特許第6016528号(P6016528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016528
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】太陽電池裏面保護シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20161013BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161013BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20161013BHJP
   C09J 175/04 20060101ALN20161013BHJP
   C09J 11/06 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   H01L31/04 562
   B32B27/00 D
   B32B27/40
   !C09J175/04
   !C09J11/06
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-185151(P2012-185151)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-44996(P2014-44996A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 文也
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 昌隆
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/073859(WO,A1)
【文献】 特開2012−124357(JP,A)
【文献】 特開2010−238815(JP,A)
【文献】 特開2012−142349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04 − 31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の基材が接着剤を介して積層されている太陽電池裏面保護シートであって、
前記接着剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとオクチル酸錫とを混合することによって得られたウレタン樹脂を含有し、
(1)前記アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することにより得られ、前記重合性単量体は、水酸基を有する単量体及びその他の単量体を含有し、前記その他の単量体はアクリロニトリルを含み、前記アクリロニトリルは、前記重合性単量体100重量%中、5.0〜15.0重量%であり、
(2)前記イソシアネート化合物は、キシリレンジイソシアネートモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との双方を含有し、前記キシリレンジイソシアネートモノマーと前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との総重量100重量%中、前記キシリレンジイソシアネートモノマーが20〜40重量%及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が80〜60重量%であり、
(3)前記アクリルポリオールに由来する水酸基に対する、前記キシリレンジイソシアネートモノマー及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体に由来するイソシアネート基の当量比が1.0〜3.0である、
ことを特徴とする太陽電池裏面保護シート。
【請求項2】
前記2種以上の基材は、外層基材及び内層基材であり、前記太陽電池裏面保護シートを用いて太陽電池モジュールを形成した際に発電セル側に前記内装基材が位置する、請求項1に記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項3】
前記外層基材と前記内層基材との間に中間層基材を有する、請求項2に記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項4】
前記アクリルポリオールは、ガラス転移温度が−10℃〜10℃である、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項5】
前記アクリルポリオールは、水酸基価が5〜30mgKOH/gである、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池保護シート。
【請求項6】
前記外層基材及び/又は内層基材は、コーティングによって形成される、請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項7】
前記内層基材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び低密度ポリエチレンの少なくとも1種を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項8】
前記中間層基材は、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド及びポリフェニレンエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項9】
前記中間層基材は、アルミニウム箔及び/又は無機蒸着フィルムを含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項10】
前記外層基材の外層に、フッ素系コート及び/又はアクリル系コートが施されている、請求項1〜9のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項11】
前記外層基材は、フッ素フィルム、ポリエステルフィルム及び無機蒸着フィルムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項2〜5及び7〜10のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シートを用いて得られる太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池裏面保護シート及び当該太陽電池裏面保護シートを用いて得られる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、有用なエネルギー資源として実用化が進んでいる。太陽電池にはさまざまな形態があり、代表的なものとして、シリコン系太陽電池、無機化合物系太陽電池、有機系太陽電池等が知られている。
【0003】
太陽電池モジュールには、太陽光が入射する側に表面保護を目的として表面保護シートが設けられている。また、その反対側には発電セルを保護する目的として太陽電池裏面保護シート(太陽電池バックシート)が設けられている。そして、太陽電池裏面保護シートには、太陽電池モジュールの長期的な性能劣化を最小限に抑えるために、耐候性、耐水性、耐熱性、防湿性、ガスバリア性等の物性が求められている。
【0004】
これらの物性を有する太陽電池裏面保護シートを得るために、従来、種々のフィルムが使用されており、例えば、アルミニウム、銅、鋼板等の金属箔、金属板及び金属蒸着フィルム;ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂等のプラスチックフィルム等を例示することができる。また、更に性能を向上するために、これらのフィルムを積層した積層体も使用されている。
【0005】
フィルムを積層した積層体の例を図1に例示する。太陽電池裏面保護シート10は複数のフィルム11及び12の積層体であり、フィルム11及び12は接着剤13を介して積層されている。フィルムの積層方法としてはドライラミネート法が一般的であり、接着剤13は、フィルム11及び12に対して十分な接着性を有することが要求される。
【0006】
太陽電池モジュールの例を図2に例示する。太陽電池裏面保護シート10は、発電セルを封止する封止材20、発電セル30、ガラス板40及びフレーム50と組み合わされて太陽電池モジュール1を構成している。
【0007】
太陽電池モジュール1は、長期間に亘って屋外に曝されるため、高温、多湿及び太陽光に対する十分な耐久性が要求される。図1において、特に接着剤13の性能が低いとフィルム11及び12が剥がれ、経時的に太陽電池裏面保護シート10の外観が損なわれる。このため、太陽電池裏面保護シート用接着剤には、太陽電池モジュール1が長期間に亘って屋外に暴露されてもフィルムどうしが剥離しないことが要求される。
【0008】
太陽電池裏面保護シート用接着剤の一例としてはウレタン接着剤があり、特許文献1〜3には、耐久性や耐加水分解性向上を目的としてポリオールにイソシアネート等の硬化剤を配合した太陽電池裏面保護シート用接着剤が開示されている。
【0009】
特許文献1の実施例には、ウレタン系ラミネート用接着剤を用いて太陽電池裏面保護シートを製造したことが記載されている。特許文献2及び3には、アクリルポリオールにイソシアネート硬化剤を配合して接着剤を製造し(特許文献2の表1及び表2、特許文献3の表1及び表2参照)、この接着剤を用いて、長期耐候性及び耐加水分解性に優れる太陽電池裏面保護シートを製造したことが開示されている。
【0010】
特許文献1〜3は、耐加水分解性やラミネート強度の優れた接着剤を用いて太陽電池裏面保護シートを作製し、太陽電池モジュールの外観不良を防止できることを教示している。しかしながら、太陽電池裏面保護シートに用いるフィルムの種類は年々増加する傾向にあり、そのようなフィルムは、耐加水分解性を向上させるために疎水性が高く設計されており、耐加水分解性に優れた材料として、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリエステルフィルム、フッ素フィルム、無機蒸着フィルム等が挙げられる。しかしながら、LLDPEやポリエステルフィルム、フッ素フィルム、無機蒸着フィルムは、難接着な材料である。そのため、接着強度が十分確保できないという問題やジッピングと呼ばれる急激な剥離の問題が起こり易い。加えて、フィルム自体の耐候性も向上してきていることや太陽電池モジュールに求められる性能が年々高くなっていることから、太陽電池裏面保護シート用接着剤に求められる性能も必然的に高いものになってきている。従って、特許文献1〜3の太陽電池裏面保護シートが需要者の要求を十分に満たしているとはいい難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−247390号公報
【特許文献2】特開2010−238815号公報
【特許文献3】特開2010−263193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、2種以上の基材が接着剤を介して積層されている太陽電池裏面保護シートであって、2種以上の基材が難接着性のフィルムである場合でも、接着強度が良好であり、ジッピングの発生が抑制されている、改良された太陽電池裏面保護シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、2種以上の基材を特定の接着剤を介して積層することにより太陽電池裏面保護シートを得る場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記の太陽電池裏面保護シート及び太陽電池モジュールに関する。
1.2種以上の基材が接着剤を介して積層されている太陽電池裏面保護シートであって、
前記接着剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとオクチル酸錫とを混合することによって得られたウレタン樹脂を含有し、
(1)前記アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することにより得られ、前記重合性単量体は、水酸基を有する単量体及びその他の単量体を含有し、前記その他の単量体はアクリロニトリルを含み、前記アクリロニトリルは、前記重合性単量体100重量%中、5.0〜15.0重量%であり、
(2)前記イソシアネート化合物は、キシリレンジイソシアネートモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との双方を含有し、前記キシリレンジイソシアネートモノマーと前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との総重量100重量%中、前記キシリレンジイソシアネートモノマーが20〜40重量%及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が80〜60重量%であり、
(3)前記アクリルポリオールに由来する水酸基に対する、前記キシリレンジイソシアネートモノマー及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体に由来するイソシアネート基の当量比が1.0〜3.0である、
ことを特徴とする太陽電池裏面保護シート。
2.前記2種以上の基材は、外層基材及び内層基材であり、前記太陽電池裏面保護シートを用いて太陽電池モジュールを形成した際に発電セル側に前記内装基材が位置する、上記項1に記載の太陽電池裏面保護シート。
3.前記外層基材と前記内層基材との間に中間層基材を有する、上記項2に記載の太陽電池裏面保護シート。
4.前記アクリルポリオールは、ガラス転移温度が−10℃〜10℃である、上記項1〜3のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
5.前記アクリルポリオールは、水酸基価が5〜30mgKOH/gである、上記項1〜4のいずれかに記載の太陽電池保護シート。
6.前記外層基材及び/又は内層基材は、コーティングによって形成される、上記項1〜5のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
7.前記内層基材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及び低密度ポリエチレンの少なくとも1種を含有する、上記項1〜6のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
8.前記中間層基材は、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド及びポリフェニレンエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記項1〜7のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
9.前記中間層基材は、アルミニウム箔及び/又は無機蒸着フィルムを含有する、上記項1〜8のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
10.前記外層基材の外層に、フッ素系コート及び/又はアクリル系コートが施されている、上記項1〜9のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
11.前記外層基材は、フッ素フィルム、ポリエステルフィルム及び無機蒸着フィルムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記項2〜5及び7〜10のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート。
12.上記項1〜11のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シートを用いて得られる太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0015】
本発明の太陽電池裏面保護シートは、2種以上の基材が特定の接着剤を介して積層されていることにより、2種以上の基材が、従来、難接着と考えられていたフィルムである場合でも、接着強度が良好であり、ジッピングの発生が抑制されている。
【0016】
本発明の太陽電池裏面保護シートを用いて太陽電池モジュールを形成することにより、太陽電池モジュールの外観不良を長期間に亘って抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の太陽電池裏面保護シートの一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の太陽電池裏面保護シートは、2種以上の基材が接着剤を介して積層されている太陽電池裏面保護シートであって、前記接着剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとオクチル酸錫とを混合することによって得られたウレタン樹脂を含有し、
(1)前記アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することにより得られ、前記重合性単量体は、水酸基を有する単量体及びその他の単量体を含有し、前記その他の単量体はアクリロニトリルを含み、前記アクリロニトリルは、前記重合性単量体100重量%中、5.0〜15.0重量%であり、
(2)前記イソシアネート化合物は、キシリレンジイソシアネートモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との双方を含有し、前記キシリレンジイソシアネートモノマーと前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との総重量100重量%中、前記キシリレンジイソシアネートモノマーが20〜40重量%及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が80〜60重量%であり、
(3)前記アクリルポリオールに由来する水酸基に対する、前記キシリレンジイソシアネートモノマー及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体に由来するイソシアネート基の当量比が1.0〜3.0であることを特徴とする。
【0019】
上記特徴を有する本発明の太陽電池裏面保護シートは、2種以上の基材が特定の接着剤を介して積層されていることにより、2種以上の基材が、従来、難接着フィルム(例えば、フッ素系フィルム、耐加水分解ポリエステル等)である場合でも、接着強度が良好であり、ジッピングの発生が抑制されている。特に本発明で用いる特定の接着剤は十分な電気絶縁性を有し、更に加速劣化試験においても良好な性能を維持することが可能であり、本発明の太陽電池用裏面保護シートは有用性が高い。
【0020】
本発明の太陽電池裏面保護シートは、2種以上の基材を、例えば、外層基材及び内層基材の2層とし、当該太陽電池裏面保護シートを用いて太陽電池モジュールを形成した際に発電セル側に前記内装基材が位置するように設計することができる。また、外層基材と内層基材との間に中間層基材を有するように設計することもできる。このとき、外層基材としては耐候性を有するもの、中間層基材としては耐電圧を有するもの、内層基材としては発電セルを封止する封止材と良好な接着力を有するものを用いることが好ましい。
【0021】
外層基材、内層基材及び中間層基材としては、公知の太陽電池裏面保護シートに用いられているものを利用できる。より具体的には次の通りである。
【0022】
外層基材に用いるフィルムは、1種又は2種以上の樹脂成分を含有するものでもよく、一軸又は二軸方向に延伸されているものでもよい。例えば、フッ素フィルム、ポリエステルフィルム、無機蒸着フィルムが好適に用いられる。より好ましくは、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等や、耐加水分解ポリエステルが挙げられる。また、外層基材に用いるフィルムの大気に曝露される側の面には、フッ素系コート及び/又はアクリル系コートを施してもよい。
【0023】
外層基材の厚さは限定されないが、10〜100μm程度が好ましい。
【0024】
中間層基材に用いるフィルムは、ポリエステル、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート、アクリル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、アルミ箔、無機蒸着フィルム等のフィルムが挙げられる。列挙された樹脂は、1種又は2種以上を混合して使用してもよい。より好ましくは、ポリエステルや耐加水分解ポリエステルが好ましい。また、中間層基材は単層でも良いが、複層でも良い。
【0025】
中間層基材の厚さは限定されないが、30〜250μmが好ましい。
【0026】
内層基材としては、例えば、低密度ポリエチレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の少なくとも1種が好適に用いられる。
【0027】
内層基材の厚さは限定されないが、30〜250μmが好ましい。
【0028】
本発明では、上記各基材は、下記の特定の接着剤を介して積層されている。
【0029】
本発明で用いる接着剤は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとオクチル酸錫とを混合することによって得られたウレタン樹脂を含有する。ここで、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランはシランカップリング剤であり、オクチル酸錫は硬化性触媒である。
【0030】
上記アクリルポリオールは、重合性単量体が重合することで得られたものであり、「重合性単量体」は、「水酸基を有する単量体」及び「その他の単量体」を含み、「その他の単量体」はアクリロニトリルを含み、当該アクリロニトリルは、「重合性単量体」100重量%中、5.0〜15.0重量%である。なお、「その他の単量体」は、水酸基を有する単量体以外の「エチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」である。
【0031】
上記アクリロニトリルが前記重合性単量体100重量%中、5.0重量%未満であると各基材に対する接着性能が低下するおそれがあり、15.0重量%を超えると初期の貼り込み性、各基材に対する接着性能等が低下するおそれがある。
【0032】
上記のイソシアネート化合物は、キシリレンジイソシアネートモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との双方を含有し、前記キシリレンジイソシアネートモノマーと前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体との総重量100重量%中、前記キシリレンジイソシアネートモノマーが20〜40重量%及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が80〜60重量%である。
【0033】
上記キシリレンジイソシアネートモノマーの含有量が20重量%未満であると、内層基材に使用され易いEVAとの接着性能が低下するおそれがある。また、外層基材に使用され易いPVF又はPVDFと、中間層基材に使用され易いPETとの間でのジッピングが発生するおそれがある。更に、上記キシリレンジイソシアネートモノマーの含有量が40重量%を超えると、発泡による初期の外観不良が発生し、シワ等が生じるおそれがある。
【0034】
また、上記アクリルポリオールは、ガラス転移温度が−10℃〜10℃であることが好ましい。ガラス転移温度が−10℃未満のアクリルポリオールであると、接着剤が柔らすぎることによって接着強度が低下するとともに形状の維持性が低下し易い。また、ガラス転移温度が10℃を超えるアクリルポリオールであると、接着剤が硬くなって脆くなり、強度が低下するためである。
【0035】
更に、上記アクリルポリオールは、水酸基価が5〜30mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価が5mgKOH/g未満のアクリルポリオールであると、各基材に対する接着性能が低下するおそれがある。また、水酸基価が30mgKOH/gを超えると、初期及び耐熱試験後の接着性能が低下するおそれがある。
【0036】
本発明で用いる接着剤は、更に前記アクリルポリオールに由来する水酸基に対する、前記キシリレンジイソシアネートモノマー及び前記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体に由来するイソシアネート基の当量比が1.0〜3.0である、
上記当量比が1.0未満であると、各基材に対しての初期及び耐熱試験後の接着性能が低下するおそれがある。また、当量比が3.0を超えると、各基材に対しての耐熱試験後の接着性能が低下するおそれがある。
【0037】
本発明の太陽電池裏面保護シートを用いて太陽電池モジュールを作製する際は、太陽電池裏面保護シートの構成材料として特に上記接着剤を用いる以外は、公知の構成を利用することができる。つまり、接着剤以外の太陽電池裏面保護シートのフィルムの層構成、太陽電池モジュールの構成材料である発電セル、発電セルを封止する封止材、ガラス板、フレーム等の公知の構成をそのまま利用することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例、比較例及び試験例を示して本発明の特徴を一層明確にする。但し本発明の範囲は、実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
密度0.91g/cmのポリエチレン樹脂100kgに、酸化チタン粒子25kgを添加し、十分に混練してLLDPE(線状低密度ポリエチレン)樹脂組成物を調製した。このLLDPE樹脂組成物を押出機で押出して厚み50μmの内層基材を作製した。
【0040】
電気絶縁性に優れる中間層基材として厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製:東洋紡エステルフィルムE5102)を用意した。
【0041】
外層基材としてPVFフィルム(デュポン社製、38μm)を用意した。
【0042】
接着剤としては、ヘンケルジャパン社製アクリルポリオールLexp10−3(5重量部のアクリロニトリルと、水酸基を有する単量体及びその他の単量体とを含む混合物と、を重合して得られたアクリルポリオールであり、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランと、オクチル酸錫を添加したもの。アクリルポリオールのガラス転移温度は0℃であり、OH価は15mgKOH/gである。)を100g重量部(乾燥重量)に対して、ヘンケルジャパン製イソシアネート化合物Lexp11−1(キシリレンジイソシアネートモノマーが30重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が70重量部を含み、NCO基の割合が28.7%である。)7.8重量部を混合してウレタン樹脂を得た。ここで、上記アクリルポリオールに由来する水酸基に対する、上記キシリレンジイソシアネートモノマーと、上記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体に由来するイソシアネート基の当量比は2.0である。
【0043】
上記の外層基材、中間層基材、内層基材を順に上記の接着剤を7g/mを介して、ラミネート加工により貼り合わせた。これにより、太陽電池裏面保護シートを得た。
【0044】
実施例2
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−4(Lexp10−3のアクリロニトリルを5重量部から10重量部に変更したもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0045】
実施例3
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−5(Lexp10−3のアクリロニトリルを5重量部から15重量部に変更したもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0046】
実施例4
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−7(Lexp10−4のガラス転移温度が0℃から−10℃に変更したもの)を用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0047】
実施例5
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−8(Lexp10−4のガラス転移温度が0℃から10℃に変更したもの)を用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0048】
実施例6
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−9(Lexp10−4のガラス転移温度が0℃から−15℃に変更したもの)を用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0049】
実施例7
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−10(Lexp10−4のガラス転移温度が0℃から15℃に変更したもの)を用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0050】
実施例8
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−11(Lexp10−4のOH価を15mgKOH/gから5mgKOH/gに変更したもの)を用い、アクリルポリオール100重量部に対するイソシアネート化合物Lexp11−1の混合量を7.8重量部から5.2重量部に変更したものを用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0051】
実施例9
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−12(Lexp10−4のOH価を15mgKOH/gから30mgKOH/gに変更したもの)を用い、アクリルポリオール100重量部に対するイソシアネート化合物Lexp11−1の混合量を7.8重量部から15.6重量部に変更したものを用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0052】
実施例10
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−13(Lexp10−4のOH価を15mgKOH/gから3mgKOH/gに変更したもの)を用い、アクリルポリオール100重量部に対するイソシアネート化合物Lexp11−1の混合量を7.8重量部から2.6重量部に変更したものを用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0053】
実施例11
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−14(Lexp10−4のOH価を15mgKOH/gから40mgKOH/gに変更したもの)を用い、アクリルポリオール100重量部に対するイソシアネート化合物Lexp11−1の混合量を7.8重量部から20.9重量部に変更したものを用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0054】
実施例12
外層基材として難接着性フィルムである、耐加水分解性を有するポリエステルフィルム(東レ社製X10s 50μm)を用いて、中間層基材を用いずに、外層基材/接着剤/内層基材とした以外は、実施例1と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0055】
比較例1
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−1(Lexp10−3のアクリロニトリルを5重量部から0重量部に変更したもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0056】
比較例2
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−2(Lexp10−3のアクリロニトリルを5重量部から3重量部に変更したもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0057】
比較例3
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−6(Lexp10−3のアクリロニトリルを5重量部から25重量部に変更したもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0058】
比較例4
イソシアネート化合物にヘンケルジャパン社製Lexp11−2(キシリレンジイソシアネートモノマーが10重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が90重量部を含み、NCO基の割合が24.1%である。)を用い、アクリルポリオール100重量部に対するイソシアネート化合物Lexp11−2の混合量を9.3重量部とした以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0059】
比較例5
イソシアネート化合物にヘンケルジャパン社製Lexp11−3(キシリレンジイソシアネートモノマーが50重量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が50重量部を含み、NCO基の割合が33.3%である。)を用い、アクリルポリオール100重量部に対するイソシアネート化合物Lexp11−3の混合量を6.7重量部とした以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0060】
比較例6
アクリルポリオールLexp10−4を100重量部に対してイソシアネート化合物Lexp11−1の混合量を3.1重量部、上記アクリルポリオールに由来する水酸基に対し、上記キシリレンジイソシアネートモノマーと、上記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体に由来するイソシアネート基の当量比を0.8とした以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0061】
比較例7
アクリルポリオールLexp10−4を100重量部に対してイソシアネート化合物Lexp11−1の混合量を13.7重量部、上記アクリルポリオールに由来する水酸基に対し、上記キシリレンジイソシアネートモノマーと、上記ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体に由来するイソシアネート基の当量比を3.5とした以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0062】
比較例8
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−15(Lexp10−4に、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを添加しなかったもの)を用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0063】
比較例9
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−16(Lexp10−4に、水酸基を有する単量体を用いなかったもので、OH価は15mgKOH/gから0mgKOH/gとなったもの)を用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0064】
比較例10
アクリルポリオールをヘンケルジャパン社製Lexp10−17(Lexp10−4に、オクチル酸錫を添加しなかったもの)を用いた以外は、実施例2と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0065】
比較例11
接着剤に、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン含まない、タケラックA−315とタケネートA−50を100:10の割合で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0066】
比較例12
外層基材として、難接着性フィルムである、耐加水分解ポリエステル(東レ社製X10s 50μm)を用い、中間層基材を用いずに、外層基材/接着剤/内層基材とした以外は、比較例11と同様にして太陽電池裏面保護シートを得た。
【0067】
下記の表1及び表2に各実施例及び比較例で用いたLexp10−1〜Lexp10−17及びLexp11−1〜Lexp11−3の物性のまとめを示す。
【0068】
【表1】
【0069】
〔表1中、AN量はアクリロニトリル含有量を示す。〕
【0070】
【表2】
【0071】
試験例1
<測定方法>
剥離強度試験は東洋精機社製VGS−1−Eを用い、室温24℃、湿度50%の環境において、中間層基材を固定し、中間層基材/内層基材間を剥離する場合には内層基材を、外層基材/中間層基材間を剥離する場合には外層基材を180度剥離方向に引っ張り、剥離強度を測定した。剥離片は、ダブルブレードカッターにより、幅15mmのものを作成した。剥離速度は100mm/minとし、剥離距離は7/mmで測定したものの凸平均の値を測定値とした。
【0072】
また、劣化試験はPCT(プレッシャークッカー試験)を用いて行った。PCTの環境は温度121度、湿度100%、気圧は2atmの条件を用いた。
【0073】
初期の剥離強度が10N/15mm以上のものを◎、10N/15mm未満8N/15mm以上のものを○、8N/15mm未満7N/15mm以上のものを△、7N/15mm未満を×とし、PCT後の剥離強度が、8N/15mm以上のものを◎、8N/15mm未満7N/15mm以上のものを○、7N/15mm未満6N/15mm以上のものを△、6N/15mm未満を×とした。
【0074】
ジッピングについては、剥離強度の測定において、剥離強度が一定の強度に達した瞬間に剥離強度が一定の値に達したときに、フィルムの急激な剥離が観測できる状態をジッピングと定義し、一度の測定は観測されない場合もあるため、6回測定を行って、前記のようなジッピングが見られたものをジッピングありと判定した。
<測定結果>
測定結果を下記の表1に示す。表3に示すように、実施例1〜12のいずれにおいても、初期剥離強度及びPCT後剥離強度は△、○、◎のいずれかであった。詳細には、実施例1〜5、8、9では良好な接着性を備えていた。実施例6では、仮想EVA接着性能が若干低下していたものの、良好な接着性を備えていた。実施例7、10では、各種基材に対する接着性能が実施例1〜5、8、9よりは若干低下したものの、良好な接着性を備えていた。実施例11では、初期及び耐熱試験後の接着性能が若干低下したものの、良好な接着性を備えていた。また、ジッピングはいずれの実施例においても確認されなかった。
【0075】
一方、比較例1〜12では、初期剥離強度及びPCT後剥離強度において×が1つ以上、および/またはジッピングが確認された。詳細には、比較例1、2、9では、各基材に対する接着性能が低下しており、比較例3では初期の貼り込み性の低下、比較例4ではPVF/PET間でのジッピングの発生、比較例10では反応率の低下が、さらに見られた。また、比較例5では発泡により初期の外観不良が発生し、比較例6では各基材に対して初期の接着性能と耐熱試験後の接着性能の低下がみられ、比較例7でも耐熱試験後の接着性能の低下がみられた。比較例8ではPVF/PET間でのジッピングの発生が生じた。
【0076】
さらに、実施例12と比較例12を比較して分かる様に、太陽電池用裏面保護シートに難接着性の耐加水分解ポリエステルを用いても、実施例12の太陽電池用裏面保護シートでは初期およびPCT後の双方で高い接着性を維持していることがわかる。
【0077】
【表3】
【符号の説明】
【0078】
1.太陽電池モジュール
10.太陽電池裏面保護シート
11.フィルム
12.フィルム
13.接着剤
20.封止材
30.発電セル
40.ガラス板
50.フレーム
図1
図2