特許第6016667号(P6016667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016667
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】通信装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/00 20090101AFI20161013BHJP
   H04W 52/38 20090101ALI20161013BHJP
   H04W 52/26 20090101ALI20161013BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20161013BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20161013BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20161013BHJP
【FI】
   H04W4/00 111
   H04W52/38
   H04W52/26
   H04W88/06
   H04W84/12
   H04W84/10 110
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-31812(P2013-31812)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-165510(P2014-165510A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】浅井 信樹
【審査官】 深津 始
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−065307(JP,A)
【文献】 特開2012−239056(JP,A)
【文献】 特開2007−274537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 −H04B 7/26
H04W 4/00 −H04W 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め規定された複数の伝送速度のうちのうちから正常な伝送が確保できる最大の伝送速度を設定伝送速度として動的に選定して当該設定伝送速度で伝送を行う第1の無線通信方式と、前記第1の無線通信方式と重なる周波数帯を伝送に用いる第2の無線通信方式との2つの異なる無線通信方式による伝送を行う通信装置であって、
第1の無線通信方式の伝送と第2の無線通信方式の伝送を同時に行っているときに、前記第2の無線通信方式の伝送の受信品質の所定レベル以下への劣化を検出する劣化検出部と、
前記劣化検出部が前記劣化を検出したときに、前記第1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させる送信電力制御部とを有し、
前記送信電力制御部は、
前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、現在の前記設定伝送速度より小さい一つの伝送速度を目標伝送速度として選定し、
前記第1の無線通信方式の現在の前記設定伝送速度による伝送の正常受信に必要となる感度と、前記第1の無線通信方式の前記目標伝送速度による伝送の正常受信に必要となる感度との差を所要感度差として算定し、算定した所要感度差分、前記第1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の通信装置であって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式を定める規格において前記予め規定された複数の伝送速度のそれぞれに対して規定されている最小受信感度に従って、前記現在の前記設定伝送速度に対して規定されている最小受信感度と、前記目標伝送速度に対して規定されている最小受信感度との差を、前記所要感度差として算定することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の通信装置であって、
前記送信電力制御部は、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、現在の前記設定伝送速度未満の伝送速度であって、当該設定伝送速度未満の伝送速度のうちで最大の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の通信装置であって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式の伝送を利用して行われている通信に必要な伝送速度を所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とする通信装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の通信装置であって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信が、前記第1の無線通信方式の伝送を当該通信装置と行っている他の装置によって移動通信サービスを介して移動通信網に中継される通信である場合に、当該移動通信サービスが提供する移動通信の最大伝送速度を所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とする通信装置。
【請求項6】
請求項5記載の通信装置であって、
当該通信装置の現在位置を算定する現在位置算定部を有し、
前記送信電力制御部は、前記現在位置算定部が算定した現在位置が属する地域において前記移動通信サービスが提供する移動通信の最大伝送速度を前記所要伝送速度として算定することを特徴とする通信装置。
【請求項7】
請求項1または2記載の通信装置であって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信が、リアルタイム再生されるオーディオデータもしくはビデオデータを送受するものである場合に、当該オーディオデータもしくはビデオデータのビットレートを所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とする通信装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載の通信装置であって、
前記第1の無線通信方式は、2.4MHz帯を伝送に使用するIEEE802.11bまたはIEEE802.11g規格で規定されている無線LANの無線通信方式であることを特徴とする通信装置。
【請求項9】
請求項8記載の通信装置であって、
前記第2の無線通信方式は、Bluetooth規格で規定されている無線通信方式であることを特徴とする通信装置。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の通信装置であって、
当該通信装置は、自動車に搭載されるものであることを特徴とする通信装置。
【請求項11】
予め規定された複数の伝送速度のうちのうちから正常な伝送が確保できる最大の伝送速度を設定伝送速度として動的に選定して当該設定伝送速度で伝送を行う第1の無線通信方式と、前記第1の無線通信方式と重なる周波数帯を伝送に用いる第2の無線通信方式との2つの異なる無線通信方式による伝送を行うコンピュータによって読み取られ実行されるコンピュータプログラムであって、
当該コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、
第1の無線通信方式の伝送と第2の無線通信方式の伝送を同時に行っているときに、前記第2の無線通信方式の伝送の受信品質の所定レベル以下への劣化を検出する劣化検出部と、
前記劣化検出部が前記劣化を検出したときに、前記第1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させる送信電力制御部として機能させ、
前記送信電力制御部は、
前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、現在の前記設定伝送速度より小さい一つの伝送速度を目標伝送速度として選定し、
前記第1の無線通信方式の現在の前記設定伝送速度による伝送の正常受信に必要となる感度と、前記第1の無線通信方式の前記目標伝送速度による伝送の正常受信に必要となる感度との差を所要感度差として算定し、算定した所要感度差分、前記第1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11記載のコンピュータプログラムであって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式を定める規格において前記予め規定された複数の伝送速度のそれぞれに対して規定されている最小受信感度に従って、前記現在の前記設定伝送速度に対して規定されている最小受信感度と、前記目標伝送速度に対して規定されている最小受信感度との差を、前記所要感度差として算定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項11または12記載のコンピュータプログラムであって、
前記送信電力制御部は、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、現在の前記設定伝送速度未満の伝送速度であって、当該設定伝送速度未満の伝送速度のうちで最大の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項11または12記載のコンピュータプログラムであって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式の伝送を利用して行われている通信に必要な伝送速度を所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項11または12記載のコンピュータプログラムであって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信が、前記第1の無線通信方式の伝送を前記コンピュータと行っている他の装置によって移動通信サービスを介して移動通信網に中継される通信である場合に、当該移動通信サービスが提供する移動通信の最大伝送速度を所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項15記載のコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータは、現在位置を算定する現在位置算定部を備え、
前記送信電力制御部は、前記現在位置算定部が算定した現在位置が属する地域において前記移動通信サービスが提供する移動通信の最大伝送速度を前記所要伝送速度として算定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項11または12記載のコンピュータプログラムであって、
前記送信電力制御部は、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信が、リアルタイム再生されるオーディオデータもしくはビデオデータを送受するものである場合に、当該オーディオデータもしくはビデオデータのビットレートを所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項11、12、13、14、15、16または17記載のコンピュータプログラムであって、
前記第1の無線通信方式は、2.4MHz帯を伝送に使用するIEEE802.11bまたはIEEE802.11g規格で規定されている無線LANの無線通信方式であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項18記載のコンピュータプログラムであって、
前記第2の無線通信方式は、Bluetooth規格で規定されている無線通信方式であることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項20】
請求項11、12、13、14、15、16、17、18または19記載のコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータは、自動車に搭載されるものであることを特徴とするコンピュータプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる方式の無線通信間の混信障害を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異なる方式の無線通信間の混信障害を抑制する技術としては、IEEE802.11規格による無線LANの無線通信とBluetooth(登録商標)による無線通信とを行う端末装置において、一方の無線通信を行っているときには他方の無線通信(または他方の無線通信の送信)を抑止する技術(たとえば、特許文献1)や、無線LANの送信を行っているときにはBluetoothでは受信のみを行うようにすると共に、Bluetoothの受信信号から無線LANの送信信号をキャンセルする技術(たとえば、特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-24579号公報
【特許文献2】特開2007-142684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなIEEE802.11規格による無線LANの無線通信とBluetoothによる無線通信とを行う端末装置において、一方の無線通信(または一方の無線通信の送信)を行っているときには他方の無線通信(または他方の無線通信の送信)を抑止する技術によれば、二つの無線通信の送受信を並行して行うことができなくなってしまい、この結果、無線通信を利用して処理を行っている通信利用元が所要の通信を行えなくなってしまうことがあるなど、通信利用元の不利益が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、異なる方式の無線通信方式の通信を行う通信装置において、より通信利用元の不利益が少ない形態で混信障害を効果的に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、予め規定された複数の伝送速度のうちから正常な伝送が確保できる最大の伝送速度を設定伝送速度として動的に選定して当該設定伝送速度で伝送を行う第1の無線通信方式と、前記第1の通信方式と重なる周波数帯を伝送に用いる第2の無線通信方式との2つの異なる無線通信方式による伝送を行う通信装置に、第1の無線通信方式の伝送と第2の無線通信方式の伝送を同時に行っているときに、前記第2の無線通信方式の伝送の受信品質の所定レベル以下への劣化を検出する劣化検出部と、前記劣化検出手段が前記劣化を検出したときに、前記第1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させる送信電力制御部とを設けたものである。但し、前記送信電力制御部は、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、現在の前記設定伝送速度より小さい一つの伝送速度を目標伝送速度として選定し、前記第1の無線通信方式の現在の前記設定伝送速度による伝送の正常受信に必要となる感度と、前記第1の無線通信方式の前記目標伝送速度による伝送の正常受信に必要となる感度との差を所要感度差として算定し、算定した所要感度差分、前記1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させるものである。
【0007】
ここで、このような通信装置は、前記送信電力制御部において、前記第1の無線通信方式を定める規格において前記予め規定された複数の伝送速度のそれぞれに対して規定されている最小受信感度に従って、前記現在の前記設定伝送速度に対して規定されている最小受信感度と、前記目標伝送速度に対して規定されている最小受信感度との差を、前記所要感度差として算定するこように構成してもよい。
【0008】
このような通信装置によれば、前記1の無線通信方式の伝送による送信を停止することなく、前記1の無線通信方式の伝送の伝送速度を低下させるのみで、第2の無線通信方式による伝送の受信障害を抑制することができる。また、前記1の無線通信方式の伝送の伝送速度の低下幅に対して最大の減少幅で前記1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させて、第2の無線通信方式による伝送の受信障害を抑制することができる。よって、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信を行っている通信元に対する不利益を抑えつつ、効果的に第2の無線通信方式による伝送の受信障害の発生を効果的に抑制することができるようになる。
【0009】
また、以上のような通信装置は、前記送信電力制御部において、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、現在の前記設定伝送速度未満の伝送速度であって、当該設定伝送速度未満の伝送速度のうちで最大の伝送速度を前記目標伝送速度として選定するように構成してもよい。
【0010】
このようにすることにより、前記1の無線通信方式の伝送の伝送速度の低下を最小に抑えつつ、第2の無線通信方式による伝送の受信障害の発生を抑止することができる。
また、以上のような通信装置は、前記送信電力制御部において、前記第1の無線通信方式の伝送を利用して行われている通信に必要な伝送速度を所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定するようにしてもよい。
【0011】
または、前記送信電力制御部において、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信が、前記第1の無線通信方式の伝送を当該通信装置と行っている他の装置によって移動通信サービスを介して移動通信網に中継される通信である場合に、当該移動通信サービスが提供する移動通信の最大伝送速度を所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定するようにしてもよい。また、この場合には、通信装置に、当該通信装置の現在位置を算定する現在位置算定部を設け、前記送信電力制御部において、前記現在位置算定部が算定した現在位置が属する地域において前記移動通信サービスが提供する移動通信の最大伝送速度を前記所要伝送速度として算定するようにしてもよい。
【0012】
または、前記送信電力制御部において、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信が、リアルタイム再生されるオーディオデータもしくはビデオデータを送受するものである場合に、当該オーディオデータもしくはビデオデータのビットレートを所要伝送速度として算定し、前記予め規定された複数の伝送速度のうちの、前記所要伝送速度以上最小の伝送速度を前記目標伝送速度として選定するようにしてもよい。
【0013】
これらのようにすることにより、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信に必要な伝送速度以上の伝送速度が維持される範囲内において、最大幅、前記1の無線通信方式の伝送の送信電力を減少させて、第2の無線通信方式による伝送の受信障害を抑制することができる。よって、前記第1の無線通信方式の伝送を利用した通信を行っている通信元に対する不利益無く、効果的に第2の無線通信方式による伝送の受信障害の発生を抑制することができるようになる。
【0014】
ここで、以上の通信装置において、前記第1の無線通信方式は、たとえば、2.4MHz帯を伝送に使用するIEEE802.11bまたはIEEE802.11g規格で規定されている無線LANの無線通信方式とすることができ、前記第2の無線通信方式は、たとえば、Bluetooth規格で規定されている無線通信方式とすることができる。
【0015】
また、以上の通信装置は、自動車に搭載されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、異なる方式の無線通信方式の通信を行う通信装置において、より通信利用元の不利益が少ない形態で混信障害を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る車載装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る車載装置で発生し得る混信障害を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る送信電力制御処理を示すフローチャートである。
図4】IEEE802.11g規格で規定されている伝送速度と最小受信感度を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る送信電力制御処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係る所要通信速度算定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を自動車に搭載される車載装置への適用を例にとり説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る車載装置の構成を示す。
図示するように、車載装置1は、IEEE802.11g規格に従った無線LANインタフェースで無線信号の送受を行う無線LANインタフェース装置11、Bluetooth規格に従った無線通信インタフェースで無線信号の送受を行うBT通信装置12、オペレーティングシステム13、オペレーティングシステム13によって管理されオペレーティングシステム13上で稼働する複数のアプリケーションとを備えている。
【0019】
また、オペレーティングシステム13には、無線LANインタフェース装置11を制御して無線LANを用いた通信機能を提供する無線LANドライバ131、BT通信装置12を制御してBluetoothを用いた通信機能を提供するBT通信ドライバ132、送信電力制御部133が組み込まれている。
【0020】
そして、オペレーティングシステム13上で稼働する複数のアプリケーションには、無線LANドライバ131が提供する通信機能を利用して、無線LANを経由する通信である無線LAN利用通信を行うアプリケーションである無線LAN利用アプリケーション14と、BT通信ドライバ132が提供する通信機能を利用してBluetoothを経由する通信であるBT利用通信を行うBT通信利用アプリケーション15と、その他のアプリケーション16とが含まれる。
【0021】
ここで、このような車載装置1の無線LANインタフェース装置11が無線信号の送受を行う装置としては、図中に示した無線LANルータ2などがある。無線LANルータ2は、インターネット接続サービスを提供する移動電話網3の基地局31に移動通信により接続し、無線LANとインターネット4との間の通信を中継するティザリングを行う。そして、車載装置1の無線LAN利用アプリケーション14は、たとえば、このような無線LANルータ2のティザリングを利用して、インターネット4上のサーバ5等と上述した無線LAN利用通信を行うアプリケーションである。
【0022】
なお、無線LANルータ2は、スマートフォンや移動電話等に内蔵されたものであってもよい。
一方、車載装置1のBT通信装置12が無線信号の送受を行う装置としては、記録しているオーディオデータやビデオデータの再生を行う、Bluetoothによる通信機能を備えたポータブルプレイヤ6などがある。そして、車載装置1のBT通信利用アプリケーション15は、たとえば、上述したBT利用通信により、ポータブルプレイヤ6から転送されるオーディオデータやビデオデータの再生出力を、当該転送と並行して行うリアルタイム再生などを行うアプリケーションである。
【0023】
さて、ここで、IEEE802.11g規格と、Bluetooth規格とは、共に2.4GHz帯(ISMバンド)の周波数を用いており、また、両者は異なる無線通信規格であって両者間にまたがる混信障害を調停するメカニズムは各規格上には存在しない。そして、このために、車載装置1が無線LANインタフェースで行う無線信号の送受と、Bluetoothインタフェースで行う無線信号の送受との間には、混信による障害が生じ得る。
【0024】
すなわち、たとえば、図2a1に示すように、車載装置1が無線LANルータ2と無線LANインタフェースで無線信号の送受を行い、車載装置1がポータブルプレイヤ6とBluetoothインタフェースで無線信号の送受を行う場合を考える。
なお、以下では、無線LANインタフェースで送受する無線信号を「無線LAN信号」と、Bluetoothインタフェースで送受する無線信号を「BT信号」と記載して説明を行う。
さて、図2a1に示した場合、各規格に規定されている制御によって、無線LAN信号の送受に用いる周波数帯域である無線LAN信号帯域であると、BT信号の送受に用いる周波数帯域であるBT信号帯域との間には、両者が重ならないように、ある程度の周波数差ΔFが設定される。
また、この場合、車載装置1の無線LANインタフェース装置11が送信する無線LAN信号は、車載装置1のBT通信装置12によってノイズとして受信されることとなる。
そして、図2b1に示すように、BT通信装置12が受信するBT信号の強度202と、BT通信装置12がノイズとして受信する無線LAN信号の強度201とが同程度の強度である場合には、BT信号は充分なSN比をもってBT通信装置12に受信されることとなるためにBT通信装置12において混信によるBT信号の受信障害は生じない。なお、図2b1におけるΔIは、BT通信装置12で受信されるBT信号の強度202と、BT通信装置12でノイズとして受信される無線LAN信号強度201の差を表している。
【0025】
一方、たとえば、図2a2に示すように、車載装置1がBT信号の送受を行うポータブルプレイヤ6までの車載装置1からの距離が大きい場合、BT通信装置12で受信されるBT信号の強度202は小さくなるために、BT通信装置12で受信されるBT信号の強度202に対する、BT通信装置12でノイズとして受信される無線LAN信号の強度201の割合が大きくなってSN比が劣化し、BT通信装置12でBT信号を正常に受信することができなくなる。なお、このように、車載装置1で受信されるBT信号に大きな強度でノイズとして混入する無線LAN信号は、車載装置1自身が送信する無線LAN信号のみであり、車載装置1から離れた無線LANルータ2が送信する無線LAN信号が、BT通信装置12で受信されるBT信号に大きな強度でノイズとして混入することは稀である。
【0026】
以下、このような車載装置1において、以上のような混信による障害の発生を抑止するために車載装置1のオペレーティングシステム13の送信電力制御部133が行う送信電力制御処理について説明する。
図3に、この送信電力制御処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、まず、無線LAN利用通信とBT利用通信との双方が実行中であるかどうかを無線LANドライバ131とBT通信ドライバ132から、各ドライバの通信実行状態を取得して判定する(ステップ302)。
そして、無線LAN利用通信とBT利用通信との双方が実行中でなければ(ステップ302)、無線LANドライバ131に、無線LANインタフェース装置11の無線LAN信号の送信電力を予め定めた標準値に設定させ(ステップ314)、ステップ302からの処理に戻る。
【0027】
一方、無線LAN利用通信とBT利用通信との双方が実行中であれば(ステップ302)、BT通信装置12におけるBT信号の受信品質が、所定のしきい値Th未満であるかどうかを調べる(ステップ304)。ここで、BT信号の受信品質は、BT通信装置12で受信したBT信号の誤り発生率や、BT通信装置12で受信したBT信号のSN比や、BT通信装置12におけるBT信号の受信強度などを、BT通信ドライバ132から取得して算定する。ここで、受信品質がしきい値Th以上であれば、BT信号の正常受信を保証できる値を設定する。
【0028】
そして、BT信号の受信品質が、所定のしきい値Th未満でなければ(ステップ304)、ステップ302からの処理に戻る。
一方、BT信号の受信品質が、所定のしきい値Th未満であれば(ステップ304)、無線LANインタフェース装置11における無線LAN信号の伝送速度を無線LANドライバ131から取得する(ステップ306)。そして、取得した無線LAN信号の伝送速度が、無線LAN信号の伝送速度として設定可能な伝送速度のうちの最小の速度に設定されているかどうかを調べる(ステップ308)。
【0029】
ここで、IEEE802.11g規格に従った無線LANインタフェース装置11は、無線LAN信号の伝送速度として、図4に示す6Mbpsから54Mbpsまでの間に設定された12の伝送速度を設定することができる。また、IEEE802.11g規格では、各伝送速度に対して図示する最小受信感度(Receiver Minimum Input Level Sensitivity)が規定されており、無線LAN信号を受信する装置は、各伝送速度の無線信号の受信を、当該伝送速度に対して規定された最小受信感度より良好な受信感度で行うことができる。
【0030】
図3に戻り、無線LAN信号の伝送速度が、無線LAN信号の伝送速度として設定可能な伝送速度のうちの最小の速度に設定されていれば(ステップ308)、ステップ302からの処理に戻る。
一方、無線LAN信号の伝送速度が、無線LAN信号の伝送速度として設定可能な伝送速度のうちの最小の速度に設定されていなければ、現在設定されている伝送速度に対して図4に示したように規定されている最小受信感度と、現在設定されている伝送速度よりも一つ小さい伝送速度に対して図4に示したように規定されている最小受信感度との差を最小受信感度差として求める(ステップ310)。
【0031】
すなわち、たとえば、現在設定されている伝送速度が48Mbpsであれば、一段階小さい伝送速度は36Mbpsであるので、48Mbpsに対して規定されている-66dBmと、36Mbpsに対して規定されている-70dBmとの差、4dBを最小受信感度差として求める。
【0032】
そして、無線LANインタフェース装置11の無線LAN信号の送信電力を、当該送信電力の現在の大きさから、求めた最小受信感度差分減少させ(ステップ312)、ステップ302からの処理に戻る。
さて、ここで、このように無線LAN信号の送信電力を減少した無線LANインタフェース装置及び当該無線LANインタフェース装置11と無線LAN信号の送受を行う無線LANルータ2などの他の装置は、IEEE802.11g規格に従った制御によって、現在の伝送速度による無線LAN信号の所定品質以上の伝送を維持できなくなった場合には、自動的に無線LAN信号の伝送速度を所定品質以上の伝送が可能となる速度まで低下する。
【0033】
そして、この結果、ある伝送速度Xで正常に伝送が行えている状態において、IEEE802.11g規格において伝送速度Xに対して規定されている最小受信感度と、伝送速度Y(Y<X)に対して規定されているとの差分、送信電力を減少したために伝送速度Xの伝送を正常に行えなくなったとしても、無線LAN信号の受信側の受信レベルの減少は送信電力の減少に比例するので、少なくとも伝送速度Yの伝送が正常に行われることとなる。
すなわち、たとえば、48Mbpsで正常に伝送が行えている状態において、IEEE802.11g規格において48Mbpsに対して規定されている-66dBmと、36Mbpsに対して規定されている-70dBmとの差、4dB送信電力を減少しても、36Mbpsの伝送は正常に行えることになる。
一方で、無線LAN信号の送信電力の減少により、BT通信装置12で受信されるBT信号の強度に対する、BT通信装置12でノイズとして受信される無線LAN信号の強度は低下する。
そして、以上の送信電力制御処理によれば、BT信号の受信品質がしきい値Th以上となるまで無線LAN信号の送信電力を段階的に順次減少するので、最小の無線LAN信号の伝送速度の低下で、BT通信装置12において混信によって生じていたBT信号の受信障害を排除することができる。
【0034】
以上、送信電力制御部133が行う送信電力制御処理について説明した。
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
以上のように、本第1実施形態によれば、伝送速度を一段階のみ低下させる範囲内において、最大幅、無線LAN信号の送信電力を、BT通信装置12の受信品質が回復するまでのみ、段階的に減少していくことにより、BT通信装置12の混信による受信障害を抑制する。よって、伝送速度の低下幅に対して最大の効果をもってBT通信装置12の受信障害の発生を回避することができるようになる。また、無線LAN利用通信の送受信をBT利用通信の送受信と並行して、できるだけ大きい伝送速度で行いつつ、BT通信装置12の受信障害の発生を効果的に回避することができるようになる。
【0035】
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
本第2実施形態は、上述した第1実施形態において、送信電力制御部133が行っていた図3に示した送信電力制御処理を、図5に示す送信電力制御処理に置き換えたものである。
すなわち、図5に示すように、本第2実施形態では、送信電力制御部133は送信電力制御処理において、まず、無線LAN利用通信とBT利用通信との双方が実行中であるかどうかを判定する(ステップ502)。
そして、無線LAN利用通信とBT利用通信との双方が実行中でなければ(ステップ502)、無線LANドライバ131に、無線LANインタフェース装置11の無線LAN信号の送信電力を予め定めた標準値に設定させ(ステップ516)、ステップ502からの処理に戻る。
【0036】
一方、無線LAN利用通信とBT利用通信との双方が実行中であれば(ステップ502)、BT通信装置12におけるBT信号の受信品質が、所定のしきい値Th未満であるかどうかを調べる(ステップ504)。
そして、BT信号の受信品質が、所定のしきい値Th未満でなければ(ステップ504)、ステップ502からの処理に戻る。
一方、BT信号の受信品質が、所定のしきい値Th未満であれば(ステップ504)、無線LAN信号の伝送速度を無線LANドライバ131から取得する(ステップ506)。そして、取得した伝送速度が、図4に示した無線LAN信号の伝送速度として設定可能な伝送速度のうちの最小の速度に設定されているかどうかを調べる(ステップ508)。
【0037】
そして、無線LAN信号の伝送速度が、無線LAN信号の伝送速度として設定可能な伝送速度のうちの最小の速度に設定されていれば(ステップ508)、ステップ502からの処理に戻る。
一方、無線LAN信号の伝送速度が、無線LAN信号の伝送速度として設定可能な伝送速度のうちの最小の速度に設定されていなければ、詳細を後述する所要通信速度算定処理を行って、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信に必要な無線LAN信号の伝送速度を所要通信速度として算出する(ステップ510)。
【0038】
そして、現在設定されている無線LAN信号の伝送速度に対して図4に示したように規定されている最小受信感度と、所要通信速度以上で最小の伝送速度に対して図4に示したように規定されている最小受信感度との差を最小受信感度差として求める(ステップ512)。
【0039】
すなわち、たとえば、現在設定されている伝送速度が54Mbpsであり、所要通信速度以上の最小の伝送速度が10 Mbpsであれば、54 Mbpsに対して規定されている-65dBmと、10 Mbps 以上の最小の規定伝送速度である12 Mbpsに対して規定されている-79 dBmとの差、14dBを最小受信感度差として求める。
【0040】
そして、無線LANインタフェース装置11の無線LAN信号の送信電力を、当該送信電力の現在の大きさから、求めた最小受信感度差分減少させ(ステップ514)、ステップ502からの処理に戻る。
ここで、前述のように、無線LAN信号の送信電力を減少した無線LANインタフェース装置及び当該無線LANインタフェース装置11と無線LAN信号の送受を行う無線LANルータ2などの他の装置は、IEEE802.11g規格に従った制御によって、現在の伝送速度による無線LAN信号の所定品質以上の伝送を維持できなくなった場合には、自動的に無線LAN信号の伝送速度を所定品質以上の伝送が可能となる速度まで低下する。
【0041】
そして、この結果、ある伝送速度Xで正常に伝送が行えている状態において、IEEE802.11g規格において伝送速度Xに対して規定されている最小受信感度と、伝送速度Y(Y<X)に対して規定されているとの差分、無線LAN信号の送信電力を減少したために伝送速度Xの伝送を正常に行えなくなったとしても、無線LAN信号の受信側の受信レベルの減少は送信電力の減少に比例するので、少なくとも伝送速度Y以上の伝送速度の伝送が正常に行われる。
すなわち、たとえば、54Mbpsで正常に伝送が行えている状態において、IEEE802.11g規格において54Mbpsに対して規定されている-65dBmと、12Mbpsに対して規定されている-79dBmとの差、14dB送信電力を減少しても、12Mbps以上の伝送速度による伝送は正常に行える。
一方で、無線LAN信号の送信電力の減少により、当該減少分、BT通信装置12で受信されるBT信号の強度に対する、BT通信装置12でノイズとして受信される無線LAN信号の強度は低下することとなる。
【0042】
以上、第2実施形態において、送信電力制御部133が行う送信電力制御処理について説明した。
次に、第2実施形態に係る図5の送信電力制御処理のステップ510において送信電力制御部133が行う所要通信速度算定処理について説明する。
図6に、この所要通信速度算定処理の手順を示す。
図示するように、この所要通信速度算定処理では、まず、無線LAN利用通信を行っている無線LAN利用アプリケーション14を特定する(ステップ602)。ここで、この無線LAN利用アプリケーション14の特定は、無線LANドライバ131またはオペレーティングシステム13から無線LANドライバ131を介して通信を行っているアプリケーションすなわち無線LANドライバ131で信号を送受する通信ポートを使用しているアプリケーションの識別を取得することにより行うことができる。
【0043】
次に、ステップ602で特定した無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信が無線LANルータ2のティザリングを利用してインターネット4と通信を行うものであるかどうかを判定する(ステップ604)。ここで、この判定は、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信の通信相手のアドレスを無線LANドライバ131やオペレーティングシステム13から取得して、取得したアドレスが無線LAN外部のアドレスである場合に、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信がインターネット4と通信を行うものであると判定することにより行うことができる。ただし、無線LAN利用通信を行っている無線LAN利用アプリケーション14がインターネットブラウザなどのインターネット利用に特化されたアプリケーションである場合には、無条件に無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信がインターネット4と通信を行うものであると判定するようにしてもよい。
【0044】
そして、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信がインターネット4と通信を行うものであると判定された場合には(ステップ604)、無線LANインタフェース装置11が無線LAN信号を送受する無線LANルータ2が利用する移動通信キャリアのサービスが提供する移動通信の最大伝送速度を所要通信速度として算定し(ステップ610)、所要通信速度算定処理を終了する。ここで、無線LANの伝送速度は、一般的な移動通信サービスの最大伝送速度より大きいため、インターネット4と通信を行う無線LAN利用通信のボトルネックは移動通信となる。したがって、無線LANの伝送速度を移動通信の最大伝送速度以上の範囲で低下させても、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信に支障が生じることはない。
【0045】
ここで、無線LANルータ2が利用する移動通信キャリアのサービスが提供する移動通信の最大伝送速度は、予め送信電力制御部133に設定しておく。または、車載装置1がGPS受信機やナビゲーションアプリケーションなどの現在位置を算出する機能部を備えている場合には、予め設定しておいた各地域と、当該地域における無線LANルータ2が利用する移動通信キャリアのサービスが提供する移動通信の最大伝送速度との対応に従って、算出した現在位置が属する地域に対応する最大伝送速度を、無線LANルータ2の行う移動通信の最大伝送速度として算出するようにしてもよい。
【0046】
一方、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信がインターネット4と通信を行うものでなければ、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信が無線LAN利用アプリケーション14においてリアルタイム再生するオーディオデータやビデオデータの転送を行うものであるかどうかを判定する(ステップ606)。ここで、この判定は、無線LAN利用通信を行っている無線LAN利用アプリケーション14に、無線LAN利用通信の用途がリアルタイム再生であるか否かを問い合わせることにより判定する。
【0047】
そして、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信が無線LAN利用アプリケーション14においてリアルタイム再生するオーディオデータやビデオデータの転送を行うものであれば(ステップ606)、リアルタイム再生するオーディオデータやビデオデータのビットレートを無線LAN利用アプリケーション14に問い合わせて取得し、取得したビットレートを所要通信速度として算定し(ステップ612)、所要通信速度算定処理を終了する。
【0048】
一方、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信が無線LAN利用アプリケーション14においてリアルタイム再生するオーディオデータやビデオデータの転送を行うものでなければ(ステップ606)、図4に示した無線LAN信号の伝送速度として設定可能12の伝送速度のうちの最小の伝送速度を所要通信速度して算定し(ステップ608)、所要通信速度算定処理を終了する。
【0049】
以上、図5の送信電力制御処理のステップ510において送信電力制御部133が行う所要通信速度算定処理について説明した。
以上のように本第2実施形態によれば、無線LAN利用アプリケーション14が行っている無線LAN利用通信に必要な伝送速度以上の伝送速度が維持される範囲内において、最大幅、無線LAN信号の送信電力を減少し、BT通信装置12の混信による受信障害を抑制を図ることができる。よって、無線LAN利用通信アプリケーションに対する不利益無く、効果的にBT通信装置12の受信障害を抑制することができるようになる。
【0050】
なお、以上では、車載装置1において、IEEE802.11gとBluetoothの通信を行う場合について説明したが、車載装置1において、IEEE802.11gに代えてまたはIEEE802.11gと共にIEEE802.11gと同様に2.4MHz帯を用いるIEEE802.11bまたはIEEE802.11nの通信を行う場合についても同様に適用することができる。
【0051】
また、IEEE802.11gやIEEE802.11bやIEEE802.11nとBluetoothとの組合せ以外の、異なる2つの周波数帯が重なる任意の通信方式の組合せの通信を行う場合であって、少なくとも一方の通信方式が複数の伝送速度を切り替えて用いることができる通信方式である場合に、本実施形態は同様に適用することができる。
【0052】
また、以上では、車載装置1への適用を例にとり説明したが、本実施形態は、異なる2つの周波数帯が重なる通信方式の通信を行う任意の装置、たとえば、IEEE802.11b/gとBluetoothの通信の双方を行うスマートフォンや移動電話機やPDAやパーソナルコンピュータやタブレットコンピュータに同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…車載装置、2…無線LANルータ、3…移動電話網、4…インターネット、5…サーバ、6…ポータブルプレイヤ、11…無線LANインタフェース装置、12…BT通信装置、13…オペレーティングシステム、14…無線LAN利用アプリケーション、15…BT通信利用アプリケーション、31…基地局、131…無線LANドライバ、132…BT通信ドライバ、133…送信電力制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6