特許第6016548号(P6016548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016548透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016548
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20161013BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161013BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20161013BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20161013BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20161013BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20161013BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20161013BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D5/24
   C09D7/12
   C09C1/28
   C09C3/12
   C09C1/00
   B32B27/18 J
   G02B1/10
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-206118(P2012-206118)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58652(P2014-58652A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】箱嶋 夕子
(72)【発明者】
【氏名】松田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−291174(JP,A)
【文献】 特開2011−063478(JP,A)
【文献】 特開2012−025793(JP,A)
【文献】 特開2008−291175(JP,A)
【文献】 特開2007−321049(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/060884(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0286070(US,A1)
【文献】 特開2008−019358(JP,A)
【文献】 特開2011−136490(JP,A)
【文献】 特開2005−139026(JP,A)
【文献】 特開2010−138040(JP,A)
【文献】 特開2012−236921(JP,A)
【文献】 特開2010−001396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
B32B 27/18
C09C 1/00
C09C 1/28
C09C 3/12
C09D 5/24
C09D 7/12
G02B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ系微粒子を式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理された表面処理シリカ系微粒子(A)と、鎖状導電性金属酸化物粒子を式(2)で表される有機珪素化合物で表面処理された表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)とマトリックス形成成分と溶媒とを含み
前記表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)が10〜200nmの範囲にあり、
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が、平均粒子径(DB)が5〜20nmの範囲にある金属酸化物粒子が鎖状に2〜30個連結し、該金属酸化物粒子の体積抵抗値が10-2〜100Ω・cmの範囲にある鎖状導電性粒子であり、
前記表面処理シリカ系微粒子(A)の濃度が固形分として0.05〜35重量%の範囲にあり、
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の濃度が固形分として0.025〜25重量%の範囲にあり、
前記マトリックス形成成分の濃度が固形分として0.1〜42.5重量%の範囲にあり、
全固形分濃度が0.5〜50重量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
n−SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
SiX4 (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率が1.60〜1.90の範囲にあり、前記表面処理シリカ系微粒子(A)の屈折率が1.15〜1.46の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項3】
前記表面処理シリカ系微粒子(A)中のシリカ系微粒子と前記式(1)の有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をRn−SiX4-n/2としての重量/シリカ系微粒子の固形分としての重量)が0.01〜0.5の範囲にあり、前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)中の鎖状導電性金属酸化物粒子と前記式(2)の有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をSiO2としての重量/鎖状導電性金属酸化物粒子の固形分としての重量)が0.005〜0.2の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項4】
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が表面処理鎖状アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項5】
前記表面処理シリカ系微粒子(A)が表面処理シリカ系中空微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項6】
前記マトリックス形成成分が有機樹脂マトリックス形成成分および/またはゾルゲル系マトリックス形成成分であることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項7】
基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材であって、
シリカ系微粒子を式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理された透明被膜が表面処理シリカ系微粒子(A)と、鎖状導電性金属酸化物粒子を式(2)で表される有機珪素化合物で表面処理された表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)とマトリックス成分とを含んでなり、
前記表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)が10〜200nmの範囲にあり、
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が、平均粒子径(DB)が5〜20nmの範囲にある金属酸化物粒子が鎖状に2〜30個連結し、該金属酸化物粒子の体積抵抗値が10-2〜100Ω・cmの範囲にある表面処理鎖状導電性粒子であり、
前記表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が固形分として10〜70重量%の範囲にあり、
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が固形分として5〜50重量%の範囲にあり、
前記マトリックス成分の含有量が20〜80重量%の範囲にあり、透明被膜の下部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CU)、中間部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CM)、上部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CT)が(CU)>(CM)>(CT)の関係にあり、且つ、前記(CU)と(CT)が1/100≦(CT)/(CU)≦1/2の関係にある(なお、透明被膜の上、中、下部とは、透明被膜断面を均等に3分割し、それぞれ上部、中部および下部としたものである)ことを特徴とする透明被膜付基材。
n−SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
SiX4 (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率が1.60〜1.90の範囲にあり、前記表面処理シリカ系微粒子(A)の屈折率が1.15〜1.46の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の透明被膜付基材。
【請求項9】
前記表面処理シリカ系微粒子(A)中のシリカ系微粒子と前記式(1)の有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をRn−SiX4-n/2としての重量/シリカ系微粒子の固形分としての重量)が0.01〜0.5の範囲にあり、前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)中の鎖状導電性金属酸化物粒子と前記式(2)の有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をSiO2としての重量/鎖状導電性金属酸化物粒子の固形分としての重量)が0.005〜0.2の範囲にあることを特徴とする請求項7または8に記載の透明被膜付基材。
【請求項10】
前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が表面処理鎖状アンチモンドープ酸化錫粒子であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項11】
前記表面処理シリカ系微粒子(A)が表面処理シリカ系中空微粒子であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項12】
前記マトリックス成分が有機樹脂マトリックス成分および/またはゾルゲル系マトリックス成分であることを特徴とする請求項7に記載の透明被膜付基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の高い鎖状の導電性金属酸化物粒子成分と屈折率の低いシリカ系粒子成分とを含む1種の塗布液を一回塗布することによって少なくとも帯電防止性能と反射防止性能を有し、特に、透明被膜中において、導電性成分が透明被膜の下層から上層になるに従って含有量が徐々に少なくなり、一方、低屈折率成分が透明被膜の上層から下層になるに従って含有量が徐々に少なくなり、この結果、屈折率が下層から上層に向かって徐々に低下した、光透過率、透明性に優れた帯電防止・反射防止性能を有する透明被膜を形成するための透明被膜形成用塗布液と透明被膜付基材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の反射を防止するため、その表面に反射防止膜を形成することが知られており、たとえば、コート法、蒸着法、CVD法等によって、フッ素樹脂、フッ化マグネシウムのような低屈折率の物質の被膜をガラスやプラスチックの基材表面に形成したり、シリカ微粒子等の低屈折率微粒子を含む塗布液を基材表面に塗布して、反射防止被膜を形成する方法が知られている(たとえば、特開平7-133105号公報(特許文献1)など参照)。このとき、反射防止性能を高めるために反射防止被膜の下層に高屈折率の微粒子等を含む高屈折率膜を形成することも知られている。
【0003】
さらに、基材に帯電防止性能、電磁波遮蔽性能を付与するために導電性の酸化物微粒子、金属微粒子等を含む導電性被膜を形成することも行われている。例えば、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板などの表示パネルのような透明基材の表面の帯電防止および反射防止を目的として、これらの表面に帯電防止機能および反射防止機能を有する透明被膜を形成することが行われていた。
【0004】
特に、近年、このような各種機能性の被膜を積層して用いることが行われている。例えば、基材上にハードコート膜を形成し、導電性被膜あるいは高屈折率被膜を形成し、反射防止膜を形成することが行われている。
【0005】
しかしながら、各膜は、塗料を塗布し、乾燥し、必要に応じて硬化させる工程からなるために、上記多層膜を形成する場合に多くの工程を必要とし、各膜間の密着性が不充分であったり、生産性、経済性等に問題があった。
【0006】
また、本願出願人は、特開2003-12965公報(特許文献2)において、平均粒子径が異なり、粒子径の小さい導電性微粒子と粒子径の大きい低屈折率微粒子の異なる2種の微粒子を含む塗布液を用いることによって、1回の塗布で粒子が上下2層にわかれた、反射防止性能および帯電防止性能に優れた導電性被膜が形成できることを提案している。しかしながら、特許文献2では2種の微粒子が上下完全に分離する形で微粒子層を形成できない場合があり、このため反射防止性能、帯電防止性能が不充分となることがあり、さらにプラスチック等の基材への密着性が低く、かつ膜の強度が不充分となることがあった。
【0007】
また、本出願人は、特開2008−291175号公報(特許文献3)において、屈折率および表面電荷量の異なる2種の表面処理した金属酸化物微粒子を親水性マトリックス形成成分と疎水性マトリックス形成成分との混合マトリックス形成成分に分散させた塗料を基材上に1回塗布することによって2種の金属酸化物微粒子が層分離し、屈折率が勾配を有する透明被膜を形成できることを開示している。
【0008】
しかしながら、特許文献3の場合、親水性と疎水性の2種のマトリックス形成成分を用いるため透明被膜の屈折率は勾配を有するとしてもなだらかな勾配とならず、実質的に2層に分離した透明被膜となり、高度の反射防止性能、高度の光透過率が得られない場合があった。
【0009】
さらに本出願人は、特開2007−321049号公報(特許文献4)、特開2008−19358号公報(特許文献5)には、有機珪素化合物などで表面処理された金属酸化物微粒子の表面電荷量を特定の範囲にして、マトリックスに分散させることで、金属酸化物を被膜中に偏在させることを提案している。
【0010】
しかしながら、特許文献4および5では、特許文献2と同様に、偏在させることを目的とするため、本発明の目的とする特性が必ずしも発揮できず、さらにプラスチック等の基材へのという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−133105号公報
【特許文献2】特開2003−012965号公報
【特許文献3】特開2008−291175号公報
【特許文献4】特開2007−321049号公報
【特許文献5】特開2008−019358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、反射防止性能をより向上させるために、2種の粒子が膜中で2層に分離した状態ではなく、双方の粒子が濃度勾配を有するようにすることを考えた。
このような課題を解決すべく鋭意検討した結果、互いに粒子径が異なり、屈折率が高く表面処理した鎖状導電性金属酸化物粒子と表面処理シリカ系微粒子とを混合して用いると、2層に分離することなく、粒子の分布に濃度勾配を生じ、導電性金属酸化物粒子を、基材側に多く、上層に行くにつれて、少なくするように分布できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]表面処理シリカ系微粒子(A)と表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)とマトリックス形成成分と溶媒とからなり、
表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)が10〜200nmの範囲にあり、
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が、平均粒子径(DB)が5〜20nmの範囲にある金属酸化物粒子が鎖状に2〜30個連結し、該金属酸化物粒子の体積抵抗値が10-2〜100Ω・cmの範囲にある鎖状導電性粒子であり、表面処理シリカ系微粒子(A)の濃度が固形分として0.05〜35重量%の範囲にあり、
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の濃度が固形分として0.025〜25重量%の範囲にあり、
マトリックス形成成分の濃度が固形分として0.1〜42.5重量%の範囲にあり、
全固形分濃度が0.5〜50重量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【0014】
[2]前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率が1.60〜1.90の範囲にあり、前記表面処理シリカ系微粒子(A)の屈折率が1.15〜1.46の範囲にある[1]の透明被膜形成用塗布液。
[3]表面処理シリカ系微粒子(A)の表面処理剤が式(1)で表される有機珪素化合物であり、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の表面処理剤が、下記式(2)で表される有機珪素化合物であり、
シリカ系微粒子(A)と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をRn-SiX4-n/2としての重量/シリカ系微粒子の固形分としての重量)が0.01〜0.5の範囲にあり、鎖状導電性金属酸化物粒子(B)と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をSiO2としての重量/鎖状導電性金属酸化物粒子の固形分としての重量)が0.005〜0.2の範囲にある[1]または[2]の透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
SiX4 (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
[4]前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が表面処理鎖状アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO)である[1]〜[3]の透明被膜形成用塗布液。
[5]前記表面処理シリカ系微粒子(A)が表面処理シリカ系中空微粒子である[1]〜[3]の透明被膜形成用塗布液。
[6]前記マトリックス形成成分が有機樹脂マトリックス形成成分および/またはゾルゲル系マトリックス形成成分である[1]の透明被膜形成用塗布液。
[7]基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材であって、
透明被膜が表面処理シリカ系微粒子(A)と表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)とマトリックス成分とを含んでなり、
表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)が10〜200nmの範囲にあり、
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が、平均粒子径(DB)が5〜20nmの範囲にある金属酸化物粒子が鎖状に2〜30個連結し、該金属酸化物粒子の体積抵抗値が10-2〜100Ω・cmの範囲にある表面処理鎖状導電性粒子であり、
表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が固形分として10〜70重量%の範囲にあり、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が固形分として5〜50重量%の範囲にあり、
マトリックス成分の含有量が20〜80重量%の範囲にあり、透明被膜の下部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CU)、中間部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CM)、上部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CT)が(CU)>(CM)>(CT)の関係にあり、且つ、前記(CU)と(CT)が1/100≦(CT)/(CU)≦1/2の関係にある(なお、透明被膜の上、中、下部とは、透明被膜断面を均等に3分割し、それぞれ上部、中部および下部としたものである)ことを特徴とする透明被膜付基材。
【0016】
[8]前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率が1.60〜1.90の範囲にあり、前記表面処理シリカ系微粒子(A)の屈折率が1.15〜1.46の範囲にある[7]の透明被膜付基材。
[9]表面処理シリカ系微粒子(A)の表面処理剤が式(1)で表される有機珪素化合物であり、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の表面処理剤が、下記式(2)で表される有機珪素化合物であり、
シリカ系微粒子(A)と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をRn-SiX4-n/2としての重量/シリカ系微粒子の固形分としての重量)が0.01〜0.5の範囲にあり、鎖状導電性金属酸化物粒子(B)と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をSiO2としての重量/鎖状導電性金属酸化物粒子の固形分としての重量)が0.005〜0.2の範囲にある[7]または[8]の透明被膜付基材。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
SiX4 (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0017】
[10]前記表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が表面処理鎖状アンチモンドープ酸化錫粒子である[7]〜[9]のいずれかに記載の透明被膜付基材。
[11]前記表面処理シリカ系微粒子(A)が表面処理シリカ系中空微粒子である[7]〜[9]の透明被膜付基材。
[12]前記マトリックス成分が有機樹脂マトリックス成分および/またはゾルゲル系マトリックス成分である[7]の透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、屈折率の高い鎖状の導電性金属酸化物粒子成分と屈折率の低いシリカ系粒子成分とを含む1種の塗布液を一回塗布することによって導電性成分が透明被膜の下層から上層になるに従って含有量が徐々に少なくなり、一方、低屈折率成分が透明被膜の上層から下層になるに従って含有量が徐々に少なくなり、この結果、透明被膜の屈折率が下層から上層に向かって徐々に低下した透明被膜を形成できる。
その結果、光透過率、透明性に優れた帯電防止・反射防止性能を有する透明被膜を形成するための透明被膜形成用塗布液と透明被膜付基材とに関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、先ず、本発明に係る透明被膜形成用塗布液について具体的に説明する。
[透明被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、表面処理シリカ系微粒子(A)と表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)とマトリックス形成成分と溶媒とからなる。
【0020】
表面処理シリカ系微粒子(A)
本発明に用いる表面処理シリカ系微粒子(A)としては、従来公知のシリカゾル等のシリカ系微粒子を表面処理して用いることができる。本発明では、本出願人の出願による特開2001−167637号公報、特開2001−233611号公報等に開示した内部に空洞を有するシリカ系中空微粒子は屈折率が低く好適に用いることができる。
【0021】
表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)は10〜200nm、さらには10〜150nmの範囲にあることが好ましい。
表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)が小さいと、表面処理鎖状導電性粒子(B)が表面処理シリカ系微粒子(A)間で、あるいは表面処理シリカ系微粒子(A)表面上で鎖状を維持した導電パスを形成し難く、導電性が不十分となる場合がある。
【0022】
このため、表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)は、後述する表面処理鎖状導電性粒子(B)の平均粒子径(DB)(平均一次粒子径)との平均粒子径比(DA)/(DB)が2以上、さらには4〜40であることが好ましい。
【0023】
このような粒子径比とすることで、表面処理シリカ系微粒子(A)の表面に一次粒子径の小さい導電性粒子が鎖状に連結した状態で付着する形をとったり、表面処理シリカ系微粒子(A)の表面に表面処理鎖状導電性粒子(B)が付着し、導電パスを形成することにより、帯電防止性能に優れた透明被膜となる。
【0024】
表面処理シリカ系微粒子(A)の平均粒子径(DA)が大きすぎると、ミー散乱によって内部ヘーズが発生し、透明性が不充分になる場合がある。
また、表面処理シリカ系微粒子(A)の屈折率が1.15〜1.46、さらには1.15〜1.40の範囲にあることが好ましい。
【0025】
表面処理シリカ系微粒子(A)の屈折率が前記範囲にあると、後述する鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の種類、屈折率、配合量等によっても異なるが、帯電防止性能に優れるとともに、透明性、反射防止性能に優れた透明被膜を得ることができる。
【0026】
シリカ系微粒子の表面処理方法としては従来公知の方法を採用することができ、例えば、下記式(1)で表される有機珪素化合物を用いて表面処理することができる。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【0027】
具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
このうち、好ましいものは、メタクリロキシアルキル基を含むものである。
このような有機珪素化合物を選択すると、透明被膜中に分布を持たせることができる他、強度に優れた透明被膜となる。
【0029】
シリカ系微粒子(A)の表面処理は、シリカ系微粒子(A)のアルコール分散液に前記有機珪素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機珪素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機珪素化合物を加水分解することによって行うことができる。
【0030】
シリカ系微粒子(A)と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をRn-SiX4-n/2としての重量/シリカ系微粒子の固形分としての重量)はシリカ系微粒子(A)の平均粒子径によっても異なるが0.01〜0.5さらには0.02〜0.4の範囲にあることが好ましい。
【0031】
前記重量比が少ないと、得られる表面処理シリカ微粒子(A)の疎水性が不充分なためか、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)とほぼ均一に混合し、得られる透明被膜中で所望の分布に至らず、反射防止性能、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
前記重量比が高すぎると、有機ケイ素化合物の種類によっては未反応の有機珪素化合物が残存してブリードアウトし、透明被膜にヘーズが発生したり、耐擦傷性が不十分となる場合がある。
【0032】
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)に用いる鎖状の金属酸化物粒子としては、Sb2、ZnO2、SnO2、In23、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、Fドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫(PTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。
【0033】
なかでも、鎖状アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO)は、前記体積抵抗値が低く、導電性に優れているので少量の使用で充分な帯電防止性能が得られ、また、使用量が少なくてすむので透明性、光透過率に優れた透明被膜を得ることができる。
【0034】
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)は、平均粒子径が5〜20nm、好ましくは5〜15nmの範囲にある金属酸化物粒子(一次粒子ということがある)が鎖状に2〜30個、好ましくは5〜30個連結した鎖状導電性金属酸化物粒子であることが好ましい。
【0035】
連結数が少ないと、連結してない単分散粒子の場合も、分散性が高いため、透明被膜中で所定の分布を達成せず、反射防止性能、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
連結数が30個を超えると、鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が長くなり過ぎて、透明被膜の膜厚が小さい場合に前記と同様に1/100≦(CT)/(CU)≦1/2の関係が得られず、反射防止性能、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
【0036】
前記平均粒子径が小さいと、単分散した金属酸化物粒子(一次粒子)を得ることが困難で、このため鎖状導電性金属酸化物粒子(B)を得ることが困難である。
前記平均粒子径が大きすぎても、実質的に鎖状導電性金属酸化物粒子からなる鎖状導電性金属酸化物粒子(B)を得ることができない場合があり、また、理由は明らかではないが、本発明の目的とする粒子の分布とならずに、反射防止性能、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
【0037】
上記連結数の測定は、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)のTEM写真を撮影し、20個の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)について各々鎖状を構成する一次粒子数を数え、この平均値とした。
【0038】
金属酸化物粒子および鎖状導電性金属酸化物粒子の体積抵抗値は、10-2〜100Ω・cm、さらには10-2〜10-1Ω・cmの範囲にあることが好ましい。なお、連結前と後では、体積抵抗値に差がない。
【0039】
前記下限が前記金属酸化物粒子における体積抵抗値の下限であり、100Ω・cmを超えると、後述する透明被膜の表面抵抗値が高くなり充分な帯電防止性能が得られない場合がある。
【0040】
このような、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)および金属酸化物粒子の体積抵抗値は、セラミックス製セル(内部に円柱状のくりぬき(断面積:0.5cm2)を有する)を用い、まず、架台電極上にセルを置き、内部に試料粉体を充填し、円柱状突起を有する上部電極の突起を挿入し、油圧機にて上下電極を加圧し、100kg/cm(9.80MPa)加圧時の抵抗値(Ω)と試料の高さ(cm)を測定し、抵抗値(Ω)に断面積を乗じ、これを高さで除することによって求めることができる。
【0041】
鎖状導電性金属酸化物粒子の調製方法としては、前記した導電性金属酸化物粒子を鎖状化できれば特に制限はないが、(1)導電性金属酸化物粒子分散液を高温で水熱処理する方法があるが、本願(実施例)では、(2)高温で焼成してドーピングしたり、結晶性を高めた金属酸化物粒子をアルカリ存在下で粉砕して微細化し、イオン交換樹脂等で脱アルカリすることによって調製することもできる
【0042】
鎖状導電性金属酸化物粒子の表面処理方法としては従来公知の方法を採用することができるが、本発明では、下記式(2)で表される有機珪素化合物を用いて表面処理することが好ましい。
SiX4 (2)
(但し、式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0043】
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の表面処理は、鎖状導電性金属酸化物粒子(B)のアルコール分散液に前記有機珪素化合物を所定量加え、これに水を加えて有機珪素化合物を加水分解することによって行うことができる。このとき、必要に応じて有機珪素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えることもできる。
【0044】
鎖状導電性金属酸化物粒子(B)と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物をSiO2としての重量/鎖状導電性金属酸化物粒子の固形分としての重量)は鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の平均粒子径、連結数等によっても異なるが0.005〜0.2さらには0.01〜0.1の範囲にあることが好ましい。
【0045】
前記重量比が少ないと、塗布液中での粒子の分散安定性が低下し、粒子が凝集して、得られる透明被膜にヘーズが発生する場合がある。前記重量比が多すぎてもと、過剰の有機珪素が導電性を阻害し、充分な帯電防止性能が得られない場合がある。
【0046】
つぎに、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率は1.60〜1.90、さらには1.65〜1.90の範囲にあることが好ましい。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率が低いと、表面処理シリカ系微粒子(A)との屈折率差が小さく、マトリックス形成成分が多い場合は、反射防止性能が不十分となる場合がある。表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率が前記上限を超える導電性金属酸化物は得ることが困難である。
【0047】
マトリックス形成成分
本発明ではマトリックス形成成分として有機樹脂マトリックス形成成分および/またはシリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分を用いることができる。
【0048】
有機樹脂マトリックス形成成分としては、従来公知の有機樹脂を用いることができる。
具体的には、塗料用樹脂等として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電子線硬化樹脂等が挙げられる。このような樹脂として、たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
このうち好ましいものは、親水性樹脂であり、なかでもアルキレンオキサイド変性アクリル樹脂が好ましい。
【0049】
本発明では、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基から選ばれる1種以上の親水性官能基を有する多官能メタアクリル酸エステル樹脂が好適に用いられる。具体的にはペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の他、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクレート、2−ヒドロキシ3フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯600ジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯1000ジメタクリレート、ポリエチレングリコール♯200ジアクリレート、ポリエチレングリコール♯400ジアクリレート、ポリエチレングリコール♯600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール♯400ジアクリレート、ポリプロピレングリコール♯700ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクロイロキシエチルアシッドフォスフェート、およびこれらの混合物あるいはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0050】
また、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の疎水性官能基を有する多官能メタアクリル酸エステル樹脂を用いることもできる。
具体的にはペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
また、前記親水性官能基を有する多官能メタアクリル酸エステル樹脂と前記疎水性官能基を有する多官能メタアクリル酸エステル樹脂とを混合して用いることもできる。
【0051】
本発明では、特にアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂は好適に用いることができる。アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂としては、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのエチレンオキサイド変性アクリル樹脂、プロピレンオキサイド変性アクリル系樹脂等が挙げられる。また、アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂は非変性アクリル系樹脂と混合して用いることもできる。
【0052】
非変性アクリル系樹脂としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
このような、アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂を用いると、塗布液中で表面処理鎖状金属酸化物粒子(B)同士が凝集することなく高分散し、且つ、後述するが、透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の下部、中部、上部における含有量の序列が(CU)>(CM)>(CT)の関係にある、すなわち、表面処理鎖状金属酸化物粒子(B)が濃度勾配を有し、帯電防止性能に優れるとともに透明性、透過率および反射防止性能に優れた透明被膜付基材を得ることができる。
【0054】
シリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分としては、下記式(3)で表される有機珪素化合物またはこれらの加水分解物、加水分解重縮合物を用いることができる。
Rn−SiX4-n (3)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【0055】
具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等およびこれらの加水分解物、加水分解重縮合物が挙げられる。
【0056】
重合開始剤等
マトリックス形成成分が前記した有機樹脂である場合は、樹脂が紫外線硬化型樹脂の場合、光重合開始剤が含まれていてもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0057】
重合開始剤としては、前記マトリックス形成成分を硬化できれば特に制限は無く従来公知のものを使用することができ、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオフェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0058】
硬化触媒としては、例えば硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、イタコン酸等の有機酸、アンモニア、エチルアミン、エタノールアミン等の塩基性物質等が挙げられる。
【0059】
溶媒
本発明に用いる溶媒としては前記マトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤、硬化触媒を溶解あるいは分散できるとともに表面処理シリカ系微粒子(A)、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)を均一に分散することができる、従来公知の溶媒を用いることができる。
【0060】
例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピル、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、エチレングリコールモノアセテート等のエステル類、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールものエチルエーテルなどのエーテル類を含む親水性溶媒、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールものアセタートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類等極性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。
【0061】
塗布液組成
透明被膜形成用塗布液の全固形分濃度は0.5〜50重量%、さらには1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0062】
透明被膜形成用塗布液の全固形分濃度が少ないと、塗布方法によっても異なるが形成される透明被膜の膜厚が薄くなり過ぎて、充分な反射防止性能、帯電防止性能が得られない場合がある。
【0063】
透明被膜形成用塗布液の全固形分濃度が多くしても、膜厚が厚くなり過ぎたり、このためクラックを生じる場合がある。また、厚くしても帯電防止性能、反射防止性能がさらに向上することもない。
【0064】
透明被膜形成用塗布液中の表面処理シリカ系微粒子(A)の濃度は固形分として0.05〜35重量%、さらには0.075〜24重量%の範囲にあることが好ましい。
表面処理シリカ系微粒子(A)の濃度が少ないと、得られる透明被膜中の表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が少なく、充分な反射防止性能が得られない場合がある。表面処理シリカ系微粒子(A)が多すぎても、得られる透明被膜中の表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が多くなりすぎ、一方で表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が少なくなり、後述する透明被膜の屈折率の傾斜が得られず、反射防止性能、帯電防止性能のいずれも不十分となる場合がある。
【0065】
また、透明被膜形成用塗布液中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の濃度は固形分として0.025〜25重量%、さらには0.038〜17.2重量%の範囲にあることが好ましい。
【0066】
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の濃度が低すぎると、得られる透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が少なくなり、帯電防止性能が不十分となるとともに、透明被膜の屈折率の傾斜が得られず、反射防止性能も不十分となる場合がある。表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の濃度が高すぎても、得られる透明被膜中の表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が少なくなりすぎ、一方で表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が多くなりすぎ、得られる透明被膜の屈折率の傾斜が得られず、反射防止性能、帯電防止性能のいずれも不十分となる場合がある。
【0067】
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は固形分として0.1〜42.5重量%、さらには0.225〜32重量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス形成成分の濃度が少ないと、マトリックス形成成分が少なくなり、透明被膜の耐擦傷性、基材との密着性等が不充分となる場合がある。マトリックス形成成分の濃度が多すぎても、表面処理シリカ系微粒子(A)および/または表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が少なくなり、反射防止性能、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
【0068】
上記した透明被膜形成用塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
【0069】
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材上に透明被膜が形成された透明被膜付基材であって、透明被膜が表面処理シリカ系微粒子(A)と表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)とマトリックス成分とを含んでなる。
【0070】
そして、透明被膜の下部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CU)、中間部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CM)、上部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CT)が(CU)>(CM)>(CT)の関係にあり、且つ、前記(CU)と(CT)が1/100≦(CT)/(CU)≦1/2の関係にある。
【0071】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。
【0072】
また、表面に凹凸を有する周知の基材を用いることができ、この場合は防眩性を有する透明被膜付基材を得ることができる。さらに、表面が平坦な基材上に凹凸を有する膜を形成した基材を用いこともでき、この場合も防眩性を有する透明被膜付基材を得ることができる。さらに、前記基材上に他の被膜、例えば、ハードコート膜、プライマー膜等が形成された基材を用いることもできる。
【0073】
透明被膜
透明被膜に含まれる表面処理シリカ系微粒子(A)としては前記した表面処理シリカ系微粒子(A)を用いることができ、本発明では屈折率の低い表面処理シリカ系中空微粒子を用いることが好ましい。
【0074】
透明被膜中の表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量は10〜70重量%、さらには15〜60重量%の範囲にあることが好ましい。表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が少ない場合、透明被膜中の上層に存在する表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が少なく、充分な反射防止性能が得られない場合がある。表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が多すぎても、透明被膜中の表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が多くなりすぎ、一方で表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が少なくなり、後述する透明被膜の屈折率の傾斜が得られず、反射防止性能、帯電防止性能のいずれも不十分となる場合がある。
【0075】
透明被膜に含まれる表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)としては前記した表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)を用いることができ、本発明では体積抵抗値が低く導電性に優れ、光透過率が高く透明性に優れた表面処理鎖状アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO)が好適に用いられる。
【0076】
透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量は固形分として5〜50重量%、さらには7.5〜43重量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が固形分として少ないと、透明被膜中の表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が多くなりすぎ、一方で表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が少なくなり、透明被膜の屈折率の傾斜が得られず、反射防止性能、帯電防止性能のいずれも不十分となる場合がある。透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が多すぎても、透明被膜中の表面処理シリカ系微粒子(A)の含有量が少なくなりすぎ、一方で表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量が多くなりすぎ、透明被膜の屈折率の傾斜が得られず、反射防止性能が不十分となる場合がある。
【0077】
マトリックス成分としては、透明被膜中に前記した有機樹脂マトリックス形成成分の硬化物、前記したシリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分の硬化物が含まれる。
透明被膜中のマトリックス成分の含有量は固形分として20〜85重量%、さらには30〜80重量%の範囲にあることが好ましい。
【0078】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量が固形分として少ないと、透明被膜の強度、基材との密着性、耐擦傷性が不十分となる場合がある。透明被膜中のマトリックス成分の含有量が多すぎても、表面処理シリカ系微粒子(A)および/または表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が少なく、反射防止性能、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
【0079】
本発明に係る透明被膜は、前記した範囲の表面処理シリカ系微粒子(A)および表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)を含有しているが、このとき、透明被膜の下部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CU)、中間部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CM)、上部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子の含有量(CT)が(CU)>(CM)>(CT)の関係にある。前記(CU)と(CT)が1/100≦(CT)/(CU)≦1/2の関係にある。
【0080】
すなわち、透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の分布は、透明被膜の下部から上部になるにしたがって順次低下している。これに対応して、同時に含まれる表面処理シリカ系微粒子(A)の分布は透明被膜の上部から下部になるにしたがって順次低下している。
【0081】
なお、透明被膜の上、中、下部とは、透明被膜断面を均等に3分割し、それぞれ上部、中部および下部としたものである。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の下部、中間部および上部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量は透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量(W)によって異なるが、下部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量(CU)は透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量(W)との比(CU)/(W)が0.34〜0.99、さらには0.40〜0.95の範囲にあることが好ましく、中間部における表面処理鎖状金属酸化物粒子(B)の含有量(CM)は概ね透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量(W)と同程度であるが必ずしも一致している必要はなく、(CM)/(W)が0.01〜0.49、さらには0.02〜0.45の範囲にあることが好ましく、さらに上部における表面処理鎖状金属酸化物粒子(B)の含有量(CT)は透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量(W)との比(CT)/(W)が0〜0.33、さらには0.01〜0.30の範囲にあることが好ましい。なお、(CU)>(CM)>(CT)であり、1/100≦(CT)/(CU)≦1/2の関係にある。
【0082】
透明被膜の下部、中間部および上部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量の分布が前記範囲にあれば、帯電防止性能に優れるとともに透明性、透過率および反射防止性能に優れた透明被膜付基材を得ることができる。
【0083】
前記比(CT)/(CU)が1/2を超えると、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の屈折率および含有量、表面処理シリカ系微粒子(A)の屈折率および含有量によっても異なるが、透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の分布において、下部、中部、上部の差が小さくなり、透明被膜の光透過率、反射防止性能が不十分となる場合がある。
【0084】
前記比(CT)/(CU)が1/100よりも小さいと、1/100よりも小さいと、上部に表面処理シリカ系微粒子(A)が多い層が形成され、下部に表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)が多い層が形成され、実質的に2層に分離した透明被膜となり、前記した濃度勾配を有することによる反射防止性能の向上効果が充分得られない場合がある。
【0085】
ここで、下部、中間部および上部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の各金属酸化物含有量の測定は、先ず、透明被膜の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を測定する。このとき、表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)は表面処理シリカ系微粒子(A)とは平均粒子径および/またはコントラストの違いから区別して認められる。
【0086】
断面の上、中、下と均等に3分割し、上部、中部および下部における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の一次粒子数を数えて求め、各部位における一次粒子数を合計の一次粒子数で除して各部位における割合を求める。各部位における表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量は、透明被膜中の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B)の含有量に前記各部位の割合を乗じて求めることができる。
【0087】
なお、分割線上に存在する粒子については、主に存在する部位の粒子とする。
このような分布は前記した塗布液を使用することで達成できる。
このため、塗布液には、
・2種の表面処理した粒子径範囲の異なる粒子を使用すること
・表面処理剤が、シリカ系微粒子の場合はn=1〜3の有機珪素化合物(疎水性)を使用し、鎖状導電性微粒子の場合はn=4の有機珪素化合物(親水性)を使用する
・粒子径比が2以上であること
が重要な要因となる、さらに、双方の粒子の含有量も重要であり、例えば、一方が少なすぎると有効な傾斜分布は得られないことがある。
【0088】
形成される透明被膜の膜厚は50〜500nm、さらには80〜300nmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜の膜厚が薄いと、反射防止性能及び帯電防止性能が不十分となる場合がある。透明被膜の膜厚が厚すぎても、反射防止性能が不十分となる場合がある。
【0089】
また、透明被膜の表面抵抗値は103〜1013Ω/□、さらには103〜1012Ω/□の範囲にあることが好ましい。透明被膜の表面抵抗値が前記範囲の下限以下のものは得ることが困難であり、上限を超えると、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
【0090】
本発明に係る透明被膜付基材は、前記した透明被膜形成用塗布液を基材上に塗布し、乾燥し、硬化させることによって製造することができる。具体的には、透明被膜形成用塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
【0091】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]
表面処理シリカ系微粒子(A-1)分散液の調製
シリカ・アルミナゾル(日揮触媒化成(株)製:USBB−120、平均粒子径25nm、SiO2・Al23濃度20重量%、固形分中Al23含有量27重量%)120gに純水3680gを加えて95℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度15重量%の珪酸ナトリウム水溶液2100gとAl23 としての濃度05重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2100gを添加して、SiO2・Al23複合酸化物微粒子(1-1) (平均粒子径43nm)分散液を得た。このときのAl23/SiO2モル比は0.2であった。また、このときの反応液のpHは12.0であった。
【0093】
SiO2 として濃度15重量%の珪酸ナトリウム水溶液8800gとAl23としての濃度05重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液3000gを添加してSiO2・Al23複合酸化物微粒子(1-2)(平均粒子径60nm)分散液を得た。このときのAl23/SiO2モル比は0.07であった。また、このときの反応液のpHは12.0であった。
【0094】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13重量%になった複合酸化物微粒子(1-2)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度355重量%)を滴下してpH10とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ系中空微粒子(1-3)水分散液を得た。
【0095】
ついで、シリカ系中空微粒子(1-3)水分散液分散液150gと、純水500g、エタノール1,750gおよび濃度28重量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2濃度28重量%)140gを添加してシリカ被覆層を形成し、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20重量%のシリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子(1-4)の水分散液を得た。
【0096】
シリカ被覆層を形成したシリカ系中空微粒子(1-4)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、さらに陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20重量%のシリカ系中空微粒子(1-5)分散液を得た。このとき、シリカ系中空微粒子(1-5)の水分散液のNa2O含有量およびNH含有量はシリカ系中空微粒子当たり8ppm、1500ppmであった。
【0097】
ついで、再び、シリカ系中空微粒子(1-5)分散液を150℃にて11時間水熱処理した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20重量%のシリカ系中空微粒子(1-6)水分散液を得た。このとき、シリカ系中空微粒子(1-6)の水分散液のNa2O含有量およびNH3含有量はシリカ系中空微粒子当たり0.4pm、60ppmであった。
【0098】
さらに限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換した固形分濃度20重量%のシリカ系中空微粒子(1-6)アルコール分散液を調製した。かかるシリカ系中空微粒子(1-6)の平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示す。
【0099】
固形分濃度20重量%のシリカ系中空微粒子(1-6)のアルコール分散液100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM−503)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、ついで、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に置換して固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液を調製した。
表面処理シリカ系微粒子(A-1)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示す。
【0100】
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液の調製
錫酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合溶液を調製した。この調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の硝酸アンモニウム1.0gを溶解し、水酸化カリウムを用いてpH10.5に調製した純水1000g中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をPH10.5に保つよう同時に添加した。生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20重量%の金属酸化物前駆体水酸化物分散液を調製した。
【0101】
この分散液を温度100℃で噴霧乾燥して金属酸化物前駆体水酸化物粉体を調製した。この粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得た。
【0102】
この粉末60gを濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
次に、このゾルをイオン交換樹脂でPHが3.0になるまで脱アルカリの処理を行い、ついで、純水を加えて、固形分濃度を20重量%に希釈して、Sbド−プ酸化錫微粒子からなる鎖状の導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液を調製した。この鎖状導電性金属酸化物粒子(1)分散液のPHは3.2であった。また鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)の平均一次粒子径は8nmであった。
【0103】
固形分濃度20重量%の鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学株製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8重量%)3.5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は10重量%であった。
【0104】
さらに限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液を調製した。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)を構成する一次粒子の平均連結数、屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0105】
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0106】
ハードコート膜形成用塗布液(1)の調製
シリカゾル分散液(日揮触媒化成(株)製;カタロイド SI−30;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5重量%、分散媒:イソプロパノ−ル、粒子屈折率1.46)100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン1.88g(信越シリコ−ン株製:KBM−503、SiO2成分81.2%)を混合し超純水を3.1g添加し50℃で20時間攪拌して表面処理した12nmのシリカゾル分散液を得た(固形分濃度40.5重量%)。 その後、ロータリーエバポレーターでプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGME)に溶剤置換した(固形分40.5重量%)。
【0107】
ついで、固形分濃度40.5重量%のシリカゾルのプロピレングリコールモノプロピルエーテル分散液51.85gと、ジヘキサエリスリトールトリアセテート(共栄社化学(株)製:DPE−6A)18.90g、と1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製;ライトアクリレートSR−238F)2.10gとシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1610)0.01gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度10重量%に溶解)12.60gとPGME14.54gとを充分に混合して固形分濃度42.0重量%のハードコート膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0108】
透明被膜付基材(1)の調製
ハードコート膜形成用塗布液(1)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.51)にバーコーター法(#14)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材を形成した。ハードコート膜の膜厚は6μmであった。
【0109】
透明被膜形成用塗布液(1)を、ハードコート膜付基材上にバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で400mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を調製した。透明被膜の膜厚は240nmであった。
【0110】
この透明被膜付基材(1)の全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0111】
全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により、反射率は分光光度計(日本分光社、Ubest-55)により夫々測定した。表面抵抗値は、表面抵抗計(三菱化学(株)製:ハイレスタ)にて測定した。
【0112】
なお、未塗布のTACフィルムは全光線透過率が93.2%、ヘーズが0.2%、波長550nmの光線の反射率が6. 0%であった。
また、着色、密着性、耐擦傷性、および鉛筆硬度は以下の方法および評価基準で評価し、結果を表に示した。
【0113】
着色
透明被膜付基材(1)に蛍光灯の光をあて、目視で透過での着色の有無を観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
評価基準:
無色透明で着色が全く認められない :◎
ごく薄く着色が僅かに認められる :○
薄く着色が認められる :△
濃く着色が認められる :×
【0114】
密着性
透明被膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。
評価基準:
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
【0115】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で10回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる :○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0116】
鉛筆硬度
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
【0117】
[実施例2]
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液3.51gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液4.10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0118】
透明被膜付基材(2)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(2)を調製した。透明被膜の膜厚は315nmであった。
透明被膜付基材(2)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(1)の含有量を表に示す。
【0119】
[実施例3]
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液5.85gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、実施例1と同様にして調製した固形分濃度20重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液1.76g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0120】
透明被膜付基材(3)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(3)を調製した。透明被膜の膜厚は223nmであった。
透明被膜付基材(3)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0121】
[実施例4]
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-2)分散液の調製
実施例1と同様にしてSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得、粉砕してゾルとし、脱アルカリ処理をした後、純水を加えて、固形分濃度17.5重量%に希釈した以外は同様にして導電性金属酸化物粒子(B-2)分散液を調製した。この導電性金属酸化物粒子(B-2)分散液のPHは3.2であった。また導電性金属酸化物粒子(B-2)の平均粒子径は8nmであった。
【0122】
次いで、固形分濃度17.5重量%の導電性金属酸化物粒子(B-2)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学株製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8重量%)3.0gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は8.75重量%であった。
【0123】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-2)分散液を調製した。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-2)を構成する一次粒子の平均連結数、屈折率、および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0124】
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-2)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0125】
透明被膜付基材(4)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(4)を調製した。透明被膜の膜厚は230nmであった。
透明被膜付基材(4)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-2)の含有量を表に示す。
【0126】
[実施例5]
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-3)分散液の調製
実施例1と同様にしてSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得、粉砕してゾルとし、脱アルカリ処理をした後、純水を加えて、固形分濃度25重量%に希釈した以外は同様にして導電性金属酸化物粒子(B-3)分散液を調製した。この導電性金属酸化物粒子(B-3)分散液のPHは3.2であった。また導電性金属酸化物粒子(B-3)の平均粒子径は8nmであった。
【0127】
次いで、固形分濃度25重量%の導電性金属酸化物粒子(B-3)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学株製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8重量%)4.3gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は10重量%であった。
【0128】
限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-3)分散液を調製した。表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-3)を構成する一次粒子の平均連結数、屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0129】
透明被膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、固形分濃度20重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-3)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0130】
透明被膜付基材(5)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(5)を調製した。透明被膜の膜厚は240nmであった。透明被膜付基材(5)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-3)の含有量を表に示す。
【0131】
[実施例6]
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液5.85gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)75.22g、PGME13.24g、実施例1と同様にして調製した固形分濃度20重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液4.10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)0.96gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.63gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0132】
透明被膜付基材(6)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(6)を調製した。透明被膜の膜厚は150nmであった。
透明被膜付基材(6)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0133】
[実施例7]
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液3.51gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)78.31g、PGME13.24g、実施例1と同様にして調製した固形分濃度20重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液1.76g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.92gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)1.26gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0134】
透明被膜付基材(7)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(7)を調製した。透明被膜の膜厚は320nmであった。透明被膜付基材(7)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0135】
[実施例8]
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-4)分散液の調製
実施例1において、テトラエトキシシラン(多摩化学株製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8重量%)を2.78g用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-4)分散液を調製した。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-4)を構成する一次粒子の平均連結数、屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0136】
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-4)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(8)を調製した。
【0137】
透明被膜付基材(8)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(8)を調製した。透明被膜の膜厚は242nmであった。透明被膜付基材(8)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-4)の含有量を表に示す。
【0138】
[実施例9]
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-5)分散液の調製
実施例1において、テトラエトキシシラン(多摩化学株製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8重量%)を4.17g用いた以外は同様にして固形分濃度20重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-5)分散液を調製した。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-5)を構成する一次粒子の平均連結数、屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0139】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-5)分散液を調製した。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-5)を構成する一次粒子の平均連結数、屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0140】
透明被膜形成用塗布液(9)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-5)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(9)を調製した。
【0141】
透明被膜付基材(9)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(9)を調製した。透明被膜の膜厚は238nmであった。
透明被膜付基材(9)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-5)の含有量を表に示す。
【0142】
[実施例10]
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-6)分散液の調製
錫酸カリウム150.0gを純水430gに溶解して溶液を調製した。調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の純水800gと硝酸アンモニウム1.3gと15%アンモニア水2.0gを溶解した混合液中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をPH9.0に保つよう同時に添加した。生成した沈殿を濾別・洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20重量%の金属酸化物前駆体水酸化物分散液200gを調製した。
【0143】
この分散液に85%リン酸溶液3.2gを添加し30分攪拌を行った後、温度100℃で噴霧乾燥して金属酸化物前駆体水酸化物粉体を調製した。上記粉体を、空気雰囲気下、650℃で2時間加熱処理することによりリンド−プ酸化錫(PTO)粉末を得た。
【0144】
この粉末60gを濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
次いで、このゾルをイオン交換樹脂でPHが3.3になるまで脱アルカリの処理を行い、濃度30重量%のリンド−プ酸化錫微粒子からなる鎖状の金属酸化物系導電性粒子(B-6)分散液を調製した。この鎖状金属酸化物系導電性粒子(B-6)分散液のPHは3.6であった。また鎖状金属酸化物系導電性粒子(B-6)の平均一次粒子径は10nmであった。
【0145】
さらに鎖状金属酸化物系導電性粒子(B-6)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学株製:正珪酸エチル、SiO2成分28.8重量%)3.5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。このときの固形分濃度は10重量%であった。次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-6)分散液を調製した。
表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-6)を構成する一次粒子の平均連結数、屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0146】
透明被膜形成用塗布液(10)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-6)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(10)を調製した。
【0147】
透明被膜付基材(10)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(10)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(10)を調製した。透明被膜の膜厚は234nmであった。
透明被膜付基材(10)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-6)の含有量を表に示す。
【0148】
[実施例11]
表面処理シリカ系微粒子(A-2)分散液の調製
シリカゾル分散液(日揮触媒化成(株)製;SI−80P;平均粒子径80nm、SiO2濃度40.5重量%)1000gにイオン交換水6000gを加え、ついで陽イオン交換樹脂(三菱化学(製):SK−1BH)800gを添加し、1時間攪拌して脱アルカリ処理した。
【0149】
ついで陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(製):SANUPC)400gを添加し、1時間攪拌して脱アニオン処理した。ついで、再び陽イオン交換樹脂(三菱化学(製):SK−1BH)400gを添加し、1時間攪拌して脱アルカリ処理してSiO2濃度5重量%のシリカ粒子(A-2)分散液を調製した。
【0150】
この分散液を、限外濾過膜を用いてメタノールにて溶媒置換して固形分濃度40重量%のシリカ粒子(A-2)メタノール分散液を得た。固形分濃度40重量%のシリカ粒子(A-2)メタノール分散液100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン4.93g(信越シリコ−ン株製:KBM−503、SiO2成分81.2%)を混合し超純水を3.1g添加し50℃で20時間攪拌して表面処理した80nmのシリカゾル分散液を得た(固形分濃度40.5重量%)。
その後、ロータリーエバポレーターでプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGME)に溶剤置換した(固形分40.5重量%)。
【0151】
透明被膜形成用塗布液(11)の調製
固形分濃度40.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-2) PGME分散液2.37gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)79.08g、PGME13.24g、固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(11)を調製した。
【0152】
透明被膜付基材(11)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(11)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(11)を調製した。透明被膜の膜厚は240nmであった。透明被膜付基材(11)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0153】
[実施例12]
透明被膜形成用塗布液(12)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液2.93g、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(12)を調製した。
【0154】
透明被膜付基材(12)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(12)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(12)を調製した。透明被膜の膜厚は236nmであった。透明被膜付基材(12)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理鎖状導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0155】
[比較例1]
表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-1)分散液の調製
実施例1と同様にしてSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得、粉砕してゾルとし、脱アルカリ処理をした後、純水を加えて、固形分濃度10重量%に希釈した以外は同様にして導電性金属酸化物粒子(RB-1)分散液を調製した。この導電性金属酸化物粒子(RB-1) 分散液のPHは3.2であった。また導電性金属酸化物粒子(RB-1) の平均粒子径は8nmであった。
【0156】
次いで、固形分濃度10重量%の導電性金属酸化物粒子(RB-1)分散液100gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学株製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8重量%)1.7gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル100gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、15時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は5重量%であった。
【0157】
その後限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ルをエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度20.5重量%の表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-1)分散液を調製した。表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-1)には、連結状態は殆ど観測されなかった。屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0158】
透明被膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68に、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、固形分濃度20重量%の表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-1)分散液2.93g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0159】
透明被膜付基材(R1)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R1)を調製した。透明被膜の膜厚は237nmであった。
【0160】
透明被膜付基材(R1)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-1)の含有量を表に示す。
【0161】
[比較例2]
鎖状導電性金属酸化物粒子(RB-2)分散液の調製
錫酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合溶液を調製した。この調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の硝酸アンモニウム1.0gを溶解し、水酸化カリウムを用いてpH10.5に調製した純水1000g中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をPH10.5に保つよう同時に添加した。生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20重量%の金属酸化物前駆体水酸化物分散液を調製した。
【0162】
この分散液を温度100℃で噴霧乾燥して金属酸化物前駆体水酸化物粉体を調製した。この粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得た。この粉末60gを濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
【0163】
次に、このゾルをイオン交換樹脂でPHが3.0になるまで脱アルカリの処理を行い、固形分濃度30重量%のSbド−プ酸化錫微粒子からなる導電性金属酸化物粒子(1)分散液を調製した。この導電性金属酸化物粒子(1)分散液のPHは3.2であった。また導電性金属酸化物粒子(1)の平均粒子径は8nmであった。
【0164】
実施例1と同様にして鎖状導電性金属酸化物粒子(1)分散液を調製した。次いで、導電性金属酸化物粒子(1)分散液を限外濾過膜にて分散媒の水をエタノ−ルに溶媒置換して固形分濃度10.5重量%の鎖状導電性金属酸化物粒子(RB-2)分散液を調製した。鎖状導電性金属酸化物粒子(RB-2)の一次粒子の平均連結数、屈折率および体積抵抗値を測定し、結果を表に示す。
【0165】
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液4.68gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)73.98g、PGME13.24g、固形分濃度10.5重量%の導電性金属酸化物粒子(RB-2)分散液5.71g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0166】
透明被膜付基材(R2)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R2)を調製した。透明被膜の膜厚は233nmであった。透明被膜付基材(R2)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-2)の含有量を表に示す。
【0167】
[比較例3]
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液7.32gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液0.29g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0168】
透明被膜付基材(R3)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R3)を調製した。透明被膜の膜厚は230nmであった。透明被膜付基材(R3)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0169】
[比較例4]
透明被膜形成用塗布液(R4)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理シリカ系微粒子(A-1) PGME分散液0.73gに、メタノールとエタノールとイソプロピルアルコールの混合アルコール(日本アルコール販売株製:ソルミックスAP−11)76.76g、PGME13.24g、実施例1と同様にして調製した固形分濃度20.5重量%の表面処理導電性金属酸化物粒子(B-1)分散液6.88g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE−3A、樹脂濃度100重量%)1.44gに光開始剤(チバスペシャリティ株製:イルガキュア184)0.95gを添加して充分に混合して固形分濃度3重量%の透明被膜形成用塗布液(R4)を調製した。
【0170】
透明被膜付基材(R4)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R4)を調製した。透明被膜の膜厚は235nmであった。
【0171】
透明被膜付基材(R4)について、全光線透過率、ヘーズ、反射率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、耐擦傷性および透明被膜中の上部、中部および下部の表面処理導電性金属酸化物粒子(B-1)の含有量を表に示す。
【0172】
[比較例5]
表面処理シリカ系微粒子(RA-5)分散液の調製
シリカ系中空微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:スルーリア1420、平均粒子径60nm、濃度20.5重量%、分散媒:イソプロパノール、粒子屈折率1.30)100gにパーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン10g(東レダウコーニング製:AY43―158E、固形分濃度100%)を混合し、超純水10gを添加し、ついで40℃で5時間撹拌して固形分濃度19.3重量%の表面処理シリカ系微粒子(RA-5)分散液を調製した。表面処理シリカ系微粒子(RA-5)分散液で粒子の表面電荷量を測定したところ8.3μeq/gであった。
【0173】
表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-5)分散液の調製
アンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子分散ゾル(触媒化成工業(株)製:ELCOM V−3501、平均粒子径8nm、濃度20.5重量%、分散媒:エタノール、粒子屈折率:1.75)100gにγ−アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン1.26g(信越シリコーン社製:KBM−5103 SiO2成分:81.2重量%)を混合し、超純水10gを添加し、40℃で5時間撹拌して固形分濃度19.3重量%の表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-5)分散液を調製した。表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-5)分散液での粒子の表面電荷量を測定したところ55.8μeq/gであった。
【0174】
透明被膜形成用塗布液(R5)の調製
固形分濃度19.3重量%の表面処理シリカ系微粒子(RA-5)分散液2.59gと固形分濃度19.3重量%の表面処理導電性金属酸化物粒子(RB-5)分散液5.18g、ヘキサエリスリトールトリペンタアクリレート(日本化薬(株):KAYARAD DPHA)1.5g、光開始剤(チバスペシャリティ(株)製イルガキュア184、IPAで溶解、固形分濃度10%)0.4gおよびイソプロパノールとメチルイソブチルケトンの1/1(重量比)混合溶媒90.33gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(R5)を調製した。
【0175】
透明被膜付基材(R5)の調製
透明被膜形成用塗布液(R5)を、実施例1と同様にして調整したハードコート膜付基材上にバーコーターで塗布し、70℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯(80W/cm)を1分間照射して硬化させて透明被膜付基材(R5)を調製した。このときの膜厚は210nmであった。透明被膜の一部を縦方向に垂直に切断し、断面を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、下部にATO微粒子が厚さ110nmの層をなしており、上部はマトリックス中に分散したシリカ系中空微粒子の存在が認められた。
【0176】
【表1】
【0177】
【表2】