(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
節電可能負荷への通電を制御する負荷制御を行うことで任意の単位時間で定義されるデマンド時限内の施設内使用電力を目標電力値以下に抑制制御する、各施設に設置された電力抑制装置と、各施設における最大需要電力の総和に相当する総和最大需要電力が設定された総和目標電力値を超過しないように各施設の目標電力値を算出し、算出した目標電力値を各施設の前記電力抑制装置に配分する中央制御装置と、前記電力抑制装置および前記中央制御装置間の通信を行う通信手段とから構成され、
前記電力抑制装置は、デマンド時限内で前記負荷制御を実施した負荷制御実施時間を計測し、
前記中央制御装置は、前記電力抑制装置で計測された前記負荷制御実施時間を各施設から前記通信手段によって収集し、前記負荷制御実施時間が短い負荷制御短時間施設に割り当てられた目標電力を前記負荷制御実施時間が長い負荷制御長時間施設の目標電力に配分することで、前記総和目標電力値を変えずに各施設における前記負荷制御の頻度の均衡を図る省エネルギーシステム。
前記中央制御装置は、前記負荷制御長時間施設に対してはその施設に設定可能な上限の目標電力を設定し、前記負荷制御短時間施設に対しては、各前記負荷制御長時間施設における前記上限の目標電力の総和に相当する総和上限目標電力を前記総和目標電力値から差し引いた残電力を配分することで、目標電力を再配分することを特徴とする請求項1に記載の省エネルギーシステム。
前記中央制御装置は、デマンド時限終了時における前記節電可能負荷の消費電力である節電可能電力を各施設から前記通信手段によって収集し、前記節電可能負荷の電力容量である節電可能電力容量に対する前記節電可能電力の比率が1未満である前記負荷制御短時間施設に対して、前記節電可能電力容量から前記節電可能電力を差し引いた余裕電力、および、前記余裕電力の総和に相当する総和余裕電力に対する前記余裕電力の比率である余裕率を算出し、前記余裕率に応じて前記残電力を配分することを特徴とする請求項2に記載の省エネルギーシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の省エネルギーシステムを利用して複数施設の総和目標電力管理を行った場合、各施設の稼働状況や環境条件、立地条件により、ある施設では目標電力を達成するために負荷制御が頻繁に行われているにも関わらず、他の施設では負荷制御が行われていないなどの状態が発生する。これを是正するため、従来、デマンド時限終了時に、前デマンド時限の負荷制御状態を踏まえ、手動にて目標電力値を再設定する手法がとられてきた。
【0005】
しかしながら、例えば空調を制御対象負荷とした場合、各施設の立地する気象条件が刻々と変化することに加え各設備の稼働状況が変化するなど、頻繁に環境条件が変化するため、目標電力値の再設定に手間がかかり、実際には再設定が頻繁に行われることは少なかった。このため、上記従来の省エネルギーシステムでは、各施設の稼働状況や環境条件、立地条件により、特定の施設に負荷制御が集中してしまい、バランスよく負荷制御が行われなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
節電可能負荷への通電を制御する負荷制御を行うことで任意の単位時間で定義されるデマンド時限内の施設内使用電力を目標電力値以下に抑制制御する、各施設に設置された電力抑制装置と、各施設における最大需要電力の総和に相当する総和最大需要電力が設定された総和目標電力値を超過しないように各施設の目標電力値を算出し、算出した目標電力値を各施設の電力抑制装置に配分する中央制御装置と、電力抑制装置および中央制御装置間の通信を行う通信手段とから構成され、
電力抑制装置は、デマンド時限内で負荷制御を実施した負荷制御実施時間を計測し、
中央制御装置は、電力抑制装置で計測された負荷制御実施時間を各施設から通信手段によって収集し、負荷制御実施時間が短い負荷制御短時間施設に割り当てられた目標電力を負荷制御実施時間が長い負荷制御長時間施設の目標電力に配分することで、総和目標電力値を変えずに各施設における負荷制御の頻度の均衡を図る省エネルギーシステムを構成した。
【0007】
この構成によれば、中央制御装置により、各施設の電力抑制装置からデータが収集され、各施設における最大需要電力の総和に相当する総和最大需要電力が、設定された総和目標電力値を超過しないように、各施設の目標電力値が算出される。算出された目標電力値は、中央制御装置により通信手段を介して各施設の電力抑制装置に配分される。このため、中央制御装置により、複数施設でのデマンド時限内の総和最大需要電力が総和目標電力値内に抑制され、複数施設の総和目標電力値を超過することなく、手間を要しないで各施設の負荷制御を行うことが可能になる。また、中央制御装置により、各施設の電力抑制装置から、デマンド時限内で負荷制御を実施した負荷制御実施時間が収集され、負荷制御実施時間が短い負荷制御短時間施設に割り当てられた目標電力が負荷制御実施時間が長い負荷制御長時間施設の目標電力に配分される。このため、総和目標電力値を変えずに各施設における負荷制御の頻度の均衡を図ることが可能になる。
【0008】
また、本発明は、中央制御装置が、負荷制御長時間施設に対してはその施設に設定可能な上限の目標電力を設定し、負荷制御短時間施設に対しては、各負荷制御長時間施設における上限の目標電力の総和に相当する総和上限目標電力を総和目標電力値から差し引いた残電力を配分することで、目標電力を再配分することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、負荷制御実施時間が長く、最大需要電力が目標電力にひっ迫する負荷制御長時間施設には、中央制御装置により、その施設に設定可能な上限の目標電力が設定される。このため、負荷制御長時間施設では、目標電力と最大需要電力との間に余裕が生まれ、頻繁に行われていた負荷制御の頻度は減少する。一方、負荷制御実施時間が短く、最大需要電力と目標電力との間に余裕がある負荷制御短時間施設には、中央制御装置により、総和上限目標電力を総和目標電力値から差し引いた残電力が再配分され、目標電力が下げられる。しかし、負荷制御短時間施設では、最大需要電力と目標電力との間に余裕があったため、目標電力が下げられても、負荷制御の頻度に及ぶ影響は小さい。この結果、総和目標電力値を変えずに各施設における負荷制御の頻度の均衡が図られる。
【0010】
また、本発明は、中央制御装置が、デマンド時限終了時における節電可能負荷の消費電力である節電可能電力を各施設から通信手段によって収集し、節電可能負荷の電力容量である節電可能電力容量に対する節電可能電力の比率が1未満である負荷制御短時間施設に対して、節電可能電力容量から節電可能電力を差し引いた余裕電力、および、余裕電力の総和に相当する総和余裕電力に対する余裕電力の比率である余裕率を算出し、余裕率に応じて残電力を配分することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、節電可能電力容量に対する節電可能電力の比率が1未満で、節電可能電力に余裕のある負荷制御短時間施設に対して、総和上限目標電力を総和目標電力値から差し引いた残電力の配分が行われる。このため、負荷制御短時間施設であっても、節電可能電力容量に対する節電可能電力の比率が1以上で、節電可能電力に余裕のない負荷制御短時間施設に対しては、残電力の配分が行われない。また、上記比率が1未満の負荷制御短時間施設に対する残電力の配分は、総和余裕電力に対する余裕電力の比率である余裕率に応じて行われ、節電可能電力に余裕のある施設には残電力が少なく配分されることになる。このため、上記比率が1未満の負荷制御短時間施設に対する残電力の配分は、各施設の余裕電力に応じて公平に行われ、負荷制御は、特定の負荷制御短時間施設に集中することなく、各負荷制御短時間施設間でバランスよく行われる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数施設の総和目標電力値を超過することなく、手間を要しないで各施設の負荷制御を行うことができ、しかも、総和目標電力値を変えずに各施設における負荷制御の頻度の均衡を図ることが可能な省エネルギーシステムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明による省エネルギーシステムの一実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態による省エネルギーシステム1の構成の概略を示すブロック図である。
【0016】
各施設2には、空調機等の制御対象負荷3と、施設全体の使用電力を計測するための電力量計4と、最大需要電力を抑制する機能を持つデマンドコントロール装置5とが設置されている。制御対象負荷3は、電力供給を絶って節電することが可能な節電可能負荷であり、単独もしくは複数からなる。デマンドコントロール装置5は、任意の単位時間、本実施の形態では30分間で定義されるデマンド時限内における施設2内の使用電力を、目標電力値以下に抑制制御を行う電力抑制装置を構成し、各施設2に設置されて各施設2の最大需要電力を抑制する。
【0017】
施設2は複数存在し、図で例示する3施設には限らない。各施設2のデマンドコントロール装置5は中央制御装置6と接続されている。
【0018】
図2はデマンドコントロール装置5の内部構成を示すブロック図である。デマンドコントロール装置5は、電力量計4から出力される受電電力データを受電電力計測部7にて計測し、演算部9にてデマンド時限終了時の需要電力量を予測する。そして、予め設定された目標電力を超過すると予測される場合に、制御出力部10を介して制御対象負荷3への通電を抑制する負荷制御を実施することにより、デマンド時限終了時の需要電力が目標電力を超えることを防止する。また、節電可能電力計測部8は、電力量計4の出力信号から、または、制御対象負荷3の出力信号から、制御対象負荷3の使用電力を節電可能電力として計測する。演算部9は、デマンド時限内で制御対象負荷3に対して負荷制御を実施した負荷制御実施時間を計測すると共に、節電可能電力計測部8で計測される節電可能電力から、デマンド時限終了時の節電可能電力を予測演算する。なお、デマンド時限終了時の電力予測方法については、デマンド時限途中までの使用電力量とその増加割合い、例えば、単位時間での増加率から算出する方法などがあるが、いずれの方法を利用した場合でも、本発明の本質に関わらないので詳細は説明しない。通信部11は中央制御装置6との間で双方向通信を行う。
【0019】
図3は中央制御装置6の内部構成を示すブロック図である。中央制御装置6は、各施設2のデマンドコントロール装置5と双方向に通信可能な通信部12を介して、各デマンドコントロール装置5に接続されている。デマンドコントロール装置5内の通信部11および中央制御装置6内の通信部12は、デマンドコントロール装置5および中央制御装置6間の通信を行う通信手段を構成する。省エネルギーシステム1は、デマンドコントロール装置5と中央制御装置6とこの通信手段とから構成されている。
【0020】
データ蓄積部13は、通信部11および通信部12を介して各施設2のデマンドコントロール装置5から送られてくるデータを蓄積する。また、条件設定部14には、各施設2の節電可能電力容量が予め設定されている。また、条件設定部14には、基準時間および各施設2に設定可能な上限の目標電力も予め設定されている。基準時間は、後述する時限単位目標電力演算処理において、デマンド時限内における負荷制御実施時間の長短を判断する基準にされる。また、設定可能な上限の目標電力とは、個別の各施設2が電力会社と契約している契約電力、または、この契約電力に裕度を持たせた目標電力である。
【0021】
中央制御装置6は、データ蓄積部13と条件設定部14内のデータをもとに、時限単位目標電力演算部15および時限内デマンド演算部16において、時限単位目標電力演算処理および時限内デマンド演算処理を後述するように行い、デマンドコントロール装置5に対して設定データおよび指令データを送信する動作を行う。
【0022】
中央制御装置6は、上記の時限単位目標電力演算処理において、各施設2のデマンドコントロール装置5からデータを収集して、各施設2における最大需要電力の総和に相当する総和最大需要電力が、設定された総和目標電力値を超過しないように各施設2の目標電力値を算出し、算出した目標電力値を各施設2のデマンドコントロール装置5に配分する。この際、本実施の形態では、中央制御装置6は、デマンドコントロール装置5で計測された制御対象負荷3に対する負荷制御実施時間を各施設2から通信手段によって収集し、負荷制御実施時間が短い負荷制御短時間施設2に割り当てられた目標電力を負荷制御実施時間が長い負荷制御長時間施設2の目標電力に配分することで、総和目標電力値を変えずに各施設2における負荷制御の頻度の均衡を図る。具体的には、中央制御装置6は、負荷制御長時間施設2に対してはその施設2に設定可能な上限の目標電力を設定し、負荷制御短時間施設2に対しては、各負荷制御長時間施設2における上限の目標電力の総和に相当する総和上限目標電力を総和目標電力値から差し引いた残電力を配分することで、目標電力を再配分する。
【0023】
また、中央制御装置6は、上記の時限内デマンド演算処理において、デマンド時限内の任意時間にて、各施設2のデマンドコントロール装置5からデマンド時限の終了時点での予測最大需要電力を通信手段によって収集し、各施設2の予測最大需要電力の総和である総和予測最大需要電力が設定された総和目標電力値を超過する場合に、各施設2のデマンドコントロール装置5に対して制御対象負荷3の切り制御指令を通信手段を介して強制的に発する。この際、本実施の形態では、中央制御装置6は、デマンド時限内の任意時間にて、各施設2のデマンドコントロール装置5からデマンド時限の終了時点での予測節電可能電力を通信手段によって収集し、節電可能電力容量に対する予測節電可能電力の割合が少ない施設2に優先して切り制御指令を発する。
【0024】
次に、デマンド時限終了時における最大需要電力の目標すなわち時限単位目標電力を各施設2に配分する手段について、説明する。
【0025】
図4は、中央制御装置6において行われる、時限単位目標電力を各施設2に配分する時限単位目標電力演算処理の動作を示すフローチャートである。
【0026】
中央制御装置6は、S1の手順で、デマンド時限終了後に、各施設2のデマンドコントロール装置5から、受電電力計測部7で計測されたデマンド時限終了時の需要電力、および節電可能電力計測部8で計測された節電可能電力を収集する。引き続いて、S2の手順で、各施設2のデマンドコントロール装置5から、デマンド時限内で演算部9で計測された制御対象負荷3に対する負荷制御実施時間を収集する。そして、収集した各データをデータ蓄積部13に蓄積する。なお、各データの収集タイミングは、現在のデマンド時限に演算結果を反映させる必要があることから、デマンド時限の開始直後に行われる。
【0027】
次に、S3の手順にて、データ蓄積部13に蓄積された各施設2の負荷制御実施時間を、条件設定部14に設定された基準時間と比較し、負荷制御実施時間の長短を判断する。基準時間は、デマンド時限である30分よりも短い例えば10分などに設定されるが、設定により変更することができる。
【0028】
負荷制御実施時間の長短を判断した結果、負荷制御実施時間が基準時間以上(負荷制御実施時間≧基準時間)である、S3の判断がYESの負荷制御長時間施設2に対しては、S4の手順で、条件設定部14にその施設2について設定された上限の目標電力を次回のデマンド時限の目標電力に設定する。この際、中央制御装置6は、負荷制御長時間施設2が複数ある場合には、これら各負荷制御長時間施設2の上限の目標電力の総和を総和上限目標電力として、時限単位目標電力演算部15で算出する。
【0029】
また、負荷制御実施時間の長短を判断した結果、負荷制御実施時間が基準時間未満(負荷制御実施時間<基準時間)である、S3の判断がNOの負荷制御短時間施設2に対しては、S5の手順で、節電可能率を算出する。節電可能率は、節電可能電力容量に対する、データ蓄積部13に蓄積された節電可能電力の割合であり、以下の式(1)により、時限単位目標電力演算部15で算出される。
[節電可能率] = [節電可能電力] ÷ [節電可能電力容量] …(1)
【0030】
各負荷制御短時間施設2に対して上記の節電可能率を算出した後、次に、S6の手順にて、各負荷制御短時間施設2に新たに配分する目標電力の算出を行う。この算出は、例えば以下のように行われる。
【0031】
はじめに、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合が1以上である負荷制御短時間施設2に対して、節電可能率を1とする。節電可能電力容量を前年の最大需要電力とした場合に、節電可能負荷の稼働状況によっては、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合は1以上に成り得る。しかし、この割合は、負荷制御実施時間の短い施設2から長い施設2へ目標電力を配分する際に、配分できる節電可能電力の余裕の有無を判断することに使用される値であり、節電可能率を1以上の数値にしても意味をなさない。このため、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合が1以上である場合、上記のように節電可能率を1とする。そして、節電可能率を1とした負荷制御短時間施設2に対しては、前回のデマンド時限に設定された目標電力を変えずに、その目標電力を次回のデマンド時限の目標電力に設定する。
【0032】
また、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合が1未満である負荷制御短時間施設2、つまり、余裕施設に対しては、節電可能電力容量から節電可能電力を差し引いた余裕電力を以下の式(2)によって算出する。
[余裕電力] = [節電可能電力容量] − [節電可能電力] …(2)
【0033】
また、各負荷制御短時間施設2における余裕電力の総和を総和余裕電力とし、この総和余裕電力に対する余裕電力の割合を余裕率として以下の式(3)のように算出する。
[余裕率] = [余裕電力] ÷ [総和余裕電力] …(3)
【0034】
ここで、負荷制御実施時間の長い負荷制御長時間施設2の目標電力は、S4の手順で既に上限値に設定されているため、総和最大需要電力が総和目標電力を超過しないようにさせるために、総和目標電力から総和上限目標電力を差し引いて算出される残電力を、余裕率に応じて負荷制御短時間施設2に分配する。この分配は、例えば、以下の式(4)のように算出される新規目標電力を余裕施設に設定することで、行われる。
[余裕施設の新規目標電力]
= [総和目標電力―総和上限目標電力] × [1−余裕率] …(4)
【0035】
この分配により、余裕のある負荷制御短時間施設2に対しては、その新規目標電力が余裕のある分だけ減少させられる。また、S3の手順で、全施設2の負荷制御実施時間が基準時間より長くまたは短く、全施設2が負荷制御実施時間の長いまたは短い施設2である場合には、特に目標電力を再配分する必要はなく、前回のデマンド時限と同じ目標電力を新規目標電力に設定する。
【0036】
以上の演算により、各施設2の新規な時限単位デマンド目標電力を算出後、S7の手順にて、各施設2のデマンドコントロール装置5に対し、新規目標電力を送信する。S7の手順を終えると、中央制御装置6は時限単位目標電力演算処理を終了する。
【0037】
このように本実施の形態の省エネルギーシステム1では、中央制御装置6により、各施設2のデマンドコントロール装置5からデータが収集され、各施設2における最大需要電力の総和に相当する総和最大需要電力が、設定された総和目標電力値を超過しないように、各施設2の目標電力値が算出される。算出された目標電力値は、中央制御装置6により通信部12および通信部11を介して各施設2のデマンドコントロール装置5に配分される。このため、中央制御装置6により、複数施設2でのデマンド時限内の総和最大需要電力が総和目標電力値内に抑制され、複数施設2の総和目標電力値を超過することなく、手間を要しないで各施設2の負荷制御を行うことが可能となる。また、中央制御装置6により、各施設2のデマンドコントロール装置5から、デマンド時限内で負荷制御を実施した負荷制御実施時間が収集され、負荷制御実施時間が短い負荷制御短時間施設2に割り当てられた目標電力が負荷制御実施時間が長い負荷制御長時間施設2の目標電力に配分される。このため、総和目標電力値を変えずに各施設2における負荷制御の頻度の均衡を図ることが可能になる。
【0038】
本実施形態では、負荷制御実施時間が長く、最大需要電力が目標電力にひっ迫する負荷制御長時間施設2には、中央制御装置6により、その施設2に設定可能な上限の目標電力が
図4、S4の手順で設定される。このため、負荷制御長時間施設2では、目標電力と最大需要電力との間に余裕が生まれ、頻繁に行われていた負荷制御の頻度は減少する。一方、負荷制御実施時間が短く、最大需要電力と目標電力との間に余裕がある負荷制御短時間施設2には、中央制御装置6により、総和上限目標電力を総和目標電力値から差し引いた残電力が式(4)のように算出されて再配分され、目標電力が下げられる。しかし、負荷制御短時間施設2では、最大需要電力と目標電力との間に余裕があったため、目標電力が下げられても、負荷制御の頻度に及ぶ影響は小さい。この結果、総和目標電力値を変えずに各施設2における負荷制御の頻度の均衡が図られる。
【0039】
また、本実施形態では、
図4、S5およびS6の手順で、節電可能電力容量に対する節電可能電力の比率が1未満で、節電可能電力に余裕のある負荷制御短時間施設2に対して、総和上限目標電力を総和目標電力値から差し引いた残電力の配分が行われる。このため、負荷制御短時間施設2であっても、節電可能電力容量に対する節電可能電力の比率が1以上で、節電可能電力に余裕のない負荷制御短時間施設2に対しては、残電力の配分が行われない。また、上記比率が1未満の負荷制御短時間施設2に対する残電力の配分は、総和余裕電力に対する余裕電力の比率である余裕率に応じて式(4)のように行われ、節電可能電力に余裕のある施設2には残電力が少なく配分されることになる。このため、上記比率が1未満の負荷制御短時間施設2に対する残電力の配分は、各施設2の余裕電力に応じて公平に行われ、負荷制御は、特定の負荷制御短時間施設2に集中することなく、各負荷制御短時間施設2間でバランスよく行われる。
【0040】
なお、時限単位目標電力を各施設2にバランスよく配分する時限単位目標電力演算処理として、本実施の形態で説明した
図4に示す処理でなく、次のような処理が考えられる。つまり、中央制御装置6が、デマンド時限終了時における制御対象負荷3の消費電力を節電可能電力として各施設2から通信手段によって収集し、各施設2の目標電力値の総和が総和目標電力値以下となるように、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合が小さい施設の目標電力を優先的に減少させて、目標電力を再配分する。この時限単位目標電力演算処理によれば、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合が小さい施設2、つまり、電力供給を絶って消費電力を大きく節減することが出来る制御対象負荷3を有する施設2から、優先して目標電力が下げられ、施設2全体での負荷制御の頻度を低下させることが出来る。
【0041】
しかしながら、節電可能電力容量は、主に制御対象負荷3となる空調機の設備容量、または前年最大電力などの固定値として設定されることが多く、また、季節・時間帯によって節電等のためにあらかじめ強制的に電力供給を停止することもあるため、条件設定部14に設定した値を頻繁に設定変更する必要が生じることになる。ここで、この節電可能電力容量の設定変更をし忘れた場合、条件設定部14に設定された値よりも実際の節電可能電力容量の値の方が小さくなり、設定された節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合が、実際の節電可能電力容量に対する割合よりも小さくなることがある。このような場合、その施設2は、目標電力を再配分する際に常に割合が小さい施設2と誤認識され、デマンド時限を更新した後も頻繁に負荷制御が起動するような、低い目標電力が配分されることになる。このため、上述の、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合が小さい施設の目標電力を優先的に減少させて目標電力を再配分する時限単位目標電力演算処理では、当該省エネシステムの目的である各施設2の負荷制御の頻度をバランスよく保つことが困難となることが、考えられる。
【0042】
例えば、A施設2の節電可能電力容量が800kW、節電可能電力が200kWである場合、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合は0.25(=200kW/800kW)である。しかし、既に300kW分の負荷が停止してこれを制御対象負荷3にできない場合は、実際の節電可能電力容量は500kW(=800kW−300kW)になり、実際の節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合は0.4(=200kW/500kW)となる。一方、B施設2での制御対象負荷3はすべて制御可能であり、その節電可能電力容量が300kW、節電可能電力が100kWの場合、節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合は0.33(=100kW/300kW)となる。この場合、中央制御装置6で演算される節電可能電力容量に対する節電可能電力の割合は、A施設2の0.25が最も小さくなるため、A施設2に最も小さな目標電力が再配分されることになる。このため、A施設2では、常に負荷制御を伴う目標電力で稼働する必要が出てくる。
【0043】
しかし、本実施の形態で説明した
図4に示す時限単位目標電力演算処理を行うと、中央処理装置6は、各施設2のデマンドコントロール装置5が、予め設定された目標電力値内に需要電力を抑え込むための自動負荷制御を起動している負荷制御実施時間を把握する。そして、負荷制御実施時間の長い施設2に対しては、負荷制御が起動しにくい高い目標電力を設定し、負荷制御実施時間の短い施設2に対しては、これまでより負荷制御が起動しやすい低い目標電力を設定する。これにより、負荷制御実施時間の長い施設2の目標電力を一旦上げることで、負荷制御長時間施設2でさらなる負荷制御を起動させなくし、一方、負荷制御短時間施設2には目標電力を余裕電力に応じて減じることで、上記の不都合を生じさせずに、バランスよく目標電力を再配分することが可能となる。この結果、複数施設2の総和目標電力を超過することなく、また、節電可能電力容量を頻繁に変更することなく、すでにデマンドコントロール装置5による負荷制御が実施されている施設2にさらなる負荷制御が集中しない、バランスの良い目標電力の配分を行うことを可能とする省エネルギーシステムが提供される。