特許第6016636号(P6016636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6016636改変したレセプター特異性を持つキメラ線維芽細胞増殖因子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016636
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】改変したレセプター特異性を持つキメラ線維芽細胞増殖因子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161013BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20161013BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20161013BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20161013BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20161013BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20161013BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20161013BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20161013BHJP
   A61P 19/10 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 21/02 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 17/14 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 3/02 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20161013BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C07K14/50ZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/02 H
   A61K37/02
   A61P3/04
   A61P3/10
   A61P3/00
   A61P9/10 101
   A61P3/06
   A61P9/10
   !A61P19/10
   !A61P19/02
   !A61P21/02
   !A61P17/14
   !A61P17/00
   !A61P3/02
   !A61P37/02
   !A61P35/00
   !A61P25/16
   !A61P25/28
【請求項の数】22
【全頁数】114
(21)【出願番号】特願2012-534396(P2012-534396)
(86)(22)【出願日】2010年10月15日
(65)【公表番号】特表2013-507930(P2013-507930A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】US2010052852
(87)【国際公開番号】WO2011047267
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】61/252,074
(32)【優先日】2009年10月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】園田 純一郎
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/095372(WO,A1)
【文献】 特表2008−506635(JP,A)
【文献】 特表2002−503446(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/148142(WO,A1)
【文献】 KUROSU, H. et al.,"Tissue-specific expression of betaKlotho and fibroblast growth factor (FGF) receptor isoforms determines metabolic activity of FGF19 and FGF21.",J. BIOL. CHEM.,2007年 9月14日,Vol.282, No.37,P.26687-26695
【文献】 DESNOYERS, L.R. et al.,"Targeting FGF19 inhibits tumor growth in colon cancer xenograft and FGF19 transgenic hepatocellular carcinoma models.",ONCOGENE,2008年 1月 3日,Vol.27, No.1,P.85-97
【文献】 WU, X. et al.,"C-terminal tail of FGF19 determines its specificity toward Klotho co-receptors.",J. BIOL. CHEM.,2008年11月28日,Vol.283, No.48,P.33304-33309
【文献】 YIE, J. et al.,"FGF21 N- and C-termini play different roles in receptor interaction and activation.",FEBS LETT.,2009年 1月 5日,Vol.583, No.1,P.19-24
【文献】 GOETZ, R. et al.,"Molecular insights into the klotho-dependent, endocrine mode of action of fibroblast growth factor 19 subfamily members.",MOL. CELL. BIOL.,2007年 5月,Vol.27, No.9,P.3417-3428
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ線維芽細胞増殖因子19(FGF19)ポリペプチドであって、該ポリペプチドの配列が、
hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分を含むC末端部分、及び
hFGF21ポリペプチド配列のN末端部分を含むN末端部分
を含み、
hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分は、45から185残基の長さであり、
hFGF21ポリペプチド配列のN末端部分は、7から140残基の長さであり、
hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分の最初の位置が、25、26、27、28、30、33、及び35からなる群から選択される配列番号1の位置に対応し、
hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分の最後の位置が、配列番号1の194の位置に対応し、及び、
hFGF21ポリペプチド配列のN末端部分の最初の位置が、配列番号2の1の位置に対応し、
hFGF21ポリペプチド配列のN末端部分の最後の位置が、20、21、22、23、25、27、及び29からなる群から選択される配列番号2の位置に対応するポリペプチドであって、
キメラFGF19ポリペプチドが、クロトーβ非依存性又はクロトーβ依存性様式の何れによっても実質的にFGFR4を活性化せず、及び、キメラFGF19ポリペプチドが、クロトーβ依存性様式でFGFR1cを活性化する、
ポリペプチド。
【請求項2】
hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分の最初の位置が、配列番号1の25の位置に対応し、及び、hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分の最後の位置が、配列番号1の194の位置に対応し、及び/又は
hFGF21ポリペプチド配列のN末端部分の最初の位置が、配列番号2の1の位置に対応し、及び、hFGF21ポリペプチド配列のN末端部分の最後の位置が、配列番号2の20の位置に対応する、請求項1に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項3】
キメラFGF19ポリペプチドであって、該ポリペプチドの配列が、
配列番号1に対して少なくとも95%の配列同一性を有する第一のポリペプチド配列を含み、
第一のポリペプチド配列の一部分は、第二のポリペプチド配列の一部分で置換されており、第二のポリペプチドの配列は配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、
第一のポリペプチド配列の置換された部分は、最初の位置及び最後の位置を有し、
置換された部分の最初の位置が、1、10、及び11からなる群から選択される配列番号1の位置に対応し、
置換された部分の最後の位置が、24、25、26、27、29、31、32、及び34からなる群から選択される配列番号1の位置に対応し、及び置換された部分の最初の位置及び置換された部分の最後の位置が、第一のポリペプチド配列の置換された部分の長さが12から33残基の長さとなるように選択さ
キメラFGF19ポリペプチドが、クロトーβ非依存性又はクロトーβ依存性様式の何れによっても実質的にFGFR4を活性化せず、及び、キメラFGF19ポリペプチドが、クロトーβ依存性様式でFGFR1cを活性化する、
キメラFGF19ポリペプチド。
【請求項4】
キメラhFGF19ポリペプチドが、第一のポリペプチドのβ1−β2ループの置換、第一のポリペプチドのβ10−β12セグメントの置換、及び/又は第一のポリペプチドのアミノ酸残基38−42の、第二のポリペプチドのβ1−β2ループ、第二のポリペプチドのβ10−β12セグメント、及び/又は第二のポリペプチドの対応するアミノ酸残基による置換を更に含む、請求項に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項5】
配列番号5を有する配列を含むキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項6】
キメラhFGF19ポリペプチドが第二のポリペプチドへ融合し、第二のポリペプチドが、免疫グロブリンのFc部分、及び免疫グロブリンのFc部分の1つ以上の断片からなる群から選択される、請求項1−5の何れか一項に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項7】
(i)免疫グロブリンが、IgG−1、IgG−2、IgG−3、IgG−4、IgA−1、IgA−2、IgE、IgD及びIgMからなる群から選択され;及び/又は
(ii)Fc部分がヒト又はヒト化型であり;及び/又は
(iii)キメラhFGF19ポリペプチドのC末端が、第二のポリペプチドのN末端に融合し;及び/又は
(iv)キメラhFGF19ポリペプチドのC末端が、リンカーを介して第二のポリペプチドのN末端に融合し、該リンカーは[Gly]nリンカー、[Gly3Ser]mリンカー、及び[Gly4Ser]mリンカーからなる群から選択され、nは1−30の整数であり、mは1−6の整数である、請求項6に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項8】
(i)キメラhFGF19ポリペプチドが、クロトーβ非依存性又はクロトーβ依存性様式の何れによっても実質的にFGFR4を活性化せず;又は
(ii)キメラhFGF19ポリペプチドが、クロトーβ依存性様式でFGFR1cを活性化する、請求項1−7の何れか一項に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項9】
(i)キメラhFGF19ポリペプチドが、個体に投与した場合、個体におけるリン酸化STAT5ポリペプチドのレベルを減少させず;又は
(ii)キメラhFGF19ポリペプチドが、個体に投与した場合、個体におけるリン酸化STAT5ポリペプチドの量を減少させるが、このリン酸化STAT5ポリペプチドの量は天然型hFGF21を個体に投与した場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの量よりも多く;又は
(iii)キメラhFGF19ポリペプチドが、個体に投与した場合、リン酸化STAT5ポリペプチドの量を、そうした投与無しの個体におけるリン酸化STAT5ポリペプチドの量の100%から5%である量まで減少させ;又は
(iv)キメラhFGF19ポリペプチドが、個体に投与した場合、リン酸化STAT5ポリペプチドの量の減少が、天然型hFGF21を投与した場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの減少よりも少なく、該減少が、天然型hFGF21を投与した場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの量の減少の0%から95%である、請求項1−7の何れか一項に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項10】
(i)キメラhFGF19ポリペプチドが、個体に投与した場合、成長ホルモン抵抗性を誘導せず;及び/又は
(ii)キメラhFGF19ポリペプチドが、FGF19と少なくとも同じインビボでの生理的半減期を有し;及び/又は
(iii)キメラhFGF19ポリペプチドが、FGF21と少なくとも同じインビボでの生理的半減期を有する、請求項1−8の何れか一項に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項11】
個体がヒトである、請求項9又は10に記載のキメラFGF19ポリペプチド。
【請求項12】
(a)請求項1−11の何れか一項に記載のキメラFGF19ポリペプチドの治療的有効量、及び
(b)許容可能な薬学的担体
を含む薬学的組成物。
【請求項13】
肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、高血糖、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、及び高コレステロール血症のうち一以上を呈する個体を治療するための、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
治療を必要とする個体の血糖を下げるための請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
個体がヒトである、請求項13又は14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
(a)配列番号5を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖と少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含む単離された核酸分子であって、
前記核酸分子にコードされたキメラFGF19ポリペプチドが、クロトーβ非依存性又はクロトーβ依存性様式の何れによっても実質的にFGFR4を活性化せず;及びクロトーβ依存性様式でFGFR1cを活性化する、
核酸分子。
【請求項17】
(i)核酸分子が配列番号7を有する核酸配列を含み;
(ii)核酸分子が、(a´)配列番号5の1から190のアミノ酸残基の配列を含むポリペプチドをコードするDNA分子、又は(a´)のDNA分子の相補鎖を含み;
(iii)核酸分子が、(a´´)配列番号5の1から190の残基に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードするDNA分子、又は(a´´)のDNA分子の相補鎖を含み;又は
(iv)核酸分子が、配列番号7を有する配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するDNAを含み、
コードされたポリペプチドが任意で、免疫グロブリンのFc部分に対応するアミノ酸残基を更に含む、請求項16に記載の単離された核酸分子。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の核酸分子を含む発現系。
【請求項19】
請求項18に記載の発現系を含む宿主細胞。
【請求項20】
請求項16又は17に記載の核酸分子によりコードされた単離されたポリペプチド。
【請求項21】
コードされたポリペプチドの発現に適した条件下で請求項19に記載の宿主細胞を培養し、及び、細胞培養液からコードされたポリペプチドを回収することを含む、単離されたポリペプチドを生成するための方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法により生成された単離されたポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年10月15日に出願された米国特許仮出願番号61/252,074の優先権を主張し、この内容全体を出典明示により本明細書に援用する。
(発明の分野)
本発明は、一般に、キメラ線維芽細胞増殖因子(FGF)ポリペプチドとして本明細書に規定された新規なポリペプチド、FGFポリペプチドをコードする新規DNA、及びキメラFGFポリペプチドの組換え生産、及び代謝関連疾患及び及びその他の病気の治療的処置のために、及びキメラFGFポリペプチドを含む薬学的に活性な組成物を製造するために、キメラFGFポリペプチドを使用する方法、組成物、及びアッセイに関連し、その組成物は代謝関連疾患及び他の病気の治療に関連するものを含む治療特性及び薬理学的特性を有する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーは、FGF19サブファミリーを含み、それはヒトFGF21、FGF23及びFGF19、及びマウスFGF15からなる。典型的には、パラクリン様式で元の自分の組織に作用するFGFファミリーの他のメンバーとは異なり、FGF19サブファミリーのメンバーは内分泌様式で特定の遠位組織に作用する。FGFファミリーのメンバーの作用は、FGF受容体チロシンキナーゼ(FGFR)ファミリーの一以上のメンバーに対するヘパリン依存性結合の結果である。受容体のこのファミリーは、4つのメンバーが含まれており、各々はチロシンキナーゼドメインのFGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4を有し、並びに2つのスプライスバリアントは各々FGFR1、FGFR2及びFGFR3を有する。FGFR1、FGFR2及びFGFR3のエキソン3で生じるこれらのスプライスバリアントは、”b”及び”c”バリアントとして命名される(すなわち、FGFR1b、FGFR2b、FGFR3c、FGFR1c、FGFR2c及びFGFR3cであり、それらは各々FGFR1(III)b、FGFR2(III)b、FGFR3(III)c、FGFR1(III)c、FGFR2(III)c及びFGFR3(III)cとしても知られる)。
【0003】
FGF19サブファミリーのメンバーは、哺乳動物における組織特異的な様々な代謝プロセスの調節に関与している。特に関心があるのはFGF19であり、脂肪細胞及び肝細胞の両方を標的として作用することが示されている。例えば、組換えヒトFGF19(rhFGF19)で処置されたマウスは、高脂肪食であるにもかかわらず、代謝率の増加、脂質酸化の増加、低呼吸商及び体重減少を示している。更に、このようなマウスは高脂肪食にもかかわらず、食欲の低下無しに、レプチン、インスリン、コレステロール、及びトリグリセリドの低い血中濃度、及び血糖正常値を示した。レプチンは欠損しているが、FGF19導入遺伝子が含まれて肥満マウスは、体重減少を示し、コレステロール及びトリグリセリドを下げ、糖尿病を発症するしなかった。レプチンを欠損する肥満の糖尿病マウスは、rhFGF19が注入される場合、体重減少及び血糖値の低下という形で代謝特性の反転を示した(Fu, L. et al., Endocrinology 145(6), 2594-2603 (2004); Tomlinson, E. et al., Endocrinology 143(5), 1741-1747 (2002))。
【0004】
FGF19サブファミリーの別のメンバーであるFGF21は、主に肝臓で発現し、例えば、脂肪組織に及ぼす作用を介した代謝の増加、体重減少、血糖値低下、肥満や糖尿病に対する抵抗性など、FGF19のそれと類似の代謝的効果を持っている(Kharitonenkov, A. et al., J Clin Invest 115(6), 1627-1635 (2005))。FGF21-トランスジェニックマウスはまた、食事誘発性肥満に耐性であった。更に、糖尿病の齧歯類モデルにおいて、FGF21投与は血糖値とトリグリセリドの値を下げた。
【0005】
FGF21はまた、成長ホルモン(GH)の経路の制御における役割を有することが示されている。GHのタンパク同化作用は主に肝臓で産生されるインスリン様成長因子1(IGF−1)によって媒介される。GHは、IGF−1の転写を誘導し、それによってGH受容体によるヤヌスキナーゼ2(JAK2)の活性化を介してその血中濃度を増加させる。活性化JAK2は転写(STAT)ファミリーのシグナル伝達物質のメンバー及び活性化因子のメンバーをリン酸化し、それらはリン酸化されると、核移行を受けて、IGF−1のものを含む標的遺伝子の調節要素へ結合する。特に、STAT5は、そのリン酸化された形態で、この応答における顕著な役割を有することが示されている。
【0006】
IGF−1レベルへのGHの作用は、IGF−1転写及び循環するIGF−1のレベルの低下をもたらす飢餓又は空腹状態により打ち消されるように見える(Thissen, J.P. et al., Endocr. Rev. 15, 80?101 (1994))。IGF−1のこれらの作用は、リン酸化STAT5のレベルの低下に起因することがある。特に、GHを注射した絶食ラットは非絶食ラットよりも、肝臓のSTAT5のリン酸化肝の低レベルが低下している(Beauloye, V. et al., Endocrinology 143, 792?800 (2002))。飢餓又は絶食条件下で肝臓に誘導されるFGF21は、この作用を媒介する可能性がある。FGF21トランスジェニックマウスは、IGF−1及びリン酸化STAT5のレベルが低下することが示されている(Inagaki, T. et al., Cell Metabolism 8, 77-83 (2008))。
【0007】
FGF19及びFGF21の代謝作用は、FGFR1c受容体、FGFR2c受容体及びFGFR3c受容体への結合を介して影響され、そのうちFGFR1c及びFGFR2cへの結合が最も重要である。更に、これらの受容体へのFGF19及びFGF21の結合は、コレセプターのクロトーβを必要とする。これらFGFR受容体の有病率にもかかわらず、組織特異的局在を持つクロトーβコレセプターを必要とするために、脂肪細胞特異的に作られる。
【0008】
FGF19はまたFGF21とは異なる作用を有することが示されている。例えば、FGF19は、その肝臓特異的な作用を介して肝臓による胆汁の生産を調節することが示されている。食後の胆汁生産に応答して、FGF19は、胆汁酸の合成における律速酵素である、コレステロール7−α−ヒドロキシラーゼ遺伝子(CYP7A1)の転写を抑制することにより、及び胆嚢の充填を刺激することにより、胆汁の生産を負に調節する。さらに、FGF19は、FGF21に関しては観察されない肝細胞分裂促進作用を持っているように見える。例えば、FGF19トランスジェニックマウスは、肝細胞増殖及び形成異常の増加に起因する肝腺癌を発症し、rhFGF19処置マウスでは肝細胞の肝細胞増殖を示す(Nicholes, K. et al., Am J Pathol 160, 2295-2307 (2000).)。FGF19のこれらの付加的活性がFGFR4への結合を介して媒介されるように見える。FGF19は、クロトーβ依存性様式及び非依存性様式の両方でFGFR4に結合できる。FGF21はまた、クロトー−β依存的にFGFR4を結合することが示されているが、効率的なシグナル伝達はFGF21のFGFR4への結合によって生じない。
【0009】
糖尿病、肥満、高血糖、及びその他の関連疾患などの代謝関連疾患の治療のための新しい治療法を開発する必要がある。また、そうした治療での望ましくない成長可能性又は増殖可能性(例えば、腫瘍形成能)が排除されるか又は低減される、代謝関連疾患のための新しい治療法を開発する必要もある。また、そうした治療での成長ホルモン抵抗性の可能性が排除又は低減される、代謝関連疾患のための新しい治療法を開発する必要もある。
【発明の概要】
【0010】
第一の態様において、本発明はキメラのヒト線維芽細胞増殖因子19(hFGF19)ポリペプチドを提供する。本発明の幾つかの実施態様において、キメラポリペプチドの配列は、hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分を含むC末端部分、及びhFGF21ポリペプチド配列のN末端部分を含むN末端部分を含む。所定の実施態様において、hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分は、長さが約45残基から約185残基であり、及びhFGF21ポリペプチド配列のN末端部分は長さが約7残基から約140残基である。
【0011】
本発明のその他の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが提供され、ポリペプチドの配列は、hFGF21ポリペプチド配列のC末端部分を含むC末端部分、及びhFGF19ポリペプチド配列のN末端部分を含むN末端部分を含む。幾つかの実施態様において、hFGF21ポリペプチド配列のC末端部分は、長さが約8残基から約145残基であり、及びhFGF19ポリペプチド配列のN末端部分は長さが約45残基から約175残基である。
【0012】
本発明のその他の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが提供され、キメラポリペプチドの配列は、hFGF19ポリペプチドの配列に、少なくとも所定の配列同一性を有する第一のポリペプチド配列を含み、該第一のポリペプチド配列の一部は、第一のポリペプチド配列の置換部分の長さは約3残基から約185残基からなるように、第二のポリペプチド配列の一部分で置換されており、該第二のポリペプチド配列はhFGF21ポリペプチドの配列に対して少なくとも所定の配列同一性を有している。
【0013】
本発明の幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが提供され、キメラポリペプチドの配列は、hFGF19ポリペプチドの配列に、少なくとも所定の配列同一性を有する第一のポリペプチド配列を含み、該第一のポリペプチド配列の一部は、第二のポリペプチド配列の一以上の部分で置換されており、該第二のポリペプチド配列はhFGF21ポリペプチドの配列に対して少なくとも所定の配列同一性を有している。幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、第一のポリペプチドのβ1−β2ループの置換、第一のポリペプチドのβ10−β12セグメントの置換、及び/又は第一のポリペプチドのWGDPI5残基の、第2のポリペプチドのβ1−β2ループとの置換、第2のポリペプチドのβ10−β12ループとの置換、及び/又は第2のポリペプチドの対応する配列GQVとの置換を含む。
【0014】
本発明の所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、配列
HPIPDSSPLLQFGGQVRQRYLYTSGPHGLSSCFLRIRADGVVDCARGQSAHSLLEIKAVALRTVAIKGVHSVRYLCMGADGKMQGLLQYSEEDCAFEEEIRPDGYNVYRSEKHRLPVSLSSAKQRQLYKNRGFLPLSHFLPMLPMVPEEPEDLRGHLESDMFSSPLETDSMDPFGLVTGLEAVRSPSFEK(配列番号5)を含む。
【0015】
所定の実施態様において、本発明のキメラhFGF19ポリペプチドは、第二のポリペプチドに融合されており、第二のポリペプチドは、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのFc部分のアナログ、及び免疫グロブリンのFc部分の1つ以上のフラグメントである。所定の実施態様において、免疫グロブリンは、IgG1、IgG−2、IgG−3、IgG−4、IgA−1、IgA−2、IgE、IgD及びIgMから成る群から選択される。幾つかの実施態様において、Fc部分はヒト又はヒト化型である。幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドのC末端は、第2のポリペプチドのN末端に融合されている。幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドのC末端は、リンカーを介して第2のポリペプチドのN末端に融合されており、リンカーは[Gly]リンカー、[GlySer]mリンカー及び[GlySer]mからなる群から選択され、ここでnは1−30の整数で、mは1−6の整数である。
【0016】
本発明は、天然のhFGF19と少なくとも同じか又はほぼ同じである生理学的な半減期を有するキメラhFGF19ポリペプチドを含む。本発明は、天然のhFGF21と少なくとも同じか又はほぼ同じである生理学的な半減期を有するキメラhFGF19ポリペプチドを含む。
【0017】
所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、実質的にクロトーβに依存しないか又はクロトーβ依存的の何れかの様式で、FGFR4を実質的に活性化しない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドはクロトーβ依存的にFGFR1cを活性化する。
【0018】
所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体の除脂肪重量は減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体の除脂肪重量を実質的には減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体の骨密度は減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体の骨密度を実質的には減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体の心臓の能力を減少させない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体の心臓の能力を実質的には減少させない。
【0019】
所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、インビボでリン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量を減らさないか又は実質的に減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体でリン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量を減らさないか又は実質的に減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、リン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量は個体において減少するが、このリン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量は、個体に天然のhFGF21を投与した場合のリン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量よりも多い。
【0020】
所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、リン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量は、そのような投与無しの個体におけるリン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量の100%から5%、100%から10%、100%から20%、100%から30%、100%から40%、100%から50%、100%から60%、100%から70%、100%から80%、100%から90%又は100%から95%の何れかである。
【0021】
所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、リン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量の減少は、天然のhFGF21が投与された場合のリン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量の減少よりも少ない。例えば、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、リン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量の減少は、天然型hFGF21を投与した場合のリン酸化されたSTAT5ポリペプチドの量の減少の0%から5%、0%から10%、0%から20%、0%から30%、0%から40%、0%から50%、0%から60%、0%から70%、0%から80%、0%から90%又は0%から95%の何れかによる。
【0022】
所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドはインビボでインスリン様成長因子1(IGF−1)の循環量を減らさないか、又は実質的に減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体におけるIGF−1の循環量を減らさないか、又は実質的に減らさない。キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される所定の実施態様において、循環するIGF−1の量は減少するが、この循環するIGF−1の量は、個体に天然型のhFGF19を投与した場合の循環するIGF−1の量より多い。キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される所定の実施態様において、循環するIGF−1の量は、そうした投与が無い個体において循環するIGF−1の量の、100%から5%、100%から10%、100%から20%、100%から30%、100%から40%、100%から50%、100%から60%、100%から70%、100%から80%、100%から90%又は100%から95%の何れかである。キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される所定の実施態様において、循環するIGF−1の量の減少は、天然型hFGF21を投与した場合の循環するIGF−1の量の減少よりも少ない。例えば、個体のキメラhFGF19ポリペプチドが投与される場合、循環するIGF−1の量の減少は、天然型hFGF21を投与した場合の循環するIGF−1の量の減少の0%から5%、0%から10%、0%から20%、0%から30%、0%から40%、0%から50%、0%から60%、0%から70%、0%から80%、0%から90%又は0%から95%の何れかによる。
【0023】
その他の態様において、本発明は、本発明のキメラhFGF19ポリペプチドの治療的有効量、及び許容される薬学的担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0024】
その他の態様において、本発明は、肥満、1型糖尿病、2型糖尿病、高血糖、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、脳卒中、骨粗鬆症、変形性関節症、退行性関節疾患、筋萎縮、サルコペニア、除脂肪体重の減少、脱毛、しわ、疲労の増大、スタミナ減少、心機能の低下、免疫系の機能障害、癌、パーキンソン病、老人性痴呆症、アルツハイマー病、認知機能低下のうち一以上を呈する個体を治療する方法を提供し、その方法は個体に本発明の薬学的組成物の治療的有効量を投与する方法を含む。
【0025】
その他の態様において、本発明は、治療を必要とする個体の血糖値を下げる方法を提供し、その方法は個体に本発明の薬学的組成物の治療的有効量を投与する方法を含む。
【0026】
その他の態様において、本発明は配列番号5の約1から約190のアミノ酸配列を有するポリペプチドコードするDNA分子に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一であるDNAを含む単離された核酸、又はその相補鎖を提供する。
【0027】
その他の態様において、本発明は配列:
CACCCCATCCCTGACTCCAGTCCTCTCCTGCAATTCGGGGGCCAAGTCCGGCAGCGGTACCTCTACACCTCCGGCCCCCACGGGCTCTCCAGCTGCTTCCTGCGCATCCGTGCCGACGGCGTCGTGGACTGCGCGCGGGGCCAGAGCGCGCACAGTTTGCTGGAGATCAAGGCAGTCGCTCTGCGGACCGTGGCCATCAAGGGCGTGCACAGCGTGCGGTACCTCTGCATGGGCGCCGACGGCAAGATGCAGGGGCTGCTTCAGTACTCGGAGGAAGACTGTGCTTTCGAGGAGGAGATCCGCCCAGATGGCTACAATGTGTACCGATCCGAGAAGCACCGCCTCCCGGTCTCCCTGAGCAGTGCCAAACAGCGGCAGCTGTACAAGAACAGAGGCTTTCTTCCACTCTCTCATTTCCTGCCCATGCTGCCCATGGTCCCAGAGGAGCCTGAGGACCTCAGGGGCCACTTGGAATCTGACATGTTCTCTTCGCCCCTGGAGACCGACAGCATGGACCCATTTGGGCTTGTCACCGGACTGGAGGCCGTGAGGAGTCCCAGCTTTGAGAAG(配列番号7)、又はその一部を含む単離された核酸分子を提供する。
【0028】
所定の実施態様において、本発明の単離された核酸は、さらに免疫グロブリンのFc部分に相当するアミノ酸残基をコードする配列を含む。
【0029】
その他の態様において、本発明は、本発明の核酸分子を含む発現系を提供する。その他の態様において、本発明は、本発明の発現系または核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0030】
その他の態様において、本発明は、本発明の核酸分子によってコードされた単離されたポリペプチドを提供する。
【0031】
その他の態様において、本発明は、本発明の核酸分子によってコードされる単離されたポリペプチドを提供する。
【0032】
その他の態様において、本発明は、エンコードされたポリペプチドの発現に適した条件下で、本発明の宿主細胞を培養し、細胞培養物からコードされたポリペプチドを回収することを含む、単離されたポリペプチドを生産するための工程を提供する。その他の態様において、本発明は本発明の方法により生産される単離されたポリペプチドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、ヒトFGF19ポリペプチド(配列番号1)、及びヒトプレFGF19ポリペプチド(配列番号3)のアミノ酸配列を示す。
図2】ヒトFGF21ポリペプチド(配列番号2)、及びヒトプレFGF21ポリペプチド(配列番号4)のアミノ酸配列を示す。
図3図3は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた受容体結合アッセイの典型的な結果を示す。
図4図4は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた受容体結合アッセイの典型的な結果を示す。
図5図5は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた肝臓特異的遺伝子発現アッセイの典型的な結果を示す。
図6図6は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた脂肪細胞特異的遺伝子発現アッセイの典型的な結果を示す。
図7図7は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた血糖低下アッセイの典型的な結果を示す。
図8図8は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いたブドウ糖負荷試験アッセイの典型的な結果を示す。
図9図9は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドの免疫グロブリンFc融合体を用いた活性測定法の例示的な結果を示す。及び
図10-14】図10−14は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた受容体特異性アッセイの典型的な結果を示しています。
図15図15は、リン酸化−Stat5蛋白質のレベルについて本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた典型的な結果を示す。
図16図16は、細胞の総代謝活性について本発明のキメラFGF19ポリペプチドを用いた典型的な結果を示す。
図17】FGFR4は胆汁酸(「BA」)調節のために必要であるが、FGF19による耐糖能の改善のためには必要でないことを示す。図17Aは、ブドウ糖負荷試験においてFGF19又はPBSで処理された野生型(「WT」)及びFGFR4ノックアウト(「KO」)マウスの血糖値を示す。*p<0.05.**p<0.01.曲線下(AUC)のp値はp<0.02(WT)及びp<0.005(KO)であった。N=6〜8.図17Bは、第7日に安楽死のFGF19又はPBSで処置された野生型及びFGFR4ノックアウトにおける様々な代謝パラメーター(体重(g)、肝臓/BW比(%)、血清インスリン(ng/mL)、血清β−ヒドロキシ酪酸(BHB)(mg/L)、血清乳酸(mg/dl)、血清トリグリセリド(mg/dl))を示す。3時間の絶食後にマウスは安楽死させ、血清が調製された。N=6〜8.図17Cは、FGF19又はPBSで処置されたWTマウス及びFGFR4ノックアウトマウスにおける血清BAの組成分析を示す。主要な胆汁酸種のみを示す。CA:コール酸、DCA:デオキシコール酸、MCA:ムリコール酸、T−:タウリン抱合型。図17Dは、リアルタイムqPCRで決定された、FGF19又はPBSで処置されたWTマウス及びFGFR4ノックアウトマウスにおける様々な肝臓の遺伝子(Egr−1、c−Fos、AFP、Cyp7a1、Cyp8b、Cyp27a1、Cyp7b及びGK)の相対的発現を示す。N=6〜8.図17B−17Dのp値は<0.05、**<0.005(PBS対FGF19)、#<0.05、##<0.005(WT対FGFR4KO)である。
【0034】
図18は、FGFR4活性が減少したFGF19変異体の同定を示す。図18Aは、KLB及びFGFR1c又はFGFR4でトランスフェクトされ、濃度の増加したFGF19(Ο)又はFGF21(▲)を含む培地でインキュベートしたラットL6細胞を用いたGAL−Elk1ルシフェラーゼアッセイによる(相対的ルシフェラーゼ単位(RLU)として示される)ウミシイタケルシフェラーゼ活性によって正規化された相対的なホタルルシフェラーゼ活性を示す。図18Bは、FGF19(上)、FGF21(下)、及び左のアミノ酸組成を有する様々なキメラタンパク質の(一定尺度の)図を示す。図18Cに示すように、GAL−Elk1アッセイの結果に基づき、各キメラは、右に示されたようにクラス(I)、(II)又は(III)に分類された。条件培地が使用され、FGF21又はFGF19と同等のFGFR1c活性を示さなかったキメラは、ここでは示されてない。図18Cは、KLB及び/又はFGFR(FGFR1c又はFGFR4)でコトランスフェクトされ、及び一時的にさまざまなFGFコンストラクト(使用されたFGFコンストラクトのアミノ酸組成については、図18Bを参照)でトランスフェクトされた293細胞から条件培地でインキュベートされたL6細胞を用いたGAL−エルク−1アッセイにおけるFGFR1c又はFGFR4の活性化を示す。結果は、疑似トランスフェクトした細胞で調節されたコントロール培地上の誘導倍率(fold induction)として示される。図18Dは、FGFR1c、FGFR4+KLB、又はFGFR4でトランスフェクトされ、かつ精製されて増加した濃度のFGF19(Ο)又はFGF19v(▼)(図18B及び18Cのコンストラクト#4)を含む培地でインキュベートされたラットL6細胞を用いたGAL−Elk1ルシフェラーゼアッセイにおけるFGFR活性化についての誘導倍率を示す。図18Eは、Fc断片に融合されたFGFR4に対するFGF19及びFGF19vの固相結合アッセイの結果を示しています。実験の概略図が右に示される。図18Fは、図18Eで使用された抗FGF19抗体が、FGF19及びFGF19vを区別できない親和性で認識したことを示す(コントロールELISA実験)。実験の概略図が右に示される。
【0035】
図19は、KLB及びFGFR2c又はFGFR3cでトランスフェクトされ、かつ濃度が増加したFGF19(Ο)又はFGF21(▲)を含む培地でインキュベートされたラットL6細胞におけるGAL−Elk1ルシフェラーゼアッセイにおけるRLUを示す。L6細胞は、GAL−Elk1、SV40−ウミシイタケルシフェラーゼ、及びGal応答ルシフェラーゼレポーターと一緒に、KLBの発現ベクター及び指定されたFGFRとともにコトランスフェクトされた。トランスフェクトした細胞は、ルシフェラーゼアッセイの前に6時間、増加した濃度のFGF19又はFGF21を含む培地でインキュベートした。転写活性化は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性により規格化された相対的ルシフェラーゼ活性で評価され、相対ルシフェラーゼ単位(RLU)として表わされた。この数字はFGF21及びFGF19はKLBの存在下でFGFR2c及びFGFR3cを活性化していることを示す。
【0036】
図20は、KLB及び/又はFGFR(FGFR1c又はFGFR4)でコトランスフェクトされ、及びX軸で示された様々なFGFコンストラクトで一時的にトランスフェクトさた293細胞から、条件培地でインキュベートされたL6細胞を用いたGAL−Elk−1アッセイにおけるFGFR1c又はFGFR4の活性化を示す(使用されたFGFコンストラクトのアミノ酸組成については、図18Bを参照)。結果は、疑似トランスフェクトした細胞で調節されたコントロール培地上の誘導倍率として示される。X軸で示される番号は、図18Bに示すように、コンストラクトの番号に対応する。
【0037】
図21は、固形飼料給餌マウスのFGF19vの効果を示す。図21Aは、1mg/kgでFGF21、FGF19、又はFGF19v、又はPBSコントロールを(尾静脈を介して)注入されたFVBマウスにおける種々な遺伝子(c−Fos、EGR−1、GK、SHP、及びCYP7A1)の相対発現を示す。p値:*<0.05、**<0.01、***<0.001(対PBS).注射後4時間で、肝臓のmRNAをそれぞれのマウスから調製し、指定された遺伝子のリアルタイムqPCR分析に供された。図21Bは、1mg/kgでFGF21又はFGF19、又はPBSコントロールを腹腔内注入されたWT又はFGFR4 KO(ノックアウト)マウス(N=5−7)における種々の遺伝子(c−Fos、EGR−1、GK、SHP、及びCYP7A1)の相対的な発現を示す。一晩絶食したマウスにFGFタンパク質又はPBSコントロールが腹腔内に注入された。注射後4時間で、肝臓のmRNAをそれぞれのマウスから調製し、指定された遺伝子のリアルタイムqPCR分析に供された。p値:*<0.05、**<0.01、***<0.001.図21Cは、足場非依存性細胞増殖アッセイにおいて蛍光強度(×10)により測定した種々の濃度(10ng/mL、60ng/mL、および200ng/ml)でFGF21、FGF19、又はFGF19vで処置されたHepG2細胞の増殖を示す。軟寒天におけるHepG2細胞の増殖は、非蛍光指示薬色素であるレサズリン(Alamerブルー)のレゾルフィンへの変換に基づいて推定された。図21Dは、FGF19又はFGF19vを注入されたFVBマウスにおけるBrdU+肝細胞の倍率変化を示す。 N=6、*p<0.01、***p<5E-5(対PBS)、##p<0.0002(対FGF19).FVBマウスに、1ng/hr(〜0.8mg/kg/日)(第0日)で指定されたFGFタンパク質を継続的に注入するために浸透圧ポンプが埋め込まれた。マウスはまた、毎日1mg/kg/日のFGFタンパク質(1日1回)、及び開始第1日目に30mg/kg/日のBrdU(1日2回)の注射を受けた。第7日目に、肝臓が摘出され、抗BrdU染色に供された。結果は、分析される面積当たりのBrdU陽性肝細胞について、模擬で処置された動物における誘導倍率として示される。図21Eは、図21Cに示される調査のための代表的なイメージを示す。図21Fは、図21D及び21Eで使用されているマウスの種々の遺伝子の相対発現(c−Fos、EGR−1、AFP、GK、CYP7A1及びCyp8b)を示す。N=6.*p<0.05、**p<0.005、***p<0.001(対PBS)、#p<0.05、##p<0.005(対FGF19)。
【0038】
図22は、ob/obマウスにおいて、FGF19v及びFGF21が同様の代謝効果を持ち、かつ高血糖を改善することを示している。11週齢のob/obマウスに1ng/hrのFGFタンパク質(0.4mg/kg/日)又はPBSコントロールを注入するために浸透圧ポンプが皮下に埋め込まれた(N=7)。図22Aは、1ng/hrのFGF21又はFGF19v(0.4mg/kg/日)又はPBSコントロールを浸透圧ポンプにより注入されたob/obマウスの体重(g)及び血糖値(mg/dl)を示す(N=7)。浸透圧ポンプは、第0日目に埋め込まれたした。図22Bは、FGF21、FGF19v又はPBSコントロールをランダムな給餌条件で及び一晩絶食後に注入されたob/obマウスの血糖レベル(mg/dl)を示す。図22Cは、第8日目にFGF21、FGF19v又はPBSコントロールを注入されたob/obマウスの血清非エステル化脂肪酸(NEFA)レベルを示す。図22Dは、第6日目にFGF21、FGF19v又はPBSコントロールを注入されたob/obマウスにおいて実施されたブドウ糖負荷試験の結果を示す。マウスは、一晩絶食し、t=0で1g/kgのグルコースを腹腔内に注入された。図22Eは、第8日目にFGF21、FGF19v又はPBSコントロールを注入されたob/obマウスにおける臓器/体重比(%)を示す。図22Fは、FGF21、FGF19v又はPBSコントロールを注入されたob/obマウスの様々な組織(肝臓、褐色脂肪組織(BAT)、及び白色脂肪組織(WAT))由来の種々の遺伝子(AFP、IGFBP2、SCD−1、Cyp7A、Cyp8B、UCP−1、MCAD、及びSREBP−1c)のqPCRによって決定された相対的な発現を示す。p値:*<0.05、**<0.005、***<0.0005(対PBSコントロール).
【0039】
発明の詳細な記述
本発明は、新規キメラFGF19ポリペプチドを提供する。本発明のいくつかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド配列は、FGF19ポリペプチド配列の一部分及びFGF21ポリペプチド配列の一部分を含む。所定の好ましい実施態様において、FGF19ポリペプチドは、その配列が配列番号1で定義されているプロセスされたヒトのFGF19(hFGF19)ポリペプチドである。所定の好ましい実施態様において、FGF21ポリペプチドは、その配列が配列番号2で定義されているプロセスされたヒトのFGF21(hFGF21)ポリペプチドである。その他の態様にて、本発明は、さらに免疫グロブリンドメイン、例えばFcドメインに融合させた新たなキメラFGF19ポリペプチドを提供する。
【0040】
その他の態様にて、本発明は、受容体特異性を改変した新規なキメラFGF19ポリペプチドを提供する。所定の好ましい実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ依存的に又は非依存的にFGFR4を実質的に活性化しない。所定の実施態様において、本発明のキメラポリペプチドFGF19は、クロトーβ依存的にFGFR1c、FGFR2c又はFGFR3cの少なくとも一つを活性化する。
【0041】
幾つかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、以下の有利な特徴の一つまたはそれ以上を持つことができる:ポリペプチドは、投与した場合の個々の肝細胞増殖を実質的に誘発しない、ポリペプチドは、投与した場合の個々の成長ホルモン抵抗性を実質的に誘導しない、ポリペプチドは、集団において多型である残基を含まない、ポリペプチドは、天然型FGF19ポリペプチド(例えば、天然型hFGF19ポリペプチドなど)と少なくとも同じか又はほとんど同じであるインビボでの生理学的半減期を有する。ポリペプチドは、天然型FGF21ポリペプチド(例えば、天然型hFGF21ポリペプチドなど)と少なくとも同じか又はほとんど同じあるインビボでの生理学的半減期を有する。ポリペプチドは、投与した場合の個体の除脂肪重量を実質的に減らさない。ポリペプチドは、投与した場合の個体の骨密度を実質的に減らさない。及びポリペプチドは、投与の場合に個体の心臓の能力を実質的に減少させない。
【0042】
本発明のポリペプチドキメラFGF19の更なる有利な特徴は、次のいずれかまたは複数を含めることができる:ポリペプチドは治療を必要とする個体の血糖値を減少させる;ポリペプチドは、FGFR1c、FGFR2c又はFGFR3cの少なくとも1つをクロトーβ依存的に活性化する;ポリペプチドはクロトーβ依存的にFGFR4を実質的に活性化しない。ポリペプチドは、クロトーβ非依存的にFGFR4を実質的に活性化しない;ポリペプチドは、投与した場合に個体におけるリン酸化STAT5ポリペプチドの量を減らさないか又は実質的に減らさない;ポリペプチドは、個体に投与された場合に、個体におけるリン酸化STAT5ポリペプチドの量が減少するが、このリン酸化STAT5ポリペプチドの量は、個体に天然型hFGF21が投与された場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの量より多い;ポリペプチドは、個体に投与された場合に、個体におけるリン酸化STAT5ポリペプチドの減少は、個体に天然型hFGF21を投与した場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの減少より少ない;ポリペプチドは、投与される場合、個体において循環するIGF−1ポリペプチドの量を減らさないか、又は実質的に減らさない;ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体において循環するIGF−1の量は減少するが、しかし、この循環するIGF−1の量は個体に天然型hFGF21が投与された場合に循環するIGF−1の量より多い;ポリペプチドは、個体に投与される場合、個体におけるIGF−1の循環量の減少は、個体に天然型hFGF21が投与された場合に循環するIGF−1の量より少ない;及びポリペプチドはGHの正常又は超正常な量を有する個体において循環するIGF−1ポリペプチドの量を減らさないか又は実質的に減らさない。
【0043】
所定の実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ依存的にFGFR1c、FGFR2c又はFGFR3cの少なくとも一つを活性化する有利な特徴を有し、かつクロトーβ依存的又は非依存的にFGFR4を実質的に活性化しない。所定の実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ依存的にFGFR1c、FGFR2c又はFGFR3cの少なくとも一つを活性化する有利な特徴を有し、クロトーβ依存的又は非依存的にFGFR4を実質的に活性化せず、かつ個体においてリン酸化STAT5ポリペプチドの量を減らし、しかしこのリン酸化STAT5ポリペプチドの量は、個体に天然型hFGF21を投与した場合の、リン酸化STAT5ポリペプチドの量より多い。所定の実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ依存的にFGFR1c、FGFR2c又はFGFR3cの少なくとも一つを活性化する有利な特徴を有し、クロトーβ依存的又は非依存的にFGFR4を実質的に活性化せず、かつ集団において多型である残基を含まない。所定の実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ依存的にFGFR1c、FGFR2c又はFGFR3cの少なくとも一つを活性化する有利な特徴を有し、クロトーβ依存的又は非依存的にFGFR4を活性化せず、個体においてリン酸化STAT5ポリペプチドの量を減少させるが、しかしこのリン酸化STAT5ポリペプチドの量は、天然型hFGF21を個体に投与した場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの量より多く、かつ集団において多型である残基を含まない。
【0044】
その他の態様において、本発明は、受容体特異性を改変した新規なキメラFGF19ポリペプチドを提供する。所定の好ましい実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ依存的又は非依存的にFGFR4を実質的に活性化しない。所定の実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ依存的にFGFR1c、FGFR2c又はFGFR3cの少なくとも一つを活性化する。
【0045】
その他の態様において、キメラFGF19ポリペプチドは天然型FGF21により引き起された成長ホルモン抵抗性に比べて、個体における成長ホルモン抵抗活性を生じない。その他の態様において、キメラFGF19ポリペプチドは天然型FGF21により引き起された成長ホルモン抵抗性に比べて、個体における実質的な成長ホルモン抵抗活性を生じない。所定の実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、個体においてリン酸化STAT5ポリペプチドの量を減らさないか又は実質的に減らさない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、リン酸化STAT5ポリペプチドの量は、個体において減少するが、しかしこのリン酸化STAT5ポリペプチドの量は、天然型hFGF21を個体に投与した場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの量より多い。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、リン酸化STAT5ポリペプチドの量の減少は、天然型hFGF21を投与した場合のリン酸化STAT5ポリペプチドの量の減少より少ない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは循環するインスリン様成長因子(IGF−1)の量を減少させいか又は実質的に減少させない。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、循環するIGF−1の量は減少するが、しかしこの循環するIGF−1の量は、個体に天然型hFGF21を投与した場合に循環するIGF−1の量より多い。所定の実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドが個体に投与される場合、循環するIGF−1の量の減少は、天然型hFGF21を投与した場合に循環するIGF−1の量の減少より少ない。
【0046】
その他の態様において、本発明は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドをコードする配列を有する新規な単離された核酸分子、本発明の核酸分子を含む新規な発現系、及び本発明の核酸分子又は本発明の発現系を含む宿主細胞を提供する。
【0047】
その他の態様において、本発明は、本発明キメラFGF19ポリペプチドを特異的に結合することができる抗体を含む。
【0048】
その他の態様において、本発明は、本発明のキメラFGF19ポリペプチド及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0049】
その他の態様において、本発明は、本発明のキメラFGF19ポリペプチド、又はその適切な薬学的製剤を投与することにより、代謝関連疾患について個体を治療する方法を提供する。その他の態様において、本発明は、個体において以下の効果のうち少なくとも一つ以上を達成するための方法を提供し、例えば血糖値を減少させ、肥満を減少させ、代謝率を増加させ、脂質酸化を増加させ、体重を減少させ、グルコース、レプチン、インスリン、コレステロール及び/又はトリグリセリドの血清レベルを下げ、糖尿病を治療すること、及び他の代謝作用であって、そのような効果は、本発明のキメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的製剤の治療的量を個体に投与することによるものである。
【0050】
I.N−末端FGF21ポリペプチド配列を有するキメラFGF19ポリペプチド
本発明の態様において、キメラFGF19ポリペプチド配列は、C末端部分及びN末端部分を含む。キメラFGF19ポリペプチド配列のN末端部分は、FGF21ポリペプチド配列のN末端部分を含み、キメラFGF19ポリペプチド配列のC末端部分は、FGF19ポリペプチド配列のC末端部分を含む。上記の幾つかの実施態様において、FGF19ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のN末端部分は二つの部分の間に共通の1、2、3以上の残基をオーバーラップさせることにより連続的に結合される。幾つかの代わりの実施態様では、FGF19ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のN末端部分は、1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基の介在スペーサーを有する。
【0051】
所定の好ましい実施態様において、FGF19ポリペプチドは、配列番号1で定義されるヒトFGF19(hFGF19)ポリペプチドである(図1)。幾つかの実施態様において、hFGF19ポリペプチド配列のC末端部分は、長さが約45残基から約185残基からなり、表1に示すhFGF19のC末端部分の配列長を明確に含む。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド配列のC末端部分はhFGF19ポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列のC末端部分を含む。幾つかの実施態様において、FGF19ポリペプチドは、前処理されたヒトFGF19(hFGF19)ポリペプチドであり、それはシグナル配列を含み、その配列は配列番号3で定義される(図1)。
【0052】
所定の好ましい実施態様において、FGF21ポリペプチドは、その配列が配列番号2に定義されるヒトFGF21(hFGF21)ポリペプチドである(図2)。幾つかの実施態様において、hFGF21ポリペプチド配列のN末端部分は、約7残基から約140残基の長さであり、表2に示すようにhFGF19のN末端部分の配列長を明確に含む。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド配列のN末端部分はhFGF21ポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列のN末端部分を含む。幾つかの実施態様において、FGF21ポリペプチドは、前処理されたヒトFGF21(hFGF21)ポリペプチドであり、それはシグナル配列を含み、その配列は配列番号4で定義される(図2)。
【0053】
本明細書で使用されるように、ポリペプチド配列のC−末端部分、N末端部分、置換部分又は置換される部分、例えばhFGF19又はhFGF21ポリペプチド配列のそれは、最初の位置及び最終の位置を有する。これらの位置は、その部分が参照されるポリペプチド配列中の位置に対応する。従って、定義された部分の配列は、最初の位置に対応するポリペプチド配列中の位置又はおよその位置で始まり、最終の位置に対応するポリペプチド配列中の位置又はおよその位置で終了するアミノ酸の連続した配列である。幾つかの実施態様において、ポリペプチドのC末端部分の最終位置はポリペプチドの最終残基又はおよその最終残基に対応する。幾つかの実施態様において、ポリペプチドのN末端部分の最初の位置はポリペプチドの最初の残基又はおよその最初の残基に対応する。
【0054】
本発明においてhFGF19ポリペプチド配列のC末端部分の例としては、限定されないが、配列番号1の10、11、25、26、27、28、30、33、35、37、40、41、42、43、44、45、52、53、54、56、57、58、59、72、73、74、79、80、81、143、144、145又は146の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最初の位置を有するものを含む。各典型的なC末端部分はまた、配列番号1の194の位置又はおよその194の位置に対応する最終の位置を有する。表1は、hFGF19の典型的なC末端部分のポリペプチド配列を示す。hFGF19の他の類似した部分はまた、本明細書において検討される。
【0055】
表1:hFGF19ポリペプチド配列の典型的なC末端部分
【0056】
本発明においてhFGF21ポリペプチド配列のN末端部分の例としては、限定されないが、配列番号2の7、8、20、21、22、23、25、27、29、31、34、35、36、37、38、39、46、47、48、50、51、52、53、66、67、68、73、74、75、135、136、137及び138の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最後の位置を有するものを含む。各典型的なN末端部分はまた、配列番号2の1の位置又はおよその1の位置に対応する最初の位置を有する。表2は、hFGF21の典型的なN末端部分のリストを示す。hFGF21の他の類似した部分はまた、本明細書において検討される。
【0057】
表2:hFGF21ポリペプチド配列の典型的なN末端部分
【0058】
本明細書中で定義されるポリペプチド配列のC末端、N末端又、他の部分は、定義された最初又は最後の位置に1から5又はそれ以上の追加の、又はそれより少ない残基を、独立してかつ任意で含みうることが意図されている。例えば、残基100で又はおよそ残基100で最初の位置を有するポリペプチドのC末端部分は、独立に、(i)任意で位置100の残基のN末端に1、2、3、4、5又はそれ以上の追加残基を含み得、(ii)任意で最終残基の残基のC末端に1、2、3、4、5又はそれ以上の追加残基を含み得、(iii)任意で位置100での残基のC末端の1、2、3、4、5又はそれ以上の残基の位置で始まり、又は(iv)任意で最終残基のN末端の1、2、3、4、5又はそれ以上の残基の位置で終了し得る。仮に存在する場合、一つまたは複数の追加残基はポリペプチドの対応する位置の残基と同じか又は同じでない場合がある。
【0059】
本発明のキメラFGF19ポリペプチドの幾つかの実施態様において、その配列のN末端部分は、表2に記載されているhFGF21ポリペプチド配列のN末端部分から選択された配列を含み、その配列のC末端部分は、表1に記載されているhFGF19ポリペプチド配列のC末端部分の中から選択される配列を含む。幾つかの実施態様において、選択されたhFGF21のN末端部分及び、選択されたhFGF19のC末端部分は、互いに独立して選択される。幾つかの実施態様において、hFGF21のN末端配列部分及びhFGF19のC末端配列部分は、N末端配列部分のC末端及びC末端配列部分のN末端エンドが、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ以上の残基を共通に有するように選択される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、FGF19ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のN末端部分が、その間に介在するアミノ酸無しに連続している配列を含む。上記の幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、FGF19ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のN末端部分は、二つの部分の間に共通の1、2、3又はそれ以上の残基を重ね合わせることで連続的に結合される配列を含む。幾つかの代わりの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、FGF19ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のN末端部分を含み、及びその間に1、2、3、4、5又はそれ以上のアミノ酸残基による介在するスペーサーを更に含む配列を含む。本発明のキメラFGF19ポリペプチドの典型的な配列は表3に示され、そのN末端部分はhFGF21ポリペプチド配列のN末端部分を含み、そのC末端部分はhFGF19ポリペプチド配列のC末端部分を含む。
【0060】
表3:典型的なキメラFGF19ポリペプチド配列
【0061】
II.C末端FGF21ポリペプチド配列を有するキメラFGF19ポリペプチド
本発明の第2の態様において、キメラFGF19ポリペプチド配列は、C末端部分及びN末端部分を含む。キメラFGF19ポリペプチド配列のN末端部分は、FGF19ポリペプチド配列のN末端部分を含み、キメラFGF19ポリペプチド配列のC末端部分は、FGF21ポリペプチド配列のC末端部分を含む。上記の幾つかの実施態様において、FGF21ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF19ポリペプチド配列のN末端部分が連続して結合される。上記の幾つかの実施態様において、FGF21ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF19ポリペプチド配列のN末端部分は、二つの部分の間に共通の1、2、3又はそれ以上の残基を重ね合わせることで連続して結合される。幾つかの代わりの実施態様において、FGF21ポリペプチド配列のC末端部分及びキメラFGF19ポリペプチド配列のN末端部分は、1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基による介在するスペーサーを持っている。
【0062】
所定の好ましい実施態様において、FGF19ポリペプチドは、その配列が配列番号1で定義されるヒトFGF19(hFGF19)ポリペプチドである。幾つかの実施態様において、hFGF19ポリペプチド配列のN末端部分は、約45残基から約175残基の長さあり、表4に示されるhFGF19のN末端部分の配列長を明確に含む。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド配列のN末端部分はhFGF19ポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列のN末端部分を含む。
【0063】
所定の好ましい実施態様において、FGF21ポリペプチドは、その配列が配列番号2に定義されるヒトFGF21(hFGF21)ポリペプチドである。幾つかの実施態様において、hFGF21ポリペプチド配列のC末端部分は、約8残基から約145残基の長さであり、表5に示すようにhFGF19のC末端部分の配列長を明確に含む。幾つかの実施態様において、キメラFGF21ポリペプチド配列のC末端部分はhFGF21ポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列のC末端部分を含む。
【0064】
本発明において、hFGF19ポリペプチド配列のN末端部分の例は、限定されないが、配列番号1の位置9、10、24、25、26、27、39、40、41、42、43、44、51、52、53、55、56、57、58、71、72、73、78、79、80、142、143、144及び145の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最後の位置を有するものを含む。各典型的なN末端部分はまた、配列番号1の1の位置又はおよその1の位置に対応する最後の位置を有する。表4は、hFGF19の典型的なN末端部分のポリペプチド配列を示す。hFGF19の他の類似した部分はまた、本明細書において検討される。
【0065】
表4:hFGF19ポリペプチド配列の典型的なN末端部分
【0066】
本発明において、hFGF21ポリペプチド配列のC末端部分の例は、限定されないが、配列番号2の位置8、9、21、22、23、24、35、36、37、38、39、40、47、48、49、51、52、53、54、67、68、69、146、147、148及び149の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最後の位置を有するものを含む。各典型的なC末端部分はまた、配列番号2の181の位置又はおよその1の位置に対応する最後の位置を有する。表5は、hFGF21の典型的なC末端部分のポリペプチド配列を示す。hFGF21の他の類似した部分はまた、本明細書において検討される。
【0067】
表5:hFGF21ポリペプチド配列の典型的なC末端部分
【0068】
本発明のキメラFGF19ポリペプチドの幾つかの実施態様において、その配列のN末端部分は、表4に記載されているhFGF19ポリペプチド配列の部分から選択された配列を含み、その配列のC末端部分は、表5に記載されているhFGF21ポリペプチド配列の部分の中から選択された配列が含まれる。幾つかの実施態様において、選択されたhFGF19のN末端部分及び選択されたhFGF21のC末端部分は、互いに独立して選択される。幾つかの実施態様において、hFGF19のN末端配列部分及びhFGF21のC末端配列部分は、N−末端配列部分のC末端及びC末端配列部分のN末端エンドが、少なくとも1つ、少なくとも2つ又は少なくとも3つ以上の残基を共通に有するように選択される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、FGF19ポリペプチド配列のN末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のC末端部分が、その間に介在するアミノ酸無しに連続している配列を含む。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、FGF19ポリペプチド配列のN末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のC末端部分が、2つの部分の間に共通の1、2、3又はそれ以上の残基を重ね合わせることにより連続して結合される配列を含む。幾つかの代わりの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、FGF19ポリペプチド配列のN末端部分及びキメラFGF21ポリペプチド配列のC末端部分を含み、更に、1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基である介在するスペーサーを含む配列を含む。本発明のキメラFGF19ポリペプチドの典型的な配列は、表6に示されており、そのN末端部分はhFGF19ポリペプチド配列のN末端部分を含み、そのC末端部分はhFGF21ポリペプチド配列のC末端部分を含む。
【0069】
表6:典型的なキメラFGF19ポリペプチド配列
【0070】
III.FGF21ポリペプチド配列に置換したキメラFGF19ポリペプチド
本発明の第三の態様において、キメラFGF19ポリペプチド配列は、第一のポリペプチド配列の一部が第二のポリペプチド配列の一部分で置換された第一のポリペプチド配列を含む。好ましい実施態様において、第一のポリペプチドは、その配列が配列番号1で定義されるヒトFGF19(hFGF19)ポリペプチドである。幾つかの実施態様において、第一のポリペプチド配列は、hFGF19ポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列である。
【0071】
所定の好ましい実施態様において、第二のポリペプチドは、その配列が配列番号2で定義されるヒトFGF21(hFGF21)ポリペプチドである。幾つかの実施態様において、FGF21ポリペプチド配列は、hFGF21ポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列である。
【0072】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、hFGF19ポリペプチド配列を含み、そこにおいて置換されるべき部分は、限定されないが、(i)配列番号1の1、10、11、17、18、21、22、25、26、27、28、40、41、42、43、44、45、52、53、54、56、57、58、59、63、72、73、74、79、80、81、143、144、145及び146の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最初の位置、及び(ii)配列番号1の9、10、24、25、26、27、29、31、32、34、36、39、40、41、42、43、44、51、52、53、55、56、57、58、66、71、72、73、78、79、80、142、143、144、145及び194の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最後の位置を有する部分を含む群からであり、最後の位置が最初の位置のC末端にあり、かつその位置は独立して選択される。表7は、hFGF21のポリペプチド配列の部分に置換されるhFGF19のポリペプチド配列の典型的な部分のリストを示す。
【0073】
表7:hFGF19ポリペプチド配列の典型的な置換部分
【0074】
hFGF19ポリペプチド配列の置換部分はhFGF21ポリペプチド配列の部分で置換されている。hFGF21のポリペプチド配列の典型的な置換部分は、限定されないが、(i)配列番号2の1、8、9、13、14、17、18、21、22、23、24、35、36、37、38、39、40、47、48、49、51、52、53、54、58、67、68、69、74、75、76、136、137、138及び139の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最初の位置、及び(ii)配列番号2の7、8、20、21、22、23、24、25、27、29、31、34、35、36、37、38、39、46、47、48、50、51、52、53、61、66、67、68、73、74、75、135、136、137、138及び181の何れか一の位置又はおよその何れか一の位置に対応する最後の位置を有する部分を含み、最後の位置が最初の位置のC末端にあり、かつその位置は独立して選択される。表8は、hFGF19のポリペプチド配列の一部を置換するためのhFGF21のポリペプチド配列の典型的な部分のリストを示す。
【0075】
表8:hFGF21ポリペプチド配列からの典型的な置換部分
【0076】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、その配列の一部、例えば、表7に記載されるhFGF19ポリペプチド配列の一部分から選択される配列などが、hFGF21のポリペプチド配列の一部分、例えば表8に記載される配列の一部分などで置換されたhFGF19のポリペプチド配列を含む。幾つかの実施態様において、選択されたhFGF19のN末端部分及び選択されたhFGF21のC末端部分は、互いに独立して選択される。幾つかの実施態様において、置換されるべきhFGF19の部分はhFGF19ポリペプチドのN末端残基を含む。幾つかの実施態様において、置換されるべきhFGF19の部分はhFGF19ポリペプチドのC末端残基を含む。幾つかの実施態様において、置換するhFGF21部分はhFGF21ポリペプチドのN末端残基を含む。幾つかの実施態様において、置換するhFGF21部分はhFGF21ポリペプチドのC末端残基を含む。幾つかの実施態様において、置換されるべきhFGF19部分はhFGF19ポリペプチドのN末端残基を含み、置換するhFGF21部分もまたhFGF21ポリペプチドのN末端残基を含む。幾つかの実施態様において、置換されるべきhFGF19部分はhFGF19ポリペプチドのC末端残基を含み、置換するhFGF21部分もまたhFGF21ポリペプチドのC末端残基を含む。
【0077】
幾つかの実施態様において、hFGF19配列部分及びhFGF21配列部分は、それぞれの対応する末端の少なくとも一つ(例えば、hFGF19部分のN末端終端及びhFGF21部分のN末端終端、hFGF19部分のC末端終端及びhFGF21部分のC末端終端、又はその両方)が、前記の対応する終端おいて少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ又はそれ以上の残基を共通に有するように、選択される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、hFGF21ポリペプチド配列の置換部分が、二つの部分の間に共通の1、2、3又はそれ以上の残基を重ね合わせることにより、残りのhFGF19ポリペプチド配列と連続している配列を含む。
【0078】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、hFGF19及びhFGF21ポリペプチド配列が連続的であり、それらの間に付加的な介在するアミノ酸が無いように、hFGF21ポリペプチド配列の一部がhFGF19ポリペプチド配列に置換されている配列を含む。幾つかの代わりの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドの配列は、キメラFGF19ポリペプチド配列は、更にhFGF19及びhFGF21配列の間に1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸残基の介在するスペーサーを含むように、hFGF21ポリペプチド配列の一部がhFGF19ポリペプチド配列に置換されている配列を含む。
【0079】
本発明のキメラFGF19ポリペプチドの典型的な配列が表9に示されており、そこでhFGF19の一部分はhFGF21の一部分で置換されている。
【0080】
表9:典型的なキメラFGF19ポリペプチド配列
【0081】
キメラhFGF19の何れかの幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、hFGF19ポリペプチドの配列に対して少なくとも所定の配列同一性を有する第一のポリペプチド配列を含み、そこで第一ポリペプチド配列の一部は、第二ポリペプチド配列の複数の部分により置換され、その第二のポリペプチド配列は、hFGF21ポリペプチドの配列に対して少なくとも所定の配列同一性を有している。幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは、更に第一のポリペプチドのβ1−β2ループの置換、第一のポリペプチドのβ10−β12セグメントの置換、及び/又は、第一のポリペプチドの5つの残基WGDPI(287配列番号)の第二のポリペプチドのβ1−β2ループによる置換、第二のポリペプチドのβ10−β12セグメント、及び/又は第二のポリペプチドの対応する配列GQVを包含する。幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは更に、FGF19のβ1−β2ループ(FGF19のアミノ酸残基50−57(SGPHGLSS(配列番号288))と、FGF21のβ1−β2ループ(FGF21のアミノ酸残基51−57(DDAQQTE(配列番号289))の置換を含む。幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドは更に、FGF19のβ10−β12セグメント(FGF19のアミノ酸残基146−162(SSAKQRQLYKNRGFLPL(配列番号290))の、FGF21のβ10−β12セグメント(FGF21のアミノ酸残基147−161(PGNKSPHRDPAPRGP(配列番号291))による置換を含む。幾つかの実施態様において、キメラhFGF19ポリペプチドはさらに、FGF19のアミノ酸残基38−42(287)(WGDPI(配列番号287))の、FGF21のアミノ酸残基41−43(GQV)との置換を含む。
【0082】
本発明のキメラFGF19ポリペプチド、及び特に薬学的に活性な組成物、及び本明細書にリストされ又は記載され、又は当該分野で既知である、一以上の疾患や病気等の治療的処置において前記キメラFGF19ポリペプチドを用いる方法は、天然型FGF19(例えば、hFGF19)又は天然型FGF21(例えば、hFGF21)の何れかの使用において所定の利点を有する。
【0083】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、それらの天然の親FGFのいずれか又は両方よりも免疫原性が低い可能性がある。天然型FGF19及び/又はFGF21(例えばhFGF19又はhFGF21など)は、複数の対立遺伝子変異において集団で存在することができ、対立遺伝子型の間で異なる少なくとも一つのアミノ酸残基がある。例えば、hFGF21は成熟形態において位置146で多型を有することが知られており、これは異なる対立遺伝子のロイシン(図2及び配列番号2にあるように)又はプロリンであり得る残基である。このような多型は、治療的組成物として天然型hFGF21の有用性を制限する場合がある。例えば、個体に内在するFGF19は投与したFGF19とは異なる配列を持つFGF19ポリペプチドを個体に投与すると、投与されたhFGF21に対して個体による免疫応答をもたらし得る。従って、幾つかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、hFGF21ポリペプチド配列の一部分及びhFGF19ポリペプチド配列の一部分を含めることができ、ここで両方の部分は、非多型性であるそれぞれのポリペプチド配列の一部分のみを含む。これは、例えば、あるFGFの多型配列部分を類似の他のFGFポリペプチドの非多型部分と置き換えることによって達成することができる。例えば、本発明のキメラFGF19ポリペプチド、例えばhFGF21の一部分が含まれるが位置146が含まれていないcFGF21/19−2(表3を参照)は、この位置で多型を欠いている。このような方法で、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、有利に免疫原性が低い可能性があり、従って、広い範囲の個体に投与するために有利により適切かもしれない。
【0084】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、それらに対応する天然型FGFの何れか又は両方よりも腫瘍形成性が少ない。特に、キメラFGF19ポリペプチドは天然型hFGF19よりも腫瘍形成性が少ない可能性がある。上記で議論された天然型hFGF19は、FGFR4への結合を介して潜在的な腫瘍形成活性を示している。この腫瘍形成活性は、hFGF21のように、FGFR1c、FGFR2c、及び/又はFGFR3cへのクロトーβ依存的結合を介してもたらされるhFGF19の代謝的効果から分離可能なように見える。幾つかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、FGFR4エフェクターモチーフを含まず、代わりにhFGF21由来の対応する配列と置換されたhFGF19ポリペプチド配列の一部を含む。幾つかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、もはや実質的にFGFR4に結合せず、及び/又は実質的にFGFR4を活性化しない。幾つかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、クロトーβ非依存的にもはや実質的にFGFR4等の受容体に結合せず、及び/又は実質的に該受容体を活性化しない。このような方法で、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、有利に腫瘍形成性が少ない可能性があり、従って、広い範囲の個体に投与するために有利により適切である可能性がある。
【0085】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、成長ホルモン(GH)耐性を生じないか、又はそれらに対応する天然型FGFの何れか又は両方よりも実質的に少ないGH耐性活性を示す場合がある。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、天然型hFGF21などの天然型FGF21より少ないGH耐性活性を有する可能性がある。GHは通常、インスリン様成長因子1(IGF−1)によって媒介される成長及び代謝的効果を有する。その受容体へのGHの結合はヤヌスキナーゼ2(JAK2)の活性化をもたらし、その後STAT5タンパク質をリン酸化する。リン酸化STAT5は核へ移行し、IGF−1の発現を促進する遺伝子調節応答エレメントに結合する。
【0086】
GHの作用は、FGF21濃度の増加によるか又は長期の飢餓や断食により個体において鈍化され得、それはまたFGF21の濃度を増加させる。個体におけるGH耐性の影響は、エネルギー節約、増加した無気力、体温の低下、身体活動の減少、成長抑制、除脂肪体重の減少、ケトン体合成の誘導を含む。天然型hFGF21は例えば、通常はGHによって誘導されるIGF−1のレベルを減らすことにより、GH耐性を生じる。理論に縛られることなく、hFGF21のこのGH耐性活性が、リン酸化STAT5ポリペプチドの量を減らすその能力によって媒介されることがあり、その結果、核へのリン酸化STAT5の移動を減らし、従ってIGF−1の発現を減らし、それによりGHの作用に抵抗することができる。
【0087】
幾つかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、リン酸化STAT5ポリペプチドの量を減らさないか、又は実質的に減らさない。このような方法で、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、少ないGH抵抗活性を示すか、又は実質的にGH抵抗活性を示さず、従って、広い範囲の個体における投与において有利により適している場合がある。
【0088】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは実質的に細胞の足場非依存性増殖を促進しない。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは実質的に足場非依存性増殖を必要とする環境において、代謝活性の増加及び/又は細胞の増殖を促進しないことがある。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは天然型FGF19の対応する足場非依存性増殖促進よりも少ない程度に細胞の足場非依存性増殖を促進する可能性がある。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、天然型FGF19の対応する作用よりも少ない程度に足場非依存性増殖を必要とする環境における代謝活性の増加及び/又は細胞の増殖を促進する可能性がある。足場非依存性増殖は、形質転換細胞の定義される特徴の一つであるため、細胞の足場非依存性増殖を促進しないか、又は足場非依存性増殖を必要とする環境において代謝活性の増加及び/又は細胞の増殖を実質的に促進しないような本発明のキメラFGF19ポリペプチドは形質転換細胞の増殖及び/又は代謝活性を促進又は差次的に増加させることができなくなる可能性があり、従って、広範囲の個体に投与するために有利により適切である可能性がある。
【0089】
IV.定義
本明細書で使用される「FGF19ポリペプチド」、「FGF19タンパク質」、「FGF19」なる用語は、線維芽細胞増殖因子19ファミリーのメンバーの天然型配列と同じであるアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。そのようなファミリーのメンバーは、配列番号1及び図1により与えられるヒトFGF19(hFGF19)の194アミノ酸配列を含む。FGF19ポリペプチドは、自然界から単離することができるか、又は組換え及び/又は合成手段により生産することができる。FGF19ポリペプチドは、特に、天然に存在する切断型又は分泌型、天然に存在する変異体型(例えば、選択的スプライシング型)、及び天然に存在するFGF19の対立遺伝子変異体を網羅する。FGF19ポリペプチドはまた、特にプロセスされてないFGF19及びプロセスされたFGF19の両方の型、例えば、配列番号3及び図1に与えられるプレヒトFGF19ポリペプチドの216アミノ酸配列などを包含する。
【0090】
本明細書で使用される「FGF21ポリペプチド」、「FGF21タンパク質」、「FGF21」なる用語は、線維芽細胞増殖因子21ファミリーのメンバーの天然型配列と同じであるアミノ酸配列を有するポリペプチドを包含する。そのようなファミリーのメンバーは、配列番号2及び図2により与えられるヒトFGF21(hFGF21)の181アミノ酸配列を含む。FGF21ポリペプチドは、自然界から単離することができるか、又は組換え及び/又は合成手段により生産することができる。FGF21ポリペプチドは、特に、天然に存在する切断型又は分泌型、天然に存在する変異体型(例えば、選択的スプライシング型)、及び天然に存在するFGF21の対立遺伝子変異体を網羅する。FGF21ポリペプチドはまた、特にプロセスされてないFGF21及びプロセスされたFGF21の両方の型、例えば、配列番号4及び図2に与えられるプレヒトFGF21ポリペプチドの209アミノ酸配列などを包含する。
【0091】
本明細書で使用される「FGFポリペプチド」及び「FGFタンパク質」なる用語はFGFファミリーのメンバーの天然型配列を有するポリペプチド、例えば、ヒトFGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、及びその哺乳動物のホモログなどを包含する。与えられたFGFポリペプチドの天然型配列は、自然界から単離することができるか、又は組換え及び/又は合成手段により生産することができる。与えられたFGFの天然型配列は、特に、天然に存在する切断型又は分泌型、天然に存在する変異体型(例えば、選択的スプライシング型)、天然に存在するFGF21の対立遺伝子変異体、及びプロセスされていないか及びプロセスされたFGFの両方の型を網羅する。
【0092】
本明細書で使用される「キメラポリペプチド」及び「キメラタンパク質」なる用語は、第一のポリペプチド配列の完全長配列の少なくとも一部及び第二のポリペプチド配列の完全長配列の少なくとも一部を含む配列を有するポリペプチドを包含し、ここで第一及び第二のポリペプチドは、異なるポリペプチドである。キメラポリペプチドはまた、同じポリペプチドに由来する2つ又はそれ以上の非連続部分を含むポリペプチドを包含する。キメラポリペプチドはまた、少なくとも一つの置換を有するポリペプチドを包含し、ここでキメラポリペプチドは、第一のポリペプチド配列の一部分が第二のポリペプチド配列の一部分で置換された第一のポリペプチド配列を含む。
【0093】
与えられたポリペプチド配列に関して本明細書中で使用される「部分」なる用語は、所定のポリペプチドの全長配列よりも短い与えられたポリペプチド配列の連続長を指す。与えられたポリペプチドの部分は、その最初の位置と最終位置で定義され得、最初と最後の位置の各々は、与えられたポリペプチドの配列内の位置に対応し、最初の位置に対応する配列の位置は、最終位置に対応する配列の位置のN末端に位置し、その部分の配列は、最初の位置に対応する配列の位置で始まり、最終の位置に対応する配列の位置で終了する、与えられたポリペプチドのアミノ酸の連続配列である。ある部分はまた、所与のポリペプチド配列の中の位置を参照することにより、及び参照された位置に対する残基の長さで定義される場合があり、それによりその部分の配列は定義された長さを持ち、かつ定義された位置を参照して所与のポリペプチド中に位置する所与のポリペプチドにおけるアミノ酸の連続した配列である。
【0094】
所与のポリペプチド配列の「N末端部分」なる用語は、所与のポリペプチド配列のN末端残基又はその近くで始まる所与のポリペプチド配列の連続した長さである。所与のポリペプチドのN末端部分は長さによって定義することができる。同様に、所与のポリペプチド配列の「C末端部分」なる用語は、所与のポリペプチド配列のC末端残基又はその近くで終了する所与のポリペプチド配列の連続した長さである。所与のポリペプチドのC末端部分は長さによって定義することができる。
【0095】
本明細書中で使用される場合には、「キメラFGFポリペプチド」及び「キメラFGFタンパク質」なる用語は、少なくとも第一のFGFポリペプチド配列の部分及び第二のFGFポリペプチド配列の部分を含む配列を有するポリペプチドを包含し、ここで第一及び第二のFGFポリペプチドは互いに異なる。キメラFGFポリペプチドはまた、同じFGFに由来する2つ又はそれ以上の非連続部分を含むポリペプチドを包含する。キメラFGFポリペプチドはまた、少なくとも一つの置換を有するポリペプチドを包含し、そのキメラFGFポリペプチドは、第一のFGFポリペプチド配列の一部分が第二のFGFポリペプチド配列の一部分により置換された第一のFGFポリペプチド配列を含む。
【0096】
本明細書中で使用される場合には、「キメラFGF19ポリペプチド」及び「キメラFGF19タンパク質」なる用語は、少なくとも第一のFGF19ポリペプチド配列の部分及び第二のポリペプチド配列の部分を含む配列を有するキメラFGFポリペプチドを包含する。例えば、キメラFGF19ポリペプチドは、第二のポリペプチド配列がFGF21ポリペプチド配列であるポリペプチドを包含する。
【0097】
キメラFGF19ポリペプチドはまたFGF19ポリペプチド配列に由来する2つまたはそれ以上の非連続部分を含むポリペプチドを包含する。キメラFGF19ポリペプチドはまた、少なくとも一つの置換を有するポリペプチドを包含し、そこではキメラFGF19ポリペプチド配列は、FGF19ポリペプチド配列の一部が第二のポリペプチド配列の一部分で置換されたFGF19ポリペプチド配列を含む。このような場合には、キメラFGF19ポリペプチドは、置換する部分がFGF21ポリペプチド配列の一部であるポリペプチドを包含する。
【0098】
キメラFGF19ポリペプチドはまた、その配列がFGF19ポリペプチド配列又は第二のポリペプチド配列、例えばFGF21ポリペプチド配列のいずれかに由来した部分のみからなるポリペプチドを包含する。特に断りのない限り、キメラFGF19ポリペプチドは、キメラFGF19ポリペプチド配列内の他の配列の部分に関するFGF19ポリペプチド配列の各順序又は位置に限定されず、又は特に明記しない限り、それらを意味しない。
【0099】
本明細書において同定される所与のポリペプチドに関して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN−2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0100】
本明細書における目的のために、所与のアミノ酸配列Aの所与のアミノ酸配列Bに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して所定の%アミノ酸配列同一性を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aとして表現されうる)は以下のように計算される:分数X/Yの100倍であり、ここでXは所与の配列アラインメントプログラムによりA及びBのプログラムによるアラインメントにおいて、完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、YはBのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性はBのAに対する%アミノ酸配列同一性と等しくならないことは理解されるであろう。
【0101】
本明細書において同定されるポリペプチドをコード化する核酸に関して「パーセント(%)核酸配列同一性」とは、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、ポリペプチドをコード化する核酸におけるヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN−2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0102】
本明細書における目的のために、所与の核酸配列Cの所与の核酸配列Dに対する%核酸配列同一性(あるいは、所与の核酸配列Dに対して所定の%核酸配列同一性を有する又は含む所与の核酸配列Cとして表現されうる)は以下のように計算される:分数W/Zの100倍であり、ここでWは所与の配列アラインメントプログラムによりC及びDのプログラムによるアラインメントにおいて、完全な一致としてスコア化されたヌクレオチドの数であり、ZはDのヌクレオチドの総数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さに等しくない場合、CのDに対する%核酸配列同一性はDのCに対する%核酸配列同一性と等しくならないことは理解されるであろう。
【0103】
「単離された」とは、本明細書で開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。好ましくは、単離されたポリペプチドは、それが自然に結合するすべての成分との結合から解放されている。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端或いは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、或いは、(2)クーマシーブルー或いは好ましくは銀染色を用いた非還元或いは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、ポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも一つの精製工程により調製される。
【0104】
「単離された」ポリペプチドコード化核酸は、同定され、ポリペプチドをコードする核酸の天然源に通常付随している少なくとも一つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、それが自然に結合するすべての成分との結合から解放されている。単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然に見出される形態或いは設定以外のものである。ゆえに、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在するポリペプチドコード化核酸分子とは区別される。しかしながら、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にあるポリペプチドを通常発現する細胞に含まれるポリペプチドをコード化する核酸分子を含む。
【0105】
「コントロール配列」なる用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0106】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列或いは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合しているDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みとり段階にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター或いはリンカーが使用される。
【0107】
「抗体」なる用語は最も広義に使用され、特に例えば単一のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多重エピトープ特異性を持つ抗体組成物、単鎖抗体、及び抗体の断片を包含する(下記を参照)。本明細書で用いる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。
【0108】
ポリペプチド、抗体、オリゴペプチド、又は他の有機分子の標的分子への抗体の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的な」といった用語は、非特異的な相互作用とは測定可能な差異を有する結合を意味する。特異的結合は、一般的に結合活性を持たずに類似構造の分子であるコントロール分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、標的、例えば標識していない過剰な量の標的に類似したコントロール分子との競合により決定することができる。この場合、プローブに対する標識した標的の結合が、標識していない過剰な量の標的により競合的に阻害された場合、特異的結合が示される。本明細書で用いる特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的である」といった用語は、例えば、少なくともおよそ10−4M、あるいは少なくともおよそ10−5M、あるいは少なくともおよそ10−6M、あるいは少なくともおよそ10−7M、あるいは少なくともおよそ10−8M、あるいは少なくともおよそ10−9M、あるいは少なくともおよそ10−10M、あるいは少なくともおよそ10−11M、あるいは少なくともおよそ10−12M、又はそれ以上の対標的Kdを有する分子によって提示されうる。一実施態様では、「特異的な結合」なる用語は、分子が他のいかなるポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合しないで特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0109】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングに必要な温度が高くなり、プローブが短くなるとそれに必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合に、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション配列の間で所望される相同性の程度が高くなればなるほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにすることになり、低い温度はストリンジェントを低下させることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明については、Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience Publishers, 1995)を参照のこと。
【0110】
ここで定義される「ストリンジェント条件」又は「高度のストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄に低イオン強度及び高温度を用いる、例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用い、例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム;又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%の硫酸デキストランを用い、42℃で、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中にて洗浄し、ついで55℃で、EDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を用いるものによって同定される。
【0111】
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 1989)に記載されているように同定され、上記のストリンジェントより低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェント条件は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中にて37℃での終夜インキュベーション、次いで1×SSC中にて約37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識する。
【0112】
「エピトープ標識」なる用語は本明細書で用いる場合、「タグポリペプチド」に融合したポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するのに十分な残基を有し、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜50のアミノ酸残基(好ましくは、約10〜20の残基)を有する。
【0113】
本明細書で用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と組み合わせる抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合部位以外の所望の結合特異性を持つアミノ酸配列(即ち「異種」)及び免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物である。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列を含む。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0114】
本明細書での目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるFGF19ポリペプチド及び/又はFGF21ポリペプチド、特に天然又は天然に生じるhFGF19ポリペプチド及び/又はhFGF21ポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するキメラFGF19ポリペプチドを意味する。「生物学的」活性とは、天然型の又は天然に存在するFGF19ポリペプチド及び/又はFGF21ポリペプチドが保有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力以外の天然型の又は天然に存在するFGF19ポリペプチド及び/又はFGF21ポリペプチドによって引き起こされる生物学的機能(抑制、刺激又は協調のいずれか)を指す。「生物学的」活性は天然型又は天然に存在するFGF19ポリペプチド及び/又はFGF21ポリペプチドの細胞性もしくは生化学的機能を参照することがある。「免疫学的」活性は、天然型又は天然に存在するFGF19ポリペプチド及び/又はFGF21ポリペプチドが保有する抗原エピトープに対する抗体の産生を誘導する能力を指す。好ましい生物学的活性は、以下の典型的な活性のいずれか又は複数を含む:個体の代謝(又は代謝率)の増加、個体の体重の減少、個体の脂肪の減少、脂肪細胞へのグルコース取り込みの減少、脂肪細胞からのレプチン放出の増加、個体のトリグリセリドの低下、個体の遊離脂肪酸の減少、同族FGF受容体へのクロトーβ依存的結合、同族FGF受容体へのクロトーβ非依存的結合。FGF19及び/又はFGF21ポリペプチドの活性の幾つかは直接ポリペプチドによって誘導され、一部は間接的に誘導されることが理解されるが、しかし各々はFGF19及び/又はFGF21ポリペプチドの存在の結果であり、そうでなければポリペプチドの非存在下でその結果を持たないであろう。
【0115】
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、本明細書に開示した天然型又はキメラポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全にブロック、阻害、又は中和する任意の分子が含まれる。同様に、「アゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、本明細書に開示した天然型又はキメラポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子が含まれる。適切なアゴニスト又はアンタゴニスト分子には、特にアゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、断片、又は天然型ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、ペプチド、小有機分子等が含まれる。ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法は、ポリペプチドと候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子を接触させ、通常はポリペプチドに付随している一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することが含まれ得る。
【0116】
本明細書で使用される、「治療」又は「治療する」とは、臨床的結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果としては、限定されないが、次のいずれかまたは複数を含む:疾患から生じる1つまたは複数の症状の減少、疾患の程度の減少、疾患の安定化(例えば、病気の悪化を予防又はは遅延)、病気の進行の遅延又は減速、疾患状態を寛解、病気を治療するために必要な一以上の他の薬の投与量の減少、及び/又は生活の質の向上。
【0117】
本明細書で使用される、進行の「遅延」は、疾患の進行を延期する(defer)、妨げる(hinder)、遅らせる(slow)、妨害する(retard)、安定化する(stabilize)、及び/又は延期する(postpone)ことを意味する。この遅延は、疾患の履歴及び/又は治療を受けている個体に応じて、時間の長さを変えることができる。
【0118】
幾つかの実施態様において、本明細書に記載された治療法は、病気の1つまたは複数の症状を改善する(例えば、その発生率を減らす、その持続時間を短縮する、その重症度を低減するか又は緩和する)。
【0119】
「症状」とは、個体が経験した、任意の病的な現象、又は構造、機能又は感覚における正常からの逸脱である。
【0120】
本明細書で開示されたポリペプチド、抗体、アゴニスト、又はそのアンタゴニストの「有効量」とは、具体的に述べられた目的を遂行するのに十分な量である。「有効量」は述べられた目的に関連して、経験的に、ルーチン的に決定することができる。
【0121】
「治療的有効量」なる用語は、個体又は哺乳動物において疾患又は障害を「治療」するに有効な抗体、ポリペプチド、又はその他の薬剤の量を指す。本明細書中の「治療する」の定義を参照のこと。
【0122】
「慢性」投与とは、初期の治療効果(活性)を長期間にわたって維持するようにするために、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤の投与を意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
【0123】
「哺乳動物」とは、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、ヒト、家畜用及び農場用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0124】
「個体」な任意の哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0125】
「肥満」とは、身長(メートル)の2乗あたりの体重(kg)として計算され、少なくとも25.9の肥満度指数(BMI)を哺乳動物が持つ状態を指す。従来、正常体重を持つ人たちは19.9から25.9未満のBMIを持つ。本明細書において肥満とは、遺伝又は環境を問わず、何らかの原因による可能性がある。肥満の結果であるか若しくは肥満の原因である可能性がある障害の例としては、過食や過食症、多嚢胞性卵巣疾患、頭蓋咽頭腫、プラダーウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、II型糖尿病、GH−欠損個体、正常変異低身長、ターナー症候群、及び代謝活性の低下又は総除脂肪体重の割合として安静時エネルギー消費の減少を示す他の病的状態、例えば、急性リンパ性白血病を持つ子どもが含まれる。
【0126】
「肥満に関連する状態(病気)」とは肥満による結果か又は肥満により悪化した状態を指し、限定されないが、例えば、感染症など皮膚疾患、静脈瘤、黒色表皮症、及び湿疹、運動不耐性、糖尿病、インスリン抵抗性、高血圧、高コレステロール血症、胆石症、変形性関節症、整形外科外傷、血栓塞栓症、癌、及び冠状動脈(または心血管系)心臓病、特に個体における高トリグリセリド及び遊離脂肪酸に関連付けられた心血管の状態を指す。
【0127】
一以上の更なる治療薬と組み合わせるか又は併用する投与は、同時、並行、連続、任意の順序の逐次的な投与を含む。
【0128】
本明細書で用いられる「担体」は、薬学的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる服用量及び濃度でそれらに曝露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。しばしば生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
【0129】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残りの「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は抗原結合性に関して一価である、すなわち単一の抗原-結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')抗体断片は、もともとFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
【0130】
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1本の重鎖及び1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。各可変ドメインの2つのCDRは相互作用してVH−VL2量体の表面の抗原結合を定める。まとめて、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(又は抗原に特異的なCDRを3つしか含まないFvの半分)でさえ、結合部位全体より親和性は低いものの、抗原を認識して結合する能力を持つ。
【0131】
「Fc」断片はジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域中の配列によって決定され、その領域はまた所定の型の細胞で見出されたFc受容体(FcR)によって認識される部分である。
【0132】
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含む。Fab断片は、抗体のヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されていることでFab '断片とは異なる。
【0133】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
【0134】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンには5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、かつこれらの幾つかは更に、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。
【0135】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にするようにポリペプチドリンカーをVH及びVLドメイン間に更に含む。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol.113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp.269-315 (1994)を参照のこと。
【0136】
「ダイアボディ(diabodies)」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を意味し、その断片は同じポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは強制的に他の鎖の相補的ドメインと対形成して、二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に十分に記載されている。
【0137】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定されかつ分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、抗体の診断又は治療的な使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、タンパク質は、(1)例えばローリー法で測定した場合95重量%を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15のN末端あるいは内部アミノ酸配列の残基を得るのに充分な程度に、又は、(3)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いた還元条件下又は非還元条件下でSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。抗体の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツでの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
【0138】
「標識」なる語は、ここで用いられる場合、「標識」抗体が生成されるように、抗体に直接又は間接的に抱合している検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識は、それ自身検出可能でもよく(例えば、放射性標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変換を触媒し得る。
【0139】
「固相」とは、本発明の抗体がそれに付着することのできる非水性マトリクスを意味する。ここに意図する固相の例は、部分的又は全体的に、ガラス(例えば、孔制御ガラス)、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンから形成されたものを含む。所定の実施態様において、内容に応じて、固相はアッセイプレートのウェルを構成することができ;その他では精製カラム(例えばアフィニティークロマトグラフィーカラム)とすることもできる。また、この用語は、米国特許第4275149号に記載されたような、別個の粒子の不連続な固相も包含する
【0140】
「リポソーム」は、種々の型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小型の小胞であり、哺乳動物への薬物(キメラFGF19ポリペプチド又はその抗体など)の送達に有用である。リポソームの成分は、通常は生体膜の脂質配列に類似する二層形式に配列させる。
【0141】
本明細書中で「およそ」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に対する変動を含む(かつ記載する)。例えば、「およそX」との記載には「X」の記載が含まれる。
【0142】
本明細書及び添付の特許請求の範囲中で用いられる単数形「a」、「or」及び「the」には、文中で明確な記載がない限り複数形も含まれる。本発明の態様及び変形は、態様及び変形「からなる」及び/又は「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0143】
V.キメラFGF19変異体
本明細書に記載のキメラFGF19ポリペプチドに加えて、キメラFGF19変異体ポリペプチド(または「キメラFGF19変異体」)を調製することができることが検討される。キメラFGF19変異体は、キメラ又は天然型のFGF19ポリペプチド又は FGF21ポリペプチドをコードするDNAに適切なヌクレオチド変化を導入することにより、及び/又は所望のキメラFGF19変異体の合成により調製することができる。当業者は、アミノ酸の変化は、例えばグリコシル化部位の数又は位置を変えたり、又は膜の固定特性を変化させるなど、キメラFGF19変異体の翻訳後プロセスを変える場合があるが分かるであろう。
【0144】
本発明のキメラFGF19ポリペプチド又はその様々なドメインの変異は、例えば、米国特許第5364934号に記載の保存的及び非保存的突然変異のための技術及びガイドラインのいずれかを使用するとにより作成することができる。変異は、キメラFGF19ポリペプチドのアミノ酸配列の変化をもたらすキメラFGF19ポリペプチドをコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であり得る。変異は、天然型FGF19又はFGF21ポリペプチドから誘導されるキメラFGF19ポリペプチドをコードする一以上のコドンに関してであり得る。必要に応じて、変異はキメラFGF19ポリペプチドの1つ又は複数のドメインにおける何れか別のアミノ酸と少なくとも1つのアミノ酸の置換によるものである。所望の活性に不利な影響を与えずにどのアミノ酸残基が挿入され、置換され又は欠失されうるかを決めるガイダンスは、キメラFGF19ポリペプチドの配列を相同性のある既知のタンパク質分子のそれと比較すること、及び高い相同性の領域において作られたアミノ酸配列の変化の数を最小限にすることにより見いだされ得る。アミノ酸置換は、例えば、ロイシンのセリンによる置換、すなわち保存的アミノ酸置換など、類似の構造及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で一つのアミノ酸を置換する結果である。挿入又は欠失は、任意で約1から5のアミノ酸の範囲内であり得る。許容された変異は、配列中に体系的に挿入、欠失又は置換を作成すること、及び全長又は成熟した天然型配列により示される活性について得られた変異体を試験することによって決定されうる。
【0145】
キメラFGF19ポリペプチド断片(「又はキメラFGF19断片」)が本明細書で提供される。そのような断片は、例えば、全長の天然型タンパク質と比較した場合、N末端又はC末端で切断される場合があり、又は内部の残基を欠いている場合がある。所定の断片はキメラFGF19ポリペプチドの所望の生物学的活性のために必須でないアミノ酸残基を欠いている。
【0146】
キメラFGF19断片は数多くの従来技術うちのいずれかによって調製することができる。所望のペプチド断片は化学的に合成され得る。別のアプローチは、酵素消化により、例えば、特定のアミノ酸残基によって定義された位置でタンパク質を切断することが知られている酵素によりタンパク質を処理することにより、又は適当な制限酵素でDNAを消化し、かつ所望の断片を単離することによりキメラFGF19断片を生成することを含む。さらに別の適切な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望のポリペプチド断片をコードするDNA断片を分離して増幅することを含む。DNA断片の所望の末端を定義するオリゴヌクレオチドはPCRにおける5’及び3’プライマーをPCRで使用される。好ましくは、キメラFGF19ポリペプチド断片は、天然型FGF19ポリペプチド、例えば図1(配列番号1)に示されるhFGF19ポリペプチド、又は天然型FGF21ポリペプチド、例えば図2(配列番号2)に示されるhFGF21と少なくとも1つの生物学的活性及び/又は免疫学的活性を共有する。
【0147】
特定の実施態様において、好ましい置換の見出しのもと、関心のある保存的置換は表10に示される。そのような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、より実質的な変化、アミノ酸のクラスを参照して、表10で命名さるか又は下記に更に記載されるような典型的な置換が導入されその産物が検査される。
【0148】
キメラFGF19ポリペプチドの機能又は免疫学的同一性の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はヘリックスの立体構造、(b)標的部位の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩の維持に対する効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン,met,ala,val,leu,ile;
(2)中性の親水性:cys,ser,thr;
(3)酸性:asp,glu;
(4)塩基性:asn,gln,his,lys,arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly,pro;及び
(6)芳香族:trp,tyr,phe.
【0149】
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。またそのように置換された残基は、保存的置換部位、より好ましくは残された(非保存)部位に導入されうる。
【0150】
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発などの当該技術分野において公知の方法を用いて実施することができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zoller等, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]又は他の既知の技術をクローニングしたDNAに実施してキメラFGF19変異体ポリペプチドをコードするDNAを作成することもできる。
【0151】
また、隣接配列に沿って1つ又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素以降の側鎖が脱離しており変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。さらに、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
【0152】
VI.キメラFGF19の修飾
FGF19ポリペプチドの共有結合による修飾は本発明の範囲内に含まれる。1つのタイプの共有結合による修飾には、FGF19ポリペプチドの標的アミノ酸残基を、FGF19ポリペプチドの選択的側鎖またはN末端またはC末端残基と反応可能な有機誘導体化物質と反応させることが含まれる。二官能性物質での誘導体化は、例えば、抗体の精製方法での使用のために、キメラFGF19ポリペプチドを水不溶性の支持基質または表面に架橋するのに有用であり、また逆も然りである。一般に用いられる架橋剤には、例えば1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸とのエステル、3,3’-ジチオビス−(スクシンイミジルプロピオナート)のようなジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタンのような二官能性マレイミドおよび、メチル-3-((p-アジドフェニル)-ジチオ)プロピオイミデートのような物質が含まれる。
【0153】
他の修飾には、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基をそれぞれ対応するグルタミル残基及びアルパルチル残基に脱アミド化し、プロリンおよびリジンをヒドロキシル化し、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基をリン酸化し、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基をメチル化し(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N末端アミンをアセチル化し、及び任意のC末端カルボキシル基をアミド化することが含まれる。
【0154】
本発明の範囲内に含まれる、キメラFGF19ポリペプチドの、別のタイプの共有結合による修飾は、このポリペプチドの天然グリコシル化パターンを変更することを含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、ここでの目的のため、対応する天然型FGF19ポリペプチド及び/又はFGF21ポリペプチド配列中に見られる1つまたはそれ以上の炭水化物部分を(内在するグリコシル化部位を除去することによるか、又は化学的及び/又は酵素的手段によりグリコシル化を除去するかの何れかにより)欠失させること、及び/又は、天然型FGF19ポリペプチド及び/又はFGF21ポリペプチド配列に存在しない1つまたはそれ以上のグリコシル化部位を加えることを意味するものとする。更に、このフレーズには存在する様々な糖質部分の性質及び比率の変更を伴う天然型タンパク質のグリコシル化における質的な変化が含まれる。
【0155】
キメラFGF19ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加はアミノ酸配列の変更を伴ってもよい。この変更は、例えば、一又は複数のセリン又はトレオニン残基のキメラFGF19ポリペプチド(O-結合グリコシル化部位)への付加、又は置換によってなされてもよい。キメラFGF19ポリペプチドアミノ酸配列は、場合によっては、DNAレベルでの変化、特に、キメラFGFポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基において変異させ、所望のアミノ酸を翻訳するようにコドンを生成することによって変更されてもよい。
【0156】
キメラFGF19ポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に公開された国際公開第87/05330号、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
【0157】
キメラFGF19ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、或いはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddi等, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、及びEdge等, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
【0158】
本明細書中で開示されるキメラFGF19ポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、キメラFGF19ポリペプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つに対する、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載された方法での結合を含む。
【0159】
また、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したキメラFGF19ポリペプチドを融合する方法で修飾してもよい。
【0160】
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとキメラFGF19ポリペプチドとの融合を含む。エピトープ標識は、キメラFGF19ポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。そうしたキメラFGF19ポリペプチドのエピトープ標識形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープ標識の提供は、抗タグ抗体又はエピトープ標識に結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってキメラFGF19ポリペプチドを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例として、ポリ-ヒスチジン(ポリ-his)又はポリ-ヒスチジン-グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Fieldら, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397(1990)]を含む。
【0161】
それに代わる実施態様において、本発明のポリペプチドはキメラFGF19ポリペプチドと免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体は免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのFc部分のアナログ、及び免疫グロブリンのFc部分の一つ又は複数の断片であり得る。幾つかの実施態様において、免疫グロブリンは、IgG−1、IgG−2、IgG−3、IgG−4、IgA−1、IgA−2、IgE、IgD及びIgMから成る群から選択される。
【0162】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドのC末端及びFc部分のN末端が融合される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドのN末端及びFc部分のC末端が融合される。幾つかの実施態様において、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3領域、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の生産については1995年6月27日発行の米国特許第5428130号も参照のこと。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドのC末端は、リンカーを介してFc部分のN末端に融合し、そのリンカーは[Gly]リンカー、[GlySer]リンカー及び[GlySer]リンカーから選択され、nは1−30の整数でmは1−6の整数である。
【0163】
VII.キメラFGF19ポリペプチドを用いた使用および方法
本明細書に記載のキメラFGF19ポリペプチド及びそのモジュレーターはまた、治療剤として用いることができる。本発明のキメラFGF19ポリペプチド及びそれらのモジュレーターは、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができ、それによってこのキメラFGF19ポリペプチドは、薬学的に許容される担体ビークルとの混合物中で結合される。治療的製剤は凍結乾燥製剤又は水溶液の形で任意の生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤とともに所望の純度を有する活性成分を混合することにより貯蔵のために調製される(RemingtonによるPharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;TWEENTM、PLURONICSTM又はPEG等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0164】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは凍結乾燥及び再構成の前又は後で、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
【0165】
本明細書の治療的組成物は、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静注溶液バッグまたはバイアルなど、無菌のアクセスポートを有する容器中へ一般に配される。
【0166】
投与経路は、例えば、静注、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内または病巣内経路、局所投与、または徐放システムによるによる注射または点滴など既知の方法と一致する。
【0167】
本発明の医薬組成物の用量及び所望の薬剤濃度は、想定する特定の使用によって変化しうる。適当な用量又は投与経路の決定は、十分に通常の医師の技術の範囲内である。動物実験は、ヒトの治療のための有効量の決定について信頼性のあるガイドラインを与える。有効量の異種間スケーリングは、Mordenti, J. and Chappell, W. The use of interspecies scaling in toxicokinetics In Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi等, Eds., Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96によって主張される原則に従って行うことができる。
【0168】
FGF19ポリペプチドのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kg、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日とすることができる。特定の用量及び送達方法についての指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4657760号、第5206344号、又は第5225212号を参照のこと。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で送達することが必要であることが予想される
【0169】
キメラFGF19ポリペプチド又はモジュレーターの徐放性投与が、キメラFGF19ポリペプチド又はモジュレーターの投与を必要とする任意の疾患又は障害の治療に適した放出特性を有する製剤が望まれる場合、マイクロカプセル化が熟考される。徐放のための組み換えタンパク質のマイクロカプセル封入は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMNrpg120を用いて成功裏に行った。Johnson et al., Nat. Med., 2:795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27:1221-1223 (1993); Hora et al., Bio/Technology 8:755-758 (1990); Cleland, 「ポリ乳酸ポリグリコール酸マイクロスフェアシステムを使用する単一の免疫化ワクチンの設計及び生産」Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell 及びNewman編集, (Plenum Press: New York, 1995),頁439-462; 国際公開第97/03692号、国際公開第96/40072号、国際公開第96/07399、及び米国特許第5654010号。
【0170】
これらのタンパク質の徐放製剤は、ポリ-乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で迅速に代謝される。さらに、このポリマーの分解性は、分子量及び組成に依存して数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis.「乳酸/グリコリドポリマーからの生物活性剤の制御放出」:M. Chasin and R. Langer (編集), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), 頁1-41.本明細書に与えられるキメラFGF19ポリペプチドを含有する治療剤及び組成物は、多くの用途で使用することができる。その用途には肥満又は肥満に関連した病気である個体の治療が含まれる。一態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、病気を治療するために有効な量でそれを必要とする個体に投与される。好ましくは、病気は治療されるべき以下の少なくとも一つを必要とするものである:血糖の減少、代謝の増加、体重の減少、体脂肪の減少、トリグリセリドの減少、遊離脂肪酸酸の減少、脂肪細胞からのグルコース放出増加及び/又は脂肪細胞からのレプチン放出の増加。これらの各パラメータは標準的な方法により、例えば、代謝率を決定するために酸素消費量を測定し、体重を決定するためのスケールを使用して、及び脂肪を決定するために大きさを測定することにより測定することができる。さらにトリグリセリドの存在及び量、遊離脂肪酸、グルコース及びレプチンは、標準的な方法により決定することができる。本適用は、1型糖尿病、2型糖尿病、高血糖、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、脳卒中、骨粗鬆症、変形性関節症、退行性関節疾患、筋萎縮、サルコペニア、除脂肪体重の減少、脱毛、しわ、疲労の増大、スタミナの減少、心機能低下、免疫系の機能障害、癌、パーキンソン病、老人性痴呆症、アルツハイマー病及び認知機能低下の何れか又は複数を持つ個体を治療することを含む。
【0171】
キメラFGF19ポリペプチド、及びキメラFGF19ポリペプチドを含む組成物は、好ましくはインビボで使用される。しかし、後述するように、キメラFGF19ポリペプチドのモジュレーターのスクリーニングについては、下記に記載される方法のように投与はインビトロで良い。しかし、キメラFGF19ポリペプチドのモジュレーターはまた、動物モデル及び個体由来の試料の使用によっても同定されうることが理解される。
【0172】
本発明は、本発明のキメラFGF19のポリペプチド又はその薬学的組成物が、第二の薬剤と組み合わせて個体に投与される態様をも含み、ここで第二の薬剤は好ましくは薬理作用のある物質である。いくつかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物は、第二の薬剤の治療的有効量との組み合わせて治療的効果量で投与される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物は、第二の薬剤と組み合わせて投与され、すなわちそれぞれの投与の期間は、単一の投与レジメンの一部である。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物、及び第二の薬剤は、同時に投与され、すなわち、投与のそれぞれの期間は互いに重複している。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物、及び第二の薬剤は、非並行に投与され、すなわち、投与のそれぞれの期間は互いに重複していない。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物、及び第二の薬剤は、連続的に投与され、すなわち、キメラFGF19ポリペプチド又は薬学的組成物は、第二の薬剤の投与の前、及び/又は後に投与される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物、及び第二の薬剤は別個の組成物として同時に投与される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物、及び第二の薬剤は同一組成物の一部として同時に投与される。
【0173】
幾つかの実施態様において、第二の薬剤は、本発明の異なるキメラFGF19ポリペプチドである。幾つかの実施態様において、第二の薬剤は、抗炎症剤、抗糖尿病剤、及び/又は「スタチン」クラスのコレステロール低下薬である。幾つかの実施態様において、第二の活性薬剤はインスリンである。幾つかの実施態様において、インスリンは、速効作用型、短時間作用型、レギュラー型、中間時間作用型、又長時間作用型インスリンである。幾つかの実施態様において、インスリンはヒューマログ(Humalog)、リスプロ(Lispro)、ノボログ(Novolog)、アピドラ(Apidra)、ヒューマリン(Humulin)、アスパルト(Aspart)、レギュラーインスリン、NPH、レンテ(Lente)、ウルトラレンテ(Ultralente)、ランタス(Lantus)、グラルギン(Glargine)、レベミル(Levemir)、又はインスリンデテミル(Detemir)であるか又はそれらを含む。幾つかの実施態様において、第二の活性薬剤はスタチンである。幾つかの実施態様において、スタチンは、アトルバスタチン(Atorvastatin)(例えば、リピトール(Lipitor)又はTorvast)、セリバスタチン(Cerivastatin)(例えば、リポベイ(Lipobay)又はバイコール(Baycol))、フルバスタチン(Fluvastatin)(例えば、レスコール(Lescol)又はレスコール(Lescol))、ロバスタチン(Lovastatin)(例えば、メバコール(Mevacor)、Altocor、又はAltoprev)メバスタチン(Mevastatin)、ピタバスタチン(Pitavastatin)(例えば、リバロ又はPitava)、プラバスタチン(Pravastatin)(例えば、プラバコール(Pravachol)、Selektine、又はLipostat)ロスバスタチン(Rosuvastatin)(例えば、クレストール(Crestor))、シンバスタチン(Simvastatin)(例えば、ゾコール(Zocor)又はLipex)、バイトリン(Vytorin)、アドビコール(Advicor)、Besylate Caduet又はシムコール(Simcor)であるか、又はそれらを含む。
【0174】
本発明のその他の態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物は、個体に実施される第二の治療法と併用して投与され、その第二の治療法は手術を含む。幾つかの実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチド又はその医薬組成物は、第二の治療との組み合わせにおいて治療的効果量にて投与される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物は、第二の治療と組み合わせて投与され、すなわち投与及び治療は、単一管理療法の一部である。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物は、第二の治療と同時に投与され、すなわち投与及び治療のそれぞれの期間は互いに重複している。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物及び第二の薬剤は、第二の治療と非同時に投与され、すなわち投与及び治療のそれぞれの期間は互いに重複しない。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物及び第二の薬剤は第二の治療と連続的に投与され、すなわちキメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物は、第二の治療の前及び/又は後に投与される。幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチド又はその薬学的組成物及び第二の薬剤は、第二の療法と同時に投与される。
【0175】
本明細書に記載のキメラFGF19ポリペプチドはまた、タンパク質電気泳動のための分子量マーカーとして用いることができる。
【0176】
本発明のキメラFGF19ポリペプチド及び核酸分子はまた、組織適合検査に使用することができ、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、別のものと比較して一組織にて異なる形で発現される場合がある。キメラFGF19ポリペプチドの核酸分子は、PCR、ノーザン分析、サザン分析及びウエスタン分析のためのプローブを生成するための利用法を見いだし得る。
【0177】
別のタンパク質(例えば、FGFRのいずれか)に結合する本発明のキメラFGF19ポリペプチド、そのキメラFGF19ポリペプチドは、結合相互作用に関与する他のタンパク質又は分子を同定するためのアッセイで使用することができる。そのような方法によって、受容体/リガンド結合相互作用の阻害剤を同定することができる。そのような結合相互作用に関与するタンパク質は結合相互作用のペプチド又は小分子阻害剤又はアゴニストをスクリーニングするために使用することもできる。また、キメラFGF19ポリペプチドは、相関するリガンドを分離するために使用することができる。スクリーニングアッセイは、天然型FGF19、天然型FGF21、キメラFGF19ポリペプチド、又はFGF19及び/又はFGF21の受容体の生物学的活性を模倣するリード化合物を見つけるように設計することができる。このようなスクリーニングアッセイは、化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニングに適したアッセイを含み、小分子治療薬候補を同定するために特に適している。意図される小分子は、合成有機化合物又は無機化合物が挙げられる。そのアッセイは、当技術分野で特徴づけられるタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ及び細胞ベースのアッセイを含む、さまざまな形式で行うことができる。
【0178】
受容体の同定のための別のアプローチとして、標識されたキメラFGF19ポリペプチドは細胞膜と光親和性結合させることができ、又は受容体分子を発現する調製物を抽出することができる。架橋された材料はPAGEで分離されX線フィルムに露光される。受容体を含む標識複合体は切除され、ペプチド断片に分解され、タンパク質ミクロシークエンシングを受ける。ミクロシーケンシングから得られたアミノ酸配列は、推定される受容体をコードする遺伝子を同定するためcDNAライブラリーをスクリーニングするために、縮重したオリゴヌクレオチドプローブのセットを設計するために使用される。
【0179】
競合的結合アッセイが行われる本明細書の一実施態様において、FGFR1c、FGFR2c、FGFR3c及び/またはFGFR4またはキメラFGF19ポリペプチドに対する抗体が競合相手として使用される。
【0180】
VIII.キメラFGF19ポリペプチドに対する抗体
1. ポリクローナル抗体
抗キメラFGF19ポリペプチド抗体は、ポリクローナル抗体を含むことができる。ポリクローナル抗体を調製する方法は当業者に知られている。ポリクローナル抗体は、例えば、一つの免疫剤及び望ましくはアジュバントの1回又は複数の注射によって、哺乳動物において産生することができる。典型的には、免疫剤及び/又はアジュバントは、複数の皮下注射又は腹腔内注射により哺乳動物に注入される。免疫化剤は、キメラFGF19ポリペプチド又はその融合タンパク質を含み得る。免疫される哺乳動物において免疫原性であることが知られているタンパク質に免疫剤を結合するために役に立つ可能性がある。そのような免疫原性タンパク質の例としては、限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、大豆トリプシンインヒビターを含む。用いることができるアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバントおよびMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコラート(synthetic trehalose dicorynomycolate))を含む。免疫化プロトコールは、過度の実験なしに当業者により選択することができる。
【0181】
2.モノクローナル抗体
抗キメラFGF19ポリペプチド抗体は、代わりに、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作成することができる。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター又は他の適当な宿主動物を典型的に免疫剤で免疫し、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するか又は産生することができるリンパ球を誘導する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。好ましい実施態様において、抗キメラFGF19ポリペプチド抗体は、本発明のポリペプチドに結合する。より好ましい実施態様において、特異的に結合する抗体は、天然型FGF19ポリペプチド又は天然型FGF21ポリペプチドに結合しない。
【0182】
免疫化剤は、典型的にはキメラFGF19ポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般に、ヒト由来の細胞が望まれる場合は、末梢血リンパ球(PBL)が使用されるか、または非ヒト哺乳動物源が望まれる場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用されるかの何れかである。リンパ球は、その後、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合させられる[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。通常、不死化細胞はトランスフォームされた哺乳動物細胞であり、特に、げっ歯類、ウシ及びヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラット又はマウスミエローマ細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合していない、不死化細胞の増殖または生存を阻害する1以上の物質を含む適切な培養培地中で培養することができる。例えば、親のミエローマ細胞が酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠失する場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT−欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有することになろう(HAT培地)。
【0183】
好ましい不死化ミエローマ細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現をサポートし、HAT培地のような培地に対して感受性の細胞である。より好ましい不死化細胞株は、例えばソーク研究所細胞分配センター、カリフォルニア州サンディエゴから得ることができるマウス骨髄腫株であり、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、マナッサス、バージニア州のヒト骨髄腫細胞株及びマウス−ヒトヘテロ細胞株もまたヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
【0184】
ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、その後キメラFGF19ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により、又はラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイにより決定される。このような技術およびアッセイは、当技術分野で知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)に記載のスキャッチャード分析によって決定することができる。
【0185】
所望のハイブリドーマ細胞が同定されると、そのクローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, 上掲)。この目的に適した培地には、例えば、ダルベッコの修飾イーグル培地及びRPMI-1640培地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水として、インビボで増殖させることができる。
【0186】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等のような従来の免疫グロブリン精製法によって、培地、又は腹水から単離され精製することができる。
【0187】
また、モノクローナル抗体は、米国特許第4816567号などに記載される組み換えDNA法により作製されてもよい。モノクローナル抗体をコードするDNAは、定法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に分離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。一度単離されると、そのDNAは発現ベクター中に挿入され、次に、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は他にイムノグロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。DNAはまた、例えば、相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインをコードする配列を置換することによって[米国特許第4816567号; Morrisonら、上掲] 又は免疫グロブリンをコードする配列を非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部に接合ことによって修正することもできる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換することができ、又は本発明の抗体の一抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換することができ、キメラ二価抗体を作成することが可能である。
【0188】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体を調製するための方法は当技術分野で周知である。例えば、一つの方法は、免疫グロブリン軽鎖および変更された重鎖の組換え発現を含む。重鎖の架橋を防止するために、重鎖のFc領域内の任意の地点で一般的に切り捨てられる。あるいは、関連するシステイン残基が架橋を防止するために別のアミノ酸残基で置換されるか又は削除される。
【0189】
インビトロの方法も一価抗体を調製するのに適している。抗体の断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当技術分野で知られている所定の技法を用いて行うことができる。
【0190】
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗キメラFGF19ポリペプチド抗体には、更にヒト化抗体又はヒト抗体が含まれる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab')又は抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒトイムノグロブリン由来の最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒトイムノグロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、また典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、この場合、CDR領域の全て若しくは実質的に全てが、非ヒトイムノグロブリンのものに相当し、FR領域の全て若しくは実質的に全てが、ヒトイムノグロブリンコンセンサス配列である。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトのイムノグロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む[Jonesら、Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann ら、Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0191】
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の1つ又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入」残基と称され、典型的には「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は基本的には、Winter及び共同研究者、Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)の方法に従うか、又は齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することにより実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4816567号)、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び恐らくは幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
【0192】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で公知の様々な手法を用いて作製することができる[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marksら、J. Mol. Biol. 222:581 (1991)]。Coleら及びBoernerらの手法はヒトモノクローナル抗体の調製にも利用できる (Coleら、「モノクローナル抗体と癌治療」Alan R. Liss, p. 77 (1985)及びBoerner ら、J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)]。同様に、トランスジェニック動物、例えば、内在性のイムノグロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されているマウスなどに、ヒトイムノグロブリン遺伝子座を導入することによりヒト抗体を作製することができる。免疫すると、遺伝子再構成、構築及び抗体レパートリーを含め、あらゆる観点においてヒトで観察されるものとよく似たヒト抗体の産生が観察される。本アプローチは、例えば、米国特許第5545807号、第5545806号、第5569825号、第5625126号、第5633425号、第5661016号、及び以下の科学的な出版物に記載されている:Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368:856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994)、Fishwild等, Nature Biotechnology 14:845-51 (1996)、Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996)及びLonberg及びHuszar, Intern, Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。
【0193】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくは、ヒト抗体又はヒト化抗体である。本事例において、結合特異性の一つはFGF19に対してであり、もう一つは他の抗原に対して、好ましくは細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットに対してである。二重特異性抗体を作製する方法は当該技術分野において知られている。従来は、二重特異性抗体の組換え生産は、二つのイムノグロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいているが、この場合二つの重鎖は異なる特異性を持っている[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。イムノグロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうち一つだけが正しい二重特異性構造を有する。的確な分子の精製はアフィニティークロマトグラフィーの工程により行われる。同様の手順が国際公開第93/08829号及びTraunecker等、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0194】
望ましい結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)はイムノグロブリン定常ドメイン配列と融合することができる。その融合は、好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を含むイムノグロブリン重鎖定常ドメインと行われる。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。イムノグロブリン重鎖の融合体、望まれるならばイムノグロブリン軽鎖をコードしているDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体を生成する更なる詳細については、例えば、Suresh ら、Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照。
【0195】
国際公開第96/27011号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーの割合を最大にすることができる。好ましい界面は抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」が、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出される。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。二重特異性抗体は全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab ')二重特異性抗体)として調製することができる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) はインタクトな抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元されて近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つがついでメルカプトエチルアミンによる還元によってFab'-TNB誘導体に再転換され、他のFab’−TNB誘導体の等モル量と混合され、二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0196】
Fab'フラグメントを直接大腸菌から回収し、化学的に結合させて二重特異性抗体を形成してもよい。Shalaby等,J.Exp.Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')2分子の作成を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常なヒトT細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0197】
また、組換え細胞培養から直接的に二価抗体断片を作成し単離する様々な技術も記述されている。例えば、二価ヘテロ二量体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelny等, J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させた。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性/二価抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に利用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、短かすぎて同一鎖上の2つのドメイン間の対形成ができないリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に結合された重鎖可変ドメイン(V)を含む。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を作成する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
【0198】
典型的な二重特異性抗体は本明細書に所与のFGF19ポリペプチド上の2つの異なるエピトープ上に結合する。あるいは、抗タンパク質アームは、細胞の防御機構を特定のFGF19ポリペプチドを発現する細胞に集中させるために、T細胞レセプター分子(例えば、CD2,CD3,CD28又はB7)、又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)などIgGに対するFcレセプター(FcγR)等の白血球上の誘因分子に結合するアームと組合わせてもよい。また、二重特異性抗体を特定のFGF19ポリペプチドを発現する細胞に細胞障害性薬剤を局在化させるために用いてもよい。そのような抗体は、FGF19結合アーム、及び細胞障害性薬剤又はEOTUBE,DPTA,DOTA,TETAなどの放射性核種キレート剤に結合するアームを保持する。その他の目的たる二重特異的抗体は、FGF19ポリペプチドに結合し、さらに組織因子(TF)に結合する。
【0199】
5.ヘテロコンジュゲート抗体
また、ヘテロコンジュゲート抗体も本発明の範囲に入る。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせることが、米国特許第4676980号、及びHIV感染の治療のために提案されている[国際公開第91/00360号;国際公開第92/200373号;欧州特許第03089号]。その抗体は、クロスリンク剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されたものが含まれる。
【0200】
6.エフェクター機能工学
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、癌治療の際の抗体の効果を亢進させることは望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上した内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体−依存細胞性細胞障害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes,B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。一例において、亢進した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0201】
7.免疫複合体
また、本発明は、化学治療薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害性剤、あるいは放射性同位体(即ち、放射性コンジュゲート)と抱合している抗体を含む免疫複合体に関する
【0202】
そのような免疫複合体の生成に有用な化学療法剤は、上記記載されている。使用することができる酵素活性毒素及びその断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(alpha-sarcin)、シナアブラギリ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンチン(dianthin)プロテイン、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サポナリア属(sapaonaria)、オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテシン(tricothecenes)が含まれる。様々な放射性核種が放射標識抗体の生産のために入手可能である。例としては212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reを含む。
【0203】
抗体と細胞障害性剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチル HCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照。
【0204】
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害性剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0205】
8.免疫リポソーム
また、ここで開示されている抗体は、免疫リポソームとして処方することもできる。抗体を含有するリポソームは、例えばEpstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688(1985);Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4485045号及び同4544545号に記載されているように、当該分野において既知の方法により調製される。循環時間が増したリポソームは米国特許第5013556号に開示されている。
【0206】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含有する脂質組成物を用いた逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは孔径が定められたフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab'断片は、ジスルフィド交換反応を介して、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288(1982)に記載されているようにしてリポソームにコンジュゲートすることができる。
【0207】
9.抗体の薬学的組成物
本明細書で同定されたFGF19ポリペプチドに結合する抗体、並びに上記に開示されたスクリーニングアッセイで同定された他の分子は、薬学的組成物の形態で様々な障害の治療のために投与できる。
【0208】
FGF19ポリペプチドが細胞内にあり、全抗体が阻害剤として使用される場合は、内部移行する抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームは、抗体、又は抗体断片を、細胞内へ送達するために使用することができる。抗体断片が使用される場合、標的タンパク質に特異的に結合する最小の抑制性断片が望ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的のタンパク質配列に対する結合能を有するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学的に合成するか及び/又は組換えDNA技術によって製造することができる。例としてMarasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)を参照。本明細書の製剤はまた、治療を受ける特定の適応症に対する必要に応じて複数の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものが含まれる場合がある。代わりに、又はそれに加えて、組成物は、例えば、細胞傷害性薬物、サイトカイン、化学療法剤、又は増殖阻害剤など、その機能を強化する薬剤を含むことができる。このような分子は、意図する目的のために有効な量で組み合わせ適切に存在する。
【0209】
また、活性成分は、例としてコアセルべーション技術または界面重合化により調製したマイクロカプセル、例として、コロイド状のドラッグデリバリーシステム(例として、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中のヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル中にそれぞれ包まれているかもしれない。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0210】
インビボ投与に用いる剤形は無菌でなければならない。これは滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成できる。
【0211】
持続性徐放剤が調製される。持続性徐放剤の好適な例は、抗体を含む固形疎水性ポリマーの準透過性基質を含むものであり、基質は、造形品、例としてフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。持続性徐放基質の例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号), L-グルタミン酸及びγエチルLグルタミン酸の共重合体、非分解性のエチレンビニール酢酸塩、分解性の乳酸グリコール酸共重合体、例としてLUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体およびロイプロリド酢酸塩で構成された注入可能ミクロスフェア)、およびポリD-(-)-3ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニルや乳酸−グリコール酸等の重合体は100日以上分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化抗体は、長時間体内に残存すると、37℃で水分に曝されることで、変性又は凝集し、生理活性が喪失したり、免疫原生が変化したりする。関与するメカニズムによって安定化のための合理的な戦略が考えられる。例えば、凝集メカニズムがチオ−ジスルフィド交換による分子間S―S結合であることが分かったら、スルフヒドリル残基を改変し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定の重合体マトリクス組成物を開発することで安定性を確立することができる。
【0212】
G.抗体の使用
本発明の抗キメラFGF19ポリペプチド抗体は様々な実用性を持っている。例えば、抗FGF19抗体は、キメラFGF19ポリペプチドに関する診断アッセイ、例えば、特定の細胞、組織、又は血清中のその発現を検出することに使用することができる。当該分野で公知の種々の診断アッセイ技術、例えば不均一相又は均一相の何れかで行われる、競合結合アッセイ、直接サンドイッチ分析又は間接サンドイッチ分析、免疫沈降アッセイなどを使用することができる [Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]。診断アッセイにおいて使用される抗体は、検出可能部分で標識することができる。検出可能な部分は、直接的または間接的に検出可能なシグナル生みだすことができる必要がある。例えば、検出可能な部分は、H、14C、32P、35S、又は125Iなどの放射性同位元素、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、又はルシフェリンなどの蛍光又は化学発光化合物、又はアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素であり得る。抗体を検出可能な部分と結合させるための当該分野で公知の任意の方法を用いることができ、それらはHunter et al., Nature, 144:945 (1962); David et al., Biochemistry, 13: 1014 (1974); Pain et al., J. Immunol. Meth., 40:219 (1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載の方法を含む。
【0213】
抗キメラFGF19ポリペプチド抗体はまた、組換え細胞培養または天然の供給源に由来のキメラFGF19ポリペプチドのアフィニティー精製に有用である。このプロセスでは、キメラFGF19ポリペプチドに対する抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して、セファデックス樹脂や濾紙など、適切な支持体に固定される。固定化抗体は、その後、精製されるべきキメラFGF19ポリペプチドを含有する試料と接触させ、その後、支持体は固定化抗体に結合されたキメラFGF19ポリペプチドを除き、試料中の実質的にすべての材料を除去する適切な溶剤で洗浄する。最後に、支持体は別の適当な溶媒で洗浄すされ、抗体からキメラFGF19ポリペプチドを解放する。
【0214】
IX.キメラFGF19ポリペプチドの調製
以下の説明は、キメラFGF19ポリペプチドをコードする核酸を含有するベクターで形質転換又はトランスフェクトされた細胞を培養することによるキメラFGF19ポリペプチドの生産に主に関連する。もちろん、当技術分野でよく知られている別の方法がキメラFGF19ポリペプチドを調製するために用いることができることは考慮されている。例えば、キメラFGF19ポリペプチド又はその一部分は、固相技術を使用して直接ペプチド合成によって製造することができる[例えば、Stewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., San Francisco, Calif. (1969); Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)を参照]。インビトロでのタンパク質合成は手作業技術を用いるか又は自動化により行うことができる;自動合成は、例えば、製造業者の指示を使用して、アプライドバイオシステムズのペプチドシンセサイザー(フォスターシティー、カリフォルニア州)を用いて達成することができる。キメラFGF19ポリペプチドの様々な部分が、化学的方法又は酵素的方法を使用して別々に合成され組み合わされ、完全長キメラFGF19ポリペプチドを生成することができる。
【0215】
1.キメラFGF19ポリペプチドをコードするDNAの単離
本発明のキメラFGFポリペプチドをコードするcDNA断片は、鋳型として天然型FGF19ポリペプチドの少なくとも一部、及び天然型FGF21ポリペプチドの少なくとも一部をコードするcDNAを用いてPCR手法を用いて生成することができる。例えば、一例では、FGF21ポリペプチドのN末端部分をコードするcDNA断片、及びFGF19ポリペプチドのC末端部分をコードするcDNA断片は、例えばPCRを用いた後にアガロースゲル電気泳動によるなど、標準的手順により別個に増幅され精製される。プライマー配列は、FGF21のcDNA断片の3’末端及びFGF19のcDNA断片の5’末端で18塩基のオーバーラップがあるように設計される。PCRを用いる第2の増幅は、鋳型として2つのcDNA断片の混合物を用いて行われ、FGF21断片及びFGF19断片のキメラポリペプチドをコードするcDNAが得られる。得られたcDNA断片は、適当な制限酵素で消化され、アガロースゲル電気泳動により精製され、標準的な手順を用いてプラスミドベクターpRK5.sm(哺乳動物発現用CMVプロモーターを含むpUC系ベースのプラスミドベクター)にクローニングされる。得られたプラスミドの配列は、サンガーのDNAシークエンシング法により確認された。
【0216】
キメラFGF19ポリペプチドをコードするDNAは、FGF19及び/又はFGF21のmRNAを持ち、かつ検出可能なレベルでそれを発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーから得ることができる。従って、ヒトFGF19及び/又はFGF21のDNAは、例に記載されているようにヒト組織から調製したcDNAライブラリーから都合良く得ることができる。FGF19及び/又はFGF21をコードする遺伝子は、ゲノムライブラリーから、または既知の合成法(例えば、自動化された核酸合成)により得ることができる。
【0217】
ライブラリーは、目的の遺伝子又はそれによってコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(例えば、FGF19及び/又はFGF21に対する抗体または少なくとも約20から80塩基のオリゴヌクレオチドなど)でスクリーニングすることができる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、標準的な手順を用いて行うことができ、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている。FGF19をコードする遺伝子を分離する代替手法はPCRの手法を使用することである[Sambrook et al.,(上掲); Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0218】
下記の例は、cDNAライブラリーをスクリーニングするための技術について説明する。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、偽陽性を最小限に抑えるよう十分な長さであり十分に明白である必要がある。オリゴヌクレオチドは、好ましくは、スクリーニングされるライブラリーにおけるDNAへのハイブリダイゼーションの際にそれが検出できるように標識される。標識の方法は当技術分野でよく知られており、32Pで標識したATP、ビオチン化又は酵素標識などの放射性標識の使用が含まれる。適度なストリンジェンシー及び高ストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、上掲のSambrookらに記載されている。
【0219】
そのようなライブラリースクリーニング方法で同定された配列は比較され、GenBankなどの公共のデータベース又は他の私的な配列データベースに寄託され利用可能な別の既知配列へ整列させることができる。分子の定義された領域内又は全長配列配列にわたる(アミノ酸又はヌクレオチドレベルのいずれかでの)配列同一性は当該分野で公知であり、本明細書に記載の方法を用いて決定することができる。
【0220】
タンパク質をコードする配列を有する核酸は、最初に本明細書に開示される推定されたアミノ酸配列を用いて、必要あらば上掲のSambrookらに記載さてた通常のプライマー伸長法の手順を用いて、選択されたcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることで得て、cDNAに逆転写されていない可能性があるmRNAの前駆体及びプロセッシング中間体を検出することができる。
【0221】
2.宿主細胞の選択および形質転換
本明細書中に記載の、キメラFGF19ポリペプチド生産用の発現ベクターまたはクローニングベクターで宿主細胞をトランスフェクションあるいは形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅用に適当なように修飾された通常の栄養培地中で培養する。当業者であれば、過度に実験することなしに、培地、温度、pHなどのような培養条件を選択することができる。一般に、細胞培養物の生産性を最大にするための原理、プロトコル及び実用的技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M. Butler, ed. (IRL Press, 1991) および Sambrook et al., 1989(上記)中に見出すことができる。真核細胞のトランスフェクション及び原核細胞の形質転換の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介、及び電気穿孔は一般に当業者に知られている。用いる宿主細胞に応じ、当該細胞に適当な標準的技術を用いて形質転換を行う。Sambrook et al., 1989(上記)に記載の塩化カルシウムを用いるカルシウム処置、またはエレクトロポレーションは一般に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の感染は、Shawら、Gene、23:315(1983)および1989年6月29日に公開の国際公開第89/05859号で記述された特定の植物細胞の形質転換に使用されている。細胞壁のない哺乳類細胞に関しては、Graham and van der Eb, Virology, 52:456-457 (1978) のリン酸カルシウム沈殿法を用いることができる。哺乳類細胞宿主系形質転換体の一般的態様は米国特許第4399216号に記載されている。酵母内への形質転換は一般に、Van Solingen ら、 J. Bact., 130:946 (1977) および Hsiaoら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76:3829 (1979) の方法にしたがって行う。しかし、DNAを細胞内へ導入する他の方法、例えば核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、インタクトな細胞とのバクテリアプロトプラスト融合、又はポリカチオン、例えばポリブレン又はポリオルニチンによる方法を用いてもよい。哺乳類細胞を形質転換する種々の技術に関しては、Keownら、Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及びMansourら、Nature, 336:348-352 (1988) を参照のこと。
【0222】
本明細書中のベクター内のDNAをクローニングまたは発現するのに適した宿主細胞には、原核生物、酵母または高等真核生物細胞が含まれる。適した原核生物には、限定されないが、グラム陰性菌またはグラム陽性菌のような真正細菌、例えば大腸菌のような腸内細菌科が含まれる。大腸菌K12株MM294(ATCC 31446);大腸菌X1776(ATCC 31537);大腸菌株W3110(ATCC 27325)及びK5 772(ATCC 53635)のような種々の大腸菌株が公に利用可能である。他の適した原核宿主細胞は、大腸菌、例えばE. coliなどの腸内細菌、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えば、ネズミチフス菌、セラチア属、例えば、セラチア菌、赤痢菌、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバチルス‐リケニフォルミス(例えば、1989年4月12日公開されたDD266710に開示されているB.・リケニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌、及びストレプトマイセス属を含む。これらの例は、限定ではなくむしろ例示である。組換えDNA産物の発酵のための共通の宿主株であるため、W3110株は、特に好ましい宿主または親宿主である。好ましくは、宿主細胞はタンパク質分解酵素の最小限の量を分泌する。例えば、W3110株は、宿主に内因性のタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的変異に影響を与えるように修飾され得、そのような宿主の例としては完全な遺伝子型tonAを持つ大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を持つ大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF-LAC)169 degP ompT kanを持つ大腸菌W3110株27C7(ATCC55244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF-LAC)169 degP ompT rbs7 ilvG kanを持つ大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を有する株37D6である大腸菌W3110株40B4;および1990年8月7日に発行された米国特許第49467837号に開示された変異体ペリプラズムプロテアーゼを有する大腸菌株がある。あるいは、クローニングのインビトロでの方法では、例えば、PCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応が適している。
【0223】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、FGF19をコードするベクターに適したクローニング又は発現宿主である。出芽酵母((サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))は、一般的に使用される下等真核生物宿主微生物である。その他としては、分裂酵母((シゾサッカロミセス・ポンベ,Schizosaccharomyces pombe))(Beach 及びNurse, Nature, 290: 140 [1981]; 1985年5月2日に公開された欧州特許第139383号); クリベロマイセス宿主(米国特許第4943529号;Fleer et al., Bio/Technology, 9:968-975 (1991))、例えばクルイベロミセス・ラクチス(MW98−8C, CBS683, CBS4574; Louvencourt et al., J. Bacteriol., 154(2):737-742 [1983])、K.フラジリス(fragilis)(ATCC 12424)、K.ブルガリクス(bulgaricus) (ATCC 16045)、K.ウイッケルハミイ(wickeramii) (ATCC 24178)、K.ワルチ(waltii) (ATCC 56500)、K.ドロソフィラルム(drosophilarum) (ATCC 36906; Van den Berg et al., Bio/Technology, 8:135 (1990))、K.サーモトレランス(thermotolerans)、及びK. marxianus; ヤロウイア属(yarrowia)(欧州特許第402226号); ピキア・パストリス(Pichia pastoris) (欧州特許第183070号; Sreekrishna et al., J. Basic Microbiol., 28:265-278 [1988]); カンジダ(Candida); トリコデルマ・レージア(Trichoderma reesia) (欧州特許第244,234号); アカパンカビ(Neurospora crassa) (Case et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263 [1979]); Schwanniomyces例えばSchwanniomyces occidentalis (1990年10月31日公開の欧州特許第394,538号);及び糸状菌(filamentous fungi)例えばアカパンカビ属(Neurospora)、アオカビ属(Penicillium)、Tolypocladium (1991年1月10日公開の国際公開第91/00357号)、及びアスペルギルス宿主(Aspergillus hosts)例えば偽巣性コウジ菌(A. nidulans) (Ballance et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 112:284-289 [1983]; Tilburn et al., Gene, 26:205-221 [1983]; Yelton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984]) 及びクロコウジカビ(A. niger)(Kelly and Hynes, EMBO J., 4:475-479 [1985])が含まれる。メチロトローフ酵母(Methylotropic yeasts)が本明細書で適しており、限定されないが、ハンゼヌラ属、カンジダ属、クロエケラ属、ピキア属、サッカロミセス属、トルロプシス属、及びロドトルラ属から成る属から選択されるメタノール上で成長が可能な酵母が含まれる。酵母のこのクラスの例示である特定の種の一覧はC. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に見いだすことができる。
【0224】
グリコシル化キメラFGF19ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、昆虫細胞、例えばショウジョウバエS2及びスポドプテラSf9並びに植物細胞を含む。有用な哺乳動物宿主細胞株の例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より具体的な例は、SV40(COS−7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(細胞懸濁培養での成長のためにサブクローニングされた293又は293、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/DHFR(CHO、Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞 (TM4,Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);及びマウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は当業者の範囲内であるとみなされる。
【0225】
3.複製可能なベクターの選択と使用
キメラFGF19ポリペプチドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)のために又は発現のために複製可能なベクターに挿入されうる。様々なベクターが公に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態であってもよい。適切な核酸配列は、様々な手順によりベクターに挿入することができる。一般的に、DNAは、当技術分野で公知の技術を使用して、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分は、一般的に、1つ又は複数のシグナル配列、複製起点、1つ又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含むが、これらに限定されない。これらの成分の1つ以上を含む適当なベクターの構築は当業者に知られている標準的なライゲーション技術を用いる。
【0226】
キメラFGF19ポリペプチドは、組換えにより直接的だけでなく、成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドであってよい異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとして生成することができる。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、又はそれがベクターに挿入されるキメラFGF19ポリペプチドをコードするDNAの一部であり得る。シグナル配列は、hFGF19又はhFGF21など、FGF19又はFGF21の元のシグナル配列であり得る。したがって、そのような実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、少なくともプレhFGF19のN末端部分、例えば配列番号3の少なくとも1−22残基を含み得る。そのような実施態様において、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、プレhFGF1の少なくともN末端部分、例えば配列番号4の少なくとも1−28残基を含むことができる。
【0227】
シグナル配列は、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Lpp、又は熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から例えば選択された原核生物シグナル配列であり得る。酵母の分泌においてシグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(サッカロマイセス及びクルイベロミセスα因子リーダーを含み、後者は米国特許第5010182号に記載)、又は酸性ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンスグルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日に公開された欧州特許第362179号)又は1990年11月15日に公開された国際公開第90/13646号に記載のシグナルであり得る。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列は、同一または関連種の分泌ポリペプチド、並びにウイルス分泌リーダーに由来するシグナル配列など、タンパク質の直接分泌に用いることができる。
【0228】
発現ベクター及びクローニングベクターは両方とも、1つまたは複数の選択された宿主細胞内でベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。このような配列は、様々な細菌、酵母、ウイルスにおいて良く知られている。プラスミドpBR322からの複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミド起源は酵母に適しており、様々なウイルス起源(SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
【0229】
発現ベクター及びクローニングベクターは通常、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子が含まれる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、又はテトラサイクリンに耐性を付与し、(b)栄養要求性の欠陥を補完し、又は(c)複合培地から利用できない重要な栄養素、例えば、桿菌のD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
【0230】
哺乳動物細胞に適した選択可能なマーカーの例としては、例えばDHFR又はチミジンキナーゼなどFGF19をコードする核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするものである。野生型DHFRが用いられている適切な宿主細胞は、DHFR活性が欠損したCHO細胞株であり、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)により記載されるように作成され増殖される。酵母での使用に適した選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb et al., Nature, 282:39 (1979); Kingsman et al., Gene, 7:141 (1979); Tschemper et al., Gene, 10: 157 (1980)]。trp1遺伝子は、トリプトファンで増殖する能力を欠く酵母の変異株、例えば、ATCC番号44076又はPEP4−1の選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
【0231】
発現ベクター及びクローニングベクターは通常に直接mRNAを合成するためにFGF19をコードする核酸配列に対して操作可能に連結されたプロモーターを含む。潜在的な種々の宿主細胞中で認識されるプロモーターは、よく知られている。潜在的な種々の宿主細胞中で認識されるプロモーターは、よく知られている。原核生物宿主での使用に適したプロモーターは、α-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Chang et al., Nature, 275:615 (1978); Goeddel et al., Nature, 281:544 (1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); 欧州特許第36776号]、及びtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーター[deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するためのプロモーターはまた、FGF19コードするDNAへ操作可能に結合しているシャインダルガーノ(SD)配列を含み得る。
【0232】
酵母宿主での使用に適したプロモーター配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター[Hitzeman et al., J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]、又は解糖系酵素のプロモーター[Hess et al., J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968); Holland, Biochemistry, 17:4900 (1978)]、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、及びグルコキナーゼなどを含む。
【0233】
他の酵母のプロモータ−は、増殖条件によって制御される転写の付加的な利点を有する誘導性プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連付けられている分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトース利用に関与する酵素のプロモーター領域である。酵母発現の使用に適したベクター及びプロモーターは更に欧州特許第73657号に記載される。
【0234】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、プロモーターが宿主細胞システムとの互換性であることを条件として、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日発行の英国2211504号)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターから得られるプロモーター、及び熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより制御される。
【0235】
キメラFGF19ポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって増加させることができる。エンハンサーは、通常およそ10から300塩基対のシス作用性要素であり、その転写を増加させるプロモーターに作用する。多くのエンハンサー配列が現在哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)から知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルスからのエンハンサーを使用する。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(塩基対100から270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーを含む。エンハンサーはキメラFGF19ポリペプチドをコードする配列の5 '又は3'の位置でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5 'の位置に位置する。
【0236】
真核生物宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクターはまた、転写の終結及びmRNAを安定化するために必要な配列をも含む。そのような配列は5 '及び、時には3’、真核生物又ウイルスDNA又はcDNAの非翻訳領域から一般に得られる。これらの領域はキメラFGF19ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
【0237】
組換え脊椎動物細胞培養におけるキメラFGF19ポリペプチドの合成への適応に適したさらに他の方法、ベクター、及び宿主細胞がGething et al., Nature, 293:620-625 (1981); Mantei et al., Nature, 281:40-46 (1979); 欧州特許第117060号及び欧州特許第117058号に記載されている。
【0238】
4.遺伝子の増幅/発現を検出する
遺伝子の増幅及び/又は発現は、本明細書で提供される配列に基づいて適切に標識されたプローブを用いて、例えば、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロッティング[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980)]、ドットブロッティング(DNA解析)、又はインサイツハイブリダイゼーションにより直接サンプルで測定することができる。
【0239】
あるいは、抗体は、DNA二重鎖、RNA二重鎖、及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA−タンパク質二重鎖を含む、特定の二重鎖を認識するように用いられ得る。順に抗体が標識され、その表面上に二本鎖が形成される際に、二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができるように、二本鎖が表面に結合される場合にアッセイを行うことができる。
【0240】
遺伝子発現は、代わりに、免疫学的方法、例えば細胞または組織切片の免疫組織化学的染色、及び細胞培養物又は体液のアッセイ等により測定し、直接遺伝子産物の発現を定量化することができる。試料の液体の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのいずれであってもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。好都合なことに、抗体は、キメラFGFポリペプチドに対して、又は本明細書に与えられたDNA配列にもとずく合成ペプチドに対して、又はキメラFGF19ポリペプチドをコードし、かつ特定の抗体のエピトープをコードするDNAに融合させた外因性の配列に対して調製することができる。
【0241】
5.ポリペプチドの精製
キメラFGF19ポリペプチドの型は、培養培地から、又は宿主細胞溶解物から回収することができる。膜結合型の場合、適当な洗剤溶液(例えば、トリトンX−100)を使用して、又は酵素的開裂によって膜から解放することができる。キメラFGF19ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、凍結−解凍サイクル、音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤など、様々な物理的又は化学的手段によって破壊することができる。
【0242】
組換え細胞タンパク質またはポリペプチドからキメラFGF19ポリペプチドを精製することが望ましいことがある。以下の手順は、適切な精製手順の例である;イオン交換、カラム上での分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ上又はDEAEなどの陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;セファデックスG−75などを用いたゲルろ過法;IgGのような汚染物質を除去するプロテインAセファロースカラム;及びエピトープ標識キメラFGF19ポリペプチドの形態に結合するの金属キレートカラムによる。タンパク質精製の様々な方法を用いることができ、このような方法は、当技術分野で知られており、例えば、Deutscher, Methods in Enzymology, 182 (1990); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載されている。選択された精製工程は、例えば、用いられる生産工程の性質及び生産される特定のキメラFGF19ポリペプチドに依存する。
【0243】
X.キメラFGF19ポリペプチドをコードする核酸及びその使用
本発明は、本発明のキメラFGF19ポリペプチド(又はキメラFGF19核酸)をコードする別の態様のヌクレオチド配列(またはそれらの相補鎖)を含む。本発明のキメラFGF19核酸は、染色体及び遺伝子のマッピングにおける及びアンチセンスRNA及びDNAの産生におけるハイブリダイゼーションプローブとしての用途を含む、分子生物学の分野における様々な用途を有する。キメラFGF19核酸はまた、本明細書に記載の組換え技術によるキメラFGF19ポリペプチドの調製に有用である。
【0244】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、1つまたは複数のエピトープ標識を含みうる。幾つかの実施態様において、エピトープ標識は、キメラFGF19ポリペプチドのN末端に位置している。幾つかの実施態様において、エピトープ標識は、キメラFGF19ポリペプチドのC末端に位置している。幾つかの実施態様において、エピトープ標識は、キメラFGF19ポリペプチドのN末端に位置している。
【0245】
幾つかの実施態様において、キメラFGF19ポリペプチドは、1つまたは複数のエピトープ標識を含み得る。幾つかの実施態様において、エピトープ標識は、キメラFGF19ポリペプチドのN末端に位置している。幾つかの実施態様において、エピトープ標識は、キメラFGF19ポリペプチドのC末端に位置している。幾つかの実施態様において、エピトープ標識は、キメラFGF19ポリペプチドのN末端に位置している。幾つかの実施態様において、エピトープ標識は、アミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号279)を含む。
【0246】
典型的な実施態様では、本発明のキメラFGF19核酸は次の配列を含む:
CACCCCATCCCTGACTCCAGTCCTCTCCTGCAATTCGGGGGCCAAGTCCGGCAGCGGTACCTCTACACCTCCGGCCCCCACGGGCTCTCCAGCTGCTTCCTGCGCATCCGTGCCGACGGCGTCGTGGACTGCGCGCGGGGCCAGAGCGCGCACAGTTTGCTGGAGATCAAGGCAGTCGCTCTGCGGACCGTGGCCATCAAGGGCGTGCACAGCGTGCGGTACCTCTGCATGGGCGCCGACGGCAAGATGCAGGGGCTGCTTCAGTACTCGGAGGAAGACTGTGCTTTCGAGGAGGAGATCCGCCCAGATGGCTACAATGTGTACCGATCCGAGAAGCACCGCCTCCCGGTCTCCCTGAGCAGTGCCAAACAGCGGCAGCTGTACAAGAACAGAGGCTTTCTTCCACTCTCTCATTTCCTGCCCATGCTGCCCATGGTCCCAGAGGAGCCTGAGGACCTCAGGGGCCACTTGGAATCTGACATGTTCTCTTCGCCCCTGGAGACCGACAGCATGGACCCATTTGGGCTTGTCACCGGACTGGAGGCCGTGAGGAGTCCCAGCTTTGAGAAG(配列番号7)。この典型的な核酸配列は、表3に示すように、キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−2に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0247】
その他の典型的な実施態様では、本発明のキメラFGF19核酸は次の配列を含む: ATGGACTCGGACGAGACCGGGTTCGAGCACTCAGGgCTGTGGGTTTCTGTGCTGGCTGGTCTTCTGCTGGGAGCCTGCCAGGCACACCCCATCCCTGACTCCAGTCCTCTCCTGCAATTCGGGGGCCAAGTCCGGCAGCGGTACCTCTACACCTCCGGCCCCCACGGGCTCTCCAGCTGCTTCCTGCGCATCCGTGCCGACGGCGTCGTGGACTGCGCGCGGGGCCAGAGCGCGCACAGTTTGCTGGAGATCAAGGCAGTCGCTCTGCGGACCGTGGCCATCAAGGGCGTGCACAGCGTGCGGTACCTCTGCATGGGCGCCGACGGCAAGATGCAGGGGCTGCTTCAGTACTCGGAGGAAGACTGTGCTTTCGAGGAGGAGATCCGCCCAGATGGCTACAATGTGTACCGATCCGAGAAGCACCGCCTCCCGGTCTCCCTGAGCAGTGCCAAACAGCGGCAGCTGTACAAGAACAGAGGCTTTCTTCCACTCTCTCATTTCCTGCCCATGCTGCCCATGGTCCCAGAGGAGCCTGAGGACCTCAGGGGCCACTTGGAATCTGACATGTTCTCTTCGCCCCTGGAGACCGACAGCATGGACCCATTTGGGCTTGTCACCGGACTGGAGGCCGTGAGGAGTCCCAGCTTTGAGAAGGACTACAAAGACGATGACGACAAGTGA(配列番号281)。この典型的な核酸配列は、表3に示すように、キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−2の配列を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。そのポリペプチドはまたC末端エピトープ標識DYKDDDK(配列番号280)及びhFGF21ポリペプチドのN末端天然型シグナル配列(MDSDETGFEHSGLWVSVLAGLLLGACQA;配列番号282)を含む。
【0248】
その他の典型的な実施態様では、本発明のキメラFGF19核酸は次の配列を含む:
ATGCGGAGCGGGTGTGTGGTGGTCCACGTATGGATCCTGGCCGGCCTCTGGCTGGCCGTGGCCGGGCGCCCCCTCGCCTTCTCGGACGCGGGGCCCCACGTGCACTACGGCTGGGGCGACCCCATCCGCCTGCGGCACCTGTACACAGATGATGCCCAGCAGACAGAAGCCCACCTGGAGATCAGGGAGGATGGGACGGTGGGGGGCGCTGCTGACCAGAGCCCCGAAAGTCTCCTGCAGCTGAAAGCCTTGAAGCCGGGAGTTATTCAAATCTTGGGAGTCAAGACATCCAGGTTCCTGTGCCAGCGGCCAGATGGGGCCCTGTATGGATCGCTCCACTTTGACCCTGAGGCCTGCAGCTTCCGGGAGCTGCTTCTTGAGGACGGATACAATGTTTACCAGTCCGAAGCCCACGGCCTCCCGCTGCACCTGCCAGGGAACAAGTCCCCACACCGGGACCCTGCACCCCGAGGACCAGCTCGCTTCCTGCCACTACCAGGCCTGCCCCCCGCACTCCCGGAGCCACCCGGAATCCTGGCCCCCCAGCCCCCCGATGTGGGCTCCTCGGACCCTCTGAGCATGGTGGGACCTTCCCAGGGCCGAAGCCCCAGCTACGCTTCCGACTACAAGGACGACGATGACAAGTGA(配列番号283)。この典型的な核酸配列は、表6に示すように、キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−2の配列を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。そのポリペプチドはまたC末端エピトープ標識DYKDDDK(配列番号280)及びhFGF19ポリペプチドのN末端天然型シグナル配列(MRSGCVVVHVWILAGLWLAVAG;配列番号284)を含む。
【0249】
その他の典型的な実施態様では、本発明のキメラFGF19核酸は次の配列を含む: ATGGAcTCGGACGAGACCGGGTTCGAGCACTCAGGGCTGTGGGTTTCTGTGCTGGCTGGTCTTCTGCTGGGAGCCTGCCAGGCACACCCCATCCCTGACTCCAGTCCTCTCCTGCAATTCGGGGGCCAAGTCCGGCAGCGGTACCTCTACACAGATGATGCCCAGCAGACAGAAGCCCACCTGGAGATCAGGGAGGATGGGACGGTGGGGGGCGCTGCTGACCAGAGCCCCGAAAGTCTCCTGCAGCTGAAAGCCTTGAAGCCGGGAGTTATTCAAATCTTGGGAGTCAAGACATCCAGGTTCCTGTGCCAGCGGCCAGATGGGGCCCTGTATGGATCGCTCCACTTTGACCCTGAGGCCTGCAGCTTCCGGGAGCTGCTTCTTGAGGACGGATACAATGTTTACCAGTCCGAAGCCCACGGCCTCCCGCTGCACCTGCCAGGGAACAAGTCCCCACACCGGGACCCTGCACCCCGAGGACCAGCTCGCTTCCTTCCACTCTCTCATTTCCTGCCCATGCTGCCCATGGTCCCAGAGGAGCCTGAGGACCTCAGGGGCCACTTGGAATCTGACATGTTCTCTTCGCCCCTGGAGACCGACAGCATGGACCCATTTGGGCTTGTCACCGGACTGGAGGCCGTGAGGAGTCCCAGCTTTGAGAAGGACTACAAAGACGATGACGACAAGTGA(配列番号285)。この典型的な核酸配列は、表5に示すように、キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−13の配列を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。そのポリペプチドはまたC末端エピトープ標識DYKDDDK(配列番号280)及びhFGF21ポリペプチドのN末端天然型シグナル配列(MDSDETGFEHSGLWVSVLAGLLLGACQA;配列番号282)を含む。
【0250】
hFGF19遺伝子の完全長天然型核酸配列(配列番号5)、FGF21遺伝子の完全長天然型核酸配列(配列番号6)、本発明のキメラFGF19ポリペプチドの完全長天然型核酸配列、又は上記の何れかのその一部分は、本発明のキメラFGF19ポリペプチドをコードする核酸を検出するため又はスクリーニングするためのハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。任意で、プローブの長さは約20塩基から約50塩基となる。例として、スクリーニング方法は、約40塩基の選択されたプローブを合成する既知のDNA配列を用いて、FGF19遺伝子をコードする領域を単離することを含む。ハイブリダイゼーションプローブは、例えば32P又は35Sなどの放射ヌクレオチドを含む様々な標識、又はアビジン/ビオチン結合システムを介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼなどの酵素標識によって標識することができる。本発明のFGF19遺伝子の相補的な配列を有する標識プローブは、プローブがハイブリダイズするのはライブラリーのどのメンバーかを決定するために、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリーをスクリーニングすることに使用することができる。ハイブリダイゼーション技術は、以下の実施例でさらに詳細に説明される。
【0251】
本出願において開示される任意のEST配列は、同様に本明細書に開示される方法を用いて、プローブとして用いることができる。キメラFGF19核酸の他の有用な断片は、キメラFGF19のmRNA(センス)配列又はキメラFGF19のDNA(アンチセンス)配列を標的に結合することができる一本鎖核酸配列(RNA又はDNAの何れか)を含有するアンチセンスオリゴヌクレオチド又はセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチド又はセンスオリゴヌクレオチドは、本発明によれば、キメラFGF19のDNAをコードする領域の断片を含む。そのような断片は、一般的に、少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14から約30ヌクレオチドを含む。所与のタンパク質をコードするcDNA配列に基づいて、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを導き出す能力は、例えば、Stein and Cohen (Cancer Res. 48:2659, 1988) and van der Krol et al. (BioTechniques 6:958, 1988)で説明されている。
【0252】
アンチセンスオリゴヌクレオチド又はセンスオリゴヌクレオチドの標的配列への結合は、二本鎖の分解の増進、転写または翻訳の未完熟終了を含む幾つかの手段の何れかの方法によるか又は他の手段により、標的配列の転写又は翻訳をブロックする二本鎖の形成を生じる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、このようにキメラFGF19ポリペプチドの発現をブロックするために使用され得る。更に、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はセンスオリゴヌクレオチドは、修飾された糖ホスホジエステル骨格(又は他の糖結合、例えば国際公開第91/06629号に記載されるものなど)を有するオリゴヌクレオチドを含み、そうした糖結合は内因性のヌクレアーゼに耐性である。そのような抵抗性糖結合を有するオリゴヌクレオチドは、インビボで安定しているが(すなわち、酵素分解に抵抗することができるが)、標的塩基配列に結合することができる配列特異性を維持している。
【0253】
センスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例としては、例えば国際公開第90/10048号に記載されるものなどの有機質部分、及び例えばポリ(L-リジン)など標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増大させる他の部分に共有結合されているオリゴヌクレオチドを含む。更にまた、エリプチシン等の挿入剤、及びアルキル化剤又は金属錯体はセンスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合することができ、標的ヌクレオチド配列に対するアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの結合特異性を改変することができる。
【0254】
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、任意の遺伝子導入法によって、例えば、CaPO媒介DNAトランスフェクション、電気穿孔、又はEpstein−Barrウイルスなどの遺伝子導入ベクターを使用することにより、標的核酸配列を含む細胞に導入することができる。好ましい手順では、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、適切なレトロウイルスベクターに挿入される。標的核酸配列を含む細胞は、インビボ又はエキソビボでのどちらかで、組換えレトロウイルスベクターと接触させる。適切なレトロウイルスベクターとしては、限定されないが、マウスレトロウイルスM−MuLV、N2(M−MuLV由来するレトロウイルス)、又はDCT5A、DCT5B、及びDCT5Cと命名されたダブルコピーベクターに由来するものを含む(国際公開第90/13641号を参照)。
【0255】
センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、国際公開第91/04753号に記載されるように、リガンド結合分子との複合体の形成により、標的ヌクレオチド配列を含む細胞に導入することができる。適切なリガンド結合分子は、細胞表面受容体、増殖因子、他のサイトカイン、又は細胞表面受容体に結合する他のリガンドを含むが、これらに限定されない。好ましくは、リガンド結合分子の結合は、対応する分子や受容体へ結合し、又は細胞内へのセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその結合型の侵入を遮断するリガンド結合分子の能力を実質的に妨げない。
【0256】
あるいは、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、国際公開第90/10448号に記載されるように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により、標的核酸配列を含む細胞に導入することができる。センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド−脂質複合体は、好ましくは内因性リパーゼにより細胞内で解離する。
【0257】
プローブはまた密接に関連したキメラFGF19をコードする配列の同定のための配列プールを生成するためにPCR法に用いることができる。
【0258】
ポリペプチドキメラFGF19をコードする核酸は、遺伝子治療に使用することもできる。遺伝子治療の適用では、遺伝子は治療的に有効な遺伝子産物のインビトロ合成を実現するために、例えば欠陥遺伝子を置換するために、細胞内に導入される。「遺伝子治療」とは、持続的な効果が単一の治療法によって達成される従来の遺伝子治療、及び治療的に有効なDNA又はmRNAの1回又は反復投与を伴う遺伝子治療薬の投与の両方を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボで特定の遺伝子の発現を遮断するための治療薬として使用することができる。細胞膜による制限摂取によって引き起こされる低細胞内濃度にもかかわらず、短いアンチセンスオリゴヌクレオチドは、阻害剤として作用する場所である細胞内に移入可能であることが示されている。(Zamecnik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4143-4146 [1986])。オリゴヌクレオチドは、それらの取り込みを強化するために、例えば非荷電基によって負に荷電したリン酸ジエステル基を置換することにより、改変することができる。
【0259】
生細胞に核酸を導入するために利用可能な様々な技術がある。その技術は、核酸がインビトロで、又は目的とする宿主の細胞においてインビボで培養細胞に導入されるかどうかにより異なる。インビトロで哺乳動物細胞への核酸の転送に適した技術は、リポソーム、電気穿孔法、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、等の使用を含む。現在の好ましいインビボでの遺伝子導入技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクター及びウイルスコートタンパク質−リポソーム媒介トランスフェクションが含まれる(Dzau et al., Trends in Biotechnology 11, 205-210 [1993])。いくつかの状況では、標的細胞を標的とする薬剤、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上の受容体に対するリガンドなどにより、核酸の源を提供することが望ましい。リポソームが用いられる場合には、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、例えば、特定の細胞型に指向するキャプシドタンパク質又はその断片、循環により内部移行を受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在を標的としかつ細胞内半減期を拡張するタンパク質を標的とするため及び/又はその取り込みを促進するために用いることができる。受容体を介したエンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu et al., J. Biol. Chem. 262, 4429-4432 (1987); 及びWagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 3410-3414 (1990)に記述されている。遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコールのレビューについては、Anderson et al., Science 256, 808-813 (1992)を参照。
【0260】
X.製造品
本発明の別の実施態様において、代謝関連疾患、上記のような病気又は症状を治療するために有用な物質を含む製造品が与えられる。好ましくは、製造物品は、(a)本明細書中に記載のキメラFGF19ポリペプチド、及び容器内の薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む組成物を含む容器、(b)代謝関連疾患、病気又は症状に苦しむか又は呈する個体に該組成物を投与するための使用説明書を付したパッケージを挿入物を含む。
【0261】
幾つかの実施態様において、個体は代謝関連疾患、病気又は症状を持っている。幾つかの実施態様において、個体は、代謝関連疾患、病気又は症状が進行する危険にさらされている。幾つかの実施態様において、個体は(a)男性で約102センチメートル以上、女性で約88センチメートル以上のウエスト周囲、(b)約150mg/dL以上の空腹時トリグリセリド、(c)約95mg/dL又はそれ以上の空腹時血糖、及び(d)高レベルの酸化LDLからなる群から選択される一以上の特性を持っている。幾つかの実施態様において、個体は、さらに糖尿病に伴う炎症を持っている。幾つかの実施態様において、個体は一晩絶食後に約95mg/dL又はそれ以上の血糖値を持つ。幾つかの実施態様において、個体は一晩絶食後に約126mg/dL又はそれ以上の血糖値を持つ。幾つかの実施態様において、個体は2時間の経口ブドウ糖負荷試験後、約140mg/dLの血糖値を持っている。幾つかの実施態様において、個体は2時間の経口ブドウ糖負荷試験後、約200mg/dLの血糖値を持っている。幾つかの実施態様において、個体は前糖尿病に罹患している。幾つかの実施態様において、個体は糖尿病に罹患している。幾つかの実施態様において、糖尿病は、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠糖尿病からなる群から選択される。幾つかの実施態様において、糖尿病はII型糖尿病である。
【0262】
製造品は容器上に又は容器に付随してラベル又はパッケージ挿入物を含んでいる。適切な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなど様々な材料から形成することができる。容器は多発性硬化症を治療するために有効な組成物を保持又は含み、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有するバイアルである)。組成物中の少なくとも一つの活性剤はキメラFGF19ポリペプチドである。ラベル又はパッケージ挿入物は、その組成物が、代謝関連疾患、病気または症状を治療するために、抗体の投与量と間隔、及び与えられる任意の他の薬に関する具体的な指導に基づいて、それに苦しむ個体において使用されることを示している。製造品は、薬学的に許容可能なバッファー、例えば、注入のための静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を収容する第2の容器をさらに具備する。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を含んでいてもよい。必要に応じて、本明細書の製造品は、治療のためのポリペプチド以外の第2の薬剤、及びその薬剤で哺乳動物を治療についての指示書を含む容器を更に含む。幾つかの実施態様において、第二の薬剤は、抗炎症剤、抗糖尿病剤、及び/又は「スタチン」クラスのコレステロール低下薬である。幾つかの実施態様において、第二の活性剤はインスリンである。幾つかの実施態様において、インスリンは、速効作用型、短時間作用型、レギュラー型、中間時間作用型、又長時間作用型インスリンである。幾つかの実施態様において、インスリンはヒューマログ(Humalog)、リスプロ(Lispro)、ノボログ(Novolog)、アピドラ(Apidra)、ヒューマリン(Humulin)、アスパルト(Aspart)、レギュラーインスリン、NPH、レンテ(Lente)、ウルトラレンテ(Ultralente)、ランタス(Lantus)、グラルギン(Glargine)、レベミル(Levemir)、又はインスリンデテミル(Detemir)であるか又はそれらを含む。幾つかの実施態様において、第二の活性薬剤はスタチンである。幾つかの実施態様において、スタチンは、アトルバスタチン(Atorvastatin)(例えば、リピトール(Lipitor)又はTorvast)、セリバスタチン(Cerivastatin)(例えば、リポベイ(Lipobay)又はバイコール(Baycol))、フルバスタチン(Fluvastatin)(例えば、レスコール(Lescol)又はレスコール(Lescol))、ロバスタチン(Lovastatin)(例えば、メバコール(Mevacor)、Altocor、又はAltoprev)メバスタチン(Mevastatin)、ピタバスタチン(Pitavastatin)(例えば、リバロ又はPitava)、プラバスタチン(Pravastatin)(例えば、プラバコール(Pravachol)、Selektine、又はLipostat)ロスバスタチン(Rosuvastatin)(例えば、クレストール(Crestor))、シンバスタチン(Simvastatin)(例えば、ゾコール(Zocor )又はLipex)、バイトリン(Vytorin)、アドビコール(Advicor)、Besylate Caduet又はシムコール(Simcor)であるか、又はそれらを含む。
【0263】
「パッケージ挿入物」なる用語は、効能、用途、服用量、投与、禁忌、包装された製品と組み合わされる他の治療薬、及び/又はその治療薬の用途に関する警告についての情報を含む、治療薬の商業的包装を慣習的に含めた指示書を指す。
【0264】
次の例は、説明のみを目的として提供され、いかなる方法において本発明の範囲を限定するものではない。
【0265】
本明細書で引用されたすべての特許および文献の参照は、ここにその全体が参照により援用される。
【実施例】
【0266】
実施例で言及された市販の試薬は、特に明記しない限り製造業者の指示に従って使用された。以下の実施例及び本明細書全体にわたってATCC受託番号により識別された細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニア州である。特に断りのない限り、細胞は、5%CO下、37℃で、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。
【0267】
実施例1:キメラ及び天然型FGFポリペプチドのKLB非依存性FGFR結合活性
本発明のキメラFGFポリペプチドのインビトロでのFGF受容体結合活性は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて測定した。図3A(上)を参照により、FGF受容体(FGFR)のインビトロ結合活性及びそれに対応するコントロールを測定するためのELISAの概略図が描かれている。
【0268】
ヒトIgG−Fc断片(ジャクソンイムノ、ウエストグローブ、ペンシルバニア州、米国)に特異的なモノクローナル抗体は、2μg/mlの抗体溶液のウェルあたり100μlで一晩インキュベーションすることにより、MaxisorpTM平底96穴プレートのウェル(Nunc社、サーモフィッシャーサイエンティフィック、ロチェスター、ニューヨーク)の中に固定化された。各ウェルは、その後の1μg/mlのFGFR4−Fc(ヒトIgG1のFc断片に融合したヒトFGFR4細胞外ドメインを含む組換えポリペプチド;カタログ番号685−FR−050、R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)又は1μg/mlのFGFR1c−Fc(ヒトIgGのFc断片に融合したヒトFGFR1c細胞外ドメインを含む組換えポリペプチド;カタログ番号658−FR−050、R&Dシステムズ)の何れかでインキュベートした。
【0269】
表面固定化したFGFR4−Fc又はFGFR1c−FcポリペプチドはC末端エピトープ標識(表10のFGF19−Flag、配列番号237)を持つ天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチドで、1μg/mL、0.4μg/mL、0.16μg/mL、0.064μg/mL、0.0256μg/mL、0.004096μg/mL又は0.0016384μg/mLの濃度で、各々2μg/mLのヘパリンとともに、FGF19ポリペプチドが受容体ドメインに結合できるように、1時間インキュベートした。同様に、表面固定化したFGFR4−Fc又はFGFR1c−FcポリペプチドはC末端エピトープ標識(表10のcFGF21/19−2/Flag、配列番号242)を持つキメラFGF19ポリペプチドで、1μg/mL、0.4μg/mL、0.16μg/mL、0.064μg/mL、0.0256μg/mL、0.004096μg/mL又は0.0016384μg/mLの濃度で、各々2μg/mLのヘパリンとともに、キメラFGF19ポリペプチドが受容体ドメインに結合できるように、1時間インキュベートした。インキュベーション後、所与のFGF19ポリペプチド濃度で、受容体ドメインに結合した天然型又はキメラFGF19ポリペプチドの量は、ビオチン化抗ヒトFGF19ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF969、R&D Systems)、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(カタログ番号RPN1231V、アマシャムバイオサイエンス社、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)、及び3、3’、5、5’-テトラメチルベンジジン基質(カタログ番号TMBE−1000、モス社、パサデナ、メリーランド州)を用い、HRP依存性生成物の濃度を450nmにおける吸収によって測定することにより決定した。コントロールELISA実験は、天然型及びキメラFGF19ポリペプチドが抗ヒトFGF19ポリクローナル抗体によって同等の効率性で認識されることを実証するために行われた(データ非開示)。
【0270】
図3Aを参照すると、表面固定化されたFGFR4−Fc又はFGFR1c−Fcポリペプチドに対するインビトロFGFR結合アッセイの結果は、天然型ヒトFGF19ポリペプチドは濃度依存性で、クロトーβ非依存的にFGFR4−Fcに結合するが、認めうるほどにはFGFR1c−Fcに結合しないことを示した。キメラFGFR19ポリペプチド(cFGF21/19−2/Flag、配列番号242)のFGFR4−FcまたはFGFR1c−Fcの何れかに対してのクロトーβ非依存的な結合は検出されなかった。
【0271】
図3Bを参照すると、FGFRの活性化についてのアッセイの概略図が示されている。このアッセイでは、一過性にトランスフェクトしたL6細胞は、FGF受容体、例えば、ヒトFGFR1c又はヒトFGFR4をその細胞表面上に発現する。FGF受容体へのリガンドの効果的な結合は、内因性MAPキナーゼ経路の活性化をもたらすことができ、それによってElk−1活性化ドメイン及びGAL4のDNA結合ドメインを有するキメラ転写活性化因子のリン酸化を引き起こすことができる。リン酸化された転写活性化因子は、適切な上流活性化配列(UAS)、例えば酵母のGAL4のUASなどの制御下でレポーター遺伝子の発現を活性化することができる。レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素、特にホタルルシフェラーゼの酵素などの酵素をコードすることができる。L6細胞は、構成的に発現されたウミシイタケルシフェラーゼで更にトランスフェクトすることができ、誘導性ホタルルシフェラーゼに対する正規化したコントロールとして機能を果たすことができる。
【0272】
このアッセイでは、96穴プレート中のラットL6筋芽細胞は、ヒトFGFR4ポリペプチドをコードする発現ベクター、GAL4−Elk−1転写活性化因子(カタログ番号219005、pFA2−Elk1、ストラタジーン、ラホーヤ、カリフォルニア州)をコードする発現ベクター、酵母GAL4の上流活性化因子の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードする発現ベクター(カタログ番号219050、PFR−luc、ストラタジーン社)で、一過性にトランスフェクトした。ウミシイタケルシフェラーゼの構成的発現のためのベクター(カタログ番号E2231、pRL−SV40、プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州)もまた細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションは、製造者の指示に従ってFuGENE HDトランスフェクション試薬(カタログ番号04709705001、ロシュ・アプライド・サイエンス、インディアナポリス、インディアナ州)を用いて行った。
【0273】
トランスフェクトされたL6細胞を10%FBS(カタログ番号F2442、シグマアルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を含むDMEM(Cellgro 50−013−PC(メディアテック社、マナサス、バージニア州)から調製)中で一晩培養した。その後、細胞を洗浄し、25mg/Lのブタヘパリン及び特定の濃度のFGF19ポリペプチドを含むF12/DME50:50ブレンドから由来した濃縮無血清培地中で更に6時間培養した。アッセイしたFGF19ポリペプチドは、天然型FGF19−Flagポリペプチド(表10のFGF19−Flag;配列番号237を参照)、天然型FGF21−Hisポリペプチド(表10のFGF21−His;配列番号238を参照)及びキメラFGF19−Flagポリペプチド(表10のcFGF21/19−2/Flag;配列番号242を参照)であった。細胞は10μg/mL、1666.7ng/mL、277.8ng/mL、46.3ng/mL、7.7ng/mL、1.3ng/mL、0.21ng/mL、0.036ng/mL、0.0060ng/mL、0.00099ng/mL、0.00017ng/mL又は0.000028ng/mLの濃度でポリペプチドとインキュベートした。次いで、細胞をPLB試薬(カタログ番号E1941、プロメガ社)で溶解し、各ウェルにおけるルシフェラーゼ活性をデュアルグロ(Dual−Glo)ルシフェラーゼアッセイシステム(カタログ番号E2940、プロメガ社)、及びエンビジョン(EnVision)マルチラベルリーダー(カタログ番号2103、パーキンエルマー社、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて、それぞれのメーカーの指示に従って決定した。それぞれのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回ずつ行った。
【0274】
【0275】
再び図3Bを参照すると、それぞれの正規化されたルシフェラーゼ活性は、3つの複製の平均とその平均の標準誤差として表示される。結果は、FGFR4を発現するがクロトーβを発現しないL6細胞は、天然型FGF19ポリペプチドで処理すると、ルシフェラーゼ活性の用量依存的活性化を示すが、天然型FGF21ポリペプチドもキメラFGF19ポリペプチドもどちらもそのような活性を示さない。
【0276】
実施例2:キメラ及び天然型FGFポリペプチドのKLB依存性FGFR4結合活性
このアッセイでは、96穴プレート中のラットL6筋芽細胞は、ヒトFGFR4ポリペプチド(NCBI参照配列:NM_002011.3に基づく)又はヒトFGFR1cポリペプチド(NCBI参照配列:NM_015850.3に基づく)のいずれかをコードする発現ベクター、クロトーβ(KLB)ポリペプチド(C末端LEDYKDDDDKエピトープ配列に融合したNCBI参照配列:NM_175737.3に基づく)をコードする発現ベクター、GAL4-Elk-1転写活性化因子(pFA2-Elk1、ストラタジーン社)をコードする発現ベクター、及び酵母GAL4の上流活性化因子の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子(pFA2-Elk1、ストラタジーン社)をコードする発現ベクターで一過性にトランスフェクトされた。ウミシイタケルシフェラーゼ(PRL−SV40、プロメガ社)の構成的発現用ベクターもまた細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションは、製造者の指示に従ってFuGENE HDトランスフェクション試薬(ロシュ・アプライド・サイエンス)を用いて行った。
【0277】
トランスフェクトされたL6細胞は、上記のように、10%FBSを含むDMEMで一晩培養した。その後、細胞を洗浄し、25mg/Lのブタヘパリン及び所定の濃度のFGFポリペプチドを含有する無血清培地でさらに6時間培養した。アッセイしたFGFポリペプチドは、天然型FGF19−Flagポリペプチド(表10のFGF19−Flag、配列番号237を参照)、天然型FGF21−Hisポリペプチド(表10のFGF21−His、配列番号238を参照)、及びキメラFGF19-Flagポリペプチド(表10のcFGF21/19−2/Flag、配列番号242を参照)であった。細胞は、FGF19ポリペプチドと、500ng/mL、83.3ng/mL、13.9ng/mL、2.3ng/mL、0.39ng/mL、0.064ng/mL又は0.011ng/mLの濃度でインキュベートした。細胞は、キメラFGF19ポリペプチドと、2667ng/mL、444.4ng/mL、74.1ng/mL、12.3ng/mL、2.06ng/mL、0.34ng/mL又は0.057ng/mLの濃度でインキュベートした。次いで、細胞をPLB試薬(プロメガ社)で溶解し、各ウェルにおけるルシフェラーゼ活性をデュアルグロ(Dual−Glo)ルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社)、及びエンビジョン(EnVision)マルチラベルリーダー(パーキンエルマー社)を用いて、それぞれのメーカーの指示に従って決定した。それぞれのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回ずつ行った。
【0278】
図4を参照すると、それぞれの正規化されたルシフェラーゼ活性は、3つの複製の平均とその平均の標準誤差として表示される。結果は、天然型FGF19ポリペプチド及びキメラFGF19ポリペプチドは、KLB及びFGFR1cの存在下で、それぞれEC50が、34.3ng/mL及び22.7ng/mLであり、ルシフェラーゼと同様の用量依存的な活性化を示している。FGFR4とKLBで形質転換された細胞では、キメラFGF19ポリペプチドによるルシフェラーゼ活性の用量依存的な活性化は、天然型FGF19のそれより有意に低く、それぞれEC50が269ng/mL及び2.6ng/mLであった。FGFR1c及びFGFR4の各FGF19ポリペプチドの選択性は、プリズム5ソフトウェア(グラフパッドソフトウェア、ラホーヤ、カリフォルニア州)を用いて計算されたEC50値に基づいて推定した。この例では、キメラFGF19ポリペプチドは、天然型FGF19ポリペプチドの対応する相対的な選択性よりも、FGFR4を上回るFGFR1cに対するより高い相対的的選択性(各々の計算されたEC50値に基づく)を示した。
【0279】
実施例3:キメラ及び天然型FGFポリペプチドによる肝特異的遺伝子の誘導
この例では、FVBマウスを一晩絶食させた。絶食マウスのサンプル群(n=5又は6)に、天然型ヒトFGF-19Flagポリペプチド(表10のFGF19-Flag)、天然型ヒトFGF21-Hisポリペプチド(表10のFGF21-His)、キメラFGF19-Flagポリペプチド(表10のcFGF21/19-2/Flag、配列番号242)、又はリン酸バッファー生理食塩水(PBS)ビークルコントロールを尾静脈を介して注入した。ポリペプチドは、1mg/kgの用量でPBS中に与えられた。注射後4時間で、肝臓の組織をそれぞれのマウスから回収し、液体窒素中でスナップ凍結した。全組織RNAはQiazol(カタログ番号79306、キアゲン、ジャーマンタウン、メリーランド州)を用いて回収された肝臓組織から単離され、cDNA合成のテンプレートとして使用された(Quantitect逆転写キット、カタログ番号205311、キアゲン)。定量的リアルタイムPCRのための標準プロトコルに続いて、cDNAは、36B4遺伝子を標準として、SYBRグリーン色素(カタログ番号11760500、インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)及び、7900HT FastリアルタイムPCRシステム(アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティ、カリフォルニア州)を用いて定量された。図5を参照すると、結果は、Egr−1及びcFosのmRNAのレベルは天然型FGF19ポリペプチドを注射したサンプルでは最も高く、一方、天然型FGF21ポリペプチド又はキメラFGF19ポリペプチドを注射したサンプル中ではEgr−1及びcFosのmRNAのレベルは、存在しないか、又は有意に低かったことを示している。SHPのmRNA又はCYP7A1のmRNAの相対的レベルは、ポリペプチドを注入した試料間で同等であった。p値が0.05未満、0.01未満、及び0.0005未満であるレベルはそれぞれ「*」、「**」及び「***」で示される。
【0280】
実施例4:キメラ及び天然型FGFポリペプチドによる脂肪細胞特異的遺伝子の誘導
本例は実施例3に記載のように、注射後4時間で回収されて液体窒素中でスナップ凍結された褐色脂肪組織(BAT)及び白色脂肪組織(WAT)により実施された。図6を参照すると、結果は、WATにおけるEgr−1のmRNAのレベル及びBATにおけるUCP−3のmRNAのレベルは、その何れも検出可能なFGFR4を発現せず、使用したFGFポリペプチドにより同様に制御されたことを示している。p値が0.05未満、0.01未満、及び0.001未満であるレベルはそれぞれ「*」、「**」及び「***」で示される。
【0281】
実施例5:キメラFGF19及び天然型FGF21ポリペプチドによる糖尿病肥満マウスにおける血中グルコースの減少
本例では、11週齢のob/obマウス(系統#000632、ジャクソン研究所、バーハーバー、メイン州)は、天然型ヒトFGF21ポリペプチド(表10のFGF21−FlagN;PBS中1mg/mL)、キメラFGF19ポリペプチド(表10のcFGF21/19−2/Flag;配列番号242)、又はビークルコントロール(PBS)を含有する浸透圧ポンプ(カタログ番号2001、Alzet、クパチーノ、カリフォルニア州)を皮下に移植された。各サンプル群は九(9)匹のマウスから成っていた。浸透圧ポンプは、〜0.4mg/kg/日の速度でポリペプチドを与えるように構成された。
【0282】
図7Aを参照すると、各マウスの体重及び無作為に餌を与えられた血糖値が、ポンプの移植前の3日に始まり移植後5日まで、指定された時点で測定された。血糖は、ワンタッチ2ウルトラ血糖モニタリングシステム(ライフスキャン、ミルピタス、カリフォルニア州)を用いて測定した。図7Aは、各サンプル群の平均体重及び血糖値を示す(p値が0.05未満、0.001未満及び5×10−7未満であるレベルはそれぞれ「*」、「**」及び「***」で示される)。5日目に、マウスを一晩絶食させ、翌日朝に空腹時血糖が測定された。図7Bを参照すると、第5日及び6日での各マウス(一晩絶食させた)の血糖値が示されている(p値が0.002未満、0.0005未満及び5×10−10未満であるレベルはそれぞれ「*」、「**」及び「***」で示される)。結果は、天然型ヒトFGF21ポリペプチド及びキメラFGF19ポリペプチド両方とも、これらのマウスにおいて血糖を同様レベルに下げたことを示している。
【0283】
実施例6:キメラFGF19及び天然型FGF21ポリペプチドによる糖尿病性肥満マウスにおける腹腔内ブドウ糖負荷
実施例5由来のマウスは耐糖能を試験するため第6日目に一晩絶食後、PBS(1グラム/kg)中のグルコースをボーラス投与で腹腔内に注射した。図8Aにおいて、ボーラス注入は、時間=0に対応する点で起こった。ボーラス注入に続いて、各マウスの血糖値を指定された時点で測定され、各サンプル群の平均血糖値は図8Aに示される。図8Bを参照すると、各動物に対するブドウ糖負荷試験(GTT)の間でt=0及び120分の間の曲線下面積(AUC)がプロットされている。天然型ヒトFGF21ポリペプチド又はキメラFGF19ポリペプチドを注入されたサンプルのp値は、PBS対照と比較して、スチューデントt検定によれば両方とも0.001未満であった。結果は、天然型ヒトFGF21ポリペプチド及びキメラFGF19ポリペプチドは両方ともこれらの絶食マウスにおいて類似の耐糖能を示したことを示している。
【0284】
実施例7:天然型及びキメラFGF−Fc融合ポリペプチドの活性
この例では、FGF−Fc融合ポリペプチドを含む条件培地は、対応する発現ベクターでトランスフェクトした細胞から回収される。HEK293S細胞は、21アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSDYKDDDDKGRAQVT(配列番号286)を介してヒトIgG1−Fc断片のN末端に融合した天然型ヒトFGF19ポリペプチド、ヒトIgG1−Fc断片のN末端に4アミノ酸リンカーGGGGを介して融合した天然型ヒトFGF21ポリペプチド、又はヒトIgG1−Fc断片のN末端に4アミノ酸リンカーGGGSを介して融合したヒトキメラFGF19ポリペプチド(cFGF21/19−2)をコードする発現ベクターで一過性にトランスフェクトした。偽のトランスフェクト細胞を対照として用いた。細胞は、上記のように、10%FBSを含むDMEMで一晩培養した。その後、細胞を洗浄し、2日間、F12/DME 50:50ブレンドに由来する濃縮無血清培地で培養した。各サンプルから、条件培地を回収した。各サンプル由来の各条件培地の等量(6.5μL)は、ヒトIgG−Fc断片に特異的な抗体を用いたイムノブロット解析に用いられた。イムノブロットの結果は図9Bに示されており、FGF19−FC、FGF21−Fc及びcFGF21/19−2−Fc融合体により形質転換された細胞から回収した条件培地において予想される分子量を持つFc断片を含有するポリペプチドの存在を示している。
【0285】
この例では、条件培地は、FGF−Fc融合ポリペプチドの活性を示すために使用された。96穴プレート中のHEK293S細胞は、GAL4−Elk−1転写活性化因子(pFA2−Elk1、ストラタジーン社)をコードする発現ベクター、及び酵母GAL4の上流活性化因子(pFR−luc、ストラタジーン社)の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードする発現ベクターにより一過性にトランスフェクトした。幾つかの実験において、細胞はまたクロトーβ(KLB)ポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトした。ウミシイタケルシフェラーゼ(PRL−SV40、プロメガ社)の構成的発現用ベクターもまた細胞にトランスフェクトされた。トランスフェクションは、製造者の指示に従ってFuGENE HDトランスフェクション試薬(ロシュ・アプライド・サイエンス)を用いて行った。
【0286】
トランスフェクトした細胞を上記のように、10%FBSを含むDMEM中で一晩培養した。その後、細胞を洗浄し、F12/DME50:50ブレンド由来の濃縮無血清培地の3部で希釈した条件培地の1部から作られた培地中でさらに6時間培養し、その最終培地は25mg/Lのブタヘパリンを含む。次いで、細胞をPLB試薬(カタログ番号E1941、プロメガ社)で溶解し、各ウェルにおけるルシフェラーゼ活性をデュアルグロ(Dual−Glo)ルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社)、及びエンビジョン(EnVision)マルチラベルリーダー(パーキンエルマー社)を用いて、それぞれのメーカーの指示に従って決定した。それぞれのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回ずつ行った。
【0287】
図9を参照すると、それぞれの正規化されたルシフェラーゼ活性は、3つの複製の平均とその平均の標準誤差として表示される。結果は、形質転換されたHEK293S細胞のルシフェラーゼ活性は、KLBが存在すると、それぞれの非Fc融合アナログと似た様式で、天然型ヒトFGF19−Fcポリペプチド又はキメラFGF19−Fcポリペプチドによって活性化できることを示している。しかしながら、天然型FGF21ポリペプチドの対応する非Fc融合アナログとは対照的にFGF21−Fc融合ポリペプチドは、KLBが存在する場合でさえ、ホタルルシフェラーゼの実質的に低い活性を示した。
【0288】
実施例8:天然型及びキメラFGFポリペプチドの受容体特異性
この例では、48穴プレート中のラットL6筋芽細胞は、ヒトFGFR4ポリペプチド、ヒトFGFR1cポリペプチド又はベクターコントロールの何れかをコードする発現ベクターで一過性にトランスフェクトした。また、各細胞サンプルでトランスフェクトされるのは、クロトーβ(KLB)ポリペプチドをコードする発現ベクター、GAL4−Elk−1転写活性化因子をコードする発現ベクター(pFA2−Elk1、ストラタジーン社)、酵母GAL4の上流活性化因子の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードする発現ベクター(PFR−luc、ストラタジーン社)、及びウミシイタケルシフェラーゼの構成的発現用ベクター(PRL−SV40、プロメガ社)である。トランスフェクションは、製造者の指示に従ってFuGENE HDトランスフェクション試薬(ロシュ・アプライド・サイエンス)を用いて行った。
【0289】
トランスフェクトされたL6細胞は、上記のように、10%FBSを含むDMEMで一晩培養した。その後、細胞を洗浄し、25mg/Lのブタヘパリンを含有する無血清条件培地でさらに6時間培養した(それぞれの条件培地が作製され、実施例7に従って回収し、使用のため無血清培地の等量で希釈した)。条件培地は、ベクターコントロール(図10のA群)(CMVプロモーターを含むpUC由来ベクター);天然型ヒトFGF21−FlagCポリペプチド(表10のFGF21−FlagC、図10のB群);天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチド(表10のFGF19−Flag、図10のC群);天然型ヒトFGF21に由来するN−末端配列を有する第一キメラFGF19ポリペプチド(図10の群D)(表10のcFGF21/19−13/Flag,HPIPDSSPLLQFGGQVRQRYLYTDDAQQTEAHLEIREDGTVGGAADQSPESLLQLKALKPGVIQILGVKTSRFLCQRPDGALYGSLHFDPEACSFRELLLEDGYNVYQSEAHGLPLHLPGNKSPHRDPAPRGPARFLPMLPMVPEEPEDLRGHLESDMFSSPLETDSMDPFGLVTGLEAVRSPSFEKDYKDDDDK;配列番号253);天然型ヒトFGF21に由来するN末端配列を有する第2キメラFGF19ポリペプチド(図10のE群)(表10のcFGF21/19−2/Flag;HPIPDSSPLLQFGGQVRQRYLYTSGPHGLSSCFLRIRADGVVDCARGQSAHSLLEIKAVALRTVAIKGVHSVRYLCMGADGKMQGLLQYSEEDCAFEEEIRPDGYNVYRSEKHRLPVSLSSAKQRQLYKNRGFLPLSHFLPMLPMVPEEPEDLRGHLESDMFSSPLETDSMDPFGLVTGLEAVRSPSFEKDYKDDDDK;配列番号242)又は天然型ヒトFGF19由来のN末端配列を有するキメラFGF19ポリペプチド(図10のF群)(表10のcFGF19/21−2/Flag;RPLAFSDAGPHVHYGWGDPIRLRHLYTDDAQQTEAHLEIREDGTVGGAADQSPESLLQLKALKPGVIQILGVKTSRFLCQRPDGALYGSLHFDPEACSFRELLLEDGYNVYQSEAHGLPLHLPGNKSPHRDPAPRGPARFLPLPGLPPALPEPPGILAPQPPDVGSSDPLSMVGPSQGRSPSYASDYKDDDDK;配列番号255)の何れかを含有した。次いで、細胞をPLB試薬(プロメガ社)で溶解し、各ウェルにおけるルシフェラーゼ活性をデュアルグロ(Dual−Glo)ルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社)、及びエンビジョン(EnVision)マルチラベルリーダー(パーキンエルマー社)を用いて、それぞれのメーカーの指示に従って決定した。それぞれのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回ずつ行った。
【0290】
図10を参照すると、それぞれの正規化されたルシフェラーゼ活性は、サンプルA群において同様にトランスフェクトされ、ベクターコントロールでトランスフェクトした細胞から生じたコントロール条件培地中でインキュベートされた、細胞に対する誘導倍率として示される。各誘導倍率は、3つの複製の平均及び平均の標準誤差として示される。結果はFGFR1cを発現しているL6細胞における正規化されたルシフェラーゼ活性の誘導倍率は、非コントロールサンプル間で同等であったことを示している。しかし、FGFR4を発現しているL6細胞における誘導倍率は、天然型FGF21又はキメラFGF19ポリペプチドのいずれかと共に培養した細胞よりも天然型FGF19と共にインキュベートした細胞で有意に高かった。
【0291】
実施例9:キメラFGF19ポリペプチドの活性−第一部
この例では、天然型ヒトFGF19ポリペプチド由来のN末端ドメインを有するキメラポリペプチドを活性について測定した。すべてのアッセイされたポリペプチドはまた、C末端Flagエピトープ標識を含んでいた。HEK293S細胞は、クロトーβ(KLB)ポリペプチドをコードする発現ベクター、GAL4−Elk−1転写活性化因子(pFA2−Elk1、ストラタジーン社)をコードする発現ベクター、酵母GAL4の上流活性化因子(pFR−luc、ストラタジーン社)の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードする発現ベクター、及びウミシイタケルシフェラーゼ(pRL−SV40、プロメガ社)の構成的発現用ベクターにより一過性にトランスフェクトした。ラットL6筋芽細胞は、ヒトFGFR4ポリペプチド又はヒトFGFR1cポリペプチドの何れかをコードする発現ベクター、クロトーβ(KLB)ポリペプチドをコードする発現ベクター、GAL4−Elk−1転写活性化因子をコードする発現ベクター(pFA2−Elk1、ストラタジーン社)、酵母GAL4の上流活性化因子の制御下でホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードする発現ベクター(pFR−luc、ストラタジーン社)、及びウミシイタケルシフェラーゼの構成的発現用ベクター(PRL−SV40、プロメガ社)で一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションは、製造者の指示に従ってFuGENE HDトランスフェクション試薬(ロシュ・アプライド・サイエンス)を用いて行った。
【0292】
トランスフェクトされたHEK293S及びL6細胞は、上記のように、10%FBSを含むDMEMで一晩培養した。その後、細胞を洗浄し、25mg/Lのブタヘパリンを含有する無血清条件培地でさらに6時間培養した(それぞれの条件培地を作製し、実施例7に従って回収し、使用のため無血清培地の等量で希釈した)。条件培地は、天然型ヒトFGF21−FlagCポリペプチド(図11のA)、キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−1/Flag(表10のcFGF19/21−1/Flag;図11のB),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−2/Flag(表10のcFGF19/21−2/Flag;図11のC),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−3/Flag(表10のcFGF19/21−3/Flag;図11のD),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−4/Flag(表10のcFGF19/21−4/Flag;図11のE),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−5/Flag(表10のcFGF19/21−5/Flag;図11のF),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−6/Flag(表10のcFGF19/21−6/Flag;図11のG),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−7/Flag(表10のcFGF19/21−7/Flag;図11のH),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−8/Flag(表10のcFGF19/21−8/Flag;図11のI),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−9/Flag(表10のcFGF19/21−9/Flag;図11のJ),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21/19−29/Flag(表10のcFGF19/21/19−29/Flag;図11のK)又は天然型FGF19−Flagポリペプチド(図11のL)でトランスフェクトした細胞から回収した。
【0293】
図11を参照すると、各サンプルのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回行った。正規化されたルシフェラーゼ活性は、天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチドの活性を比較され、ここで、「+」は天然型ヒトFGF19−Fc融合ポリペプチドのそれと実質的に同等の活性を示し、「+/−」は中間の活性を示し、「−」は検出可能な活性がないことを示す。HEK293S細胞では検出可能な活性又は中間活性を示さなかった条件培地は、L6細胞で試験されなかった。
【0294】
実施例10:キメラFGF19ポリペプチドの活性−第2部
この例では、天然型ヒトFGF21ポリペプチド由来のN−末端ドメインを有するキメラFGF19ポリペプチドを活性について測定した。また、全てのアッセイされたポリペプチドは、C末端Flagエピトープ標識を含んでいた。アッセイは実施例9に記載の通り行った。条件培地は、天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチド(表10のFGF19−Flag;図12のA),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−1/Flag(表10のcFGF21/19−1/Flag;図12のB),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−2/Flag(表10のcFGF21/19−2/Flag;図12のC),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−7/Flag(表10のcFGF21/19−7/Flag;図12のD),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−8/Flag(表10のcFGF21/19−8/Flag;図12のE),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−9/Flag(表10のcFGF21/19−9/Flag;図12のF),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−10/Flag(表10のcFGF21/19−10/Flag;図12のG),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−11/Flag(表10のcFGF21/19−11/Flag;図12のH),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−12/Flag(表10のcFGF21/19−12/Flag;図12のI),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−13/Flag(表10のcFGF21/19−13/Flag;図12のJ)、又は天然型FGF21−FlagCポリペプチド(表10のFGF21−FlagC;図12のK)でトランスフェクトした細胞から回収した。
【0295】
図12を参照すると、各サンプルのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回行った。正規化されたルシフェラーゼ活性は、天然型ヒトFGF19−Fc融合ポリペプチドの活性を比較され、ここで、「+」は天然型ヒトFGF19−Fc融合ポリペプチドのそれと実質的に同等の活性を示し、「+/−」は中間の活性を示し、「−」は検出可能な活性がないことを示す。HEK293S細胞では検出可能な活性又は中間活性を示さなかった条件培地は、L6細胞で試験されなかった。
【0296】
実施例11:キメラFGF19ポリペプチドの活性−第3部
この例では、天然型ヒトFGF21ポリペプチド由来のN−末端ドメインを有するキメラFGF19ポリペプチドを活性について測定した。また、全てのアッセイされたポリペプチドは、C末端Flagエピトープ標識を含んでいた。アッセイは、トランスフェクトされたHEK293S細胞及びFGFR4でトランスフェクトされたL6細胞のみがアッセイに使用された点を除いて、実施例9に記載の通り行った。条件培地は、天然型ヒトFGF21−FlagCポリペプチド(表10のFGF21−FlagC;図13のA),天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチド(表10のFGF19−Flag;図13のB),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−1/Flag(表10のcFGF21/19−1/Flag;図13のC),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−2/Flag(表10のcFGF21/19−2/Flag;図13のD),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−3/Flag(表10のcFGF21/19−3/Flag;図13のE),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−4/Flag(表10のcFGF21/19−4/Flag;図13のF),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−5/Flag(表10のcFGF21/19−5/Flag;図13のG),又はキメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−6/Flag(表10のcFGF21/19−6/Flag;図13のG)でトランスフェクトした細胞から回収した。
【0297】
図13を参照すると、各サンプルのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回行った。正規化されたルシフェラーゼ活性は、天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチドの活性を比較され、ここで、「+」は天然型ヒトFGF19−Flagnポリペプチドのそれと実質的に同等の活性を示し、「+/−」は中間の活性を示し、「−」は検出可能な活性がないことを示す。HEK293S細胞では検出可能な活性又は中間活性を示さなかった条件培地は、L6細胞で試験されなかった。
【0298】
図13は、アッセイされたポリペプチドのN末端部分のそれぞれのアミノ酸配列の提案されたアラインメントを示す。各ポリペプチド内の保存されたLYT及びLxxIxxGモチーフに対応する選択されたアミノ酸残基は線描ボックスによってアラインメントに示されている。
【0299】
実施例12:キメラFGF19ポリペプチドの活性−第4部
この例では、天然型ヒトFGF21ポリペプチド由来のN−末端ドメインを有するキメラFGF19ポリペプチドを活性について測定した。また、全てのアッセイされたポリペプチドは、C末端Flagエピトープ標識を含んでいた。アッセイは、実施例9に記載の通り行った。条件培地は、天然型ヒトFGF21−FlagCポリペプチド(図14に示された),天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチド(図14に示された),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−2/Flag(cFGF21/19−2/Flag表10の;図14のA),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−3/Flag(cFGF21/19−3/Flag表10の;図14のB),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−4/Flag(cFGF21/19−4/Flag表10の;図14のC),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−5/Flag(cFGF21/19−5/Flag表10の;図14のD),キメラFGF19ポリペプチドcFGF21/19−6/Flag(cFGF21/19−6/Flag表10の;図14のE),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21/19−1/Flag(cFGF19/21/19−1/Flag表10の;図14のF),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21/19−2/Flag(cFGF19/21/19−2/Flag表10の;図14のG),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21/19−3/Flag(cFGF19/21/19−3/Flag表10の;図14のH),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21/19−4/Flag(cFGF19/21/19−4/Flag表10の;図14のI),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21/19−5/Flag(cFGF19/21/19−5/Flag表10の;図14のJ),キメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21/19−6/Flag(表10のcFGF19/21/19−6/Flag;図14のK)、又はキメラFGF19ポリペプチドcFGF19/21−1/Flag(表10のcFGF19/21−1/Flag;図14のL)でトランスフェクトした細胞から回収した。
【0300】
図14を参照すると、各サンプルのホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化し、各サンプルの条件は三回行った。正規化されたルシフェラーゼ活性は、天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチドの活性を比較され、ここで、「+」は天然型ヒトFGF19−Flagnポリペプチドのそれと実質的に同等の活性を示し、「+/−」は中間の活性を示し、「−」は検出可能な活性がないことを示す。HEK293S細胞では検出可能な活性又は中間活性を示さなかった条件培地は、L6細胞で試験されなかった。
【0301】
図14は、アッセイされたポリペプチドのN末端部分のそれぞれのアミノ酸配列の提案されたアラインメントを示す。各ポリペプチド内の保存されたLYT及びLxxIxxGモチーフに対応する選択されたアミノ酸残基は線描ボックスによってアラインメントに示されている。
【0302】
実施例13:キメラFGF19ポリペプチドによるSTAT5脱リン酸化の減少
この例では、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、STAT5脱リン酸化に及ぼす影響について試験された。5週齢の雄のC57BL/6Jマウス(各々18から19グラム程度)が皮下に天然のヒトFGF21−Hisポリペプチド(カタログ番号2539-FG-025/CF、R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)、キメラFGF19−Flagポリペプチド(表10のcFGF21/19−2/Flag;配列番号242)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)担体コントロールを重複して注入した。ポリペプチドは、PBSに溶解し、二日間毎日二回、1mg/kg(1回の注射でおよそ20μgのポリペプチド)の投与量で与えられた。続く三日目の朝に、マウスは、腹腔内に、各ポリペプチド又はコントロールを5回目の最後の1mg/kgの用量で注射し、2時間後に屠殺した。肝臓が各マウスから回収され、核抽出物が核抽出キット(カタログ番号10009277、ケイマンケミカル、アナーバー、ミシガン州)を使用して、肝臓から調製された。それぞれの核抽出物のサンプルについては、蛋白質の22.5μgがSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動することによって分離され、Tyr694でリン酸化されているStat5タンパク質に特異的な抗体を用いたイムノブロッティングにより分析した(カタログ番号9314、セルシグナリングテクノロジー、ダンバース、マサチューセッツ州)。負荷対照として使用される非特異的バンドが(NS)が各レーンでほぼ同じ量で検出可能であることが示されている。同様の結果がTyr694リン酸化型Stat5(カタログ番号9359、Cell Signaling Technology)に特異的な別のモノクローナル抗体に対するTry694リン酸化−Stat5のレベルについては同様の結果が観察された(データ非開示)。
【0303】
図15を参照すると、その結果、Tyr694リン酸化型Stat5タンパク質は天然型FGF21ポリペプチドを注入したマウスでは検出されなかったことを示している。しかし、キメラFGF19ポリペプチドを注入したマウスではリン酸化型Stat5タンパク質の有意なレベルを示した。
【0304】
実施例14:キメラFGF19ポリペプチドによる足場非依存性増殖の促進の減少
この例では、本発明のキメラFGF19ポリペプチドは、KLB及びFGFR4を発現するヒト肝癌HepG2細胞の足場依存性増殖おける影響が検討された。96穴プレートは、溶融ベースアガー(DMEM、0.5%アガロース、及び10%FBS)がウェルあたり50μLで満たされた。ベースアガーが凝固した後、50μLの溶融トップアガー液(DMEM、0.35%アガロース及び10%FBS)に懸濁した約670のHepG2細胞が、各ウェルのベースアガーに添加され、凝固させた。
【0305】
細胞懸濁液の凝固に続いて、増殖培地(DMEM及び10%FBS)の20μLが、指定された日の第0日目に各ウェルに添加された。与えられた実験のサンプルについては、増殖培地は、さらに、天然型ヒトFGF19−Flagポリペプチド、天然型ヒトFGF21−Hisポリペプチド(カタログ番号2539−FG−025/CF、R&Dシステムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)、キメラFGF19−flagタグ付きポリペプチド(cFGF21/19−2/Flag;配列番号242)を含むか、又はコントロールとしてFGFポリペプチドを含まないかの何れかであった。第0日目に追加された増殖培地中のポリペプチド濃度は、各ウェルの最終濃度がそれぞれ20ng/mL又は200ng/mLとなるように、120ng/mL又は1200ng/mLの何れかであった。続く、第2日、第4日、第6日、及び第8日の各日に、増殖培地の更に20μLが各ウェルに添加され、ここで所定のウエルに添加された増殖培地は前回そのウエルに適用されたのと同じFGFポリペプチドを含むが、第0日の量に対して6分の1の濃度のFGFポリペプチド(すなわち、20ng/mL又は200ng/mL)である。サンプルウェルのサブセットは、またバックグラウンドの蛍光シグナルを与えるためにG418タンパク質合成阻害剤で処理した。
【0306】
第9日目に、10μLのAlamarBlue試薬(カタログ番号DAL1100、インビトロジェン)を各ウェルにサンプルに添加し、そのプレートはさらに5時間インキュベートされ、各ウェルの総代謝活性をアッセイした。得られた蛍光強度は、EnVisionマルチラベルリーダー(パーキンエルマー)を使用して測定した。各サンプルの5つの複製が試験された。
【0307】
図16を参照すると、結果は、バックグラウンド上記の蛍光強度として示され、5つの複製の平均と標準偏差を表している。結果は、細胞の足場非依存性増殖の指標として提案される総代謝活性は、天然型ヒトFGF19ポリペプチドの添加により促進されたが、そのような活性は、天然型ヒトFGF21ポリペプチド又はキメラFGF19ポリペプチドの追加により減少した(スチューデントt試験にしたがって0.05未満(<0.05)p値が偽処置サンプルと比較された)。
【0308】
実施例15:FGF19はFGFR4依存性及び非依存性経路を介して細胞増殖、グルコース及び胆汁酸の代謝を調節する
FGFR4を活性化する能力が時に損なわれている、Fgfr4遺伝子欠損マウス並びにFGF19のタンパク質変異体を用いてFGF19の活性を媒介するFGFR4の必要性を調べる。
【0309】
材料と方法
組換えFGF蛋白質の発現。FGF19、FGF21、及びキメラのアミノ酸配列が構築され、そのキメラコンストラクトの図は図18Bに示されている。図18Bに示された1−17の番号のコンストラクトは、それぞれ、配列番号1、配列番号270(RPLAFSDAGPHVHYGWGDPIRLRHLYTSGPHGLSSCFLRIRADGVVDCARGQSAHSLLEIKALKPGTVAIKGVHSVRYLCMGADGKMQGLLQYSEEDCAFEEEIRPDGYNVYRSEKHRLPVSLSSAKQRQLYKNRGFLPLSHFLPMLPMVPEEPEDLRGHLESDMFSSPLETDSMDPFGLVTGLEAVRSPSFEK)、配列番号74、配列番号5、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号271、配列番号272、配列番号273、配列番号274、配列番号275、配列番号276、配列番号277、配列番号278、配列番号85、及び配列番号2のアミノ酸配列を含むコンストラクトに対応する。図18Bに示す全てのコンストラクトはまた、N末端(分泌時に切断)でシグナル配列、及びC末端でflag標識(DYKDDDDK(配列番号279))を含む。
【0310】
特に断りのない限り、一過性にトランスフェクトされたCHO細胞で生産され、PBS中で均質に精製された組換えヒトFGF21、FGF19及び変異体を実験に使用した。いくつかの実験では、FGF21(2539−FG/CF、R&Dシステム)由来の大腸菌を使用した。全ての精製タンパク質は、他のアッセイに応用の前に細胞ベースのGAL−Elk1アッセイにより活性について試験した。図18B、18C、20における実験のために、FGFタンパク質が一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞で発現され、アッセイのために、新鮮な状態の無血清培地を精製しせずに使用した。
【0311】
ルシフェラーゼアッセイ。全ての細胞は、5%CO2下37℃で、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。96ウェルプレートでラットL6筋芽細胞は、FuGENE HDトランスフェクション試薬(ロシュ・アプライド・サイエンス)を用いて、ウミシイタケルシフェラーゼ(PRL−SV40、プロメガ)、ヒトKLB、適切なヒトFGFR、GAL4−Elk−1転写活性化因子(pFA2−Elk1、ストラタジーン)、及びGAL4結合部位(PFR−luc、ストラタジーン)を駆動するホタルルシフェラーゼレポーターをコードする発現ベクターで一過性にトランスフェクトした。翌日、トランスフェクトした細胞は、25mg/Lのブタヘパリン(シグマ)及び種々の濃度のFGFタンパク質を含む無血清培地中で更に6−8時間培養した。次に、細胞をPLB試薬(プロメガ)で溶解し、各ウェルのルシフェラーゼ活性が、Dual−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ)及びEnVisionマルチラベルリーダー(パーキンエルマー)を用いて決定した。ホタルルシフェラーゼ活性は共発現ウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化され、3つの複製の平均及び平均の標準誤差として示される。
【0312】
足場非依存性細胞増殖アッセイ。96穴プレートは、増殖培地中の0.5%溶融アガロースを50μL/ウェルで充填された。ベースアガロースが凝固した後、50μLのトップ溶融アガロース液(増殖培地中の0.35%アガロース)に懸濁した約670のHepG2細胞が、各ウェルのベースアガーに添加され、凝固させた。凝固後、FGF蛋白質の適切な量を含有する増殖培地20μLが、指定された第0日目に各ウェルに添加された。続く、第2日、第4日、第6日、及び第8日の各日に、適量のFGFタンパク質とともに増殖培地の更に20μLが各ウェルに添加された。サンプルウェルのサブセットは、バックグラウンド蛍光シグナルを与えるために、タンパク質合成阻害剤ジェネテシン(インビトロジェン)で処理した。第9日目に、10μLのAlamarBlue試薬(インビトロジェン)を各サンプルウエルに添加し、プレートはさらに5時間インキュベートした。得られた蛍光強度は、EnVisionマルチラベルリーダー(パーキンエルマー)を使用して測定し、各ウェルの総代謝活性の指標として使用された。各サンプルの5つの複製が試験された。
【0313】
FGFR/リガンドの結合アッセイ。Desnoyersら(Oncogene 27(1):85-97 (2008))で説明されたように、2μg/mLのヘパリンの存在下でビオチニル化抗FGF19抗体(BAF969、R&Dシステム)を使用して、FGF19及びFGF19vのFGFR−結合活性を測定した。コントロールELSA実験は、抗FGF19抗体(AF969、R&Dシステム)、及びビオチン化抗FGF19抗体(BAF969、R&Dシステム)を用いて行い、抗体がFGF19及びFGF19vに対して区別が付かない様式で反応することを確認した。
【0314】
マウスの研究。マウスは21℃の病原体フリーの動物施設において標準的な12時間の光/12時間の暗のサイクルの下で、固形飼料(標準的な齧歯類固形飼料(Labdiet5010、脂肪から12.7%のカロリー)又は高脂肪、高炭水化物食(Harlan Teklad TD.03584、脂肪から58.4%のカロリー)及び水へ自由にアクセスさせて維持された。雄マウスを全ての実験に使用した。C57BL/6バックグラウンドでのFGFR4ノックアウト(KO)マウスは、以前Weinstein et al., Development 1998 125(18):3615-23(1998)に記載された。C57BL/6マウス、C57BL/6バックグラウンドでのob/obマウス、及びFVB/NJマウスはジャクソン研究所から購入した。FGFタンパク質の継続的な注入のため、浸透圧ポンプ(Alzet2001)は皮下に移植した。ブドウ糖負荷試験では、グルコースレベルは、ワンタッチウルトラグルコメーターを用いて測定した。統計情報は、スチューデントのt検定で行った。値は、平均+/−標準誤差(SEM)として提示した。{Nicholes、2002#79}で説明したようにBrdU染色を行い、BrdU陽性肝細胞は、Ariol自動画像解析システムを用いてカウントした。全ての動物試験はジェネンテックの動物実験と使用に関する委員会の承認されたプロトコルのもとで実施された。
【0315】
血清分析。総コレステロール、トリグリセリド、β-ヒドロキシ酪酸(BHB)、乳酸サーモDMA及び非エステル化脂肪酸(ロシュ)は、酵素反応を用いて決定した。血清インスリンレベルは、ELISA(crystal chem)によって決定された。以前に説明されたように(Stedman et al., J Biol Chem. 279(12):11336-43 (2004))、BA組成物は、液体クロマトグラフィー−質量分析により決定された。
【0316】
遺伝子発現分析。組織のRNAはQIAzol試薬(キアゲン)を用いて単離した。cDNAは、Quantitect逆転写キット(キアゲン)で合成した。リアルタイム定量PCRのために、サンプルはSYBRグリーンユニバーサルミックス(インビトロジェン)を使用するか、又はTaqManユニバーサルミックス(ロシュ)により、ABIプリズム7900HT(アプライドバイオシステムズ)で3通りに実行され、36B4のレベルで正規化された。GK、SHP、Cyp8b1、IGFBP2、及びAFPに対する事前に設計されたQuantitectプライマーは、キアゲンから入手し、他の全てのプライマーは、プライマーエクスプレスソフトウェア(アプライドバイオシステムズ)を用いて設計された。
【0317】
A.FGFR4は、組換えFGF19によって、血清胆汁酸を調節するが、耐糖能の改善を調節しない
代謝作用の何れがFGF19によって誘発され、FGFR4によって媒介されるかを決定するために、HFD給餌野生型又はFgfr4ノックアウトマウスは、組換えFGF19またはビークルコントロールで処置され、代謝表現型及び遺伝子発現が調べられた。FGF19への持続的な曝露を実現するために、6週間の高脂肪食を受けた12週齢から15週齢のFGFR4野生型マウス及びノックアウトマウスに浸透圧ポンプを移植し、継続的に1ng/時間でFGF19を注入した。これは、ELISAにより測定すると26ng/mlの平均FGF19の血清濃度を達成し、これはヒトにおいて循環するFGF19の濃度よりもおよそ50倍から250倍以上高い。第6日目に、一晩絶食したマウスは、1g/kgのグルコースの静脈内注射によるブドウ糖負荷試験に供された。FGF19注入は、野生型及びFgfr4ノックアウトマウスの両方で耐糖能を同程度に改良し(図17A)、FGFR4はHFD給餌マウスにおいて耐糖能の改善のためには不必要であることを示す。FGF19の持続注入は、有意な体重減少を誘導せず、従って耐糖能改善は、体重とは無関係であった。第7日までに、野生型及びFgfr4ノックアウトマウスの両方で、FGF19は肝臓重量及び血清インスリンを減少させると同時にケトン体(BHB)の形成を増加させている(図17B)。Fgfr4ノックアウトマウスでは治療前に乳酸及びトリグリセリドのレベルの減少を示したにもかかわらず、FGF19はまた、野生型マウスにおいて血清乳酸及びトリグリセリドを減少させるがFgfr4ノックアウトマウスでは減少させない(図17B)。
【0318】
BA代謝の変化を評価するために、血清BA組成物は、液体クロマトグラフィー- 質量分析によって決定された(図17C)。FGF19の注入は、野生型マウスにおいて、CDCA(CDCA)の代謝に対する影響を最小限に抑えながら、遊離及びタウリン抱合胆汁酸(CA)及びCAから派生した二次胆汁酸デオキシコール酸を減少させた。この知見は、BA合成の代替(酸性)経路へのシフト、FGF19で抑制されたCYP7a1を迂回しCyp7b1経由で進むことと一致している(図17D)。それに応じて、ムリコール酸(CDCAの水酸化代謝物)を減少させながら、FGFR4の喪失は、CAとその代謝物の基底レベルを増加させ、FGFR4は胆汁酸合成の調節因子として重要であるだけでなく、また、CDCA生産に対するCAの比率の決定要因であることを示している。肝臓の遺伝子発現の調節におけるFGFR4の役割を決定するために、QPCRによる肝mRNAの範囲を検討した(図17D)。FGF19注入は、野生型において、細胞増殖マーカー、例えばEgr−1、c−Fos及びAFPなどの発現を誘導しCyp7a1の発現を抑制したが、Fgfr4ノックアウトマウスではそうでは無い。対照的に、野生型及びFgfr4ノックアウトマウスの両方で、FGF19はCyp8b1及びグルコキナーゼ(GK)を抑制したが、Cyp8b1及びCyp27a1の基底発現レベルは野生型マウスと比べてFgfr4ノックアウトマウスにおいてはるかに高かった。Cyp8b1は、胆汁の合成のために必須であるが、CDCAには必須では無く、従って、Cyp8b1発現で観測された変化は、Fgfr4ノックアウトマウスにおいてCA及びCDCA代謝産物(ムリコール酸)間のバランスの変化の一因となる(図17C及びD)。まとめると、我々が得た知見はFGFR4はBA合成の調節因子であり肝細胞増殖へ影響を及ぼすが、グルコース利用、インスリン感受性、及びFGF19によるケトン体産生の調節に必要ではない。
【0319】
B.FGFR4活性化が特異的に減少したFGF19変異体の同定。
FGF19によるFGFRの特異的活性化を定量的に評価するために、FGF−応答性GAL−Elk1ルシフェラーゼレポーターアッセイがラットL6細胞に導入された。このアッセイにおいて、リガンドのFGFR対する効果的な結合は、内因性のMAPキナーゼ経路の活性化をもたらし、Elk−1活性化ドメイン及びGAL4のDNA結合ドメインから成るキメラ転写活性化因子の活性化につながる。L6細胞は機能的FGFRまたはKLBを欠いており、同族受容体と共トランスフェクションした場合にFGF19又はFGF21に反応するのみである。L6細胞は、GAL−Elk1と、SV40−ウミシイタケルシフェラーゼ、及びGal応答性ホタルルシフェラーゼレポーターと一緒に、KLB及びFGFR(FGFG1cまたはFGFR4)の発現ベクターで共トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をルシフェラーゼアッセイの前に6時間、増加した濃度のFGF19又FGF21を含む培地でインキュベートした。ルシフェラーゼアッセイの結果は、FGF19及びFGF21は、KLBの存在下、同様の効能と効果で、FGFR1c、2cおよび3cを活性化したことを示している(図18A及び19)。対照的に、FGF21ではなくFGF19は、KLBの存在下で、効率的にFGFR4を活性化した(図18A)。FGFR4活性化のために必要なシグナルをマッピングするために、FGF19及びFGF21の間で数多くのキメラコンストラクトが、接合部(図18B)を形成するために保存された残基を使用して生成された(図18B)。配列は、材料及び方法のセクションで「組換えFGF蛋白質の発現」と題して上で議論されている。各FGFコンストラクトは、一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞で発現させ、分泌キメラFGFタンパク質を含む培養上清は、KLBを発現するL6細胞中のFGFR1c及び/又はFGFR4の活性化について、GAL−Elk1レポーターアッセイを用いて試験された。FGFR1cとFGFR4の活性に基づいて、キメラコンストラクトは、4クラスに分類された:高いFGFR1c及びFGFR4活性(クラスI、FGF19様);高いFGFR1c活性、及び低いが検出可能なFGFR4活性(クラスII);検出可能なFGFR4活性のない高FGFR1c活性(クラスIII、FGF21様)、及び乏しい発現のために非常に低いか又は検出できないFGFR1c及びFGFR4活性(クラスIV)(I−III、図18C及び20;IVは非表示)。このマッピングは、FGF19のN末端39アミノ酸がFGF21に転移される場合、一部のFGFR4活性を付与するのに十分であることが示された。加えて、FGF19のN末端24アミノ酸及びC末端49アミノ酸は完全なFGFR4活性に必要であるが、FGF21に転移される場合、FGFR4活性を付与するのに十分ではない。従って、FGF19のN末端とC末端の両方における複数のシグナルがFGFR4活性化に寄与している。
【0320】
クラスII分子に分類される一つのキメラコンストラクトは、FGF21アミノ酸の1から20及びFGF19の25から194から成り(FGF19に90%を超えて同一)、CHO細胞中での大規模合成のために選択され、この変異体は「FGF19v」と言う。ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して、FGF19と比較すると、FGF19vタンパク質はKLBとFGFR1cでトランスフェクトしたL6細胞中のFGF19と同様の用量依存的な活性を示した(図18D)。しかし、FGF19v活性は、FGFR4単独か又はFGFR4とKLBの組み合わせのいずれかでコトランスフェクトしたL6細胞で著しく減少し(図18D)、FGF19はKLBの非存在下でさえも直接FGFR4に結合することが以前に示されている。FGF19は、しかしFGF19vでなく、FGFR4に対して用量依存的な結合活性を示した(図18EとF)。
【0321】
C.FGFR4はインビトロ及びインビボにおいて幹細胞増殖を仲介する。
FGF19vの活性は、さらに一晩絶食したFVBマウスへの静脈内注射によるFGF19及びFGF21と比較してインビボで試験された。肝臓は、注射4時間後に回収され、肝臓のmRNA発現は、QPCRにより決定した。FGF21によるのでなく、FGF19により急性誘導された遺伝子、例えばEgr−1及びc−Fosが、FGF19vにより効率的に誘導されなかったことは、FGF19vのFGFR4活性の減少と一致している(図21A)。FGF19vは、FGF19又はFGF21と同様の活性を有しており、GKのように、遺伝子はFGF19及びFGF21により共制御されていた(図21B)。Fgfr4ノックアウトマウスを用い、FGFR4はFGF19によりEgr−1及びc−Fosの調節に寄与するが、GKの制御には寄与しない(図21B)。予期せずに、FGF21(並びにFGF19及びFGF19v)はSHP及びCyp7A1の発現の変化させ(図21A)、これは、FGF19によるFGFR4依存的な調節に対する主要な標的であることが提案された。FGF19及びFGF21によるSHP及びCyp7A1の変化は、Fgfr4ノックアウトマウスにおいてさえも観察され、この急性治療では、両方の内分泌FGFが、FGFR4非依存性経路を介してこれらの遺伝子の発現を調節することができることを示している(図21B)。
【0322】
FGF19は、軟寒天中HepG2細胞の足場非依存性増殖を増加させ、かつこの作用はFGF19v又はFGF21タンパク質において一層不明確であった(図21C)。FGF19vはまた、インビボでの肝細胞増殖を誘導する能力の低下を示したかどうかを確認するため、マウスは浸透圧ミニポンプによってFGF19、FGF19v(1ng/時間)又はビークルコントロールが注入された。更に、1mg/kg/日のFGFタンパク質が、高いピーク暴露を達成するために同じマウスに7日間毎日腹腔内に注射された。断続的な増殖イベントを捉えるために、BrdU溶液(30mg/kg)を1日2回合計13回注射した。肝細胞増殖は、7日目に収穫された肝臓におけるBrdU陽性の肝細胞を測定することにより決定した。既報の通り、FGF19処置によりBrdUの取り込みが劇的に増加したが、この応答はFGF19vにおいて著しく鈍くなった(図21D及びE)。Egr−1、c−Fosの肝mRNA、及び肝細胞増殖マーカーAFPはすべて劇的にFGF19によって誘導され、かつこれらの誘導はFGF19vにおいては大きく欠損していたが、GK、Cyp7A1及びCyp8b1の制御についてはFGF19とFGF19vの間に差は認められなかった(図21F)。
【0323】
D.FGFR4はFGF19によるob/obマウスにおける高血糖の寛解に必要でない。
上記のインビトロ及びインビボにおける結果は、FGF19v、FGFR4活性及び増殖能が減少したFGF19の変異体が、糖尿病の動物の高血糖を、FGF21が行うように改善することができるかどうかについて問題を提起した。FGF21、FGF19v(1ng/1時間)又はビークルコントロールは、ob/obマウスに浸透圧ミニポンプを用いて継続的に皮下に注入された。注入により有意に体重に影響を与えなかったが(図22A)、FGF21及びFGF19vの両方がランダムな給餌と絶食マウスの両方で劇的に血糖値を低下させ(図22A及びB)、循環する遊離脂肪酸レベルを低下させ(図22C)、かつ耐糖能を改善した(図22D)。
【0324】
肝細胞増殖を可視化するため、動物は、7日目に屠殺する4時間前に、BrdUを注射した。FGF21もFGF19vのどちらも肝BrdUの取り込みを増加させず(非開示)、むしろ総肝重量が有意に減少し(図22E)、かつAFPのmRNAの肝発現の有意な変化はは認められなかった(図22F)。まとめると、FGF19vは、肝細胞増殖の誘導なしで、肥満マウスの代謝状態を改善することができる。
【0325】
数多くの遺伝子が同定され、FGF21及びFGF19vで処置されたob/obマウスにおいて共通に変化した発現を示した。肝臓では、両方のタンパク質がIGFBP2(最近明らかになった抗糖尿病タンパク質)、及び抑制ステアロイル−コエンザイムA不飽和化酵素1(SCD−1;脂質合成遺伝子)及びCyp8b1(CA及びCDCAの間の生産バランスの決定因子)を誘導した。加えて、それらは両方とも、褐色脂肪組織において、UCP−1(適応熱発生)、SCD−1及び中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD、ミトコンドリアの脂肪酸酸化)及び白色脂肪組織においてSREBP−1C(脂質合成転写因子)を誘導した(図22F)。したがって、複数の組織内での作用がFGFR4非依存性メカニズムを介して作用するFGF21及びFGF19vの抗糖尿病作用を媒介する可能性がある。
【0326】
個々の血清BAを調べることによって、Fgfr4を介して作用する組換えFGF19は、Cyp7a1を抑制することが実証され、Cyp7a1非依存性の別の(酸性)経路により進行する胆汁酸の合成を引き起し、CAを犠牲にしてCDCAの生産をもたらす。Cyp8b1の発現はFgfr4ノックアウトマウスでは数倍増加し、そのFGF19の処置はCyp8b1、CAの合成に必須の酵素による工程を抑制する。FGFR4はCyp7a1及びCyp8b1の両方の負の制御を介して、CAの生産に対するCDCAの比率の決定因子であった。FGFR4の活性化は、CDCAへBA生産をシフトさせ、一方その抑止はCA形成をもたらす。更に、FGF19はFgfr4依存的に肝AFPの発現を増加させた。FGF19は、HFD給餌FGFR4ノックアウトマウスにおける耐糖能を改善し(図17)、FGFR4結合及び活性化のために損なわれたタンパク質であるFGF19vは、ob/obマウス(図18と21から22)で高血糖を寛解する(図18及び図21−22)。インスリン抵抗性及び糖代謝における作用に加えて、FGF19はFGF21のように、FGFR4ノックアウトマウスにおける血清BHB濃度を増加させる(図17)。FGF19及びFGF21の両方が、KLBの存在下でFGFR1c、FGFR2c、及びFGFR3cに結合し、そして活性化する。従って、FGFR1c、FGFR2c、及びFGFR3cは、KLBと協働してFGF19及びFGF21の共通の代謝作用を媒介し得る。
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図17A-B】
図17C-D】
図18A
図18B-C】
図18D
図18E-F】
図19
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図21A-B】
図21C-D】
図22A-B】
図22C-D】
図22E-F】
図21E-F】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]