(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物により、初期強度の高い硬化体が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物を、セメントと水からなる水硬性組成物に含有させたところ、微細な結晶が成長することが観察された。これに基づいて初期強度の向上機構を推定すると、まず、2価以上の多価アルコールとアルデヒド化合物またはケトン化合物が反応することにより、少なくとも1個のエーテル基を有する酸素原子を2個以上含む化合物が得られると考えられる。そして、前記化合物が酸素原子により水硬性化合物中の水硬性粉体の表面に吸着し、水硬性粉体の鉱物の一成分であるC
3Sの水和生成物、例えば水酸化カルシウム等の急激な結晶成長を抑制する。一方で、水硬性粉体からはカルシウム等の結晶核となる化合物が溶出する。その結果、多数の微細な結晶が生じ、それらの結晶がそれぞれ成長することで結晶間に隙間を生じるため、水硬性粉体表面への水の進入が維持され、ある一定の速度で水硬性粉体の水和が進行し、接水から3日後の圧縮強度を向上させると推定される。また、5価を超える多価アルコールの場合の反応物では、水硬性粉体の表面への吸着が強固となり、その結果水硬性粉体の水和反応の阻害が大きくなり、圧縮強度の向上が劣ると考えられる。
【0016】
(A)成分は、(a1)2価以上、5価以下の多価アルコールから選ばれる1種以上の化合物〔以下、(a1)成分という〕と、(a2)アルデヒド化合物またはケトン化合物〔以下、(a2)成分という〕とを反応させて得られる反応生成物である。
【0017】
(a1)成分は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは炭素数2以上、より好ましくは3以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3の多価アルコールである。また、(a1)成分は、3価以上の多価アルコールが好ましい。
【0018】
(a1)成分としては、グリセリン、グリセリンのエチレンオキサイド付加物等のグリセリンのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、グリセリンが好ましい。グリセリンのアルキレンオキサイド付加物は、グリセリンのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。グリセリンのアルキレンオキサイド付加物では、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は0.5以上、3以下が好ましい。
【0019】
(a2)成分のアルデヒド化合物は、一般式、R−CHO(式中、Rは1価の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含むこともできる。)で表される化合物である。また、ケトン化合物は、一般式、(R
1)(R
2)C=O(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、R
1及びR
2は互いに結合して環を形成した基であってもよく、R
1及びR
2はヘテロ原子を含むこともできる。)で表される化合物である。(a2)成分は、アルデヒド化合物が好ましい。
【0020】
(a2)成分のうち、アルデヒド化合物は、炭素数1以上であり、そして、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは炭素数7以下、より好ましくは3以下である。アルデヒド化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバリンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミリスチンアルデヒド、ペンタデシルアルデヒド、パルミチンアルデヒド、マルガリンアルデヒド、ステアリンアルデヒド、グリオキサール、スクシンジアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、プロピオールアルデヒド、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、α−ナフトアルデヒド、β−ナフトアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、ホルムアルデヒドが好ましい。なお、トリオキサンやパラホルムアルデヒドのように、分解してアルデヒド化合物が生成する化合物を(a)成分の原料として用いて反応させることもできる。
【0021】
(a2)成分のうち、ケトン化合物は、炭素数3以上であり、そして、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは炭素数9以下、より好ましくは5以下である。ケトン化合物としては、具体的には、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、ジエチルケトン、ブチロン、ジイソプロピルケトン、メチルビニルケトン、メシチルオキシド、メチルヘプテノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、バレロフェノン、ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、2−アセトナフトン、アセトチエノン、2−アセトフロン等が挙げられる。
【0022】
(A)成分を得るための(a1)成分と(a2)成分の組み合わせとしては、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、(a1)成分がグリセリンであり、(a2)成分がホルムアルデヒドであることが好ましい。
【0023】
(A)成分を得るための反応系として、水分を系外に除去する反応系及び水分を還流下で行う反応系が挙げられる。
【0024】
水分を系外に除去する反応系では、反応性の観点及び水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分とを、(a1)/(a2)のモル比で、好ましくは0.9/1.0以上、そして好ましくは1.1/1.0以下、より好ましくは1.0/1.0以下の条件で反応させて得られる反応生成物が好ましい。
【0025】
また(A)成分を得るための、水分を系外に除去する反応系での反応温度は、反応性の観点及び水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃で反応させる。反応は常圧で行うことができる。
【0026】
また(A)成分を得るための、水分を系外に除去する反応系での反応時間は、反応性の観点及び水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは4時間以上、そして、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは6時間以下で反応させる。
【0027】
水分を還流下で行う反応系では、反応性の観点及び水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分とを、(a1)/(a2)のモル比で、好ましくは1.0/1.0以上、そして好ましくは4.0/1.0以下、より好ましくは2.0/1.0以下の条件で反応させて得られる反応生成物が好ましい。
【0028】
また(A)成分を得るための、水分を還流下で行う反応系での反応温度は、反応性の観点及び水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは20℃以下の条件で反応させる。反応は常圧で行うことができる。
【0029】
また(A)成分を得るための、水分を還流下で行う反応系での反応時間は、反応性の観点及び水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、更に好ましくは4時間以上、そして、好ましくは24時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは6時間以下で反応させる。
【0030】
また、(A)成分は、反応性の観点及び水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、触媒の存在下で(a1)成分と(a2)成分とを反応させて得られる反応生成物が好ましい。触媒として、酸触媒及びアルカリ触媒が挙げられる。酸触媒としては、無機酸、有機酸、固体酸などが挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸などが挙げられる。有機酸の例としてはギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸などが挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。触媒は、(a2)成分に対して、触媒/(a2)成分のモル比で、好ましくは0.001/1以上、より好ましくは0.002/1以上、更に好ましくは0.005/1以上、そして、好ましくは0.1/1以下、より好ましくは0.05/1以下、更に好ましくは0.01/1以下用いる。
【0031】
(A)成分の反応生成物を得るためには、下記の工程を備えることが好ましい。
(1)(a1)成分、(a2)成分、および反応触媒を混合して混合物を形成する工程
(2)(1)で得た混合物を反応温度に調整し、その温度を1時間以上保持する工程
(3)(2)の工程後、混合物を冷却する工程
(4)(3)の工程後、又は(3)の工程の途中で、混合物を中和する工程
【0032】
また、(a2)成分がトリオキサンやパラホルムアルデヒド等の分解してアルデヒド化合物が生成する化合物の場合は、分解を促進する目的で工程(1)と工程(2)の間に、下記工程を備えることが好ましい。なお、工程(1b)は工程(2)を兼ねることができる。
(1a)(a2)成分が溶解する温度まで昇温する工程
(1b)(a2)成分がすべて溶解するまで温度を保持する工程
【0033】
(A)成分は、通常、液体の反応生成物として得られる。本発明では、(A)成分をそのまま水硬性粉体用強度向上剤として使用することもできる。従って、本発明は、(A)成分からなる水硬性粉体用強度向上剤を提供する。(A)成分からなる水硬性粉体用強度向上剤を、他の成分、例えば、水や後述の(B)成分、(C)成分と混合して水硬性粉体用強度向上剤組成物として用いることができる。
【0034】
(A)成分は、固形分の含有量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。反応生成物中の固形分量は、(A)成分を得るための反応条件(水分を系外に除去する反応系であるか、水分を還流下で行う反応系であるかなど)により異なる。例えば、水分を系外に除去する反応系で反応させる場合は、(A)成分として、固形分の含有量が、好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上の反応生成物を得ることができる。また、水分を還流下で行う反応系で反応させる場合は、(A)として、固形分の含有量が、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下の反応生成物を得ることができる。
【0035】
反応生成物には、水以外の成分として未反応成分を含む。(A)成分の反応生成物において、水分を系外に除去する反応系では、ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応の(a1)成分の含有量は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、固形分として、反応生成物の固形分中、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であり、0質量%以上である。
【0036】
水分を還流下で行う反応系では、(A)成分の反応生成物は、未反応の(a1)成分の含有量が、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、固形分として、反応生成物の固形分中、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、そして0質量%以上であり、(a1)成分及び(a2)成分の反応の容易性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
【0037】
いずれの反応系においても、未反応の(a1)成分の含有量は、以下の条件のガスクロマトグラフィー定量分析により測定される。なお、採取した反応液は、内部標準物質として液体状のスクアランと共に精秤後、過剰量のトリメチルシリル化剤にて誘導体化して測定する。
【0038】
[ガスクロマトグラフィー測定条件]
装置:アジレント・テクノロジー(株)製 HP6850
カラム:Frontier Ultra-Alloy-1 (30 m * 0.25 mm id * 0.15 μm filmthickness)
装置条件:
・ Injection temp. : 300 ℃
・ Detector temp. : 350 ℃
・ H
2 flow : 30 mL/min
・ Air flow : 300 mL/min
・ He flow : 28 mL/min
・ Injection volume : 2.0 μL
・ Split mode : Split ratio = 50/1
・ Total Flow rate : 104 mL/min(He)
温度プログラム
・ Initial temp. : 40℃
・ Initial time : 5 min
・ Increasing rate : 10 ℃/min
・ Final temp. 350℃
【0039】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、(A)成分、後述の(B)成分、後述の(C)成分などの固形分の含有量が、水硬性粉体用強度向上剤組成物を貯蔵及び輸送する観点から、好ましくは8質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして水硬性粉体用強度向上剤組成物の添加操作等の作業性の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0040】
また、水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(A)成分の割合は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは8質量%以上、そして水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
【0041】
水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(A)成分の割合が、好ましくは55質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である場合は、水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、水硬性粉体用強度向上剤組成物の添加操作等の作業性の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0042】
(A)成分を単独で用いる場合の水硬性粉体用強度向上剤組成物における(A)成分の含有量は、水硬性粉体用強度向上剤組成物を貯蔵及び輸送する観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、水硬性粉体用強度向上剤組成物の添加操作等の作業性の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0043】
(A)成分を単独で用いる場合の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、添加操作等の作業性の観点から、水を含有することができる。水の含有量は、添加操作等の作業性の観点から、水硬性粉体用強度向上剤組成物中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、水硬性粉体用強度向上剤組成物を貯蔵及び輸送する観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0044】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、(B)成分として、更に、尿素−ホルムアルデヒド縮合物及びヒドロキシメタンスルホン酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有することができる。尿素−ホルムアルデヒド縮合物としては、テトラヒドロ−4H−1,3,5−オキサジアジン−4−オン等が挙げられる。また、ヒドロキシメタンスルホン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。(A)成分と(B)成分は、予め両者を混合して水硬性粉体用強度向上剤組成物を調製し、水硬性粉体に添加して用いることができる。また、(A)成分と(B)成分を別々に水硬性粉体に添加して用いることもできる。
【0045】
(B)成分を含有する場合、水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(A)成分の割合は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。また、(B)成分を含有する場合、水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(B)成分の割合は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0046】
(B)成分を含有する場合、(A)成分と(B)成分の質量比(固形分換算)は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、(B)/(A)で、好ましくは0/100超、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは45/55以上、より更に好ましくは50/50以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下である。
【0047】
(A)成分と(B)成分を含有する水硬性粉体用強度向上剤組成物における(A)成分の含有量は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0048】
(A)成分と(B)成分を含有する水硬性粉体用強度向上剤組成物における(B)成分の含有量は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0049】
(A)成分と(B)成分を含有する水硬性粉体用強度向上剤組成物における(A)成分と(B)成分の合計の含有量は、水硬性粉体用強度向上剤組成物を貯蔵及び輸送する観点から、好ましくは8質量%以上、より好ましくは15量%以上、更に好ましくは18量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、そして、水硬性粉体用強度向上剤組成物の添加操作等の作業性の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
【0050】
(A)成分と(B)成分を含有する水硬性粉体用強度向上剤組成物は、添加操作等の作業性の観点から、水を含有することができる。水の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、水硬性粉体用強度向上剤組成物を貯蔵及び輸送する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、更に好ましくは82質量%以下、より更に好ましくは80質量%以下である。本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物の形態は、液体組成物であることが好ましい。また、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、後述する消泡剤を含有してもよい。
【0051】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、水硬性粉体と共存させることで、当該水硬性粉体の硬化体の強度を向上させるものである。通常、水硬性粉体は、これと水とを含む水硬性組成物として用いられる。水硬性粉体としては、セメントが挙げられる。セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色セメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。セメントには、他の水硬性粉体として、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてよい。セメントと混合された混合セメント、例えばシリカヒュームセメントや高炉セメント等を用いてもよい。本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物が使用される水硬性粉体は、単独では硬化性を有しないが、水やアルカリ物質と反応して硬化する性質をもつ物質と組み合わせると、水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する物質である混合材を含有することが好適である。すなわち、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカヒュームからなる群から選ばれる1種以上の物質(混合材)を含有する水硬性粉体用として、更に、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の物質(混合材)を、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する水硬性粉体用として好適である。
【0052】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、水硬性組成物の3日強度を向上及び長期強度低下を抑制する観点から、固形分として、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、好ましくは2.0質量部以下の割合で用いられる。水硬性組成物の3日強度を向上する観点からは、固形分として、水硬性粉体100質量部に対して、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.003質量部以上、より更に好ましくは0.008質量部以上、より更に好ましくは0.012質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上の割合で用いられる。また、水硬性組成物の3日強度を向上及び長期強度低下を抑制する観点からは、固形分として、水硬性粉体100質量部に対して、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下、より更に好ましくは0.3質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以下の割合で用いられる。
【0053】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物を水硬性粉体に適用するにあたり、水硬性粉体の製造工程で前記組成物を水硬性化合物に添加することもできる。通常、水硬性粉体は、水硬性化合物を粉砕して製造される。本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物を、水硬性化合物を粉砕する際に添加する場合、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、固形分として、水硬性化合物100質量部に対して、0.0005質量部以上、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.003質量部以上、更に好ましくは0.008質量部以上、より更に好ましくは0.012質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以下添加する。例えば、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法であって、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物を、固形分として、水硬性化合物100質量部に対して、0.0005質量部以上、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.003質量部以上、更に好ましくは0.008質量部以上、より更に好ましくは0.012質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以下の割合で存在させる水硬性粉体の製造方法が提供される。この場合、水硬性化合物の粉砕性の観点から、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール及びトリエタノールアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(C)成分という〕の存在下に水硬性化合物を粉砕することができる。(C)成分は、グリセリンのエチレンオキサイド付加物が好ましい。グリセリンのエチレンオキサイド付加物では、エチレンオキサイドの平均付加モル数は0.5以上、3以下が好ましい。
【0054】
本発明により、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物と、(C)成分とを含有する、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物が提供される。(C)成分を併用する場合、粉砕用添加剤組成物では、水硬性粉体用強度向上剤組成物は(A)成分と(B)成分とを含有することが好ましい。そして、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物中の(A)成分と(B)成分の合計と(C)成分との質量比(固形分換算)は、〔(A)成分と(B)成分の合計〕/(C)成分で、水硬性化合物の粉砕性を向上する観点と水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは60/40以下である。粉砕用添加剤組成物は、水溶液等の水を含有する組成物として用いても良い。その場合の水硬性粉体用強度向上剤組成物と(C)成分の合計の濃度は、低粘性の液状混合物として混合物の取扱い性を向上する観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0055】
本発明の水硬性粉体の製造方法では水硬性化合物を粉砕し水硬性粉体を得る。水硬性化合物とは、水と反応して硬化する性質をもつ物質、及び単一物質では硬化性を有しないが2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する化合物をいう。一般に、水硬性化合物はアルカリ土類金属の酸化物とSiO
2、Al
2O
3、Fe
2O
3、TiO
2、P
2O
5、ZnOなどの酸化物が常温又は水熱条件下で水和物を形成する。水硬性化合物の成分は、例えば、セメントでは、成分として3CaO・SiO
2(C
3S:エーライト)、2CaO・SiO
2(C
2S:ビーライト)、3CaO・Al
2O
3(C
3A:カルシウムアルミネート)、4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3(C
4AF:カルシウムアルミノフェライト)を含んでいる。水硬性化合物としては、例えば、セメントに含有される鉱物(C
3S、C
2S、C
3A、C
4AF)、スラグ、フライアッシュ、石灰石、鉄さい、石膏、アルミナ、焼却灰、生石灰、消石灰等が挙げられ、水硬性粉体の原料として用いることができる。水硬性化合物は、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の物質(混合材)を含有するものが好ましく、更に、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の物質(混合材)を、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する。
【0056】
水硬性粉体としてポルトランドセメントを得る場合、例えば、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られた水硬性化合物であるクリンカー(セメントクリンカーとも言い、石膏が入っている場合もある。)を、好ましくは前記混合材と共に、予備粉砕し、適量の石膏を加え、仕上粉砕して、ブレーン値2500cm
2/g以上の比表面積を有する粉体として製造される。本発明に係る水硬性粉体用強度向上剤組成物とは、前記水硬性化合物、好ましくはクリンカー粉砕の際の添加剤として、好適には仕上粉砕での添加剤として用いられる。水硬性粉体用強度向上剤組成物は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100質量部に対して、水硬性粉体用強度向上剤組成物の固形分で、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは0.05質量部以下の存在量となるように用いる。さらに水硬性化合物の粉砕性向上と水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、水硬性粉体用強度向上剤組成物と(C)成分の混合物を、前記水硬性化合物、好ましくはクリンカー粉砕の際の添加剤として、好適には仕上粉砕での添加剤として用いることができる。またこの量は、水硬性化合物を粉砕する工程で存在させる水硬性粉体用強度向上剤組成物の固形分量に基づくものであり、具体的には、水硬性化合物の粉砕が終了するまで、更には、目標とするブレーン値に到達するまでに存在させる水硬性粉体用強度向上剤組成物の固形分量に基づくものである。
【0057】
本発明の水硬性粉体の製造方法では、原料、用途等により、適当な粒径の粉体が得られるよう、粉砕の条件を調整すればよい。一般に、比表面積、ブレーン値が、好ましくは2500cm
2/g以上、より好ましくは3000cm
2/g以上、そして、好ましくは5000cm
2/g以下、より好ましくは4000cm
2/g以下の粉体となるまで、水硬性化合物、例えばクリンカーの粉砕を行うことが好ましい。目的のブレーン値は、例えば粉砕時間を調整することにより得ることができる。粉砕時間を長くするとブレーン値が大きくなり、短くするとブレーン値が小さくなる傾向がある。
【0058】
本発明において、水硬性化合物の粉砕に使用される粉砕装置は、特に限定されないが、例えばセメントなどの粉砕で汎用されているボールミルを挙げることができる。該装置の粉砕媒体(粉砕ボール)の材質は、被粉砕物(例えばセメントクリンカーの場合、カルシウムアルミネート)と同等又はそれ以上の硬度を有するものが望ましく、一般に入用可能な市販品では、例えば鋼、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、チタニア、タングステンカーバイド等を挙げることができる。
【0059】
水硬性組成物中の空気量の増大による強度低下を抑制する観点から、更に消泡剤を併用することができる。また、消泡剤を、水硬性化合物の粉砕時に存在させることで、得られる水硬性粉体の表面に消泡剤を均一に分布させ、前記抑制効果をより効果的に発現させることもできる。すなわち、水硬性粉体用強度向上剤組成物及び消泡剤との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法により、空気量の増大による水硬性組成物の圧縮強度低下を抑制できる。
【0060】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤及びエーテル系消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤ではジメチルポリシロキサンがより好ましく、脂肪酸エステル系消泡剤ではポリアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、エーテル系消泡剤ではポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
【0061】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いた水硬性組成物は硬化時の圧縮強度が向上されたものとなる。水硬性粉体としては、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石、石膏等が挙げられ、ポルトランドセメントが好ましい。前記混合材を含有する水硬性粉体が好ましい。
【0062】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体は、コンクリート構造物やコンクリート製品の材料として用いることができる。本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いたコンクリートは、接水から3日後の圧縮強度が向上する。例えば、本発明の製造方法により得られた水硬性粉体に、接水後の初期材齢強度が低い水硬性粉体(高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石等)を配合・置換しても、本発明未実施の水硬性粉体を用いた場合と比較して、同等以上の、接水から3日後の圧縮強度を得ることが出来る、等の利点を有する。
【0063】
本発明により、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有し、前記水硬性粉体用強度向上剤組成物の含有量が、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、固形分として、水硬性粉体100質量部に対して、0.0005質量部以上、2.0質量部以下である、水硬性組成物が提供される。
【0064】
本発明の水硬性組成物では、水硬性粉体用強度向上剤組成物の含有量が、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、固形分として、水硬性粉体100質量部に対して、0.0005質量部以上であり、好ましくは0.005質量部以上、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.003質量部以上、更に好ましくは0.008質量部以上、より更に好ましくは0.012質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上であり、そして、2.0質量部以下であり、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以下、より更に好ましくは0.1質量部以下である。
【0065】
水硬性粉体は前述のものが使用できる。水硬性粉体は、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の物質(混合材)を含有するものが好ましく、更に、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の物質(混合材)を、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下含有する水硬性粉体が好ましい。本発明の水硬性組成物中の水硬性粉体の含有量は、水硬性組成物の分離抵抗性と硬化後の強度の観点から、水硬性組成物の体積あたり300kg/m
3以上が好ましく、350kg/m
3以上がより好ましく、そして、水硬性組成物の水和熱によるひび割れを抑制する観点から、450kg/m
3以下が好ましく、430kg/m
3以下がより好ましい。
【0066】
骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JIS A0203−2302で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A0203−2303で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0067】
本発明の水硬性組成物中の骨材の含有量は、水硬性組成物の分離抵抗性と作業性の観点から、水硬性組成物の体積あたり1700kg/m
3以上が好ましく、1720kg/m
3以上がより好ましく、そして、1800kg/m
3以下が好ましく、1760kg/m
3以下がより好ましい。
【0068】
本発明の水硬性組成物中の骨材(a)中の細骨材(s)の容積比〔s/a×100(%)〕は、水硬性組成物の分離抵抗性と作業性の観点から、45%以上が好ましく、47%以上がより好ましく、そして、55%以下が好ましく、53%以下がより好ましい。
【0069】
本発明の水硬性組成物の水(W)と水硬性粉体(C)の質量比〔W/C×100(%)〕は、水硬性組成物の流動性の観点から、35%以上が好ましく、38%以上がより好ましく、そして、水硬性組成物の硬化後の強度の観点から、55%以下が好ましく、52%以下がより好ましい。
【0070】
本発明の水硬性組成物は、流動性を上げる観点から、分散剤を含有することができる。分散剤としては、リン酸エステル系重合体、ポリカルボン酸系共重合体、スルホン酸系共重合体、ナフタレン系重合体、メラミン系重合体、フェノール系重合体、リグニン系重合体等の分散剤が挙げられる。分散剤は他の成分を配合した混和剤であっても良い。
【0071】
分散剤としては、水硬性組成物の硬化遅延を抑制する観点から、ポリカルボン酸系共重合体及びナフタレン系重合体から選ばれる分散剤が好ましく、ポリカルボン酸系共重合体がより好ましい。ポリカルボン酸系共重合体としては、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8−12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
【0072】
ポリカルボン酸系共重合体としては、下記の一般式(1)で表される単量体(1)と下記の一般式(2)で表される単量体(2)とを重合して得られる共重合体〔以下、ポリカルボン酸系共重合体(I)という〕を用いることができる。
【0074】
〔式中、
R
1、R
2:水素原子、又はメチル基
l:0以上2以下の数
m:0又は1の数
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n:AOの平均付加モル数であり、5以上150以下の数、
R
3:水素原子、又は炭素数1以上4以下のアルキル基
を表す。〕
【0076】
〔式中、
R
4、R
5、R
6:水素原子、メチル基、又は(CH
2)
m1COOM
2
M
1、M
2:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム、アルキルアンモニウム、又は置換アルキルアンモニウム
m1:0以上2以下の数
を表す。なお、(CH
2)
m1COOM
2はCOOM
1と無水物を形成していてもよい。〕
【0077】
一般式(1)中、AOは、水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくは炭素数2又は3、より好ましくは炭素数2のアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)である。
【0078】
nは、水硬性組成物の硬化遅延を抑制する観点から、好ましくは9以上、更に20以上、より更に50以上、より更に70以上の数である。nは、水硬性組成物の初期流動性の観点から、好ましくは150以下、更に130以下の数である。
【0079】
mが0の場合は、lは好ましくは1又は2である。mが1の場合は、lは好ましくは0である。共重合体の重合時の重合性の観点から、mは1が好ましい。mが0の場合は、単量体の製造の容易性の観点からR
3は水素原子が好ましい。mが1の場合は、単量体の製造の容易性の観点からR
3は炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、さらに水溶性の観点からメチル基がより好ましい。
【0080】
単量体(1)として、例えば、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル及びアルケニルアルコールにアルキレンオキシドが付加したエーテル等を用いることができる。単量体(1)は、共重合体の重合時の重合性の観点から、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましい。
【0081】
ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステルとして、片末端封鎖されたアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を用いることができる。具体的には、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート及びエトキシポリエチレングリコールメタクリレート等の1種以上を用いることができる。
【0082】
また、アルケニルアルコールにアルキレンオキシドが付加したエーテルとして、アリルアルコールのエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。具体的には、メタリルアルコールのエチレンオキサイド付加物及び3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
【0083】
単量体(2)としては、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸等から選ばれる1種以上を用いることができる。単量体(2)は、単量体(1)のmが1の場合は、共重合体の重合時の重合性の観点から、メタクリル酸又はその塩が好ましく、単量体(1)のmが0の場合は、共重合体の重合時の重合性の観点から、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸が好ましい。
【0084】
ポリカルボン酸系共重合体(I)において、単量体(1)と単量体(2)のモル比は、水硬性組成物の初期流動性の向上の観点から、単量体(1)/単量体(2)が、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上、そして、好ましくは70/30以下、より好ましくは50/50以下、更に好ましくは30/70以下である。
【0085】
また、ポリカルボン酸系共重合体(I)が含む全単量体中、単量体(1)と単量体(2)の合計の割合は、水硬性組成物の初期流動性の向上の観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。なお、単量体(1)、単量体(2)以外の構成単量体として、不飽和カルボン酸のアルキルエステル等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0086】
また、ポリカルボン酸系共重合体(I)の重量平均分子量は、水硬性組成物の初期流動性の向上の観点から、10000以上が好ましく、35000以上がより好ましく、50000以上が更に好ましい。ポリカルボン酸系共重合体(I)の重量平均分子量は、水硬性組成物の粘性低減の観点から、100000以下が好ましく、80000以下がより好ましく、70000以下が更に好ましい。この重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。
[GPC条件]
装置:高速GPC装置 HLC−8320GPC(東ソー(株)製)
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー(株)製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH
3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:示差屈折検出器(RI)
サンプルサイズ:0.5mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0087】
分散剤の含有量は、水硬性組成物の流動性の向上と水硬性組成物の硬化遅延を抑制する観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.005質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、そして、2.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下が更に好ましい。
【0088】
本発明の水硬性組成物は、更にその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤等が挙げられる。
【0089】
本発明の水硬性組成物は、コンクリート、モルタルであってよい。本発明の水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。加熱養生のエネルギーを削減しても水硬性組成物調製後24時間程度で強度を発現し、早期に型枠から脱型が可能になる観点から、コンクリート振動製品や遠心成形品等のコンクリート製品に用いることが好ましい。
【0090】
本発明により、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物を含有する水硬性組成物、好ましくは本発明の水硬性組成物を調製する工程、調製された前記水硬性組成物を型枠に充填、養生、硬化させる工程、及び、硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、を有する硬化体の製造方法が提供される。水硬性組成物の調製により得られたものが本発明の水硬性組成物であることが好ましい。
【0091】
水硬性組成物を調製する工程では、水硬性組成物の調製を、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物と、セメント等の水硬性粉体と、骨材と、水とを混合して行う。また、これらと、分散剤とを混合して行うことができる。本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物とセメント等の水硬性粉体とを円滑に混合する観点から、本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物と水、又は本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物と水と分散剤とを予め混合し、セメントと混合することが好ましい。本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、水を含有する組成物として用いることができる。水硬性粉体と水(好ましくは本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物と水の混合物、又は本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物と分散剤と水の混合物)との混合は、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。また、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、そして、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下混合する。水硬性組成物の調製にあたっては、水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
【0092】
水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる工程では、得られた水硬性組成物を型枠に充填し養生する。型枠として、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
【0093】
本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法では、水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させても良い。ここで、加熱養生は、40℃以上80℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
【0094】
コンクリート製品である型枠を用いる水硬性組成物の硬化体としては、土木用製品では、護岸用の各種ブロック製品、ボックスカルバート製品、トンネル工事等に使用されるセグメント製品、橋脚の桁製品等が挙げられ、建築用製品では、カーテンウォール製品、柱、梁、床板に使用される建築部材製品等が挙げられる。
【0095】
本明細書において、水硬性組成物の項で説明した事項は、本発明の硬化体の製造方法にも適用することができる。その場合、水硬性組成物の項における本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物、分散剤の「含有量」は「配合量」ないし「添加量」と読み替えることができる。
【0096】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物の態様を以下に示す。
<1> (a1)2価以上、5価以下の多価アルコールから選ばれる1種以上の化合物〔以下、(a1)成分という〕と、(a2)アルデヒド化合物またはケトン化合物〔以下、(a2)成分という〕とを反応させて得られる反応生成物〔以下、(A)成分という〕を含有する水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0097】
<2> 更に、尿素−ホルムアルデヒド縮合物及びヒドロキシメタンスルホン酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(B)成分という〕を含有する前記<1>の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0098】
<3> 高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の物質を10質量%以上、好ましくは30質量%以上、そして、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下含有する水硬性粉体用である、前記<1>又は<2>の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0099】
<4> (a1)成分がグリセリンであり、(a2)成分がホルムアルデヒドである前記<1>〜<3>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0100】
<5> (A)成分と(B)成分の質量比が、(B)/(A)で、0/100超、好ましくは20/80以上、より好ましくは45/55以上、更に好ましくは50/50以上であり、そして、80/20以下、好ましくは70/30以下、より好ましくは60/40以下である前記<2>〜<4>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0101】
<6> (A)成分の含有量が、3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である前記<2>〜<5>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0102】
<7> (B)成分の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である前記<2>〜<6>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0103】
<8> (A)成分と(B)成分の合計の含有量が、好ましくは8質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは18量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である前記<2>〜<7>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0104】
<9> 固形分の含有量が、好ましくは8質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である前記<1>〜<8>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0105】
<10> 水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(A)成分の割合が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは8質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である前記<1>〜<9>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0106】
<11> 水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(A)成分の割合が、好ましくは55質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、
水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分の含有量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である、
前記<1>〜<10>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0107】
<12> 水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(A)成分の割合が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である前記<2>〜<11>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0108】
<13> 水硬性粉体用強度向上剤組成物中の固形分中、(B)成分の割合が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である前記<2>〜<12>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物。
【0109】
<14> 水硬性化合物を粉砕する際に、前記<1>〜<13>の何れか記載の水硬性粉体用強度向上剤組成物を、固形分として、水硬性化合物100質量部に対して、0.0005質量部以上、1.0質量部以下添加する、水硬性粉体の製造方法。
【0110】
<15> 前記水硬性粉体用強度向上剤組成物を、固形分として、水硬性化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.003質量部以上、更に好ましくは0.008質量部以上、より更に好ましくは0.012質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下添加する、前記<14>の水硬性粉体の製造方法。
【0111】
<16> グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール及びトリエタノールアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(C)成分という〕の存在下に水硬性化合物を粉砕する前記<14>又は<15>の水硬性粉体の製造方法。
【0112】
<17> (A)成分と(B)成分の合計と(C)成分との質量比(固形分換算)が、〔(A)成分と(B)成分の合計〕/(C)成分で、10/90以上、好ましくは20/80以上、より好ましくは40/60以上であり、そして90/10以下、好ましくは80/20以下、より好ましくは60/40以下である前記<16>の水硬性粉体の製造方法。
【0113】
<18>グリセリンのエチレンオキサイド付加物が、エチレンオキサイドの平均付加モル数は0.5以上、3以下である前記<16>又は<17>の水硬性粉体の製造方法。
【0114】
<19> 前記<1>〜<13>の何れかの水硬性粉体用強度向上剤組成物と、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール及びトリエタノールアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物とを含有する、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
【0115】
<20> 前記<1>〜<13>の何れかの水硬性粉体用強度向上剤組成物と、水硬性粉体と、骨材と、水とを含有し、前記水硬性粉体用強度向上剤組成物の含有量が、固形分として、水硬性粉体100質量部に対して、0.0005質量部以上、2.0質量部以下である水硬性組成物。
【0116】
<21> 水硬性粉体が、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の物質を10質量%以上、好ましくは30質量%以上、そして、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下と、セメントとを含有する水硬性粉体である前記<20>の水硬性組成物。
【0117】
<22> 前記水硬性粉体用強度向上剤組成物を、固形分として、水硬性粉体100質量部に対して、0.001質量部以上、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.008質量部以上、更に好ましくは0.012質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上、そして、1.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下含有する前記<20>又は<21>の水硬性組成物。
【実施例】
【0118】
(1)強度向上剤組成物
下記製造例A1〜A10により得られた反応生成物を、単独又は、尿素−ホルムアルデヒド縮合物及びヒドロキシメタンスルホン酸塩から選ばれる成分〔(B)成分〕、並びにグリセリンEO1モル付加物〔(C)成分〕と混合し、本発明の強度向上剤組成物(一部の実施例では「添加剤」と表記した)として用いた。強度向上剤組成物はいずれも液体の形態であった。反応生成物を単独で用いる場合は、特に記載がない限り、反応生成物をそのまま使用した。尿素−ホルムアルデヒド縮合物及びヒドロキシメタンスルホン酸塩から選ばれる成分〔(B)成分〕を混合した場合は、反応生成物〔(A)成分〕及び(C)成分(一部の実施例)を、そのまま(B)成分と混合し強度向上剤組成物とした。また、比較例で(B)成分を単独で用いる場合は、(B)成分をそのまま強度向上剤組成物とした。実施例、比較例の組成物中の固形分は、(A)成分(未反応物等を含む)、(B)成分及び(C)成分から選ばれる成分であった。
【0119】
<製造例>
製造例A1
攪拌機付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、硫酸0.41g、パラホルムアルデヒド25gを仕込み、撹拌しながら100℃まで昇温した。昇温後、水分を系外に除去しながら、同温度で4時間攪拌した。その後、加熱をやめて自然冷却にて50℃以下に冷却し48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A1を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中6.8質量%であった。また、反応生成物A1の固形分は99質量%であった。なお、固形分は水以外の成分のことであり、カールフィッシャー法により水の量を測定し、その量から固形分を求めた。
【0120】
製造例A2
攪拌機付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、硫酸0.41g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)67.57gを仕込み、撹拌しながら100℃まで昇温した。昇温後、水分を系外に除去しながら、同温度で4時間攪拌した。その後、加熱をやめて自然冷却にて50℃以下に冷却し48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A2を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中9.8質量%であった。また、反応生成物A2の固形分は99質量%であった。
【0121】
製造例A3
攪拌機および還流管付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、硫酸0.41g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)67.57gを仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温した。昇温後、水分を還流しながら、同温度で4時間攪拌した。その後、加熱をやめて自然冷却にて50℃以下に冷却し48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A3を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中21質量%であった。また、反応生成物A3の固形分は69質量%であった。
【0122】
製造例A4
攪拌機および還流管付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、硫酸0.41g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)67.57gを仕込み、撹拌しながら50℃まで昇温した。昇温後、水分を還流しながら、同温度で4時間攪拌した。その後、加熱をやめて48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A4を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中30質量%であった。また、反応生成物A4の固形分は72質量%であった。
【0123】
製造例A5
攪拌機および還流管付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、硫酸0.41g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)67.57gを仕込み、水分を還流しながら、20℃で4時間攪拌した。その後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A5を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中34質量%であった。また、反応生成物A5の固形分は74質量%であった。
【0124】
製造例A6
攪拌機および還流管付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、硫酸0.204g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)33.78gを仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温した。昇温後、水分を還流しながら、同温度で4時間攪拌した。その後、加熱をやめて自然冷却にて50℃以下に冷却し48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A6を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中42質量%であった。また、反応生成物A6の固形分は78質量%であった。
【0125】
製造例A7
攪拌機および還流管付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、硫酸0.41g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)33.78gを仕込み、水分を還流しながら、20℃で4時間攪拌した。その後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A7を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中57質量%であった。また、反応生成物A7の固形分は83質量%であった。
【0126】
製造例A8
攪拌機および還流管付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、水酸化ナトリウム0.17g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)67.57gを仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温した。昇温後、水分を還流しながら、同温度で4時間攪拌した。その後、加熱をやめて自然冷却にて50℃以下に冷却しpH6に硫酸で中和し、反応生成物A8を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中34質量%であった。また、反応生成物A8の固形分は75質量%であった。
【0127】
製造例A9
攪拌機および還流管付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリン76.74g、水酸化ナトリウム0.17g、ホルムアルデヒド水溶液(37質量%)67.57gを仕込み、水分を還流しながら、20℃で4時間攪拌した。その後、pH6に硫酸で中和し、反応生成物A9を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中36質量%であった。また、反応生成物A9の固形分は75質量%であった。
【0128】
製造例A10
攪拌機付きガラス製反応容器(200mlフラスコ)にグリセリンエチレンオキサイド平均1モル付加物113.46g、硫酸0.41g、パラホルムアルデヒド25gを仕込み、撹拌しながら100℃まで昇温した。昇温後、水分を系外に除去しながら、同温度で4時間攪拌した。その後、加熱をやめて自然冷却にて50℃以下に冷却し48質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH6に中和し、反応生成物A10を得た。ガスクロマトグラフィー定量分析における未反応(a1)成分は、固形分中7.5質量%であった。また、反応生成物A10の固形分は98質量%であった。
【0129】
なお、上記製造例で使用した試薬は以下の通りである。また、上記製造例の反応条件等を表1にまとめた。表1の反応系水分の記載に関して、「除去」は水分を系外に除去する反応系、「還流下」は還流下で行う反応系であることを示す。
・グリセリン:和光純薬工業株式会社製1,2,3−プロパントリオール
・グリセリンエチレンオキサイド平均1モル付加物:グリセリン(和光純薬工業株式会社製1,2,3−プロパントリオール)にエチレンオキサイドを平均で1モル付加したもの
・硫酸:シグマアルドリッチ社製
・水酸化ナトリウム:試薬特級、和光純薬工業株式会社製
・パラホルムアルデヒド:和光一級、和工純薬工業株式会社製
・ホルムアルデヒド:試薬特級、和光純薬工業株式会社製
【0130】
【表1】
【0131】
*1 固形分としての質量%
【0132】
尿素−ホルムアルデヒド縮合物、ヒドロキシメタンスルホン酸塩及び重合体1は以下のものを用いた。
【0133】
・尿素−ホルムアルデヒド縮合物:以下の合成方法で得られたもの。
尿素450gと蒸留水3588gを容量10Lの三口フラスコに添加し、攪拌翼を用いて200rpmで10分混合した。その後、pHを11に調整した後、40℃に昇温した。続いて、37質量%ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)305gを90分かけて滴下した。滴下終了後、1時間攪拌を継続し熟成させ、室温に冷却し、固形分(尿素−ホルムアルデヒド縮合物)含有量が13.5質量%の尿素−ホルムアルデヒド縮合物を得た。
【0134】
・ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム:和光純薬工業株式会社製
【0135】
・重合体1:以下の合成方法で得られたもの。
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水114gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。60質量%のω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数120:エステル純度100質量%)水溶液300g、メタクリル酸(試薬:和光純薬工業株式会社製)11.5g、及び3−メルカプトプロピオン酸1.2gを混合溶解した水溶液と、過硫酸アンモニウム1.9gを水45gに溶解した水溶液の2者を、それぞれ1.5時間かけて上記反応容器中に滴下した。その後、80℃で1時間熟成し、更に過硫酸アンモニウム0.8gを水15gに溶解した水溶液を30分かけて滴下し、引き続き80℃で1.5時間熟成した。熟成終了後に40℃以下に冷却した後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液9.6gで中和し、重量平均分子量54000の共重合体(重合体1)を得た(中和度0.7)。その後、水を用いて固形分40質量%に調整し、重合体1の40質量%水溶液を得た。重合体1は、ポリカルボン酸系共重合体であり、単量体(1)/単量体(2)のモル比は20/80である。
【0136】
(2)水硬性粉体の調製
(2−1)混合材含有量0質量%の水硬性粉体の調製
クリンカー95質量%、二水石膏5質量%の粉砕原料を、粉砕助剤を添加せず、ボールミルでブレーン値3600cm
2/gまで粉砕して、混合材含有量0質量%の水硬性粉体を調製した。
【0137】
(2−2)混合材含有量5質量%の水硬性粉体の調製
クリンカー90質量%、二水石膏5質量%、高炉水砕スラグ5質量%の粉砕原料を、粉砕助剤を添加せず、ボールミルでブレーン値3600cm
2/gまで粉砕して、混合材含有量5質量%の水硬性粉体を調製した。
【0138】
(2−3)混合材含有量10質量%の水硬性粉体の調製
クリンカー86質量%、二水石膏4質量%、高炉水砕スラグ5質量%、フライアッシュ5質量%の粉砕原料を、粉砕助剤を添加せず、ボールミルでブレーン値3600cm
2/gまで粉砕して、混合材含有量10質量%の水硬性粉体を調製した。
【0139】
(2−4)混合材含有量30質量%の水硬性粉体の調製
クリンカー67質量%、二水石膏3質量%、高炉水砕スラグ15質量%、フライアッシュ15質量%の粉砕原料を、粉砕助剤を添加せず、ボールミルでブレーン値3600cm
2/gまで粉砕して、混合材含有量30質量%の水硬性粉体を調製した。
【0140】
(2−5)混合材含有量47質量%の水硬性粉体の調製
クリンカー50質量%、二水石膏3質量%、高炉水砕スラグ25質量%、フライアッシュ22質量%の粉砕原料を、粉砕助剤を添加せず、ボールミルでブレーン値3600cm
2/gまで粉砕して、混合材含有量47質量%の水硬性粉体を調製した。
【0141】
(2−6)混合材含有量70質量%の水硬性粉体の調製
クリンカー28質量%、二水石膏2質量%、高炉水砕スラグ35質量%、フライアッシュ35質量%の粉砕原料を、粉砕助剤を添加せず、ボールミルでブレーン値3600cm
2/gまで粉砕して、混合材含有量70質量%の水硬性粉体を調製した。
【0142】
(2−7)使用材料
・クリンカー:成分が、CaO:約65%、SiO
2:約22%、Al
2O
3:約5%、Fe
2O
3:約3%、MgO他:約3%(質量基準)となるように、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料等を組み合わせて焼成したものを、クラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得た、普通ポルトランドセメント用クリンカー(3.5mmふるい通過物、表中、Cと表示)
・二水石膏:試薬特級、和光純薬工業株式会社製(表中、Gと表示)
・高炉水砕スラグ:高炉水砕スラグをクラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得た(3.5mmふるい通過物、表中、Slagと表示)
・フライアッシュ:市販品、中部電力製(表中、FAと表示)
【0143】
(2−8)ボールミル
株式会社セイワ技研製AXB−15を用い、ステンレスポット容量は18リットル(外径300mm)とし、ステンレスボールは30mmφ(呼び1・3/16)を70個、20mmφ(呼び3/4)を70個の合計140個のボールを使用し、ボールミルの回転数は、45rpmとした。また粉砕途中で粉砕物を排出する時間を1分間と設定した。
【0144】
(2−9)ブレーン値の測定
ブレーン値の測定は、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)に定められるブレーン空気透過装置を使用した。
【0145】
(2−10)BET比表面積の測定
BET比表面積の測定は、Macsorb HM−model 1201(Mountech社製)を用い、以下の条件で行った。
・脱気:100℃×30分、冷却×4分
・測定ガス:キャリアガスとしてヘリウムを用い、冷却剤および吸着質として窒素を用いた。また、混合ガス濃度は30.4%、流量は25ml/min.とした。
【0146】
(3)水硬性組成物の調製
セメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に従った。なお使用材料として、セメントは(2)で調製した水硬性粉体を使用し、水硬性粉体用強度向上剤組成物は練り水に添加した(一部の実施例、比較例を除く)。
【0147】
(4)圧縮強度試験
セメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に従った。各測定値と、強度向上剤組成物(添加剤)無添加の比較例(試験例では同じ試験例での比較例)の測定値を100とする各相対値とを表に示した。
【0148】
実施例1−1〜1−4及び比較例1−1〜1−5
混合材含有量0質量%の水硬性粉体100質量部に、表2で示した添加剤を表2の量で用いて水硬性組成物を調製した。そして、水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。なお、表中の添加量は、何れも固形分換算の質量部である(以下、同様)。
なお、比較例1−4は、練り水に、グリセリン、ホルムアルデヒドを別々に添加し、直後にモルタルを調製した〔グリセリン/ホルムアルデヒド=75/25(質量比)〕。比較例1−4の添加剤の添加量は、反応生成物A1、A5及びA9の原料仕込み比率と同じとして、合計量が実施例と同じとなる量(水硬性粉体100質量部に対して0.015質量部)を用いた。結果を表2に示した。
【0149】
【表2】
【0150】
実施例2−1〜2−16及び比較例2−1〜2−5
混合材含有量47質量%の水硬性粉体100質量部に、表3で示した添加剤を表3の量で用いて水硬性組成物を調製した。そして、水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。
なお、比較例2−4は、練り水に、グリセリン、ホルムアルデヒドを別々に添加し、直後にモルタルを調製した〔グリセリン/ホルムアルデヒド=75/25(質量比)〕。比較例2−4の添加剤の添加量は、反応生成物A1、A5及びA9の原料仕込み比率と同じとして、合計量が実施例2−1等と同じとなる量(水硬性粉体100質量部に対して0.015質量部)を用いた。結果を表3に示した。
【0151】
【表3】
【0152】
実施例3−1〜3−13及び比較例3−1〜3−6
混合材含有量47質量%の水硬性粉体100質量部に、表4で示した強度向上剤組成物を表4の量で用いて水硬性組成物を調製した。そして、水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。結果を表4に示した。
【0153】
【表4】
【0154】
表4中、(A)成分を単独で用いたものは、「組成物中の含有量」では(A)成分の質量%は、(A)反応生成物中の固形分の質量%を示した。
【0155】
試験例4〜9
混合材の含有量の異なる水硬性粉体に対して、強度向上剤組成物として、反応生成物A1と尿素−ホルムアルデヒド縮合物を併用した場合(「−1]の枝番を付した例)及び反応生成物A5単独で用いた場合(「−2]の枝番を付した例)について、水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。結果を表5に示した。なお、実施例4−1、5−1、6−1、7−1、8−1及び9−1は、実施例3−3と同様に強度向上剤組成物を調製した。これらの組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、23.8質量%であった。
【0156】
【表5】
【0157】
実施例10−1〜10−3及び比較例10
強度向上剤組成物を粉砕用添加剤組成物として使用した場合の粉砕性と水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。
水硬性化合物として、混合材含有量47質量%の水硬性粉体の組成を用いた。粉砕用添加剤組成物として、反応生成物A1と尿素−ホルムアルデヒド縮合物の併用、反応生成物A5単独及び反応生成物A5と尿素−ホルムアルデヒド縮合物〔(B)成分〕とグリセリンのエチレンオキサイド平均1モル付加物〔(C)成分、表中、グリセリンEO1モル付加物と表記した〕の併用を用いた。ここで、グリセリンのエチレンオキサイド平均1モル付加物は、グリセリン(和光純薬工業株式会社製1,2,3−プロパントリオール)にエチレンオキサイドを平均で1モル付加したものである。
水硬性化合物100質量部に対して、表6の成分を表6の量で添加し、ボールミルで水硬性化合物の粉砕を行ない、粉砕性を38分粉砕後のBET比表面積を指標として評価した。また、得られた水硬性粉体を用いて、水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。結果を表6に示した。なお、実施例10−1、10−3は、実施例3−3と同様に強度向上剤組成物を調製した。その際、実施例10−3では所定量の(C)成分も混合し、固形分濃度を水で調整した。実施例10−1の組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、23.8質量%であった。また、実施例10−3の組成物中の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計の含有量は、37.2質量%であった。
【0158】
【表6】
【0159】
実施例11−1〜11−2及び比較例11
強度向上剤組成物を分散剤と併用して使用した場合の水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。水硬性組成物は、混合材含有量47質量%の水硬性粉体100質量部に、表7で示した分散剤と強度向上剤組成物を、それぞれ、表7の量で用いて調製した。
強度向上剤組成物として、反応生成物A1と尿素−ホルムアルデヒド縮合物の併用、反応生成物A5単独を用いた。分散剤としてポリカルボン酸系分散剤(重合体1)を用いた。
なお、比較例11、実施例11−1及び11−2では、他の実施例及び比較例の水量225g〔水/水硬性粉体の質量比は50(%)〕を、水量180g〔水/水硬性粉体の質量比は40(%)〕に代えて実験を行った。実施例11−1及び11−2では重合体1を強度向上剤組成物と混合し混和剤を調製した。そして、前記混和剤を練り水に添加した。
水硬性組成物調製後3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。結果を表7に示した。なお、実施例11−1は、実施例3−3と同様に強度向上剤組成物を調製した。この組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、23.8質量%であった。
【0160】
【表7】