(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧力センサにより取得されるホイル液圧(以下「ホイル液圧の検出値」という)には、実際の圧力(以下「ホイル液圧の実際値」という)との間に誤差がある。また、ホイル液圧の検出値には、圧力センサ個体間でバラツキがある。また、ホイル液圧の実際値に対応するブレーキパッドとブレーキロータとの離間距離には、ディスクブレーキ装置個体間でバラツキがある。したがって、ホイル液圧の検出値に基づいてホイルシリンダに予圧を発生させる制御を行うと、上記誤差やバラツキにより、予圧過剰となってブレーキパッドとブレーキロータが接触し不要な制動力(引き摺り)が発生するおそれがあった。そのため、上記バラツキを考慮して予圧を低めに設定する必要があった。よって、制動力の応答性向上と引き摺り発生の抑制との両立を図ることは容易ではなかった。
【0006】
また、ブレーキパッドとブレーキロータとの離間距離は、ノックバックによって変化する。このバラツキによっても、特許文献1に記載の制動制御装置のようにホイルシリンダに予圧を発生させる構成は、上記問題(制動力の応答性向上と引き摺り発生の抑制との両立が容易ではないこと)が発生し得る。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、制動力の応答性を確保しつつ、非制動時のブレーキの引き摺り発生を容易に抑制することができる制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車両の車輪に制動力を付与するホイルシリンダ(541、542、543、544)と、駆動液圧室(1A)に入力されている駆動液圧によりマスタピストン(14、15)が駆動されて前記ホイルシリンダにマスタ液圧を出力するマスタシリンダ(1)と、パイロット液圧室(4D)に入力されているパイロット液圧に応じた前記駆動液圧を前記駆動液圧室に出力する機械式の駆動液圧発生装置(44)と、前記パイロット液圧室に所望の液圧を出力する電動式のパイロット液圧発生装置(41、42)と、を備える液圧制動力発生装置(BF)に適用される制動制御装置であって、ブレーキ操作部材(10)の操作量が
0であるか否かを判定する判定手段(6(61))と、前記判定手段により前記ブレーキ操作部材の操作量が
0であることが判定されている場合に、前記パイロット液圧発生装置を制御して
、前記駆動液圧が大気圧よりも大きい液圧であって前記マスタピストンをその初期位置に向けて付勢する付勢部材のセット荷重に対応する液圧以下の液圧になる値に設定された
準備パイロット液圧を、前記パイロット液圧室に発生させるパイロット液圧制御手段(6(62))と、を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ホイルシリンダが設けられている車輪に制動力が付与されることを予測する予測手段(6(63))を備え、前記パイロット液圧制御手段(6(62))は、前記予測手段により車輪に制動力が付与されることが予測されている場合に前記準備パイロット液圧を発生させる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記パイロット液圧制御手段(6(62))は、前記パイロット液圧発生装置を制御して前記準備パイロット液圧に対応する予め設定された液量の作動液を前記パイロット液圧室に供給する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2において、前記駆動液圧を取得する駆動液圧取得手段(74)を備え、前記パイロット液圧制御手段(6(62))は、前記駆動液圧取得手段により取得されている前記駆動液圧が前記準備パイロット液圧に対応する準備駆動液圧になるように、前記パイロット液圧発生装置を制御する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2において、前記パイロット液圧を取得するパイロット液圧取得手段(77)を備え、前記パイロット液圧制御手段(6(62))は、前記パイロット液圧取得手段により取得されている前記パイロット液圧が前記準備パイロット液圧になるように、前記パイロット液圧発生装置を制御する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の制動制御装置では、ブレーキ操作部材の操作量が所定値以下である場合に、パイロット液圧室に所定の準備パイロット液圧を発生させる。こうしてブレーキ操作部材の操作量が所定値よりも大きくなる前に、パイロット液圧室に準備パイロット液圧を予め発生させておくことにより、ブレーキ操作部材の操作量が所定値よりも大きくなってから車輪に制動力が付与されるまでの時間を短縮することができる。
【0015】
また、請求項1に記載の制動制御装置では、準備パイロット液圧により発生する駆動液圧が大気圧より大きくマスタピストンの付勢部材のセット荷重以下であるため、マスタピストンを駆動させることなく、パイロット液圧室の無効液量を少なくすることができる。無効液量とは、液を入れても駆動液圧が変化しない液量である。そのため、制動力の応答性を確保しつつ、引き摺りの発生を確実に抑制することができる。
なお、準備パイロット液圧は、ホイル液圧が実質的に大気圧に維持されるような値に設定されているため、特許文献1に記載の制動制御装置のようにホイルシリンダに予圧を発生させる構成と比べて、引き摺りの発生を容易に抑制することができる。すなわち、請求項1に記載の制動制御装置によれば、制動力の応答性向上と引き摺り発生の抑制との両立を容易に図ることができる。
【0016】
なお、ブレーキ操作部材の操作量が所定値以下である場合には、ブレーキ操作部材の操作量がゼロである場合、すなわちブレーキ操作部材が操作されていない場合も含まれる。
【0017】
請求項2に記載の制動制御装置では、予測手段が車輪に制動力が付与されることを予測した場合に、パイロット液圧制御手段がパイロット液圧室に準備パイロット液圧を発生させる。すなわち、ブレーキ操作部材の操作量が
0で、且つ、予測手段が車輪に制動力が付与されることを予測した場合にパイロット液圧室がプリチャージされる。これにより、パイロット液圧室を効率的にプリチャージすることができる。
【0018】
請求項3に記載の制動制御装置では、予め設定された液量の作動液をパイロット液圧室に供給することで、パイロット液圧室に準備パイロット液圧を発生させる。ここで、パイロット液圧室を準備パイロット液圧とするために必要な液量は予め計算することができ、当該必要な液量を供給するための制御は、予め設定することができるため、ホイル液圧や駆動液圧やパイロット液圧を検出する必要がない。すなわち、製造コストを低減させることができる。
【0019】
請求項4に記載の制動制御装置では、パイロット液圧制御手段が、駆動液圧取得手段により取得されている駆動液圧がパイロット液圧に対応する準備駆動液圧になるように、パイロット液圧発生装置を制御する。このように、パイロット液圧室よりも下流の駆動液圧室の液圧に基づいてパイロット液圧室をプリチャージすることにより、パイロット液圧に対する駆動液圧の駆動液圧発生装置個体間におけるバラツキを排除することができるため、制動力の応答性向上と引き摺りの発生の抑制との両立を一層容易に図ることができる。
【0020】
請求項5に記載の制動制御装置では、パイロット液圧取得手段がパイロット液圧を取得し、パイロット液圧制御手段が、取得したパイロット液圧が準備パイロット液圧になるようにパイロット液圧発生装置を制御する。これによれば、パイロット液圧を見つつ準備パイロット液圧を発生させることができるため、パイロット液圧を精度良く制御することができる。例えば、パイロット液圧を無効液量がなくなる限界値まで上昇させることができる。これにより、制動力の応答性を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態の制動制御装置およびこの制動制御装置で制御可能な車両用制動装置について図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図において、各部の形状・寸法は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0024】
<第一実施形態>
図1に示すように、車両用制動装置は、車輪5FR,5FL,5RR,5RLに液圧制動力を発生させる液圧制動力発生装置BFと、駆動輪、例えば左右前輪5FR,5FLに回生制動力を発生させる回生制動力発生装置BM等とを備えて構成される。第一実施形態の制動制御装置は、液圧制動力発生装置BFを制御するブレーキECU6を備えて構成される。
【0025】
(液圧制動力発生装置BF)
液圧制動力発生装置BFは、マスタシリンダ1と、反力発生装置2と、第一制御弁22と、第二制御弁23と、サーボ液圧発生装置4と、液圧制御部5と、各種センサ71〜76等により構成されている。
【0026】
(マスタシリンダ1)
マスタシリンダ1は、ブレーキペダル10(「ブレーキ操作部材」に相当する)の操作量に応じて作動液を液圧制御部5に供給する部位であり、メインシリンダ11、カバーシリンダ12、入力ピストン13、第1マスタピストン14、および第2マスタピストン15等により構成されている。
【0027】
メインシリンダ11は、前方が閉塞されて後方に開口する有底略円筒状のハウジングである。メインシリンダ11の内周側の後方寄りに、内向きフランジ状に突出する内壁部111が設けられている。内壁部111の中央は、前後方向に貫通する貫通孔111aとされている。また、メインシリンダ11の内部の内壁部111よりも前方に、内径がわずかに小さくなっている小径部位112(後方)、113(前方)が設けられている。つまり、小径部位112、113は、メインシリンダ11の内周面から内向き環状に突出している。メインシリンダ11の内部には、小径部位112に摺接して軸方向に移動可能に第1マスタシリンダ14が配設されている。同様に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に第2マスタシリンダ15が配設されている。
【0028】
カバーシリンダ12は、略円筒状のシリンダ部121、蛇腹筒状のブーツ122、およびカップ状の圧縮スプリング123で構成されている。シリンダ部121は、メインシリンダ11の後端側に配置され、メインシリンダ11の後側の開口に同軸的に嵌合されている。シリンダ部121の前方部位121aの内径は、内壁部111の貫通孔111aの内径よりも大とされている。また、シリンダ部121の後方部位121bの内径は、前方部位121aの内径よりも小とされている。
【0029】
防塵用のブーツ122は蛇腹筒状で前後方向に伸縮可能であり、その前側でシリンダ部121の後端側開口に接するように組み付けられている。ブーツ122の後方の中央には貫通孔122aが形成されている。圧縮スプリング123は、ブーツ122の周りに配置されるコイル状の付勢部材であり、その前側がメインシリンダ11の後端に当接し、後側はブーツ122の貫通孔122aに近接するように縮径されている。ブーツ122の後端および圧縮スプリング123の後端は、操作ロッド10aに結合されている。圧縮スプリング123は、操作ロッド10aを後方に付勢している。
【0030】
入力ピストン13は、ブレーキペダル10の操作に応じてカバーシリンダ12内を摺動するピストンである。入力ピストン13は、前方に底面を有し後方に開口を有する有底略円筒状のピストンである。入力ピストン13の底面を構成する底壁131は、入力ピストン13の他の部位よりも径が大きくなっている。入力ピストン13は、シリンダ部121の後方部位121bに軸方向に摺動可能かつ液密的に配置され、底壁131がシリンダ部121の前方部位121aの内周側に入り込んでいる。
【0031】
入力ピストン13の内部には、ブレーキペダル10に連動する操作ロッド10aが配設されている。操作ロッド10aの先端のピボット10bは、入力ピストン13を前側に押動できるようになっている。操作ロッド10aの後端は、入力ピストン13の後側の開口およびブーツ122の貫通孔122aを通って外部に突出し、ブレーキペダル10に接続されている。ブレーキペダル10が踏み込み操作されたときに、操作ロッド10aは、ブーツ122および圧縮スプリング123を軸方向に押動しながら前進する。操作ロッド10aの前進に伴い、入力ピストン13も連動して前進する。
【0032】
第1マスタピストン14は、メインシリンダ11の内壁部111に軸方向に摺動可能に配設されている。第1マスタピストン14は、前方側から順番に加圧筒部141、鍔部142、および突出部143が一体となって形成されている。加圧筒部141は、前方に開口を有する有底略円筒状に形成され、メインシリンダ11の内周面との間に間隙を有し、小径部位112に摺接している。加圧筒部141の内部空間には、第2マスタピストン15との間にコイルばね状の付勢部材144が配設されている。付勢部材144により、第1マスタピストン14は後方に付勢されている。換言すると、第1マスタピストン14は、設定された初期位置に向けて付勢部材144により付勢されている。
【0033】
鍔部142は、加圧筒部141よりも大径で、メインシリンダ11の内周面に摺接している。突出部143は、鍔部142よりも小径で、内壁部111の貫通孔111aに液密に摺動するように配置されている。突出部143の後端は、貫通孔111aを通り抜けてシリンダ部121の内部空間に突出し、シリンダ部121の内周面から離間している。突出部143の後端面は、入力ピストン13の底壁131から離間し、その離間距離dは変化し得るように構成されている。
【0034】
ここで、メインシリンダ11の内周面、第1マスタピストン14の加圧筒部141の前側、および第2マスタピストン15の後側により、第1加圧室1Dが区画されている。また、メインシリンダ11の内周面(内周部)と小径部位112と内壁部111前面、および第1マスタピストン14の外周面により、第1加圧室1Dよりも後方の後方室が区画されている。第1マスタピストン14の鍔部142の前端部および後端部は後方室を前後に区分しており、前側に第二液圧室1Cが区画され、後側にサーボ室(「駆動液圧室」に相当する)1Aが区画されている。さらに、メインシリンダ11の内周部と内壁部111後面、シリンダ部121の前方部位121aの内周面(内周部)、第1マスタピストン14の突出部143(後端部)、および入力ピストン12の前端部により第一液圧室1Bが区画されている。
【0035】
第2マスタピストン15は、メインシリンダ11内の第1マスタピストン14の前方側に、小径部位113に摺接して軸方向に移動可能に配置されている。第2マスタピストン15は、前方に開口を有する筒状の加圧筒部151、および加圧筒部151の後側を閉塞する底壁152が一体となって形成されている。底壁152は、第1マスタピストン14との間に付勢部材144を支承している。加圧筒部151の内部空間には、メインシリンダ11の閉塞された内底面111dとの間に、コイルばね状の付勢部材153が配設されている。付勢部材153により、第2マスタピストン15は後方に付勢されている。換言すると、第2マスタピストン15は、設定された初期位置に向けて付勢部材153により付勢されている。メインシリンダ11の内周面と内底面111d、および第2マスタピストン15の加圧筒部151により、第2加圧室1Eが区画されている。
【0036】
マスタシリンダ1には、内部と外部を連通させるポート11a〜11iが形成されている。ポート11aは、メインシリンダ11のうち内壁部111よりも後方に形成されている。ポート11bは、ポート11aと軸方向の同様の位置に、ポート11aに対向して形成されている。ポート11aとポート11bは、メインシリンダ11内周面とシリンダ部121の外周面との間の環状空間を介して連通している。ポート11aおよびポート11bは、配管161に接続され、かつリザーバ171に接続されている。
【0037】
また、ポート11bは、シリンダ部121および入力ピストン13に形成された通路18により第一液圧室1Bに連通している。通路18は入力ピストン13が前進すると遮断され、これによって第一液圧室1Bとリザーバ171とが遮断される。
【0038】
ポート11cは、ポート11aよりも前方に形成され、第一液圧室1Bと配管162とを連通させている。ポート11dは、ポート11cよりも前方に形成され、サーボ室1Aと配管163とを連通させている。ポート11eは、ポート11dよりも前方に形成され、第二液圧室1Cと配管164とを連通させている。
【0039】
ポート11fは、小径部位112の両シール部材91、92の間に形成され、リザーバ172とメインシリンダ11の内部とを連通している。ポート11fは、第1マスタピストン14に形成された通路145を介して第1加圧室1Dに連通している。通路145は、第1マスタピストン14が前進するとポート11fと第1加圧室1Dが遮断される位置に形成されている。
【0040】
ポート11gは、ポート11fよりも前方に形成され、第1加圧室1Dと配管51とを連通させている。ポート11hは、小径部位113の両シール部材93、94の間に形成され、リザーバ173とメインシリンダ11の内部とを連通させている。ポート11gは、第2マスタピストン15に形成された通路154を介して第2加圧室1Eに連通している。通路154は、第2マスタピストン15が前進するとポート11gと第2加圧室1Eが遮断される位置に形成されている。ポート11iは、ポート11hよりも前方に形成され、第2加圧室1Eと配管52とを連通させている。
【0041】
また、マスタシリンダ1内には、適宜、Oリング等のシール部材(図面黒丸部分)が配置されている。シール部材91、92は、小径部位112に配置され、第1マスタピストン14の外周面に液密的に当接している。同様に、シール部材93、94は、小径部位113に配置され、第2マスタピストン15の外周面に液密的に当接している。また、入力ピストン13とシリンダ部121との間にもシール部材95、96が配置されている。
【0042】
ストロークセンサ71は、運転者によりブレーキペダル10が操作された操作量(ストローク量)を検出するセンサであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。ブレーキスイッチ72は、運転者によるブレーキペダル10の操作の有無を2値信号で検出するスイッチであり、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0043】
(反力発生装置2)
反力発生装置2は、ブレーキペダル10が操作されたとき操作力に対抗する反力を発生する装置であり、ストロークシミュレータ21を主にして構成されている。ストロークシミュレータ21は、ブレーキペダル10の操作に応じて第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cに反力液圧を発生させる。ストロークシミュレータ21は、シリンダ211にピストン212が摺動可能に嵌合されて構成されている。ピストン212は圧縮スプリング213によって前方に付勢されており、ピストン212の前面側に反力液圧室214が形成される。反力液圧室214は、配管164およびポート11eを介して第二液圧室1Cに接続され、さらに、反力液圧室214は、配管164を介して第一制御弁22および第二制御弁23に接続されている。
【0044】
(第一制御弁22)
第一制御弁22は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第一制御弁22は、配管164と配管162の間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管162はポート11cを介して第一液圧室1Bに連通している。また、第一制御弁22が開くと第一液圧室1Bが開放状態になり、第一制御弁22が閉じると第一液圧室1Bが密閉状態になる。したがって、配管164および配管162は、第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとを連通するように設けられている。
【0045】
第一制御弁22は通電されていない非通電状態で閉じており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが遮断される。これにより、第一液圧室1Bが密閉状態になって作動液の行き場がなくなり、入力ピストン13と第1マスタピストン14とが一定の離間距離dを保って連動する。また、第一制御弁22は通電された通電状態では開いており、このとき第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通される。これにより、第1マスタピストン14の進退に伴う第一液圧室1Bおよび第二液圧室1Cの容積変化が、作動液の移動により吸収される。
【0046】
圧力センサ73は、第二液圧室1Cの反力液圧を検出するセンサであり、配管164に接続されている。圧力センサ73は、第一制御弁22が閉状態の場合には第二液圧室1Cの圧力を検出し、第一制御弁22が開状態の場合には連通された第一液圧室1Bの圧力をも検出することになる。圧力センサ73は、検出信号をブレーキECU6に送信する。
【0047】
(第二制御弁23)
第二制御弁23は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により開閉が制御される。第二制御弁23は、配管164と配管161との間に接続されている。ここで、配管164はポート11eを介して第二液圧室1Cに連通し、配管161はポート11aを介してリザーバ171に連通している。したがって、第二制御弁23は、第二液圧室1Cとリザーバ171との間を非通電状態で連通して反力液圧を発生させず、通電状態で遮断して反力液圧を発生させる。
【0048】
(サーボ液圧発生装置4)
サーボ液圧発生装置4は、減圧弁41、増圧弁42、高圧供給部43、およびレギュレータ44等で構成されている。減圧弁41は、非通電状態で開く構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御される。減圧弁41の一方は配管411を介して配管161に接続され、減圧弁41の他方は配管413に接続されている。つまり、減圧弁41の一方は、配管411、161、およびポート11a、11bを介してリザーバ171に連通している。増圧弁42は、非通電状態で閉じる構造の電磁弁であり、ブレーキECU6により流量が制御されている。増圧弁42の一方は配管421に接続され、増圧弁42の他方は配管422に接続されている。減圧弁41及び増圧弁42は、パイロット液圧発生装置に相当する。
【0049】
高圧供給部43は、レギュレータ44に高圧の作動液を供給する部位である。高圧供給部43は、アキュムレータ431、液圧ポンプ432、モータ433、およびリザーバ434等で構成されている。
【0050】
アキュムレータ431は、高圧の作動液を蓄積するタンクである。アキュムレータ431は、配管431aによりレギュレータ44および液圧ポンプ432に接続されている。液圧ポンプ432は、モータ433によって駆動され、リザーバ434に貯留された作動液を、アキュムレータ431に圧送する。配管431aに設けられた圧力センサ75は、アキュムレータ431のアキュムレータ液圧を検出し、検出信号をブレーキECU6に送信する。アキュムレータ液圧は、アキュムレータ431に蓄積された作動液の蓄積量に相関する。
【0051】
アキュムレータ液圧が所定値以下に低下したことが圧力センサ75によって検出されると、ブレーキECU6からの指令に基づいてモータ433が駆動される。これにより、液圧ポンプ432は、アキュムレータ431に作動液を圧送して、アキュムレータ液圧を所定値以上に回復する。
【0052】
図2は、サーボ液圧発生装置4を構成する機械式のレギュレータ44の内部構造を示す部分断面説明図である。図示されるように、レギュレータ(「駆動液圧発生装置」に相当する)44は、シリンダ441、ボール弁442、付勢部443、弁座部444、制御ピストン445、およびサブピストン446等で構成されている。
【0053】
シリンダ441は、一方(図面右側)に底面をもつ略有底円筒状のシリンダケース441aと、シリンダケース441aの開口(図面左側)を塞ぐ蓋部材441bと、で構成されている。なお、図面上、蓋部材(441b)は断面コの字状に形成されているが、本実施形態では、蓋部材441bを円柱状とし、シリンダケース441aの開口を塞いでいる部位を蓋部材441bとして説明する。シリンダケース441aには、内部と外部を連通させる複数のポート4a〜4hが形成されている。
【0054】
ポート4aは、配管431aに接続されている。ポート4bは、配管422に接続されている。ポート4cは、配管163に接続されている。ポート4dは、配管414を介して配管161に接続されている。ポート4eは、配管424に接続され、さらにリリーフバルブ423を経由して配管422に接続されている。ポート4fは、配管413に接続されている。ポート4gは、配管421に接続されている。ポート4hは、配管51から分岐した配管511に接続されている。
【0055】
ボール弁442は、ボール型の弁であり、シリンダ441内部のシリンダケース441aの底面側(以下、シリンダ底面側とも称する)に配置されている。付勢部443は、ボール弁442をシリンダケース441aの開口側(以下、シリンダ開口側とも称する)に付勢するバネ部材であって、シリンダケース441aの底面に設置されている。弁座部444は、シリンダケース441aの内周面に設けられた壁部材であり、シリンダ開口側とシリンダ底面側を区画している。弁座部444の中央には、区画したシリンダ開口側とシリンダ底面側を連通させる貫通路444aが形成されている。弁部材444は、付勢されたボール弁442が貫通路444aを塞ぐ形で、ボール弁442をシリンダ開口側から保持している。
【0056】
ボール弁442、付勢部443、弁座部444、およびシリンダ底面側のシリンダケース441aの内周面で区画された空間を第1室4Aとする。第1室4Aは、作動液で満たされており、ポート4aを介して配管431aに接続され、ポート4bを介して配管422に接続されている。
【0057】
制御ピストン445は、略円柱状の本体部445aと、本体部445aよりも径が小さい略円柱状の突出部445bとからなっている。本体部445aは、シリンダ441内において、弁座部444のシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的に、軸方向に摺動可能に配置されている。本体部445aは、図示しない付勢部材によりシリンダ開口側に付勢されている。本体部445aのシリンダ軸方向略中央には、両端が本体部445a周面に開口した径方向(図面上下方向)に延びる通路445cが形成されている。通路445cの開口位置に対応したシリンダ441の一部の内周面は、ポート4dが形成されているとともに、凹状に窪んでいる。この窪んだ空間を第3室4Cとする。
【0058】
突出部445bは、本体部445aのシリンダ底面側端面の中央からシリンダ底面側に突出している。突出部445bの径は、弁座部444の貫通路444aよりも小さい。突出部445bは、貫通路444aと同軸上に配置されている。突出部445bの先端は、ボール弁442からシリンダ開口側に所定間隔離れている。突出部445bには、突出部445bのシリンダ底面側端面中央に開口したシリンダ軸方向に延びる通路445dが形成されている。通路445dは、本体部445a内にまで延伸し、通路445cに接続している。
【0059】
本体部445aのシリンダ底面側端面、突出部445bの外表面、シリンダ441の内周面、弁座部444、およびボール弁442によって区画された空間を第2室4Bとする。第2室4Bは、通路445c、445d、および第3室4Cを介してポート4d、4eに連通している。
【0060】
サブピストン446は、サブ本体部446aと、第1突出部446bと、第2突出部446cとからなっている。サブ本体部446aは、略円柱状に形成されている。サブ本体部446aは、シリンダ441内において、本体部445aのシリンダ開口側に、同軸的且つ液密的、軸方向に摺動可能に配置されている。
【0061】
第1突出部446bは、サブ本体部446aより小径の略円柱状であり、サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面中央から突出している。第1突出部446bは、本体部445aのシリンダ開口側端面に当接している。第2突出部446cは、第1突出部446bと同形状であり、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面中央から突出している。第2突出部446cは、蓋部材441bと当接している。
【0062】
サブ本体部446aのシリンダ底面側の端面、第1突出部446bの外表面、制御ピストン445のシリンダ開口側の端面、およびシリンダ441の内周面で区画された空間をパイロット液圧室4Dとする。パイロット液圧室4Dは、ポート4fおよび配管413を介して減圧弁41に連通し、ポート4gおよび配管421を介して増圧弁42に連通している。
【0063】
一方、サブ本体部446aのシリンダ開口側の端面、第2突出部446cの外表面、蓋部材441b、およびシリンダ441の内周面で区画された空間を第4室4Eとする。第4室4Eは、ポート4hおよび配管511、51を介してポート11gに連通している。各室4A〜4Eは、作動液で満たされている。圧力センサ74は、サーボ室1Aに供給されるサーボ液圧(駆動液圧)を検出するセンサであり、配管163に接続されている(
図1示)。圧力センサ74は、検出信号をブレーキECU6に送信する。このように駆動液圧発生装置に相当するサーボ液圧発生装置は構成される。
【0064】
(液圧制御部5)
マスタシリンダ液圧(マスタ液圧)を発生する第1加圧室1D、第2加圧室1Eには、配管51、52、ABS(Antilock Brake System)53を介してホイルシリンダ541〜544が連通されている。ホイルシリンダ541〜544は、車輪5FR〜5RLのブレーキ5を構成している。具体的には、第1加圧室1Dのポート11g及び第2加圧室1Eのポート11iには、それぞれ配管51、52を介して、公知のABS53が連結されている。ABS53には、車輪5FR〜5RLを制動するブレーキ装置を作動させるホイルシリンダ541〜544が連結されている。
【0065】
(ブレーキECU6)
ブレーキECU6は、電子制御ユニットであり、マイクロコンピュータを有している。マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリー等の記憶部を備えている。
【0066】
ブレーキECU6は、各電磁弁22、23、41、42、及びモータ433等を制御するため、各種センサ71〜76と接続されている。ブレーキECU6には、ストロークセンサ71から運転者によりブレーキペダル10の操作量(ストローク量)が入力され、ブレーキスイッチ72から運転者によるブレーキペダル10の操作の有無が入力され、圧力センサ73から第二液圧室1Cの反力液圧又は第一液圧室1Bの圧力が入力され、圧力センサ74からサーボ室1Aに供給されるサーボ液圧(駆動液圧)が入力され、圧力センサ75からアキュムレータ431のアキュムレータ液圧が入力され、車輪速度センサ76から各車輪5FR,5FL,5RR,5RLの速度が入力される。
【0067】
ここで、後述するプリチャージ制御を除いた、ブレーキECU6の制御について説明する。ブレーキECU6は、第一制御弁22に通電して開弁し、第二制御弁23に通電して閉弁した状態とする。第二制御弁23が閉状態となることで第二液圧室1Cとリザーバ171とが遮断され、第一制御弁22が開状態となることで第一液圧室1Bと第二液圧室1Cとが連通する。
【0068】
ブレーキペダル10が踏み込み操作されていない状態(操作量が0)では、サーボ液圧発生装置4のボール弁442が弁座部444の貫通路444aを塞いでいる状態となる。また、減圧弁41は開状態、増圧弁42は閉状態とされ、第1室4Aと第2室4Bは遮断されている。第2室4Bは、配管163を介してサーボ室1Aに連通し、互いに同圧力に保たれている。第2室4Bは、制御ピストン445の通路445c、445dを介して第3室4Cに連通し、さらに配管414、161を介してリザーバ171に連通している。パイロット液圧室4Dは、一方が増圧弁42で塞がれ、他方が減圧弁41を介してリザーバ171および第2室4Bに連通している。第4室4Eは、配管511、51を介して第1加圧室1Dに連通し、互いに同圧力に保たれる。当然ながら、サーボ室1Aにサーボ液圧は発生せず、第1加圧室1Dにマスタ液圧は発生しない。
【0069】
この状態から、ブレーキペダル10が踏み込み操作されると、入力ピストン13が前進し、通路18が分断されてリザーバ171と第一液圧室1Bが遮断される。第二液圧室1Cには、第1マスタピストン14の移動に応じて第一液圧室1Bから突出部143により流入出される液量と同じ液量が流入出される。そして、ストロークシミュレータ21は、第一液圧室1B及び第二液圧室1Cに、ストローク量に応じた反力圧を発生させる。つまり、ストロークシミュレータ21は、入力ピストン13に連結しているブレーキペダル10に、入力ピストン13のストローク量(ブレーキペダル10の操作量)に応じた反力圧を付与する。
【0070】
なお、突出部143先端面の面積と、鍔部142が第二液圧室1Cに臨む面の面積は、同一となっている。このため、第二制御弁23が閉状態、第一制御弁22が開状態である場合には、第一液圧室1Bと第二液圧室1Cの内圧は同一であることから、第一液圧室1Bの反力圧が突出部143先端面に作用する力と、第二液圧室1Cの反力圧が第二液圧室1Cに臨む面に作用する力が同一となり、運転者がブレーキペダル10を踏み込んで、第一液圧室1B及び第二液圧室1Cの内圧が高くなったとしても、第1マスタピストン14が移動しない。また、突出部143先端面の面積と、鍔部142が第二液圧室1Cに臨む面の面積は、同一となっていることから、第1マスタピストン14が移動したとしても、ストロークシミュレータ21内に、流入するブレーキ液の液量が変化しないことから、第一液圧室1Bの反力圧が変化せず、ブレーキペダル10に伝達される反力も変化しないようになっている。ブレーキECU6は、液圧制動力発生装置BFを制御して車輪5FR,5FL,5RR,5RLに目標制動力を付与する。
【0071】
サーボ液圧発生装置4においては、増圧弁42が開くことでアキュムレータ431とパイロット液圧室4Dとが連通する。減圧弁41が閉じることで、パイロット液圧室4Dとリザーバ171とが遮断される。アキュムレータ431から供給される高圧の作動液により、パイロット液圧室4Dの液圧を上昇させることができる。パイロット液圧室4Dの液圧が上昇することで、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動する。これにより、制御ピストン445の突出部445bの先端がボール弁442に当接し、通路445dがボール弁442により塞がれる。そして、第2室4Bとリザーバ171とが遮断される。
【0072】
さらに、制御ピストン445がシリンダ底面側に摺動することで、突出部445bによりボール弁442がシリンダ底面側に押されて移動し、ボール弁442が弁座部444から離間する。これにより、第1室4Aと第2室4Bは、弁座部444の貫通路444aで連通する。第1室4Aには、アキュムレータ431から高圧の作動液が供給され、連通している第2室4Bの圧力も上昇する。
【0073】
第2室4Bの圧力上昇に伴って、連通するサーボ室1Aのサーボ液圧も上昇する。サーボ液圧の上昇により、第1マスタピストン14が前進し、第1加圧室1Dのマスタシリンダ液圧が上昇する。そして、第2マスタピストン15も前進し、第2加圧室1Eのマスタシリンダ液圧も上昇する。マスタシリンダ液圧の上昇により、高圧の作動液が配管51、52および液圧制御部5を経由してホイルシリンダ541〜544へ供給され、車輪5FR〜5RLに液圧制動力が付与される。
【0074】
また、第1加圧室1Dのマスタシリンダ液圧は、サーボ液圧発生装置4の第4室4Eにフィードバック供給される。第4室4Eの圧力は上昇し、パイロット液圧室4D内の液圧と均衡して、サブピストン446は移動しない。このようにして、アキュムレータ431の高圧からつくられたサーボ液圧に基づき、不足制動力に見合った液圧制動力を発生することができる。
【0075】
液圧制動力の発生を解除する場合には、反対に減圧弁41を開状態とし、増圧弁42を閉状態として、リザーバ171とパイロット液圧室4Dとを連通させる。これにより、制御ピストン445が後退し、サーボ液圧発生装置4はブレーキペダル10を踏み込む前の状態に戻る。ブレーキECU6は、ブレーキ操作に応じて増圧弁42及び減圧弁41を制御し、パイロット液圧室4Dにパイロット液圧を発生させる。増圧弁42及び減圧弁41の制御によりパイロット液圧をある値まで上昇させるとボール弁442と突出部445bが当接し、さらにパイロット液圧を上昇させるとボール弁442と弁座部444が離間し、サーボ室1Aに液圧が付与される。
【0076】
(プリチャージ制御)
ここで、本実施形態のブレーキECU6のプリチャージ制御について説明する。
図3に示すように、ブレーキECU6は、ストロークセンサ71からブレーキペダル10の操作量の情報を取得し、ブレーキスイッチ72からの信号を取得する(S101)。ブレーキECU6は、取得した操作量(及び操作の有無の情報)が、予め設定された所定操作量以下であるか否かを判定する(S102)。ブレーキECU6は、ブレーキスイッチ72により操作が検出されなかった場合(すなわち、運転手の足がブレーキペダル10に触れていない場合)、又は、ブレーキスイッチ72により操作が検出されて且つストロークセンサ71から取得した操作量が所定操作量以下である場合(すなわち、運転手の足がブレーキペダル10に触れて、且つ、0≦操作量≦所定操作量の場合)に、「所定操作量以下」と判定する。
【0077】
ブレーキECU6は、「所定操作量以下」と判定した場合(S102:Yes)、増圧弁42及び減圧弁41を制御して、予め設定された所定液量の作動液をパイロット液圧室4Dに供給する(S103)。所定液量は、パイロット液圧室4Dに供給されることで、突出部445bがボール弁442に当接する直前の位置まで移動する液量、又は、突出部445bがボール弁442を移動させずにボール弁442に当接する位置まで移動する液量である。
【0078】
所定液量は、例えば
図4に示すようなパイロット液圧室4DのQP特性から予め算出することができる。パイロット液圧室4Dの液量が増えてもサーボ液圧が変化しない最大の液量を最大無効液量とすると、所定液量は最大無効液量以下に設定される。このように、パイロット液圧をプリチャージの目標液圧である準備パイロット液圧にするために必要な液量は、パイロット液圧室のQP特性に基づいて算出できる。準備パイロット液圧は、ホイルシリンダ541〜544内の液圧が実質的に大気圧に維持されるような値に設定される。
【0079】
また、所定液量をパイロット液圧室4Dに供給するための制御は、例えば
図5に示すような増圧弁41の流量特性(IV特性)に基づいて、予めブレーキECU6に設定することができる。すなわち、パイロット液圧室4Dに所定液量を供給するために必要な増圧弁42への供給電流値と電流供給時間は、フィードフォワード的に予め算出することができる。ブレーキECU6は、減圧弁41を閉弁し、増圧弁42に所定電流を所定時間供給してパイロット液圧室4Dに所定液量を供給する。これにより、パイロット液圧室4Dに準備パイロット液圧が発生し、突出部445bはボール弁442に当接する位置又は当接直前の位置にまで移動する。
【0080】
このように、ブレーキECU6は、ブレーキ操作量が所定操作量以下であるか否かを判定する判定手段61と、増圧弁42及び減圧弁41を制御してパイロット液圧室4Dに準備パイロット液圧を発生させるパイロット液圧制御手段62と、を備えている。なお、取得した操作量が所定操作量より大きい場合(S102:No)、プリチャージは実行されない。
【0081】
第一実施形態の制動制御装置によれば、運転手によるブレーキ操作が所定操作量以下の場合、すなわちブレーキ操作が0又は少量の際に、予めパイロット液圧室4Dに準備パイロット液圧を発生させて、突出部445bをボール弁442に接近又は当接させる。これにより、ブレーキ操作が行われた際における、突出部445bがボール弁442に当接するまでの時間(無効液量期間)を短縮する又は無くすことができる。すなわち、制動力の応答性は高くなる。
【0082】
さらに、上記プリチャージを行った場合でも、ボール弁442と弁座部444とが離間していないためサーボ液圧は変化せず、マスタピストン14、15は前進しない。つまり、本実施形態のプリチャージによっては、マスタ液圧は変化せず、ホイル液圧も変化しない。したがって、例えばブレーキパッドとブレーキロータとが接触してしまうなどのブレーキの引き摺り発生は抑制される。
【0083】
また、レギュレータ44の無効液量のバラツキは、ブレーキパッドをブレーキロータに押し付けるためのブレーキキャリパの無効液量のバラツキよりも小さいため、第一実施形態のような供給液量による制御によっても高精度、高ロバスト性を確保することができる。また、制御のバラツキ等により、若干サーボ液圧が変化したとしても、第一マスタピストン14を前進させるためのサーボ液圧まで上昇することは考えられない。つまり、パイロット液圧に多少のバラツキが発生しても、サーボ液圧やマスタ液圧がバッファとなり、ホイル液圧の上昇までには至らない。換言すれば、準備パイロット液圧は、サーボ液圧が大気圧以上で且つ第一マスタピストン14をその初期位置に向けて付勢する付勢部材144のセット荷重以下の液圧となるように設定されていれば良い。また、第一実施形態では、予め決められた所定液量をパイロット液圧室4Dに供給して準備パイロット液圧を発生させるため、制御が簡易となる。また、レギュレータ44は、一般的に大流量のブレーキ液を流すことができるため、準備パイロット液圧をホイル液圧が実質的に大気圧に維持されるような値に設定したとしても、ブレーキ操作に対する制動力発生の応答性は確保可能である。
【0084】
<第二実施形態>
第二実施形態の制動制御装置は、第一実施形態と比較して、ブレーキECU6のプリチャージ制御が異なっている。したがって、第二実施形態のプリチャージ制御について説明する。
【0085】
図6に示すように、ブレーキECU6は、ストロークセンサ71からブレーキペダル10の操作量の情報を取得し、ブレーキスイッチ72からの信号を取得する(S201)。ブレーキECU6は、取得した操作量(及び操作の有無の情報)が、予め設定された所定操作量以下であるか否かを判定する(S202)。ブレーキECU6は、「所定操作量以下」と判定した場合(S202:Yes)、圧力センサ74から圧力値を取得する(S203)。すなわち、ブレーキECU6は、サーボ室1Aの圧力(サーボ液圧)を取得する(S203)。
【0086】
そして、ブレーキECU6は、サーボ液圧が所定の準備サーボ液圧(「準備駆動液圧」に相当する)となるように、増圧弁42及び減圧弁41を制御する(S204)。準備サーボ液圧は、大気圧より大きい液圧であって、第一マスタピストン14をその初期位置に向けて付勢する付勢部材144のセット荷重以下の液圧に設定されている。したがって、準備パイロット液圧は、サーボ室1Aに準備サーボ液圧を発生させるために必要な液圧となる。つまり、準備パイロット液圧は、ボール弁442を弁座部444から離間させる液圧以上である。このように、ブレーキECU6は、増圧弁42及び減圧弁41を制御してパイロット液圧を準備パイロット液圧まで上昇させ、ボール弁442を弁座部444から離間させて、サーボ液圧を準備サーボ液圧まで上昇させる(S204)。なお、取得した操作量が所定操作量より大きい場合(S202:No)、プリチャージは実行されない。
【0087】
第二実施形態によれば、ブレーキ操作が行われた際における、突出部445bがボール弁442に当接するまでの時間(無効液量期間)を無くすことができる。また、予めサーボ液圧を第一マスタピストン14が移動しない準備サーボ液圧にまで上昇させることができるため、サーボ液圧がセット荷重を超えて第一マスタピストン14が移動開始するまでの時間を短縮すること又は無くすことができる。これにより、第一実施形態よりさらに、制動力の応答性は高くなる。また、ブレーキECU6は、圧力センサ74によりサーボ液圧を取得しながらパイロット液圧の制御ができるため、精度良く準備パイロット液圧を発生させることができる。
【0088】
また、第二実施形態によれば、第一実施形態同様、準備パイロット液圧により第一マスタピストン14が移動することがなく、マスタ液圧及びホイル液圧が上昇しない。したがって、ブレーキの引き摺り発生は抑制される。
【0089】
<第三実施形態>
第三実施形態の制動制御装置は、第一実施形態と比較して、圧力センサ77が追加され、その値に基づいてプリチャージ制御が為されている点で異なっている。したがって、当該異なる点について説明する。なお、第一実施形態と同じ符号は、第一実施形態と同様の構成を示すものであって、先行する説明が参照される。
【0090】
図7に示すように、圧力センサ77は、パイロット液圧室4Dの液圧を測定するセンサであって、増圧弁42とポート4gの間に配置された配管421に設けられている。ブレーキECU6は、圧力センサ77からパイロット液圧の情報を取得する。
【0091】
ここで第三実施形態のプリチャージ制御について説明する。
図8に示すように、ブレーキECU6は、ストロークセンサ71からブレーキペダル10の操作量の情報を取得し、ブレーキスイッチ72からの信号を取得する(S301)。ブレーキECU6は、取得した操作量(及び操作の有無の情報)が、予め設定された所定操作量以下であるか否かを判定する(S302)。ブレーキECU6は、「所定操作量以下」と判定した場合(S302:Yes)、圧力センサ77から圧力値を取得する(S303)。すなわち、ブレーキECU6は、パイロット液圧室4Dの圧力(パイロット液圧)を取得する(S303)。
【0092】
そして、ブレーキECU6は、パイロット液圧が所定の準備パイロット液圧となるように、増圧弁42及び減圧弁41を制御する(S304)。準備パイロット液圧は、第一実施形態と同様、パイロット液圧室4Dに発生させることで、突出部445bがボール弁442に当接する直前の位置まで移動する液圧、又は、突出部445bがボール弁442を移動させずにボール弁442に当接する位置まで移動する液圧である。なお、取得した操作量が所定操作量より大きい場合(S302:No)、プリチャージは実行されない。
【0093】
第三実施形態によれば、第一実施形態同様の効果が発揮される。さらに、第三実施形態では、ブレーキECU6がパイロット液圧の値を取得しながら増圧弁42及び減圧弁41を制御するため、精度良くパイロット液圧室4Dに準備パイロット液圧を発生させることができる。
【0094】
<第四実施形態>
第四実施形態の制動制御装置は、第一実施形態と比較して、ブレーキECU6がブレーキ発生の予測をし、その予測に基づいてプリチャージ制御が為されている点で異なっている。したがって、当該異なる点について説明する。なお、第一実施形態と同じ符号は、第一実施形態と同様の構成を示すものであって、先行する説明が参照される。
【0095】
図9に示すように、ブレーキECU6は、アクセルペダル(図示せず)の操作量を測定するアクセル操作量センサ81からアクセル操作量の情報を取得し、車両の速度を測定する車速センサ82から車速の情報を取得するように構成されている。ブレーキECU6には、アクセル操作量に対する設定値である所定アクセル操作量、及び車速に対する設定値である所定車速が記憶されている。
【0096】
ここで第四実施形態のプリチャージ制御について説明する。
図10に示すように、ブレーキECU6は、ストロークセンサ71からブレーキペダル10の操作量の情報を取得し、ブレーキスイッチ72からの信号を取得する(S401)。ブレーキECU6は、取得した操作量(及び操作の有無の情報)が、予め設定された所定操作量以下であるか否かを判定する(S402)。ブレーキECU6は、「所定操作量以下」と判定した場合(S402:Yes)、アクセル操作量センサ81からアクセル操作量の情報を取得し、車速センサ82から車速の情報を取得する(S403)。
【0097】
ブレーキECU6は、取得したアクセル操作量が所定アクセル操作量以下であるか否か、及び取得した車速が所定車速以上であるか否かに基づいて、「運転手によりブレーキ操作が行われる可能性が高いか否か」を判定する(S404)。具体的に、ブレーキECU6は、アクセル操作量が所定アクセル操作量以下であり且つ車速が所定車速以上である場合、運転手がブレーキ操作を行う可能性が高いと判定する。すなわち、ブレーキECU6は、アクセル操作量が所定アクセル操作量以下であり且つ車速が所定車速以上である場合、ホイルシリンダ541〜544が設けられている車輪5FR〜5RLに制動力が付与されると予測する。ブレーキECU6は、ホイルシリンダ541〜544が設けられている車輪5FR〜5RLに制動力が付与されることを予測する予測手段63を備えている。
【0098】
ブレーキECU6は、制動力が付与される可能性が高いと判定した場合(S404:Yes)、増圧弁42及び減圧弁41を制御して、パイロット液圧室4Dに準備パイロット液圧を発生させる(S405)。準備パイロット液圧は、第一実施形態同様、所定液量の作動液をパイロット液圧室4Dに供給することで発生させる。一方、ブレーキECU6は、制動力が付与される可能性が高いと判定しなかった場合(S404:No)、プリチャージを実行しない。なお、取得した操作量が所定操作量より大きい場合も(S302:No)、プリチャージは実行されない。
【0099】
第四実施形態によれば、ブレーキECU6がブレーキ操作の可能性を予測するため、プリチャージの必要性が高いタイミングに選択的にプリチャージを実行することができる。つまり、第四実施形態によれば、第一実施形態の効果に加えて、車両の走行状態に応じて、より効率的にプリチャージを実行することができる。
【0100】
なお、本発明は上記第一〜第四実施形態に限られない。例えば第四実施形態において、準備パイロット液圧の発生は、第二実施形態又は第三実施形態の制御により実現しても良い。つまり、第四実施形態と他の実施形態とを組み合わせても良い。具体的には、
図10のS405は、
図6のS203とS204、又は
図8のS303とS304であっても良い。また、ブレーキECU6(予測手段63)は、アクセル操作量が所定アクセル操作量以下である場合、又は車速が所定車速以上である場合に、運転手がブレーキ操作を行う可能性が高いと判定するように設定されていても良い。また、ブレーキECU6(予測手段63)によるブレーキ発生予測は、上記アクセル操作量や車速以外の要素に基づいて実行されても良い。また、準備パイロット液圧は、突出部445bがボール弁442に当接する直前位置に限らず、突出部445bがボール弁442に接近する液圧であれば良い。