(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部にワークおよび処理液が入れられる処理槽と、前記ワークに通電する通電装置と、前記処理槽から処理液を貯留槽に戻し、前記処理槽内に噴流として送ることで前記処理槽内の処理液を撹拌する噴流撹拌装置と、を備える処理装置により行われる陽極酸化処理時の気泡除去方法であって、
前記貯留槽内に、処理液に混入した気泡を凝集させる多孔質の気泡凝集フィルターを設け、
凝集した前記気泡を前記気泡凝集フィルターから浮力により離脱させて浮上させることで前記貯留槽内の処理液から除去する、
ことを特徴とする気泡除去方法。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルに使用されるスクロール型の圧縮機は、渦巻状のラップ壁をそれぞれ有する固定スクロールと旋回スクロールとを備える。そして、固定スクロールに対して旋回スクロールを公転旋回運動させ、双方のラップ壁の間に形成される圧縮室の容積を減少させることで、圧縮室内の流体の圧縮を行う。
旋回スクロールは、主に軽量化のためにアルミニウムあるいはアルミニウム合金で作製され、その表面に陽極酸化処理(アルマイト処理)を施すことで耐摩耗性の向上が図られている。この陽極酸化処理は、処理液にスクロールを浸漬し、スクロールを陽極として通電することで行われる。その通電に伴ってスクロール表面にはジュール熱が生じるが、処理時間短縮のため大電流が通電されたり、エッジ部への電流集中が顕著になると、表面が過熱して焼けが生じるおそれがある。それを防止するために、処理液を撹拌し、スクロール表面の熱を処理液により拡散除去しているが、処理に伴ってスクロール表面に発生する酸素の微細な気泡が処理液に混入しているため、スクロールから効果的に熱を除去することができない。
【0003】
ここで、遠心分離器や選択透過性のフィルターにより液中から気泡を除去することが知られている。例えば、特許文献1では、半導体の製造プロセスにおけるシリコンウェーハ等の洗浄に用いる純水中の溶存酸素等の気泡を除去するために、純水の供給系に、気体は透過するが液体は透過しない選択透過性の仕切壁を備える気泡除去装置を用いている。その仕切壁により、装置内は第1室と第2室とに区画してあり、第2室が第1室に比較して減圧状態に保持されているので、仕切壁を通じて、液体中に含まれる気体を吸引除去することができる。
また、特許文献2には、宇宙空間等の微小重力環境に適用される気泡分離装置が記載されており、その気泡除去装置は、液体の流れに対して傾斜して配置されるメッシュを備えている。気泡を含む液体がメッシュを通過するとき、気泡とメッシュとの接触時に生じる界面張力によって気泡がメッシュ上にトラップされ、液体と分離される。そして、液体の動圧により気泡はメッシュの下流端まで流れ、排出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、気泡を除去する技術は知られているものの、気泡が非常に微細であるために従来のフィルターで確実に気液分離するのは難しい上、処理液の流れに乗って分散する気泡の各々を捕捉して除去するのも難しい。したがって、撹拌によりワークを冷却しているにもかかわらず、ワークの焼けを防止するのに十分な冷却効果を得るこができない。
そこで、本発明は、陽極酸化処理にあたり、撹拌による冷却効果を十分に得るために、気泡をより確実に除去することのできる気泡除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の気泡除去方法は、内部にワークおよび処理液が入れられる処理槽と、ワークに
通電する通電装置と、処理槽から処理液を貯留槽に戻し、処理槽内に噴流として送ることで処理槽内の処理液を撹拌する噴流撹拌装置と、を備える処理装置により行われる陽極酸化処理時の気泡除去方法であって、貯留槽内に、処理液に混入した気泡を凝集させる多孔質の気泡凝集フィルターを設け
、凝集した気泡を気泡凝集フィルターから浮力により離脱させて浮上させることで貯留槽内の処理液から除去することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、気泡が混入された処理液を処理槽から貯留槽内に導入し、気泡凝集フィルターに気泡を凝集させると、気泡は合体を繰り返して粗大化される。このように気泡が成長すると、浮力が大きくなり、帯電電荷は小さくなる。その結果、貯留槽内の下向きの流れの速度に比べて成長気泡の上昇速度の方が大きくなるため、気泡凝集フィルターから気泡が離脱して処理液中を浮上し、その液面から雰囲気中に開放される。以上のような凝集、粗大化、および浮上のプロセスにより、処理液から気泡を確実に除去できる。そして、気泡が除去された処理液が処理槽に供給されるので、処理槽において、噴流による撹拌に基づく冷却効果が、気泡によって減殺されることなく存分に発揮される。
そのため、処理時間短縮のため大電流が通電されたり、エッジ部への電流集中が顕著となっても、ワークの表面の焼けを防止するのに足りる十分な冷却効果を得ることができる。
【0008】
本発明の気泡除去方法では、処理槽から戻される処理液を導入するために貯留槽に設けられる導入部に、気泡凝集フィルターを設けることが好ましい。
こうすると、気泡凝集フィルターにより、気泡を導入部近傍で集中的に凝集させることができるので、微細気泡を凝集、粗大化させる効果が大きい。
【0009】
本発明の気泡除去方
法は、
内部にワークおよび処理液が入れられる処理槽と、ワークに通電する通電装置と、処理槽から処理液を貯留槽に戻し、処理槽内に噴流として送ることで処理槽内の処理液を撹拌する噴流撹拌装置と、を備える処理装置により行われる陽極酸化処理時の気泡除去方法であって、貯留槽内に、処理液に混入した気泡を凝集させる多孔質の気泡凝集フィルターを設け、処理槽から戻される処理液を導入するために貯留槽に設けられる導入部に、気泡凝集フィルターを設け、貯留槽の底部に、導入部を上方に向けて突出させて設け、導入部に被せられるカップ状に気泡凝集フィルターを形成すること
を特徴とする。
こうすると、気泡凝集フィルターの周壁が上方に向けてすぼまっているので、周壁から離脱する気泡を周壁に再吸着することなくスムーズに浮上させることができる。また、導入部から上方に吐出される処理液の流れが気泡凝集フィルターによって受け止められるために、フィルター周辺の流れの乱れが小さいので、処理液の流れに巻き込まれることなく気泡を浮上させることができる。
以上で述べた各本願発明において、処理槽から戻される処理液を貯留槽内へと上方に向けて導入し、貯留槽内を下方に向けて流れた先で処理液を貯留槽内から排出させることが好ましい。
【0010】
本明の気泡除去方法では、気泡凝集フィルターにより、処理槽から戻される処理液を導入するために貯留槽に設けられる導入部側の第1空間と、処理槽へと送られる処理液を排出するために貯留槽に設けられる排出部側の第2空間とに、貯留槽の内部を仕切り、気泡凝集フィルターを、その下端が導入部側、上端が排出部側となるように貯留槽内に深さ方向に対して傾斜して設けることも好ましい。
このような気泡凝集フィルターを設置すると、導入部から第1空間内に吐出される処理液が第2空間に向けてスムーズに流れる上、導入部から処理液が吐出される第1空間に、開口断面積が上方に向けて次第に拡大される流路が形成される。第1空間の上方に向かうほど流速が小さいために、流れの乱れが抑えられているので、気泡凝集フィルターにより凝集、粗大化された気泡の浮力が小さくても、第2空間に向かう処理液の流れに抗して気泡を上昇させることができるとともに、処理液の流れに気泡が巻き込まれてフィルターに再吸着されるのを防止できる。
さらに、気泡凝集フィルターが処理液の抵抗となるので、第1空間の上部範囲では、処理液が、第1空間から第2空間へと向かう流れと、フィルターに沿って斜め上方に向かう流れとに分流される。その斜めの流れも気泡の浮上を助けるので、気泡は、気泡凝集フィルターの第1空間側の面にほぼ沿うように浮上する。
以上により、上記のカップ状の気泡凝集フィルターを用いる場合と同様に、処理液に混入した気泡を確実に除去できる。
【0011】
本発明の別の気泡除去方法は、内部にワークおよび処理液が入れられる処理槽と、ワークに通電する通電装置と、処理槽から処理液を貯留槽に戻し、処理槽内に噴流として送ることで処理槽内の処理液を撹拌する噴流撹拌装置と、を備える処理装置により行われる陽極酸化処理時の気泡除去方法であって、処理槽から戻される処理液を導入するために貯留槽に設けられる導入部と、処理槽へと送られる処理液を排出するために貯留槽に設けられる排出部との間に、貯留槽の深さ方向に蛇行するラビリンス状の流路を設けることを特徴とする。
本発明によれば、流路の上端部で処理液が折り返すように転向されるとき、処理液に混入された微細気泡が慣性のために処理液の流れには追従できず、その一部が処理液の液面に行き着いて雰囲気中に開放される。このように気泡を処理液から除去することによっても、上記発明と同様に、撹拌による十分な冷却効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明の気泡除去方法によれば、処理液中の気泡を確実に除去することができるので、陽極酸化処理にあたり、撹拌による冷却効果を十分に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に示す実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
なお、以降の説明において、既に説明した構成と同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略または簡略する。
〔第1実施形態〕
本実施形態では、
図1に示すように、スクロール型圧縮機の旋回スクロールに対して陽極酸化処理を行う。
ワークであるアルミニウム合金製の旋回スクロール20は、円板状の端板21の一面側に、渦巻状のラップ壁22が立設されている。また、端板21の他面側には、円筒状のボス部23が形成されている。このボス部23には、駆動軸の先端に固着された偏心ピンが軸受を介して挿入される。そして、駆動軸に連結されるモータまたはエンジンを駆動源として旋回スクロール20が固定スクロールに対して公転旋回運動される。
【0015】
陽極酸化処理を行う処理装置10は、内部に旋回スクロール20および処理液(電解液)が入れられる処理槽1と、旋回スクロール20に通電する通電装置2と、処理槽1から処理液を貯留槽に戻し、処理槽1内に噴流として送ることで処理槽1内の処理液を撹拌する噴流撹拌装置3とを備えている。
本実施形態には、公知の陽極酸化処理が適用される。つまり、処理液に浸漬したワークを陽極として通電することでワーク表面に活性な酸素を発生させ、これとワーク組成中のアルミニウムとを反応させることによって酸化アルミニウムの皮膜を表面に形成する処理が広く適用される。処理液としては、希硫酸溶液、蓚酸溶液などを用いることができる。
【0016】
処理槽1は、噴流撹拌装置3から処理液を導入するための導入口11と、処理液を噴流撹拌装置3へと排出するための排出口12とを有している。導入口11は、処理槽1の底部の中央に設けられている。排出口12は、処理槽1の液面Sの少し下に設けられている。
旋回スクロール20は、ラップ壁22を下方に向けた姿勢とされており、ラップ壁22が処理槽1内の処理液に浸漬され、陽極酸化処理される。端板21およびボス部23は、処理液の液面Sよりも上方に配置されている。端板21の外周側面から背面21Bおよびボス部23にかけては、ゴム製のマスキング部材24で覆われており、これによって処理液の付着が防止されている。
【0017】
通電装置2は、電源25と、陽極とされる旋回スクロール20に対向して処理槽1内に配置される図示しない陰極とを備えている。電源25は、旋回スクロール20のボス部23に接続される陽極端子と、陰極に接続される陰極端子とを有している。
【0018】
噴流撹拌装置3は、処理液を貯留する貯留槽40と、処理液を圧送するポンプ33とを備えている。処理槽1と貯留槽40とは戻り配管31で接続されている。また、貯留槽40と処理槽1とは送り配管32で接続されている。送り配管32の途上にポンプ33が設けられている。
送り配管32の終端に設けられるノズル321から、処理液の噴流が処理槽1内に供給される。この噴流により処理槽1内の処理液が撹拌されると、その処理液により旋回スクロール20表面が冷却される。これにより、ジュール熱による旋回スクロール20表面の焼けを防止している。
【0019】
貯留槽40は、
図2に示すように、戻り配管31に接続される導入口41と、送り配管32に接続される排出口42とを有するとともに、その内部に、処理液を冷却するチラー43が設けられている。貯留槽40は、フィルター45周辺の流速を小さくして流れの乱れを抑制するために、後述するフィルター45に対して十分に大きなサイズとされている。
【0020】
導入口41は、貯留槽40の底面40Aの端部近傍に設けられている。排出口42は、導入口41とはチラー43を挟んで離間した貯留槽40内壁40Bの下部に設けられている。導入口41は、パイプ41Pを介して戻り配管31に接続されている。導入口41が貯留槽40の底面40Aに設けられ、処理液を上向きに吐出するパイプ41Pにカップ状のフィルター45が被せられているので、後述するように、陽極酸化処理時に気泡の浮上が妨げられ難い。導入口41およびパイプ41Pにより、処理液を貯留槽40内に導入するための導入部が形成されている。排出口42は、パイプ42Pを介して送り配管32に接続されている。排出口42およびパイプ42Pにより、貯留槽40内の処理液を排出するための排出部が形成されている。
貯留槽40は、処理液の成分濃度を管理する機能も有しており、新しい処理液の供給源(図示せず)に接続されている。その管理の下、モニタリングされる処理液の成分濃度に基づいて、処理槽1および貯留槽40を循環する処理液の一部が随時入れ替えられた上で、処理槽1に送られるので、処理槽1内の処理液の成分濃度が適切に保たれる。
なお、チラー43が設置される場所は、導入口41と排出口42との間であれば任意である。
【0021】
ところで、上述の陽極酸化処理時には、処理液の電気分解により、旋回スクロール20の表面に酸素の微細な気泡が多数発生する。その気泡が処理液に混入していると、酸素ガスと処理液との熱伝導率の差に基づいて、処理液による旋回スクロール20表面の冷却効率が低下するので、十分な冷却効果が得られない。処理液は、気泡を含んだまま処理槽1および貯留槽40を循環する。
そこで、本実施形態では、導入口41のパイプ41Pに、気泡除去手段としてのフィルター45を設けている。フィルター45は、繊維質の多孔質部材とされている。フィルター45の繊維と繊維との間に形成される孔(繊維間隔)は、後述するように微細気泡を繊維表面に吸着して捕捉でき、かつ成長した微細気泡が繊維表面から離脱して浮上することのできるサイズとされている。寸法の一例を示すと、気泡サイズは成長前が数十μm以下、成長後は数百μm〜数mmであるので、これに基づいて、繊維間隔は、例えば数mm以下、繊維の太さは、例えば数mm以下に設定する。
フィルター45には、例えば、コットン、ポリプロピレン、レーヨン、グラスファイバー等の非常に細い中空や中実の繊維が、高密度に編成されたものを用いることができる。
本実施形態のフィルター45は、カップ状とされ、円形の底451と、底451の周縁から立ち上がり、先端に向けて次第に拡がる円錐側面状の周壁452とを有している。周壁452はパイプ41Pの長さ方向に沿って高く形成されている。フィルター45はその開口を下に向け、その開口内に、導入口41から上方に突出するパイプ41Pの上端部が嵌められて収容されている。フィルター45の周壁452の下端は、パイプ41Pに嵌まり、保持されている。
【0022】
以下、貯留槽40内に導入された処理液中の気泡がフィルター45により除去される作用について説明する。
貯留槽40には、陽極酸化処理により微細な気泡が混入した処理液が処理槽1から戻り配管31を通じて連続して導入される。導入口41のパイプ41Pから、フィルター45に取り囲まれた空間47に上向きに導入される処理液は、フィルター45の内側から外側へと通過した後、排出口42のある貯留槽40の底面40Aへと向かい、排出口42から送り配管32へと流出する。その処理液の流れを矢印で模式的に図示する。
パイプ41Pから吐出される処理液は、フィルター45の主として周壁452を通過するとともに、フィルター45の頂部(底451)をも通過し、排出口42に向けて貯留槽40内をスムーズに流れる。また、貯留槽40がフィルター45に対して十分に大きいことにより、フィルター45周辺の流れの乱れも小さい。したがって、貯留槽40内の処理液は、乱れが少ない層流状態とされる。
【0023】
フィルター45の内側の空間47内に導入される処理液がフィルター45の内側から外側へと通過する過程で、微細気泡がフィルター45の繊維の表面に吸着される。気泡は表面が帯電しているため、処理液の流れに抗して繊維表面に留まる。すると、次々と気泡が到来しては合体するのを繰り返し、粗大化される。このように成長した気泡を以下では成長気泡と称する。フィルター45は、パイプ41Pから吐出される流れに対して傾斜する周壁452により、処理液との接触面積が大きく確保されているので、微細気泡を捕捉して成長させる効果が大きい。
【0024】
ここで、貯留槽40内に導入された処理液は排出口42に向かうため、導入口41から上方に向かう流れの成分もあるが、排出口42に向けて下方に流れる成分の方が多い。下方に向かう流れの速度は、上方に向かう流れの速度よりも大きい。したがって処理液中の気泡も、それが微細気泡であれば、下方に向かう流れに乗って排出口42から流出してしまうが、成長気泡は、微細気泡よりも浮力が大きく、帯電電荷は小さい。その結果、層流状態の貯留槽40内では、下向きの流れの速度に比べて成長気泡の上昇速度の方が大きくなる為、成長気泡は繊維表面から離脱して上昇する。
このとき、フィルター45周辺の流れの乱れが小さいので、気泡は、処理液の流れに巻き込まれることなく上昇する。また、周壁452が上方に向けてすぼまっているので、周壁452の繊維から離脱する気泡が、周壁452に再吸着することなくスムーズに上昇する。気泡は貯留槽40の液面40Sまで上昇すると、液面40Sから雰囲気中に開放される。これをもって、処理液から気泡が除去される。
【0025】
以上のように、気泡が混入された処理液を処理槽1から貯留槽40のフィルター45で囲まれた空間47内に導入し、フィルター45により気泡を凝集、粗大化させることにより、気泡が処理液から確実に除去される。このため、気泡が除去された処理液が送り配管32へと流出する。そして、ポンプ33による加圧を経て処理槽1内に供給されるので、ノズル321からの噴流による撹拌に基づく冷却効果が、気泡により減殺されることなく存分に発揮される。
そのため、本実施形態によれば、処理時間短縮のため大電流が通電されたり、エッジ部への電流集中が顕著となっても、旋回スクロール20の表面の焼けを防止するのに足りる十分な冷却効果を得ることができる。
【0026】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。
本実施形態では、
図3に示すように、直方体状の貯留槽40が板状のフィルター55により、導入口41側の第1空間51と、排出口42側の第2空間52とに仕切られている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0027】
フィルター55は、第1実施形態のフィルター45と同様の繊維質の多孔質部材とされている。このフィルター55は、下端を導入口41側、上端を排出口42側に寄せて、貯留槽40の深さ方向に対して傾斜して設けられている。これにより、導入口41のパイプ41Pから第1空間51を上方に向けて流れる流路の断面積が上方に向けて次第に拡大されているので、上方に向かうほど流速が小さい。
【0028】
本実施形態のフィルター55も、第1実施形態のフィルター45と同じく、連続して供給される処理液をフィルター55の繊維で捕捉して凝集、粗大化させることで気泡の浮上を促す。第1実施形態のフィルター45よりも広範囲に設けられる本実施形態のフィルター55は、フィルター45と比べれば気泡の凝集効果が劣るものの、第1空間51内の上方に向かうほど流速が小さくなるように傾斜して設置されていることで、それが補われる。
【0029】
以下、貯留槽40内に導入される処理液中の気泡がフィルター55により除去される作用について説明する。
貯留槽40には、第1実施形態と同様、陽極酸化処理により微細な気泡が混入した処理液が処理槽1から戻り配管31を通じて連続して導入される。導入口41のパイプ41Pから第1空間51へと、液面40Sに向けて上向きに吐出される処理液は、貯留槽40内の処理液の上部から排出口42に向けて転向する。その流れは、途中でフィルター55を通過する。貯留槽40内の処理液の流れを矢印で模式的に図示する。フィルター55が存在しないとすると、貯留槽40内で大きく転向する流れと、その内周で転向する流れとが混在し、貯留槽40内の処理液の流れは乱れが大きい。これに対し、フィルター55が設置されていると、第1空間51の上部から第2空間52の下部に向けて処理液がスムーズに流れる。
【0030】
第1空間51の上部に向かうほど、流速が小さいために乱れが小さい。浮力により気泡を上昇させるには、第1空間51を乱れの小さい層流状態にするのが重要となる。
フィルター55により凝集、粗大化された成長気泡にも、第1実施形態で述べたのと同様にして浮力が作用する。ここで、第1空間51の上方に向かうほど流れの乱れが抑えられているので、浮力が小さくても、第2空間52に向かう処理液の流れに抗して成長気泡を上昇させることができるとともに、処理液の流れに成長気泡が巻き込まれてフィルター55に再吸着されるのを防止できる。
さらに、フィルター55が処理液の抵抗となるので、第1空間51の上部範囲では、処理液が、第1空間51から第2空間52へと向かう流れと、フィルター55に沿って斜め上方に向かう流れとに分流される。その斜めの流れも成長気泡の浮上を助ける。
【0031】
以上により、成長気泡は、フィルター55の第1空間51側の面にほぼ沿うように浮上する。導入口41が貯留槽40の底面40Aに設けられているので、パイプ41Pおよびフィルター55により気泡の浮上が妨げられることもない。成長気泡は、液面40Sに到達し、液面40Sから雰囲気中に開放される。
本実施形態によっても、上述のように気泡を処理液から確実に除去できるので、撹拌による十分な冷却効果を得ることができる。
なお、第1実施形態のフィルター45および第2実施形態のフィルター55を併用し、より大きな効果を得ることもできる。
【0032】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。
本実施形態では、
図4に示すように、貯留槽40の導入部44と排出口42との間に、貯留槽40の深さ方向に蛇行する流路60を設けている。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
流路60は、液面40Sに対して直交する複数の仕切板61が、交互に上下にずらして配置されることでラビリンス状に形成されている。
導入部44および排出口42は、流路60の一端側および他端側に離間していれば、その位置は任意である。本実施形態では、液面40Sよりも上方から延びていて導入部44をなすパイプ41Pの開口が、液面40S下に位置している。パイプ41Pから貯留槽40内に導入される処理液は、排出口42に直接向かわず、各仕切板61の下端61Bまたは上端61Aで折り返すように転向されることにより、排出口42に到達するまでの間に上下に複数回蛇行する。
【0033】
ここで、処理液が仕切板61に沿って液面40S近くまで案内され、その仕切板61の上端61Aで折り返すように急激に転向されると、処理液に混入された微細気泡は、慣性のために処理液の流れには追従できず、その一部が液面Sに行き着いて雰囲気中に開放される。処理液中の微細気泡が流路60を流れる間に、仕切板61の上端61Aで液面Sから開放される機会を得る度に、気泡が処理液から除去される。
そのため、処理液が気泡を含んだ状態で排出口42から流出するのを抑制できるので、第1、第2実施形態と同様、撹拌による十分な冷却効果を得ることができる。
【0034】
以上説明した実施形態では、陽極酸化処理のワークとして旋回スクロール20を例示したが、本発明は、他のワークにも適用できる。
なお、上述した以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。