特許第6016640号(P6016640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016640
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】金属集成体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/01 20060101AFI20161013BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20161013BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20161013BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
   B32B15/01 K
   H01B5/02 A
   C22F1/04 Z
   !C22F1/00 624
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 685Z
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-556541(P2012-556541)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公表番号】特表2013-522068(P2013-522068A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011053748
(87)【国際公開番号】WO2011110686
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】1051808
(32)【優先日】2010年3月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502205846
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク
(73)【特許権者】
【識別番号】500482027
【氏名又は名称】セーエヌアーエム‐コンセルバトワール、ナショナル、デ、ザール、エ、メティエ
【氏名又は名称原語表記】CNAM−CONSERVATOIRE NATIONAL DES ARTS ET METIERS
(73)【特許権者】
【識別番号】505110653
【氏名又は名称】エコール・ノーマル・スーペリユール・ドゥ・カシャン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】プルヴォン ローラン
(72)【発明者】
【氏名】コラール ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】カプラン ルノー
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ ピエール
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−215027(JP,A)
【文献】 特開2004−136357(JP,A)
【文献】 特開平05−307913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01B 5/00− 5/16
C22F 1/00− 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属からなる金属層が、第2の金属からなる金属体(10)の表面に形成されてなるアルミニウム/金属の金属集成体(1)の製造方法であって、
前記第1又は第2の金属はアルミニウムであり、且つ前記金属層は、金属発泡体(20)であり、
前記方法は、
−前記金属体(10)の表面に開小孔(open porosity)を有する前記金属発泡体(20)を配置するステップ(100)と、
−前記金属発泡体(20)を前記金属体(10)の表面に組み込むように、前記金属発泡体(20)に機械的応力を付加する応力付加ステップ(200)と、
を備え、
前記金属発泡体(20)の前記開小孔の直径は、1ミリメートル未満であり、
前記金属体(10)の寸法において、
一方向の寸法>>前記一方向とは異なる二方向の其々の寸法
の関係を満たし、
前記金属体(10)は、ワイヤ、ケーブル又は棒材であり
機械的応力が、前記金属発泡体(20)の前記金属体(10)への圧着により付加されることを特徴とするアルミニウム/金属集成体(1)の製造方法。
【請求項2】
前記第1の金属は、銅、ニッケル、鉄、およびアルミニウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属体(10)は、ワイヤ又はケーブルであり、前記機械的応力は、前記金属体(10)上の前記金属層の一部分において圧着又は圧延により付加され、
前記圧着は、内側面が前記金属発泡体(20)により覆われているポッドを用いて完成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属発泡体(20)は、前記金属体(10)の表面全体に組み込まれる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属集成体(1)の前記金属発泡体(20)に、第3の材料からなる付加的な金属層(10')を適用する前記金属層の緻密化ステップを更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記付加的な金属層(10')には、化学堆積物又は電解堆積物が適用される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記付加的な金属層(10')は、前記配置(100)および前記応力付加(200)のステップを反復することにより前記金属集成体(1)の前記金属発泡体(20)の表面に組み込まれる付加的な金属発泡体である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の金属はアルミニウムであり、前記金属体(10)上の前記金属発泡体(20)の配置ステップ(100)の前に、
−前記アルミニウム金属体(10)の表面に存在する酸化物層の同素変態によってアルミナα層を生成し安定させるために、前記アルミニウム金属体(10)をその構成材料の溶融温度の80%〜100%の温度にすることにより前記アルミニウム金属体(10)を熱処理するステップと、
−前記アルミニウム金属体(10)を冷却するステップと、
を更に有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の金属は、
−銅、アルミニウム、
−アルミニウム、銅、
−ニッケル、アルミニウム、
−アルミニウム、ニッケル、
−鉄、アルミニウム、および
−アルミニウム、アルミニウム
のうちいずれか一対の金属から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属体(10)はワイヤ又はアルミニウムケーブルであり、前記金属層は銅である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、アルミニウム/金属集成体の製造に関する。詳細には、本発明は、強い結合力を有する金属集成体を製造するために集積されたアルミニウム体と金属被膜を備える集成体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは、優れた耐酸化性、低密度、高い伝導率を有し、可撓性のある常磁性の金属である。実際には、アルミニウムが大気中で酸化される際に、アルミニウムの表面が酸化されてアルミニウムを保護するアルミナの薄い層が急速に形成される。この天然のアルミナ層は、約1〜5マイクロメートルの厚さを有する。
【0003】
しかしながら、アルミナは、アルミニウムとは異なり、高い絶縁性を有し、特に、他の金属(例えば、鉄、鋼鉄、又は銅)上において、アルミニウムが付着することを防ぐバリアを形成する。また、いくつかの応用例においては、アルミニウムの特性、特にその伝導率、低密度等だけではなく、特に鋼鉄、ニッケル、又は銅が呈する磁性、破壊耐性、溶接性、剛性、より優れた伝導率等の付加的な特性を有する材料が必要となる。
【0004】
アルミニウム系合金の製造は、しばしば多くの問題を呈する。典型的には、平衡状態図は、強磁性材料を有するアルミニウム系合金が可能であることを示すが、それらの合金は、限られた数の化合物のみを形成する可能性が高く、機械的に脆弱であり、常磁性を有する。また、アルミニウムからなる物体と、別の金属、特にニッケル、銅、鉄、又はコバルト等による被膜とを備える金属集成体の製造および形成は、製造者にとって興味のあるものである。現状としては、軽量で剛性のある金属集成体は、全ての種類の金属、特に、通常わずかな密着力しか持たないアルミニウムに対しては、容易に実施することができない溶接、接着等による集積を必要とする。
【0005】
例えば、導電体の分野においては、優れた導電性を有し、強固で耐久性があり、設置の際に受ける可能性のある機械的応力に対する抵抗力を有するだけでなく、軽量かつ低コストの導体を製造することを目的としている。通常、電線に最もよく使われる銅は、優れた熱伝導性および電気伝導性を有し、強固かつ耐久性のある導体を生成する。しかし、これらの導体は高密度であり、全ての分野で用いられるわけではない。特に、航空学や宇宙研究の分野においては利用できない。一方、アルミニウムは、低密度のため、特に、導体の質量が技術力につながるそれらの分野において適用される。
【0006】
アルミニウムは、典型的には、高出力電気の輸送にしばしば用いられる。しかし、アルミニウムは、銅と比べて導電性が低く、より高い可鍛性を有するため壊れやすい。よって、アルミニウムは、どんな種類の電気設備にも用いられるわけではない。さらに、アルミナ層がアルミニウムの表面に形成され、上述の通り、アルミナ層が、溶着を防ぎ、かつ、非導電性であるので、アルミニウムによる接合が困難である。それゆえ、多くの場合、特定の接合手段を用いる必要がある。
【0007】
従って、アルミニウムと、銅等の別の金属により構成される金属集成体を得て、これらの材料の有利な特性を組み合わせるという課題が存在していた。従来知られている方法は、実施が困難であり、比較的高コストなものであった。典型的には、アルミナ層が存在するために、アルミニウム上の金属の化学堆積物又は電解堆積物の堆積物は非常に少ない。
【0008】
別の周知の方法では、プラズマによって銅等の金属をアルミニウム体に突出させるものがある。しかし、この方法は実施が困難であり、高コストである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、再生可能で低コストのアルミニウム/金属集成体の製造方法を提供することであり、エネルギー消費量が低く、アルミニウムおよび別の金属の性質を同時に呈する集成体を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、第1の金属からなる金属層が、第2の金属からなる金属体の表面に形成されてなるアルミニウム/金属の金属集成体の製造方法であって、前記第1又は第2の金属はアルミニウムであり、前記方法は、
−前記金属体の表面に開小孔(open porosity)を有する金属発泡体を配置するステップと、
−前記金属発泡体を前記金属体の表面に組み込むように、前記金属発泡体に機械的応力を付加するステップと、
を備えることを特徴とするアルミニウム/金属集成体の製造方法を提供する。
【0011】
いくつかの(限定されないが)好ましい態様において、本発明に係る方法は以下の特徴を有する。
・前記第1の金属は、銅、ニッケル、鉄、およびアルミニウムからなる群から選択される態様がある。
・前記金属体は、ワイヤ、ケーブル、棒材、箔、および金属シートである態様がある。
・前記金属体は、アルミニウム箔又はアルミニウムシートであり、前記金属体を前記金属発泡体とともに圧延、プレス成形、型押、鍛造、又はスタンピングすることにより前記金属集成体に機械的応力を付加する態様がある。
・圧延は低温で行う態様がある。
・前記金属体は、ワイヤ又はケーブルであり、前記機械的応力は、前記金属体上の前記金属層の一部分において圧着又は圧延により付加される態様がある。
・前記圧着は、内側面が前記金属発泡体により覆われているポッド(pod)を用いて行われる態様がある。
・前記金属発泡体は、前記金属体の表面全体に組み込まれる態様がある。
・本方法は、前記集成体の前記金属層に、第3の材料からなる付加的な金属層を適用する前記金属層の緻密化(densification)ステップを更に備える態様がある。
・前記付加的な金属層には、化学堆積物又は電解堆積物を適用する態様がある。
・前記付加的な金属層は、本方法の前記配置および前記応力付加のステップを反復することにより前記金属集成体の前記金属層の表面に組み込まれる付加的な金属発泡体とする態様がある。
・前記第2の金属は、アルミニウムであり、本方法は、前記金属体上の前記発泡体の配置ステップの前に、前記アルミニウム金属体の表面に存在する酸化物層の同素変態によってアルミナα層を生成し安定させるために、前記アルミニウム金属体をその構成材料の溶融温度の80%〜100%の温度にすることにより前記アルミニウム金属体を熱処理するステップと、−前記アルミニウム金属体を冷却するステップと、を更に有する態様がある。
【0012】
第2の態様において、本発明は、本発明に係る前記製造方法により得られる金属集成体であって、機械的応力の付加ステップの後に金属体表面に組み込まれる金属層を備える金属集成体に関する。
【0013】
いくつかの(限定されないが)好ましい態様において、本発明に係る金属集成体は以下の特徴を有する。
・前記第1および第2の金属は、
−銅、アルミニウム、
−アルミニウム、銅、
−ニッケル、アルミニウム、
−アルミニウム、ニッケル、
−鉄、アルミニウム、および
−アルミニウム、アルミニウム
のうちいずれか一対の金属から選択される態様がある。
・前記金属集成体は、第3の金属からなる付加的な金属層を更に含む態様がある。
・前記付加的な金属層は、前記第1の原料からなる前記金属層に組み込まれる態様がある。
・前記金属体はアルミニウム線又はケーブルであり、前記金属層は銅である態様がある。
・前記金属体は、金属シート又はアルミニウム箔であり、前記金属層は銅又はニッケルである態様がある。
【0014】
本発明の他の特徴、目的および利点は、限定しない例として与えられる添付図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによってより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る方法の一実施形態をグラフで表したものである。
図2】本発明に係る方法の異なるステップにおける第1の金属集成体の断面図の一例を示す。
図3】本発明に係る第2の金属集成体の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、第1の金属からなる金属層が第2の金属からなる金属体10の表面に形成されてなり、第1および第2の金属のうち少なくとも一方はアルミニウムである、金属集成体1の製造方法を説明する。
【0017】
アルミニウムは、純アルミニウム(例えば、A9型)であってもよいし、アルミニウム合金であってもよい。特に、国際命名法における1000系(A5〜A9等)又はAU4G(フランスの命名法)に属するアルミニウムであってもよい。その他の金属も同様に、純粋な金属であってもよいし、合金であってもよい。金属が銅、ニッケル、鉄又はアルミニウムである場合の実施形態について、以下に更に詳しく述べるが、これに限定されず、アルミニウムの延性以下の延性を呈する他の金属を用いてもよい。また、本発明に係る方法を実施するために選択される金属体10の形状および寸法は、本方法の各ステップおよびそれに用いられる各工具によってのみ制限される。以下にいくつかの例を示す。
【0018】
第1のステップ100によれば、第1の原料からなる金属層は、金属体10の表面に堆積される。本発明によれば、上記金属層は、開小孔を有する金属発泡体20である。典型的には、金属発泡体20の小孔は、金属体の発泡体への埋め込みが可能な1ミリメートル未満である。実際には、小孔の直径が大きすぎる場合、金属発泡体20は金属体に留まれるだけ十分な剛性を有しない。
【0019】
第2のステップ200において、金属発泡体20を金属体10の表面に組み込むように、金属発泡体20に機械的応力を付加する。上記機械的応力は、物体の初期形状に応じて、特に、圧着、圧延、又はプレス成形(もしくは、型押、鍛造、スタンピング等の他の技術)により伝達されてもよい。典型的には、金属シート、金属箔、金属グリル(grille)、アレイ等のように、金属体10が比較的平らで、金属体10と発泡体20を圧延機に移動させるための寸法を有する場合には、金属発泡体を有する金属体10の圧延により機械的応力を発生させることができる。
【0020】
例えば、0.8mmの厚さのアルミニウムシート10および2mmの厚さの金属発泡体20の場合、従来の圧延機において圧延により機械的応力が生じる。その結果得られた金属集成体1は、全体の厚さがおよそ0.7mmのアルミニウム板10に組み込まれた銅層20を有する。この2種類の金属は優れた密着力を有し、機械的に分離することは不可能である。例えば、アルミニウムシート10と、ニッケル、鉄、又はアルミニウムの発泡体20との圧延や、銅、ニッケル等の金属シート10とアルミニウム発泡体20との圧延によっても同様の結果が得られる。
【0021】
金属体10と金属発泡体20との圧延は高温又は低温で行うことができ、1回又は複数回の通過工程において行うことができる。しかしながら、本発明者らは、単一通過工程における低温圧延(即ち、周囲温度で、加熱することのない、約0℃〜60℃の間)が大幅に良好な結果をもたらすことを見出した。実際、圧延が高温で行われる場合には、金属発泡体20が酸化する恐れがあり、特に後者が銅である場合には、その酸化によって集積が妨げられる。
【0022】
圧延は、数回の通過工程によって行うことができるが、これによって製造方法およびその継続にかかる全体コストは増加し、またそれによって金属体10と集成体1の金属層の間の密着力が向上するものではない。圧延は、特に、数トンの圧力、典型的には、およそ3〜4トンの圧力を付加することにより、0.1km/h〜3km/hの速度で行うことができる。
【0023】
圧延中の金属集成体1の変形やずれを防ぐために、圧延の前に、例えば、金属体10と発泡体のリベット打ち、可能な場合には点溶接、集成体の端部の予備圧延、自己貫通ネジ、電子ビーム溶接、又は任意の従来の接着又はフランジングシステム等により金属体10と金属発泡体20を集積することができる。
【0024】
上記の例において、薄い銅層20がプリントされたアルミニウムシート10が結果として得られる。それに加え、この金属集成体1は下記の特徴を有する。
−表面に形成される酸化物層に関連するアルミニウムの欠点をプリント面に発現することなく、アルミニウムの特性、より詳細には、アルミニウムの密度、可撓性、およびその常磁性や伝導特性を有し、
−銅の特性、この場合には特に、電気伝導性および熱伝導性、耐腐食性等を有する。
【0025】
従って、この時点でアルミニウムシート10のアルミナ層が銅層20に覆われているため、金属集成体1は、銅、特にスズの層に溶接可能であり、熱処理、化学処理、又は機械処理を別途行わずに従来の手段を用いて集積することが可能である。また、本方法によれば、銅層により覆われた広いアルミニウム表面を形成し、燃料電池の電極として用いることができる。有利なこととして、本発明の方法に係るこのような電極の製造は、エネルギーコストおよび消費が低く、大規模な工業化が容易にできる。また、本方法は、銅、ニッケル等の発泡体20を金属体10にプリントすることにより、犠牲アノードを容易に形成できる。
【0026】
第2の実施形態によれば、金属発泡体20を伴う金属体10のプレス成形により機械的応力が付加される。従って、この場合も、金属体1は、従来のプレス成形技術による非可展形状が適応される箔や金属シートである。このため、金属発泡体20が配置された金属体10は、スタンピング成形機に配置された後、スタンピングによって機械的応力を金属体10と発泡体20に付加する。この結果、金属体10に組み込まれた発泡体からなる金属層20に覆われた非可展形状を有する金属集成体1が得られる。機械的応力の付加ステップには、型押、鍛造、スタンピング等の他の技術も用いられる。
【0027】
第3の実施形態によれば、金属発泡体20の金属体10への圧着により機械的応力が付加される。この実施形態は、特に、金属体10が、例えばワイヤやケーブル等のように、他の2つの寸法(幅と高さ)に比べて一方に非常に大きな寸法(長さ)を有し、発泡体20が金属体10に局所的に適用される場合に採用される。このため、手動式、電気油圧式等の、金属体10の全体又は一部に金属発泡体20を組み込むプライヤーや圧着プレス等の圧着工具を特に用いることができる。
【0028】
圧着は、局所的に行われることが好ましく、例えば、金属体10の一端のみのレベルにおいて、又はその全長にわたって行われてもよい。本方法は、プリントされる金属体10の部分に金属発泡体20を配置し、その後、圧着工具を用いて、発泡体20を金属体10の表面に組み込むように発泡体20に機械的応力を付加することを含む。変形例としては、金属縁、典型的には、ポッドを用いて金属体10の一端部において圧着を行う。
【0029】
この場合、金属発泡体20は、クリンプされる端部に配置してもよい。そして、ポッドは、金属体10にクリンプされる前に金属発泡体20に配置される。内面に金属発泡体20が直接形成されるポッドを用いることも可能である。そして、金属発泡体20が取り付けられたポッドは、クリンプされる金属体10の端部に配置され、その後、金属体10の端部の表面に発泡体20を組み込むように、機械的応力がポッドに付加される。その結果得られた金属集成体1は、銅、ニッケル、鉄等であってもよい金属層20により少なくとも一端が覆われているアルミニウム線又はケーブルである。
【0030】
変形例としては、金属発泡体20を表面全体に組み込むように、ワイヤ又はケーブルであってもよい金属体10の全長にわたり、圧延によって一区間において機械的応力が付加される。このようなワイヤ/ケーブル1は、建築や住宅分野、航空学、又は自動車における低電圧配電に有利に用いられる。実際に、これらの新規なワイヤ/ケーブル1は、従来の銅電線と比較して軽量であり、従来のアルミニウム線と比較してより優れた電気伝導性および熱伝導性を有する。更には、銅層20の存在により、少なくともワイヤ1の端部において結合がさらに容易となるが、それはワイヤが溶接可能で導電性を有し、従来の結合と併用することが可能なためである。最後に、アルミニウム上に銅をプリントすることにより、アルミニウムの酸化、特に、結合部における電力伝導の耐性に関わる問題を緩和することができる。
【0031】
従って、結果として得られたワイヤ又はケーブル1は、優れた導電性を有し、強固で耐久性があり、軽量かつ低コストで、設置の際に付加され得る機械的応力に対する耐性のある導体である。任意選択として、本方法は、結果として得られた金属集成体1の金属層を緻密化する付加的なステップを更に含んでもよい。
【0032】
この緻密化ステップは、本発明に係る方法を繰り返すことによって行うことができる。付加的な金属発泡体10'が適用される。この付加的な発泡体10'は、集成体1を形成するために以前に用いられた金属発泡体20と同様であってもよく、異なる金属であってもよく、および/又は異なる寸法(小孔率、発泡体の厚さ等)を有してもよい。この付加的な金属発泡体10'を用いた本方法が反復された後、集成体1の金属層はよりコンパクトとなり、金属体10をより良好に被覆する。
【0033】
小孔の存在により被覆されないアルミニウム表面を、積層された金属発泡体によって減少させることができるため、本発明の方法によって数層の金属発泡体を用いて数回にわりプリントされたアルミニウム体はより良好に絶縁され、更には、一層のみに金属層がプリントされた同様の物体と比べ、より容易に溶接可能であることがわかる。
【0034】
変形実施形態によれば、金属層は、付加的な金属層10'の化学堆積物又は電解堆積物により緻密化することもできる。これは、特に、前述の例におけるアルミニウムシートにプリントされた銅層の場合であり、従来技術により別の層10'の化学堆積物又は電解堆積物によって容易に緻密化できる。実際には、この銅層は、アルミニウムシートの表面上のアルミナ層のバリアを構成するため、そのような堆積物を可能とする。任意選択として、金属体10がアルミニウムである場合には、本方法は、金属発泡体を用いたその集積ステップ100の前に、金属体10の付加的な熱処理ステップを含んでもよい。
【0035】
第1のステップによれば、アルミニウムシートの表面に存在する酸化物層の同素変態が行われる。このため、アルミニウム体10は、その構成材料の溶融温度のおよそ80%〜100%の温度に十分に長い時間保持され、前記層を安定させる。アルミニウム体10は、好ましくは、溶融温度の93%〜98%の温度、より好ましくは、およそ95%(+/−1%)の温度に加熱される。例えば、アルミニウム体10は、500℃〜660℃の温度で加熱された、5〜20ミクロンの厚さを有する食品用のアルミ箔であってもよく、500℃〜550℃の温度で加熱され、AU4Gの合金からなる、2mmの厚さを有するアルミニウムシートであってもよい。アルミニウム体10のこれらの2つの例では、熱処理の期間は20分間〜約2時間、好ましくは、30分間である。より厚いアルミニウム金属シート、典型的には、12mmのアルミニウム金属シートのようなアルミニウム体10の場合には、熱処理の期間をおよそ35分間とすることが好ましい。
【0036】
第2のステップにおいて、アルミニウム体10は冷却される。ここでは、アルミニウム体10を冷却するために必要な時間と、本質的であると考えられなければならないアルミニウム層の安定化温度での残留時間とを区別することが必要である。実際、冷却および冷却後の最終的な温度時間自体は決定的な特性ではない。なぜなら、本発明の方法、即ちここでは、その金属発泡体との集積およびその機械的応力によって、後に行われる処理が可能となるようにアルミニウム体10の温度を十分に低化させるためである。
【0037】
実際には、結果として得られるものに影響を与えることなく、アルミニウム体10を大気中でゆっくりと冷ますこともできるし、又は(例えば、均熱により)急速に冷却することもできる。例えば、最終冷却温度は、本方法が実施される部材の温度であり、典型的には、20℃である。しかしながら、アルミニウム体10をさらに冷却することもできるし(例えば、摂氏0℃まで)、又はアルミニウム体10を少なくとも冷却する(例えば、摂氏60℃まで)。
【0038】
その結果、熱処理前のアルミニウム体の破壊耐性より低い破壊耐性(熱処理前の60MPaより低い、2mmのアルミニウムシートに対する15〜20MPa)を有するアルミニウム体10が得られる。実際、熱処理はアルミニウムの粒子寸法を増大させ、その後に行われる加工を容易にする。
【0039】
本製造方法における集積および機械的応力の各ステップは、熱処理の直後に行わなくてもよい。例えば、熱処理とシートの集積との間が数時間、あるいは数週間開いていてもよい。また、この熱処理は、機械的応力を受ける前に、点溶接や電子ビーム溶接によりアルミニウム体10と金属発泡体との集積が可能となるようにアルミニウム体10を溶接可能とする。
図1
図2
図3