を抑えつつ電解コンデンサの長寿命化を実現することができる、電解コンデンサ用の圧力弁、および、当該圧力弁を用いた電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1観点によると、電解コンデンサにおけるコンデンサ素子を収容するケースを封止する封口体に設けられ、前記ケース内のガスを放出する、電解コンデンサ用の圧力弁であって、薄肉部および前記薄肉部の外側に設けられた前記薄肉部よりも厚みが大きい厚肉部を含む作動部を有し、前記作動部のうち少なくとも前記薄肉部が、ガス透過性を有する材料からなり、前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部の外縁が、角部を有さず、前記薄肉部の内側に向かって凸となる複数の第1円弧を有する形状であることを特徴とする、圧力弁が提供される。
【0007】
本発明の第2観点によると、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容するケースと、前記ケースを封止する封口体と、前記封口体に設けられた第1観点に係る圧力弁と、を備えたことを特徴とする、電解コンデンサが提供される。
【0008】
上記第1および第2観点によれば、内部ガス放出用の弁として1の圧力弁を用いて、通常使用時と急激な内圧上昇時との両方に対応することができる。
具体的には、通常使用時には、動作電流等によってケース内部に発生したガスを、薄肉部を介して外部に放出することができる一方、急激な内圧上昇時には、薄肉部中央が破断し、圧力弁を作動させることができる。
これは、薄肉部が、ガス透過性を有する材料からなるとともに、通常使用時等の比較的低い内圧では破断し難い構成(即ち、薄肉部の外縁が、薄肉部の内側に向かって凸となる複数の第1円弧を有する形状であり、丸みを帯びた形状であるため、薄肉部の外縁の角部に局所的に応力が集中することを回避でき、内圧上昇時に、薄肉部の外縁に応力が集中せず、効果的に応力が分散される構成)を有するためである。一方、急激な内圧上昇時には、応力が集中する薄肉部の中心部分が破断し、圧力弁を作動させることができる。
したがって、上記第1および第2観点によれば、内部ガス放出用の部品の点数を抑えつつ、電解コンデンサの長寿命化を実現することができる。
【0009】
前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部の外縁が、前記薄肉部の外側に向かって凸となる複数の第2円弧をさらに有する形状であってよい。この構成によれば、薄肉部の外縁がさらに丸みを帯びた形状になることから、薄肉部の外縁の角部に局所的に応力が集中することをより確実に回避でき、内圧上昇時に、薄肉部の外縁に応力が集中せず、より効果的に応力が分散される。
【0010】
前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部の外縁が、前記薄膜部の中心線に関して対称な形状であってよい。この構成によれば、薄肉部全体において応力をより効果的に分散することができる。
【0011】
前記作動部の厚み方向から見て、前記薄肉部が十字状であってよい。この構成によれば、薄肉部の構成の複雑化を回避しながら、内部ガス放出用の部品の点数を抑えつつ電解コンデンサの長寿命化を実現するという効果を得ることができる。また、この構成によれば、加工し易いうえ、薄肉部と厚肉部との境目が長くなり破断部分が増えるので、破断が確実に行われる。
【0012】
前記作動部の厚み方向から見て、前記作動部が円形であってよい。この構成によれば、作動部全体において応力をより効果的に分散することができ、電解コンデンサのさらなる長寿命化を実現することができる。
【0013】
第1観点に係る圧力弁は、前記厚肉部よりも厚みが大きく、前記作動部を当該作動部の外縁から支持する環状の支持部をさらに備えてよい。この構成によれば、支持部を介して圧力弁をケースに確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、内部ガス放出用の部品の点数を抑えつつ、電解コンデンサの長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの平面図、(b)は本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの全体構成を示す(a)のIB−IB線に沿った部分断面図である。
図2】コンデンサ素子の分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る圧力弁を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)に示す矢印IIIBの方向から見た側面図、(c)は(a)に示すIIIC−IIIC線に沿った断面図、(d)は斜視図である。
図4】本発明の比較例に係る圧力弁を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)に示す矢印IVB−IVB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ1の全体構成について説明する。電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2、ケース3a、封口体3b、底板4、スリーブ5、固定材6、端子7a,7b、および圧力弁10を含む。
【0018】
ケース3aは、コンデンサ素子2を収容するものであり、開口部に封口体3bが嵌合されている。封口体3bは、ケース3aを封止している。ケース3aは金属(アルミニウム等)からなり、封口体3bは絶縁材料(変性フェノール樹脂等)からなる。
封口体3bの上部周縁には、弾性材料(ゴム等)からなるパッキン3xが設けられている。パッキン3xは、封口体3bとケース3aとの隙間からケース3a内のガスが漏出するのを防止する機能を有する。ケース3aの上端は、パッキン3xに加締固定されている。
【0019】
底板4は、絶縁材料(難燃性ポリエステル等)からなる円形のフィルムであり、ケース3aの底部下面に重なるように配置されている。スリーブ5は、絶縁材料(ポリオレフィン等)からなる略円筒状の部材であり、ケース3aの側部周面、底板4の下部周縁、およびケース3aの上部周縁を覆っている。スリーブ5の下部は、底板4に固定されている。
【0020】
固定材6は、コンデンサ素子2をケース3a内に固定するものであり、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン等)からなる。
【0021】
端子7a,7bおよび圧力弁10は、封口体3bに設けられている。端子7a,7bは、封口体3bの厚み方向から見て、封口体3bの中心に関して点対称となる位置に、互いに離隔して設けられている。端子7a,7bは金属(アルミニウム等)からなり、陰極端子7aはコンデンサ素子2の陰極リード2a、陽極端子7bはコンデンサ素子2の陽極リード2bとそれぞれ接続されている。
封口体3bには、封口体3bの厚み方向から見たときの中心(端子7a,7b間の中央)と外縁との間に、ケース3aの内部と外部とを連通する貫通孔3b1が形成されている。圧力弁10は、当該貫通孔3b1を塞ぐように設けられており、その上面に設けられたロックワッシャ8によって、封口体3bに固定されている。圧力弁10は、ケース3a内のガスを放出する機能を有する。
【0022】
次いで、図2を参照し、コンデンサ素子2の構成について詳細に説明する。
【0023】
コンデンサ素子2は、陰極リード2aおよび陽極リード2bがそれぞれ取り付けられた陰極箔2xおよび陽極箔2yを、絶縁材料からなるセパレータ(クラフト紙等)2zを介して巻回し、これにより形成された巻回体の外周を素子止めテープ2tで固定し、その後巻回体を駆動用電解液に含浸させることにより、形成されている。陰極箔2xおよび陽極箔2yはアルミニウム箔の表面を粗面化したものであり、陽極箔2yは当該表面に陽極酸化皮膜を形成したものである。
【0024】
次いで、図3を参照し、圧力弁10の構成について詳細に説明する。
【0025】
圧力弁10は、略円盤状であり、作動部11、および、作動部11を当該作動部11の外縁から支持する環状の支持部12を含む。圧力弁10は、ガス透過性および可撓性を有する材料(シリコンゴム等)からなり、作動部11および支持部12が一体になるよう形成されている。
【0026】
作動部11は、作動部11の厚み方向(図3(a)の紙面に垂直な方向)から見て、円形である。作動部11は、薄肉部11a、および、薄肉部11aの外側に設けられた薄肉部11aよりも厚みが大きい厚肉部11bを含む。
厚肉部11bは、薄肉部11aに対して厚み方向の両方向(図3(c)の上下方向)に同じ量だけ突出している。作動部11の厚み方向から見て、薄肉部11aは十字状であり、厚肉部11bの外縁は円形である。厚肉部11bは、薄肉部11aの周囲において、薄肉部11aを画定するように設けられている。
作動部11の厚み方向から見て、薄肉部11aの外縁は、薄肉部11aの中心Oに向かって(即ち、薄肉部11aの内側に向かって)凸となる複数の第1円弧a1と、薄肉部11aの中心Oから離隔する方向に(即ち、薄肉部11aの外側に向かって)凸となる複数の第2円弧a2とを有する形状である。第2円弧a2は十字の各先端を構成し、第1円弧a1は十字の交差部分を構成している。各第2円弧a2は厚肉部11bの外縁と接している。
【0027】
支持部12は、封口体3bに支持される部分であり、本体12aおよびリブ12bを含む。本体12aの厚みは、一定であり、厚肉部11bの厚みよりも大きい。リブ12bの厚みは、薄肉部11aの厚みよりも大きく、厚肉部11bの厚みよりも小さい。
リブ12bは、本体12aの外周端面から外側に突出している。リブ12bの角部には、アールが設けられている。
【0028】
通常使用時に動作電流等によってケース3a内部に発生するガス(内部ガス)は、徐々に発生するため、貫通孔3b1を通って圧力弁10を下側からゆっくりと押圧し、第1所定圧力以上になると、薄肉部11aを透過してケース3a外部に放出される。
一方、内部ガスの圧力(内圧)が急激に上昇し、内圧が第2所定圧力(>第1所定圧力)以上になると、薄肉部11aは、盛り上がるように変形し、最終的に亀裂が生じて破断する。このとき、応力的に弱い薄肉部11aに、先に亀裂が生じる。厚肉部11bには、多少変形が生じても、亀裂は生じない。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0030】
実施例の試料1〜3で用いた圧力弁は、上述の実施形態の圧力弁10と同じ構成であり、図3(c)に示すように、寸法については、R1(作動部11の直径)=6mm、R2(本体12aの外径)=12mm、D0(本体12aの厚み)=2mm、D1(厚肉部11bの薄肉部11aに対する上方への突出量)=0.45mm、D2(厚肉部11bの薄肉部11aに対する下方への突出量)=0.45mm、D3(薄肉部11aの厚み)=0.3mmである。また、リブ12bの突出量は0.5mm、リブ12bのアールの半径は0.5mmである。
【0031】
比較例の試料1〜3で用いた圧力弁は、図4に示す圧力弁50と同じ構成である。
圧力弁50は、略円盤状であり、作動部51、および、作動部51を当該作動部51の外縁から支持する環状の支持部52を含む。
圧力弁50は、ガス透過性および可撓性を有する材料(シリコンゴム等)からなり、作動部51および支持部52が一体になるよう形成されている。
作動部51は、作動部51の厚み方向(図4(a)の紙面に垂直な方向)から見て、円形であり、一定の厚みを有する。
支持部52は、本体52aおよびリブ52bを含む。本体52aの厚みは、一定であり、作動部51の厚みよりも大きい。リブ52bの厚みは、作動部51の厚みよりも大きく、本体52aの厚みよりも小さい。
リブ52bは、本体52aの外周端面から外側に突出している。リブ52bの角部には、アールが設けられている。
図4(b)に示すように、寸法については、R1(作動部51の直径)=6mm、R2(本体52aの外径)=12mm、D0(本体52aの厚み)=2mm、D3(作動部51の厚み)=0.45mmである。また、リブ52bの突出量は0.5mm、リブ52bのアールの半径は0.5mm、作動部51と支持部52との境界に設けられたアールの半径は0.2mmである。
【0032】
実施例の試料1〜3および比較例の試料1〜3は、直径76mm・高さ140mm・定格電圧450Vの電解コンデンサに上記の圧力弁を設けたものである。当該電解コンデンサを周囲温度115℃で定格電圧を印加放置し、信頼性試験を行った。放置する試験前(初期)と2000時間放置した後(2000時間後)とにおける、各パラメータを表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
「作動部の状態」は、目視により判断した。作動部が破断したもの(比較例の試料1,3)では、内部ガスの放出により、電解コンデンサの重量が大きく減少しているのが分かる。一方、実施例の試料1〜3では、作動部が破断せず、電解コンデンサの重量の変化量は薄肉部を介したガス透過分の−3.5g〜−3.0g程度に抑えられている。
【0035】
表1に示すように、実施例の試料1〜3では圧力弁が破断しなかったが、比較例の試料1〜3のうち2/3(比較例の試料1、3)において圧力弁が破断した。これにより、本発明に係る圧力弁は、比較例に係る圧力弁に比べ、高圧に耐えることができ、長寿命化を実現できることが分かる。
【0036】
以上に述べたように、本実施形態の圧力弁10および電解コンデンサ1によれば、内部ガス放出用の弁として1の圧力弁10を用いて、通常使用時と急激な内圧上昇時との両方に対応することができる。
具体的には、通常使用時には、動作電流等によってケース3a内部に発生したガスを、薄肉部11aを介して外部に放出することができる一方、急激な内圧上昇時には、薄肉部11aが破断し、圧力弁10を作動させることができる。
これは、薄肉部11aが、ガス透過性を有する材料からなるとともに、通常使用時等の比較的低い内圧では破断し難い構成(即ち、薄肉部11aの外縁が、薄肉部11aの内側に向かって凸となる複数の第1円弧a1を有する形状であり、丸みを帯びた形状であるため、薄肉部11aの外縁の角部に局所的に応力が集中することを回避でき、内圧上昇時に、薄肉部の11a外縁に応力が集中せず、効果的に応力が分散される構成)を有するためである。一方、急激な内圧上昇時には、応力が集中する薄肉部11aの中心部分が破断し、圧力弁10を作動させることができる。
したがって、本実施形態によれば、内部ガス放出用の部品の点数を抑えつつ、電解コンデンサ1の長寿命化を実現することができる。
【0037】
作動部11の厚み方向から見て、薄肉部11aの外縁が、薄肉部11aの外側に向かって凸となる複数の第2円弧a2をさらに有する形状である。この構成によれば、薄肉部11aの外縁がさらに丸みを帯びた形状になることから、薄肉部11aの外縁の角部に局所的に応力が集中することをより確実に回避でき、内圧上昇時に、薄肉部11aの外縁に応力が集中せず、より効果的に応力が分散される。
【0038】
作動部11の厚み方向から見て、薄肉部11aの外縁が、薄肉部11aの中心Oに関して対称な形状である。この構成によれば、薄肉部11a全体において応力をより効果的に分散することができる。
【0039】
作動部11の厚み方向から見て、薄肉部11aが十字状である。この構成によれば、薄肉部11aの構成の複雑化を回避しながら、内部ガス放出用の部品の点数を抑えつつ電解コンデンサ1の長寿命化を実現するという効果を得ることができる。また、この構成によれば、加工し易いうえ、薄肉部と厚肉部との境目が長くなり破断部分が増えるので、破断が確実に行われる。
【0040】
作動部11の厚み方向から見て、作動部11が円形である。この構成によれば、作動部11全体において応力をより効果的に分散することができ、電解コンデンサ1のさらなる長寿命化を実現することができる。
【0041】
圧力弁10は、厚肉部11bよりも厚みが大きく、作動部11を当該作動部11の外縁から支持する環状の支持部12をさらに備えている。この構成によれば、支持部12を介して圧力弁10をケース3aに確実に固定することができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0043】
圧力弁において、作動部および支持部は、一体になるよう形成されていることに限定されず、別々に形成された後に接合されてもよい。
圧力弁は、支持部を有さず、作動部のみを有してもよい。
作動部の形状は、円形に限定されず、任意の形状(楕円形等)であってよい。
薄肉部の形状は、十字状であることに限定されず、大字状、Y字状、T字状、X字状、K字状、放射状、多角形状、十字状または上記形状を複数組み合わせた形状等、任意である。
また、薄肉部の外縁は、上述の実施形態では、作動部の厚み方向から見て、薄膜部の中心線(中心を通る線)に関して線対称な形状であり、且つ、薄膜部の中心Oに関して点対称な形状であるが、薄膜部の中心線または中心に対して対称な形状で有ることに限定されない。
厚肉部は、上述の実施形態では薄肉部に対して厚み方向の両方向に同じ量だけ突出しているが、各方向への突出量は任意である。
圧力弁、および、電解コンデンサの各部を構成する材料は、上述したものに限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3a ケース
3b 封口体
10 圧力弁
11 作動部
11a 薄肉部
11b 厚肉部
12 支持部
a1 第1円弧
a2 第2円弧
O 中心
図1
図2
図3
図4