特許第6016650号(P6016650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016650
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】効果付加装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/16 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   G10H1/16
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-9779(P2013-9779)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-142437(P2014-142437A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130329
【氏名又は名称】株式会社コルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀和
(72)【発明者】
【氏名】小菅 弘
【審査官】 安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−049624(JP,A)
【文献】 特開2007−178675(JP,A)
【文献】 特開2004−158949(JP,A)
【文献】 特開平06−208378(JP,A)
【文献】 特開2005−321566(JP,A)
【文献】 特開2007−334273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00 − 1/46
H04R 3/00 − 3/14
H03G 1/00 −99/00
G10K 15/00 −15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号に対する効果として音響信号の波形を変形させる効果付加装置であって、
入力デジタル音響信号に効果を付加し、効果付加デジタル音響信号を出力する効果付加経路と、
前記入力デジタル音響信号に遅延を与え、遅延デジタル音響信号を出力する遅延経路と、
前記効果付加デジタル音響信号と前記遅延デジタル音響信号とを重み付き加算する加重加算部と、
を有し、
前記効果付加経路は、
低域の周波数帯の信号を遮断する低域遮断フィルタと、
デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、
前記入力デジタル音響信号に対して少なくとも前記低域遮断フィルタと前記DA変換器の処理を施した後の信号である低域遮断アナログ音響信号を入力とし、真空管を用いた回路によって効果を付加した効果付加アナログ音響信号を出力する真空管増幅回路と、
前記効果付加アナログ音響信号をデジタル信号に変換し、効果付加デジタル音響信号を出力するAD変換器と
を備える効果付加装置。
【請求項2】
請求項1記載の効果付加装置であって、
前記低域遮断フィルタが遮断する低域の周波数帯は、300Hz以下の周波数帯を含む
ことを特徴とする効果付加装置。
【請求項3】
請求項2記載の効果付加装置であって、
前記低域遮断フィルタが遮断する低域の周波数帯は、400Hz以上の周波数帯は含まない
ことを特徴とする効果付加装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の効果付加装置であって、
前記効果付加経路は、
前記入力デジタル音響信号の振幅を調整する増幅器も備え、
前記増幅器の調整によって効果による波形の変形量を調整し、
前記加重加算部の重み付けによって効果付加のバランスを調整し、
前記増幅器と前記加重加算部の全体の調整によって音量を調整する
ことを特徴とする効果付加装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の効果付加装置であって、
前記効果付加経路は、
前記低域遮断アナログ音響信号を、当該効果付加装置の外部での処理も施した信号とするか、当該効果付加装置の外部での処理は施していない信号とするかを選択するスイッチも
備えたことを特徴とする効果付加装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の効果付加装置であって、
前記遅延経路での遅延時間は、前記DA変換器での信号の変換時間と前記AD変換器での信号の変換時間の和よりも長い
ことを特徴とする効果付加装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の効果付加装置であって、
前記AD変換器は、あらかじめ定めた急峻な遮断特性でサンプリング周波数以上の周波数の信号を除去した上で、前記効果付加アナログ音響信号をデジタル信号に変換する
ことを特徴とする効果付加装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響信号の波形を変形させる効果付加装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、楽器で生成された音響信号を真空管増幅回路で増幅したときに生じる波形の変形を、効果として付加する技術が知られている。特許文献1は、デジタル信号処理で真空管増幅回路をシミュレートし、真空管増幅回路による効果を付加しようとした技術である。特許文献2は、真空管増幅回路に加える楽音のレベルを増減することにより歪率を制御する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−342287号公報
【特許文献2】特開2005−321566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は実際の真空管を使用していないので、低い電源電圧で処理できるが、真空管と同じ効果を付加できないという課題がある。また、特許文献2の技術では、処理対象の音響信号はアナログ信号であり、真空管で幅広い振幅の信号に対応しなければならないので真空管のプレートにかける電源電圧として+200V付近を使用している。このように高い電源電圧が必要であるという課題がある。
【0005】
本発明は、高い電源電圧が不要な真空管を使用した効果付加装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の効果付加装置は、音響信号に対する効果として音響信号の波形を変形させる。この効果付加装置は、効果付加経路、遅延経路、加重加算部を有する。効果付加経路は、入力デジタル音響信号に効果を付加し、効果付加デジタル音響信号を出力する。遅延経路は、入力デジタル音響信号に遅延を与え、遅延デジタル音響信号を出力する。加重加算部は、効果付加デジタル音響信号と遅延デジタル音響信号とを重み付き加算する。また、効果付加経路は、低域遮断フィルタ、DA変換器、真空管増幅回路、AD変換器を備える。低域遮断フィルタは、低域の周波数帯の信号を遮断する。DA変換器は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。真空管増幅回路は、入力デジタル音響信号に対して少なくとも低域遮断フィルタとDA変換器の処理を施した後の信号である低域遮断アナログ音響信号を入力とし、真空管を用いた回路によって効果を付加した効果付加アナログ音響信号を出力する。AD変換器は、効果付加アナログ音響信号をデジタル信号に変換し、効果付加デジタル音響信号を出力する。
【発明の効果】
【0007】
低域は大きな振幅を有することが多いが、真空管による効果は低域の音にはほとんど付加されない。本発明の効果付加装置によれば、低域遮断フィルタを有するので、このような低域の音を遮断することができ、真空管増幅回路へ入力される信号の振幅を小さくできる。したがって、真空管に印加する電源電圧を低くできる。また、入力された音響信号を遅延させ、真空管による効果と加重加算するので、フェージングなどの問題を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の効果付加装置の構成例を示す図。
図2】実施例1変形例の効果付加装置の構成例を示す図。
図3】実施例2の効果付加装置の構成例を示す図。
図4】実施例2変形例の効果付加装置の構成例を示す図。
図5】本願発明の効果付加装置を含んだミュージックシンセサイザの構成例を示す図。
図6】本願発明の効果付加装置を含んだエフェクタの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1に実施例1の効果付加装置の構成例を示す。効果付加装置100は、音響信号に対する効果として前記音響信号の波形を変形させる。処理の対象となる入力デジタル音響信号は、例えば48000サンプル/秒のデジタル信号であり、100Hz程度から20kHz程度のアナログの音響信号に相当する。効果付加装置100は、効果付加経路105、遅延経路205、加重加算部320、制御部410を有する。効果付加経路105は、入力デジタル音響信号に効果を付加し、効果付加デジタル音響信号を出力する。遅延経路205は、入力デジタル音響信号に遅延を与え、遅延デジタル音響信号を出力する。加重加算部320は、増幅器160、増幅器260、加算器310を有し、効果付加デジタル音響信号と遅延デジタル音響信号とを重み付き加算する。効果付加経路105は、増幅器110、低域遮断フィルタ120、DA変換器130、真空管増幅回路140、AD変換器150を備える。
【0011】
増幅器110は、入力デジタル音響信号の振幅を調整する。図1の構成の場合、効果付加装置には、3つの増幅器が存在する。制御部410は、増幅器110の調整によって効果による波形の変形量(効果の深さ)を調整する。制御部410は、加重加算部320の重み付けによって効果付加のバランスを調整する。制御部410は、増幅器110と加重加算部320の増幅器160と増幅器260の全体の調整(例えば、増幅率の比を一定に保った調整)によって音量を調整する。なお、波形の変形量を調整する必要がない場合や入力デジタル音響信号の振幅が調整された状態で入力される場合には、増幅器110はなくてもよい。
【0012】
低域遮断フィルタ120は、デジタル信号処理によって低域の周波数帯の信号を遮断する。音響信号では、低域に大きな振幅を有することが多いが、真空管による効果は低域の音にはほとんど付加されない。そこで、低域遮断フィルタ120では例えば、少なくとも300Hz以下の低域の周波数帯を遮断する。また、400Hz以上の周波数は遮断しない。そして、300Hz〜400Hzの周波数のどこから遮断するかは、処理対象となる音響信号の周波数特性や真空管の特性などを考慮して適宜設計すればよい。例えば、遮断する周波数帯を350Hz以下にする設計などがある。このようにすれば、真空管増幅回路140への入力信号の振幅を小さくできるので、真空管増幅回路140に求められるダイナミックレンジを狭くでき、電源電圧を低くできる。
【0013】
DA変換器130は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。真空管増幅回路140は、入力デジタル音響信号に対して少なくとも低域遮断フィルタ120とDA変換器130の処理を施した後の信号である低域遮断アナログ音響信号を入力とし、真空管を用いた回路によって効果を付加した効果付加アナログ音響信号を出力する。
【0014】
AD変換器150は、効果付加アナログ音響信号をデジタル信号に変換し、効果付加デジタル音響信号を出力する。なお、真空管増幅回路140での効果の付加(波形の変形)によって高周波成分の信号が生じる。そこで、AD変換器150は、サンプリング周波数よりも高い周波数の信号を十分に除去した上で、AD変換することが望ましい。したがって、少なくとも通常のアンチエイリアシングフィルタよりも急峻な遮断特性であることが望ましい。
【0015】
遅延経路205は、遅延部210を備える。遅延経路205での遅延時間は、DA変換器130での信号の変換時間とAD変換器150での信号の変換時間の和よりも長くすればよい。具体的には、遅延時間は1〜5ms程度とすればよく、楽器の演奏者にとって問題とならない遅延時間でも、DA変換器130での信号の変換時間とAD変換器150での信号の変換時間の和よりも長くできる。また、イコライザ220などのデジタル信号に対して何らかの信号処理を行う構成部も備えてもよい。なお、デジタル信号処理を行う場合には、その構成部での遅延も遅延経路205の遅延時間として考慮すればよい。
【0016】
効果付加装置100によれば、低域遮断フィルタを有するので低域の音を遮断することができ、真空管増幅回路へ入力される信号の振幅を小さくできる。したがって、真空管に印加する電源電圧を低くできる。具体的には真空管に対する電源電圧を5V程度にできる。また、入力された音響信号を遅延させて真空管による効果と加重加算するので、フェージングや予期せぬ音色の変化などの問題を避けながら、真空管による効果を付加できる。したがって、高い電源電圧が不要な真空管を使用した効果付加装置を提供できる。
【0017】
[変形例]
図2に実施例1変形例の効果付加装置の構成例を示す。効果付加装置600は、低域遮断フィルタ620とDA変換器630の配置が効果付加装置100と異なる。その他は効果付加装置100と同じである。効果付加装置600では、先にDA変換を行ってから低域遮断を行うので、低域遮断フィルタ620は、アナログのフィルタである。このようにアナログのフィルタで低域の周波数帯を遮断しても、実施例1と同じ効果が得られる。したがって、DA変換と低域遮断の順序は入れ替えてもよい。
【実施例2】
【0018】
図3に実施例2の効果付加装置の構成例を示す。効果付加装置500は、真空管増幅回路140の前段に、低域遮断アナログ音響信号を、効果付加装置500の外部での処理も施した信号とするか、効果付加装置500の外部での処理は施していない信号とするかを選択するスイッチ510も備える点が効果付加装置100と異なる。その他の構成は、効果付加装置100と同じである。外部での処理とは、例えば、外部エフェクタでの処理を意味している。効果付加装置500は、このような構成なので、アナログ音響信号に対して処理を行う外部エフェクタの効果も利用できる。また、実施例1の効果付加装置と同じ効果も得られる。なお、効果付加装置500の場合は、遅延経路205での遅延時間は、外部エフェクタでの遅延時間も考慮して設定すればよい。
【0019】
[変形例]
図4に実施例2変形例の効果付加装置の構成例を示す。効果付加装置700は、低域遮断フィルタ620とDA変換器630の配置が効果付加装置500と異なる。その他は効果付加装置500と同じである。効果付加装置700では、先にDA変換を行ってから低域遮断を行うので、低域遮断フィルタ620は、アナログのフィルタである。このようにアナログのフィルタで低域の周波数帯を遮断しても、実施例2と同じ効果が得られる。したがって、DA変換と低域遮断の順序は入れ替えてもよい。
【実施例3】
【0020】
本実施例では、実施例1、2で示した効果付加装置の応用例を示す。図5に本願発明の効果付加装置を含んだミュージックシンセサイザの構成例を、図6に本願発明の効果付加装置を含んだエフェクタの構成例を示す。ミュージックシンセサイザ800は、効果付加装置100,500,600,700、制御部810、PCM音源820、鍵盤830、制御パネル840、MIDIインターフェース850、DA変換器860を備える。制御部810は、鍵盤830、制御パネル840、MIDIインターフェース850から入力された指示に基づき、PCM音源820と効果付加装置100,500,600,700を制御し、効果が付加されたデジタル音響信号を生成する。DA変換器860は、生成されたデジタル音響信号をアナログ音響信号に変換し、出力する。このようにすれば、真空管による効果を付加できるミュージックシンセサイザを構成できる。
【0021】
エフェクタ900は、AD変換器910、効果付加装置100,500,600,700、DA変換器920を備える。エフェクタ900には、例えばエレキギターからのアナログ音響信号が入力される。AD変換器910は、アナログ音響信号をデジタル音響信号に変換する。効果付加装置100,500,600,700は、真空管アンプを用いて波形を変形させる。DA変換器920は、効果付加装置100,500,600,700の出力をアナログ音響信号に変換する。このようにすれば、エレキギターを真空管アンプで増幅した音を出すことができる。
【符号の説明】
【0022】
100,500,600,700 効果付加装置
105,505,605,705 効果付加経路
110,160,260 増幅器
120,620 低域遮断フィルタ
130,630,860,920 DA変換器
140 真空管増幅回路
150,910 AD変換器
205 遅延経路
210 遅延部
220 イコライザ
310 加算器
320 加重加算部
410,810 制御部
510 スイッチ
800 ミュージックシンセサイザ
820 PCM音源
830 鍵盤
840 制御パネル
850 MIDIインターフェース
900 エフェクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6