【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の使用状況に応じてルーフモールには以下の事象が生じることが明らかとなっている。
(1)高速走行時には車体のルーフ表面近傍に負圧が発生する。そのため、車体の前後方向(以下、「長手方向」と称する場合もある。)に沿って装着されるルーフモールに対しては、ルーフ溝から吸い出される(浮き上がる)方向に応力が作用する。
(2)使用環境の影響等により車体のルーフ温度は大きく変化する。そのため、かかる温度変化によりルーフモールが伸縮し、ルーフモールの端部の固定部では長手方向に引張あるいは圧縮の応力が発生する。
【0006】
これに対し、特許文献1に開示された取付構造体によると、次の不具合が生じる恐れのあることが明らかとなった。
すなわち、ルーフモールは一般的にルーフ溝での係止効果を得るために樹脂またはゴム等の弾性材料で形成されている。そのため、ルーフモールの端部に上記切欠きを設けることで、ルーフモールの切欠きから末端までの部分(以下、かかる部分を「規制部分」と称する。)の剛性は低下してしまう。そのため、この規制部分に上記の事象による応力が繰り返し加わると、規制部分が塑性変形を起こしたり、破損したりする恐れがあった。また、規制部分が塑性変形あるいは破損した状態では、ルーフモールに引き続き上記の事象が生じた場合にエンドキャップとルーフモールの係合が外れ、ルーフモールがルーフ溝内で前後に移動したり、特に高速走行時にはルーフモールがルーフ溝から吸い出されて抜け落ちるといった問題があった。
【0007】
一方で、ルーフモールの規制部分の剛性を確保するために、ルーフモールの末端から離れた位置に切欠きを設けることもできる。しかしながら、このように切欠きをルーフモールの末端から離れた位置に設けると、かかる切欠き位置でキャップロアとキャップアッパとを係合することとなり、エンドキャップ自体を大きくする必要があった。すると、ルーフモールの端部においてエンドキャップの占める面積が過度に広くなり、ルーフモールの取付状態における外観が損なわれてしまう。
【0008】
そこで本発明は、上述した従来の課題を解決すべく創出されたものであり、外観を損ねることなく、ルーフモールをルーフ溝に取付けることが可能なルーフモールの取付構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明によって以下の構成のルーフモールの取付構造体が提供される。
即ち、請求項1の発明は、車体のルーフに設けられたルーフ溝に装着される車両用ルーフモールの取付構造体である。かかる取付構造体において、上記ルーフ溝には底面にブラケットが設けられ、上記ブラケットには蓋部材が係合されている。
ここで、上記ブラケットは、基部と、突出片とを有し、上記基部には、上記ルーフ溝の底面に固定される固定部と、上記蓋部材と係合される係合部と、が備えられ、上記突出片は、上記基部の長手方向の端部において上記ルーフ溝の底面から離れる方向に突出されている。
上記蓋部材は、上記ルーフ溝を覆うカバー部と、上記カバー部の裏面側から突出し、上記ブラケットの係合部と係合する係合受部と、が備えられている。
上記ルーフモールは、上記ルーフ溝を覆う頭部と、上記頭部の裏面側から突出した脚部と、上記脚部下端の幅方向側面の少なくとも一方から上記ルーフ溝の側壁部に向けて突出される突出部と、上記脚部の下端および上記突出部のうちの少なくとも一部分に設けられる受入部と、が備えられている。
そして、かかる取付構造体は、上記ルーフモールの受入部を上記ブラケットの突出片に嵌合させるとともに、上記蓋部材のカバー部の長手方向の端部で上記ルーフモールの頭部の長手方向の端部を覆いつつ、上記蓋部材と上記ブラケットと係合させることで、上記ルーフモールが、当該端部において上記ブラケットと上記蓋部材とで挟持された状態で、上記ルーフ溝に取付けられていることを特徴としている。
【0010】
以上の構成によると、ルーフモールの受入部をブラケットの突出片に嵌合させた状態で、ブラケットと蓋部材とでルーフモール端部を挟持しているため、ルーフモールの浮き上がりとルーフ溝の前後方向に沿ったルーフモール端部の移動とを防止することができる。
なお、上記のルーフモールの受入部とブラケットの突出片との嵌合部位は、ルーフモールの頭部に覆われるため、例えば蓋部材を大きく形成して上記嵌合部位を隠す必要がない。また、上記のとおり、ブラケットと蓋部材とによるルーフモールの挟持と、ルーフモールの受入部とブラケットの突出片との嵌合とを、各々独立して構築することができるため、上記の挟持および嵌合の形態や位置を、各々に適した設計とすることが可能となる。その結果、上記の受入部を、ルーフモールの受入部から末端までの部分(すなわち、上記「規制部分」に相当する。以下、かかる部分についても「規制部分」と称する場合がある。)が所望の剛性を確保し得る位置に配設することができ、規制部分が塑性変形を起こしたり、破損したりすることを防止できる。
したがって、かかる構成によると、ルーフモールの受入部とブラケットの突出片との嵌合部位に合わせて蓋部材を大きくする必要がないため外観を損なうことがなく、車両の使用状況に因ってルーフモールがルーフ溝から外れることを防止することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1のルーフモールの取付構造体において、上記ルーフモールは、上記蓋部材のカバー部で覆われる部分よりも該ルーフモールの長手方向中央側に受入部が設けられている。そして、上記蓋部材のカバー部の長手方向の端部よりも該ルーフモールの長手方向の中央側で、上記ルーフモールの受入部と上記ブラケットの突出片とが嵌合されていることを特徴としている。
かかる構成によると、規制部分はルーフモールが蓋部材で覆われる長さよりも長く形成されることとなり、当該規制部分に十分な剛性を備えることができる。したがって、例えば、車両の長期の使用に際してもルーフモールの取付け状態を維持することが可能なルーフモールの取付構造体が実現される。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2のルーフモールの取付構造体において、上記突出片は、上記ルーフ溝の底面に対して略垂直な方向に突出されていることを特徴としている。
かかる構成によると、受入部を突出片に容易に嵌め合わせることができ、かつ、抜け難いルーフモールの取付構造体が提供される。
【0013】
請求項4の発明は、上記ルーフ溝に沿って複数のルーフモールが装着されており、そのうちの少なくとも一つのルーフモールの少なくとも一方の長手方向の端部において、請求項1〜3のうちのいずれかのルーフモールの取付構造体が形成されていることを特徴としている。
ルーフモールをルーフ溝に取付ける構造としては、ここに開示されるルーフモールの取付構造体によるものの他に、一例として、エンドキャップを使用せず、例えば、クリップを使用する取付構造などが知られている。このクリップを使用した取付構造は、ルーフモールの端部にルーフモールとクリップとを嵌合させるための形状を射出成形で形成する必要がある。そのため、ルーフモールの製造コストが嵩み、ルーフ溝に沿って複数のルーフモールが装着される場合に全てのルーフモール端部をこのクリップによる取付構造にて取付けることは、大幅なコストの増大に繋がってしまう。
これに対し、本発明のルーフモールの取付構造体では、ルーフモールの加工が比較的簡単なため、ルーフモールの製造コストを抑えることができる。したがって、かかる構成によると、ルーフ溝へのルーフモールの取付けを低コストで実現することが可能となる。
【0014】
請求項5の発明は、上記ブラケットは、上記基部の長手方向の両方の端部に上記突出片を有し、上記ブラケットの長手方向の一方の側には第1のルーフモールが、他方の側には第2のルーフモールがそれぞれ配置されており、上記ブラケットの一方の突出片に上記第1のルーフモールの受入部が、他方の突出片に上記第2のルーフモールの受入部がそれぞれ嵌合されているとともに、上記第1および第2のルーフモールの隣り合う長手方向の端部が、上記ブラケットおよび一つの上記蓋部材で挟持されることで、一つの上記ブラケットと一つの上記蓋部材の長手方向の両方の端部において、請求項1〜4のいずれかの取付構造体が形成されていることを特徴としている。
かかる構成によると、ルーフ溝に沿って複数のルーフモールが装着されている場合に、隣り合う二つのルーフモールの端部を一つのブラケットと一つの蓋部材とで挟持しているため、ブラケットと蓋部材の部品点数を減らすことができ、ルーフ溝へのルーフモールの取付けをさらに低コストで実現することができる。
【0015】
請求項6の発明は、請求項4または5のルーフモールの取付構造体において、上記ルーフモールの長手方向の両方の端部において、上記取付構造体が形成されていることを特徴としている。
かかる構成によると、ルーフモールの長手方向の両方の端部に上記ルーフモールの取付構造体が形成されるため、ルーフ溝へのルーフモールの取付けをより低コストで実現することが可能となる。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれかのルーフモールの取付構造体において、上記受入部は、上記突出部の先端から上記脚部下端に向かって形成された凹形状の切欠きであることを特徴としている。
かかる構成によると、受入部が突出部の先端で解放されているため、突出片と受入部との嵌め合わせを容易に行うことができる。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1〜6のうちのいずれかのルーフモールの取付構造体において、上記受入部は、上記突出部に形成された貫通穴であることを特徴としている。
かかる構成によると、受入部が閉じた形態であるため、受入部を突出片からより外れ難くすることができる。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1〜8のうちのいずれかのルーフモールの取付構造体において、上記受入部は、上記脚部の下端に設けられる凹部であることを特徴としている。
かかる構成によると、ルーフモールの頭部を受入部が貫通していないため、ルーフモールの外観を損ねることなく突出片の嵌め合わせを容易に行うことができる。
【0019】
請求項10の発明は、請求項1〜9うちのいずれかの取付構造体を構築するためのルーフモールである。
かかるルーフモールによると、外観を損ねることなく、ルーフモールをルーフ溝に取付けることが可能な上記ルーフモールの取付構造体を好適に構築することができる。
【0020】
請求項11の発明は、請求項1〜9うちのいずれかの取付構造体を構築するためのブラケットである。
かかるブラケットによると、外観を損ねることなく、ルーフモールをルーフ溝に取付けることが可能な上記ルーフモールの取付構造体を好適に構築することができる。
【0021】
請求項12の発明は、請求項1〜9うちのいずれかの取付構造体を構築するための蓋部材である。
かかる蓋部材によると、外観を損ねることなく、ルーフモールをルーフ溝に取付けることが可能な上記ルーフモールの取付構造体を好適に構築することができる。