【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の負荷投入方法は、
燃料及び燃焼用空気からなる混合気を燃焼室において圧縮して燃焼させることにより、クランク軸の回転を維持するエンジンと、
前記エンジンの排気路に設けられる排気タービンに前記燃焼室から排出される排気ガスを供給し、前記排気タービンに連結される状態で給気路に設けられる給気コンプレッサによって前記燃焼室に給気される混合気を過給する過給機と、
前記エンジンの回転数を計測する回転数計測手段と、
前記回転数計測手段の計測結果に基づいて、前記エンジンの回転数を目標回転数に維持する回転数維持手段とを備えている排気タービン式過給機関にて使用する負荷投入方法であって、その特徴構成は、
前記エンジンの回転数の維持制御を実行している状態において、
前記給気路にて前記給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を調整する給気圧力調整手段にて、前記給気コンプレッサに導かれる混合気
を前記給気コンプレッサに通流させながら、当該混合気の圧力を低下させ
て、前記過給機の仕事を増大させる給気圧力低下処理を行った後に、前記エンジンへ初期負荷を投入する点にある。
尚、本願において回転数とは回転速度を示す。
【0007】
上記特徴構成によれば、回転数維持手段にてエンジンの回転数を目標回転数に維持している状態において、エンジンに初期負荷を投入する前に、給気圧力調整手段にて給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を低下させる給気圧力低下処理を行って、一時的に給気コンプレッサの前(上流側)の圧力を降下して、事実上の負圧状態(コンプレッサが現在の回転数で吸引できる通常の混合気量に対して上流側の混合気量が不足する状態)にし、過給機の仕事を増大させ過給機の回転数を上昇させることができる。過給機の応答性は、回転数が高い状態のほうが高いため、この状態にて、エンジンへ初期負荷を投入することにより、エンジンの応答性を改善できる。
ここで、本発明において、一時的に給気コンプレッサの前の圧力を負圧にしたときに、過給機の仕事が増大して回転数が上昇する点について、説明を加える。
給気圧力調整手段を働かせて、一時的に給気コンプレッサの前の圧力を負圧にする場合、エンジンに導かれる混合気の流量が低下して、エンジンの回転数が低下するので、回転数維持手段が、エンジン回転数を維持すべく、例えば、スロットル弁の開度を増大させる。このとき給気圧力の低下により増大するポンプロスに相当する給排気仕事を補うために、エンジンに導かれる混合気(燃料と燃焼用空気の混合気)の流量が増加するが、このとき、エンジンは無負荷であるので、排気エネルギー(排ガスの流量)が増大する。結果、増大した排気エネルギーにて排気タービンの回転数が増加し、排気タービンに連結される給気コンプレッサの回転数も増加して、過給機の仕事が増大して回転数が上昇するのである。
【0008】
本発明の負荷投入方法の更なる特徴構成は、
前記エンジンへの初期負荷を投入した後で、初期負荷投入完了を判定した後に、前記給気圧力低下処理を解除する点にある。
【0009】
給気圧力低下処理を実行して、給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を低下させている状態では、給気路にて圧力損失(ポンピングロス)が発生している状態なので、運転効率の観点からは、この状態を継続するのは好ましくない。
そこで、上記特徴構成によれば、エンジンに初期負荷を投入した後で、初期負荷投入完了を判定した後に、給気圧力低下処理を解除して、給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を通常圧力に戻して、エンジンの熱効率の向上を図っている。
ここで、初期負荷投入完了の判定は、例えば、初期負荷が投入され始めた時点から、30%程度の負荷投入が完了するまでの時間である初期負荷投入時間が経過することにより判定する。
【0010】
本発明の負荷投入方法の更なる特徴構成は、
前記回転数維持手段が、前記給気コンプレッサの下流側で前記エンジンの上流側に設けられたスロットル弁の開度の調整、燃料供給量の調整、及び前記排気路で前記排気タービンをバイパスするバイパス路に設けられるウエストゲート弁の開度の調整の少なくとも何れか1つ以上の調整により、前記エンジンの回転数を目標回転数に維持する手段である点にある。
【0011】
即ち、回転数維持手段が、スロットル弁の開度の調整、燃料供給量の調整、およびウエストゲート弁の開度の調整の少なくとも何れか1つ以上の調整により、エンジンの回転数を目標回転数に維持する状態で、給気圧力低下処理を実行することで、過給機の回転数を良好に上昇させて、本願の目的を達成できる。
【0012】
本発明の負荷投入方法の更なる特徴構成は、
前記給気圧力調整手段が、前記給気コンプレッサの上流側の給気路に設けられた給気圧力調整弁であると共に、
前記給気圧力低下処理において、前記給気圧力調整弁の開度を縮小させて、前記給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を低下させ、
前記エンジンへの初期負荷の投入に伴って、前記回転数維持手段が前記エンジンの回転数の維持制御を実行することにより前記給気コンプレッサの下流側で前記エンジンの上流側に設けられたスロットル弁の開度が拡大された際に、前記給気コンプレッサの出口側の圧力が一時的に前記給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力よりも低くなるように、前記給気圧力低下処理において縮小させる前記給気圧力調整弁の開度を設定する点にある。
【0013】
即ち、エンジンへの初期負荷の投入に伴って、回転数維持手段は、エンジンの出力を上昇させてエンジンの回転数を維持する維持制御を実行するにあたり、給気コンプレッサの下流側に設けられたスロットル弁の開度を急激に拡大させてエンジンに導かれる燃料及び混合気の流量を急激に増加させたり、燃料供給量を急激に増加させたりする。また、後者のように、燃料供給量を急激に増加させる場合には、燃焼室に吸気される混合気の空燃比を所望の空燃比に維持するために、空気供給量を増加させるべくスロットル弁の開度が急激に拡大される。
そして、このようにエンジンへの初期負荷投入に伴ってスロットル弁の開度が急激に拡大された際に、給気コンプレッサの出口側の圧力が一時的に低下することになる。そして、給気コンプレッサの上流側に設けられた給気圧力調整弁の開度が小さいほど、給気コンプレッサの出口側の圧力の低下幅は大きくなる。そこで、給気圧力低下処理が実行されて、負荷投入に伴ってスロットル弁の開度が拡大された際に、給気コンプレッサの出口側の圧力が一時的に給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力よりも低くなる所謂減圧状態となるとこで、給気コンプレッサによる給気の圧縮仕事量が負になるので、給気コンプレッサの回転数を増加させることができる。そして、この状態にて、エンジンへ初期負荷を投入することにより、エンジンの応答性を一層改善できる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の排気タービン式過給機関は、
燃料及び燃焼用空気からなる混合気を燃焼室において圧縮して燃焼させることにより、クランク軸の回転を維持するエンジンと、
前記エンジンの排気路に設けられる排気タービンに前記燃焼室から排出される排気ガスを供給し、前記排気タービンに連結される状態で給気路に設けられる給気コンプレッサによって前記燃焼室に給気される混合気を過給する過給機と、
前記エンジンの回転数を計測する回転数計測手段と、
前記回転数計測手段の計測結果に基づいて、前記エンジンの回転数を目標回転数に維持する回転数維持手段とを備えた排気タービン式過給機関であって、
前記給気路にて前記給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を制御する給気圧力調整手段とを備え、
前記回転数維持手段にて回転数維持制御を実行している状態において、前記給気圧力調整手段にて前記給気コンプレッサに導かれる混合気
を前記給気コンプレッサに通流させながら、当該混合気の圧力を低下させ
て、前記過給機の仕事を増大させる給気圧力低下処理を行った後に、前記エンジンへの初期負荷の投入を行う圧力制御手段を備えた点にある。
【0015】
上述の排気タービン式過給機関は、これまで説明した負荷投入方法にて奏する作用効果と略同等の作用効果を発揮する。
即ち、上記特徴構成を有する排気タービン式過給機関によれば、回転数維持手段にてエンジンの回転数を目標回転数に維持している状態において、エンジンに初期負荷を投入する前に、圧力制御手段にて、給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を低下させる給気圧力低下処理を実行して、一時的に給気コンプレッサの前の圧力を降下、事実上の負圧状態(コンプレッサが現在の回転数で吸引できる通常の混合気量に対して上流側の混合気量が不足する状態)にし、無負荷状態における過給機の仕事を増大させ過給機の回転数を上昇させることができる。過給機の応答性は、回転数が高い状態のほうが高いため、この状態にて、エンジンへ初期負荷を投入することにより、エンジンの応答性を改善できる。
結果、給気圧力調整手段を設けるという比較的簡易な構成により、初期負荷投入時の応答性の高い排気タービン式過給機関を提供することができる。
【0016】
本発明の排気タービン式過給機関の更なる特徴構成は、
前記エンジンは、非常用発電機を回転駆動するものである点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、初期負荷投入時の応答性が高いエンジンが、非常用発電機を回転駆動するように構成されているので、商用電力の供給が停止する等の非常時でも、確実に非常用発電機を回転駆動することができる。
【0018】
本発明の排気タービン式過給機関の更なる特徴構成は、
前記給気圧力調整手段が、前記給気コンプレッサの上流側の前記給気路に設けられた給気圧力調整弁であり、
前記圧力制御手段が、前記給気圧力低下処理において、前記給気圧力調整弁の開度を縮小させて、前記給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力を低下させる点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、給気圧力調整手段を、給気コンプレッサの上流側の給気路に設けられる給気圧力調整弁にて構成することで、圧力を低下させる場合には、給気圧力調整弁の開度を縮小(言い換えれば給気圧力調整弁を閉じ側に制御)し、圧力を上昇させる場合には、給気圧力調整弁の開度を増加(言い換えれば給気圧力調整弁を開き側に制御)するという、比較的簡易な制御により、給気コンプレッサの上流側の圧力を制御することができる。
【0020】
本発明の排気タービン式過給機関の更なる特徴構成は、
前記回転数維持手段が、前記給気コンプレッサの下流側で前記エンジンの上流側に設けられたスロットル弁の開度の制御により、前記エンジンの回転数の維持制御を実行する手段であり、
前記圧力制御手段が、前記エンジンへの初期負荷の投入に伴って、前記回転数維持手段が前記エンジンの回転数の維持制御を実行することにより前記スロットル弁の開度が拡大された際に、前記給気コンプレッサの出口側の圧力が一時的に前記給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力よりも低くなるように、前記給気圧力低下処理において縮小させる前記給気圧力調整弁の開度を設定する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、回転数維持手段をスロットル弁の開度の制御によりエンジンの回転数の維持制御を実行する手段として構成した場合において、エンジンへの初期負荷の投入に伴って、回転数維持手段がエンジンの回転数の維持制御を実行することにより給気コンプレッサの下流側に設けられたスロットル弁の開度が急激に拡大された際に、給気コンプレッサの出口側の圧力が一時的に低下することになる。そして、給気コンプレッサの上流側に設けられた給気圧力調整弁の開度が小さいほど、給気コンプレッサの出口側の圧力の低下幅は大きくなる。そこで、圧力制御手段により、給気圧力低下処理を実行して、負荷投入に伴ってスロットル弁の開度を拡大した際に、給気コンプレッサの出口側の圧力が一時的に給気コンプレッサに導かれる混合気の圧力よりも低くなる所謂減圧状態となるとこで、給気コンプレッサによる給気の圧縮仕事量が負になるので、給気コンプレッサの回転数を増加させることができる。そして、この状態にて、エンジンへ初期負荷を投入することにより、エンジンの応答性を一層改善できる。