(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、プレス部品の生産ラインには、プレス成形後のプレス部品に傷や割れ等があるか否かを検査する検査装置が配置されている。例えば、特許文献1に開示されている検査装置は、成形後のパネル状のプレス部品を搬送するコンベアを備え、該コンベアは、載置されたプレス部品をパネル表面が上を向く姿勢で水平方向に搬送している。上記コンベアには、上記プレス部品の平面部を検査する平面部検査エリアと該平面部周縁に連続する側面部を検査する側面部検査エリアとが搬送方向に並設され、上記各エリアには、照明手段及び撮影手段が上記コンベアを挟んで対向配置されている。上記照明手段は、光源と該光源から照射される光を反射させる反射手段とを備え、上記光源が搬送方向と直交する水平方向及び上下方向に移動可能となっていて、上記光源の下方に上記反射手段が配置されている。該反射手段は回動可能となっていて、上記光源からプレス部品へ照射される光の照射方向を変更可能となっている。一方、上記撮影手段は、上記パネル部品を撮影するカメラを備え、該カメラが搬送方向と直交する水平方向及び上下方向に移動可能となっている。このカメラには、当該カメラを回動させて撮影方向を変更させるカメラ回動手段が設けられている。
【0003】
そして、コンベアでプレス部品を順次上記平面部検査エリア及び曲面部検査エリアに間欠的に搬送し、上記各エリアでプレス部品を停止させた状態で、光源の照射位置及び照射方向を変更しつつカメラの撮影位置及び撮影方向を変更してプレス部品を撮影するようになっていて、コンベアの搬送方向下流側両サイドに設けられた画像処理機により、撮影した画像を演算するとともに演算データをプレス部品の表面仕上がり状態の基準データと比較してプレス部品の良否を判定するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の検査装置は、プレス部品の平面部及び側面部をそれぞれ別のエリアで撮影しているので、生産ラインにおいて設置スペースを広く占有してしまう。また、特許文献1の如き検査装置は、複雑で大掛かりであり、コストが嵩んでしまう。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プレス部品の良否を判定できる低コストでコンパクトなプレス部品用検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、搬送手段により搬送されるプレス部品に対して2方向から光を照射してカメラで撮影するようにしたことを特徴とする。
【0008】
すなわち、第1の発明では、平面部及び該平面部周縁に連続する側面部からなるパネル状のプレス部品を上記平面部が搬送方向に沿う姿勢で
載置して一定速度で直線状に搬送する
コンベアと、上記プレス部品を搬送方向と直交する
上方から撮影
可能に配置され、上記コンベアによって搬送される上記プレス部品が撮影領域を横切る際、当該プレス部品を撮影するカメラと、該カメラの側方に配置され、当該カメラの撮影領域に入ったプレス部品の平面部に対し光を垂直に照射する第1光源と、該第1光源の側方に配置され、上記カメラの撮影領域に入ったプレス部品の平面部に対し光を斜めに照射する第2光源と、上記カメラで撮影したプレス部品の画像を演算する演算部、及びプレス部品の表面仕上がり状態の基準データが予め記憶された記憶部を有し、上記演算部で処理されたプレス部品の演算データと上記基準データとを比較して上記プレス部品の良否を判定する判定手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、上記第1及び第2光源の照明色が異なっていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記第1光源は、上記カメラ周りに所定の間隔をあけて環状に複数配置され、上記第2光源は、上記各第1光源の外側方で、且つ、上記カメラ周りに所定の間隔をあけて環状に複数配置されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、第3の発明において、上記第2光源は、外側方に行くにつれて次第に上記
コンベアに接近していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、カメラの撮影領域を通過するプレス部品の平面部を撮影すると、第1光源の光によってプレス部品の平面部が照明されてカメラの撮影画像が鮮明になるとともに、平面部に傷等が発生している場合には、平面部に対して斜めに照射された第2光源の光が乱反射することで傷等が明瞭に撮影される。一方、カメラの撮影領域を通過するプレス部品の側面部を撮影すると、第2光源の光によってプレス部品の側面部が照明されてカメラの撮影画像が鮮明になるとともに、側面部に傷等が発生している場合には、側面部に対して斜めに照射された第1光源の光が乱反射することで傷等が明瞭に撮影される。したがって、光源の照射位置及び照射方向とカメラの撮影位置及び撮影方向とを変えることなくプレス部品の平面部及び側面部の仕上がり状態を明瞭に撮影することができ、特許文献1のように平面部の撮影と側面部の撮影とを異なるエリアで行う必要がなく、設備の省スペース化を図ることができる。また、光源の照射位置及び照射方向とカメラの撮影位置及び撮影方向とを変更する複雑な機構を設ける必要がなく、低コストな検査装置にできる。さらに、プレス部品を
コンベアで搬送しながらカメラの撮影を行うことができるので、特許文献1の如きカメラの撮影時にプレス部品を停止させるという必要がなく、検査時間を短縮することができる。
【0013】
第2の発明では、カメラで撮影される傷等の部分と傷等でない部分とが光の明暗だけでなく色差も生じるようになるので、画像処理によって傷等の部分と傷等でない部分とをさらに明瞭にできる。
【0014】
第3の発明では、カメラの撮影領域をプレス部品が通過する際、プレス部品の全側面部が第2光源で照明されるようになり、プレス部品の側面部に発生する傷等を確実に見つけ出すことができる。
【0015】
第4の発明では、カメラの撮影領域をプレス部品が通過する際、プレス部品の全側面部が第3の発明よりもさらに明るく照明されるようになり、カメラで撮影する画像がさらに鮮明になって確実に傷等を撮影することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明のプレス部品用検査装置1を示す。該検査装置1は、所定の板材から平面部10a及び該平面部10a周縁に連続する側面部10bからなるパネル状のプレス部品10をプレス成形する車両の生産ラインに配置され、プレス部品10のパネル表面に発生する傷、割れ、しわ等を検査する装置である。
【0018】
上記検査装置1は、上記プレス部品10を平面部10aが上を向く姿勢で載置して例えば0.7m/sで略水平方向Xに、つまり、平面部10aが搬送方向に沿う姿勢で
一定速度で直線状に搬送するベルト式のコンベア
2を備えている。
【0019】
該コンベア2の上方には、例えば0.2msecの撮影速度を有するCCDカメラ3が下を向く姿勢で固定され、上記コンベア2で搬送されるプレス部品10が
撮影領域を横切る際、上記CCDカメラ3で上方(搬送方向と直交する方向)から撮影される。
【0020】
上記CCDカメラ3の側方には、当該CCDカメラ3を囲う平面視で環状の第1照明具4が配置されている。
【0021】
該第1照明具4は、環状の樹脂製第1ケース4bを備え、該第1ケース4bには、下方に開口する環状凹部4dが形成されている。
【0022】
該環状凹部4dには、白色LED4a(第1光源)が、上記環状凹部4dに沿って環状に複数配設され、上記第1ケース4bの開口は、上記各白色LED4aから照射される白色の光を拡散させて照明ムラを抑える環状の樹脂製第1環状拡散板4cで塞がれている。
【0023】
上記各白色LED4aは、約1万ルクスの輝度を有し、
図2(b)に示すように、上記CCDカメラ3の撮影領域に入ったプレス部品10の平面部10aに対して光を垂直に照射する一方、
図2(a),(c)に示すように、上記CCDカメラ3の撮影領域に入ったプレス部品10の側面部10bに対して光を斜めに照射するようになっている。
【0024】
上記第1照明具4の外側方には、
図1(a),(b)に示すように、8つの第2照明具5が平面視で上記第1照明具4周りに等間隔で放射状に延びるように配置され、各第2照明具5は、外側方に行くにつれて下傾している。尚、各第2照明具5の下端と上記プレス部品10の平面部10aとの間の距離Hは、約50〜100mmに設定されている。
【0025】
上記各第2照明具5は、直線状の樹脂製第2ケース5bを備え、該第2ケース5bには、下方に開口する直線状凹部5dが形成されている。
【0026】
該直線状凹部5dには、赤色LED5a(第2光源)が、上記直線状凹部5dに沿って直線状に複数配設され、上記第2ケース5bの開口は、上記各赤色LED5aから照射される赤色の光を拡散させて照明ムラを抑える樹脂製第2拡散板5cで塞がれている。
【0027】
すなわち、上記赤色LED5aは、平面視で上記各白色LED4aの外側方で、且つ、CCDカメラ3周りに所定の間隔をあけて環状に複数配置されている。また、上記赤色LED5aは、外側方に行くにつれて次第に下方に位置するように(コンベア2に接近するように)所定の間隔をあけて複数配置されている。
【0028】
そして、上記各赤色LED5aは、約1万ルクスの輝度を有し、
図2(b)に示すように、上記CCDカメラ3の撮影領域に入ったプレス部品10の平面部10aに対して光を斜めに照射する一方、
図2(a),(c)に示すように、上記CCDカメラ3の撮影領域に入ったプレス部品10の側面部10bに対して光を垂直に照射するようになっている。
【0029】
上記CCDカメラ3には、当該CCDカメラ3の撮影を制御するとともに撮影した画像を取り込む制御盤6(判定手段)が接続されている。
【0030】
該制御盤6は、上記CCDカメラ3で撮影した画像を演算する演算部6aを有し、取得した撮影画像を演算して画像の明暗及び色差から演算データを生成するようになっている。
【0031】
また、上記制御盤6は、各種データを記憶する記憶部6bを有し、該記憶部6bは、プレス部品10が良品時の表面仕上がり状態の基準データを予め記憶している。
【0032】
そして、上記制御盤6は、上記演算部6aで処理されたプレス部品10の演算データと上記基準データとを比較して上記プレス部品10の良否を判定するようになっている。例えば、撮影画像に傷と考えられる箇所が1つでもあれば、不良品であると判定するようになっている。
【0033】
上記制御盤6には、モニタ7が接続され、該モニタ7は、上記制御盤6からの指令により、上記CCDカメラ3で撮影したプレス部品10の各画像、演算部6aでの処理結果、記憶部6bに記憶された各データ及び判定結果を表示させるようになっている。
【0034】
次に、上記検査装置1による上記コンベア2で搬送中のプレス部品10の検査について説明する。
【0035】
図2(a)に示すように、プレス成形後のプレス部品10は、コンベア2で検査装置1まで搬送され、まず最初に、上記CCDカメラ3の撮影領域にプレス部品10の搬送方向前側の側面部10bが入る。このとき、上記各白色LED4aが側面部10bに対して光を斜めに照射する一方、上記搬送方向前側に位置する各赤色LED5aが側面部10bに対して光を垂直に照射する。
【0036】
そして、搬送方向前側に位置する側面部10bは、上記各白色LED4a及び各赤色LED5aから光が照射されている状態で上記CCDカメラ3で撮影される。
【0037】
その後、撮影された撮影画像は、上記制御盤6で処理されて基準データと比較され、プレス部品10の搬送方向前側に位置する側面部10bの良否が判定される。
【0038】
次に、
図2(b)に示すように、CCDカメラ3の撮影領域にプレス部品10の搬送方向前側の平面部10aが入る。このとき、上記各白色LED4aが平面部10aに対して光を垂直に照射する一方、上記搬送方向前側に位置する各赤色LED5aが平面部10aに対して光を斜めに照射する。
【0039】
そして、平面部10aは、上記各白色LED4a及び各赤色LED5aから光が照射されている状態で上記CCDカメラ3で撮影される。
【0040】
その後、撮影された撮影画像は、上記制御盤6で処理されて基準データと比較され、プレス部品10の平面部10aの良否が判定される。
【0041】
最後に、
図2(c)に示すように、CCDカメラ3の撮影領域にプレス部品10の搬送方向後側の側面部10bが入る。このとき、上記各白色LED4aが側面部10bに対して光を斜めに照射する一方、上記搬送方向後側に位置する各赤色LED5aが側面部10bに対して光を垂直に照射する。
【0042】
そして、搬送方向後側に位置する側面部10bは、上記各白色LED4a及び各赤色LED5aから光が照射されている状態で上記CCDカメラ3で撮影される。
【0043】
その後、撮影された撮影画像は、上記制御盤6で処理されて基準データと比較され、プレス部品10の搬送方向後側に位置する側面部10bの良否が判定される。
【0044】
以上より、本発明の実施形態1によると、CCDカメラ3の撮影領域を通過するプレス部品10の平面部10aを撮影すると、白色LED4aの光によってプレス部品10の平面部10aが照明されてCCDカメラ3の撮影画像が鮮明になるとともに、平面部10aに傷等が発生している場合には、平面部10aに対して斜めに照射された赤色LED5aの光が乱反射することで傷等が明瞭に撮影される。一方、CCDカメラ3の撮影領域を通過するプレス部品10の側面部10bを撮影すると、赤色LED5aの光によってプレス部品10の側面部10bが照明されてCCDカメラ3の撮影画像が鮮明になるとともに、側面部10bに傷等が発生している場合には、側面部10bに対して斜めに照射された白色LED4aの光が乱反射することで傷等が明瞭に撮影される。したがって、光源の照射位置及び照射方向とCCDカメラ3の撮影位置及び撮影姿勢とを変えることなくプレス部品10の平面部10a及び側面部10bの仕上がり状態を明瞭に撮影することができ、特許文献1のように平面部10aの撮影と側面部10bの撮影とを異なるエリアで行う必要がなく、設備の省スペース化を図ることができる。また、白色LED4a、赤色LED5aの照射位置及び照射方向とCCDカメラ3の撮影位置及び撮影方向とを変更する複雑な機構を設ける必要がなく、低コストな検査装置1にできる。さらに、プレス部品10をコンベア2で搬送しながらCCDカメラ3の撮影を行うことができるので、特許文献1の如きカメラの撮影時にプレス部品10を停止させるという必要がなく、検査時間を短縮することができる。
【0045】
また、CCDカメラ3で撮影される傷等の部分と傷等でない部分とが光の明暗だけでなく色差も生じるようになるので、画像処理によって傷等の部分と傷等でない部分とをさらに明瞭にできる。
【0046】
また、上記赤色LED5aは、平面視で上記各白色LED4aの外側方で、且つ、CCDカメラ3周りに所定の間隔をあけて環状に複数配置されているので、CCDカメラ3の撮影領域をプレス部品10が通過する際、プレス部品10の全側面部10bが赤色LED5aで照明されるようになり、プレス部品10の側面部10bに発生する傷等を確実に見つけ出すことができる。
【0047】
それに加えて、上記赤色LED5aは、外側方に行くにつれて次第に下方に位置するように所定の間隔をあけて複数配置されているので、CCDカメラ3の撮影領域をプレス部品10が通過する際、プレス部品10の全側面部10bがさらに明るく照明されるようになり、CCDカメラ3で撮影する画像が鮮明になって確実に傷等を撮影することができる。
《発明の実施形態2》
図3は、本発明の実施形態2に係る検査装置1である。この実施形態2では、第2照明具5の構造が実施形態1と異なるだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0048】
実施形態2の第2照明具5は、上記第1照明具4の周りに配置され、下端が開放する碗型状の第2ケース5bを備えている。
【0049】
該第2ケース5bの内面には、多数の赤色LED5aが全体に亘って取り付けられ、これら赤色LED5aは、当該各赤色LED5aから照射される赤色の光を拡散させて照明ムラを抑える碗型状の樹脂製第2拡散板5cで第2ケース5b内側から覆われている。
【0050】
尚、実施形態2の検査装置1によるコンベア2で搬送中のプレス部品10の検査は、実施形態1の検査装置1によるものと同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0051】
以上より、本発明の実施形態2によると、実施形態1の如き各第2照明具5が周方向に離間していないので、実施形態1の検査装置1に比べて、さらにプレス部品10の全側面部10bを各赤色LED5aで均一に照明でき、全側面部10bに発生する傷等を確実に見つけ出すことができる。
【0052】
尚、本発明の実施形態1、2では、第1光源を白色、第2光源を赤色としたが、第1光源を赤色、第2光源を白色としてもよい。また、第1及び第2光源はその他の色でもよく、同じ色であってもよい。
【0053】
また、本発明の実施形態1、2では、プレス部品10の撮影にCCDカメラ3を用いたがCMOSカメラを用いてもよい。
【0054】
また、本発明の実施形態1、2で使用するCCDカメラ3の撮影速度は、約0.2msecであるが、プレス部品10の大きさや搬送速度等を考慮して、その他の撮影速度のCCDカメラを用いてもよい。