(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016677
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】フィン送り装置
(51)【国際特許分類】
B21D 53/08 20060101AFI20161013BHJP
B21D 1/02 20060101ALN20161013BHJP
【FI】
B21D53/08 K
!B21D1/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-53767(P2013-53767)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-176885(P2014-176885A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100185487
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−301616(JP,A)
【文献】
特開2002−286394(JP,A)
【文献】
特開2004−249361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 1/02
B21D 53/00
B21D 43/00
B21D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィン送り装置であって、
波形フィンの波形と噛合う歯形を有し、前記波形フィンと噛合って回転してフィン送りを行う歯付きローラと、
前記歯付きローラの前記波形フィンと噛合う側に配置され、前記歯付きローラとの間に前記波形フィンが通過する隙間を形成する基台と、
前記波形フィンの送り経路における前記歯付きローラの上流側に配置され、前記波形フィンの前記歯付きローラと噛合う側と反対側から前記波形フィンと接触する補助ローラと、
を備え、
前記補助ローラと前記基台とにより、前記波形フィンが、前記歯付きローラに沿って曲がった状態に維持される、
ことを特徴とするフィン送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィン送り装置であって、
前記基台は、前記歯付きローラの下側に配置され、
前記波形フィンは、前記補助ローラの上側を通り、前記歯付きローラと前記基台との間の前記隙間に進入する、
ことを特徴とするフィン送り装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフィン送り装置であって、
前記基台は、前記歯付きローラの上側に配置され、
前記波形フィンは、前記補助ローラの下側を通り、前記歯付きローラと前記基台との間の前記隙間に進入する、
ことを特徴とするフィン送り装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のフィン送り装置であって、
前記波形フィンは、熱交換器のインナーフィン又はアウターフィンである、
ことを特徴とするフィン送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンの反りを矯正可能なフィン送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平板に波形をプレス成形する波形フィン成形装置が開示されている。
【0003】
波形フィン成形装置では、プレス工程の後に自由落下区間を設け、フィンに弛みを持たせた状態でフィン送り装置で引っ張ることで、変形させることなく次工程への送りを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−78276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波形フィン成形装置で平板に形成した波形は、プレス成形型の抜きテーパと材料のスプリングバックとにより開口側に向けて拡がった状態となる。このとき、波形の上向き開口部と下向き開口部との開き角度に差が生じて、フィン全体に材料送り方向の反りが発生するという問題がある。
【0006】
フィンの反りは、反りと反対の方向にフィン全体を曲げることで矯正できるので、フィン送り装置の前にフィンを曲げる矯正工程を設けて、フィンを引っ張ることで詰まりや変形を防止しつつ矯正工程を通すことが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記の構成では、フィンを曲げることで発生する撓み反力により、フィンが矯正工程に保持された状態となる。したがって、送り装置がフィンを引っ張ったときに、矯正工程とフィン送り装置との間でフィンにかかる張力が大きくなり、フィンの波形が伸ばされて変形するという問題がある(
図3参照)。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、波形を変形させることなく波形フィンの反りを矯正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、フィン送り装置であって、波形フィンの波形と噛合う歯形を有し、前記波形フィンと噛合って回転してフィン送りを行う歯付きローラと、前記歯付きローラの
前記波形フィンと噛合う側に配置され、前記歯付きローラとの間に前記波形フィンが通過する隙間を形成する基台と、前記波形フィンの送り経路における前記歯付きローラの上流側に配置され、前記波形フィンの前記歯付きローラと噛合う側と反対側から
前記波形フィンと接触する補助ローラと、を備え
、前記補助ローラと前記基台とにより、前記波形フィンが、前記歯付きローラに沿って曲がった状態に維持される、ことを特徴とするフィン送り装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、波形フィンの補助ローラと接触する部分と、歯付きローラと噛合う部分とが、各ローラに沿ってそれぞれ曲がり、歯付きローラ側の曲げによりフィンの反りが矯正される。ここで、補助ローラは波形フィンの片側としか接触しないので、波形フィンを保持する力が発生しない。したがって、歯付きローラが回転して波形フィンを引っ張っても、補助ローラと歯付きローラとの間でフィンにかかる張力が大きくならず、波形が伸ばされて変形することがない。また、波形フィンと歯付きローラとの噛合い範囲では、波形のピッチ間距離が歯付きローラの歯形と噛合って固定されるので、波形が伸ばされて変形することがない。したがって、波形を変形させることなく、波形フィンの反りを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るフィン送り装置を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るフィン送り装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、添付図面を参照しながら本発明の第1実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係るフィン送り装置を示す図である。
【0014】
フィン送り装置1は、歯付きローラ2と、基台3と、補助ローラ4とを備える。
【0015】
フィン5は、熱交換器等に用いられるインナーフィンであり、波形フィン成形装置6で波形が連続的にプレス成形され、波形フィン成形装置6の後に設けられた自由落下区間Aを通って、フィン送り装置1に引っ張られて次工程に送られる。
【0016】
なお、自由落下区間Aは、波形フィン成形装置6のプレス工程の成形速度や送り量と、フィン送り装置1がフィン5を送る速度や送り量とに違いがあることから、フィン送り装置1が波形フィン成形装置6からフィン5を直接引っ張ることがないように、フィン5に弛みを持たせる区間である。
【0017】
歯付きローラ2は、フィン5の波形における凹部5aと噛合う歯形2aを有する歯車である。フィン送り装置1は、歯付きローラ2とフィン5とが噛合った状態で、歯付きローラ2を回転させることでフィン送りを行う。
【0018】
基台3は、歯付きローラ2の下側に配置され、歯付きローラ2との間にフィン5が通過する隙間を形成する平板である。基台3と歯付きローラ2との間の隙間は、歯付きローラ2とフィン5とが噛合った状態で、フィン5が通るように設定される。
【0019】
フィン5は、基台3と歯付きローラ2との間の隙間を通過すると、歯付きローラ2との噛合いが外れ、基台3の上面に沿って次工程に送られる。
【0020】
補助ローラ4は、フィン5の送り経路における歯付きローラ2の上流側に配置され、
図1に示すように、フィン5を持ち上げるように下側に接する。また、補助ローラ4は、フィン5の送り方向への移動を妨げないように、回転自在に設けられる。
【0021】
フィン5は、補助ローラ4の上側を通って歯付きローラ2と基台3との間に進入するので、補助ローラ4の位置により、フィン5と歯付きローラ2とが噛合い始める位置が定まる。
【0022】
また、上記のように、フィン5が基台3と歯付きローラ2との間の隙間を通過すると、歯付きローラ2との噛合いが外れるので、フィン5と歯付きローラ2とが噛合う範囲は、補助ローラ4の位置と基台3の位置とで定まることになる。
【0023】
例えば、補助ローラ4と歯付きローラ2との距離が近いほど、フィン5と歯付きローラ2とが噛合い始める位置が手前になり、噛合い範囲が広くなる。また、補助ローラ4と歯付きローラ2との距離が同じ場合でも、補助ローラ4が、歯付きローラ2を中心とした時計回りの方向に行くほど、フィン5と歯付きローラ2とが噛合い始める位置が手前になり、噛合い範囲が広くなる。
【0024】
また、フィン5は、一旦、補助ローラ4に持ち上げられ、続いて補助ローラ4と歯付きローラ2との間に下向きに進入するので、補助ローラ4に沿って曲がった状態となる。これにより、歯付きローラ2と噛合う直前のフィン5の凹部5aが、歯付きローラ2側に向かって拡げられるので、凹部5aの形状のばらつきや、波形のピッチのばらつき等の影響を受けることなく、フィン5と歯付きローラ2とが噛み合うことになる。
【0025】
次に、フィン5の状態について、フィン送り経路に従って説明する。
【0026】
本実施形態におけるフィン5は、
図1に破線で示した矢印の方向に反った状態である。
【0027】
まず、フィン5は、自由落下区間Aにおいて、反りと反対の方向に緩やかに曲がるが、これはフィン5の自重による撓みであり、反りが矯正されるほどの曲がりは発生しない。
【0028】
次に、フィン5は、自由落下区間Aから補助ローラ4に持ち上げられ、補助ローラ4の上側を通って補助ローラ4と歯付きローラ2との間に下向きに進入し、歯付きローラ2と噛合う。このとき、フィン5は、自由落下区間A側のフィン5の自重により、補助ローラ4に沿って曲がった状態となるが、この曲がりの方向はフィン5の反りと同じ方向であり、フィン5は反った状態のままとなる。
【0029】
また、補助ローラ4は、フィン5の下側としか接触しないので、補助ローラ4にはフィン5を保持する力が発生しない。したがって、歯付きローラ2が回転してフィン送りを行ったときに、補助ローラ4がフィン5の送り方向への移動を妨げることがないので、補助ローラ4と歯付きローラ2との間でフィン5の波形が伸ばされて変形することがない。
【0030】
フィン5と歯付きローラ2との噛合い範囲では、フィン5は、歯付きローラに沿って、反りと反対の方向に曲がった状態となる。ここで、フィン5には、反りの方向に戻ろうとする撓み反力が発生するが、補助ローラ4と基台3とが、フィン5が歯付きローラ2から離間するのを妨げるので、歯付きローラ2に沿った曲がりが維持されて反りが矯正される。
【0031】
また、フィン5と歯付きローラ2との噛合い範囲では、フィン5の波形における凹部5aのピッチ間距離が、歯付きローラ2の歯形2aと噛合って固定された状態となる。フィン5と歯付きローラ2との噛合い範囲では、フィン5に発生する撓み反力を、フィン5の上側に接する歯付きローラ2と下側に接する基台3及び補助ローラ4とで受けるので、フィン5を保持する力が発生するが、凹部5aのピッチ間距離が固定されているので、波形が伸ばされて変形することがない。
【0032】
なお、上記のように、補助ローラ4の位置により、フィン5と歯付きローラ2とが噛合い始める位置が定まるので、補助ローラ4の位置を変更することで、反りの矯正度合いを調整できる。すなわち、フィン5の反りが大きい場合は噛合い範囲を広くし、反りが小さい場合は噛合い範囲を狭くすることで、反りの矯正を適切に行うことができる。
【0033】
また、上記のように、フィン5の波形が伸ばされて変形することがないので、フィン送り装置1の送り速度を大きくし、生産能力の向上を図ることができる。
【0034】
また、フィン送りと反り矯正を一つの装置で行うことができるので、工程をコンパクトにでき、設備投資も抑制できる。
【0035】
上記態様によれば、フィン5の補助ローラ4と接触する部分と、歯付きローラ2と噛合う部分とが、各ローラに沿ってそれぞれ曲がり、歯付きローラ2側の曲げによりフィン5の反りが矯正される。ここで、補助ローラ4はフィン5の片側としか接触しないので、フィン5を保持する力が発生しない。したがって、歯付きローラ2が回転してフィン5を引っ張っても、補助ローラ4と歯付きローラ2との間でフィン5にかかる張力が大きくならず、波形が伸ばされて変形することがない。また、フィン5と歯付きローラ2との噛合い範囲では、フィン5の波形における凹部5aのピッチ間距離が歯付きローラ2の歯形2aと噛合って固定されるので、波形が伸ばされて変形することがない。したがって、波形を変形させることなく、フィン5の反りを矯正することができる。
【0036】
<第2実施形態>
続いて本発明の第2実施形態について説明する。
【0037】
図2は、本発明の第2実施形態に係るフィン送り装置を示す図である。
【0038】
第2実施形態は、
図2に示すように、基台3の位置と、フィン5の送り経路が第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
基台3は、歯付きローラ2の上側に配置され、フィン5は、補助ローラ4の下側を通って歯付きローラ2と基台3との間に進入する。
【0040】
フィン5が補助ローラ4の下側を通るので、
図2に示すように、波形フィン成形装置6と歯付きローラ2との間に弛みをもって吊り下がったフィン5が、補助ローラ4に押し下げられて歯付きローラ2に沿って曲がった状態となる。
【0041】
本実施形態のフィン5は、
図2に破線で示した矢印の方向に反った状態であり、第1実施形態の場合と反りの方向が異なる。なお、
図2に示すように、波形フィン成形装置6と自由落下区間Aとの間では、フィン5は、反りと反対の方向に曲がった状態となるが、ここでの曲がりは、フィン5の自重による撓みであり、反りが矯正されるほどの曲がりは発生しない。
【0042】
上記のように、本実施形態のフィン5は、第1実施形態の場合と反りの方向が異なるので、第1実施形態に係るフィン送り装置1を適用すると、歯付きローラ2に沿って曲がる方向が反りと同じ方向になり、フィン5の反りを矯正することができない。
【0043】
これに対して、本実施形態に係るフィン送り装置1では、基台3の配置とフィン5の送り経路が異なることで、フィン5が歯付きローラ2に沿って曲がる方向が反りと反対の方向になるので、フィン5の反りを矯正することができる。
【0044】
上記態様によれば、フィン5の反りの方向が第1実施形態と異なる場合でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体例に限定する趣旨ではない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、フィン5は、熱交換器等に用いられるインナーフィンとしているが、アウターフィンであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 フィン送り装置
2 歯付きローラ
2a 歯形
3 基台
4 補助ローラ
5 フィン(波形フィン)