(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
[エーテル結合含有化合物を含む組成物]
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物(以下、「本発明の組成物」ということもある。)は、下記一般式(1)で表わされる化合物を必須として含有する。
【0027】
一般式(1)中、R
1は、単結合、CH
2、CH
2CH
2基、のいずれかを表し、R
2は、H、またはCH
3基を表し、X、Yは水酸基または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す(ただし、X、Yのいずれか一方は水酸基を表し、他の一方は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)。
上記エーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した場合に、得られる重合体のシリカスケールの分散性が向上する傾向にあることから、R
1は、CH
2、CH
2CH
2基であることが好ましい。
上記エーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した場合に、得られる重合体のシリカスケールの分散性が向上する傾向にあることから、上記一般式(1)におけるX、Yは水酸基または炭素数2〜5のアルコキシ基を表すことが好ましく、水酸基または炭素数3〜4とすることがより好ましい(ただし、X、Yのいずれか一方は水酸基を表し、他の一方はアルコキシ基を表す。)。
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、上記一般式(1)で表わされる化合物を本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物100質量%に対し、60〜99質量%含む。好ましくは68〜95質量%であり、より好ましくは75〜90質量%である。上記の範囲で上記一般式(1)で表わされる化合物を含むことにより、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した時に、効率よく重合反応が行えることとなる傾向にある。
【0028】
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、下記一般式(2)で表わされる化合物を、該組成物100質量%に対して0〜1質量%含む。すなわち、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物の下記一般式(2)で表わされる化合物の含有量は、0〜1質量%である。上記範囲を超えて下記一般式(2)で表わされる化合物が含まれると、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した時に、得られる重合体のシリカスケールの分散性が低下する傾向にある。
【0030】
一般式(2)中、R
1は、単結合、CH
2、CH
2CH
2基、のいずれかを表し、R
2は、H、またはCH
3基を表す。
一般式(2)中、R
1は、CH
2、CH
2CH
2基、であることが好ましい。
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、該組成物100質量%に対して、上記一般式(2)で表わされる化合物を、0〜0.1質量%含むことが好ましく、0〜0.01質量%含むことがより好ましい。
【0031】
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、下記一般式(3)で表わされる化合物を、該組成物100質量%に対して0〜20質量%含む。すなわち、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物の下記一般式(3)で表わされる化合物の含有量は、0〜20質量%である。上記範囲を超えて下記一般式(3)で表わされる化合物が含まれると、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した時に、得られる重合体のシリカスケールの分散性が低下する傾向にある。
【0033】
一般式(3)中、R
1は、単結合、CH
2、CH
2CH
2基のいずれかを表し、R
2は、H、またはCH
3基を表す。
一般式(3)中、R
1は、CH
2、CH
2CH
2基、であることが好ましい。
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、該組成物100質量%に対して、上記一般式(3)で表わされる化合物を、0〜14質量%含むことが好ましく、0〜10質量%含むことがより好ましい。
【0034】
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、下記一般式(4)で表わされる化合物を、該組成物100質量%に対して1〜20質量%含む。すなわち、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物の下記一般式(4)で表わされる化合物の含有量は、1〜20質量%である。上記範囲を超えて下記一般式(4)で表わされる化合物が含まれると、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した時に、ゲル化等が起こり、目的とする重合体が製造できないおそれがある。また、得られる重合体のシリカスケールの分散性が低下する傾向にある。上記範囲であれば、目的とする重合体を製造することが可能となり、得られる重合体のシリカスケールの分散性が向上する傾向にある。下記一般式(4)で表わされる化合物の含有量の含有量を1質量%未満にした場合、エーテル結合含有化合物を含む組成物の製造時に後述する炭素数1〜6のアルコールの使用量を極端に多くする必要があり生産性が低下する場合や、過度な生成工程が必要になる場合がある。
【0036】
一般式(4)中、R
1は、単結合、CH
2、CH
2CH
2基のいずれかを表し、R
2は、H、またはCH
3基を表し、X、Yは炭素数1〜6のアルコキシ基、下記一般式(5)で表わされる基、下記一般式(6)で表わされる基を表す(ただし、X、Yのいずれか一方は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、他の一方は下記一般式(5)で表わされる基または下記一般式(6)で表わされる基を表す。)。
【0038】
一般式(5)、(6)中、R
1は、単結合、CH
2、CH
2CH
2基のいずれかを表し、R
2は、H、またはCH
3基を表す。
一般式(4)、(5)、(6)中、R
1は、CH
2、CH
2CH
2基、であることが好ましい。
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、該組成物100質量%に対して、上記一般式(4)で表わされる化合物を、5〜18質量%含むことが好ましく、10〜15質量%含むことがより好ましい。
【0039】
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、水や低級アルコール等の溶剤、上記一般式(4)で表わされる化合物にさらに上記一般式(2)で表わされる化合物が反応してできた生成物等の反応副生物等を含んでいても良い。水等の溶剤および反応副生物を含む場合、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物100質量%に対して、0〜15質量%含むことが好ましく、0〜12質量%含むことがより好ましく、0〜10質量%含むことがさらに好ましい。
[エーテル結合含有化合物を含む組成物の製造方法]
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物は、以下に詳述する製造方法(以下、「本発明の製造方法」という)により製造することが好ましい。
本発明の製造方法で製造したエーテル結合含有化合物を含む組成物は、上記一般式(2)〜(4)であらわされる化合物を低減することが可能となり、上記一般式(1)であらわされる化合物をより選択的に製造できることに起因して、重合体の原料として使用した時に、得られる重合体のシリカスケールの分散性が向上する傾向にある。すなわち、本発明の製造方法は、上記一般式(1)であらわされる化合物の好ましい製造方法でもある。
【0040】
本発明の製造方法は、上記一般式(2)であらわされる化合物と、炭素数1〜6のアルコールを反応させる工程(以下、「工程I」ともいう)を必須としており、該反応工程において、上記一般式(2)であらわされる化合物1モルに対して炭素数1〜6のアルコールを5〜20モル使用する。このように、炭素数1〜6のアルコールを大過剰な条件下で反応させることにより、上記一般式(4)であらわされる化合物の生成を抑えることができ、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した場合に得られる重合体のシリカスケールの分散性を向上することが可能となる。上記範囲を超えて炭素数1〜6のアルコールが存在した場合、残存した炭素数1〜6のアルコールの除去に時間がかかり、生産効率が低下したり、エーテル結合含有化合物を含む組成物の色調が悪化する傾向にある。
【0041】
上記工程Iにおいて使用する炭素数1〜6のアルコールの使用量は、上記一般式(2)であらわされる化合物1モルに対して7〜15モルであることが好ましく、8〜12モルであることがより好ましい。なお、炭素数1〜6のアルコールは上記一般式(2)であらわされる化合物1モルに対して1モルしか反応しないので、大部分の炭素数1〜6のアルコールは反応に関与しないこととなる。
【0042】
上記炭素数1〜6のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、シクロブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、シクロペンタノール、n−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチルシクロペンタノール、シクロヘキサノール等が例示される。
【0043】
上記アルコールの炭素数は2〜5であることが好ましく、3〜4であることがより好ましい。上記アルコールの炭素数が6より大きい場合、重合性が低下し、目的とする重合体が製造できないおそれがある。
【0044】
上記工程Iにおいては、反応は30〜100℃で行われることが好ましい。反応温度は一定であっても、途中で変化させても良い。
【0045】
上記工程Iにおいては、反応は無触媒で行っても良いが、触媒を添加しても良い。好ましい触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ性イオン交換樹脂等のアルカリ化合物が例示される。上記アルカリ化合物を使用する場合には、上記一般式(2)であらわされる化合物と上記アルカリ化合物のモル比で15/1〜1/15とすることが好ましく、5/1〜1/5とすることがより好ましく、3/1〜1/3にすることがさらに好ましい。
【0046】
本発明の製造方法は、炭素数1〜6のアルコールを留去する工程(以下、「工程II」ともいう)を含んでいても良い。工程IIは、通常、工程Iの開始後に開始されるが、工程Iの終了後に開始されても、工程Iの終了前に開始されても良い。
【0047】
上記工程IIの留去は、圧力が2〜101kPaで行うことが好ましく、4〜50kPaで行うことがより好ましい。圧力は一定であっても、途中で変化させても良い。上記範囲で行うことにより効率良く生産することが可能となり、副反応等も抑えることが可能となる。
【0048】
上記工程IIの留去は、反応液の液温が40〜200℃で行うことが好ましく、40〜150℃で行うことがより好ましい。上記範囲で行うことにより効率良く生産することが可能となり、副反応等も抑えることが可能となる。
【0049】
上記工程IIの留去は、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを流通させながら行っても良い。不活性ガスの流通量は、反応に使用する一般式(2)の化合物に対して1〜30モル%毎時で行うことが好ましく、3〜10モル%毎時で行うことがより好ましい。不活性ガスの流通は上記工程IIの始めから行っても、途中から行っても良い。上記範囲で行うことにより効率良く生産することが可能となり、副反応等も抑えることが可能となる。
【0050】
本発明の製造方法は、上記工程Iで過剰の炭素数1〜6のアルコールを使用するため、未反応の炭素数1〜6のアルコールを再利用し、上記工程Iで使用することが好ましい。その場合、工程Iの後に回収した炭素数1〜6のアルコールには水が含まれていることから(使用を繰り返すにつれ水分量が多くなる)、本発明の製造方法は、回収した炭素数1〜6のアルコールから水を除去する工程(以下、「工程III」ともいう)を含んでいても良い。回収した炭素数1〜6のアルコールは蒸留、膜分離等の水分離操作により、水分を低減することが好ましい。上記蒸留による工程IIIの分離方式としては、バッチ式、連続式いずれの方法でも良い。また、上記蒸留による工程IIIの分離条件である、還流比、理論段数、回収液フィード段、温度、圧力、充填物などは経済性を考慮し、目的とする水分濃度に合わせて設定すれば良い。
上記膜分離による工程IIIの分離方式としては、バッチ式、連続式いずれの方法でも良い。また、上記膜分離による工程IIIの分離条件である、圧力、温度、膜材質などは経済性を考慮し、目的とする水分濃度に合わせて設定すれば良い。
【0051】
本発明の製造方法において、上記工程Iで使用する炭素数1〜6のアルコールは、反応器に添加する時点において、水分量(炭素数1〜6のアルコールと水の合計の質量に対する水の質量)が0〜12質量%であることが重要である。水分量が上記範囲を超えると、上記一般式(3)であらわす化合物が増加することにより、本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物を重合体の原料として使用した時に、得られる重合体のシリカスケールの分散性が低下する傾向にある。
上記水分量は、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜5質量%である。
上記工程IIIにより、水分量を上記範囲に調整し、上記工程I(次のバッチやそれ以降のバッチにおける工程I等)において使用することが好ましい。
上記工程IIIを設ける代わりにまたは上記工程IIIに加えてさらに、上記工程II(炭素数1〜6のアルコールを留去する工程)の前に、水を分離する工程(以下、「工程IV」ともいう)を設けても良い。工程IIの前に水を分離する場合、適当な溶剤と共沸させて留去分離しても良いし、分離膜を用いて分離してもよい。
【0052】
上記工程Iで使用する炭素数1〜6のアルコール100質量%に対し、工程IIまたは工程IIIで回収した炭素数1〜6のアルコールの割合が50%以上、100%以下であることが好ましく、75%以上、95%以下であることがより好ましく、80%以上、90%以下であることがさらに好ましい。工程IIまたは工程IIIで回収した炭素数1〜64のアルコールの割合が50%以下であると、新たに使用するアルコールの使用量が多く経済性が著しく低下する。また使用されない回収アルコールの廃棄設備や費用が増大する。
[重合体]
<単量体>
本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物(本発明の組成物)は、重合体の原料として使用することができる。
本発明の組成物は、上記一般式(2)、(3)、(4)であらわされる構造を有する単量体の含有量が低いことに起因して、本発明の組成物を重合体の原料として使用すると、効率良くエーテル結合含有化合物を重合体に組み込むことが可能となり、また、ゲルの生成を抑制することが可能となる、これにより、例えば、重合体のシリカスケールの分散能を向上することが可能となる(以下、本発明の組成物を用いて製造した重合体を、「本発明の重合体」とも称する)。本発明の重合体は、上記の効果により、後述する様々な用途の重合体の原料として好ましく使用できることとなる。
【0053】
本発明の重合体は、本発明の組成物を原料として使用することにより製造する。具体的には、本発明の組成物に含まれる上記一般式(1)であらわされる化合物等を、重合開始剤を用いてラジカル重合させることにより製造することが好ましい。
【0054】
本発明の重合体は、本発明の組成物に含まれる単量体(上記一般式(1)であらわされる化合物等)のみを単量体として使用することにより製造しても構わないが、重合体のシリカスケールの分散能が向上することから、本発明の組成物に含まれる単量体成分に加え、(i)カルボキシル基含有単量体および/または(ii)ラクタム系単量体を必須の原料として使用することが好ましい。
【0055】
上記カルボキシル基含有単量体とは、1)炭素炭素不飽和二重結合と2)カルボキシル基および/またはその塩を必須として含有する単量体であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の、不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩等;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩等が挙げられる。上記塩とは、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩である。
【0056】
上記ラクタム系単量体とは、1)炭素炭素不飽和二重結合と2)ラクタム環を必須として含有する単量体であり、具体的にはN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムである。
【0057】
本発明の重合体は、所望に応じて本発明の組成物に含まれる単量体、カルボキシル基含有単量体、ラクタム系単量体以外の単量体(以下、「その他の単量体」ともいう)を原料として使用して製造したものであっても良い。
【0058】
本発明の重合体は、シリカスケールの分散能が向上する傾向にあることから、上記一般式(1)であらわされる単量体を、原料として使用する全単量体100質量%に対して、1〜50質量%使用することが好ましい、より好ましくは、2〜30質量%であり、さらに好ましくは3〜20質量%である。本発明の組成物は、一般式(4)であらわされる構造の単量体の含有量が少ないので、一般式(1)であらわされる単量体を多く使用してもゲル化等を起こすことなく重合体を製造することが可能となる。
【0059】
本発明の重合体は、シリカスケールの分散能が向上する傾向にあることから、(i)カルボキシル基含有単量体および/または(ii)ラクタム系単量体を原料として使用する全単量体100質量%に対して、50〜99質量%使用することが好ましい、より好ましくは、70〜98質量%であり、さらに好ましくは80〜97質量%である。上記範囲で使用することにより、単量体の重合率が向上する傾向にある。
【0060】
本発明の重合体の製造において、その他の単量体の使用量は、原料として使用する全単量体100質量%に対して、0〜20質量%にすることが好ましい。上記範囲を超えてその他の単量体を使用すると、重合体のシリカスケールの分散能が低下する傾向にある。
【0061】
<重合体の分子量>
本発明の重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは500〜1,000.000であり、より好ましくは2000〜100,000であり、さらに好ましくは5000〜50,000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、シリカスケールのスケール防止剤として使用した場合に、シリカスケールの分散性が低下する傾向にある。なお、本発明の500〜1,000,000の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
また、本発明の重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は具体的には、好ましくは1.1〜20.0、より好ましくは1.5〜11.0、さらに好ましくは1.8〜7.0である。
上記範囲であれば、シリカスケールのスケール防止剤として使用した場合に、シリカスケールの分散性がが向上する傾向にある。なお、本発明の重合体の分子量分布の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0062】
<重合溶媒>
本発明の重合体を製造する際に溶媒を使用しなくても良いが、使用することが好ましい。溶媒を使用する場合に、使用する溶媒としては特に制限されないが、水を含むことが好ましく、使用する溶媒全量に対して50質量%以上水を含むことがより好ましく、水を単独で使用することがさらに好ましい。好ましい有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が例示される。
【0063】
上記溶媒の使用量としては、全単量体の合計100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%以下であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。
【0064】
<重合開始剤>
本発明の重合体は、本発明の組成物に含まれる単量体を含む単量体(単量体成分)を、重合開始剤を使用して重合することにより製造することが好ましい。
本発明の重合体の製造方法で使用される開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、残存単量体を低減できることから、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記重合開始剤の使用量は、使用する単量体1モルに対して、10g以下、より好ましくは1〜5gであることが好ましい。
【0065】
<連鎖移動剤>
本発明の重合体は、本発明の組成物に含まれる単量体を含む単量体(単量体成分)を、連鎖移動剤の存在下で重合することにより製造することが好ましい。
本発明の重合体の製造方法で使用される連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、重亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、メタ重亜硫酸塩、亜流酸塩、チオ硫酸塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明の重合体の製造方法において、連鎖移動剤の使用量は好ましくは単量体の使用量1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。
これらのうち、本発明の重合体の製造においては、重亜硫酸(塩)(メタ重亜硫酸塩のように加水分解により亜流酸塩を生成する化合物を含む)を用いることが好適である。これにより、得られる重合体の主鎖末端にスルホン酸基を導入することができるととなり、耐ゲル性を向上することが可能となり、高硬度下におけるシリカスケールの分散性が向上する。
上記重亜硫酸(塩)における塩とは、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩である。重亜硫酸(塩)のなかでも、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムが好ましい。重亜硫酸(塩)は、1種類のみを使用しても良く、2種以上を使用しても良い。
<重合促進剤>
本発明の重合体の製造方法において、反応促進剤として重金属化合物を使用しても良い。上記重金属化合物としては、重金属イオンを発生させるものであれば特に限定されない。本発明において重金属とは、比重が4g/cm
3以上の金属を意味する。重金属としては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。
重金属化合物としては、モール塩(Fe(NH
4)
2(SO
4)
2・6H
2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マンガン等が好ましい。これらの重金属化合物は、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れる。
【0066】
上記重金属化合物の使用量は、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して重金属イオンの含有量が0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm以下であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。
【0067】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合体がカルボキシル基を有する場合であって、重合後にアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0068】
<重合体原料の添加方法>
単量体は、全使用量を反応器に一括で添加しても構わないが、一部又は全部を逐次的に(好ましくは連続的に)反応器に添加することが好ましい。一部又は全部を逐次的に添加することにより、重合による発熱を制御することが可能になり、また、重合中に反応系に存在する単量体濃度を制御することができるため、重合体の分子量分布を狭くすること等が可能である。本発明の組成物は、そのまま添加しても、溶剤や他の原料等と混合して添加しても良い。本発明の組成物に含まれる単量体以外の単量体を使用する場合にも、単独で添加しても、水等の溶剤に溶解したり、他の原料等と混合して添加しても良い。
重合開始剤は、全使用量を反応器に一括で添加しても構わないが、一部又は全部を逐次的に(好ましくは連続的に)反応器に添加することが好ましい。一部又は全部を逐次的に添加することにより、重合中に反応系に存在する重合開始剤濃度を制御することができるため、重合体の分子量分布を狭くすること等が可能である。バッチ式で重合する場合には、単量体の全量の添加と同時または単量体の全量の添加が終了した後で、重合開始剤の添加が終了することが好ましい。より好ましくは、単量体の添加終了後、1〜30分の間に重合開始剤の添加が終了することが好ましい。上記のように終了させることにより、残存単量体を低減することが可能となる。重合開始剤は、単独で添加しても良いが、水等の溶剤に溶解して添加することが好ましい。
連鎖移動剤は、全使用量を反応器に一括で添加しても構わないが、一部又は全部を逐次的に(好ましくは連続的に)反応器に添加することが好ましい。一部又は全部を逐次的に添加することにより、重合中に反応系に存在する連鎖移動剤濃度を制御することができるため、重合体の分子量分布を狭くすることが可能となったり、連鎖移動剤による副反応を制御することが可能となる。バッチ式で重合する場合には、単量体の全量の添加と同時または単量体の全量の添加が終了する前に、連鎖移動剤の添加が終了することが好ましい。これにより、連鎖移動剤の残存量を低減することができ、不純物を低減することが可能となる。連鎖移動剤は、単独で添加しても良いが、水等の溶剤に溶解して添加することが好ましい。
溶剤は、全使用量を反応器に一括で添加しても構わない。少なくとも全使用量の一部を重合開始前に反応器に添加(初期仕込み)しておくことが好ましい。一部を重合開始以後に反応器に添加する場合には、重合開始剤や連鎖移動剤等を溶解して逐次添加しても良い。また、所望により重合開始以後に溶剤を単独で反応器に添加しても良い。
【0069】
<重合温度>
本発明の重合体の製造において、重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。特に、重亜硫酸(塩)を用いる場合には、重合温度は、通常、60℃〜95℃、好ましくは70℃〜95℃、さらに好ましくは、80℃〜95℃である。この際、60℃以下では、重亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。逆に、95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
本発明の重合体の製造において、重合温度は常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の添加方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0070】
<重合時間>
本発明の重合体の製造において、重合時間としては、30〜300分であることが好ましい。より好ましくは、60〜240分であり、更に好ましくは、120〜180分である。
なお、本発明において「重合時間」とは、回分式(バッチ式)重合方法において、単量体の一部または全部を反応器(反応釜)に添加しながら重合する場合には、最初に重合開始剤の一部または全部と、単量体の一部または全部が反応器に添加された時点(重合開始時点という)から、単量体の全量が反応器に添加された時点(重合終了時点という)までをいう。また、回分式(バッチ式)重合方法において、単量体の全量を予め反応器に添加して(初期仕込みという)、重合開始剤の一部または全部を反応器(反応釜)に添加しながら重合する場合には、最初に重合開始剤の一部または全部と、単量体の全部が反応器に添加された時点から、重合開始剤の全量が反応器に添加された時点までである。また、回分式(バッチ式)重合方法において、単量体の全量と、重合開始剤の全量とを予め反応器に添加して、加熱等の手段により重合を行なう場合には、発熱(重合熱の発生)が見られる時間をいう。また、連続式で重合する場合には、反応器に滞留している時間をいう。
【0071】
<重合圧力>
本発明の重合体の製造において、重合時の反応系の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
[重合体の用途]
本発明の重合体(または重合体組成物)は、任意の適切な用途に用いることができる。その用途の一例を挙げれば、各種無機物や有機物の分散剤、凝集剤、増粘剤、粘着剤、接着剤、表面コーティング剤、架橋性組成物等であり、より具体的には、金属微粒子分散剤、炭酸カルシウム分散剤、重金属補足剤、スケール防止剤、金属表面処理剤、染色助剤、染料定着剤、泡安定剤、乳化安定剤、インク染料分散剤、水性インク安定剤、塗料用顔料分散剤、塗料用シックナー、感圧接着剤、紙用接着剤、スティック糊、医療用接着剤、貼付剤用粘着剤、化粧パック用粘着剤、樹脂用フィラー分散剤、樹脂用親水化剤、記録紙用コーティング剤、インクジェット紙用表面処理剤、感光性樹脂用分散剤、帯電防止剤、保湿剤、肥料用バインダー、医薬錠剤用バインダー、樹脂相溶化剤、写真薬添加剤、化粧用調剤添加剤、整髪料助剤、ヘアスプレー添加剤、サンスクリーン組成物用添加剤等に用いられる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0073】
<単量体の定量方法>
単量体の定量は、特に言及する場合を除き、下記条件にて高速クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI.
<アクリル酸(塩)の定量方法>
アクリル酸(塩)の定量は、下記条件にて高速クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX RSpak DE−413L
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min.
<重合体の重量平均分子量の測定方法>
重合体の重量平均分子量の測定は、下記条件にて行った。
装置:東ソー製高速GPC装置(HLC−8320GPC)
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ, GF−710−HQ, GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
【0074】
<固形分の測定>
重合体組成物や重合体水溶液の固形分の測定は、下記の条件で行った。
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで、重合体組成物(または重合体水溶液)1.0gに水3.0gを加えたものを1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と揮発成分(%)とを算出した。
【0075】
<シリカスケールの分散能の評価方法>
グリシン67.6g、塩化ナトリウム52.6g、および、48%水酸化ナトリウム5.0gに純水を加えて600.0gとし溶液(1)とした。溶液(1)60.0gに、塩化カルシウム・2水和物0.25g、および、塩化マグネシウム・6水和物0.10gに、純水を加えて、1000.0gとし、溶液(2)とした。一方で、ポリマーの0.10%水溶液を10g程度調製し溶液(3)とした。 試験管にケイ酸塩としてタルク0.60g、溶液(2)27.0g、溶液(3)3.0gを入れ、ゴム栓で蓋をした。試験管をゆっくり上下60往復反転させた。さらに、 試験管の蓋を外してラップで上部を覆い、安定した場所に2時間静置した。試験液の上澄み液を5mlのホールピペットで採取し、1cmセル入れ、液の吸光度をUV検出器(波長380nm)で測定した。
【0076】
<実施例1>
温度計、還流冷却管を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、工業用ブタノール(以下、「BuOH」と称する)649.1g、および48%水酸化ナトリウム水溶液15.6gを仕込み、マグネティックスタラーで撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、撹拌下、60℃に保持された反応系中に、アリルグリシジルエーテル(以下、「AGE」と称する)100.0gを120分かけて等速で滴下した後、更に180分間、60℃に維持(熟成)して反応を終了した。
当該反応液を30℃まで冷却した後、上記フラスコから還流冷却管を取り外し、リービッヒ冷却管、1Lの受器、及び窒素投入管を取り付けた。上記反応系を6.7kPaまで減圧後、反応液を加熱し、液の温度が100℃になるまで未反応のBuOH及び水を留去した。次に、反応液を100℃に維持しながら窒素ガスを反応に使用したAGEに対し6モル%/時で270分間投入し、更に未反応のBuOH及び水を留去した。
このようにして3‐アリルオキシ‐1,2‐プロパンジオール(以下、「APD」と称する2.0質量%、1‐アリロキシ‐3‐ブトキシプロパン‐2‐オール(以下、「A1B」と称する)、81.0質量%を含む本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物(組成物(1))を得た。
【0077】
<実施例2>
実施例1において、工業用BuOHに代えて、1質量%の水を含むBuOHを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、APD3.1質量%、A1B80.29質量%を含む本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物(組成物(2))を得た。
【0078】
<実施例3>
実施例1において、工業用BuOHに代えて、5質量%の水を含むBuOHを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、APD7.3質量%、A1B76.0質量%を含む本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物(組成物(3))を得た。
【0079】
<実施例4>
実施例1において、工業用BuOHに代えて、10質量%の水を含むBuOHを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、APD9.8質量%、A1B71.2質量%を含む本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物(組成物(4))を得た。
【0080】
<実施例5>
温度計、還流冷却管を備えた容量200mLの四つ口フラスコに、工業用BuOH129.8g、および水酸化ナトリウム 1.7gを仕込み、マグネティックスタラーで撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、撹拌下、60℃に保持された反応系中に、AGE40.0gを120分かけて等速で滴下した後、更に180分間、60℃に維持(熟成)して反応を終了した。
当該反応液を30℃まで冷却した後、上記フラスコから還流冷却管を取り外し、リービッヒ冷却管、200mLの受器、及び窒素投入管を取り付けた。上記反応系を6.7kPaまで減圧後、反応液を加熱し、液の温度が100℃になるまで未反応のBuOH及び水を留去した。次に、反応液を100℃に維持しながら窒素ガスを反応に使用したAGEに対し5モル%/時で270分間投入し、更に未反応のBuOH及び水を留去した。
このようにしてAPD0.7質量%、A1B71.1質量%を含むエーテル結合含有化合物を含む組成物(組成物(5))を得た。
【0081】
<実施例6>
実施例1において、工業用BuOHに代えて、15質量%の水を含むBuOHを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、APD13.0質量%、A1B66.5質量%を含む本発明のエーテル結合含有化合物を含む組成物(比較組成物(6))を得た。
【0082】
<実施例7>
温度計、還流冷却管を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、水1質量%を含むBuOH259.6g、および48%水酸化ナトリウム水溶液 9.6gを仕込み、マグネティックスタラーで撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、撹拌下、60℃に保持された反応系中に、AGE200.0gを120分かけて等速で滴下した後、更に180分間、60℃に維持(熟成)して反応を終了した。
当該反応液を30℃まで冷却した後、上記フラスコから還流冷却管を取り外し、リービッヒ冷却管、1Lの受器、及び窒素投入管を取り付けた。上記反応系を6.7kPaまで減圧後、反応液を加熱し、液の温度が100℃になるまで未反応のBuOH及び水を留去した。次に、反応液を100℃に維持しながら窒素ガスを反応に使用したAGEに対し3モル%/時で270分間投入し、更に未反応のBuOH及び水を留去した。
このようにしてAPD1.8質量%、A1B55.0質量%を含むエーテル結合含有化合物を含む組成物(比較組成物(7))を得た。
【0083】
表1に、組成物(1)〜(5)、比較組成物(6)、(7)の製造条件および組成をまとめた。なお、A2B、A3B、A4Bは、それぞれ、化合物1、化合物2、化合物3を表す。
【0084】
【表1】
【0085】
【化14】
【0086】
【化15】
【0087】
【化16】
【0088】
<重合体製造例1>
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量5LのSUS316釜に、純水516.1g、およびモール塩0.0556gを仕込み、撹拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」と称する)927.9g、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下「48%NaOH」と称する)43.0g、エーテル結合含有化合物を含む上記組成物(1)131.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」と称する)242.2g、および35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」と称する)88.1gをそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は80%AAについては180分間、48%NaOHについては175分間、組成物(1)については120分間、15%NaPSについては210分間、35%SBSについては175分間とした。各溶液の滴下開始は、80%AA、組成物(1)、15%NaPSおよび35%SBSは同時、48%NaOHについてはその他の溶液の5分後とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記温度反応溶液を85℃に維持(熟成)して重合を終了した。重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%NaOH687.3gを徐々に滴下し、重合反応溶液を中和した。このようにして、重量平均分子量33,000の重合体(1)を含む、固形分濃度45.5%の重合体組成物(1)を得た。
【0089】
<重合体製造例2>
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316釜に、純水157.6g、およびモール塩0.0170gを仕込み、撹拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、85℃に保持された重合反応系中に、「80%AA」283.3g、「48%NaOH」43.0g、エーテル結合含有化合物を含む上記組成物(2)40.0g、「15%NaPS」73.9g、および「35%SBS」26.9gをそれぞれ別のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は80%AAについては180分間、48%NaOHについては175分間、組成物(2)については120分間、15%NaPSについては210分間、35%SBSについては175分間とした。各溶液の滴下開始は、80%AA、組成物(1)、15%NaPSおよび35%SBSは同時、48%NaOHについてはその他の溶液の5分後とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。15%NaPSの滴下終了後、更に30分間、上記温度反応溶液を85℃に維持(熟成)して重合を終了した。重合を終了した。重合終了後、重合反応液を撹拌、放冷しながら、48%NaOH180.0gを徐々に滴下し、重合反応溶液を中和した。このようにして、重量平均分子量50,000の重合体(2)を含む、固形分濃度46.8%の重合体組成物(2)を得た。
【0090】
<重合体製造例3〜5>
エーテル結合含有化合物を含む本発明の組成物(3)、(4)および比較組成物(6)について、重合体製造例2と同様にして、重合体組成物(3)〜(5)を得た。
【0091】
<比較重合体製造例6>
エーテル結合含有化合物を含む比較組成物(7)について、重合体製造例2と同様にして、重合体組成物の製造を行ったところ、滴下開始後120分ほどで高粘度化し、ゲルが生成したことから、反応を終了した。
<シリカスケールの分散能>
上記重合体組成物(1)〜(5)を用い、シリカスケールの分散能を評価した。結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2から明らかなように、本発明の組成物は、重合体の原料として使用した場合に、ゲルの生成を抑制することが可能であり、重合体の原料として好適に使用できる。さらに本発明の組成物を用いで製造した重合体は、従来の重合体に比して、優れたシリカスケールの分散能を有していることが明らかとなった。すなわち、本発明の組成物を用いで製造した重合体は、水処理剤として好適に使用できる。よって、本発明の組成物は、良好な水処理性能を有する重合体の原料として好適に使用することができる。