(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
扱室内に、回転駆動される扱胴と、その扱胴の下方外周部に沿う略半円筒状の受網とが備えられ、刈取部にて刈り取られた作物の全部が前記扱室に投入されるように構成されている普通型コンバインの脱穀装置であって、
前記扱室の上方を覆う天板が、前記扱胴の回転軸芯方向視で前記扱胴の上方外周部に覆い被さるように形成され、
前記扱室の左右両横側における上部側箇所に、前記扱胴の軸芯方向に沿って延びる支持フレームが備えられ、
前記受網の扱胴回転方向下手側の部分が、前記扱胴の上方側に重なり合うように、前記扱胴の軸芯方向視で扱胴回転方向に沿う湾曲形状に構成されて、前記受網の扱胴回転方向下手側の端部は、前記受網の扱胴回転方向上手側の端部よりも高い位置であって且つ前記天板の扱胴回転方向上手側の端部よりも高い位置に位置し、
前記受網の扱胴回転方向上手側の端部は、前記左右両側の支持フレームのうち、前記受網の扱胴回転方向上手側の部分が位置する側の第一支持フレームよりも低い位置であって且つ扱胴幅方向で前記第一支持フレームよりも前記扱胴の中心に近い位置に位置し、
前記第一支持フレームと前記受網の扱胴回転方向上手側の端部とに亘って設けられ、前記扱胴の中心側下がりに傾斜する案内部が備えられ、
前記天板に、前記受網の扱胴回転方向下手側の端部を受止め支持する受網支持部が備えられ、前記天板における前記受網支持部よりも扱胴回転方向下手側に位置する天板下手側部分は、前記受網の扱胴回転方向下手側の端部と前記第一支持フレームとに亘っており、
前記天板下手側部分における前記扱胴の左右方向中央位置よりも扱胴回転方向上手側に位置する部位には脱穀処理物を前記扱胴の軸芯方向に沿って移送させる送塵弁を設けない状態で、前記天板下手側部分における前記扱胴の左右方向中央位置よりも扱胴回転方向下手側に位置する部位に、前記送塵弁が備えられている普通型コンバインの脱穀装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
普通型コンバインの脱穀装置では、扱室内に投入される作物は、自重により受網の下端部付近に留まろうとするが、処理物は回転する扱胴によって連れ回りすることにより、受網の下端部付近の箇所よりも扱胴回転方向下手側に位置する領域において作物が滞留し易いものとなる。
【0005】
上記従来構成では、受網が、扱胴回転方向下手側の端部と扱胴回転方向上手側の端部とが同じ又は略同じ高さに位置する状態で備えられものであるから、受網の下端部付近の箇所から扱胴回転方向下手側端部に至るまでの領域は、扱胴回転方向に沿って短めのものとなり、その結果、例えば、投入される作物の量が多くなったような場合に、受網の下端部付近の箇所よりも扱胴回転方向下手側に位置する領域において、多く滞留する処理物の脱穀処理が充分に行われないおそれがあり、脱穀処理能力が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、脱穀処理能力の向上を図ることが可能な普通型コンバインの脱穀装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る普通型コンバインの脱穀装置は、扱室内に、回転駆動される扱胴と、その扱胴の下方外周部に沿う略半円筒状の受網とが備えられ、刈取部にて刈り取られた作物の全部が前記扱室に投入されるように構成されているものであって、その第1特徴構成は、
前記扱室の上方を覆う天板が、前記扱胴の回転軸芯方向視で前記扱胴の上方外周部に覆い被さるように形成され、
前記扱室の左右両横側における上部側箇所に、前記扱胴の軸芯方向に沿って延びる支持フレームが備えられ、
前記受網の扱胴回転方向下手側の部分が、前記扱胴の上方側に重なり合うように、前記扱胴の軸芯方向視で扱胴回転方向に沿う湾曲形状に構成されて、前記受網の扱胴回転方向下手側の端部は、
前記受網の扱胴回転方向上手側の端部よりも高い位置であって且つ前記天板
の扱胴回転方向上手側
の端部よりも高い位置
に位置し、
前記受網の扱胴回転方向上手側の端部は、前記左右両側の支持フレームのうち、前記受網の扱胴回転方向上手側の部分が位置する側の第一支持フレームよりも低い位置であって且つ扱胴幅方向で前記第一支持フレームよりも前記扱胴の中心に近い位置に位置し、
前記第一支持フレームと前記受網の扱胴回転方向上手側の端部とに亘って設けられ、前記扱胴の中心側下がりに傾斜する案内部が備えられ、
前記天板に、前記受網の扱胴回転方向下手側の端部を受止め支持する受網支持部が備えられ、前記天板における前記受網支持部よりも扱胴回転方向下手側に位置する天板下手側部分は、前記受網の扱胴回転方向下手側の端部と前記第一支持フレームとに亘っており、
前記天板下手側部分における前記扱胴の左右方向中央位置よりも扱胴回転方向上手側に位置する部位には脱穀処理物を前記扱胴の軸芯方向に沿って移送させる送塵弁を設けない状態で、前記天板下手側部分における前記扱胴の左右方向中央位置よりも扱胴回転方向下手側に位置する部位に、前記送塵弁が備えられている点にある。
【0008】
第1特徴構成によれば、受網は、その扱胴回転方向下手側の端部が扱胴回転方向上手側の端部よりも所定量高く位置する状態で配備されている。つまり、受網は、下端部に位置する箇所から扱胴回転方向下手側の端部に至るまでの扱胴回転方向下手側に位置する領域が、扱胴回転方向に沿って長く形成されることになる。
【0009】
このように、扱胴回転方向下手側に位置する領域が、扱胴回転方向に沿って長く形成されることから、その領域において、扱胴と受網との協働による脱粒処理を促進させることが可能となって、脱穀処理を充分に行わせて脱穀処理能力を向上させることが可能となる。
本発明の第2特徴構成は、前記送塵弁は、前記扱胴の回転軸芯方向視で、前記扱胴の回転軸芯を挟んで、前記受網の扱胴回転方向の中央部と反対側の位置に配置されている点にある。
本発明の第3特徴構成は、前記第一支持フレームよりも低い位置であって且つ扱胴幅方向で前記第一支持フレームよりも前記扱胴の中心に近い位置に、前記扱胴の軸芯方向に沿って延び、かつ、前記受網の扱胴回転方向上手側の端部が連結支持された受網支持フレームが備えられ、
前記案内部は、前記第一支持フレームと前記受網支持フレームとに亘っている点にある。
【0010】
本発明の第
4特徴構成は、前記天板
の扱胴回転方向上手側
の部分の内側面と、前記受網
の扱胴回転方向下手側
の部分との間に、処理物通過用の第1空間が形成されている点にある。
【0011】
【0012】
【0013】
本発明の第
5特徴構成は、
前記左右両側の支持フレームのうち、前記受網
の扱胴回転方向下手側
の部分が対向する
第二支持フレームが、前記扱室の側壁の外方側に位置する状態で配備され、
前記受網
の扱胴回転方向下手側
の部分と前記扱室の側壁との間に、前記第1空間と連通する処理物通過用の第2空間が形成されている点にある。
【0014】
第
5特徴構成によれば、扱室の左右両横側における上部側箇所に備えられた扱胴の軸芯方向に沿って延びる支持フレームにより受網や扱胴等の荷重が支持される。そして、左右両側の支持フレームのうちの扱胴回転方向下手側部分が対向する支持フレームが、扱室の側壁の外方側に位置する状態で備えられるので、扱胴の軸芯方向に沿って延びる支持フレームによって、受網や扱胴等の荷重を有効に支持することができる。
又、受網の扱胴回転方向下手側部分と扱室の側壁との間に、処理物通過用の空間が形成されるので、受網の扱胴回転方向下手側部分において、受網と扱胴とによる脱粒処理が行われた後の処理物が、受網の扱胴回転方向下手側部分と扱室の側壁との間に形成された処理物通過用の空間を通して扱室の下方側の選別部等に供給される。
従って、扱胴の軸芯方向に沿って延びる支持フレームによって、受網や扱胴等の荷重を有効に支持するようにしながら、扱胴回転方向下手側に位置する領域を扱胴回転方向に沿って長く形成することで、扱胴と受網との協働による脱粒処理を促進させることができるとともに、脱粒処理が行われた後の処理物が扱室の下方側の選別部等に良好に供給されることになり、脱穀処理能力をより一層向上させることができる。
【0015】
【0016】
【0017】
本発明の第
6特徴構成は、
前記受網は、前記扱胴に設けられた扱歯の外周端が描く回動軌跡に沿う状態で設けられ、
前記天板における前記受網支持部より
も扱胴回転方向上手側に位置する天板上手側部分は
、扱胴回転方向上手側に位置するほど前記受網から離れるように径方向外方に位置する状態で設けられ、
前
記天板下手側部分は、前記扱胴回転方向下手側に向かうほど、前記回動軌跡よりも径方向外方側に位置するように円弧状に延びる状態で設けられ、
前記天板下手側部分と前記回動軌跡との間に処理物通過用の第3空間が形成されている点にある。
【0018】
第
6特徴構成によれば、天板が閉じ状態に切り換わると、天板によって扱室の上方を塞いで脱穀処理を行うことができ、天板を開状態に切り換えることにより、扱室の上方を開放させて、脱穀作業終了後のメンテナンス作業や詰まっている処理物の除去作業等を能率よく行うことができる。
【0019】
そして、天板を閉状態に切り換えると、天板に備えられた受網支持部が受網の扱胴回転方向下手側の端部を受止め支持することになる。つまり、脱穀処理能力を向上させるために、扱胴回転方向下手側に位置する領域が扱胴回転方向に沿って長く形成される受網の端部が受網支持部により支持されるので、受網が安定した状態となり扱き処理を良好に行うことができる。
【0020】
【0021】
【0022】
本発明の第7特徴構成は、前記送塵弁による処理物移送量を変更調整自在な手動操作式の送塵弁レバーが、機体横側外方に延出する状態で備えられている点にある。
【0023】
第7特徴構成によれば、送塵弁により処理物を移送させる機能を良好に発揮させることができるものでありながら、送塵弁レバーが機体横側外方に延出しているので、送塵弁による処理物移送量を変更調整するときは、作業者は機体の横側外方から容易に手動操作することができる。
【0024】
本発明の第8特徴構成は
、前記案内部の上方において、前記天板における前記扱胴回転方向下手側端部と、前記扱胴に設けられた扱歯の外周端が描く回動軌跡との間に、処理物通過用の第4空間が形成されている点にある。
【0025】
第8特徴構成によれば、受網の扱胴回転方向上手側の端部に案内部が備えられるので、処理物が扱室と受網との間の処理空間に案内されて良好な脱穀処理が行われる。そして、前記案内部の上方箇所、すなわち、送塵弁の回転方向下手側端部と案内部との間の箇所に、処理物通過用の空間が形成されるので、送塵弁により移送された後の処理物が、前記空間にて開放されて解されたのち案内部にて案内されることになるので、受網の回転方向上手側端部にて詰まり等が発生するおそれが少なく、良好な脱穀処理を行えるものとなる。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
本発明の第
9特徴構成は、前記受網が
、扱胴回転方向に沿って分割された上手側受網構成体と下手側受網構成体とを備えて構成され、
前記上手側受網構成体と前記下手側受網構成体とが、各別に着脱自在に且つ装着状態で一体的に連結される状態で備えられている点にある。
【0032】
第9特徴構成によれば、受網が上手側受網構成体と下手側受網構成体とに分割され、しかも、それらが各別に着脱自在であるから、労力負担の少ない状態で受網の着脱作業を行うことができ、又、装着状態では、上手側受網構成体と下手側受網構成体とが一体的に連結されてガタツキのない状態で脱穀処理を良好に行える。
【0033】
本発明の第10特徴構成は、前記上手側受網構成体と前記下手側受網構成体とが前記受網における最下端部に対応する箇所にて連結されている点にある。
【0034】
第10特徴構成によれば、上手側受網構成体と下手側受網構成体とを連結する作業や連結を解除する作業を行う場合、それらが受網における最下端部に対応する箇所にて連結されているから、扱室の左右横側外方のうち左右いずれの側からでも作業を容易に行うことができる。
【0035】
本発明の第
11特徴構成は、前記上手側受網構成体と前記下手側受網構成体とが、前記受網における最下端部に対応する箇所より
も扱胴回転方向下手側に寄った箇所にて連結されている点にある。
【0036】
第
11特徴構成によれば、上手側受網構成体と下手側受網構成体とを連結する箇所が最下端部に対応する箇所よりも回転方向下手側に寄った箇所に位置する。この上手側受網構成体と下手側受網構成体とを連結する箇所は、それらを連結させるためにフランジ部等が扱胴の半径方向外方に突出する状態になるが、受網の最下端部に対応する箇所よりも回転方向下手側に寄った箇所に設けられるので、受網の最下端部に対応する箇所に位置するものに比べて、受網の下端位置から下方側への突出量が少なくなる。
その結果、受網の下方に位置する揺動選別装置上を移送する処理物が受網の下方突出部分にて引っ掛かるおそれが少なくなり、処理物の移送を行い易いものにできる。
【0037】
本発明の第12特徴構成は、前記上手側受網構成体及び前記下手側受網構成体は、前記扱室に対して前記第一支持フレームが位置する側の外側に取り出し可能である点にある。
【0038】
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面に基づいて、本発明に係る脱穀装置の実施形態を普通型コンバインに搭載された脱穀装置に適用した場合について説明する。
【0041】
図1及び
図2に示すように、普通型コンバインは、左右一対の操向不能な前輪1と左右一対の操向操作可能な後輪2とを備えた走行車体3の前部に、作物を刈り取って後方に搬送する刈取処理部4が昇降用油圧シリンダ5により横向き支点X1周りで駆動昇降自在に支持され、走行車体3には、前部側にキャビン6にて覆われた搭乗運転部7、刈取処理部4にて刈り取られた作物の脱穀処理を行う脱穀装置8、その脱穀装置8にて脱穀処理されて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク9、駆動用のエンジン10等が備えられている。
【0042】
刈取処理部4は、所定の刈幅で植立する作物を刈り取り、刈り取った作物を刈幅方向の中央部に寄せ集める刈取部11と、刈り取られて中央に寄せ集められた作物を機体後方の脱穀装置8に向けて搬送するフィーダ12とを備えて構成されている。
【0043】
刈取部11は、刈取作物を受け止めて搬送する搬送デッキ13の左右両側に位置する状態で左右一対の側板14を備え、左右側板14の前部に作物を刈取り対象と非刈取り対象とに分草する分草具15が備えられている。そして、搬送デッキ13の上方に近接させた状態で、刈り取った作物を刈幅方向中間部に横送りして寄せ集める横送りオーガ16が、左右の側板14に亘って架設される状態で備えられている。又、搬送デッキ13の前端に沿って作物の株元を切断する刈刃17が備えられ、横送りオーガ16の前部上方箇所に、刈取対象となる作物の穂先側を後方に向けて掻込む回転リール18が備えられている。
【0044】
図3に示すように、脱穀装置8は、フィーダ12が供給する刈取穀稈に扱き処理を施す脱穀部8A、脱穀部8Aでの扱き処理で得た選別対象の処理物に選別処理を施す選別部8B、及び、その選別処理で得た回収対象の処理物を回収する回収部8Cが備えられている。
【0045】
脱穀部8Aは、扱室19に、前後向きの扱胴軸20を中心に正面視右回りに回転することで刈取処理部4からの刈取穀稈に扱き処理を施すバータイプの扱胴21が備えられている。扱室19は、扱胴21を下方から覆う略半円筒状の受網22、扱胴21の上方を覆う天板23、扱胴軸20の前端部を回転可能に支持する前側縦板部材24、扱胴軸20の後端部を回転可能に支持する後側縦板部材25、及び、フィーダ12の後端から刈取作物を扱室19の入口に向けて案内する入口案内板26などによって区画形成される。
【0046】
図3に示すように、扱胴21は、前端部にスクリュー搬送式の掻込部27が形成され、後部側に扱き処理部28が形成され、それらが前後に連なる状態で扱胴軸20を中心に正面視右回りに一体回転するように構成されている。
【0047】
扱き処理部28は、その前後端部並びに前後中間部に夫々、円板状の支持板29を扱胴軸20に備えて構成され、これらの支持板29の各外周部に、複数の棒状部材30が、扱胴軸20に沿う前後向き姿勢で扱胴軸20から等距離の位置に扱胴21の周方向に等間隔で並ぶように連結され、かつ、各棒状部材30に、複数の扱歯31が棒状部材30から扱胴21の外方に向けて突出する姿勢で前後方向に設定間隔をあけて並ぶように備えられている。
【0048】
天板23には、処理物を車体後方に案内する複数の送塵弁32が前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備されている。この送塵弁32は、扱胴21が扱胴軸20を中心に正面視右回りに回転するのに伴って扱室19の上部に移動した刈取穀稈や処理物を車体後方側に案内する機能を備える。
【0049】
図4に示すように、送塵弁32は、天板23の内面側において扱胴回転方向下手側箇所、言い換えると、機体横幅方向の左側に相当する箇所に位置する状態で、扱胴回転方向下手側ほど下方に位置する傾斜姿勢で備えられている。説明を加えると、天板23は、
図4に示すように、正面視で扱胴21の周方向に沿うような上向き略U字状に形成されており、複数の送塵弁32は、
図4及び
図9に示すように、天板23の扱胴回転方向下手側箇所である左側の傾斜面部分の内面において、機体前後方向(扱胴軸芯方向)に沿って並ぶ状態で且つ機体横方向(扱胴軸芯方向と直交する方向)に対して斜め姿勢となる状態で設けられ、扱胴21により連れ回りながら扱胴21の外周部を回動する処理物を受止めて案内しながら機体後方側へ移送させるように構成されている。
【0050】
複数の送塵弁32の傾斜角を一体的に変更させて処理物の移送量を変更調整することができる。すなわち、
図4及び
図9に示すように、各送塵弁32は、帯板状の部材を縦向き姿勢で備えて構成されており、その長手方向の中間部に位置して斜め姿勢に対応させて傾斜状態で設けられた支点軸33の軸芯周りで回動自在に天板23に支持されている。
【0051】
そして、各送塵弁32は、機体前後方向に伸びる連係リンク34が枢支連結されており、複数の送塵弁32が一体的に夫々の支点軸33の軸芯周りで回動するように構成されている。つまり、前端部から3つ目の送塵弁32の支点軸33に、それと一体回動自在な送塵弁レバー35が、機体左横側外方に向けて突出する状態で設けられている。すなわち、送塵弁レバー35は、天板23の左側の傾斜面部分に沿って機体外方側ほど下方に位置する斜め姿勢で延出され、天板23の左側端部の機体横側外方に向かう状態で片持ち状に延出する形態で備えられている。
【0052】
又、天板23の横側部における送塵弁レバー35が機体横側外方に延びる箇所には、送塵弁レバー35を左右揺動可能に受け止め支持する台座36が備えられ、この台座36には、ノブ付きの固定ボルト37が備えられている。この固定ボルト37により、送塵弁レバー35を複数の操作位置のうちの任意の操作位置に固定できるように構成されている。
【0053】
この構成により、脱穀装置8の横側外方から送塵弁レバー35及び固定ボルト37を操作することができ、送塵弁レバー35を操作することで、複数の送塵弁32を同時に揺動操作することができ、この揺動操作により、脱穀処理中の処理物の各送塵弁32による脱穀処理方向下手側への送り量を調節することができる。そして、固定ボルト37で送塵弁レバー35をいずれかの操作位置に固定することにより、各送塵弁32を送塵弁レバー35の操作位置に応じた所定の案内姿勢に固定保持することができる。
【0054】
図4に示すように、受網22の扱胴回転方向下手側の端部と送塵弁32の扱胴回転方向上手側の端部との間は大きく開放された第3空間Q3が形成されている。又、送塵弁32の扱胴回転方向上手側の端縁が径方向に対して回転方向下手側に後退するような斜め姿勢に形成されている。このように構成することで、扱き処理されて絡まっていた処理物が第3空間Q3にて開放されて解され、送塵弁32の回転方向上手側端縁に引っ掛かり難く滞留するおそれが少ないものとなる。
【0055】
次に、受網22について説明する。
図4に示すように、受網22は、扱胴21に設けられた扱歯31の外周端が描く回動軌跡Kに沿う状態で設けられ、その扱胴回転方向下手側の端部が扱胴回転方向上手側の端部よりも所定量高く位置する状態で配備されている。又、受網22の扱胴回転方向下手側部分が、扱胴21の上方側に重なり合うように、扱胴21の軸芯方向視で扱胴回転方向に沿う湾曲形状に構成されている。
【0056】
受網22は、扱胴21の回転方向に沿って分割された上手側受網構成体38と下手側受網構成体39とを備えて構成され、上手側受網構成体38と下手側受網構成体39とが、各別に着脱自在に且つ装着状態で一体的に連結される状態で備えられている。具体的には、
図4〜
図6に示すように、上手側受網構成体38及び下手側受網構成体39は、扱胴21の軸芯方向に沿って2個ずつ備えられ、合計4個の受網構成体38,39で受網22が構成されている。
【0057】
図7及び
図8に示すように、上手側受網構成体38及び下手側受網構成体39は、夫々、周方向に所定間隔をあけて並ぶ状態で扱胴21の軸芯方向に沿うように設けられた複数の横桟40と、周方向に沿って湾曲形成され且つ軸芯方向に所定間隔をあけて並ぶ状態で設けられた複数の縦桟41とを、基枠42に支持させる状態で備えて構成されている。
【0058】
すなわち、基枠42は、扱胴21の回転方向における最上手側に位置して軸芯方向に沿って設けられた上手側枠部材43と、この上手側枠部材43の軸芯方向両側部に連結されて周方向に沿って湾曲形成された一対の横側枠部材44とで構成されている。
【0059】
複数の横桟40は夫々、帯板状部材にて構成され、周方向に所定間隔をあけて並ぶ状態で一対の横側枠部材44同士にわたって架設連結されている。
すなわち、複数の縦桟41は、例えばピアノ線等からなる丸棒部材にて構成され、各縦桟41は夫々、回転方向上手側端部が上手側枠部材43に溶接により連結固定されている。又、回転方向上手側端部以外の箇所では、複数の横桟40に形成された挿通孔45を挿通させて横桟40にて受け止め支持する構成となっている。つまり、回転方向上手側端部以外の箇所では、縦桟41は、挿通孔45を挿通するだけであり、横桟40に連結固定しない構成となっている。
【0060】
下手側受網構成体39は、
図4及び
図8に示すように、複数の縦桟41が扱胴21の回転方向における最下手側に位置する横桟40よりも扱胴21の回転方向下手側に突出する状態で設けられている。
すなわち、下手側受網構成体39は、回転方向における最下手側に位置する横桟40は、一対の横側枠部材44の回転方向における最下手側端部よりも少しだけ回転方向上手側に寄った位置に設けられており、複数の縦桟41がその横桟40よりも扱胴21の回転方向下手側に突出する状態で設けられている。この縦桟41の突出側の端部は一対の横側枠部材44の回転方向における最下手側端部と略同じ位置になるように構成されている。
【0061】
又、複数の縦桟41のうち並び方向における所定個数おきに位置する特定の縦桟41Aが、それ以外の他の縦桟41よりも大径の丸棒部材にて構成されて、他の縦桟41よりも多くの箇所で連結固定されている。具体的には、上手側枠部材43及び全ての横桟40に挿通孔45を挿通させた状態で溶接にて連結固定されている。尚、特定の縦桟41Aも含めて複数の縦桟41同士の隙間は全て同じ間隔に設定されている。
【0062】
次に、受網22の取り付け構造について説明する。
図4及び
図10に示すように、扱室19の左右両横側における上部側箇所に、扱胴21の軸芯方向に沿って延びる支持フレーム46,47が備えられ、受網22は、支持フレーム46,47と、左右両側の支持フレーム46,47にわたって架設連結され且つ周方向に湾曲形成された弓形支持体48と、軸芯方向両側部に位置する仕切り壁49と、弓形支持体48と前後の仕切り壁49にわたって架設支持された受止め支持体50とにより、支持される構成となっている。
【0063】
左右両側の支持フレーム46,47は、脱穀装置8全体を支持する矩形枠状の支持枠体Fの一部を構成するものであり、扱室19の機体前後幅方向の略全長にわたって設けられている。そして、
図4に示すように、
第一支持フレームとしての左側の支持フレーム46は、扱室19の左側の側壁19Aの上部側に位置して側壁19Aよりも扱室19の内方側に突出する状態で備えられる。一方、
第二支持フレームとしての右側の支持フレーム47は、扱室19の右側の側壁19Bの外方側に位置する状態で配備され、受網22の扱胴回転方向下手側部分と扱室19の右側の側壁19Bとの間に、処理物通過用の第2空間Q2が形成されている。そして、天板23の扱胴回転方向上手側部分の内側面と、受網22の扱胴回転方向下手側部分との間に、処理物通過用の第1空間Q1が形成されている。
図4に示すように、第1空間Q1と第2空間Q2とは上下に連通している。
【0064】
又、
図10に示すように、扱室19の右側の側壁19Bの内方側において受網22が存在しない箇所、すなわち、掻込部27が形成される前部側領域、及び、排塵口が形成される後部側領域に対応する箇所には、支持枠体Fの一部を構成する強度補強用の角筒状のフレーム体47Aが備えられている。
【0065】
弓形支持体48は、処理物の通過を阻害しないように処理物移送箇所を迂回するように弓形に湾曲する形状となっており、扱胴21の軸芯方向中央部に位置する状態で設けられる。
【0066】
図4及び
図6に示すように、左側の支持フレーム46の下方側に、帯板状の連結部材51がネジ52で締め付け固定され、その連結部材51の下部に支持フレーム46と同様に扱室19の機体前後幅方向の略全長にわたって延びるチャンネル材からなる
受網支持フレームとしての下手側支持体53がネジ52で締め付け固定されている。
【0067】
図4に示すように、連結部材51は、扱胴回転方向上手側が扱胴21の回転軸芯から離れた位置にあり、扱胴回転方向下手側が回転軸芯に近づいた位置になるように、接線方向に対して斜め姿勢になる状態で設けられている。
【0068】
従って、この連結部材51により、処理物を案内する案内部が構成されている。又、連結部材51の上方箇所、つまり、連結部材51の扱胴回転方向上手側端部と、送塵弁32の扱胴回転方向下手側端部との間の箇所に、処理物通過用の第4空間Q4が形成されている。このように構成することで、処理物が連結部材51の扱胴回転方向上手側端部と扱胴21との間で詰まるおそれが少なくなるようにしている。
【0069】
上手側受網構成体38は、下手側支持体53に対して上手側枠部材43が上下方向に沿ってネジ52で締め付け固定され、一対の横側枠部材44が、左右両側に位置する仕切り壁49及び弓形支持体48に対して軸芯方向に沿ってネジ52で締め付け固定されている。又、
図7に示すように、回転方向における最下手側に位置する横桟40には、軸芯方向に適宜間隔をあけた複数箇所にて取付けブラケット54が溶接にて一体的に連結されている。そして、
図4に示すように、取付けブラケット54が受止め支持体50にネジ52で締め付け固定されている。
【0070】
このように上手側受網構成体38は、脱穀装置8の左側外方から作業者がネジ52を外すことにより装置外方に取り外すことができる。そして、下手側受網構成体39は、上手側受網構成体38を取り外すと、脱穀装置8の左側外方からネジ52を外すことにより、容易に装置外方に取り外すことができる。
このように、上手側受網構成体38と下手側受網構成体39とを左側外方に取り外す場合には、図6に示すように、側壁19Aを取り外して、開放された状態にする必要がある。このように側壁19Aを取り外して開放された箇所を通して、上手側受網構成体38と下手側受網構成体39とを外方に取り外したり、装着することができる。
【0071】
すなわち、下手側受網構成体39は、
図8に示すように、上手側枠部材43に、軸芯方向に適宜間隔をあけた複数箇所にて取付けブラケット55が溶接にて一体的に連結され、この取付けブラケット55が受止め支持体50にネジ52で締め付け固定されている。そして、
図4に示すように、この取付けブラケット55は、上手側受網構成体38に備えられた取付けブラケット54と共締め状態でネジ52で締め付け固定されている。
【0072】
受止め支持体50は、受網22における最下端部に対応する箇所よりも回転方向下手側に寄った箇所に備えられている。従って、上手側受網構成体38と下手側受網構成体39とは、受網22における最下端部に対応する箇所よりも回転方向下手側に寄った箇所にて連結される構成となっている。
【0073】
図5及び
図10に示すように、下手側受網構成体39における一対の横側枠部材44の下端縁が、弓形支持体48と前後の仕切り壁49から機体前後方向に沿って突出する状態で形成された円弧状の受止め部材56により受止め支持されている。又、一対の横側枠部材44の回転方向下手側端縁が、天板23に形成された受網支持部57により受止め支持されている。従って、取付けブラケット55に対するネジ52の締結を解除すると、下手側受網構成体39を円弧状の受止め部材56に沿わせて脱穀装置8の左側外方に取り出すことができる。天板23における受網支持部57よりも扱胴回転方向上手側に位置する天板上手側部分23Aは、扱胴回転方向上手側に位置するほど受網22から離れるように径方向外方に位置する状態で設けられている。天板23における受網支持部57よりも扱胴回転方向下手側に位置する天板下手側部分23Bは、扱胴回転方向下手側に向かうほど、扱歯31の外周端が描く回動軌跡Kよりも径方向外方側に位置するように円弧状に延びる状態で設けられている。
【0074】
受止め支持体50よりも扱胴回転方向上手側の箇所において、受止め部材56と同じように、弓形支持体48と前後の仕切り壁49から機体前後方向に沿って突出する状態で載置部材58が備えられている。このように載置部材58を備えることで、下手側受網構成体39を取り出したり装着させたりするときに、下手側受網構成体39をこの載置部材58に仮置きして作業を楽に行うことができる。又、この載置部材58は、下手側受網構成体39だけでなく、上手側受網構成体38も受止め支持することができる。
【0075】
天板23は、扱室19の上方を塞ぐ閉状態と扱室19の上方を開放する開状態とにわたり揺動開閉自在に構成されている。すなわち、
図4及び
図9に示すように、右側に位置する支持フレーム47の上部側に、機体前後方向に離間した複数箇所にて枢支用のブラケット59が備えられている。そして、天板23に設けられた枢支部60をブラケット59に機体前後軸芯周りで回動自在に枢支連結してある。その結果、天板23が、機体前後軸芯周りで回動自在に支持枠体Fに支持され、機体前後軸芯周りで回動させることにより、扱室19の上方を塞ぐ閉状態と扱室19の上方を開放する開状態とにわたり揺動開閉させることができる。
【0076】
図11及び
図12に示すように、入口案内板26は、左右両側の分割案内板26a,26bからなり、この左右一対の分割案内板26a,26bのうちの右側に位置する分割案内板26aは、下手側受網構成体39の形状に沿わせて全域にわたって半円筒状に形成されている。又、左側に位置する分割案内板26bは、上手側受網構成体38の形状に沿わせて半円筒状に形成される領域と、それに連なり連結部材51の形状に沿わせて傾斜状に形成される領域とを備える構成となっている。
【0077】
次に、選別部8Bについて説明する。
図3に示すように、選別部8Bは、受網22から漏下した処理物を後方に移送しながら揺動選別する揺動選別部61と、揺動選別部61に選別風を供給する唐箕62とを備える。揺動選別部61は、その後下部に備えた偏心カム式の揺動駆動機構63の作動で前後揺動するシーブケース64を備え、そのシーブケース64の上部に、粗選別用のグレンパン65、チャフシーブ66、ストローラック67を配備し、シーブケース64の下部に、グレンシーブ68と、2番物選別用の前後両側のストローラック69とが備えられている。
【0078】
回収部8Cは、揺動選別部61の下方に、揺動選別部61の前部側から漏下して唐箕62からの選別風を受けながら流下する単粒化穀粒を1番物として回収する1番回収部70と、揺動選別部61の後部側から漏下して唐箕からの選別風を受けながら流下する枝梗付き穀粒や二股粒などを2番物として回収する2番回収部71とを、その順で前後に並ぶように配備されている。
【0079】
1番回収部70の底部には回収した1番物を右方に搬送する1番搬送スクリュー72が備えられ、2番回収部71の底部には回収した2番物を右方に搬送する2番搬送スクリュー73が備えられている。1番搬送スクリュー72の右端部には、1番搬送スクリュー72が搬送した1番物を穀粒タンク9の内部に揚送する揚送装置(図示せず)が備えられてる。
【0080】
2番搬送スクリュー73の右端部には、2番搬送スクリュー73が搬送した2番物に再び扱き処理を施す再処理機構74、及び、この再処理機構74による再処理後の2番物を粗選別用のグレンパン65に還元搬送する2番還元スクリュー75が連動連結されている。脱穀装置8の後部には、扱き処理に伴って排出される脱粒穀稈や選別処理によって揺動選別部61の後方に搬出した長い稈屑などを細断して機外に排出するチョッパ76が備えられている。
【0081】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、上手側受網構成体38と下手側受網構成体39とが、受網22における最下端部に対応する箇所よりも前記回転方向下手側に寄った箇所にて連結される構成を示したが、このような構成に代えて、
図13に示すように、上手側受網構成体38と下手側受網構成体39とが受網22における最下端部に対応する箇所にて連結される構成としてもよい。
【0082】
(2)上記実施形態では、受網22の扱胴回転方向下手側の端部と送塵弁32の扱胴回転方向上手側の端部との間に空間が形成される構成を示したが、このような空間を備えずに受網22と送塵弁32とを近接させて配備してもよい。
【0083】
(3)上記実施形態では、天板23に、受網22の扱胴回転方向下手側の端部を受止め支持する受網支持部57が備えられる構成を示したが、天板23ではなく、脱穀装置8の支持枠体Fに受網支持部57を備える構成としてもよい。