(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016531
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20161013BHJP
F01N 13/20 20100101ALI20161013BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20161013BHJP
【FI】
A01D41/12 E
F01N13/20 E
F01N13/08 A
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-189120(P2012-189120)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-45671(P2014-45671A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】松林 智也
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−060955(JP,A)
【文献】
特開2009−068422(JP,A)
【文献】
特開2000−127770(JP,A)
【文献】
特開2011−087517(JP,A)
【文献】
特開2007−244307(JP,A)
【文献】
特開2007−244308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/12
B60K 13/04
F01N 13/08
F01N 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に設けられた運転部と、
前記運転部の後方に機体左右方向に並設された脱穀装置及び穀粒タンクと、
前記運転部の下方に設けられたエンジンと、
前記エンジンからの排気を外気に排出する排気管と、を備え、
前記排気管は、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間を通って、前記エンジンから少なくとも前記脱穀装置の上端部まで延びる排気管本体と、前記排気管本体の排気下流側端部に取り付けられた延長部と、を有し、
前記延長部は、その径が前記排気管本体の径よりも大きく、かつ、前記排気管本体の排気下流側端部が前記延長部の排気上流側端部に挿し込まれた状態で前記排気管本体の排気下流側端部に取り付けられており、
前記排気管本体と前記延長部との間に、前記排気管の外部と前記排気管の内部とを連通する隙間が形成されており、
前記排気管本体の排気下流側端部と前記延長部の排気上流側端部との重複箇所における前記排気管本体の外周面と前記延長部の内周面との間には、前記排気管本体と前記延長部とを連結する部材が設けられておらず、かつ、前記排気管本体のうち排気下流側の端面に、前記排気管本体の周方向に間隔をあけて、前記排気管本体と前記延長部とを連結する複数のステーが固定されており、
前記ステーに、前記延長部の内周面が固定されているコンバイン。
【請求項2】
前記ステーの断面形状は、略L字形状であり、
前記ステーに、前記排気管本体のうち排気下流側の端面に沿う縦向き部と、前記延長部の内周面に沿う横向き部と、が備えられ、
前記延長部は、前記延長部の外周側から締結具を締め込むことで、前記横向き部に固定されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記排気管本体の断面形状は、円形であり、
前記延長部の断面形状は、多角形である請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記延長部の排気下流側端部に、前記排気管から排出される排気の風向を設定する風向板が取り付けられている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記風向板は、前記延長部の外周面との間に隙間が無いように、前記延長部の外周面に取り付けられている請求項4に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記風向板は、排気下流側ほど前記延長部の中心軸に近づくように、前記延長部の軸方向に対して傾斜している請求項4又は請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記風向板の排気下流側端部は、前記延長部の中心軸上まで延びている請求項6に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記風向板は、前記延長部の外周面に固定され、
前記排気管本体に対する前記延長部の周方向の位置を変更可能な風向変更機構を備える請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記延長部の断面形状は、六角形である請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項10】
前記延長部は、前記脱穀装置の後端または前記穀粒タンクの後端よりも後方に配置されている請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項11】
前記隙間は、前記排気管本体の外周面と前記延長部との内周面との間に形成されている請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。より詳細には、エンジンからの排気を外気に排出する排気管を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記のようなコンバインは、公知となっている。例えば、特許文献1には、エンジンからの排気を外気に排出する排気管を備えるコンバインの排気構造が開示されている。この排気管は、脱穀装置と回収部(穀粒タンク)との間を通っている。そして、排気管は、第1管部と、第2管部と、を備えている。このうち第1管部は、エンジンマフラーに取り付けられている。また、第2管部は、第1管部の排気下流側端部に取り付けられている。そして、エンジンマフラーと第1管部との接続部、及び第1管部と第2管部との接続部には、排気管の外部と排気管の内部とを連通する隙間が、それぞれ形成されている。こうして、エンジンマフラーと第1管部との間の隙間、及び第1管部と第2管部との間の隙間のそれぞれから、外気を排気管の内部に取り込むことにより、排気温度の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−60955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のコンバインでは、エンジンマフラーと第1管部との間の隙間、及び第1管部と第2管部との間の隙間が、脱穀装置と穀粒タンクとの間に位置しているため、これらの隙間から取り込まれる外気に、脱穀装置と穀粒タンクとの間に滞留する熱気が含まれ易い。したがって、エンジンマフラーと第1管部との間の隙間、及び第1管部と第2管部との間の隙間から外気を取り込んだとしても、排気温度を十分に低減することができなかった。そして、排気が排気管から後方に排出されると、排気温度が十分に低減されていないため、コンバインの後方で作業する作業者に、排気による不快感を与えたり、周囲の部材が焦げ付いたりすることがあった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、排気温度を十分に低減することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、走行機体の前部に設けられた運転部と、前記運転部の後方に機体左右方向に並設された脱穀装置及び穀粒タンクと、前記運転部の下方に設けられたエンジンと、前記エンジンからの排気を外気に排出する排気管と、を備え、前記排気管は、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間を通って、前記エンジンから少なくとも前記脱穀装置の上端部まで延びる排気管本体と、前記排気管本体の排気下流側端部に取り付けられた延長部と、を有し、前記延長部は、その径が前記排気管本体の径よりも大きく、かつ、前記排気管本体の排気下流側端部が前記延長部の排気上流側端部に挿し込まれた状態で前記排気管本体の排気下流側端部に取り付けられており、前記排気管本体と前記延長部との間に、前記排気管の外部と前記排気管の内部とを連通する隙間が形成されており、
前記排気管本体の排気下流側端部と前記延長部の排気上流側端部との重複箇所における前記排気管本体の外周面と前記延長部の内周面との間には、前記排気管本体と前記延長部とを連結する部材が設けられておらず、かつ、前記排気管本体のうち排気下流側の端面に、前記排気管本体の周方向に間隔をあけて
、前記排気管本体と前記延長部とを連結する複数のステーが固定されており、前記ステーに、前記延長部の内周面が固定されていることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、脱穀装置の上端部まで延びる排気管本体の排気下流側端部に、排気管本体と延長部との間の隙間が位置している。このため、排気管本体と延長部との間の隙間から、脱穀装置の上端部付近にある比較的低温の外気を取り込むことができる。したがって、排気温度を十分に低減することができる。そして、排気が排気管から後方に排出されたとしても、排気温度が十分に低減されているため、コンバインの後方で作業する作業者に、排気による不快感を与えたり、周囲の部材が焦げ付いたりすることがない。
さらに、本発明は、前記ステーの断面形状は、略L字形状であり、前記ステーに、前記排気管本体のうち排気下流側の端面に沿う縦向き部と、前記延長部の内周面に沿う横向き部と、が備えられ、前記延長部は、前記延長部の外周側から締結具を締め込むことで、前記横向き部に固定されていると好適である。
【0008】
さらに、本発明は、前記排気管本体の断面形状は、円形であり、前記延長部の断面形状は、多角形であると好適である。
【0009】
本特徴構成によれば、延長部の断面形状を多角形にすることにより、延長部の断面形状を当該多角形に内接する円形とした場合よりも、延長部の断面積が大きくなる。これにより、排気管本体の断面積と延長部の断面積との差が大きくなるため、排気管本体と延長部との間の隙間が大きくなる。このため、排気管本体と延長部との間の隙間から、外気を多く取り込むことができる。したがって、排気温度を十分に低減することができる。また、延長部の断面形状を多角形にすることにより、延長部の断面形状を当該多角形に外接する円形とした場合よりも、延長部の径方向の大きさが小さくなる。したがって、延長部をコンパクトに構成することができる。
【0010】
さらに、本発明は、前記延長部の排気下流側端部に、前記排気管から排出される排気の風向を設定する風向板が取り付けられていると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、排気管から排出される排気が、周囲の部材にかからないように、排気管から排出される排気の風向を、風向板で設定することができる。したがって、排気が排気管から排出されたとしても、周囲の部材が焦げ付いたりすることがない。
【0012】
さらに、本発明は、前記風向板は、前記延長部の外周面との間に隙間が無いように、前記延長部の外周面に取り付けられていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、風向板と延長部の外周面との間に隙間がある場合、当該隙間を空気が流れることにより、排気管から排出される排気の流れが乱れ易いところ、風向板と延長部の外周面との間に隙間が無いことから、風向板と延長部の外周面との間を空気が流れないため、排気管から排出される排気の流れが乱れ難い。したがって、風向板で設定した排気の風向が、不測に変動することがない。
【0014】
さらに、本発明は、前記風向板は、排気下流側ほど前記延長部の中心軸に近づくように、前記延長部の軸方向に対して傾斜していると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、排気管から排出された排気が、風向板に衝突して、風向板の傾斜に沿って延長部の中心軸に対して斜めに流れることにより、排気管から排出される排気の風向が変化する。したがって、風向の制御性が向上する。
【0016】
さらに、本発明は、前記風向板の排気下流側端部は、前記延長部の中心軸上まで延びていると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、排気管から排出された排気が、風向板に衝突して、風向板の傾斜に沿って延長部の中心軸に対して斜めに流れることにより、排気管から排出される排気の風向きが変化し、かつ、少なくとも延長部の中心軸付近まで確実に案内される。したがって、排気が排気管から排出されたとしても、排気管からの排気の排出を阻害し難い状態ながらも、風向の制御性がより向上する。
【0018】
さらに、本発明は、前記風向板は、前記延長部の外周面に固定され、前記排気管本体に対する前記延長部の周方向の位置を変更可能な風向変更機構を備えると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、風向板が延長部の外周面に固定されているので、排気管本体に対する延長部の周方向の位置を風向変更機構で変更するだけで、排気管から排出される排気の風向を簡単に変更することができる。
【0020】
さらに、本発明は、前記延長部の断面形状は、六角形であると好適である。
【0021】
本特徴構成によれば、排気管本体と延長部との間の隙間を大きくしつつ、延長部をコンパクトに構成することができる。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
さらに、本発明は、前記延長部は、前記脱穀装置の後端または前記穀粒タンクの後端よりも後方に配置されていると好適である。
【0026】
さらに、本発明は、前記隙間は、前記排気管本体の外周面と前記延長部との内周面との間に形成されているであると好適である。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0037】
先ず、コンバインの全体構成について、
図1及び
図2により説明する。
【0038】
図1及び
図2に示すように、コンバインは、クローラ式の走行機体1を備えている。この走行機体1の前方には、刈取部2が設けられている。そして、走行機体1の前部には、運転部3が設けられている。この運転部3の下方には、エンジン4が設けられている。このエンジン4は、マフラー5を備えている。このマフラー5は、排気を排出する「排出部」であるテールパイプ5aを有している。このテールパイプ5aには、エンジン4からの排気を外気に排出する排気管9が取り付けられている。また、運転部3の後方には、脱穀装置6及び穀粒タンク7が、機体左右方向に並設されている。この脱穀装置6の後部には、排藁処理部8が設けられている。
【0039】
次に、排気管9について、
図3から
図10により説明する。
【0040】
図3及び
図4に示すように、排気管9は、エンジン4から機体後上方に向けて、機体後部まで延びている。具体的には、排気管9は、脱穀装置6の後端及び穀粒タンク7の後端よりも後方まで延びている。そして、排気管9は、排気管本体10と、延長部11と、風向変更機構21と、を備えている。
【0041】
排気管本体10は、脱穀装置6と穀粒タンク7との間を通って(
図2参照)、エンジン4から脱穀装置6の上端部(脱穀装置6の上端よりも上方)まで延びている。そして、排気管本体10は、第一排気管12と、第二排気管13と、を備えている。これら第一排気管12及び第二排気管13の断面形状は、いずれも円形である。
【0042】
また、排気管本体10は、側面視において機体後上がりに傾斜している。そして、排気管本体10は、側面視において第一排気管12の傾斜角度と第二排気管13の傾斜角度とが異なっている。具体的には、第一排気管12の傾斜角度は、第二排気管13の傾斜角度よりも大きい。なお、ここでいう第一排気管12の傾斜角度とは、第一排気管12のうち排気下流側端部(取付部12b)を除く部分の傾斜角度のことを意味している。
【0043】
第一排気管12は、排気管9においてエンジン4側(排気上流側)に位置している。そして、第一排気管12は、脱穀装置6の上端部(脱穀装置6の上端よりも上方)まで延びている。また、第一排気管12は、外管14に内挿された状態で、外管14に固定されている。
【0044】
外管14は、支持部16及び支持部17を介して、脱穀装置6の右側面に支持されている。そして、外管14は、断面形状が略半円形の第一カバー15で、穀粒タンク7側(右側)の外周面のみ覆われている。この第一カバー15は、多数の丸孔が形成された板状部材(いわゆるパンチングメタル)である。
【0045】
図5及び
図6示すように、第一排気管12の排気上流側端部は、外管14の排気上流側端部から突出している。この第一排気管12の排気上流側端部には、排気上流側ほど径が大きくなる拡径部12aが形成されている。この拡径部12aの径D2は、マフラー5のテールパイプ5aの径D1よりも大きい。つまり、拡径部12aは、テールパイプ5aに外装されている。換言すると、拡径部12aと、テールパイプ5aとが、排気流通方向において重複している。そして、テールパイプ5aの外周面と拡径部12aの内周面との間には、排気管9の外部と排気管9の内部とを連通する隙間18が形成されている。この隙間18は、テールパイプ5aの外周面と拡径部12aの内周面との間の全周に亘って形成されている。
【0046】
また、第一排気管12の排気下流側端部は、外管14の排気下流側端部から突出している。この第一排気管12の排気下流側端部には、第二排気管13が取り付けられる取付部12bが形成されている。この取付部12bは、側面視において第二排気管13の傾斜角度と同一の角度で傾斜している。
【0047】
図3及び
図4に示すように、第二排気管13は、第一排気管12の排気下流側端部(取付部12b)に取り付けられている。そして、第二排気管13は、支持部25及び支持部27を介して、脱穀装置6の右側面に支持されている。また、第二排気管13は、断面形状が略半円形の第二カバー26で、穀粒タンク7側(右側)の外周面のみ覆われている(
図9参照)。この第二カバー26は、多数の丸孔が形成された板状部材(いわゆるパンチングメタル)である。
【0048】
また、
図5に示すように、第二排気管13の径D4は、第一排気管12の取付部12bの径D3よりも大きい。つまり、第二排気管13の排気上流側端部は、取付部12bに外装されている。換言すると、第二排気管13の排気上流側端部と、取付部12bとが、排気流通方向において重複している。そして、取付部12bの外周面と第二排気管13の排気上流側端部の内周面との間には、排気管9の外部と排気管9の内部とを連通する隙間19が形成されている。この隙間19は、取付部12bの外周面と第二排気管13の排気上流側端部の内周面との間の全周に亘って形成されている。
【0049】
ここで、
図3及び
図7に示すように、穀粒タンク7の脱穀装置6の側の側面(左側面)において、排気管9よりも上方に位置する部分(第一膨出部)7aを、脱穀装置6の側(左側)に膨出させている。具体的には、穀粒タンク7の脱穀装置6の側の側面(左側面)において、その前側部分である第一膨出部7a及び第二膨出部7bが、その後側部分である側面7cよりも膨出している。これら第一膨出部7a及び第二膨出部7bは、側面7cよりも膨出している。そして、第一膨出部7aは、第二膨出部7bよりも膨出している。これにより、穀粒タンク7の容量を増加させることができる。
【0051】
図2及び
図3に示すように、延長部11は、脱穀装置6の後端及び穀粒タンク7の後端よりも後方に配置されている。つまり、延長部11は、排藁処理部8の上方に配置され、かつ、平面視において排藁処理部8と重複している。そして、延長部11は、平面視において排気管本体10と同一軸心上に配置されている。
【0052】
また、
図8及び
図10に示すように、延長部11は、第二排気管13の排気下流側端部に取り付けられている。そして、延長部11の断面形状は、多角形である。本実施形態では、延長部11の断面形状は、六角形(正六角形)である。また、延長部11は、第一半割部11aと第二半割部11bとが合わさって、断面形状が六角形となるように構成されている。
【0053】
また、延長部11の径D5及び径D6は、第二排気管13の径D4よりも大きい。つまり、延長部11は、第二排気管13の排気下流側端部に外装されている。換言すると、延長部11と、第二排気管13の排気下流側端部とが、排気流通方向において重複している。そして、第二排気管13の外周面と延長部11の内周面との間には、排気管9の外部と排気管9の内部とを連通する隙間22が形成されている。この隙間22は、第二排気管13の外周面と延長部11の内周面との間の全周に亘って形成されている。
【0054】
また、延長部11は、中心軸Cが水平となるように、第二排気管13の排気下流側端部に取り付けられている。そして、延長部11は、六つの面のうちの一の面が、水平な上面となるように配置されている。また、延長部11の排気下流側端部には、風向板20が取り付けられている。
【0055】
風向板20は、排気管9から排出される排気の風向を設定するものである。そして、風向板20は、延長部11の外周面との間に隙間が無いように、延長部11の外周面に取り付けられている。具体的には、風向板20は、延長部11の外周面に溶接により固定されている。そして、風向板20は、風向板本体20aと、一対の側板20bと、を備えている。なお、風向板20は、風向板本体20aと一対の側板20bとが一体成形されている(
図4参照)。
【0056】
風向板本体20aは、排気下流側ほど延長部11の中心軸Cに近づくように、延長部11の中心軸C方向に対して傾斜している。そして、風向板本体20aの排気下流側端部は、延長部11の中心軸C上まで延びている。つまり、風向板本体20aの排気下流側端部は、延長部11の中心軸C上に位置している。また、一対の側板20bは、風向板本体20aを両側(延長部11の中心軸Cを挟んで一方側と他方側)に振り分けて設けられている。
【0057】
以上のような構成によれば、脱穀装置6の上端部(脱穀装置6の上端よりも上方)まで延びる排気管本体10の排気下流側端部に、排気管本体10と延長部11との間の隙間22が位置している。このため、排気管本体10と延長部11との間の隙間22から、脱穀装置6の上端部付近にある比較的低温の外気を取り込むことができる。したがって、排気温度を十分に低減することができる。そして、排気が排気管9から後方に排出されたとしても、排気温度が十分に低減されているため、コンバインの後方で作業する作業者に、排気による不快感を与えたり、周囲の部材(例えば、穀粒タンク7の側壁等)が焦げ付いたりすることがない。
【0058】
特に、本実施形態では、隙間22(排気管本体10と延長部11との間の隙間)に加えて、隙間18(テールパイプ5aの外周面と拡径部12aの内周面との間の隙間)、及び隙間19(取付部12bの外周面と第二排気管13の排気上流側端部の内周面との間の隙間)からも、外気を取り込むことができる。したがって、排気温度を一層効果的に低減することができる。なお、このように隙間22、隙間18及び隙間19から外気を取り込むことができるのは、排気管9内に発生する負圧による引き込みによるものである。
【0059】
そして、排気管9から排出された排気が、風向板20に衝突して、風向板20の傾斜に沿って延長部11の中心軸Cに対して斜めに流れることにより、排気管9から排出される排気の風向が変化(
図8に示す場合では機体後上方に変化)する。したがって、風向の制御性が向上する。つまり、排気が排気管9から排出されたとしても、排気が上方に流れるため、周囲の部材(例えば、穀粒タンク7の側壁等)の焦げ付きをより確実に防止することができる。
【0060】
次に、風向変更機構21について、
図10により説明する。
【0061】
図10に示すように、風向変更機構21は、第二排気管13に対する延長部11の周方向の位置を変更可能なものである。そして、風向変更機構21は、三つのステー23と、六つのボルト孔11cと、三本のボルト24(本発明に係る「締結具」に相当)と、を備えている。
【0062】
ステー23は、略L字形状に形成されている。そして、ステー23は、第二排気管13に固定されている。具体的には、ステー23は、第二排気管13の排気下流側端縁に溶接により固定されている。なお、第二排気管13の排気下流側端縁は、鉛直に形成されている(
図8参照)。また、ステー23には、ボルト24が差し込まれるボルト孔23aが形成されている。そして、三つのステー23は、延長部11の中心軸C方向から見たときに、延長部11の中心軸Cに対して等角度(120度)間隔に配置されている。
【0063】
ボルト孔11cは、延長部11の六つの面の各面に形成されている。また、六つのボルト孔11cは、延長部11の中心軸C方向から見たときに、延長部11の中心軸Cに対して等角度(60度)間隔に配置されている。
【0064】
ボルト24は、ステー23のボルト孔23a及び延長部11のボルト孔11cに差し込まれる。そして、ボルト孔23a及びボルト孔11cにボルト24が差し込まれることにより、延長部11が第二排気管13に固定される。
【0065】
このような構成により、風向変更機構21によれば、風向板20で設定した排気の風向を次のようにして変更することができる。
【0066】
すなわち、
図10に示すように、ボルト24をステー23のボルト孔23a及び延長部11のボルト孔11cから引き抜くと、延長部11を第二排気管13から取り外し可能となる。つまり、第二排気管13に対する延長部11の周方向の位置が変更可能となる。そして、延長部11を中心軸C周りに60度毎に回転させると、延長部11の外面周面に風向板20が固定されているので、第二排気管13に対する風向板20の位置を変更することができる。そして、ボルト24をステー23のボルト孔23a及び延長部11のボルト孔11cに差し込むことにより、延長部11を第二排気管13に固定することができる。こうして、風向板20で設定した排気の風向を、風向変更機構21で変更することができる。例えば、
図8では、風向板20が延長部11の下部に位置しているが、延長部11を中心軸C周りに180度回転させると、風向板20が延長部11の上部に位置することになる。特に、本実施形態では、延長部11の断面形状が、六角形(正六角形)であるため、ステー23を120度間隔で三つ設けるだけで(ステー23を六つ設けなくても)、延長部11が中心軸C周りに回転自在であり、かつ、等角度間隔の三点により延長部11を第二排気管13に強固に固定することができる。
【0067】
以下、本発明に係る別実施形態について説明する。
【0068】
(1)上記実施形態においては、コンバインは、自脱形コンバインであるが、コンバインは、普通型コンバインでもよい。
【0069】
(2)上記実施形態においては、走行機体1は、クローラ式であるが、走行機体1は、ホイール式でもよい。
【0070】
(3)上記実施形態においては、排気管9は、エンジン4から機体後上方に向けて、機体後部まで延びているが、排気管9は、機体後部まで延びていなくてもよい。つまり、排気管9は、側面視において延長部11が脱穀装置6上(例えば、脱穀装置6上の前部や前後中央部)に位置するように延びているものでもよい。
【0071】
(4)上記実施形態においては、排気管本体10は、第一排気管12と、第二排気管13と、を備えるものであるが、排気管本体10は、さらに第三排気管を備えるものでもよい。つまり、排気管本体10は、三本以上の排気管を備えるものでもよい。あるいは、排気管本体10は、第一排気管12のみを備えるものでもよい。
【0072】
(5)上記実施形態においては、穀粒タンク7の脱穀装置6の側の側面(左側面)において、排気管9よりも上方に位置する部分(第一膨出部)7aを、脱穀装置6の側(左側)に膨出させているが、排気管9よりも下方に位置する部分を、脱穀装置6の側(左側)に膨出させたり、あるいは、排気管9よりも上方及び下方に位置する部分を、脱穀装置6の側(左側)に膨出させたりしてもよい。
【0073】
(6)上記実施形態においては、隙間22は、第二排気管13の外周面と延長部11の内周面との間の隙間であるが、隙間22は、第二排気管13の排気下流側端縁と延長部11の排気上流側端縁との間の隙間でもよい。あるいは、隙間22は、第二排気管13の外周面と延長部11の内周面との間の隙間と、第二排気管13の外周面と延長部11の内周面との間の隙間とを、組み合わせた隙間でもよい。なお、隙間18及び隙間19についても、隙間22と同様に考えることができる。
【0074】
(7)上記実施形態においては、延長部11は、平面視において排気管本体10と同一軸心上に配置されているが、延長部11は、平面視において排気管本体10に対して傾斜していてもよい。
【0075】
(8)上記実施形態においては、延長部11の断面形状は、六角形(正六角形)であるが、延長部11の断面形状は、六角形以外の多角形でもよい。
【0076】
(9)上記実施形態においては、延長部11は、第一半割部11aと第二半割部11bとが合わさって、断面形状が六角形となるように構成されているが、延長部11は、一体成形されたものでもよい。
【0077】
(10)上記実施形態においては、風向板20は、延長部11の外周面に溶接により固定されているが、風向板20を延長部11の外周面に固定する方法は、溶接以外の方法でもよい。
【0078】
(11)上記実施形態においては、風向板本体20aの排気下流側端部は、延長部11の中心軸C上に位置しているが、風向板本体20aの排気下流側端部は、延長部11の中心軸Cを多少越えて延びていても、多少短くてもよい。
【0079】
(12)上記実施形態においては、風向変更機構21は、三つのステー23と、六つのボルト孔11cと、三本のボルト24と、を備えているが、ステー23、ボルト孔11c及びボルト24の数は、これらに限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、エンジンからの排気を外気に排出する排気管を備えるコンバインに利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 走行機体
3 運転部
4 エンジン
5a テールパイプ(排出部)
6 脱穀装置
7 穀粒タンク
7a 第一膨出部
9 排気管
10 排気管本体
11 延長部
12 第一排気管
13 第二排気管
18 隙間
19 隙間
20 風向板
21 風向変更機構
22 隙間
23 ステー
24 ボルト
C 中心軸
D3 第一排気管の径
D4 排気管本体の径
D5 延長部の径
D6 延長部の径