(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.第1実施例:
A1.スパークプラグの構成:
図1は、第1実施例のスパークプラグ100の断面図である。図示されたラインCLは、スパークプラグ100の中心軸を示している。以下、中心軸CLのことを「軸線CL」とも呼び、中心軸CLと平行な方向を「軸線方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の円周方向を「周方向」とも呼ぶ。図中の第1方向D1は、軸線CLと平行な方向である。後述するように、火花ギャップg(単に「ギャップg」とも呼ぶ)を形成する中心電極20と接地電極30とは、スパークプラグ100の第1方向D1側の端部を形成している。以下、このような第1方向D1側を「スパークプラグ100の先端側(あるいは、単に「先端側」)」とも呼び、第1方向D1の反対方向側を「スパークプラグ100の後端側(あるいは、単に「後端側」)」とも呼ぶ。また、図中の第2方向D2と第3方向D3とは、互いに垂直な方向であり、いずれも、第1方向D1と垂直な方向である。以下、第1方向D1を、単に「+D1方向」とも呼び、第1方向D1の反対方向を、単に「−D1方向」とも呼ぶ。他の方向についても、同様に、「+」または「−」の符号を用いて、方向を特定する。また、+D1方向側を、単に「+D1側」とも呼び、−D1方向側を、単に「−D1側」とも呼ぶ。他の方向側についても、同様である。
【0022】
スパークプラグ100は、絶縁碍子10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、導電性シール60と、抵抗体70と、導電性シール80と、先端側パッキン8と、タルク9と、第1後端側パッキン6と、第2後端側パッキン7と、を備えている。
【0023】
絶縁碍子10は、中心軸CLに沿って延びて絶縁碍子10を貫通する貫通孔12(「軸孔12」とも呼ぶ)を有する略円筒形状の部材である。絶縁碍子10はアルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。絶縁碍子10は、先端側から後端側に向かって順番に並ぶ、脚部13と、第1縮外径部15と、先端側胴部17と、鍔部19と、第2縮外径部11と、後端側胴部18と、を備えている。
【0024】
鍔部19は、絶縁碍子10における軸方向の略中央に位置する部分であり、絶縁碍子10の最大外径部分である。鍔部19の先端側には、先端側胴部17が設けられている。先端側胴部17の先端側には、第1縮外径部15が設けられている。第1縮外径部15の外径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。第1縮外径部15の先端側には、脚部13が設けられている。スパークプラグ100が内燃機関(図示せず)に取り付けられた状態では、脚部13は、燃焼室に曝される。
【0025】
鍔部19の後端側には、第2縮外径部11が設けられている。第2縮外径部11の外径は、先端側から後端側に向かって、徐々に小さくなる。第2縮外径部11の後端側には、後端側胴部18が設けられている。
【0026】
絶縁碍子10の貫通孔12の先端側には、中心電極20が挿入されている。中心電極20は、中心軸CLに沿って延びる棒状の部材である。中心電極20は、電極母材21と、電極母材21の内部に埋設された芯材22と、を備えている。電極母材21は、例えば、ニッケルを主成分として含む合金であるインコネル(「INCONEL」は、登録商標)を用いて形成されている。芯材22は、例えば、銅を含む合金で形成されている。中心電極20の後端側の一部は、絶縁碍子10の貫通孔12内に配置され、中心電極20の先端側の一部は、絶縁碍子10の先端側に露出している。
【0027】
絶縁碍子10の貫通孔12の後端側には、端子金具40が挿入されている。端子金具40は、中心軸CLに沿って延びる棒状の部材である。端子金具40は、低炭素鋼を用いて形成されている(但し、他の導電材料(例えば、金属材料)も採用可能である)。端子金具40は、鍔部42と、鍔部42より後端側の部分を形成するキャップ装着部41と、鍔部42より先端側の部分を形成する脚部43と、を備えている。キャップ装着部41は、絶縁碍子10の後端側に露出している。脚部43は、絶縁碍子10の貫通孔12に挿入(圧入)されている。
【0028】
絶縁碍子10の貫通孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、抵抗体70が配置されている。抵抗体70は、火花発生時の電波ノイズを低減する。抵抗体70は、例えば、B
2O
3−SiO
2系等のガラス粒子と、TiO
2等のセラミック粒子と、炭素粒子や金属等の導電材料と、を含む組成物で形成されている。
【0029】
貫通孔12内において、抵抗体70と中心電極20との間の隙間は、導電性シール60によって埋められている。抵抗体70と端子金具40との間の隙間は、導電性シール80によって埋められている。この結果、中心電極20と端子金具40とは、抵抗体70と導電性シール60、80とを介して、電気的に接続される。導電性シールは、例えば、上述の各種ガラス粒子と、金属粒子(Cu、Feなど)と、を用いて形成される。
【0030】
主体金具50は、内燃機関のエンジンヘッド(図示省略)にスパークプラグ100を固定するための円筒状の金具である。主体金具50は、低炭素鋼材を用いて形成されている(他の導電材料(例えば、金属材料)も採用可能である)。主体金具50には、中心軸CLに沿って貫通する貫通孔59が形成されている。主体金具50の貫通孔59には、絶縁碍子10が挿入され、主体金具50は、絶縁碍子10の外周に固定されている。絶縁碍子10の先端(すなわち、+D1側の端)は、主体金具50の先端から露出し、絶縁碍子10の後端は、主体金具50の後端から露出している。
【0031】
主体金具50は、先端側から後端側に向かって順番に並ぶ、胴部55と、シール部54と、変形部58と、工具係合部51と、加締部53と、を備えている。シール部54の形状は、略円柱形状である。シール部54の先端側には、胴部55が設けられている。胴部55の外径は、シール部54の外径よりも、小さい。胴部55の外周面には、内燃機関の取付孔に螺合するためのネジ部52が形成されている。シール部54とネジ部52との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌挿されている。
【0032】
主体金具50の胴部55は、縮内径部56を有している。縮内径部56は、絶縁碍子10の鍔部19よりも先端側に、配置されている。縮内径部56の内径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。主体金具50の縮内径部56と、絶縁碍子10の第1縮外径部15と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。先端側パッキン8は、鉄製のOリングである。先端側パッキン8の材料としては、他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である。
【0033】
シール部54の後端側には、シール部54よりも肉厚が薄い変形部58が設けられている。変形部58は、径方向の外側(中心軸CLから離れる方向)に向かって中央部が突出するように、変形している。変形部58の後端側には、工具係合部51が設けられている。工具係合部51の形状は、スパークプラグレンチが係合する形状(例えば、六角柱)である。工具係合部51の後端側には、工具係合部51よりも肉厚が薄い加締部53が設けられている。加締部53は、絶縁碍子10の第2縮外径部11よりも後端側に配置され、主体金具50の後端(すなわち、−D1側の端)を形成する。加締部53は、径方向の内側に向かって屈曲されている。
【0034】
主体金具50の後端側の部分の内周面と、絶縁碍子10の外周面と、の間には、環状の空間SPが形成されている。この空間SPは、加締部53と第2縮外径部11との間の、主体金具50の内周面と絶縁碍子10の外周面とに囲まれた空間である。この空間SP内の後端側には、第1後端側パッキン6が配置され、この空間SP内の先端側には、第2後端側パッキン7が配置されている。本実施例では、これらの後端側パッキン6、7は、鉄製のCリングである(他の材料も採用可能である)。空間SP内における2つの後端側パッキン6、7の間には、タルク(滑石)9の粉末が充填されている。
【0035】
加締部53を内側に折り曲げるように加締めることによって、パッキン6、7とタルク9とを介して、絶縁碍子10が、主体金具50内で、先端側に向けて押圧される。これにより、第1縮外径部15と縮内径部56との間で、先端側パッキン8が押圧される。そして、先端側パッキン8は、主体金具50と絶縁碍子10との間をシールする。以上により、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁碍子10との間を通って外に漏れることが、抑制される。
【0036】
接地電極30は、主体金具50の先端(すなわち、+D1側の端)に接合された棒状の電極である。接地電極30は、主体金具50からD1方向に延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部31に至る。先端部31は、中心電極20の先端面20s1(+D1側の表面20s1)との間でギャップgを形成する。また、接地電極30は、主体金具50に、電気的に導通するように、接合されている(例えば、レーザ溶接)。接地電極30は、接地電極30の表面を形成する母材35と、母材35内に埋設された芯部36と、を備えている。母材35は、例えば、インコネルを用いて形成されている。芯部36は、母材35よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅)を用いて形成されている。
【0037】
A2.電極の構成:
図2は、スパークプラグ100の電極20、30の構成を示す概略図である。
図2(A)は、スパークプラグ100の第1方向D1側の一部分の断面図(具体的には、中心軸CLを含む断面図)を示し、
図2(B)は、接地電極30の断面(具体的には、中心軸CLと直交する断面)を示し、
図2(C)は、+D1方向を向いて見た接地電極30の概略図を示し、
図2(D)は、電極20、30の斜視図を示している。なお、
図2(A)中の中心軸CLの右側では、+D3方向を向いて見た中心電極20と絶縁碍子10との外観が示されている。また、
図2(B)は、
図2(A)のB1−B1断面である。
【0038】
接地電極30は、断面が矩形状の棒状の部材を用いて形成されている。
図2(A)に示すように、接地電極30は、主体金具50に接合された第2端30e2を含む部分である脚部32と、脚部32に接続され、第2端30e2とは反対側の第1端30e1を含む部分である先端部31と、を備えている。脚部32は、第2端30e2から、第1方向D1側に向かって延び、そして、中心軸CLに向かって曲がっている。第2端30e2から中心軸CLに向かう方向が、第2方向D2である。先端部31は、中心電極20よりも+D1側を、中心軸CLの−D2側から、中心軸CLの+D2側の第1端30e1まで、+D2方向に延びている。先端部31は、第1端30e1と、中心電極20の先端面20s1(すなわち、+D1側の表面20s1)と対向する部分と、を含んでいる。
【0039】
また、
図2(A)に示すように、接地電極30は、表面を形成する母材35と、母材35内に埋設された芯部36と、を備えている。芯部36は、第2端30e2から、先端部31の途中まで、延びている。ここで、芯部36の両端のうち、接地電極30の先端部31に近い方の端36tを「先端36t」と呼ぶ。
図2(B)に示す断面は、芯部36の先端36tを含み、中心軸CLと直交する断面である。
【0040】
図2(A)〜
図2(D)に示すように、先端部31は、−D1側の表面である内面31siと、+D1側の表面である外面31soと、+D3側の表面である第1側面31s1と、−D3側の表面である第2側面31s2と、を有している。内面31siと外面31soとは、いずれも、中心軸CLと直交する平面である。2つの側面31s1、31s2は、いずれも、D3方向と垂直な平面である。内面31siは、中心電極20の先端面20s1と対向している。先端面20s1は、中心軸CLと直交する平面である。また、内面31siと先端面20s1とが、火花ギャップgを形成する。
図2(A)中の距離Dgは、ギャップ距離を示している(以下「ギャップ距離Dg」とも呼ぶ)。ギャップ距離Dgは、ギャップgを形成する2つの面20s1、31siの間の最短距離である。
【0041】
図2(A)〜
図2(D)に示すように、先端部31は、第1端30e1に向かって徐々に細くなる先細りの端部であるテーパ端部31tを備えている。テーパ端部31tは、−D1側の表面である対向面31tsiと、+D1側の表面である外面31tsoと、+D3側の表面である第1テーパ面31ts1と、−D3側の表面である第2テーパ面31ts2と、+D2側の表面である先端面31seと、を有している。対向面31tsiは、先端部31の内面31siの一部であり、中心電極20の先端面20s1と対向してギャップgを形成する。外面31tsoは、接地電極30の外面31soの一部である。先端面31seは、接地電極30の第1端30e1に対応する。第1テーパ面31ts1は、第1側面31s1と先端面31seとを接続する。第2テーパ面31ts2は、第2側面31s2と先端面31seとを接続する。
【0042】
図2(C)に示すように、対向面31tsiの形状は、+D2方向に向かって、徐々に幅が狭くなる、台形である。図示を省略するが、外面31tsoの形状も、対向面31tsiの形状と同じ台形である。以下、対向面31tsiを表す台形の平行な2辺Ub、Lbのうちの、比較的短い辺Ubを「上底Ub」と呼び、比較的長い辺Lbを「下底Lb」と呼ぶ。上底Ubは、対向面31tsiと先端面31seとの境界を形成するエッジラインである。一対のテーパ面31ts1、31ts2は、対向面31tsiを挟むように配置されている。2つのテーパ面31ts1、31ts2の間の距離(第3方向D3と平行な距離)は、+D2方向に向かって、徐々に短くなる。
【0043】
図2(C)には、対称面CLaが示されている。この対称面CLaは、中心軸CLを含み、第2方向D2と平行な平面である。接地電極30の構成は、この対称面CLaに対して、面対称である。
図2(A)に示す接地電極30断面は、この対称面CLa上の断面である。
図2(C)に示すように、対称面CLa上の断面は、テーパ端部31tの対向面31tsi上を接地電極30の長手方向(ここでは、第2方向D2)に沿って延びて対向面31tsiを二等分するラインLtを含み、かつ、対向面31tsiと直交する断面である。以下、対向面31tsiをこのように二等分する断面を、「二分断面」とも呼ぶ。
【0044】
図2(B)には、第1テーパ面31ts1に対応する第1線分L1と、第2テーパ面31ts2に対応する第2線分L2と、が示されている。図中の第1後端E1は、第1線分L1の両端のうち、先端面31seから遠い方の端である。また、第2後端E2は、第2線分L2の両端のうち、先端面31seから遠い方の端である。第1垂直線Lo1は、第1後端E1を通り、第1線分L1と垂直な直線である。第2垂直線Lo2は、第2後端E2を通り、第2線分L2と垂直な直線である。
図2(B)の右側には、断面中の一部の領域Atが、切り出して示されている。この領域Atは、第1垂直線Lo1よりも先端側(接地電極30の第1端30e1側)であり、かつ、第2垂直線Lo2よりも先端側の領域である。
図2(B)の断面において、芯部36の一部は、この領域At内に配置されている。従って、領域At内に芯部36が配置されない場合と比べて、内燃機関の運転時に、芯部36は、先端部31から接地電極30の他の部分(ここでは、脚部32)へ、容易に熱を逃がすことができる。従って、先端部31の温度が高くなることと、先端部31の温度が高い状態が続くこととを、抑制できる。この結果、先端部31の消耗(例えば、先端部31の表面の酸化)を抑制できる。
【0045】
図2(C)、
図2(D)中の破線で示された領域20s1pは、中心電極20の先端面20s1を、中心軸CLに沿って(+D1方向に向かって)接地電極30上に投影して得られる領域である(以下、「投影領域20s1p」とも呼ぶ)。図示するように、投影領域20s1p(すなわち、先端面20s1)の形状は、円形状である。テーパ端部31tの一部は、この投影領域20s1pと重なっている。なお、
図2の例では、対向面31tsiの下底Lbは、中心軸CLよりも+D2側に配置されている。ただし、下底Lbが、中心軸CLよりも、−D2側に配置されてもよい。
【0046】
図2(C)、
図2(D)には、2本のエッジラインL11、L12が示されている。第1エッジラインL11は、対向面31tsiと第1テーパ面31ts1との境界を形成するエッジラインである。第2エッジラインL12は、対向面31tsiと第2テーパ面31ts2との境界を形成するエッジラインである。図示するように、これらのエッジラインL11、L12は、いずれも、投影領域20s1pとは重ならずに、投影領域20s1pから離れている。
図2(D)に示す距離Deは、中心電極20の先端面20s1と、第2エッジラインL12と、の間の最短距離である(以下、「エッジ距離De」とも呼ぶ)。本実施例では、先端面20s1の縁と、第2エッジラインL12と、を接続する線分の距離が、エッジ距離Deに対応する。このエッジ距離Deは、ギャップ距離Dgよりも長い。しかし、一般的に、放電は、電極の表面のうちの、投影領域20s1pのように平らな面よりも、第2エッジラインL12のように尖った部分で、生じ易い。従って、エッジ距離Deがギャップ距離Dgよりも長い場合であっても、放電は、先端面20s1と第2エッジラインL12との間で、生じ得る。上述したように、接地電極30の構成は、対称面CLaに対して面対称であるので、先端面20s1と第1エッジラインL11との間の最短距離も、エッジ距離Deと同じである。従って、放電は、先端面20s1と第1エッジラインL11との間でも、生じ得る。
【0047】
放電が、接地電極30の内面31siの内部(例えば、投影領域20s1pの内部)で生じた場合には、放電によって生じた火炎は、内面31siの端まで拡がった後に、ギャップgの外に拡がる。一方、放電が、エッジラインL11、L12で生じた場合には、放電によって生じた火炎は、直ぐに、ギャップgの外に拡がり得る。従って、エッジラインL11、L12で放電が生じ得る場合には、着火性を向上できる。
【0048】
A3.第1評価試験:
スパークプラグ100のサンプルを用いた第1評価試験について説明する。第1評価試験では、ギャップ距離Dg(
図2(D))に対するエッジ距離Deの比率De/Dg(以下「ギャップ比率」と呼ぶ)が互いに異なる6個のスパークプラグ100のサンプルを用いて、スパークプラグ100で生じた放電の全回数(ここでは、1000回)に対する、中心電極20とエッジライン(第1エッジラインL11、または、第2エッジラインL12)との間で生じた放電の回数の割合(以下「エッジ放電率」と呼ぶ)を、測定した。いずれのサンプルに関しても、母材35の材料は、インコネルであり、芯部36の材料は、純銅である。
以下の表1は、測定結果を示している。
【0050】
評価試験に用いられた6個のサンプルに共通な寸法は、以下の通りである。
1)テーパ端部31tの第1端30e1の第3方向D3の幅Da :1.5mm
この幅Daは、対向面31tsiの上底Ubの長さと同じである。
2)テーパ端部31tのD2方向の長さDb :1.6mm
3)先端部31(テーパ端部31tを除く)の第3方向D3の幅Dc :3.0mm
この幅Dcは、対向面31tsiの下底Lbの長さと同じである。
4)先端部31のD1方向の厚さDt :1.6mm
5)中心電極20の先端面20s1の直径Dd :1.5mm
6)ギャップ距離Dg :1.0mm
6個のサンプルの間では、エッジ距離Deが互いに異なっている。エッジ距離Deの調整は、下底Lbと先端面20s1の中心CLとの第2方向D2の距離Dsと接地電極30の脚部32の曲がり具合とを調整することによって、行われた。
【0051】
試験方法は、以下の通りである。空気が充填された実験用の容器内に、スパークプラグ100を配置し、容器内の圧力を、0.6MPaに上昇させる。この圧力は、内燃機関の燃焼室内の点火時の圧力を想定して、決められている。この状態で、スパークプラグ100に電圧を印加して、放電を行う。放電の様子を高速度カメラで撮影し、接地電極30上の放電位置が、エッジラインL11、L12と、内面31siの内側と、のいずれであるのかを、確認する。100Hzで1000回の放電を行うことによって、エッジ放電率を算出する。
【0052】
表1に示すように、ギャップ比率が小さいほど、エッジ放電率が高い。この理由は、ギャップ比率が小さ場合には、ギャップ比率が大きい場合よりも、ギャップ距離Dgに対するエッジ距離Deが小さいので、エッジラインL11、L12で放電が生じ易くなるからだと推定される。具体的には、表1に示すように、ギャップ比率が100%である場合(エッジラインL11、L12が、投影領域20s1pと重なる場合)、エッジ放電率が99%であった。ギャップ比率が、110%、120%、125%、130%、135%である場合には、それぞれ、エッジ放電率は、95%、85%、60%、40%、20%であった。
【0053】
上述したように、エッジラインL11、L12で放電が生じる場合には、着火性を向上できる。従って、着火性の向上の観点からは、ギャップ比率が小さいことが好ましい。例えば、120%以下のギャップ比率を採用することによって、85%以上のエッジ放電率を実現できる。このように、ギャップ比率が120%以下であることが好ましく、また、ギャップ比率が110%以下であることが、特に好ましく、ギャップ比率が100%であることが、最も好ましい。なお、ギャップ比率の下限は、100%である。
【0054】
なお、エッジラインL11、L12での放電のし易さは、主に、ギャップ距離Dgに対するエッジ距離Deの比率に応じて変化すると推定される。従って、ギャップ比率の上述の好ましい上限は、ギャップ比率以外の構成に拘わらずに、適用可能と推定される。例えば、中心電極20のうちの先端面20s1を形成する部分の材料や、先端面20s1の面積や、接地電極30のうちの内面31siを形成する部分の材料等に拘わらずに、上記の好ましい上限を適用可能と推定される。
【0055】
A4.第2評価試験:
スパークプラグ100のサンプルを用いた第2評価試験について説明する。第2評価試験では、スパークプラグ100を搭載した内燃機関を100時間に亘って運転することによるギャップ距離Dgの増加量を測定した。内燃機関としては、直列4気筒、SOHC(Single OverHead camshaft)、2Valve、排気量1.3Lのものを用いた。100時間の運転の内訳は、1分間のアイドル運転と、1分間のスロットル全開運転(WOTとも呼ばれる)と、で構成される1サイクルの運転を、3000回繰り返すものである。アイドル運転時には、接地電極30のうちのギャップgに近い部分の最高温度は、おおよそ摂氏300度であり、スロットル全開運転時には、接地電極30のうちのギャップgに近い部分の最高温度は、おおよそ摂氏1000度である。
【0056】
第2評価試験では、10個のスパークプラグ100のサンプルを準備した。10個のサンプルの間では、テーパ面31ts1、31ts2に対する芯部36の位置が、互いに異なっている。
図2(B)の断面には、第1テーパ面31ts1に対応する第1線分L1と、芯部36と、の間の最短距離Wmが、示されている。10個のサンプルの間では、この最短距離Wmが互いに異なっている。最短距離Wmの調整は、以下のように行った。まず、インコネルで形成されたカップ状の第1部材を準備し、その第1部材の中に、純銅で形成された第2部材を挿入する。そして、第2部材が挿入された状態で、第1部材の外形を成形することによって、接地電極30を製造する。第1部材が母材35に対応し、第2部材が芯部36に対応する。ここで、成形前のカップ状の第1部材の厚さを調整することによって、最短距離Wmを調整した。なお、本実施例では、最短距離Wmは、芯部36と先端面31seとの間の最短距離(すなわち、先端36tと先端面31seとの間の距離)よりも、短い。また、上述したように、接地電極30の構成は、対称面CLaに対して面対称であるので、第2テーパ面31ts2に対応する第2線分L2と、芯部36と、の間の最短距離も、最短距離Wmと同じである。また、接地電極30の外形は、10個のサンプルの間で同じである。以下の表2は、測定結果を示している。
【0058】
最短距離Wmの単位は、ミリメートルである。ギャップ距離Dgの増加量dDg(「ギャップ増加量dDg」と呼ぶ)は、100時間の運転後のギャップ距離Dgから、運転前のギャップ距離Dgを引いた差分である(単位は、ミリメートル)。評価結果に関しては、A評価は、ギャップ増加量dDgが0.3mm未満であることを示し、B評価は、ギャップ増加量dDgが0.3mm以上であることを示し、C評価は、100時間の運転によって、接地電極30の母材35が破裂したこと、すなわち、芯部36が母材35の外に飛び出したこと、を示している。
【0059】
評価試験に用いられた10個のサンプルの間では、試験前(すなわち、100時間の運転前)の長さDa、Db、Dc、Dt、Dd、Ds、Dgは、上記の第1評価試験で用いたサンプルのものと、それぞれ同じである。また、試験前のエッジ距離Deは、1.2mmである。また、母材35の材料は、インコネルであり、芯部36の材料は、純銅である。
【0060】
表2に示すように、ギャップ増加量dDgは、最短距離Wmが小さいほど小さくなる傾向にある。この理由は、以下のように推定される。すなわち、最短距離Wmが小さいほど、接地電極30の先端部31内の芯部36の割合が大きくなるので、内燃機関の運転時に、先端部31から接地電極30の他の部分(ここでは、脚部32)へ、容易に熱を逃がすことができる。従って、先端部31の温度が高くなることと、先端部31の温度が高い状態が続くこととを、抑制できる。この結果、先端部31の消耗(例えば、先端部31の表面の酸化)が抑制されるので、ギャップ増加量dDgを抑制できる。
【0061】
具体的には、表2に示すように、最短距離Wmが0.1mmである場合には、試験中に、接地電極30が破裂した。最短距離Wmが、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.7mm、0.9mm、1.1mm、1.3mm、1.5mm、1.7mmである場合には、それぞれ、ギャップ増加量dDgは、0.13mm、0.12mm、0.13mm、0.14mm、0.16mm、0.18mm、0.21mm、0.25mm、0.34mmであった。このように、最短距離Wmが0.2mm以上、かつ、1.5mm以下である場合には、評価結果はA評価であり、最短距離Wmが1.7mmである場合の評価結果は、B評価であった。
【0062】
このように、最短距離Wmを1.5mm以下に設定することによって、ギャップ増加量dDgを0.3mm未満に抑制することができる。また、最短距離Wmを0.2mm以上に設定することによって、接地電極30の破損(例えば、破裂)を抑制できる。従って、接地電極30の耐久性を向上するためには、最短距離Wmは、0.2mm以上、かつ、1.5mm以下であることが好ましい。なお、良好な評価結果が得られた最短距離Wmは、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.7mm、0.9mm、1.1mm、1.3mm、1.5mmである。これらの値のうちの任意の値を、最短距離Wmの好ましい範囲の上限として採用可能である。また、これらの値のうちの上限以下の任意の値を、最短距離Wmの好ましい範囲の下限として採用可能である。
【0063】
なお、芯部36による先端部31の表面(特に、テーパ面31ts1、31ts2)の冷却の効果は、主に、最短距離Wmに応じて変化すると推定される。従って、最短距離Wmの好ましい範囲は、最短距離Wm以外の構成に拘わらずに、適用可能と推定される。例えば、接地電極30の形状に拘わらずに、上記の好ましい範囲を適用可能と推定される。
【0064】
A5.第3評価試験:
スパークプラグ100のサンプルを用いた第3評価試験について説明する。第3評価試験では、芯部36の材料が互いに異なる5個のスパークプラグ100のサンプルを用いて、接地電極30の耐久性を評価した。以下の表3は、評価結果を示している。
【0066】
評価試験に用いられた5個のサンプルの間では、試験前の長さDa、Db、Dc、Dt、Dd、Ds、Dgは、上記の第1評価試験で用いたサンプルのものと、それぞれ同じである。また、母材35の材料は、インコネルである。試験前において、エッジ距離Deは、1.2mmであり、最短距離Wmは、0.2mmであった。
【0067】
第3評価試験では、スパークプラグ100の電極20、30の加熱と冷却とのサイクルを3000回繰り返すことによる接地電極30の変化を評価した。具体的には、1回のサイクルは、電極20、30(特に、ギャップgの近傍)を、バーナーで1分間に亘って加熱し、続けて、1分間に亘って空気中で冷却する、というものである。1分間の加熱によって、接地電極30のうちのギャップgに近い部分の温度は、摂氏1100度に上昇する。この温度は、上述の第2評価試験での温度(およそ摂氏1000度)よりも高い。すなわち、第3評価試験では、第2評価試験と比べて、厳しい条件下で評価が行われている。
【0068】
表3には、芯部36の材料と、その材料の融点と、評価結果と、が示されている。材料としては、純銅(Cu)と、ステンレス鋼(SUS304)と、高ニッケル合金と、純ニッケル(Ni)と、純鉄(Fe)と、が採用された。評価に関しては、A評価は、接地電極30に変化が見られないことを示し、B評価は、接地電極30が破裂したことを示している。表3に示すように、芯部36の材料が純銅である場合の評価がB評価であった。この理由は、母材35の内部での芯部36の熱膨張によって母材35が損傷し、そして、加熱時に溶融した芯部36が、損傷した母材35から漏れたからだと推定される。芯部36の材料が、ステンレス鋼(SUS304)、高ニッケル合金、純ニッケル、純鉄、のいずれかである場合には、評価結果はA評価であった。この理由は、芯部36の材料の融点が、加熱時の接地電極30の温度(おおよそ摂氏1100度)よりも高く、芯部36が溶融しなかったからだと推定される。
【0069】
以上のように、加熱時の接地電極30の温度よりも高い融点を有する材料を、芯部36の材料として採用することによって、接地電極30の破裂を抑制できる。なお、内燃機関の運転時の接地電極30の最高温度は、内燃機関に応じて異なっている。一般に、接地電極30の最高温度が摂氏1000度未満であることを想定して設計された内燃機関が、広く普及している。そのような内燃機関を用いる場合には、想定された最高温度(ここでは、摂氏1000度)よりも融点が高い種々の材料(例えば、純銅を含む種々の金属材料)を、芯部36の材料として採用可能である。また、内燃機関としては、摂氏1000度を超える接地電極30の最高温度を想定して設計された内燃機関も利用され得る。例えば、接地電極30の想定された最高温度が摂氏1100度であり得る。このような場合には、想定された最高温度よりも融点が高い種々の材料を、芯部36の材料として採用可能である。一般には、表3の評価試験で評価されたように、融点が摂氏1350度以上の材料を採用すれば、スパークプラグ100を種々の内燃機関に適用できる。
【0070】
また、接地電極30の最高温度が摂氏1100度であるという条件下で良好な評価結果が得られた材料の融点は、摂氏1350度、摂氏1413度、摂氏1453度、摂氏1536度である。これらの値のうちの任意の値を、融点の好ましい範囲の下限として採用可能である。また、これらの値のうちの下限以上の任意の値を、融点の好ましい範囲の上限として採用可能である。
【0071】
B.第2実施例:
B1.スパークプラグの構成:
図3は、第2実施例のスパークプラグ100aの電極20、30aの構成を示す概略図である。
図3(A)〜
図3(C)は、それぞれ、
図2(A)〜
図2(C)と同様の概略図を示している。また、
図3(D)は、
図3(A)のA2−A2断面を示し、
図3(E)は、
図3(A)のA3−A3断面を示している。
図2の第1実施例のスパークプラグ100からの主な差異は、接地電極の芯部36が、第1芯部36a1と第2芯部36a2とを含む芯部36aに置換されている点である。接地電極30a以外の構成は、
図1、
図2で説明した第1実施例の構成と同じである。接地電極30aの構成は、対称面CLaに対して面対称である。以下、第2実施例のスパークプラグ100aの要素のうち、第1実施例のスパークプラグ100の要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0072】
図3(A)に示すように、接地電極30aは、母材35aと、母材35a内に埋設された芯部36aと、を備えている。接地電極30aの形状(すなわち、母材35aの外形の形状)は、第1実施例の接地電極30の形状(すなわち母材35の外形の形状)と、同じである。
【0073】
芯部36aは、第1芯部36a1と第2芯部36a2とを備えている。第2芯部36a2は、母材35と第1芯部36a1との間に設けられている。第1芯部36a1は、第1実施例の芯部36と同様に、接地電極30aの第2端30e2から、先端部31の途中に配置された先端36atまで、延びている。第2芯部36a2は、第1芯部36a1のうちの後端側(すなわち、第2端30e2側)の部分を覆うチューブ状の層である。第2芯部36a2は、接地電極30aの第2端30e2から、第1芯部36a1の先端36atよりも手前の位置まで、延びている。第1芯部36a1の先端側(すなわち、第1端30e1側)の部分は、第2芯部36a2には覆われずに、母材35aと接触している。第1芯部36a1の先端36atは、芯部36aの両端のうちの、接地電極30aの先端部31に近い方の端36atを形成している。第1芯部36a1のうちの、第2芯部36a2に覆われた部分は、第2芯部36a2に覆われていない部分よりも、細い。従って、芯部36aのうちの第2芯部36a2を含む部分の太さが過剰に太くなることが抑制される。そして、芯部36aの太さは、第2端30e2から先端36atまで、滑らかに変化する。
【0074】
第1芯部36a1は、母材35aよりも熱伝導率が高い材料で形成されている。第2芯部36a2は、第1芯部36a1よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。例えば、母材35aの材料は、インコネルであり、第1芯部36a1の材料は、純ニッケルであり、第2芯部36a2の材料は、純銅である。ここで、芯部36aのうちの先端36tを含む部分(ここでは、第1芯部36a1)の材料としては、融点が摂氏1350度以上の材料を採用することが好ましい。例えば、上記の表3に示された、ステンレス鋼(SUS304)と、高ニッケル合金と、純ニッケルと、純鉄と、から任意に選択された材料を採用してもよい。
【0075】
図3(D)は、接地電極30aのうちの第2芯部36a2を含む部分(すなわち、接地電極30aの後端側の部分。ここでは、脚部32)の断面である。この断面は、接地電極30aの延びる方向と垂直な断面である。断面上において、第2芯部36a2は、第1芯部36a1の全周を覆っている。断面構成は、第1芯部36a1と第2芯部36a2と母材35aとの3層構成である。
【0076】
図3(E)は、接地電極30aのうちの第1芯部36a1を含み第2芯部36a2を含まない部分(すなわち、接地電極30aの先端側の部分。ここでは、先端部31)の断面である。この断面は、接地電極30aの延びる方向と垂直な断面、すなわち、第2方向D2と垂直な断面である。断面構成は、第1芯部36a1と母材35aとの2層構成である。
【0077】
図3(B)の断面は、芯部36aの先端36atを含み、中心軸CLと直交する断面である。図中の最短距離Wmaは、第1線分L1と芯部36a(ここでは、第1芯部36a1)との間の最短距離である。本実施例では、この最短距離Wmaは、芯部36と接地電極30aの先端面31seとの間の最短距離(すなわち、芯部36aの先端36atと先端面31seとの間の距離)よりも、短い。また、図示するように、接地電極30aの先端側(すなわち、第1端30e1側)の断面構成は、第1芯部36a1と母材35aとの2層構成である。ここで、接地電極30aの先端側の断面構成としては、
図3(B)の断面における、第1芯部36a1の断面の輪郭のうちの先端36atを含む一部分から先端側(第1端30e1側)の断面構成を採用可能である。また、接地電極30aの後端側(すなわち、第2端30e2側)の断面構成は、第1芯部36a1と第2芯部36a2と母材35aとの3層構成である。ここで、接地電極30aの後端側の断面構成としては、
図3(B)の断面における、第1芯部36a1の断面の輪郭のうちの後端36a1b(接地電極30aの第1端30e1から最も遠い端36a1b)を含む一部分から後端側の断面構成を採用可能である。
【0078】
B2.第4評価試験:
第2実施例のスパークプラグ100aのサンプルを用いた第4評価試験について説明する。第4評価試験では、上述の第2評価試験と同様に、スパークプラグ100aを搭載した内燃機関を100時間に亘って運転することによるギャップ距離Dgの増加量を測定した。内燃機関の運転方法のうちの第2評価試験とは異なる点は、スロットル全開運転時の接地電極30のギャップgに近い部分の最高温度が、摂氏1000度よりも高い摂氏1100度となるように、内燃機関が調整されている点である。このように、第4評価試験では、第2評価試験と比べて、厳しい条件下で評価が行われている。
【0079】
第4評価試験では、第2芯部36a2の長さが互いに異なる2個のスパークプラグ100aのサンプルを準備した。第1サンプルの構成は、
図3で説明した構成と同じである。一方、図示を省略するが、第2サンプルでは、第2芯部36a2が、第2端30e2から、脚部32の途中の位置であるA2−A2断面の位置まで延びており、A2−A2断面の位置よりも先端側には、第2芯部36a2が設けられていない。すなわち、第2サンプルに関しては、
図3(B)に相当する断面において、第2芯部36a2は設けられていない。なお、2個のサンプルの間では、試験前(すなわち、100時間の運転前)の長さDa、Db、Dc、Dt、Dd、De、Ds、Dgは、上記の第2評価試験で用いたサンプルのものと、それぞれ同じである。また、最短距離Wma(
図3(B))は、1.3mmである。また、母材35aの材料は、インコネルであり、第1芯部36a1の材料は、純ニッケルであり、第2芯部36a2の材料は、純銅である。
【0080】
2個のサンプルのそれぞれのギャップ距離Dgの増加量を測定したところ、以下の通りであった。
1)第1サンプル :0.27mm
2)第2サンプル :0.33mm
以上のように、
図3(B)の断面中に第2芯部36a2が設けられる場合には、その断面中に第2芯部36a2が設けられない場合と比べて、ギャップ距離Dgの増加量を低減できる。この理由は、芯部36aの先端36atを含む断面に第2芯部36a2の少なくとも一部が設けられている場合には、この断面に第2芯部36a2が設けられていない場合と比べて、先端部31の温度が高くなることを抑制できるからだと推定される。
【0081】
また、
図3(B)の断面において、接地電極30aの先端側(すなわち、第1端30e1側)の断面構成は、第1芯部36a1と母材35aとの2層構成である。このように、第2芯部36a2は、芯部36aの先端側(すなわち、温度が高くなる部分)には配置されていない。この結果、第2芯部36a2が溶融して母材35aの外に飛び出すこと(破裂)を抑制できる。
【0082】
なお、
図3(B)の断面において第2芯部36a2の一部が設けられる場合には、第1芯部36a1と第2芯部36a2と母材35aとのそれぞれの形状に拘わらず、第2芯部36a2は、先端部31から、接地電極30aの他の部分(ここでは、脚部32)へ、容易に熱を逃がすことができる。また、
図3(B)の断面において、先端側には第2芯部36a2が設けられずに、後端側に第2芯部36a2が設けられている場合には、第1芯部36a1と第2芯部36a2と母材35aとのそれぞれの形状に拘わらず、第2芯部36a2が溶融して母材35aの外に飛び出すことを抑制できる。
【0083】
C.第3実施例:
C1.スパークプラグの構成:
図4は、第3実施例のスパークプラグ100bの電極20、30bの構成を示す概略図である。
図4(A)、
図4(B)は、それぞれ、
図2(A)、
図2(C)と同様の概略図を示している。
図2の第1実施例のスパークプラグ100からの主な差異は、接地電極30bが、中心電極20の先端面20s1と対向する貴金属チップ38を備えている点である。スパークプラグ100bの他の構成は、
図2で説明した第1実施例のスパークプラグ100の構成と同じである。以下、第3実施例のスパークプラグ100bの要素のうち、第1実施例のスパークプラグ100の要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0084】
接地電極30bは、第1実施例の接地電極30を本体部として備える(以下、「本体部30」とも呼ぶ)。接地電極30bは、さらに、本体部30の先端部31の内面31si上に固定された貴金属チップ38を備えている。貴金属チップ38の形状は、中心軸CLを中心とする円柱形状である。貴金属チップ38の表面のうちの中心電極20と対向する面38si(ここでは、−D1側の表面38si)と、中心電極20の先端面20s1とが、ギャップgを形成している。貴金属チップ38は、イリジウムを含む合金を用いて形成されている。貴金属チップ38は、母材35に、レーザ溶接によって、接合されている。具体的には、貴金属チップ38の外周面と、本体部30の先端部31の内面31siと、の境界部分が、全周に亘って、レーザ溶接されている。
【0085】
図4(B)の概略図には、内面31si上に溶接された貴金属チップ38が示されている。図示された距離Dd8は、貴金属チップ38の外径である。また、距離Dm8は、第1エッジラインL11と貴金属チップ38との間の最短距離である。なお、接地電極30bの構成は、対称面CLaに対して面対称である。また、
図4の例では、テーパ端部31tの対向面31tsiの下底Lbは、中心軸CLよりも、−D2側に配置されている。ただし、下底Lbが、中心軸CLよりも、+D2側に配置されてもよい。
【0086】
本実施例のスパークプラグ100bでは、貴金属チップ38と中心電極20との間に加えて、エッジラインL11、L12と中心電極20との間でも、放電が生じ得る。放電が、エッジラインL11、L12と中心電極20との間で生じると、本体部30が消耗する。本体部30が消耗すると、本体部30による貴金属チップ38の冷却が抑制されるので、貴金属チップ38の温度が高くなりやすい。この結果、貴金属チップ38が消耗し易くなる。ここで、芯部36による貴金属チップ38の冷却を促進するために、本体部30の先端部31における芯部36の割合を増大させる方法が考えられる。ところが、貴金属チップ38と母材35との溶接によって生じる溶融部(詳細は後述)に芯部36が接触すると、溶接の強度が低下する場合がある。そこで、後述の第5評価試験を行って、貴金属チップ38の消耗と溶接の強度とのバランスを取るような溶融部と芯部36との配置を検討した。
【0087】
まず、第5評価試験の説明で参照する二分断面について説明する。
図5、
図6は、レーザ溶接によって生じた溶融部を示す断面図である。図中には、
図4(A)に示す接地電極30bの二分断面のうちの、先端部31を含む一部分が示されている。
図5(A)には、2つの溶融部断面Ama、Amcが示され、
図6(A)には、1つの溶融部断面Amが示されている(溶融部断面Ama、Amc、Amには、ハッチングが付されている)。溶融部は、レーザ溶接によって形成される部分であり、母材35の成分と貴金属チップ38の成分とを含む部分である。このような溶融部は、溶融した母材35と溶融した貴金属チップ38とが混合することによって、形成される。
図5は、二分断面において、先端側(第1端30e1側)の溶融部断面Amaと後端側の溶融部断面Ambとが分離する場合の一例を示し、
図6は、二分断面において、1つの連続な溶融部断面Amが形成される場合の一例を示している。
【0088】
図5(A)、
図6(A)の第1面積S1は、二分断面における溶融部断面の面積を示している。
図5(A)の例では、第1面積S1は、第1溶融部断面Amaの面積S1aと、第2溶融部断面Ambの面積S1bとの合計である。
図6(A)の例では、第1面積S1は、溶融部断面Amの面積である。
【0089】
図中には、3つの位置Pa、Pb、Pcが示されている。第1位置Paは、溶融部断面に含まれる位置のうちの、対向面31tsiの延びる方向(ここでは、第2方向D2)の位置が最も第1端30e1に近い位置である。第2位置Pbは、溶融部断面に含まれる位置のうちの、第1方向D1の位置が最も中心電極20(図示略)から遠い位置である。第3位置Pcは、溶融部断面に含まれる位置のうちの、対向面31tsiの延びる方向(ここでは、第2方向D2)の位置が最も第1端30e1から遠い位置である。以下、これらの位置Pa、Pb、Pcを用いて、二分断面の構成について説明する。
【0090】
図中には、2つの直線L31、L32が示されている。第1直線L31は、二分断面上において対向面31tsiの延びる方向(ここでは、第2方向D2)と直交し、かつ、溶融部断面と重なる直線のうちの、最も先端側(第1端30e1側)の直線である。本実施例では、第1直線L31は、第1位置Paを通り、第1方向D1と平行な直線である。第2直線L32は、対向面31tsiの延びる方向(ここでは、第2方向D2)と直交し、かつ、溶融部断面と重なる直線のうちの、最も後端側の直線である。本実施例では、第2直線L32は、第3位置Pcを通り、第1方向D1と平行な直線である。
図5(B)、
図6(B)に示す第2面積S2は、本体部30(溶融部を含む)の断面のうちの、第1直線L31と第2直線L32とで挟まれた部分の面積である。
図5(B)、
図6(B)では、第2面積S2に対応する部分にハッチングが付されている。
【0091】
なお、
図5の例では、芯部36の断面は、第2直線L32よりも接地電極30bの先端側(第1端30e1側)まで延びている。また、芯部36(第1芯部36a1)の断面は、溶融部断面Ama、Ambのいずれとも接触していない。図中の最短距離Dmは、芯部36の断面と溶融部断面との間の最短距離である。なお、芯部36の断面が、溶融部断面Ama、Ambの少なくとも一方と接触してもよい。また、
図6の例では、芯部36の断面は、溶融部断面Amと接触している。ただし、芯部36の断面が、溶融部断面Amから離れていてもよい。
【0092】
C2.第5評価試験
第3実施例のスパークプラグ100bのサンプルを用いた第5評価試験について説明する。第5評価試験では、上述の第2評価試験と同様に、スパークプラグ100bを搭載した内燃機関を所定時間に亘って運転した後に、ギャップ距離Dgの増加量を測定し、二分断面の状態を観察した。接地電極30bには貴金属チップ38が設けられているので、ギャップ距離Dgの増加量が抑制されている。従って、内燃機関の運転時間を、第2評価試験よりも長い300時間に設定した。1サイクルの運転の内容は、第2評価試験と同じである。すなわち、1サイクルの運転は、1分間のアイドル運転と、1分間のスロットル全開運転と、で構成されている。アイドル運転時の接地電極30bの最高温度は、おおよそ摂氏300度であり、スロットル全開運転時の接地電極30bの最高温度は、おおよそ摂氏1000度である。
【0093】
第5評価試験では、14個のスパークプラグ100bのサンプルを準備した。14個のサンプルは、2つのグループに分けられる。2つのグループの間では、本体部30の寸法と、貴金属チップ38の径とが、互いに異なっている。後述するように、第1グループのサンプル数は「8」であり、第2グループのサンプル数は「6」である。なお、いずれのサンプルに関しても、母材35の材料は、インコネルであり、芯部36の材料は、純銅である。以下に、各グループ内で共通な寸法を示す(各寸法の符号については、
図4、
図5、
図6を参照)。
【0094】
<第1グループ>
1)テーパ端部31tの第1端30e1の第3方向D3の幅Da :1.2mm
この幅Daは、対向面31tsiの上底Ubの長さと同じである。
2)テーパ端部31tのD2方向の長さDb :2.5mm
3)先端部31(テーパ端部31tを除く)の第3方向D3の幅Dc :2.8mm
この幅Dcは、対向面31tsiの下底Lbの長さと同じである。
4)先端部31の第1方向D1の厚さDt :1.6mm
5)貴金属チップ38の外径Dd8 :1.0mm
6)2本の直線L31、L32の間の距離DL :1.6mm
7)貴金属チップ38とエッジラインL11との間の最短距離Dm8 :0.4mm
8)中心電極20の先端面20s1の直径Dd :0.8mm
9)下底Lbと先端面20s1の中心CLとの第2方向D2の距離Dsb:1.0mm
下底Lbは、先端面20s1の中心CLよりも、−D2側に配置されている。
10)ギャップ距離Dg :1.0mm
11)
図2(D)のエッジ距離Deに相当する距離 :1.2mm
【0095】
<第2グループ>
1)テーパ端部31tの第1端30e1の第3方向D3の幅Da :1.0mm
この幅Daは、対向面31tsiの上底Ubの長さと同じである。
2)テーパ端部31tのD2方向の長さDb :2.0mm
3)先端部31(テーパ端部31tを除く)の第3方向D3の幅Dc :2.2mm
この幅Dcは、対向面31tsiの下底Lbの長さと同じである。
4)先端部31の第1方向D1の厚さDt :1.1mm
5)貴金属チップ38の外径Dd8 :1.2mm
6)2本の直線L31、L32の間の距離DL :1.8mm
7)貴金属チップ38とエッジラインL11との間の最短距離Dm8 :0.3mm
8)中心電極20の先端面20s1の直径Dd :0.6mm
9)下底Lbと先端面20s1の中心CLとの第2方向D2の距離Dsb:0.5mm
下底Lbは、先端面20s1の中心CLよりも、−D2側に配置されている。
10)ギャップ距離Dg :1.0mm
11)
図2(D)のエッジ距離Deに相当する距離 :1.2mm
【0096】
なお、
図2(B)の最短距離Wmに相当する距離は、いずれのサンプルにおいても、0.2mm以上、1.5mm以下であった。
【0097】
以下に示す表4は、第1グループの8個のサンプル(1番〜8番)のそれぞれの構成と評価結果とを示している。表5は、第2グループの6個のサンプル(9番〜14番)のそれぞれの構成と評価結果とを示している。
【0100】
表4、表5中には、サンプルの番号と、第1面積S1と、第2面積S2と、面積比Srと、最短距離Dmと、芯位置と、剥離評価と、ギャップ増加量dDgと、消耗評価と、が示されている。面積比Srは、第1面積S1を第2面積S2で割った比率である。「芯位置」は、二分断面(
図5、
図6)における芯部36の先端36tの位置を示している。「Pb−Pc間」は、先端36tの第2方向D2の位置が、第2位置Pbと第3位置Pc(すなわち、第2直線L32)との間であることを示している。「接触」は、芯部36の断面が溶融部断面と接触していることを示している。「Pcより手前」は、先端36tの第2方向D2の位置が、第3位置Pc(すなわち、第2直線L32)よりも−D2側であることを示している。「Pc直下」は、先端36tが、第2直線L32上に配置されていることを示している。
【0101】
剥離評価に関しては、A評価は、
図5、
図6に示す二分断面における貴金属チップ38と母材35との境界ラインBLに生じた酸化部分の長さが、境界ラインBLの長さの50%未満であることを示している。B評価は、酸化部分の長さが、境界ラインBLの長さの50%以上である、または、貴金属チップ38が母材35aから剥離したことを示している。表4、表5に示すように、2番と10番のサンプルで剥離が生じた。6番のサンプルでは、剥離は生じないものの、酸化部分の長さが境界ラインBLの長さの50%以上であった。消耗評価に関しては、A評価は、ギャップ増加量dDgが0.2mm未満であることを示し、B評価は、ギャップ増加量dDgが0.2mm以上であることを示している。この閾値0.2mmは、上記の第2評価試験の閾値0.3mmよりも小さい。すなわち、第5評価試験では、第2評価試験と比べて、厳しい条件下で、消耗評価が行われている。
【0102】
表4、表5に示すように、同じグループの複数のサンプルの間では、第1面積S1と最短距離Dmと芯位置とが異なり得る。第1面積S1の変化は、レーザ溶接の条件(例えば、レーザ光の照射時間)を調整することによって、実現されている。最短距離Dmと芯位置との変化は、レーザ溶接の条件と、接地電極30bの形成の条件と、を調整することによって、実現されている。なお、各サンプルの二分断面の構成は、第1面積S1等に応じて、
図5のタイプ、または、
図6のタイプであり得る。
【0103】
図7は、表4、表5に示す結果をまとめて示したグラフである。横軸は、面積比Sr(S1/S2)を示し、縦軸は、芯位置の概略を示している。図中の丸印は、剥離評価と消耗評価との両方がA評価であったサンプルを示し、X印は、剥離評価と消耗評価との少なくとも一方がB評価であったサンプルを示している。印の近くに付された数字は、その印のサンプルの番号を示している。
【0104】
まず、面積比Srが1/3よりも小さい場合について説明する。2番、6番、10番のサンプルが示すように、面積比Srが1/3よりも小さく、かつ、芯部36の断面が溶融部断面と接触する場合には、剥離評価がB評価である。この理由は、以下のように推定される。すなわち、面積比Srが小さい場合には、溶融部断面が相対的に小さいので、溶接の強度が弱くなる。さらに、溶融部に芯部36が接触することによって、溶融部に、さらに、芯部36の成分が含まれている。この結果、溶融部の強度が低下し得る。この結果、貴金属チップ38と母材35との境界部分の消耗(例えば、酸化)が進行し易くなる。
【0105】
3番のサンプルが示すように、面積比Srが1/3よりも小さく、かつ、芯部36の先端36tが第3位置Pcよりも手前に配置される場合には、消耗評価がB評価である。この理由は、以下のように推定される。すなわち、第2直線L32よりも先端側には芯部36が配置されていないので、先端部31の温度が高くなり易い。この結果、貴金属チップ38が消耗し易くなる。
【0106】
1番、4番、5番、9番のサンプルが示すように、面積比Srが1/3よりも小さく、かつ、芯部36の断面が溶融部断面と接触せず、かつ、芯部36の先端36tが第3位置Pcよりも先端側(すなわち、第2直線L32よりも第1端30e1側)に配置される場合には、剥離評価と消耗評価との両方が、A評価である。このように、面積比Srが1/3よりも小さい場合には、芯部36の断面が溶融部断面と接触せず、かつ、芯部36の先端36tが第2直線L32よりも第1端30e1側に配置されることが好ましい。
図7中では、この好ましい構成の範囲R1が、ハッチングの無い領域で示されている。
【0107】
次に、面積比Srが1/3以上である場合について説明する。7番、11番、13番のサンプルが示すように、面積比Srが1/3以上であり、かつ、芯部36の先端36tが第2位置Pbと第3位置Pcとの間に配置されている(すなわち、芯部36の断面が溶融部断面から離れている)場合には、消耗評価がB評価である。この理由は、以下のように,推定される。すなわち、溶融部には、母材35の成分に加えて、貴金属チップ38の成分が含まれている。従って、溶融部の熱伝導率は、母材35の熱伝導率よりも、低くなり得る。また、面積比Srが大きい場合には、溶融部断面が相対的に大きく、溶融部を除いた母材35の断面が相対的に小さくなる。従って、母材35による先端部31の冷却の効果が小さくなる。以上の結果、先端部31の温度が高くなり易いので、貴金属チップ38が消耗し易くなる。
【0108】
8番、12番、14番のサンプルが示すように、面積比Srが1/3以上であり、かつ、芯部36の断面が溶融部断面と接触する場合には、剥離評価と消耗評価との両方が、A評価である。この理由は、以下のように推定される。すなわち、面積比Srが大きい場合には、溶接強度が強くなる。従って、芯部36の断面が溶融部断面と接触して、溶融部に芯部36の成分が含まれている場合であっても、貴金属チップ38と母材35との十分な溶接強度を実現できる。また、面積比Srが大きいものの、芯部36の断面が溶融部断面と接触しているので、芯部36による先端部31の冷却の効果を向上できる。この結果、貴金属チップ38の消耗を抑制できる。このように、面積比Srが1/3以上である場合には、芯部36の断面が溶融部断面と接触していることが好ましい。
図7中では、この好ましい構成の範囲R2が、ハッチングの無い領域で示されている。
【0109】
なお、一般的に、芯部36の先端36tが第2直線L32よりも第1端30e1側に配置される場合には、そうではない場合と比べて、芯部36による先端部31の冷却の効果が高い。また、面積比Srが比較的小さい場合には、面積比Srが比較的大きい場合と比べて、接地電極30bの熱伝導性の低下を抑制できる。ここで、芯部36を溶融部から離すことによって、貴金属チップ38と母材35との接合強度が低下することを抑制できる。また、面積比Srが比較的大きい場合には、面積比Srが比較的小さい場合と比べて、貴金属チップ38と母材35との接合強度を強くできる。ここで、芯部36を溶融部と接触させることによって、接地電極30bの熱伝導性の低下を抑制できる。以上の種々の特性は、接地電極30bの種々の要素のそれぞれの寸法や、芯部36の構成に拘わらずに、実現され得る。従って、二分断面の上記の好ましい構成は、第5評価試験で用いたスパークプラグのサンプルに限らず、種々のスパークプラグに適用できると推定される。例えば、接地電極30a(
図3)と接地電極30aに固定された貴金属チップ38とを備えるスパークプラグに、上記の好ましい構成を適用してもよい。この場合、
図3の接地電極30aが、接地電極の本体部に対応する。
【0110】
D.変形例:
(1)接地電極の構成としては、上記各実施例の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、テーパ面31ts1、31ts2の少なくとも一方が、中心軸CLに対して平行ではなく傾斜してもよい。例えば、2つのテーパ面31ts1、31ts2の間の距離(第3方向D3と平行な距離)が、第1方向D1に向かって徐々に広くなるように、2つのテーパ面31ts1、31ts2が中心軸CLに対して傾斜していてもよい。
【0111】
また、接地電極30、30a、30bの要素の材料としては、上述した材料に限らず、種々の材料を採用可能である。例えば、母材35、35aの材料としては、インコネルに限らず、他のニッケル合金や純ニッケル等の耐熱性に優れた種々の材料を採用可能である。
【0112】
(2)貴金属チップ38の材料としては、イリジウムを含む合金に限らず、他の種々の貴金属(例えば、白金)を含む材料を採用可能である。また、中心電極20に、ギャップgを形成する貴金属チップが設けられていてもよい。
【0113】
(3)スパークプラグの構成としては、上記各実施例の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、中心電極20の先端面20s1の外径Ddが、中心軸CLと平行な方向を向いて見た場合の接地電極30、30a、30bの幅(接地電極の延びる方向と垂直な方向の幅)よりも大きくてもよい。いずれの場合も、中心軸CLと平行な方向を向いて見た場合に、中心電極20の先端面20s1の一部が、接地電極30、30a、30bと重なる範囲の外に、配置されてもよい。また、上記各実施例において、テーパ端部31tの対向面31tsiの下底Lbは、中心軸CLの+D2側に配置されてもよく、中心軸CLの−D2側に配置されてもよい。
【0114】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。