特許第6016625号(P6016625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016625
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】高純度シリカゾルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20161013BHJP
   C01B 33/151 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C01B33/141
   C01B33/151
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-284078(P2012-284078)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-151409(P2013-151409A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-287575(P2011-287575)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】中山 和洋
(72)【発明者】
【氏名】中島 昭
(72)【発明者】
【氏名】小松 通郎
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−036605(JP,A)
【文献】 特開2003−089786(JP,A)
【文献】 特開2001−302254(JP,A)
【文献】 特開2006−104354(JP,A)
【文献】 特開2005−298276(JP,A)
【文献】 特開2006−045022(JP,A)
【文献】 特開2005−060219(JP,A)
【文献】 特開2005−060217(JP,A)
【文献】 特開2001−294420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程[1]〜[4]を備える高純度シリカゾルの製造方法。
[1]珪酸アルカリ水溶液(a)を限外濾過して、精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得る工程。
[2]前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)にイオン交換法を適用し、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)に含まれる陽イオン成分の少なくとも一部を除去して、精製珪酸液を得る工程。
[3]前記精製珪酸液にキレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法(但し、空間速度0.5〜10h-1の範囲)を適用して、高純度珪酸液を得る工程。
[4]前記高純度珪酸液の一部をシード液、別の一部をフィード液とし、前記シード液をアルカリ性に調整した後、これを前記フィード液と混合して、シリカdry量でのCu濃度が40ppb以下およびNi濃度が20ppb以下の高純度シリカゾルを得る工程。
【請求項2】
前記珪酸アルカリ水溶液(a)、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)および前記精製珪酸液からなる群から選ばれる少なくとも1つに、酸化剤を添加する操作をさらに備える、請求項1に記載の高純度シリカゾルの製造方法。
【請求項3】
前記酸化剤が過酸化水素水である、請求項2に記載の高純度シリカゾルの製造方法。
【請求項4】
前記工程[3]が、前記精製珪酸液のpHを2以下に調整した後、キレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用して、前記高純度珪酸液を得る工程である、請求項1〜3のいずれかに記載の高純度シリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度シリカゾルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実質的に金属不純物(Fe、Cr、Ni、Cu等)を含まないシリカゾルが提案されている。このような高純度シリカゾルは、例えば半導体シリコンウェハ等の電子材料の研磨剤として好ましく利用することができる。シリカゾル中に上記のような金属不純物を含むと、研磨加工時に金属不純物がウェハ内部に拡散し、ウェハ品質が劣化する。そして、このようなウェハを用いて形成された半導体デバイスの性能は著しく低下する。
【0003】
従来、提案された高純度シリカゾルとしては、例えば特許文献1〜3に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、珪酸アルカリ水溶液とカチオン交換樹脂とを接触させ、活性珪酸水溶液を調製し、前記活性珪酸水溶液とキレート化剤とを接触させた後、コロイド粒子を成長させ、続いて限外濾過によりシリカを濃縮すると同時にキレート化された金属不純物を除去することを特徴とするコロイダルシリカの製造方法が記載されている。そして、このような製造方法によって、シリカ当たりのCuの含有率が100ppb以下、またはシリカ当たりのNiの含有率が1000ppb以下であるコロイダルシリカが得られると記載されている。
【0004】
特許文献2には、アルカリ金属ケイ酸塩や活性ケイ酸の水溶液に強酸又は強酸の塩を添加した溶液を調製する工程と、次に当該溶液をイオン交換樹脂で処理する工程と、次に当該イオン交換によって得られた溶液に同様な工程から得られた当該溶液を添加する事によってシリカゾルを調製する工程と、次に得られたシリカゾルをイオン交換樹脂で処理する工程と、更に得られたシリカゾルにアンモニアを添加する工程とからなる製造方法が記載されている。そして、このような製造方法によれば、不純物として多価金属酸化物を含むアルカリ金属ケイ酸塩から、10〜30mμの範囲内の平均粒子径を持ったコロイダルシリカであり、かつSiO2濃度が30〜50重量%であり、かつシリカに対するシリカ以外の他の多価金属酸化物の含有量が300ppm以下である安定な水性シリカゾルを効率的に製造することができると記載されている。
【0005】
特許文献3には、水ガラスを陽イオン交換処理してシリカ水溶液を得る第1工程と、得られたシリカ水溶液に酸および過酸化水素を添加して再度陽イオン交換処理を行う第2工程と、前工程で得られたシリカ水溶液をアンモニア性アルカリと混合し、これをコロイダルシリカ化する第3工程と、を含むことを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法が記載されている。そして、このような製造方法によって、シリコンウェハーの研磨材、セラミックファイバーの結合材、ブラウン管製造における蛍光体の接着バインダー、電池中の電解液のゲル化剤など、様々な用途に好適に使用可能な十分に高純度のコロイダルシリカおよび高純度合成石英粉を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−294417号公報
【特許文献2】特開平6−16414号公報
【特許文献3】特開2002−173314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金属不純物の含有率がより低い高純度シリカゾルの開発が望まれる。
また、従来、水ガラスから高純度シリカゾルを得ることは困難であったが、これを可能にできれば好ましい。
【0008】
本発明は、原料として水ガラスを用いることが可能で、従来よりも、金属不純物としてのCuおよびNiの含有率が低い高純度シリカゾルを得ることができる製造方法を提供することを目的とする。また、金属不純物としてのCuおよびNiの含有率が低い高純度シリカゾルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記の課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)〜(8)である。
(1)次の工程[1]〜[4]を備える高純度シリカゾルの製造方法。
[1]珪酸アルカリ水溶液(a)を限外濾過して、精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得る工程。
[2]前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)にイオン交換法を適用し、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)に含まれる陽イオン成分の少なくとも一部を除去して、精製珪酸液を得る工程。
[3]前記精製珪酸液にキレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用して、高純度珪酸液を得る工程。
[4]前記高純度珪酸液の一部をシード液、別の一部をフィード液とし、前記シード液をアルカリ性に調整した後、これを前記フィード液と混合して、シリカdry量でのCu濃度およびNi濃度がともに50ppb以下の高純度シリカゾルを得る工程。
(2)前記珪酸アルカリ水溶液(a)、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)および前記精製珪酸液からなる群から選ばれる少なくとも1つに、酸化剤を添加する操作をさらに備える、上記(1)に記載の高純度シリカゾルの製造方法。
(3)前記酸化剤が過酸化水素水である、上記(2)に記載の高純度シリカゾルの製造方法。
(4)前記工程[3]が、前記精製珪酸液のpHを2以下に調整した後、キレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用して、前記高純度珪酸液を得る工程である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高純度シリカゾルの製造方法。
(5)平均粒子径が2〜300nmであり、シリカdry量でのCu濃度およびNi濃度がともに50ppb以下である、高純度シリカゾル。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法によって得られる、上記(5)に記載の高純度シリカゾル。
(7)上記(5)または(6)に記載の高純度シリカゾルを含む、研磨用組成物。
(8)研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤および緩衝剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、上記(7)に記載の研磨用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料として水ガラスを用いることが可能で、従来よりも金属不純物としてのCuおよびNiの含有率が低い高純度シリカゾルを得ることができる製造方法を提供することができる。また、金属不純物としてのCuおよびNiの含有率が低い高純度シリカゾルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、次の工程[1]〜[4]を備える高純度シリカゾルの製造方法である。
[1]珪酸アルカリ水溶液(a)を限外濾過して、精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得る工程。
[2]前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)にイオン交換法を適用し、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)に含まれる陽イオン成分の少なくとも一部を除去して、精製珪酸液を得る工程。
[3]前記精製珪酸液にキレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用して、高純度珪酸液を得る工程。
[4]前記高純度珪酸液の一部をシード液、別の一部をフィード液とし、前記シード液をアルカリ性に調整した後、これを前記フィード液と混合して、シリカdry量でのCu濃度およびNi濃度がともに50ppb以下の高純度シリカゾルを得る工程。
このような高純度シリカゾルの製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0012】
本発明の製造方法では、前記珪酸アルカリ水溶液(a)、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)および前記精製珪酸液からなる群から選ばれる少なくとも1つに、酸化剤を添加する操作をさらに備えることが好ましい。
また、本発明の製造方法では、前記酸化剤が過酸化水素水であることがより好ましい。
また、本発明の製造方法では、前記工程[3]が、前記精製珪酸液のpHを2以下に調整した後、キレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用して、前記高純度珪酸液を得る工程であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、平均粒子径が2〜300nmであり、シリカdry量でのCu濃度およびNi濃度がともに50ppb以下である、高純度シリカゾルである。
このような高純度シリカゾルを、以下では「本発明のシリカゾル」ともいう。
【0014】
本発明の製造方法によって、本発明のシリカゾルを得ることができる。
【0015】
初めに、本発明の製造方法について説明する。
【0016】
<工程[1]>
本発明の製造方法が備える工程[1]について説明する。
工程[1]では、初めに、珪酸アルカリを含有する珪酸アルカリ水溶液(a)を用意する。
【0017】
珪酸アルカリ水溶液(a)は、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等の珪酸アルカリが水に溶解したものである。ここでアルカリとはアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、CsおよびFr)を意味するものとする。
珪酸アルカリ水溶液(a)として、珪酸ナトリウムが水に溶解した、いわゆる水ガラスを用いることができる。
【0018】
珪酸アルカリ水溶液(a)に含まれるSiO2濃度は特に限定されないが、15〜30質量%であることが好ましく、20〜28質量%であることがより好ましく、22〜26質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
ここで、珪酸アルカリ水溶液(a)に含まれるSiO2濃度は、珪酸アルカリ水溶液(a)に塩酸および水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、フッ化カリウム溶液を加えて、生ずるアルカリ分を塩酸で滴定して求める。なお、具体的には次のような反応に基づいてSiO2濃度を測定する。
2SiO3+6KF+H2O→K2SiF6+4KOH
また、珪酸アルカリ水溶液(a)に含まれるアルカリ濃度は、例えば珪酸ナトリウム水溶液の場合は、珪酸ナトリウム水溶液に塩酸を加えて中和し、さらに過剰に加え、水酸化ナトリウム溶液で逆滴定してNa2Oを定量する。他のアルカリの場合も同様にして測定する。
【0020】
前記珪酸アルカリ水溶液(a)を得る方法は特に限定されない。例えば従来公知の方法で得ることができる。例えば固体の珪酸ナトリウム(珪酸ナトリウムカレット等)を水酸化ナトリウム水溶液中で溶解して得ることができる。例えば高温(例えば150℃以上)で、十分な時間(例えば30分以上)、水酸化ナトリウム水溶液中で珪酸ナトリウムカレットを溶解して珪酸ナトリウム水溶液を得ることができる。
【0021】
また、前記珪酸アルカリ水溶液(a)は、SiO2とアルカリ酸化物とのモル濃度比(SiO2/アルカリ酸化物)が1〜7であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2.5〜5であることがより好ましく、3.0〜3.5であることがさらに好ましい。モル濃度比が低過ぎる場合は、陽イオン交換工程で除去するアルカリ金属量が増えるため、経済的ではないためである。また高過ぎる場合は、珪酸アルカリ水溶液(a)の安定性が低いため、実用的ではないためである。
【0022】
また、次に説明するように珪酸アルカリ水溶液(a)を限外濾過する前に、酸化剤を添加することが好ましい。この場合、本発明の製造方法によって得られる高純度シリカゾルにおけるCu濃度およびNi濃度が、さらに低くなることを本発明者は見出した。
【0023】
また、酸化剤としては過酸化水素水、過酢酸、過酸化尿素、硝酸、ヨウ素酸(HIO3)、オゾンなどを用いることができるが、過酸化水素水を用いることが好ましい。
後述する前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)または前記精製珪酸液へ酸化剤を添加する場合も、同様の酸化剤を用いることができ、過酸化水素水を用いることが好ましい。
【0024】
ここで前記珪酸アルカリ水溶液(a)への酸化剤の添加量は、シリカdry量に対して0.001〜20質量%とすることが好ましく、0.01〜10質量%とすることがより好ましい。
【0025】
また、シリカdry量に対する含有率またはシリカdry量の含有率とは、シリカ含有物(ここでは珪酸アルカリ水溶液(a))におけるSiO2の質量に対する測定対象物(ここでは酸化剤)の重量の比(百分率)の値を意味するものとする。以下、本発明においてシリカdry量に対する含有率またはシリカdry量の含有率とは、このような意味で用いるものとする。
【0026】
工程[1]では、このような珪酸アルカリ水溶液(a)を限外濾過する。
限外濾過は従来公知の限外濾過膜を用いて行うことができる。限外濾過膜の分画分子量は100〜10000であることが好ましく、1000〜9000であることがより好ましく、3000〜6000であることがさらに好ましい。
このような限外濾過を行うことで、精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得ることができる。
【0027】
得られた精製珪酸アルカリ水溶液(b)に含まれるSiO2濃度は15〜30質量%であることが好ましく、20〜28質量%であることがより好ましく、20〜26質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
なお、精製珪酸アルカリ水溶液(b)に含まれるSiO2濃度は、前述の珪酸アルカリ水溶液(a)に含まれるSiO2濃度と同様にして求めるものとする。
【0029】
また、精製珪酸アルカリ水溶液(b)に酸化剤を添加することが好ましい。この場合、本発明の製造方法によって得られる高純度シリカゾルにおけるCu濃度およびNi濃度が、さらに低くなることを本発明者は見出した。
ここで前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)への酸化剤の添加量は、シリカdry量に対する含有率で0.001〜20質量%とすることが好ましく、0.01〜10質量%とすることがより好ましい。
【0030】
<工程[2]>
本発明の製造方法が備える工程[2]について説明する。
工程[2]では、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)にイオン交換法を適用し、前記精製珪酸アルカリ水溶液(b)に含まれる陽イオン成分の少なくとも一部を除去する。
【0031】
ここでイオン交換法は特に限定されず、例えば従来公知の方法を適用することができる。例えば、陽イオン交換樹脂を用いた方法が挙げられる。
【0032】
このような工程[2]によって、陽イオン成分の少なくとも一部を除去された(通常、陽イオン成分のほとんどが除去された)精製珪酸液を得ることができる。
【0033】
得られた精製珪酸液に含まれるSiO2濃度は1〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、精製珪酸液に含まれるSiO2濃度は、精製珪酸液を1000℃で1時間焼成した強熱残分(固形分)の全量がSiO2であるとして、この質量から算出して求めた値とする。
【0035】
<工程[3]>
本発明の製造方法が備える工程[3]について説明する。
工程[3]では、前記精製珪酸液にキレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用する。
本発明者は鋭意検討し、工程[1]における限外濾過と、工程[3]におけるキレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換とを行うことで、Cu濃度およびNi濃度が極めて低いシリカゾルを得ることができることを見出した。
【0036】
前記精製珪酸液をキレートイオン交換樹脂に、好ましくは0.5〜10h-1、より好ましくは1.5〜5.0h-1、さらに好ましくは2〜4h-1程度の空間速度で通液することが好ましい。
【0037】
また、工程[3]では、前記精製珪酸液に酸化剤を添加した後にキレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用することが好ましい。この場合、本発明の製造方法によって得られる高純度シリカゾルにおけるCu濃度およびNi濃度が、さらに低くなることを本発明者は見出した。
ここで前記精製珪酸液への酸化剤の添加量は、シリカdry量に対する含有率で0.001〜20質量%とすることが好ましく、0.01〜10質量%とすることがより好ましい。
【0038】
また、工程[3]では、前記精製珪酸液のpHを2以下(好ましくは1〜2)に調整した後にキレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用することが好ましい。この場合、本発明の製造方法によって得られる高純度シリカゾルにおけるCu濃度およびNi濃度が、さらに低くなることを本発明者は見出した。
【0039】
また、工程[3]では、前記精製珪酸液に酸化剤(好ましくは過酸化水素水)を添加した後、pHを2以下に調整し、その後、キレートイオン交換樹脂を用いたイオン交換法を適用することがより好ましい。この場合、本発明の製造方法によって得られる高純度シリカゾルにおけるCu濃度およびNi濃度が、さらに低くなることを本発明者は見出した。
【0040】
ここで前記精製珪酸液への酸化剤の添加量は、シリカdry量に対する含有率で0.001〜20質量%とすることが好ましく、0.01〜10質量%とすることがより好ましい。
【0041】
また、前記精製珪酸液のpHを2以下(好ましくは1〜2)に調整する手段は特に限定されず、従来公知の酸(塩酸等)を添加して調整することができる。
【0042】
このような工程[3]によって、高純度珪酸液を得ることができる。
【0043】
<工程[4]>
本発明の製造方法が備える工程[4]について説明する。
工程[4]では、前記高純度珪酸液の一部をシード液、別の一部をフィード液とし、前記シード液をアルカリ性に調整した後、これを前記フィード液と混合する。
前記高純度珪酸液の一部をシード液とした後、このシード液にアルカリを添加して溶液をアルカリ性に調整することができる。具体的にはpHを10〜13(好ましくは11〜12)に調整した後、これを好ましくは20〜98℃(より好ましくは50〜95℃、さらに好ましくは80〜90℃)に保持しながら前記フィード液を添加することで、フィード液と混合することができる。
【0044】
ここでフィード液は、好ましくは1〜30℃、より好ましくは1〜20℃として、シード液に添加する。
【0045】
好ましくは上記のようなpHおよび温度に調整したシード液へ、フィード液を徐々に添加していくと、シード液中でシリカ微粒子が成長し、シリカゾルが得られる。
シード液中へフィード液を添加した後、数時間程度、高温(80〜90℃程度)で保持すると、シリカ微粒子が成長し易いので好ましい。
【0046】
このような工程[4]によって、シリカdry量に対するCu濃度(質量濃度)およびNi濃度(質量濃度)がともに50ppb以下の高純度シリカゾルを得ることができる。
ここでシリカdry量でのCu濃度およびNi濃度は、後述する本発明のシリカゾルの場合と同様に低いことが好ましい。また、後述する本発明のシリカゾルと同様の平均粒子径を有することが好ましい。
【0047】
高純度シリカゾルにおけるSiO2濃度(質量%)は、高純度シリカゾルに硫酸を加え、蒸発乾固させた後、強熱して質量を測定する。そして、さらに硫酸とフッ酸を加えた後、蒸発乾固して質量を測定した際の質量の減少分がシリカ(SiO2)であるとして求めるものとする。
また、高純度シリカゾルにおけるCu濃度およびNi濃度は、シリカゾルに硝酸とフッ酸を加えて加熱した後、蒸発乾固し、さらに硝酸と水を加えて加温溶解し、水を加えて一定量に希釈して、グラファイト原子吸光度計を用いて定量して求めた値とする。
このようにしてSiO2濃度、Cu濃度およびNi濃度を求めた後、このSiO2濃度に対するCu濃度またはNi濃度の比として、シリカdry量のCu濃度およびNi濃度を求める。
【0048】
次に、本発明のシリカゾルについて説明する。
本発明のシリカゾルが含むシリカ微粒子の平均粒子径は2〜300nmであり、5〜100nmであることが好ましく、10〜80nmであることがより好ましい。
【0049】
ここで、シリカ微粒子の平均粒子径はシアーズ法によって測定して得た値を意味するものとする。
シアーズ法とは次に説明する1)〜6)の手順で行われる方法である。
1)SiO2として1.5gに相当する試料をビーカーに採取してから、25℃の恒温反応槽に移し、純水を加えて液量を90mlにする。以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行う。
2)pH3.6になるように0.1モル/L塩酸水溶液を加える。
3)塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌する。
4)pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pH4.0に調整する。
5)pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、pH8.7〜9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作る。
6)次の式(3)からSiO21.5g当たりのpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(ml)を求め、下記式(4)から比表面積を算定する。また、平均粒子径D1(nm)は、式(5)から求める。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) ・・・(3)
SA1=29.0V−28 ・・・(4)
D1=6000/(ρ×SA1) ・・・(5)(ρ:試料の密度)
但し、上記式(3)における記号の意味は次の通りである。
A:SiO21.5g当たりpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)
f:0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価
C:試料のSiO2濃度(%)
W:試料採取量(g)
【0050】
本発明のシリカゾルは、シリカdry量でのCu濃度(質量濃度)が50ppb以下であり、40ppb以下であることが好ましく、30ppb以下であることがより好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、10ppb以下であることがさらに好ましい。
【0051】
また、本発明のシリカゾルは、シリカdry量でのNi濃度(質量濃度)が50ppb以下であり、40ppb以下であることが好ましく、30ppb以下であることがより好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、10ppb以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、本発明のシリカゾルは、炭素を実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、本発明のシリカゾルにおける炭素含有率は0.5質量%以下であることが好ましい。この炭素含有率は、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで本発明のシリカゾルに含まれる炭素の含有率は、シリカゾルを炭素・硫黄分析装置の高周波炉で燃焼し、燃焼生成物のCO、CO2を赤外吸収方式によって検出して求めるものとする。
【0053】
なお、本発明のシリカゾルが含むSiO2濃度、Cu濃度およびNi濃度は、前述の本発明の製造方法によって得られる高純度シリカゾルが含むSiO2濃度、Cu濃度およびNi濃度の場合と同様に測定した値を意味するものとする。
【0054】
本発明のシリカゾルは、上記のような平均粒子径のシリカ微粒子を含み、上記のようなCu濃度およびNi濃度である高純度シリカゾルである。
本発明のシリカゾルにおける分散媒は特に限定されないが、水系であることが好ましく、水であることがより好ましい。
また、本発明のシリカゾルにおける固形分濃度も特に限定されないが、5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明のシリカゾルにおけるpHも特に限定されないが、8〜12であることが好ましく、9〜11であることがより好ましい。
本発明のシリカゾルはHClやNaOH等の従来公知の安定剤を含むことができる。
【0055】
本発明のシリカゾルの製造方法は特に限定されないが、本発明の製造方法によって製造することができる。
【0056】
本発明のシリカゾルは、研磨剤として好ましく用いることができる。
本発明のシリカゾルを含む研磨用組成物は、NiおよびCu濃度が従来のものよりも低いので、半導体シリコンウェハ等の電子材料の研磨剤として好ましく利用することができる。
このような研磨用組成物は、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤および緩衝剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【実施例】
【0057】
<実施例1>
[珪酸ナトリウム水溶液の精製]
SiO2濃度が24.06質量%、Na2O濃度が7.97質量%で、Cu濃度(シリカdry量)が460ppb、Ni濃度(シリカdry量)が640ppbの珪酸ナトリウム水溶液(「水ガラスA」ともいう)を用意した。なお、SiO2濃度、Na2O濃度、Cu濃度、Ni濃度は前述の方法で測定した。
そして、この珪酸ナトリウム水溶液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ社製、SEP−1013、分画分子量3000)を用いて濾過して、濾水として精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得た。
精製珪酸アルカリ水溶液(b)のSiO2濃度を前述の方法で測定したところ、23.2質量%であった。
【0058】
[精製珪酸液の調整]
得られた精製珪酸アルカリ水溶液(b)3880gに、SiO2濃度が5.0質量%となるように純水を添加した。
そして、得られた5.0質量%の精製珪酸アルカリ水溶液(b)18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h-1で通液させ、pHが2.7の精製珪酸液18kgを得た。
得られた精製珪酸液におけるSiO2濃度を前述の方法で測定したところ、4.7質量%であった。
【0059】
[高純度珪酸液の調整]
次に、精製珪酸液18kgに、3.0質量%の過酸化水素水160g(シリカdry量に対する含有率で0.56質量%)を添加し、さらに1質量%の塩酸を添加してpHを2に調整した。そして、さらにキレートイオン交換樹脂(CR−11、三菱化学社製)に空間速度3.0h-1で通液させ、pHが2.0の高純度珪酸液を得た。
得られた高純度珪酸液におけるSiO2濃度は4.5質量%であった。
【0060】
[高純度シリカゾルの製造]
上記のようにして得られた高純度珪酸液の一部(414.4g)をシード液として取り出し、高純度珪酸液の別の一部(10.63kg)をフィード液として取り出した。
次に、純水725.8gに5質量%の水酸化カリウム水溶液191.1gを添加し、さらにシード液を添加し、加熱した。そして、83℃となった後、30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液を一定速度で11時間かけて添加した。そして、フィード液の全量をシード液へ添加した後、83℃に保持するように1時間加熱し、室温まで冷却してシリカゾルを得た。このシリカゾルを旭化成ケミカルズ社製限外膜(SIP−1013)を用いて12質量%まで濃縮し、ついでロータリーエバポレーターで30質量%シリカ濃度まで濃縮して、高純度シリカゾルを得た。
そして、得られた高純度シリカゾルの平均粒子径を前述のシアーズ法によって測定したところ17.8nmであった。
また、得られた高純度シリカゾルにおけるCu濃度(シリカdry量)およびNi濃度(シリカdry量)を前述の方法で測定した。その結果、Cu濃度(シリカdry量)が1ppb未満、Ni濃度(シリカdry量)が7ppbであった。
【0061】
<実施例2>
実施例1では、珪酸ナトリウム水溶液を限外濾過膜(SEP−1013、分画分子量3000)を用いて濾過して、濾水として精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得たが、実施例2では、同じ珪酸ナトリウム水溶液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ社製、SIP−1013、分画分子量6000)を用いて濾過して、濾水として精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得た。
また、実施例1では精製珪酸液に過酸化水素水を添加し、さらに塩酸を添加してpHを2に調整した後、キレートイオン交換樹脂に通液させたが、実施例2では、過酸化水素水を添加せず、塩酸を添加するpH調整操作も行わなかった。そして、精製珪酸液を同様のキレートイオン交換樹脂に同様の空間速度で通液させて、pHが2.7の高純度珪酸液を得た。得られた高純度珪酸液におけるSiO2濃度を前述の方法で測定したところ、4.5質量%であった。
そしてこれら以外については実施例1と同様に操作して、同様の測定を行った。
その結果、得られた高純度シリカゾルの平均粒子径は17.8nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が30ppb、Ni濃度(シリカdry量)が20ppbであった。
【0062】
<実施例3>
実施例1で用いた水ガラスAの代わりに、SiO2濃度が24.64質量%、Na2O濃度が8.08質量%で、Cu濃度(シリカdry量)が690ppb、Ni濃度(シリカdry量)が240ppbの珪酸ナトリウム水溶液(「水ガラスB」ともいう)を用いた。
そしてこれ以外については実施例1と同様に操作して、同様の測定を行った。
その結果、得られた高純度シリカゾルの平均粒子径は17.6nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が24ppb、Ni濃度(シリカdry量)が9ppbであった。
【0063】
<実施例4>
実施例1で用いた水ガラスAの代わりに、SiO2濃度が24.43質量%、Na2O濃度が7.40質量%で、Cu濃度(シリカdry量)が450ppb、Ni濃度(シリカdry量)が160ppbの珪酸ナトリウム水溶液(「水ガラスC」ともいう)を用いた。
そしてこれ以外については実施例1と同様に操作して、同様の測定を行った。
その結果、得られた高純度シリカゾルの平均粒子径は17.6nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が23ppb、Ni濃度(シリカdry量)が1ppb未満であった。
【0064】
<実施例5>
5kgの水ガラスBに、3.0質量%の過酸化水素水232.8g(シリカdry量で0.567質量%)を添加し、充分に攪拌した。
そして、得られた過酸化水素水添加後の珪酸ナトリウム水溶液を限外濾過膜(SIP−1013、分画分子量6000)を用いて濾過して、濾水として精製珪酸アルカリ水溶液(b)を得た。
次に、得られた精製珪酸アルカリ水溶液(b)に、SiO2濃度が5.0質量%となるように純水を添加した。そして、得られた5.0質量%の精製珪酸アルカリ水溶液(b)を、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h-1で通液させ、pHが2.7の精製珪酸液を得た。
次に、精製珪酸液をキレートイオン交換樹脂(CR−11、三菱化学社製)に空間速度3.0h-1で通液させ、pHが2.7の高純度珪酸液を得た。得られた高純度珪酸液におけるSiO2濃度を前述の方法で測定したところ、4.5質量%であった。
そして、以降は実施例1と同様にして、純水に5質量%の水酸化カリウム水溶液191.1gを添加し、さらにシード液を添加し、加熱し、83℃となった後、30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液を一定速度で11時間かけて添加した。そして、フィード液の全量をシード液へ添加した後、83℃に保持するように1時間加熱し、高純度シリカゾルを得た。
そして、実施例1と同様の測定を行った。
その結果、得られた高純度シリカゾルの平均粒子径は17.6nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が5ppb、Ni濃度(シリカdry量)が1ppb未満であった。
【0065】
<比較例1>
実施例1で用いた水ガラスAに、SiO2濃度が5.0質量%となるように純水を添加した。
そして、得られた5.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h-1で通液させ、珪酸液18kgを得た。
得られた珪酸液におけるSiO2濃度を前述の方法で測定したところ、4.7質量%であった。この珪酸液を純水で4.5質量%に希釈した。
次に、このようにして得られた珪酸液の一部(414.4g)をシード液として取り出し、珪酸液の別の一部(10.63kg)をフィード液として取り出した。
そして、以降は実施例1と同様にして、純水に5質量%の水酸化カリウム水溶液191.1gを添加し、さらにシード液を添加し、加熱した。30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液を一定速度で11時間かけて添加した。そして、フィード液の全量をシード液へ添加した後、83℃に保持するように1時間加熱し、シリカゾルを得た。
そして、実施例1と同様の測定を行った。
その結果、得られたシリカゾルの平均粒子径は17.6nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が235ppb、Ni濃度(シリカdry量)が610ppbであった。
【0066】
<比較例2>
実施例1で用いた水ガラスAに、SiO2濃度が5.0質量%となるように純水を添加した。
そして、得られた5.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液18kgを、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH、三菱化学社製)に空間速度3.0h-1で通液させ、珪酸液18kgを得た。得られた珪酸液におけるSiO2濃度を前述の方法で測定したところ、4.7質量%であった。
次に、珪酸液18kgをキレートイオン交換樹脂(CR−11、三菱化学社製)に空間速度3.0h-1で通液させ、pHが2.7のキレート樹脂イオン交換珪酸液を得た。SiO2濃度は4.5質量%であった。
次に、このようにして得られたキレート樹脂イオン交換珪酸液の一部(414.4g)をシード液として取り出し、キレート樹脂イオン交換珪酸液の別の一部(10.63kg)をフィード液として取り出した。
そして、以降は実施例1と同様にして、純水に5質量%の水酸化カリウム水溶液191.1gを添加し、さらにシード液を添加し、加熱した。30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液を一定速度で11時間かけて添加した。そして、フィード液の全量をシード液へ添加した後、83℃に保持するように1時間加熱し、シリカゾルを得た。
そして、実施例1と同様の測定を行った。
その結果、得られたシリカゾルの平均粒子径は17.7nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が80ppb、Ni濃度(シリカdry量)が150ppbであった。
【0067】
<比較例3>
水ガラスAの代わりに水ガラスBを用いたこと以外は、比較例2と同様に操作し、同様の測定を行った。
その結果、得られたシリカゾルの平均粒子径は17.8nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が105ppb、Ni濃度(シリカdry量)が187ppbであった。
【0068】
<比較例4>
水ガラスAの代わりに水ガラスCを用いたこと以外は、比較例2と同様に操作し、同様の測定を行った。
その結果、得られたシリカゾルの平均粒子径は17.6nmであり、Cu濃度(シリカdry量)が113ppb、Ni濃度(シリカdry量)が97ppbであった。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
実施例1〜5では、珪酸ナトリウム水溶液を限外濾過膜を用いて濾過する操作を行い、さらに精製珪酸液をキレートイオン交換樹脂に通液させる操作を行った。このような実施例1〜5において得られた高純度シリカゾルについては、シリカdry量でのCu濃度およびNi濃度がともに50ppb以下となった。詳しくはシリカdry量でのCu濃度が30ppb以下となり、かつ、シリカdry量でのNi濃度が20ppb以下となった。
【0073】
また、実施例1では、珪酸ナトリウム水溶液を限外濾過膜を用いて濾過する操作を行い、精製珪酸液に過酸化水素水を添加し、さらに塩酸を添加してpHを2に調整した後に、キレートイオン交換樹脂に通液させる操作を行った。このような実施例1において得られた高純度シリカゾルについては、シリカdry量でのCu濃度およびNi濃度がさらに低くなり、具体的にはともに10ppb以下となった。
【0074】
また、実施例5では、珪酸ナトリウム水溶液に過酸化水素水を添加し、その後、限外濾過膜を用いて濾過する操作を行い、キレートイオン交換樹脂に通液させる操作を行った。このような実施例5において得られた高純度シリカゾルについては、シリカdry量でのCu濃度およびNi濃度がさらに低くなり、具体的にはともに5ppb以下となった。
【0075】
これに対して比較例1〜4で得られたシリカゾルは、シリカdry量でのCu濃度が80〜235ppbとなり、シリカdry量でのNi濃度が97〜610ppbと高くなった。