(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
本実施の形態は、オルガノシランの縮合反応物を含む塗布液を基板上に塗布して塗布層を形成する塗布層形成工程と、該塗布層を不活性雰囲気下で30℃以上100℃未満の温度で加熱することによって該塗布層内の縮合反応を更に進行させる予備硬化工程と、該予備硬化工程の後、該塗布層を400℃以上800℃以下の温度で加熱することによって焼成シリカ系被膜を形成する焼成シリカ系被膜形成工程と、を含む、シリカ系被膜の製造方法を提供する。
【0010】
従来、このオルガノシランの縮合反応物の経時による品質の変化によって、使用目的である半導体装置に関する被膜の製造上で発生する課題の一つに、同一条件で被膜を製造したときに発生する膜厚の変化が挙げられる。特に半導体装置の量産時においては、塗布装置に有機SOGをセッティングした後は、変質が進行しやすい室温環境に塗布液が設置され続けるために、連続に同一条件で被膜を製造したとしても被膜の膜厚が短期間に大きく変化してしまい、結果として製造上の規格外となる可能性が発生する。本実施の形態では、オルガノシランの縮合反応物を含む塗布液を特定条件で加熱することにより前記課題が解決する。
【0011】
塗布液は、典型的には、オルガノシランの縮合反応物を適当な溶媒に溶解して得られる。
【0012】
オルガノシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の4官能オルガノシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリメトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン等の3官能又は2官能のアルコキシシラン、及び、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等の水素化アルコキシシランを、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、塗布層の均質性が良好という点で、オルガノシランが4官能オルガノシランを含むことが好ましく、その4官能オルガノシランとしてテトラエトキシシランを含むことがより好ましい。
【0013】
オルガノシランの縮合反応物は、例えば上記したオルガノシランを水の存在下で重縮合させる方法により製造できる。このとき、酸性雰囲気下、オルガノシランの官能基の数に対して、好ましくは0.1当量以上10当量以下、より好ましくは0.4当量以上8当量以下の範囲で水を存在させて重縮合を行う。水の存在量が上記の範囲内である場合、縮合反応物のポットライフを長くし、成膜後のクラック耐性を向上させることができるため好ましい。
【0014】
また、縮合の際には酸触媒を加えても良い。酸触媒としては、無機酸及び有機酸が挙げられる。上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。上記有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等が挙げられる。
【0015】
上記の無機酸及び有機酸は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。また使用される酸触媒の量は、オルガノシランの縮合反応物を製造する際の反応系のpHを0.01〜7.0、好ましくは5.0〜7.0の範囲に調整する量であることが好ましい。この場合、オルガノシランの縮合反応物の重量平均分子量を良好に制御できる。
【0016】
オルガノシランの縮合反応物は、有機溶媒中又は水と有機溶媒との混合溶媒中で製造することができる。上記有機溶媒としては、例えばアルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、脂肪族炭化水素化合物類、芳香族炭化水素化合物類、アミド化合物類等が挙げられる。
【0017】
上記アルコール類としては、例えば:メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
【0018】
上記エステル類としては例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。 上記ケトン類としては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
【0019】
上記エーテル類としては、上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えば:エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール等が挙げられる。
【0020】
上記脂肪族炭化水素化合物類としては例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0021】
上記芳香族炭化水素化合物類としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0022】
上記アミド化合物類としては例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0023】
以上の溶媒の中でも、アルコール類としてメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトン類としてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等;エーテル類としてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等;及びアミド化合物類としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が、水と混合しやすく、シリカ粒子を分散させやすい点で好ましい。
【0024】
好ましい態様において、オルガノシランの縮合反応物は、アルコール水溶液中、pH5以上7未満の弱酸性条件での加水分解縮合により製造できる。
【0025】
これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、複数種の溶媒を組み合わせて使用しても構
わない。また上記溶媒を用いずにバルク中で反応を行ってもよい。
【0026】
オルガノシランの縮合反応物を製造する際の反応温度は特に制限は無いが、好ましくは−50℃以上200℃以下、より好ましくは0℃以上150℃以下の範囲で行う。上記の温度範囲で反応を行うことにより、オルガノシランの縮合反応物の分子量を容易に制御することができる。
【0027】
塗布液において、オルガノシランの縮合反応物の縮合換算量と後述のシリカ粒子との総質量100質量%に対する、オルガノシランの縮合反応物の縮合換算量の比率は、40質量%以上99質量%以下であることが好ましい。本明細書において、オルガノシランの縮合反応物の縮合換算量とは、オルガノシランの縮合反応物中に残存する官能基を、1/2個の酸素原子に置き換えて得られる量を意味する。該縮合換算量が40質量%以上であることは、成膜性が良好である点で好ましい。該縮合換算量はより好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上である。一方、該縮合換算量が99質量%以下であることは、低収縮率及び良好なクラック耐性が得られる点で好ましい。該縮合換算量はより好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0028】
また、塗布液は、シリカ系被膜のクラック耐性が良好となる観点から、シリカ粒子を含有することが好ましい。シリカ粒子としては、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。シリカ粒子としては、商業的に入手可能な例えばLEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、メタノールシリカゾルIPA−ST 、同MEK−ST、同NBA−ST、同XBA−ST、同DMAC−ST、同ST−UP、同ST−OUP、同ST−20、同ST−40、同ST−C、同ST−N、同ST−O、同ST−50、同ST−OL(以上、日産化学工業(株)製) 、クオートロンP L シリーズ(扶桑化学(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600 、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51 、同H52 、同H121 、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470( 富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を、挙げることができる。シリカ粒子は、オルガノシランの縮合反応物と混合され、若しくは縮合され、又はこれらの組合せであることができる。
【0029】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上120nm以下であることが好ましく、より好ましくは40nm以下、更に好ましくは20nm以下、最も好ましくは15nm以下である。上記平均一次粒子径が1nm以上である場合、クラック耐性が良好であり好ましく、120nm以下である場合、塗布層の均質性が良好であり好ましい。
【0030】
シリカ粒子の平均二次粒子径は、2nm以上250nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは40nm以下、最も好ましくは30nm以下である。上記平均二次粒子径が2nm以上である場合、クラック耐性が良好であり好ましく、250nm以下である場合、塗布層の均質性が良好であり好ましい。
【0031】
上記平均一次粒子径は、BETの比表面積から計算で求められる値であり、上記平均二次粒子径は、動的光散乱光度計で測定される値である。
【0032】
オルガノシランの縮合反応物の縮合換算量とシリカ粒子との合計100質量%に対するシリカ粒子の含有量は、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、10質量%以上50質量%以下、更に好ましくは、15質量%以下以上45質量%以下である。含有量が1質量%以上である場合、シリカ系被膜のクラック耐性が良好であり、含有量が60質量%以下である場合、塗布層の形成性が良好である。
【0033】
塗布液は通常溶媒を含む。溶媒としてはオルガノシランの縮合反応物が溶解する種々の溶媒を使用できる。溶媒は1種でも2種以上の組合せでもよい。溶媒は、典型的には、予備硬化時の溶媒揮発の抑制の観点から沸点が80℃以上のものである。ここで沸点は、2種以上の組合せ溶媒においてもそれぞれの単独の沸点を意味する。沸点は、予備硬化工程における縮合反応を良好に進行させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上である。また沸点は、予備硬化工程において溶媒をある程度揮発させる必要がある観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。好ましい溶媒としては、例えばブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、メチルイソブチルケトン、イソアミルメチルケトン、エチルヘキシルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、ペンチルプロピオネート、ヘキシルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒、ジブチルエーテル、アニソール、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒等を例示できる。溶媒の量は、オルガノシランの縮合反応物と、シリカ粒子(含む場合)との合計100質量部に対し、塗布液のポットライフが良好という観点から、好ましくは100質量部以上、より好ましくは125質量部以上、更に好ましくは150質量部以上であることができ、塗布層の均質性が良好という観点から、好ましくは1900質量部以下、より好ましくは1400質量部以下、更に好ましくは900質量部以下であることができる。
【0034】
塗布液は、上述した成分以外の追加の成分を含んでもよい。追加の成分としては、例えば上記オルガノシランのようなシラン化合物等が挙げられる。シラン化合物の含有量は、クラック耐性が良好である観点から、オルガノシランの縮合反応物の縮合換算量100質量部に対して、縮合換算量で、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。本開示で、シラン化合物の縮合換算量とは、シラン化合物中の官能基を1/2個の酸素原子に置き換えて得られる量を意味する。
【0035】
シリカ系被膜の製造方法の具体的な工程について説明する。
【0036】
塗布層形成工程において、前述した塗布液は、通常の方法で基板上に塗布することができる。基板としては、例えばシリコン基板等を例示できる。また、上記基板はトレンチ構造などのような加工構造を有することが出来る。塗布方法としては、例えば、スピンコート、スプレーコート、ロールコートのような公知な任意の塗布方法を用いることができる。なかでも、半導体装置用の場合は塗布層の膜厚均一性が良好となる点からスピンコートが好ましい。塗布の条件は本発明によって製造されるシリカ系被膜に所望される膜厚に従って適宜選択すればよい。
【0037】
次に、塗布液を基板上に塗布したのちに実施する予備硬化工程について説明する。この工程における予備硬化は例えばホットプレート、オーブン、ファーネス等により実施される。本発明においては、特定温度での予備硬化を行うことにより、有機SOGの変質による被膜の膜厚変動を抑制するという効果が得られる。有機SOGが経時で変質する原因の一つには、塗布液中でオルガノシランの縮合反応が完全に停止されないことが挙げられる。一般に予備硬化は塗布液中の溶媒を揮発させることを目的として溶媒の沸点付近の温度で加熱する。しかし、不活性雰囲気下で、塗布層中に残る溶媒を急激に揮発させない温度領域で予備硬化した場合は、熱によるオルガノシランの縮合反応が、溶媒が揮発した場合と比べて急速に塗布層中で進行する。この現象を意図的に発生させる予備硬化条件によって、塗布液の経時環境差による変質度合を打ち消すように塗布層中の縮合状態を同質化でき、従って塗布液の経時変化に起因する塗布層の焼成後の厚みの変動を抑えられることを見出した。不活性雰囲気下である理由は、大気中のような酸素存在下よりも各種成分の揮発速度が抑えられ、塗布液の経時変化による焼成膜厚変化量が小さくなり本発明の効果が大きくなるためである。
【0038】
上記観点から、予備硬化温度は30℃以上100℃未満である。上記予備硬化温度は、溶媒の揮発乾燥時間が適度となり被膜の膜厚均一性が向上する観点から、30℃以上であり、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上である。また、溶媒の急激な揮発を抑制し本実施形態における効果が十分に発揮される観点から、上記予備硬化温度は100℃未満であり、好ましくは90℃以下であり、より好ましくは80℃以下である。
【0039】
本実施形態において、予備硬化工程は、上記の加熱により、基板搬送上で問題が発生しなくなる程度に塗布層の表面タック性が低減された時点で終了させる。具体的には、塗布層の表面に物体が物理的に接触したとしても、その跡が付かない程度であればよい。予備硬化時間は、上記の表面タック性が無くなり、基板搬送上で問題が発生しなくなる時間であれば特に制限しないが、予備硬化を良好に進行させる観点から、好ましくは60秒以上、より好ましくは90秒以上、更に好ましくは120秒以上であり、工程全体の時間短縮の観点から、好ましくは800秒以下、より好ましくは700秒以下、更に好ましくは600秒以下である。
【0040】
本実施形態において、予備硬化は不活性雰囲気下で行う必要がある。本開示で、不活性雰囲気下とは酸素濃度200ppm以下を意味する。酸素濃度が200ppm超であると、揮発成分の揮発速度が大きいために本実施形態における効果が十分に発揮されない。酸素濃度は低い程好ましく、好ましくは150ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0041】
なお、予備硬化工程における30℃以上100℃未満の温度での加熱の後、後述の焼成シリカ系被膜形成工程の前に、100℃以上400℃未満の温度で追加の予備硬化を行ってもよい。この場合、被膜の膜厚均一性が特に良好であるという利点が得られる。追加の予備硬化は、前述の不活性雰囲気の他、大気中、酸素中又は水蒸気酸化雰囲気等で行うことができ、好ましくは不活性雰囲気又は大気雰囲気下で行う。追加の予備硬化の温度は、十分に溶媒を揮発させる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃以上であることができ、被膜の膜厚均一性が良好となる観点から、好ましくは400℃未満、より好ましくは300℃以下であることができる。また追加の予備硬化の時間は、十分に溶媒を揮発させる観点から、好ましくは60秒以上、より好ましくは90秒以上、更に好ましくは120秒以上であり、被膜の膜厚均一性が良好となる観点から、好ましくは800秒以下、より好ましくは700秒以下、更に好ましくは600秒以下である。
【0042】
次に、焼成シリカ系被膜形成工程において、上記の予備硬化工程、及び任意の追加の予備硬化を経た塗布層を加熱して、塗布層を焼成する。加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス等による加熱適用が挙げられる。加熱焼成時の雰囲気としてはシリカ系被膜の所望とする機能性が得られるならば種類を問わないが、装置内で燃焼が発生せずに安全性が良いという観点から不活性雰囲気下で行うのが好ましい。焼成温度は400℃以上800℃以下の範囲である。温度が400℃以上であることにより、被膜にとって不要な成分が揮発するのに十分な加熱焼成が行われる。また800℃以下の温度は、オルガノシランが熱分解する温度以下であるために、被膜としての機能性を確保できる。加熱温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上であり、好ましくは800℃以下、より好ましくは750℃以下である。加熱時間は、被膜にとって不要な成分が揮発するのに十分な加熱焼成が行われる観点から、好ましくは1分以上、より好ましく10分以上、更に好ましくは30分以上であり、工程の時間は短いほうが良いという観点から、好ましくは24時間以下、より好ましくは4時間以下、更に好ましくは2時間以下である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
(塗布液の製造)
製造例−1
200mLのナス型フラスコに、テトラエトキシシラン10.40g、エタノール20.63gを投入し攪拌した。ついで、0.7質量%濃度の硝酸水溶液1.53g、水2.08gを、滴下ロートを用いてナスフラスコ内の溶液を攪拌しながら室温で滴下した。滴下終了後、冷却管をセットし、オイルバスを用いて50℃で2時間加熱攪拌した。加熱攪拌後、ナスフラスコ内にプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:沸点120℃)を60g投入し、エバポレーターを用いてSiO
2換算で15質量%濃度になるまで溶媒を加熱減圧留去した。さらにナスフラスコ内にPGMEを30g投入し、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、SiO
2換算で15質量%濃度の縮合反応物溶液を得た。
【0045】
製造例−2
200mLのナス型フラスコに、テトラエトキシシラン4.4g、メチルトリメトキシシラン11.6g、エタノール20gを投入し攪拌した。ここへ水11.5gとpH調整のため適切量の濃硝酸との混合水溶液を滴下ロートを用いてナスフラスコ内の溶液を攪拌しながら室温で滴下しpH6〜7に調整した。滴下終了後、30分攪拌した後24時間静置してポリシロキサン化合物を得た。このポリシロキサン化合物を、蒸留塔及び滴下ロートを有する4つ口の500mLフラスコにPL−06(扶桑化学工業製の平均一次粒子径6nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子)47.6g及びエタノール80gを投入し5分間攪拌したものに室温で滴下し、滴下終了後30分間攪拌した後4時間還流した。還流後、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA:沸点145℃)を150g添加し、オイルバスを昇温させて蒸留ラインよりメタノール、エタノール、水、及び硝酸を留去し、縮合反応物のPGMEA溶液を得た。該縮合反応物のPGMEA溶液を濃縮することにより、SiO
2換算で20質量%濃度の縮合反応物溶液を得た。
【0046】
(膜厚変化による、塗布液の経時安定性の評価)
上記縮合反応物の半量を−20℃で1週間冷凍保管し、残り半量を23℃で1週間室温保管した後、それぞれを8インチシリコンウェハー上にスピンコーター(東京エレクトロン製、クリーントラックMk−8)を用いて1600rpmで30秒回転塗布した。この塗布膜を下記実施例及び比較例の各条件で予備硬化した後、縦型焼成炉(光洋リンドバーグ製、VF−2000S)を用いて炉内に窒素を25L/minで流し、23℃から昇温速度5℃/minで600℃まで昇温し600℃で30分間保持することで焼成工程を行い、シリカ系被膜を得た。シリカ系被膜の膜厚を分光エリプソメーター(HORIBA JOBINYVON製 、UVISEL)を用いることで測定し、膜厚変化率より経時安定性を評価した。経時安定性の判断基準として、膜厚変化率が5%未満の場合を経時安定性が良好、5%以上の場合を経時安定性が不良と設定した。さらに、膜厚変化率が3%未満の場合を特に良好とした。
膜厚変化率(%)=((23℃保管縮合反応液で作製したシリカ系被膜の膜厚)/(−20℃保管縮合反応液で作製したシリカ系被膜の膜厚)−1)×100
【0047】
実施例1
製造例−1で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は酸素濃度200ppm、ホットプレート上で80℃300秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管及び室温保管した場合の膜厚変化率が5%未満であり、経時安定性は良好であった。
【0048】
実施例2
製造例−1で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は酸素濃度200ppm、ホットプレート上で50℃600秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管及び室温保管した場合の膜厚変化率が5%未満であり、経時安定性は良好であった。
【0049】
実施例3
製造例−2で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は酸素濃度200ppm、ホットプレート上で80℃300秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管及び室温保管した場合の膜厚変化率が3%未満であり、経時安定性は特に良好であった。
【0050】
実施例4
製造例−2で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は、酸素濃度200ppm、ホットプレート上で80℃300秒、及びその後の追加の予備硬化として、ホットプレート上において大気雰囲気下で110℃300秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管及び室温保管した場合の膜厚変化率が3%未満であり、経時安定性は特に良好であった。
【0051】
比較例1
製造例−1で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は大気雰囲気下、ホットプレート上で80℃300秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管及び室温保管した場合の膜厚変化率が5%以上であり、経時安定性は不良であった。
【0052】
比較例2
製造例−1で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は酸素濃度200ppm、ホットプレート上で110℃300秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管と室温保管した場合の膜厚差が5%以上であり、経時安定性は不良であった。
【0053】
比較例3
製造例−2で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は酸素濃度200ppm、ホットプレート上で110℃300秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管及び室温保管した場合の膜厚変化率が5%以上であり、経時安定性は不良であった。
【0054】
比較例4
製造例−2で合成した縮合反応液について、上記膜厚変化による経時安定性の評価手法に基づき評価を実施した。ここで予備硬化条件は酸素濃度200ppm、ホットプレート上で23℃600秒である。その結果、縮合反応液を冷凍保管及び室温保管した場合の膜厚変化率が5%以上であり、経時安定性は不良であった。