特許第6016570号(P6016570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016570活性エネルギー線硬化性コーティング用樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016570
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性コーティング用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 57/06 20060101AFI20161013BHJP
   C09D 155/00 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161013BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20161013BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C08L57/06
   C09D155/00
   C09D7/12
   C08K5/00
   C08K3/36
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-230242(P2012-230242)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-80531(P2014-80531A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 陽一
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 淳司
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133443(WO,A1)
【文献】 特開2000−109695(JP,A)
【文献】 特開平05−287215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
C09D 7/12
C09D 155/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖がビニル系共重合体であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):

−X−Y−Z−SiR−(OR3−c (I)

(式中、Xはメチレン基またはアルキレンオキサイド基単位を示し、aは2〜8の整数であり、環構造を含んでいてもよい。Yはカルボニル基、エーテル基、カルバメート基、イミノ基、または、尿素基を示す。Zはメチレン基を示し、bは2〜5の整数である。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示し、cは0〜2の整数である。)で表される加水分解性基に結合したケイ素基を含む有機基を2個以上有する共重合体(A)と光酸発生剤(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記共重合体(A)におけるYがウレタン基、チオウレタン基、尿素基、エーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、脱水剤(C)を前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記共重合体(A)100重量部に対して、平均粒子径が100nm以下の金属酸化物微粒子(D)を0〜200重量部含有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記金属酸化物微粒子(D)が、シリカ粒子であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記光酸発生剤(B)が、芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記光酸発生剤(B)のカウンターアニオンが、フルオロフォスフォネート系若しくはフルオロスルフォネート系であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有するプラスチック用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗装した塗装体。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する活性エネルギー線ハードコート用硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜7の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射する塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成型体やフィルムなど過度に熱をかけることができない材料に対して、付着性がよく、耐薬品性に優れ、さらには高い表面硬度と擦傷性を有しながら柔軟性や耐衝撃性にも優れた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。さらには耐候性にも優れており、屋外での使用にも適した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属やガラスの代替としてアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、PET樹脂等のプラスチック材料が広く使用されている。しかしながら、これらプラスチック材料は表面硬度が低く、耐薬品性や表面傷付き性が充分ではないという問題がある。そこで、プラスチック材料の表面に種々のコーティング材料を塗布し、性能を向上させるという手法が取られてきた。例えば、熱硬化型のウレタン塗料を塗布し、プラスチック基材の耐熱温度以下で塗膜を形成する方法がある(特許文献1)。しかしながら、架橋密度を上げることで耐薬品性を向上させることはできるが、表面硬度と耐擦り傷性は充分ではない。
【0003】
そこで短時間で硬化が可能で、表面硬度および耐擦り傷性を上げる手法として、多官能アクリレートと光重合開始剤などからなるコーティング液にUV光などの活性エネルギー線を照射することが報告されている(特許文献2)。本手法では、熱硬化のウレタン塗料と比較して高い表面硬度が得られるが、耐擦り傷性は充分とは言えず、耐衝撃性や柔軟性は満足いくものではない。
【0004】
また、加水分解性シラン化合物にUV光などの活性エネルギー線を照射することで、ハードコート膜を得る方法も報告されている(特許文献3)。本手法においても、高い表面硬度は得られるが、耐擦り傷性は充分ではなく、特に加水分解性シリル基の加水分解縮合に起因する硬化収縮から、耐衝撃性や柔軟性は乏しい。
【0005】
以上のように、プラスチック基材等を傷めないために、低温硬化やUV等の活性エネルギー線照射による短時間硬化により、耐薬品性や表面硬度を向上させる手法が数多く報告されているが、耐擦り傷性と耐衝撃性は充分ではない。このため表面硬度の他に、被塗物をポケットや容器に入れて持ち運んだり、落下などの衝撃を受けても充分に耐え得る高い耐擦り傷性と柔軟性や耐衝撃性を両立するコーティング剤の開発が求められていた。またウレタンアクリレートやエポキシアクリレートなどを用いた活性エネルギー線照射タイプでは充分ではなかった耐候性にも優れるコーティング剤の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−296539号公報
【特許文献2】特許第3096861号公報
【特許文献3】特開2000−109695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、軽量化を主目的に金属やガラスの代替として広く使われるようになったプラスチック基材等の表面を改質するためのコーティング剤の提供であり、より詳しくは、プラスチック基材等へ塗布した際に、優れた透明硬化塗膜が形成可能であり、また使用に際して充分な表面硬度と耐擦り傷性を有しながら、耐衝撃性や柔軟性に優れ、屋外の使用にも適した耐候性を有する活性エネルギー線等で短時間硬化が可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、一分子中に特定の構造で結合した加水分解性シリル基を有するビニル系共重合体と、特定の光酸発生剤を含有するコーティング用樹脂組成物が、高圧水銀灯などを用いたUV照射により短時間で透明な硬化塗膜が形成され、得られた塗膜は、良好な表面硬度と耐擦り傷性を示し、且つ耐衝撃性と柔軟性にも優れることを見出した。
【0009】
すなわち本願は、
主鎖がビニル系共重合体であり、主鎖末端および/または側鎖に一般式(I):

−Xa−Y−Zb−SiRC−(OR3-C (I)

(式中、Xはメチレン基またはアルキレンオキサイド基単位を示し、aは2〜8の整数であり、環構造を含んでいてもよい。Yは2価の官能基を示し、その構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。Zはメチレン基を示し、bは2〜5の整数である。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示し、cは0〜2の整数である。)で表される加水分解性基に結合したケイ素基を含む有機基を2個以上有する共重合体(A)と光酸発生剤(B)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(請求項1)。
前記共重合体(A)におけるYがウレタン基、チオウレタン基、尿素基、エーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(請求項2)。
さらに、脱水剤(C)を前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1または2の一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(請求項3)。
前記化合物(A)100重量部に対して、平均粒子径が100nm以下の金属酸化物微粒子(D)を0〜200重量部含有することを特徴とする請求項1から3の一項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物(請求項4)。
前記金属酸化物微粒子(D)が、シリカ粒子であることを特徴とする請求項1から4の一項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物(請求項5)。
前記光酸発生剤(B)が、芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(請求項6)。
前記光酸発生剤(B)のカウンターアニオンが、フルオロフォスフォネート系若しくはフルオロスルフォネート系であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(請求項7)。
請求項1〜7の何れか一項に記載の硬化性組成物を含有するプラスチック用活性エネルギー線硬化性組成物(請求項8)。
請求項1〜7の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗装した塗装体(請求項9)。
請求項1〜7の何れか一項に記載の硬化性組成物を含有する活性エネルギー線ハードコート用硬化性樹脂組成物(請求項10)。
請求項1〜7の何れか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射する塗膜の製造方法(請求項11)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成することができる。本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物を基材表面に塗布し硬化させることによって、硬化皮膜が基材表面に形成された積層体を作製することができる。本発明に係る活性エネルギー線硬化性組成物は、一液型硬化性組成物として好適に使用することができる。本発明による活性エネルギー線硬化性組成物を用いた場合、塗装後、高圧水銀灯やメタルハライドランプ、発光ダイオードなどを用いたUV照射により、短時間で、表面硬度と耐擦り傷性が良好で、加えて優れた耐衝撃性と柔軟性を有する塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
(A)加水分解性基に結合した特定構造のケイ素基を2個以上有するビニル系共重合体
本発明の加水分解性基に結合した特定構造のケイ素基を2個以上有するビニル系共重合体(A)成分は、一般式(I)に記載の特定の構造を有しているため、硬度と耐擦り傷性および耐
衝撃性と柔軟性の両立が可能となる。

−Xa−Y−Zb−SiRc−(OR3-c (I)

(式中、Xはメチレン基またはアルキレンオキサイド基単位を示し、aは2〜8の整数であり、環構造を含んでいてもよい。Yは2価の官能基を示し、その構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。Zはメチレン基を示し、bは2〜5の整数である。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示し、cは0〜2の整数である。)。
【0013】
Xは、メチレン基またはアルキレンオキサイド基単位を示し、アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基やこれらのブロック化合物を挙げることができ、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基が好ましい。
【0014】
Yは2価の官能基を示し、その構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。2価の官能基としては、例えば、カルボニル基、エーテル基、カルバメート基、イミノ基、尿素基を挙げることができ、エーテル基、カルバメート基が好ましく、特にウレタン結合やチオウレタン結合などのカルバメート基やエーテル基が好ましい。
【0015】
は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を挙げることができ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0016】
は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基を挙げることができ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0017】
ビニル系重合体(A)の分子量は、2000〜30000が好ましく、3000〜20000がより好ましい。2000未満であると未反応の単量体が残存しやすくなる傾向があり好ましくなく、30000を超えると塗装時に糸引き等の欠陥が生じたり、充分な硬度が発現しにくくなる傾向があり好ましくない。
【0018】
一般式(I)で表される有機基は、ビニル系重合体(A)中に2〜100個あることが好ましく、5〜50個あることがより好ましい。2未満であると硬度や耐擦傷性といった特性が得られにくい傾向があり好ましくなく、100個を超えると貯蔵安定性が低下しやすくなる傾向があり好ましくない。
【0019】
本発明の硬化性組成物中のビニル系重合体(A)の割合が高い方が、表面硬度と耐擦り傷性が良好で、かつ耐衝撃性と柔軟性にも優れる塗膜を得ることができるため好ましい。硬化性組成物中の(A)成分の割合としては、30重量%〜100重量%が好ましく、50重量%〜100重量%がより好ましく、70重量%〜100重量%がさらにより好ましい。
【0020】
本発明に使用可能な共重合体(A)成分は、(a−1)特定の構造を有する加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と(a−2)その他の重合性ビニル系単量体を重合させる方法や、官能基を有する共重合体を合成し、その官能基を用いて加水分解性シリル基を導入する方法などにより得られる。前記特定の構造を有する加水分解性シリル基は、共重合体(A)成分の主鎖末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖末端および側鎖に結合していてもよい。
【0021】
(a−1)特定の構造を有する加水分解性シリル基含有ビニル系単量体
(a−1)としては、下記一般式(II)で表されるアルコキシシリル基を有する単量体が有用である。

W−Xa−Y−Zb−SiRc−(OR3-c (II)

(式中、Wはエチレン性不飽和二重結合を有する部位を示し、Xはメチレン基またはアルキレンオキサイド基単位を示し、aは2〜8の整数であり、環構造を含んでいてもよい。Yは2価の官能基を示し、その構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。Zはメチレン基を示し、bは2〜5の整数である。Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示し、cは0〜2の整数である。)。
【0022】
(a−1)は、市販品を使用することも可能であるが、以下の化合物などを反応させることにより合成してもよい。
【0023】
(a)加水分解性シリル基含有イソシアナート化合物、(b)加水分解性シリル基含有アミン化合物、(c)加水分解性シリル基含有チオール化合物、(d)アルコール性水酸基含有エチレン性不飽和化合物、(e)モノイソシアナート含有エチレン性不飽和化合物、(f)グリシジル基含有エチレン性不飽和化合物。
【0024】
(a)加水分解性シリル基含有イソシアナート化合物
加水分解性シリル基含有イソシアナート化合物(a)としては、下記一般式(III)で表されるアルコキシシリル基とイソシアナート基を一分子中に有する化合物が有用である。
【0025】
SiRc−(OR3-c (III)
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基および炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基を示し、cは0〜2の整数である。)。
【0026】
前記一般式(II)において、(OR13-c は本発明の組成物の硬化性が良好になるという点から、cが0または1であることが好ましい。OR1またはR2が複数個の場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
加水分解性シリル基含有イソシアナート化合物(a)の具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0028】
これらの加水分解性シリル基含有イソシアナート化合物(a)は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0029】
(b)加水分解性シリル基含有アミン化合物
加水分解性シリル基含有アミン化合物(b)としては、上記一般式(II)で表されるアルコキシシリル基とアミノ基を一分子中に有する化合物が有用である。
またアミノ基は、イソシアナート基やグリシジル基との反応に使用するため、1級若しくは2級のアミノ基が好ましい。
【0030】
加水分解性シリル基含有アミン化合物(b)の具体例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)アミン、ビス(トリエトキシシリル)アミンなどが挙げられる。これらの加水分解性シリル基含有アミン化合物(b)は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0031】
(c)加水分解性シリル基含有チオール化合物
加水分解性シリル基含有チオール化合物(c)としては、上記一般式(II)で表されるアルコキシシリル基とチオール基を一分子中に有する化合物が有用である。
【0032】
加水分解性シリル基含有チオール化合物(c)の具体例としては、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランγ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0033】
これらの加水分解性シリル基含有チオール化合物(c)は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0034】
(d)アルコール性水酸基含有エチレン性不飽和化合物
アルコール性水酸基含有エチレン性不飽和化合物(d)としては、ビニル基やアリル基、(メタ)アクリロイル基を有するアルコール性水酸基化合物が有用である。
【0035】
アルコール性水酸基含有エチレン性不飽和化合物(d)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、1,4シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシスチレンビニルトルエン、東亞合成化学工業(株)製のアロニクス5700、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製のHE−10、HE−20、HP−1およびHP−2(以上、何れも末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマー)、日本油脂(株)製のブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーAEシリーズ、ブレンマーAPシリーズ等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート誘導体、水酸基含有化合物とε―カプロラクトンとの反応により得られるε―カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物PlaccelFM−1、FM−4(以上ダイセル化学工業(株)製)、TONEM−201(UCC社製)、HEAC−1(ダイセル化学工業(株)製)等のポリカーボネート含有ビニル系化合物などが挙げられる。
【0036】
中でも、加水分解性シリル基含有イソシアナート化合物(a)との反応性や得られる塗膜の耐擦り傷性、耐衝撃性のバランスなどから、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、繰り返し単位が2〜5個のポリアルキレングリコールアクリレートが好ましい。
【0037】
(e)モノイソシアナート含有エチレン性不飽和化合物
モノイソシアナート含有エチレン性不飽和化合物(e)としては、入手のしやすさなどからα,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートが有用である。
【0038】
モノイソシアナート含有エチレン性不飽和化合物(e)の具体例としては、(メタ)アクリロキシイソシアナートやβ−(メタ)アクリロキシエチルイソシアナート、γ−イソプロペニルーα,α’−ジメチルベンジルイソシアナートなどが挙げられる。
【0039】
(f)グリシジル基含有エチレン性不飽和化合物
グリシジル基含有エチレン性不飽和化合物(f)としては、ビニル基やアリル基、(メタ)アクリロイル基を有するグリシジル基化合物が有用である。
【0040】
グリシジル基含有エチレン性不飽和化合物(f)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレートやアリルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
目的とする分子内にエチレン性不飽和二重結合と加水分解性シリル基を有する化合物(A)は、これらのうち、(a)と(d)、(b)と(e)、(b)と(f)或いは(c)と(e)の組み合わせにて反応させることにより合成できる。
【0042】
その際、加水分解性シリル基含有化合物(a)、(b)、(c)に対するエチレン性不飽和化合物(d)、(e)、(f)のモル比(a)/(d)、(b)/(e)、(b)/(f)或いは(c)/(e)が0.8〜1.2とすることが、得られる塗膜の耐擦り傷性と耐衝撃性の点から好ましく、0.9〜1.1とすることがより好ましい。
【0043】
また反応時には、温度や反応の制御の点から溶媒を使用してもよい。溶媒としては特に限定はなく、公知の芳香族系、脂肪族炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、アルコール系等の溶媒を用いることができる。
【0044】
反応時の温度は、各反応系での反応速度で調節すればよいが、温度が高くなればエチレン性不飽和基の重合反応が起こりやすくなるため、100℃以下とすることがよい。また温度を上げる場合には、メトキノンやハイドロキノンなどの重合禁止剤を配合しておくとよい。
【0045】
(a−1)は、1種または2種以上の混合物を使用することができる。その使用量は、硬度と耐擦り傷性および耐衝撃性と柔軟性の両立のためには、ビニル系共重合体(A)の全ての単量体単位100重量部に対して20〜100重量部用いることが好ましく、30〜100重量部用いることが特に好ましい。
【0046】
(a−2)その他の重合性ビニル系単量体
その他共重合可能な単量体(a−2)成分の具体例としては、(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンや2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシスチレンビニルトルエン、東亞合成化学工業(株)製のアロニクス5700、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業(株)製のHE−10、HE−20、HP−1およびHP−2(以上、何れも末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマー)、日本油脂(株)製のブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート誘導体、水酸基含有化合物とε―カプロラクトンとの反応により得られるε―カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物PlaccelFM−1、FM−4(以上ダイセル化学工業(株)製)、TONEM−201(UCC社製)、HEAC−1(ダイセル化学工業(株)製)等のポリカーボネート含有ビニル系化合物などの水酸基含有ビニル系単量体および/またはその誘導体が挙げられる。
【0047】
また、(a−1)以外の加水分解性シリル基含有ビニル系単量体も使用できる。具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(n−プロポキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランなどを挙げることができ、これらの中では、特にアルコキシシリル基含有単量体であるγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランが安定性の点で好ましい。
【0048】
さらに、 (メタ)アクリロキシイソシアナート、β−(メタ)アクリロキシエチルイソシアナート、γ−イソプロペニルーα,α’−ジメチルベンジルイソシアナートなどα,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートも挙げられる。
【0049】
その他、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物などのリン酸エステル基含有(メタ)アクリル系化合物、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの塩;無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物、これら酸無水物と炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖を有するアルコールまたはアミンとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;(メタ)アクリロニトリル、2ーヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他ビニル系化合物などが挙げられる。
【0050】
これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。単量体(a−2)は、ビニル系共重合体(A)の全ての単量体単位100重量部に対して0〜80重量部用いることが好ましく、0〜70重量部用いることが特に好ましい。
【0051】
上記(a−1)と(a−2)の単量体を重合して得られるビニル系重合体を含有する液状組成物に用いる溶媒としては特に限定はなく、公知の芳香族系、脂肪族炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、アルコール系、水等の溶媒を用いることができる。トルエン、キシレン、酢酸ブチル、脂肪族炭化水素含有溶剤を用いるのがビニル系共重合体の溶解性の点から好ましい。
【0052】
ビニル系重合体の製造方法としては、前記単量体より共重合体液状組成物を得る方法であれば特に限定されない。重合方法としては、例えば溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられ、溶液重合法が合成の容易さなどの点で好ましい。
【0053】
前記重合に用いる開始剤としては、公知のものを挙げることができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物系、アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ化合物系、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物系、過酸化物と還元剤を組み合わせるレドックス系などの開始剤を挙げることができる。
【0054】
得られるビニル系重合体(A)の重合度は、ラジカル発生剤の種類及び使用量、重合温度、及び連鎖移動剤の使用によって調節することができる。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、及びγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が好適に使用できる。数平均分子量が2,000未満の場合は、未重合の単量体が残存し易く、好ましくない。一方、数平均分子量が30,000を超える場合には、得られる硬化性樹脂組成物は、その塗装時に糸引き等の欠陥を生じたり、充分な硬度が発現しにくくなる傾向があり好ましくない。
【0055】
本発明に使用可能な共重合体(A)成分は、官能基を有する共重合体に、その官能基を用いて加水分解性シリル基を導入する方法などによっても得ることができる。
【0056】
官能基を有する共重合体が有する官能基(U)としては、イソシアナート基、アミノ基、チオール基、アルコール性水酸基、グリシジル基であり、イソシアナート基と水酸基、グリシジル基が反応性から好ましい。
【0057】
その官能基(U)に加水分解性シリル基を導入する方法としては、官能基を有する共重合体が有する官能基(U)に対して反応性を有する官能基(V)と加水分解性シリル基を有する化合物を反応させることによって、加水分解性シリル基を導入することができる。官能基(V)と加水分解性シリル基を有る化合物としては、上記の(a)加水分解性シリル基含有イソシアナート化合物、(b)加水分解性シリル基含有アミン化合物、(c)加水分解性シリル基含有チオール化合物、(f)加水分解性シリル基含有グリシジル化合物を挙げることができる。
【0058】
(B)光酸発生剤
本発明における(B)成分である光酸発生剤は、活性エネルギー線に暴露されることにより酸を発生する化合物であり、たとえばトルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素などの強酸、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩またはセレニウム塩などのオニウム塩類;鉄−アレン錯体類;シラノール−金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類などのスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類など、特開平5−134412号公報に示される放射線の照射により酸を発生する化合物があげられる。
【0059】
上記の光酸発生剤の中で、芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩が共重合体(A)との組成物の安定性が高く入手しやすいという点から好ましい。スルホン酸誘導体としては、たとえば米国特許第4618564号公報に示されるベンソイントシレート、ニトロベンジルトシレート、コハク酸イミドトシルスルホネートなどのスルホン酸エステル類;米国特許第4540598号公報、特開平6−67433号公報に示されるα−(4−トシルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニドなどのオキシムスルホネート類;特開平6−348015号公報に示されるトリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼンなど;特開昭64−18143号公報に示される9,10−ジアルコキシアントラセンスルホン酸ニトロベンジルエステルなど;N−(p−ドデシルベンゼンスルホニルオキシ)−1,8−ナフタルイミドなどがあげられる。有機ハロゲン化合物類としては、たとえば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどの特開昭55−32070号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭63−238339号公報に示されるハロゲン含有トリアジン化合物;特開平2−304059号公報に示される2−ピリジル−トリブロモメチルスルホンなどのハロゲン含有スルホン化合物;トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェートなどのハロゲン化アルキルリン酸エステル;2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジンなどのハロゲン含有へテロ環状化合物;1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィンなどのハロゲン含有炭化水素化合物などがあげられる。
【0060】
中でも芳香族スルホニウム塩若しくは芳香族ヨードニウム塩のカウンターアニオンがフルオロフォスフォネート系、フルオロアンチモネート系若しくはフルオロスルフォネート系であることが、硬化が速く、プラスチック基材への付着性に優れるという点から好ましい。安全性を考慮すると、フルオロフォスフォネート系若しくはフルオロスルフォネート系であることが特に好ましい。
【0061】
(B)成分の添加量は、生成する酸の発生量、発生速度に応じて調整が必要だが、共重合体(A)の固形分100重量部に対し、0.05〜30重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10重量部となる量である。0.05重量部未満では生成する酸が不足し、得られる塗膜の耐溶剤性や耐薬品性が充分ではない傾向にあり、30重量部を越えると塗膜外観の低下や着色などの問題が発生する傾向にある。
【0062】
本発明では光酸発生剤(B)のみで、つまり(B)以外の加水分解性シリル基の縮合触媒を配合しなくても硬化性組成物を硬化させることができる。加水分解性シリル基の縮合触媒を配合した場合には、一液硬化性組成物の貯蔵安定性が低下する傾向がある。(B)以外の加水分解性シリル基の縮合触媒の配合量は、ビニル系重合体(A)の固形分100重量部に対し、1重量部未満が好ましく、さらに好ましくは0.1重量部未満であり、実質的に含有しないことがさらにより好ましい。(B)以外の加水分解性シリル基の縮合触媒としては、例えば、有機錫触媒、チタニウム触媒、ジルコニウム触媒、アルミニウム触媒、カルボン酸触媒等を挙げることができる。
【0063】
(C)脱水剤
加水分解性シリル基とイソシアネート基を有するビニル系共重合体(A)成分は、湿分との反応性を有するため、さらに脱水剤を配合することによって、組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0064】
脱水剤としては、例えば、オルソ蟻酸メチル、オルソ蟻酸エチルもしくはオルソ蟻酸ブチル等のオルソ蟻酸アルキル;オルソ酢酸メチル、オルソ酢酸エチルもしくはオルソ酢酸ブチル等のオルソ酢酸アルキル;またはオルソほう酸メチル、オルソほう酸エチル、オルソほう酸ブチル等のオルソほう酸アルキル等のオルソカルボン酸エステルや、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等の高活性シラン化合物などが挙げられる。
【0065】
脱水剤の使用量としては、ビニル系重合体(A)の固形分100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。
【0066】
(D)金属酸化物微粒子
本発明における(D)成分である金属酸化物微粒子としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化スズ(SnO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタニア(TiO2)、ITO(スズ・酸化インジウム)、酸化アンチモン(Sb23、Sb25)、及びこれらの複合微粒子等を挙げることができる。
【0067】
中でも、高硬度の観点から、シリカ、アルミナ、ジルコニア及び酸化アンチモンが好ましい。特に、シリカ微粒子およびアルミナ微粒子が入手のしやすさやコスト、表面硬度などから好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0068】
このような金属酸化物微粒子は、粉体状又は溶剤分散ゾルであることが好ましい。溶剤分散ゾルである場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。
【0069】
金属酸化物微粒子(D)の粒子径としては平均一次粒子径が100nm以下、好ましくは30nm以下である。平均一次粒子径が100nmを超えると、得られる塗膜の透明性が損なわれる傾向にある。
【0070】
市販されているシリカ微粒子分散品としては、コロイダルシリカとして、メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、MIBK−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等(以上、日産化学工業(株)製)、OSCALシリーズ(日揮触媒化成(株)製)等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50等(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122等(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220等(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレ−ク(日本板硝子(株)製)等を挙げることができる。
【0071】
また、アルミナ微粒子分散品としては、NANOBYK−3601、NANOBYK−3602、NANOBYK−3610等(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、アルミナのイソプロパノール分散品としては、AS−150I等(住友大阪セメント(株)製)、アルミナのトルエン分散品としては、AS−150T(住友大阪セメント(株)製);ジルコニアのトルエン分散品としては、HXU−110JC(住友大阪セメント(株)製);アルミナ、チタニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末及び溶剤分散品としては、商品名:ナノテック等(シーアイ化成(株)製)等を挙げることができる。中でも、メタノ−ルシリカゾルやMIBK−ST、MIBK−SD、OSCALシリーズなどのシリカ微粒子分散品が、配合量に対する硬度や耐擦り傷性の発現効果が高くなる傾向があり好ましい。
【0072】
(D)成分を使用する場合、その添加量は化合物(A)の固形分100重量部に対し、10〜1000重量部が好ましく、さらに好ましくは30〜500重量部となる量である。10重量部未満では、(D)成分配合による硬度や耐擦り傷性の向上が充分ではない傾向にあり、1000重量部を越えると塗膜外観の低下や平滑性などの問題が発生する傾向にある。
【0073】
また本発明のコーティング剤組成物には、(B)成分の感光性を向上させる目的で、必要に応じて光増感剤を使用することができる。光増感剤としては、特に限定されないが、例えば、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられ、より詳しくは、9,10−ジアルコキシアントラセン、2−アルキルチオキサントン、2,4−ジアルキルチオキサントン、2−アルキルアントラキノン、2,4−ジアルキルアントラキノン、p,p‘−アミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシー4−アルコキシベンゾフェノン、ベンゾインエーテル等が挙げられる。さらに具体的には、アントロン、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9−エトキシアントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、フェナントレン、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイル安息香酸ブチル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−i−ブチルエーテル、9−フルオレノン、アセトフェノン、p,p′−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p′−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フェノチアジン、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3′−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン等が挙げられる。光増感剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0074】
光増感剤は、使用する(B)成分では吸収できない波長域の光を吸収できるものがより効率的であるため、吸収波長域の重なりが少ないものがよい。
【0075】
光増感剤を使用する場合の添加量は、目的とする硬化速度に応じて適宜調整すればよいが、光酸発生剤(B)成分100重量部に対し、1〜300重量部が好ましく、さらに好ましくは10〜100重量部となる量である。1重量部未満では目的とする増感剤の効果が得られにくく、300重量部を越えると塗膜が着色したり、コストアップに繋がる。
【0076】
本硬化性組成物には、溶剤を配合することができる。溶剤として特に制限はないが、使用する基材がプラスチックの場合には、基材の耐溶剤性が低いことが多いため、メチルイソブチルケトンやジイソブチルケトンなどのケトン類、ブタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸ブチルや酢酸イソプロピルなどのエステル類、ジエチレングリコールメチルエーテルやプロピレングリコールメチルエーテルなどのエーテル類が好ましい。溶剤の配合量としては、(A)成分100重量部に対して、0〜200重量部が好ましく、0〜100重量部がより好ましい。溶剤の配合量が多くなると、上記のごとく基材を傷める可能性があるため好ましくない。
【0077】
また活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などをあげることができるが、反応速度が速く、エネルギー線発生装置が比較的安価であるという点からは、紫外線が最も好ましい。活性エネルギー線の照射量としては、50mJ〜10,000mJの積算光量が好ましく、100mJ〜2,000mJの積算光量がより好ましい。本発明の硬化性組成物の硬化温度には特に限定はなく、活性エネルギー線照射によって室温で硬化塗膜を得ることができる。
【0078】
得られた活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて無機顔料や有機顔料、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤などの通常塗料に用いられる添加剤を添加することもできる。
【0079】
得られた活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系基材、プラスチック、フィルム、シート、木材、紙、繊維などからなる建築物、家電用品、産業機器などの塗装に好適に使用できる。特に、活性エネルギー線の照射しやすさから、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、PET樹脂等のプラスチック、フィルム、シートなどの基材に好適に使用できる。プラスチック、フィルム、シートなどのハードコートとして用いる場合には、塗膜は2〜100μmであることが好ましい。2μm以下では、プラスチック、フィルム、シート自体の硬度の影響を受けやすく、十分な硬度が得られない傾向があり、100μm以上では、化合物(A)中のアルコキシシル基の深部での硬化が遅くなる傾向がある。100μm以上の厚みを必要とする場合には、数回に分けて、塗装と活性エネルギー線の照射を繰り返すことが好ましい。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0081】
(使用した材料)
(エチレン性不飽和二重結合と加水分解性シリル基を有する化合物(A))
(合成例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器に表1の(a)成分と(d)成分および溶剤、メトキノンを仕込み、撹拌しながら窒素ガスを導入して75℃に昇温した。その後、75℃に保持したまま8時間反応を続けた。IRでイソシアネートのピークが消失したことを確認化合物(a−1a)を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
(合成例2〜3)
同様にして、表1の(a)、(c)、(d)、(e)成分および溶剤、メトキノンを仕込み、IRにて2100cm-1付近のイソシアネート由来のピークが消失したことを確認した。50℃まで温度を下げたのち脱水剤を配合、撹拌して化合物(a−1b〜a−1c)を得た。
【0084】
(合成例4〜8)
(特定構造のケイ素基を2個以上有するビニル系共重合体(A))
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロ−トを備えた反応器に表2の(イ)成分を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、表2の(ア)成分の混合物を滴下ロ−トから5時間かけて等速滴下した。次に、(ウ)成分の混合溶液を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き、110℃で2時間攪拌した後に、室温まで冷却した。最後に表2の(C)成分を加えて攪拌し、重合体(A)を合成した。
【0085】
得られた重合体(A−1〜5)の固形分濃度、GPCで測定した数平均分子量を表2に示した。尚、重合体(A−1〜5)は、重合溶剤で固形分濃度が50%となるように一旦重合溶剤で希釈して次の配合へと進めた。
【0086】
【表2】
【0087】
(コーティング用樹脂組成物の作成方法)
表3に示すように(A)成分に対して、(B)成分および(D)成分を加え、攪拌機を用いて1000rpmで3分間混合し、コーティング用樹脂組成物を得た。
【0088】
【表3】
【0089】
なお、表3中の化合物の記号は次のとおりである。
CPI−100P:サンアプロ(株)製 トリアリールスルホニウム・PF6塩のプロピレンカーボネート溶液
CPI−101A:サンアプロ(株)製 トリアリールスルホニウム・SbF6塩のプロピレンカーボネート溶液
MIBK−ST:日産化学工業(株)製 シリカ微粒子のMIBK分散液(有効成分30%)
MIBK−SD:日産化学工業(株)製 シリカ微粒子のMIBK分散液(有効成分30% 重合性基変性物)
【0090】
(物性評価)
PMMA/PCシート(シャインテックAW−10 0.5mm(株)シャインテクノ製)およびPMMAフィルム(SD009 125μm(株)カネカ製)に、表3で作製したコーティング用樹脂組成物をバーコーターを用いて、乾燥膜厚が約10μmとなるように塗布し、80℃で3分間溶剤除去のため乾燥した。次いで、空気中で無電極ランプバルブ(Light Hammmer:フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製)を用い、240mWで、波長310〜390nmの積算光量が500mJ/cm2となるように活性エネルギー線を照射することで硬化させた。
【0091】
評価には、照射1日後に、50℃×80%RH下で24時間養生した試験片を用いた。
・硬度
PMMA/PCシートに塗布した試験片をJIS K5600に準拠して、鉛筆硬度を評価した。
【0092】
・耐擦傷性
PMMA/PCシートに塗布した試験片を消しゴム摩耗試験機((株)光本製作所製)を用い、スチールウール#0000に500g/cm2の荷重をかけて500回往復させ、塗膜に残った傷の本数を観察し、下記の基準で評価した。
5:正面から見て傷が全くない
4:正面から見て数本の傷がある
3:数本から10本以内の浅い傷がある
2:傷が10本以上若しくは深い傷がある
1:深い傷がたくさんある若しくは塗膜が削り取られている
【0093】
・耐衝撃性
PMMA/PCシートに塗布した試験片に直径17.5mmで重さが22gの鋼球を落下し、試験板の外観を目視観察した。鋼球を落下する高さを変更し、クラックが発生しなかった高さを評価した。
【0094】
・柔軟性
PMMAフィルムに塗布した試験片を塗工した面を内側にして鉄芯に巻き付け、塗装板
の状態を観察した。
○:φ=10mmの鉄芯に巻き付けて変化なし
△:φ=15mmの鉄芯に巻き付けて変化なし
×:φ=15mmの鉄芯に巻き付けたとき塗膜が割れた
【0095】
・耐候性
PMMA/PCシートに塗布した試験片をサンシャインウエザオメーター(SWOM、スガ試験機(株)製)を用いて耐候性試験を実施した。
○:3000Hrでクラックの発生や艶の低下などの変化なし
△:3000Hrで一部クラックが発生した
×:3000Hr以内に全体にクラックの発生や艶低下等、外観上著しい変化があった。
【0096】
・耐薬品性
PMMA/PCシートに塗布した試験片に、表3に示す薬品をスポットし、80℃で1時間静置した後、脱脂綿で拭取り塗膜の状態を観察した。
○:変化なし
△:スポット跡が残る
×:塗膜が膨潤(溶解)している
コパトーン、ニベアとしては、下記のものを使用した。
コパトーン:コパトーンSPF50
ニベア :ニベアSPF47
【0097】
実施例1〜8では、高い硬度と耐擦り傷性が得られた。シリカ微粒子を配合した場合には、さらに硬度と耐擦り傷性の向上が見られた。耐衝撃性についても高い値を示し、得られたフィルムはφ15mm以下という細い鉄芯に巻くことも可能であることが分かった。いずれの場合も、本硬化性組成物の特長である硬度と耐擦り傷性および耐衝撃性と柔軟性のバランスが極めて良好な結果であった。耐薬品性も良好で、さらに耐候性についても、4000Hrを経過して外観上の問題は見られず、屋外で使用するにも充分な耐候性を有していることも確認できた。
【0098】
一方、本硬化性組成物の特長である加水分解性シリル基と不飽和二重結合基が特定の構造を有していない比較例1および比較例2では、硬度の高い硬い塗膜ではあるものの、耐擦り傷性は充分ではなく、また耐衝撃や柔軟性が低かった。
【0099】
以上のように、本活性エネルギー線硬化性組成物から得られるコーティング剤は、プラスチック基材等へ塗布した際に、優れた透明硬化塗膜が形成可能であり、また使用に際して充分な表面硬度と耐擦り傷性を有しながら、耐衝撃性や柔軟性に優れ、屋外の使用にも適した耐候性を有する塗膜を与えることが確認された。