(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016619
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】カーボディウエイトの製造方法及びカーボディウエイト
(51)【国際特許分類】
B66C 23/74 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
B66C23/74 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-280535(P2012-280535)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-125281(P2014-125281A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】村手 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高好
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−063082(JP,A)
【文献】
特開2000−302376(JP,A)
【文献】
特開2003−293398(JP,A)
【文献】
特開平08−143288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/74
E02F 9/18
B66F 9/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラクレーンのカーボディに装着されるカーボディウエイトの製造方法において、サイズが異なる複数の鉄製板状体を、最下位に配置したサイズが最も大きな鉄製板状体の上面に、サイズが大きな鉄製板状体から順次小さくなる順序で他の複数の鉄製板状体を順次積層するとともに、上下に隣接する鉄製板状体同士をそれぞれ溶接接合して複数の鉄製板状体を一体化したウエイト本体を形成するウエイト本体形成工程と、ウエイト本体の一側上部に、一側方に突出するカーボディ連結用の第1ブラケットを溶接接合する第1ブラケット溶接工程と、ウエイト本体の上下を反転させてサイズが最も大きな鉄製板状体を最上位に配置するウエイト本体反転工程と、反転して上位となったウエイト本体の一側上部に、一側方に突出するカーボディ連結用の第2ブラケットを溶接接合する第2ブラケット溶接工程と、反転して上位となったウエイト本体の上面に、カーボディウエイト吊り上げ用の吊り上げ部材を溶接接合する吊り上げ部材溶接工程と、サイズが最も大きな鉄製板状体の側縁にウエイト本体の側面を覆う化粧板をそれぞれ溶接接合する化粧板溶接工程とを順番に行うことを特徴とするカーボディウエイトの製造方法。
【請求項2】
クローラクレーンのカーボディに取り付けられるカーボディウエイトにおいて、サイズが異なる複数の鉄製板状体が、下位から順にサイズが大きくなる状態で積層され、積層状態で隣接する鉄製板状体同士が溶接されたウエイト本体と、該ウエイト本体の一側下部に溶接接合されて一側方に突出するカーボディ連結用の第1ブラケットと、ウエイト本体の一側上部に溶接接合されて一側方に突出するカーボディ連結用の第2ブラケットと、ウエイト本体の上面に溶接接合されたカーボディウエイト吊り上げ用の吊り上げ部材と、サイズが最も大きな鉄製板状体の側縁に溶接接合されて前記ウエイト本体の側面を覆う化粧板とを備えていることを特徴とするカーボディウエイト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボディウエイトの製造方法及びカーボディウエイトに関し、詳しくは、クローラクレーンの下部走行体に着脱可能に装着されるカーボディウエイトの製造方法及びカーボディウエイトの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーンは、クローラを備えた下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設け、該上部旋回体にブームを起伏可能に支持したものであって、下部走行体のカーボディの前後両端面に、バランス性、サドンリリース能力の向上を図るためのカーボディウエイトを装着することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。また、クローラクレーンの上部旋回体に搭載するカウンタウエイトとして、スラブ材などの複数の鉄板を上下に重ねて溶接接合し、周囲を化粧板で覆ったものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−111618号公報
【特許文献2】特許第3273246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上部旋回体に搭載するカウンタウエイトの場合は、特許文献2に記載された構造で容易に製造することができるが、カーボディウエイトは、カーボディの前面や後面にブラケットを介して装着されるため、カーボディウエイトの側面の上下に取付用ブラケットを突設する必要があり、取付用ブラケットには、カーボディウエイトの自重による引張応力と取付用ブラケットの長さなどによる曲げモーメントとが加わるため、カーボディウエイトの本体部と取付用ブラケットとを強固に接合する必要がある。また、特許文献2に記載されたカウンタウエイトと同じ構造でカーボディウエイトを製造すると、取付用ブラケットを溶接する際の作業性に問題があった。
【0005】
そこで本発明は、側面の上下に取付用ブラケットを突設させた形状のカーボディウエイトを容易に製造することができるカーボディウエイトの製造方法及びカーボディウエイトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のカーボディウエイトの製造方法は、クローラクレーンのカーボディに装着されるカーボディウエイトの製造方法において、サイズが異なる複数の鉄製板状体を、最下位に配置したサイズが最も大きな鉄製板状体の上面に、サイズが大きな鉄製板状体から順次小さくなる順序で他の複数の鉄製板状体を順次積層するとともに、上下に隣接する鉄製板状体同士をそれぞれ溶接接合して複数の鉄製板状体を一体化したウエイト本体を形成するウエイト本体形成工程と、ウエイト本体の一側上部に、一側方に突出するカーボディ連結用の第1ブラケットを溶接接合する第1ブラケット溶接工程と、ウエイト本体の上下を反転させてサイズが最も大きな鉄製板状体を最上位に配置するウエイト本体反転工程と、反転して上位となったウエイト本体の一側上部に、一側方に突出するカーボディ連結用の第2ブラケットを溶接接合する第2ブラケット溶接工程と、反転して上位となったウエイト本体の上面に、カーボディウエイト吊り上げ用の吊り上げ部材を溶接接合する吊り上げ部材溶接工程と、サイズが最も大きな鉄製板状体の側縁にウエイト本体の側面を覆う化粧板をそれぞれ溶接接合する化粧板溶接工程とを順番に行うことを特徴としている。
【0007】
また、本発明のカーボディウエイトは、クローラクレーンのカーボディに取り付けられるカーボディウエイトにおいて、サイズが異なる複数の鉄製板状体が、下位から順にサイズが大きくなる状態で積層され、積層状態で隣接する鉄製板状体同士が溶接されたウエイト本体と、該ウエイト本体の一側下部に溶接接合されて一側方に突出するカーボディ連結用の第1ブラケットと、ウエイト本体の一側上部に溶接接合されて一側方に突出するカーボディ連結用の第2ブラケットと、ウエイト本体の上面に溶接接合されたカーボディウエイト吊り上げ用の吊り上げ部材と、サイズが最も大きな鉄製板状体の側縁に溶接接合されて前記ウエイト本体の側面を覆う化粧板とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、完成後に上部となるサイズが最も大きな鉄製板状体を最下位にしてサイズの大きな鉄製板状体から小さな鉄製板状体の順に積層し、この状態で各鉄製板状体を溶接接合するので、ウエイト本体の溶接作業を容易に行うことができる。さらに、この状態で完成後に下部に位置する第1ブラケットをウエイト本体に溶接接合するので、第1ブラケットの溶接作業も容易に行うことができる。そして、第1ブラケットを接合した後、ウエイト本体を上下に反転させてから完成後に上部となる第2ブラケットをウエイト本体に溶接接合するので、第2ブラケットの溶接作業も容易に行うことができる。また、反転後に最上位となったサイズが最も大きな鉄製板状体の側縁に化粧板を溶接接合するので、化粧板の溶接作業も容易に行うことができる。これらにより、各溶接接合を確実に行うことができ、各鉄製板状体や各ブラケットの接合強度を十分に確保することができる。
【0009】
さらに、ウエイト本体の側面を化粧板で覆うことから、カーボディウエイトの外観も良好であり、各鉄製板状体を切り出す際の寸法精度や切り口の粗さを精密に制御する必要がないので、切断速度を上げることができ、切断面の仕上げも不要であるから、製造工程の簡略化や加工時間の短縮を図れる。また、上面にカーボディウエイト吊り上げ用の吊り上げ部材を溶接接合しているので、カーボディウエイトの搬送やカーボディへの着脱などを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態例を示すカーボディに装着した状態のカーボディウエイトの一部断面側面図である。
【
図2】同じくカーボディに装着した状態のカーボディウエイトの平面図である。
【
図4】カーボディウエイトの製造工程におけるウエイト本体反転工程前までの工程を示す説明図である。
【
図5】カーボディウエイトの製造工程におけるウエイト本体反転工程後からの工程を示す説明図である。
【
図6】クローラクレーンの下部走行体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、
図8に示すように、クローラクレーン11は、下部走行体12と、該下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13とを有しており、上部旋回体13は、中央部に、エンジンや油圧ポンプ等を備えた機器室(エンジンルーム)13aと主巻ロープ14aや補巻ロープ14b、起伏用ロープ14cをそれぞれ巻回した複数のウインチ(図示せず)とが設けられ、前部には、前後方向に傾動可能なブーム15と運転室13bとが設けられ、後部には、基台13c上に複数のカウンタウエイト16が載置されている。
【0012】
図6及び
図7に示すように、下部走行体12は、中央上部に旋回ベアリング17aを備えたカーボディ17と、該カーボディ17の両側に一対のアクスル18a及びクローラ拡縮シリンダ18bを介して装着されたクローラ18とを備えている。カーボディ17の前面両端部及び後面両端部には、ジャッキ用ブラケット17bがそれぞれ設けられており、このジャッキ用ブラケット17bには、先端にジャッキ19を装着したジャッキアーム19aの基部がそれぞれ回動可能に取り付けられるとともに、各ジャッキ用ブラケット17bのカーボディ内側上部には、カーボディウエイト20を装着するための上部連結腕17cがそれぞれ設けられている。また、カーボディ17の前面下部中央及び後面下部中央には、カーボディウエイト20を装着するための下部連結腕17dがそれぞれ設けられている。
【0013】
図1乃至
図3に示すように、カーボディウエイト20は、サイズが異なる6枚の偏平直方体状の鉄製板状体21a,21b,21c,21d,21e,21fを積層して上下に隣接する各鉄製板状体同士を溶接接合して形成したウエイト本体21と、該ウエイト本体21の一側下部中央に設けられた第1ブラケット22と、ウエイト本体21の一側上部両端部の2箇所に設けられた第2ブラケット23と、ウエイト本体21の上面に設けられた2個の吊上げ部材24と、ウエイト本体21の側面を覆う化粧板25とで形成されている。
【0014】
鉄製板状体21a〜21fは、厚さが同じで、縦横寸法が順番に小さくなる形状を有しており、各鉄製板状体21a〜21fをサイズ順に積層したときに、四辺部分に溶接を容易に行える程度の幅の段差が生じるように、例えば縦横の各寸法が20mmずつ小さくなるように設定されている。また、鉄製板状体21a〜21fの厚さは任意であるが、薄いと枚数が多くなり、溶接工数も多くなるので、通常は、一般的な製品として市販されている100mm程度の厚さの鉄製バルク材を使用することが好ましい。鉄製板状体の縦横の最大寸法は、カーボディウエイト20を装着する部分のスペースに応じて設定すればよい。また、化粧板25は、一般的に厚板と称して販売されている厚さが10mm程度の鉄板(鋼板)を用いることができる。
【0015】
カーボディウエイト20の製作は、まず、
図4に示すように、サイズが最も大きな鉄製板状体21aを最下位に配置し、この鉄製板状体21aの上に、次にサイズが大きな鉄製板状体21bを、各四辺部の周囲に溶接用段差26aを設けるようにして積層する。さらに、鉄製板状体21bの上に次にサイズが大きな鉄製板状体21cを積層し、全ての鉄製板状体21a〜21fを、サイズが順次小さくなる順序で積層する。そして、各鉄製板状体を積層したとき、あるいは、全ての鉄製板状体を積層した後、上下に隣接する鉄製板状体の周囲に形成された溶接用段差26aを利用して溶接接合し、6枚の鉄製板状体21a〜21fを一体化したウエイト本体21を形成するウエイト本体形成工程を行う。続いて、ウエイト本体21の一側上部中央に、一側方に突出するカーボディ連結用の第1ブラケット22を溶接接合する第1ブラケット溶接工程を行う。
【0016】
次に、第1ブラケット溶接工程を終えたウエイト本体21を、第1ブラケット22を利用してクレーンで吊り上げ、
図5に示すように、上下を反転させるウエイト本体反転工程を行った後、反転して上位となったウエイト本体21の一側上部に、一側方に突出する2個のカーボディ連結用の第2ブラケット23をそれぞれ所定位置に溶接接合する第2ブラケット溶接工程と、反転して上位となったウエイト本体21の上面の所定位置に、2個のカーボディウエイト吊り上げ用の吊り上げ部材24をそれぞれ溶接接合する吊り上げ部材溶接工程とを行う。
【0017】
最後に、反転して最上位となったサイズが最も大きな鉄製板状体21aの側縁に、ウエイト本体21の側面を覆う化粧板25をそれぞれ溶接接合する化粧板溶接工程を行う。このとき、第1ブラケット22及び第2ブラケット23を設けた側面部分に取り付けられる化粧板25には、第1ブラケット22に対応した切欠部25a及び第2ブラケット23に対応した切欠部25bをあらかじめ形成しておく。また、鉄製板状体21aの側縁に化粧板25を溶接する際には、鉄製板状体21aの上面より化粧板25の上端を下方に配置し、鉄製板状体21aの側縁と化粧板25の上端との間に溶接用段差26bを形成することにより、溶接作業を容易かつ確実に行うことができる。また、隣接する化粧板25の側縁同士も溶接して接合することにより、
図1乃至
図3に示した構造のカーボディウエイト20が完成する。
【0018】
このように、サイズが異なる鉄製板状体21a,21b,21c,21d,21e,21fを、下から大きいサイズ順に積層し、上下に隣接する鉄製板状体同士の間に溶接用段差26aを設けることにより、各鉄製板状体同士の溶接接合を下向きで行うことができ、完成時に下方に位置する第1ブラケット22の溶接も下向きで行うことができる。そして、ウエイト本体21の上下を反転させてから第2ブラケット23、吊り上げ部材24及び化粧板25を溶接接合することにより、これらの溶接作業も下向きで行うことができる。したがって、各部材の溶接作業を楽な姿勢で行うことができるので、各部材の溶接接合を容易かつ確実に行うことができる。
【0019】
また、カーボディウエイト20の使用時に目に付かない底部には化粧板を設けず、化粧板25の上端をサイズが最も大きな鉄製板状体21aの側縁に溶接接合しているだけなので、化粧板25の板面全体に溶接痕が生じることがなく、外観を良好なものとすることができる。さらに、鉄製板状体の切断面が外部に露出することがないので、切断面が荒れていても良いことから、鉄製板状体の切り取り加工も容易かつ短時間で行うことができる。また、化粧板25の下端は、ウエイト本体21の下面より上に位置するようにしているので、搬送時などに荷台や地面などにカーボディウエイト20を置いたときに化粧板25が損傷することもなくなる。
【0020】
このようにして形成したカーボディウエイト20のカーボディ17への装着は、吊り上げ部材24を利用してカーボディウエイト20を吊り上げ、カーボディ17の上部連結腕17cとカーボディウエイト20の第2ブラケット23とを位置合わせするとともに、カーボディ17の下部連結腕17dとカーボディウエイト20の第1ブラケット22とを位置合わせした状態で、これらの先端部にそれぞれ形成した連結用通孔27に連結ピン28をそれぞれ挿通し、連結ピン28に抜け止めクリップ28aを取り付けることにより行うことができる。また、カーボディ17からのカーボディウエイト20の取り外しも、同様にして容易に行うことができる。
【0021】
なお、本発明は前記形態例に限るものではなく、ウエイト本体を構成する鉄製板状体の枚数やサイズは任意であり、鉄製板状体の形状も任意である。さらに、ウエイト本体に取り付ける各ブラケット及びカーボディに設ける連結腕の取付位置や設置数は、カーボディウエイトの重量や大きさ、カーボディへの取付状態に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0022】
11…クローラクレーン、12…下部走行体、13…上部旋回体、13a…機器室、13b…運転室、13c…基台、14a…主巻ロープ、14b…補巻ロープ、14c…起伏用ロープ、15…ブーム、16…カウンタウエイト、17…カーボディ、17a…旋回ベアリング、17b…ジャッキ用ブラケット、17c…上部連結腕、17d…下部連結腕、18…クローラ、18a…アクスル、18b…クローラ拡縮シリンダ、19…ジャッキ、19a…ジャッキアーム、20…カーボディウエイト、21…ウエイト本体、21a,21b,21c,21d,21e,21f…鉄製板状体、22…第1ブラケット、23…第2ブラケット、24…吊上げ部材、25…化粧板、25a,25b…切欠部、26a,26b…溶接用段差、27…連結用通孔、28…連結ピン、28a…抜け止めクリップ