特許第6016593号(P6016593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016593
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】皮膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 13/00 20060101AFI20161013BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 201/08 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20161013BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20161013BHJP
   C25D 11/20 20060101ALI20161013BHJP
   C25D 11/06 20060101ALI20161013BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C25D13/00 N
   C09D5/44 B
   C09D201/08
   C09D7/12
   C09D5/02
   C09D133/00
   C25D11/20 304Z
   C25D11/06 B
   C25D11/04 302
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-262519(P2012-262519)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2013-136836(P2013-136836A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-264229(P2011-264229)
(32)【優先日】2011年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】平野 浩司
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−101970(JP,A)
【文献】 特開平10−046392(JP,A)
【文献】 特開2010−138373(JP,A)
【文献】 特開2007−009059(JP,A)
【文献】 特開2002−188044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 9/00− 9/12
C25D 11/00− 21/22
C23C 24/00− 30/00
C09D 1/00− 10/00
C09D101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金をリン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)に浸漬し、
陽極酸化処理を行って、孔の平均ポア径が30〜300nmでありかつ皮膜厚が2〜5μmである陽極酸化皮膜を形成し、次いで該陽極酸化皮膜の表面に下記特徴のアニオン電着塗料(B)を電着塗装し、素材表面から乾燥膜厚1〜5μmかつ陽極酸化皮膜の孔内部1μm以上の深さに電着塗膜を形成させることを特徴とする皮膜形成方法;
アニオン電着塗料(B):カルボキシル基含有樹脂(b1)、ブロック化イソシアネート(b2)を含む樹脂成分を水分散して得られた平均粒子径30nm〜100nmのエマルションを含み、かつ[エマルションの平均粒子径−孔の平均ポア径]=20nm以下であることを特徴とするアニオン電着塗料。
【請求項2】
カルボキシル基含有樹脂(b1)が、カルボキシル基含有不飽和モノマー、ポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマー、及びその他のラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマーの混合物をラジカル共重合させて得られるアクリル樹脂(b)である請求項1に記載の皮膜形成方法。
【請求項3】
アニオン電着塗料(B)が、下記式(1)で表される化合物を含有する請求項1又は2に記載の皮膜形成方法。
【化1】
(Rは炭素原子数7〜9のアルキル基、nは10〜16の整数を示す)
【請求項4】
アルミニウム又はアルミニウム合金をリン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)に浸漬し、
電流密度0.5〜3.0A/dmで通電することによって陽極酸化皮膜を形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膜形成方法によって得られる塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔の平均ポア径が30〜300nmでかつ皮膜厚が2〜5μmの陽極酸化皮膜上に、乾燥膜厚1〜5μmのアニオン電着塗膜を形成する皮膜形成方法、及び該皮膜形成方法によって得られる、耐衝撃性、耐水性に優れる塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陽極酸化処理(アルマイト処理)したアルミニウム材は、軽量で強度や耐蝕性等に優れることから、成型加工した後、アクリル樹脂・メラミン硬化型のアニオン電着塗料を電着塗装して塗膜を施し、建材、例えば、アルミサッシ、建具、ベランダ用基材、屋根材、雨戸、ドア、障子、戸袋、サンルーム等用に使用されている。
【0003】
従来からのアルミサッシにおける「陽極酸化〜電着塗装」の製造工程では、例えば、皮膜9μmの陽極酸化に、乾燥膜厚7μmの電着塗膜を施した場合には(塗膜構成は図3参照)、建材1m当たり、陽極酸化1.32kWh/m及び電着塗装0.15kWh/mの電力を使用する。
【0004】
最近では、省エネルギー(節電、燃料節約)の要求により、陽極酸化皮膜の薄膜化(2〜5μm)及びアニオン電着塗膜の薄膜化(乾燥膜厚1〜5μm)が求められており(塗膜構成は、図4参照)、陽極酸化皮膜とアニオン電着塗膜の両方の薄膜化を行っても、塗膜性能を確保できることが要求されている。
【0005】
従来、厚さ約9μmの陽極酸化皮膜上に塗装された、乾燥膜厚1〜7μmの特定アニオン電着塗膜が開示されている(特許文献1)。しかし、陽極酸化皮膜の皮膜厚を2〜5μmと非常に薄くし、該陽極酸化皮膜上に乾燥膜厚1〜5μmのアニオン電着塗膜を形成すると、耐衝撃性や耐水性の低下が著しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−9059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、皮膜厚が2〜5μmの陽極酸化皮膜上に、乾燥膜厚1〜5μmの優れた性能を有するアニオン電着塗膜を形成できる皮膜形成方法を見出し、耐衝撃性、耐水性、ポア孔内部の電着塗膜の形成性に優れる塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アルミニウムを特定の水溶液(A)に浸漬して孔の平均ポア径が30〜300nmでかつ皮膜厚が2〜5μmの陽極酸化皮膜を形成し、次いで該陽極酸化皮膜上にアニオン電着塗料(B)を電着塗装して乾燥膜厚1〜5μmのアニオン電着塗膜と陽極酸化皮膜のポア孔内部1μm以上の深さに電着塗膜を形成させる皮膜形成方法によって、課題を達成できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、以下の項に関する:
1.アルミニウム又はアルミニウム合金をリン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)に浸漬し、陽極酸化処理を行って、孔の平均ポア径が30〜300nmでありかつ皮膜厚が2〜5μmである陽極酸化皮膜を形成し、次いで該陽極酸化皮膜の表面に下記特徴のアニオン電着塗料(B)を電着塗装し、素材表面から乾燥膜厚1〜5μmかつ陽極酸化皮膜の孔内部1μm以上の深さに電着塗膜を形成させることを特徴とする皮膜形成方法;
アニオン電着塗料(B):カルボキシル基含有樹脂(b1)、ブロック化イソシアネート(b2)を含む樹脂成分を水分散して得られた平均粒子径30nm〜100nmのエマルションを含み、かつ[エマルションの平均粒子径−孔の平均ポア径]=20nm以下であることを特徴とするアニオン電着塗料。
【0010】
2.カルボキシル基含有樹脂(b1)が、カルボキシル基含有不飽和モノマー、ポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマー、及びその他のラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマーの混合物をラジカル共重合させて得られるアクリル樹脂(b)である1項に記載の皮膜形成方法。
【0011】
3.アニオン電着塗料(B)が、下記式(1)で表される化合物を含有する1又は2項に記載の皮膜形成方法
【0012】
【化1】
【0013】
(Rは炭素原子数7〜9のアルキル基、nは10〜16の整数を示す)。
【0014】
4.アルミニウム又はアルミニウム合金をリン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)に浸漬し、電流密度0.5〜3.0A/dmで通電することによって陽極酸化皮膜を形成する1〜3項のいずれか1項に記載の皮膜形成方法。
【0015】
5.1〜4項のいずれか1項に記載の皮膜形成方法によって得られる塗装物品。
【発明の効果】
【0016】
本発明の皮膜形成方法によって得られた塗装物品は、耐衝撃性、耐水性に優れる。このような性能に優れる理由には、本発明に使用する陽極酸化皮膜の孔の平均ポア径が30〜300nmである為、アニオン電着塗料がポア孔の内部に浸透し易く、ポア孔内部1μm以上の深さに電着塗膜を形成できることから得られた電着塗膜は、投錨(アンカー)効果によって、耐衝撃性や耐水性に優れた皮膜が得られるものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アルミニウムを硫酸水溶液に浸漬して陽極酸化処理を施した「陽極酸化皮膜」の電子顕微鏡写真(5000倍)である。
図2】アルミニウムをリン酸水溶液に浸漬して陽極酸化処理を施した「陽極酸化皮膜」の電子顕微鏡写真(5000倍)である。
図3】従来の「陽極酸化〜電着塗膜」の皮膜モデル図である
図4】本発明における「陽極酸化〜電着塗膜」の皮膜モデル図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金をリン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)に浸漬し、孔の平均ポア径が30〜300nmで皮膜厚が2〜5μmの陽極酸化皮膜を形成し、次いで該陽極酸化皮膜の表面に下記特徴のアニオン電着塗料(B)を電着塗装し、素材表面(陽極酸化皮膜表面)から乾燥膜厚1〜5μmの電着塗膜と極酸化皮膜の孔内部1μm以上の深さに電着塗膜を形成させることを特徴とする皮膜形成方法;
アニオン電着塗料(B):カルボキシル基含有樹脂(b1)、ブロック化イソシアネート(b2)を含む樹脂成分を水分散して得られた平均粒子径30nm〜100nmのエマルションを含み、かつ[エマルションの平均粒子径−孔の平均ポア径]=20nm以下であることを特徴とするアニオン電着塗料を提供する。
【0019】
本発明の皮膜形成方法では、まず、アルミニウム又はアルミニウム合金に、脱脂、エッチング、中和を施し、次いでリン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)に浸漬し、「陽極酸化処理」を行って陽極酸化皮膜を形成する。
【0020】
その後、必要に応じて湯洗が行なわれた後、「アニオン電着塗料(B)」を用いて、アニオン電着塗装を行う。次いで、水洗を行わず(ノンリンス)又は水洗(リンス)を行った後、加熱乾燥することにより乾燥膜厚が1〜5μm、さらに好ましくは2〜4μmのアニオン電着塗膜を得ることができる。ここで、乾燥膜厚とは、陽極酸化皮膜のうち、孔のない平坦な部分の表面に形成された電着塗膜の膜厚を示す。
【0021】
これらの工程によって、陽極酸化皮膜のポア孔内1μm以上の深さにまでアニオン電着塗料の塗膜を形成でき、塗膜の投錨(アンカー)効果によって、耐衝撃性や耐水性に優れる塗装物品を得ることができる。以下、詳細に説明する。
【0022】
陽極酸化処理
陽極酸化処理は、アルミニウム又はアルミニウム合金を、リン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)に浸漬し、次いでアルミニウム又はアルミニウム合金を陽極として、直流にて通電処理する。上記リン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)は、浴温10〜50℃、好ましくは18〜40℃が望ましい。また上記通電処理は、電流密度0.5〜3.0A/dm、好ましくは0.7〜2.3A/dmで10秒間〜60分間、好ましくは20秒間〜20分間処理することが望ましい。
【0023】
この陽極酸化処理によって、孔の平均ポア径(注1)が30〜300nm、好ましくは50〜250nm、厚さが1〜5μm、好ましくは2〜4μmの陽極酸化皮膜を形成できる。また、上記通電処理は、必要に応じて数回繰り返すこともできる。本発明において、孔の平均ポア径とは、上記陽極酸化処理により形成された孔の開口部部分の長径(円状に近い場合は最大径)の平均値を意味する(注1)。また、当該孔は、通常、3μm未満の深さを有する。そして、当該孔の少なくとも一部は、1μm以上の深さを有する。
(注1)孔の平均ポア径:孔の平均ポア径は、走査型電子顕微鏡(倍率5,000倍)を用いて、電子顕微鏡写真において孔のポアの長径(円状に近い場合は最大径)を測定し、n=20の平均値を求めて平均ポア径(nm)とした。
【0024】
アルミニウム合金としては、例えば、非熱処理型合金のAl−Mn合金である3000系、Al−Si合金である4000系、Al−Mg系合金である5000系;熱処理型合金のAl−Cu−Mg系合金である2000系、Al−Mg−Si系合金である6000系、Al−Zn−Mg系合金である7000系等の、少なくとも一種の金属とアルミニウムとの合金が挙げられる。
【0025】
本発明の陽極酸化処理における反応機構は、アルミニウム又はアルミニウム合金を「リン酸水溶液」の浴中に浸漬し通電処理を施すと、下記式に従って「Al」の皮膜を形成できる。
【0026】
リン酸の解離度は(pKa1=2.15、pKa2=7.2、pKa3=12.4)であり、「Al」の生成が段階的にゆっくり進むものと考える:
2Al+3HPO+3HO→Al+2HPO+9H+PO3−+6e
2Al+2HPO+3HO→Al+HPO+7H+PO3−+6e
2Al+HPO2−+3HO→Al+7H+PO3−+6e
【0027】
また、アルミニウム又はアルミニウム合金を「シュウ酸水溶液」の浴中に浸漬し、通電処理を施すと、下記式に従って「Al」の皮膜を形成できる。シュウ酸の解離度は(pKa1=1.27、pKa2=4.27)であり、「リン酸水溶液」と同様に「Al」の生成が段階的にゆっくり進むものと考える:
2Al+2H+3HO→Al+2HC+8H+8e
2Al+2HC+3HO→Al+2C+8H+8e
【0028】
生成される「Al」が、アニオン電着塗膜の耐水性向上に寄与すると考えられる。ここで、従来からの硫酸の電解液に比べて、「リン酸水溶液」又は「シュウ酸水溶液」を電解液に用いると容易に、平均ポア径を上記の範囲にすることができる。この理由としては、従来から用いていた硫酸は解離度(酸解離定数pKa1=1.99)が高く、Alの形成が早いものの、先に形成した「Al」によって通電ムラを生じ易い為、ポア径が大きくかつ仕上り性が良好な陽極酸化皮膜を作成することが容易でなかった。
【0029】
しかし、リン酸やシュウ酸は多段階解離である為、硫酸を用いた場合に比べてAlの形成がゆっくりであることから通電ムラを生じ難く、ポア径が大きくかつ仕上り性に優れた陽極酸化皮膜を作成できる。さらに、陽極酸化皮膜をポア孔内部まで深く形成できる。なおリン酸水溶液又はシュウ酸水溶液(A)の濃度は、1〜40質量%、好ましくは20〜35質量%であることが、電流密度や通電時間を容易に制御でき、孔の平均ポア径が30〜300nmでかつ皮膜厚2〜5μmの陽極酸化皮膜を形成できるため好ましい。このことは付着性に優れるアニオン電着塗膜を形成できる面から好ましい。
【0030】
アニオン電着塗料(B)
本発明に用いるアニオン電着塗料(B)は、カルボキシル基含有樹脂(b1)、ブロック化イソシアネート(b2)を含む樹脂成分を水分散して得られた平均粒子径30nm〜100nmのエマルションを含み、かつ[エマルションの平均粒子径−孔の平均ポア径]=20nm以下であることを特徴とするアニオン電着塗料である。好ましくは[エマルションの平均粒子径−孔の平均ポア径]=0nm未満、が陽極酸化皮膜の孔内部1μm以上の深さに電着塗膜を形成させるためにも好ましい。
【0031】
カルボキシル基含有樹脂(b1)は、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂が挙げられ、耐候性及び仕上り性の面から、中でもアクリル樹脂が好適である。
【0032】
本発明に使用するアクリル樹脂は、カルボキシル基含有不飽和モノマー、その他のラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマーの混合物を溶媒中で重合開始剤を用いてラジカル共重合させて得られるアクリル樹脂である。
【0033】
また、カルボキシル基含有不飽和モノマー、ポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマー及びその他のラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマーの混合物を溶媒中で重合開始剤を用いてラジカル共重合させて得られるアクリル樹脂(b)が好ましい。
【0034】
上記カルボキシル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のモノマーが挙げられる。
【0035】
上記その他のラジカル重合性不飽和モノマーは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこれ以外に、プラクセルFM1、プラクセルFM2、プラクセルFM3、プラクセルFA1、プラクセルFA2、プラクセルFA3(以上、ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル系モノマー)等の水酸基含有ラジカル重合性不飽和モノマー;例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートのC1〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル系モノマー、スチレン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ヘキソキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジn−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマーを挙げることができる。
【0036】
必要に応じて配合されるポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマーは、下記一般式CH =CRCOO(R’O)n−X(式中、Rは水素原子又はメチル基、R’は−C−又は−C−を示し、Xは水素原子又はメチル基を示し、nは2〜100、好ましくは5〜60、さらに好ましくは10〜30の整数を示す。)で表される。
【0037】
ポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマーは、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
本発明においては、カルボキシル基含有樹脂(b1)の原料モノマーとしては、
カルボキシル基含有不飽和モノマー、C1〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物;アルコキシシリル基含有不飽和モノマー、カルボキシル基含有不飽和モノマー、C1〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物;カルボキシル基含有不飽和モノマー、C1〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、水酸基含有ラジカル重合性不飽和モノマー及びポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマーを含むモノマー混合物;アルコキシシリル基含有不飽和モノマー、カルボキシル基含有不飽和モノマー、C1〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、水酸基含有ラジカル重合性不飽和モノマー及びポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマーを含むモノマー混合物等が好ましい。
【0039】
上記ラジカル重合において、上記重合溶液は、モノマーの総量を基準として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを1〜20質量%、好ましくは4〜10質量%、ポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマーを0〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、その他のラジカル重合性不飽和モノマーを50〜99質量%、好ましくは65〜86質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0040】
特に、アクリル樹脂の中でも、カルボキシル基含有不飽和モノマー、ポリエーテル変性アクリル系不飽和モノマー、及びその他のラジカル重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を、溶媒中で重合開始剤を用いてラジカル重合させることにより得られるアクリル樹脂(b)が、容易にエマルションの平均粒子径を30〜100nmの範囲にできる点から好ましい。
【0041】
上記溶媒としては、例えば、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒等が好適に使用できる。
【0042】
上記溶媒は、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル系溶媒をさらに含むことができる。
【0043】
ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。
【0044】
なお本発明に使用するカルボキシル基含有樹脂(b1)の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜150,000、より好ましくは20,000〜100,000の範囲、酸価は好ましくは20〜150mgKOH/g、より好ましくは40〜100mgKOH/g、水酸基価は好ましくは0〜200mgKOH/g、より好ましくは15〜150mgKOH/gの範囲である。
【0045】
ここで明細書中の「重量平均分子量」は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0046】
本発明に用いるアニオン電着塗料(B)は、前記カルボキシル基含有樹脂(b1)に加えて、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b2)を含有する。ブロック化ポリイソシアネート化合物(b2)は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で封鎖したものである。
【0047】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族又は脂環族のポリイソシアネート化合物、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物等を挙げることができる。
【0048】
一方、ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0049】
このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等のラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノール等の脂肪族アルコール化合物;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の芳香族アルキルアルコール化合物;エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。
【0050】
なお、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b2)の市販品としては、例えば、バーノックD−750、バーノックD−800、バーノックDN−950、バーノックDN−970もしくはバーノックDN−15−455、(以上、大日本インキ化学工業社製、商品名)、デスモジュールL、デスモジュールN、デスモジュールHL、デスモジュールILもしくはデスモジュールN3390(以上、バイエル社製品社製)、タケネートD−102、タケネートD−202、タケネートD−110NもしくはタケネートD−123N(武田薬品工業社製、商品名)、コロネートL、コロネートHL、コロネートEHもしくはコロネート203(日本ポリウレタン工業社製、商品名)又はデュラネート24A−90CX(旭化成工業社製、商品名)等が挙げられる。
【0051】
アニオン電着塗料(B)における、カルボキシル基含有樹脂(b1)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b2)の配合割合は、カルボキシル基含有樹脂(b1)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b2)の固形分合計100質量部を基準にして、カルボキシル基含有樹脂(b1)50〜75質量部、好ましくは50〜65質量部、ブロック化ポリイソシアネート化合物(b2)25〜50質量部、好ましくは35〜50質量部含むことが、耐水性、密着性及び仕上り性の面から好ましい。
【0052】
アニオン電着塗料(B)で使用するエマルションの製造は、カルボキシル基含有樹脂(b1)にブロック化ポリイソシアネート化合物を混合し、必要に応じて、硬化触媒、界面活性剤等を加え、カルボキシル基含有樹脂(b1)のカルボキシル基に対して0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の塩基性化合物を配合した後、混合分散し、次いでこのものに脱イオン水を加え、固形分10〜60質量%、好ましくは10〜40質量%になるように脱イオン水を滴下し、次いでpH7.0〜8.0になるように中和剤で調整して、平均粒子径30〜100nm、好ましくは50〜90nmのエマルションを得る。この範囲の平均粒子径に容易にする為には、塩基性化合物の調整、前記アクリル樹脂(b)、界面活性剤等の使用が有効である。
【0053】
この範囲の平均粒子径のエマルションであることが、陽極酸化皮膜におけるポア孔内部の深部まで電着塗膜を形成するためにも望ましい。なお上記平均粒子径は、例えば、「COULTER N5型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いた動的光散乱法によって測定することができる。
【0054】
前記硬化触媒は、低温硬化性の向上を目的として添加するものであって、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジベンゾエート、ジブチル錫ジベンゾエート等の液状錫化合物であることが、カルボキシル基含有樹脂(b1)との相溶性に優れ、付着性に優れた塗膜を得るためにも好ましい。
【0055】
上記以外の硬化触媒としては、乳酸ビスマス、オクチル酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸リチウム、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩、アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体、日東化成社製商品名;U−200、U−600(有機錫化合物)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
上記塩基性化合物としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−又はジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミンが挙げられる。上記塩基性化合物の配合割合は、中和当量として0.1〜1.2当量の範囲が好ましい。
【0057】
上記界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性イオン系のいずれでも使用できる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
【0058】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベダインが挙げられる。
【0059】
特に、アニオン電着塗料(B)には、エマルション粒子径を一定範囲内とする為に、式(1)のノニオン性界面活性剤が有用であり、−(CHCHO)−の繰り返し単位である、nの数は10〜16、好ましくはnの数は12〜15、特にn=14、n=15のノニオン性界面活性剤を用いることが望ましい。
【0060】
【化2】
【0061】
(Rは炭素原子数7〜9のアルキル基、nは10〜16の整数を示す)。
【0062】
本発明においては、前述の陽極酸化処理により得られた陽極酸化皮膜の表面に、上記アニオン電着塗料(B)で電着塗装する。より具体的には、上記アニオン電着塗料(B)からなる電着浴に陽極酸化処理をしたアルミニウム又はアルミニウム合金の少なくとも一部を浸漬し、当該アルミニウム又はアルミニウム合金と対極との間で、当該アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極として通電することにより、電着塗装をすることができる。より具体的には、例えば、アニオン電着塗装は、一般的には、脱イオン水等で希釈して固形分濃度が約5〜40質量%とし、さらにpHを5.5〜12.0、好ましくは7〜10の範囲内に調整した電着塗料組成物からなる電着浴を、通常、浴温15〜35℃に調整し、負荷電圧80〜400V、好ましくは80〜350Vの条件で当該アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極として通電することによって行うことができる。電着塗装後、前述したように、当該アルミニウム又はアルミニウム合金に余分に付着したアニオン電着塗料を落とすために、十分に水洗しても(リンス)、水洗をしなくても(ノンリンス)よい。
【0063】
その後、必要に応じて、加熱乾燥を行う。塗膜の焼き付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機等の乾燥設備を用いて行う。上記の加熱乾燥の条件は、通常、乾燥温度は100〜180℃、好ましくは120〜160℃、乾燥時間は、通常、20〜50分間、好ましくは25〜40分間である。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
【0064】
本発明は、上記皮膜形成方法によって得られる塗装物品も提供する。塗装物品としては、特に限定されず、例えば、建材、例えば、アルミサッシ、建具、ベランダ用基材、屋根材、雨戸、ドア、障子、戸袋、サンルーム等、及びこれらの部品等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
【0066】
カルボキシル基含有樹脂(b1)の製造例
製造例1 アクリル樹脂No.1溶液の製造例(艶有り)
反応容器中にイソプロピルアルコール70部を仕込み、80℃に保持した中へスチレン10部、メチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレ−ト15部、エチルアクリレ−ト18部、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト10部、アクリル酸7部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル2部の混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1部を添加し、80℃で1時間保持して反応をおこない、固形分70%のアクリル樹脂No.1溶液を製造した。該アクリル樹脂No.1の樹脂固形分は、重量平均分子量約2万、酸価55mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/gであった。
【0067】
製造例2 アクリル樹脂No.2溶液の製造例(艶消し)
反応容器中にイソプロピルアルコール70部を仕込み、80℃に保持した中へスチレン10部、メチルメタクリレート45部、n−ブチルアクリレート15部、エチルアクリレート10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート12部、アクリル酸5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル1部の混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1部を添加し、80℃で1時間保持して反応を行い、固形分70%のアクリル樹脂No.2溶液を製造した。該アクリル樹脂No.2の樹脂固形分は、重量平均分子量約5万、酸価39mgKOH/g、水酸基価58mgKOH/gであった。
【0068】
製造例3 アクリル樹脂No.3溶液の製造例(艶有り)
反応容器中にイソプロピルアルコール70部を仕込み、80℃に保持した中へスチレン10部、メチルメタクリレート40部、n−ブチルアクリレート10部、エチルアクリレート13部、RMH1053モノマー(注2)10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、アクリル酸7部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル2部の混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1部を添加し、80℃で1時間保持して反応をおこない、固形分70%のアクリル樹脂No.3溶液を製造した。アクリル樹脂No.3の樹脂固形分は、重量平均分子量約2万、酸価55mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/gであった。
(注2)RMH1053モノマー:日本乳化剤株式会社製、商品名、ポリエチレングリコールモノアクリレート、分子量約700
【0069】
製造例4 アクリル樹脂No.4溶液の製造例(艶消し)
反応容器中にイソプロピルアルコール70部を仕込み、80℃に保持した中へスチレン10部、メチルメタクリレート45部、n−ブチルアクリレート10部、エチルアクリレート5部、RMH1053モノマー10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート12部、アクリル酸5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3部、及びアゾビスジメチルバレロニトリル1部の混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1部を添加し、80℃で1時間保持して反応をおこない、固形分70%のアクリル樹脂No.4溶液を製造した。アクリル樹脂No.4の樹脂固形分は、重量平均分子量約5万、酸価39mgKOH/g、水酸基価58mgKOH/gであった。
【0070】
製造例5 硬化剤No.1溶液の製造
反応容器中に、イソホロンジイソシアネート222部及びメチルエチルケトオキシム174部を加え70℃に昇温した。経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、エチレングリコールモノブチルエーテルにて樹脂固形分を調整して、樹脂固形分80%の硬化剤No.1溶液を得た。
【0071】
製造例6 硬化剤No.2溶液の製造
反応容器中に、ヘキサメチレンジイソシアネート168部及びメチルエチルケトオキシム174部を加え70℃に昇温した。経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認してエチレングリコールモノブチルエーテルにて樹脂固形分を調整し、樹脂固形分80%の硬化剤No.2溶液を得た。
【0072】
製造例7 エマルションNo.1の製造
上記の製造例1で得た70%のアクリル樹脂No.1溶液を80部(固形分)、80%の硬化剤No.1を20部(固形分)、トリエチルアミン1.9部(0.4中和当量分)、脱イオン水を加えて分散し、さらに脱イオン水で固形分を調整して40%のエマルションNo.1を得た。エマルションNo.1の平均粒子径(注5)は、80nmであった。
【0073】
製造例8〜17 エマルションNo.2〜No.11の製造
表1の内容とする以外は、製造例7と同様に操作してエマルションNo.2〜No.11を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
(注3)界面活性剤A:ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、式(1)においてn=14に相当
(注4)界面活性剤B:ポリオキシエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、式(1)においてn=15に相当
(注5)平均粒子径:粒子径測定装置、コールターN5 MD(コールター社製)によって測定した。
【0076】
製造例18 アニオン電着塗料No.1の製造
上記、固形分40%のエマルションNo.1を250部(固形分100部)、脱イオン水750部を加えて固形分10%のアニオン電着塗料No.1を得た。
【0077】
製造例19〜28 アニオン電着塗料No.2〜No.11の製造
表2の配合内容とする以外は、製造例18と同様にして、アニオン電着塗料No.2〜No.11を得た。
【0078】
【表2】
【0079】
[試験板の作成]
製造例29 試験板No.1の作成
アルミニウム#6000(150mm×70mm×0.5mm)を10%の硫酸に(25℃、5分間)浸漬することにより脱脂した後、8%の水酸化ナトリウム(50℃、4分間)に浸漬してエッチングを行い、水洗した後、15%の硫酸(常温、2分間)で中和した。
【0080】
30質量%のリン酸水溶液を20℃に設定し、該水溶液中で上記処理されたアルミニウム#6000を陽極として浸漬して1.0A/dmの定電流密度で600秒間通電して陽極酸化処理を行った。その後、湯洗(70℃、4分間)し、試験板No.1を作成した。断面電子顕微鏡写真の表面電子顕微鏡写真と観察にて、陽極酸化皮膜厚3μm、平均ポア径は60nmであった。
【0081】
製造例30〜40 試験板No.2〜No.12の作成
表3及び表4の内容とする以外は、製造例29と同様にして、試験板No.2〜No.12を得た。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
実施例1 複層被膜No.1
前記の「試験板No.1」に、アニオン電着塗料No.1を乾燥膜厚が3μmとなる塗装条件(電着塗料の固形分濃度10%、電着浴のpH8.5、浴温23℃、電圧100V)で通電時間を調整して電着塗装を行った。その後、水洗した後、3分間室温でセッティングを施し、熱風乾燥機にて150℃で20分間加熱乾燥して、複層被膜No.1を得た。
【0085】
実施例2〜17、比較例1〜14 複層被膜No.2〜No.31
表5〜表8に示す工程及び膜厚とする以外は、実施例1と同様にして、複層被膜No.2〜No.31を得た。下記の試験条件に従って得た、皮膜性能を表5〜表8に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
(注6)耐衝撃性:各塗板を、温度20℃±1、湿度75±2%の恒温恒湿室に24時間置いた後、JIS K 5600−5−3(1999)に規定されるデュポン衝撃試験器に規定の大きさの受台と撃心を取り付け、試験板の塗面を上向きにして、その間に挟み、次に500gの重さのおもりを撃心(1/2インチ)の上に落とし、衝撃による塗膜(おもて面)にワレ、ハガレが発生する落下高さ(cm)を測定し、
下記基準によって評価した。
【0091】
Aは、ワレ、ハガレが発生する落下高さが50cm以上
Bは、ワレ、ハガレが発生する落下高さが40cm以上、かつ50cm未満
Cは、ワレ、ハガレが発生する落下高さが30cm以上、かつ40cm未満
Dは、ワレ、ハガレが発生する落下高さが30cm未満
(注7)耐水性:複層塗膜を有する試験板を40℃の水に10日間浸漬した後、JIS K 5600−5−6(1999)付着性、クロスカット法に準じて、塗装板の塗膜面に素地に達するようにナイフを使用して約1mmの間隔で縦、横それぞれ平行に11本の切目を入れてゴバン目を形成し、その表面にビニール粘着テープを貼着し、テープを急激に剥離した後のゴバン目塗面を下記基準にて評価した。
【0092】
A:塗膜の剥離が全く認められない
B:ナイフ傷の角の塗膜の一部にわずかに剥離が認められる
C:100個のゴバン目のうち剥離したものが1〜20個である
D:100個のゴバン目のうち剥離したものが21個以上である。
【0093】
(注8)ポア孔内部への電着塗膜形成性:複層塗膜を有する試験板を切断して電子顕微鏡写真を撮影して、陽極酸化皮膜の孔内部に電着塗膜が観察される最大値(深さ)を測定した。
【0094】
Aは、陽極酸化皮膜のポア孔内部における電着塗膜の深さが、1.9μm以上
Bは、陽極酸化皮膜のポア孔内部における電着塗膜の深さが、1.5μm以上で、かつ1.9μm未満
Cは、陽極酸化皮膜のポア孔内部における電着塗膜の深さが、1.0μm以上で、かつ1.5μm未満
Dは、陽極酸化皮膜のポア孔内部における電着塗膜の深さが、0.5μm以上で、かつ1.0μm未満
Eは、陽極酸化皮膜のポア孔内部における電着塗膜の深さが、0.5μm未満である。
【0095】
(注9)60度鏡面光沢度:複層塗膜の光沢の程度を、JIS K5600−4−7(1999)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
耐衝撃性、耐水性に優れる塗装物品を提供できる。
図1
図2
図3
図4