(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2に記載された火花を遮断するための回路は、一次コイルと通電用のスイッチング素子との接続部に接続する必要があるため(
図10の接続部83a、
図12の接続部83bを参照)、通電用のスイッチング素子(イグナイタ)を内蔵するタイプの点火コイル(
図3の点火コイル20aを参照)に適用することが困難であった。また、特許文献3に記載の回路には、一次コイルと直流電源との間にスイッチング素子が設けられているため(
図14参照)、複数の点火コイル間で電源ハーネスを共通化することが困難であり、多気筒の内燃機関に適用する場合に部品点数が増加してしまうという問題があった(
図16参照)。これらの課題に鑑み、火花放電を強制的に遮断可能であり、かつ、汎用性が高く、部品点数を削減可能な点火制御装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、一次コイルと二次コイルとを有する点火コイルを介して接続されたスパークプラグの火花放電を制御する点火制御装置であって、
直流電源に接続された前記一次コイルのグランド側に接続され前記直流電源から前記一次コイルに流れる一次電流をオンオフする第1スイッチング部と、グランドと、の間に接続された第2スイッチング部と、
前記第1スイッチング部と前記第2スイッチング部との間の第1接続部と、前記直流電源と前記一次コイルとの間の第2接続部との間に接続され、前記第1接続部から前記第2接続部に電流が流れることを許容し、前記第2接続部から前記第1接続部に電流が流れることを抑制する整流素子と、
前記第1スイッチング部と前記第2スイッチング部とを制御して、前記火花放電を発生させた後、前記火花放電を強制的に遮断する制御を行う点火制御部と、
を備え、
前記点火制御部は、
前記第1スイッチング部および前記第2スイッチング部をオンにして前記一次コイルに通電させる第1の処理と、
前記第1の処理後に、前記第1スイッチング部をオフにし、前記二次コイルに高電圧を発生させて前記スパークプラグを火花放電させる第2の処理と、
前記火花放電の最中に、前記第2スイッチング部がオフの状態で、前記第1スイッチング部をオンにすることで、前記一次コイルに発生する電流を前記整流素子に流して前記火花放電を強制的に終了させる第3の処理と、を実行する、点火制御装置である。また、本発明は、以下の形態としても実現できる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、一次コイルと二次コイルとを有する点火コイルを介して接続されたスパークプラグの火花放電を制御する点火制御装置が提供される。この点火制御装置は、直流電源に接続された前記一次コイルのグランド側に接続され前記直流電源から前記一次コイルに流れる一次電流をオンオフする第1スイッチング部と、グランドと、の間に接続された第2スイッチング部と;前記第1スイッチング部と前記第2スイッチング部との間の第1接続部と、前記直流電源と前記一次コイルとの間の第2接続部との間に接続され、前記第1接続部から前記第2接続部に電流が流れることを許容し、前記第2接続部から前記第1接続部に電流が流れることを抑制する整流素子と;前記第1スイッチング部と前記第2スイッチング部とを制御して、前記火花放電を発生させた後、前記火花放電を強制的に遮断する制御を行う点火制御部と、を備えることを特徴とする。このような形態の点火制御装置であれば、火花放電中に、第2スイッチング部がオフにされた状態で第1スイッチング部をオンにするだけで、一次コイルと整流素子との間に再通電電流が流れ、火花放電を強制的に遮断することができる。よって、火花放電を強制的に遮断する回路を簡易な構成で実現することができる。また、このような点火制御装置であれば、第2スイッチング部を、第1スイッチング部(イグナイタ)とグランドとの間に接続することで、火花放電を強制的に遮断する構成とすることができる。そのため、点火コイルがイグナイタ(第1スイッチング部)を内蔵するタイプであっても、点火コイルに改変を加えることなく、点火制御装置を点火コイルに接続することができるので、汎用性の高い点火制御装置を提供することができる。更に、上記形態の点火制御装置であれば、点火コイルと直流電源との間にスイッチング素子などの素子を設ける必要がないので、当該点火制御装置を多気筒の内燃機関に適用する場合であっても、直流電源を各点火コイルに対して共通して接続することができる。そのため、複数の点火コイル間で電源ハーネスを共通化することが可能となり、部品点数を削減することができる。
【0007】
(2)上記形態の点火制御装置において、前記点火制御部は、前記第1スイッチング部および前記第2スイッチング部をオンにして前記一次コイルに通電させる第1の処理と;前記第1の処理後に、前記第1スイッチング部をオフにし、前記二次コイルに高電圧を発生させて前記スパークプラグを火花放電させる第2の処理と;前記火花放電の最中に、前記第2スイッチング部がオフの状態で、前記第1スイッチング部をオンにすることで、前記一次コイルに発生する電流を前記整流素子に流して前記火花放電を強制的に終了させる第3の処理と、を実行してもよい。このような形態の点火制御装置であれば、火花放電中に、第2スイッチング部がオフの状態で第1スイッチング部をオンにするだけで、火花放電を強制的に遮断することができる。
【0008】
(3)上記形態の点火制御装置は、更に、前記第1の処理において前記一次コイルに流れる一次電流を検出して前記点火制御部に伝達する電流検出部を備えてもよく、前記点火制御部は、伝達された前記一次電流に応じて前記第2スイッチング部をオンオフ制御することで、前記第1の処理において前記一次コイルに流れる一次電流の最大値を一定範囲内に制御してもよい。このような形態の点火制御装置であれば、スパークプラグを火花放電させるために点火コイルに蓄積するエネルギをほぼ一定にすることができる。よって、スパークプラグの省電力化および長寿命化をより促進することができる。
【0009】
(4)上記形態の点火制御装置は、更に、前記第1の処理において前記一次コイルに流れる一次電流を検出し、前記一次電流に応じて前記第2スイッチング部をオンオフ制御することで、前記第1の処理において前記一次コイルに流れる一次電流の最大値を一定範囲内に制御する電流制御部、を備えてもよい。このような形態の点火制御装置であっても、スパークプラグを火花放電させるために点火コイルに蓄積するエネルギをほぼ一定にすることができる。よって、スパークプラグの省電力化および長寿命化をより促進することができる。
【0010】
(5)上記形態の点火制御装置において、前記点火制御部は、前記第2の処理において、前記第1スイッチング部をオフにするタイミングよりも遅いタイミングで、前記第2スイッチング部をオフしてもよい。このような形態の点火制御装置であれば、第1スイッチング部よりも先に第2スイッチング部がオフになることを抑制することができるので、火花放電のためのエネルギを点火コイルに十分に蓄積させることができる。
【0011】
(6)上記形態の点火制御装置において、前記点火制御部は、前記第3の処理において前記第1スイッチング部をオンするタイミングよりも早いタイミングで、前記第2スイッチング部をオフしてもよい。このような形態の点火制御装置であれば、第2スイッチング部のオフ動作の遅れを回避することができるので、第1スイッチング部をオンにする際に第2スイッチング部を確実にオフにすることができる。よって、再通電電流が確実に整流素子に流れ、タイミング良く火花放電を遮断することができる。
【0012】
(7)上記形態の点火制御装置において、前記一次コイルと前記二次コイルと前記スパークプラグとが、内燃機関の気筒毎に備えられており、前記直流電源は、前記各一次コイルに共通して接続され、前記第1スイッチング部と前記第2スイッチング部と前記整流素子とは、前記一次コイル毎に設けられ、前記点火制御部は、前記各第1スイッチング部と前記各第2スイッチング部とを制御して、前記気筒毎に、前記火花放電を発生させた後、前記火花放電を強制的に遮断する制御を行ってもよい。このような形態の点火制御装置であれば、気筒ごとに備えられた一次コイルに対して共通して直流電源を接続することができる。よって、電源ハーネスを各点火コイルに対して共通化することができ、部品点数を削減することが可能になる。
【0013】
本発明は、上述した点火制御装置としての形態に限らず、点火制御装置と点火コイルとを備える点火装置や、点火制御装置と点火コイルとスパークプラグとを備える点火システムなど、種々の形態によって実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態としての点火制御装置10を含む点火システム100の概略構成を示す説明図である。点火システム100は、点火制御装置10と、点火コイル20と、スパークプラグ30と、直流電源40と、を備えている。点火システム100は、車両に搭載され、内燃機関に取り付けられたスパークプラグ30の火花放電を制御する。直流電源40としては、例えば、車両に搭載された鉛蓄電池が用いられる。
【0016】
点火コイル20は、一次コイル21と二次コイル22とダイオード23とを備えている。一次コイル21の一端と二次コイル22の一端とは、電気的に接続されており、共に直流電源40に接続されている。二次コイル22の他端には、ダイオード23を介してスパークプラグ30の中心電極が接続されている。本実施形態では、ダイオード23のカソード端子が、二次コイル22に接続されており、ダイオード23のアノード端子がスパークプラグ30に接続されている。よって、ダイオード23は、火花放電時に、スパークプラグ30から二次コイル22に向かって電流を流し、二次コイル22からスパークプラグ30へ電流が流れることを防止する。
【0017】
点火制御装置10は、第1スイッチング部11と第2スイッチング部12と整流素子13と点火制御部14とを備えている。
【0018】
第1スイッチング部11は、一次コイル21のグランド50側の端子と、後述する第2スイッチング部12と、の間に接続されている。第1スイッチング部11は、点火制御部14から出力される制御信号Vaに基づいて、直流電源40から一次コイル21に流れる一次電流をオンオフする。本実施形態では、第1スイッチング部11として、NPN型のトランジスタが用いられる。第1スイッチング部11のベース端子には、点火制御部14が接続されている。また、第1スイッチング部11のコレクタ端子には、前述した一次コイル21が接続されている。第1スイッチング部11のエミッタ端子には、後述する第2スイッチング部12が接続される。なお、トランジスタとしては、一般的なバイポーラ型のトランジスタの他、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)や、ユニポーラ型のトランジスタ(電界効果トランジスタ)を用いることも可能である。
【0019】
第2スイッチング部12は、第1スイッチング部11とグランド50との間に接続されている。第2スイッチング部12は、点火制御部14から出力される制御信号Vbに基づいて、第1スイッチング部11とグランド50との間の導通をオンオフする。本実施形態では、第2スイッチング部12として、NPN型のトランジスタが用いられる。第2スイッチング部12のベース端子には、点火制御部14が接続されている。第2スイッチング部12のコレクタ端子には、第1スイッチング部11のエミッタ端子が接続されている。第2スイッチング部12のエミッタ端子はグランド50に接続されている。
【0020】
整流素子13は、第1スイッチング部11と第2スイッチング部12との接点である第1接続部81と、直流電源40と一次コイル21との接点である第2接続部82と、の間に接続されている。つまり、整流素子13は、一次コイル21に並列的に接続されている。本実施形態では、整流素子13としてダイオードが用いられる。整流素子13のカソード端子は、第2接続部82に接続され、整流素子13のアノード端子は、第1接続部81に接続されている。そのため、整流素子13は、第1接続部81から第2接続部82に向かって電流が流れることを許容し、第2接続部82から第1接続部81に電流が流れることを抑制する。なお、整流素子13としては、ダイオード以外にも、例えば、サイリスタを用いることが可能である。
【0021】
点火制御部14は、CPUやメモリを備えるコンピュータとして構成されている。点火制御部14は、図示していないECU(エンジンコントロールユニット)からの指令に応じて、第1スイッチング部11と第2スイッチング部12とを制御して、スパークプラグ30の火花放電の制御、および、火花放電を強制的に遮断する制御を行う。
【0022】
図2は、点火制御部14によって実行される点火制御のタイミングチャートである。
図2には、上段から順に、制御信号Va、制御信号Vb、電流Ia、電流Ib、電圧Vc、電流Icの波形が示されている。
図2の各タイミングチャートでは、縦軸は、信号(電圧または電流)の大きさを示し、横軸は、時間の経過を示す。電流Iaは、
図1に示しているように、直流電源40から一次コイル21と第1スイッチング部11と第2スイッチング部12とを通ってグランド50に流れる電流を表す。電流Ibは、一次コイル21と第1スイッチング部11と整流素子13とによって構成されるループ回路を流れる電流を表す。電流Icは、グランド50からスパークプラグ30とダイオード23と二次コイル22とを通って直流電源40に流れる電流を表す。電圧Vcは、スパークプラグ30の中心電極と接地電極との間に生じる電圧を表す。
【0023】
本実施形態における点火制御では、まず、点火制御部14は、内燃機関の点火時期T2よりも前のタイミングである通電開始時期T1において第1の処理を実行する。この第1の処理は、第1スイッチング部11および第2スイッチング部12をオンにして一次コイル21に通電させ、点火コイル20に火花放電のためのエネルギを蓄積させる処理である。この第1の処理では、具体的には、点火制御部14は、通電開始時期T1において制御信号VaおよびVbを、ローレベルからハイレベルに切り替えることで、第1スイッチング部11および第2スイッチング部12をオンにする。そうすると、直流電源40から一次コイル21に一次電流Iaが流れる。一次電流Iaは、
図2に示すように、通電時間が長くなるほど大きくなる。一次電流を流す通電期間TT(第1スイッチング部11をオンにする期間)は、内燃機関のあらゆる運転条件下で混合気に着火させることが可能な電気エネルギを点火コイル20に蓄積するために必要な時間であり、予め定められた時間である。
【0024】
続いて、点火制御部14は、内燃機関の点火時期T2において、第2の処理を実行する。この第2の処理は、第1スイッチング部11をオフにすることで、二次コイル22に高電圧を発生させてスパークプラグ30を火花放電させる処理である。この第2の処理では、具体的には、点火制御部14は、通電開始時期T1から通電期間TTが経過した後の点火時期T2において、制御信号Vaをハイレベルからローレベルに切り替えることにより、第1スイッチング部11をオフにする。そうすると、一次コイル21を流れていた一次電流Iaの流れが遮断されるため、二次コイル22に誘導電圧Vcが発生し、スパークプラグ30がその誘導電圧Vcによって火花放電する。
【0025】
点火制御部14は、この第2の処理において、第1スイッチング部11をオフにしたタイミングよりも遅いタイミングで第2スイッチング部12をオフにする。遅延させる期間Δt1は、第1スイッチング部11の固体に応じた動作遅れを回避可能な時間(例えば、10μ秒)である。このように、第1スイッチング部11をオフにするタイミングよりも遅いタイミングで第2スイッチング部12をオフにすれば、第2スイッチング部12が第1スイッチング部11よりも早くオフしてしまうことを抑制することができるので、火花放電のためのエネルギを点火コイル20に十分に蓄積させることができる。
【0026】
また、この第2スイッチング部12をオフにするタイミングは、後述する第3の処理において第1スイッチング部11がオンにされるよりも早いタイミングである。早める期間Δt2は、後述する第3の処理において、第1スイッチング部11をオンにする際に、確実に、第2スイッチング部12をオフにしておくために、第2スイッチング部12の固体に応じた動作遅れを回避可能な期間(例えば、10μ秒)である。このように、第3の処理において第1スイッチング部11がオンにされるよりも早いタイミングで第2スイッチング部12がオフにされれば、第1スイッチング部をオンにする際に第2スイッチング部を確実にオフにすることができるので、再通電電流を確実に整流素子13に流して火花放電をタイミング良く遮断することができる。
【0027】
なお、第1スイッチング部11や第2スイッチング部12に動作遅れが生じないと仮定すれば、第2の処理において、第1スイッチング部11をオフにするのと同時に第2スイッチング部12をオフにしてもよい。また、第3の処理において、第1スイッチング部11をオンにするのと同時に第2スイッチング部12をオフにしてもよい。つまり、第1の処理後に第2スイッチング部12をオフにするタイミングは、第1スイッチング部11がオフにされるタイミングT2から第1スイッチング部11がオンにされるタイミングT3までの間で、点火システム100が正常に動作可能な任意のタイミングである。
【0028】
第2の処理によって、スパークプラグ30が火花放電すると、点火制御部14は、火花放電の最中のタイミングT3において第3の処理を実行する。この第3の処理は、第2スイッチング部12がオフの状態で第1スイッチング部11をオンにすることで、一次コイル21に発生する電流を整流素子13に流して火花放電を強制的に終了させる処理である。この第3の処理では、具体的には、点火制御部14は、制御信号Vbがローレベルの状態で、制御信号Vaをハイレベルに切り替える。そうすると、第2スイッチング部12がオフの状態で、第1スイッチング部11がオンになるため、整流素子13と一次コイル21と第1スイッチング部11とによってループ回路が構成される。このとき、二次コイル22に流れる二次電流Icによって一次コイル21に誘導電圧が発生するため、この誘導電圧により生じた再通電電流Ibが、そのループ回路に流れる。そうすると、再通電電流Ibが整流素子13や一次コイル21によって消費され、スパークプラグ30に印加されていたエネルギ(電圧Vcおよび電流Ic)が強制的に遮断される。第3の処理では、再通電電流Ibがゼロになると、タイミングT4において、制御信号Vaがハイレベルからローレベルになり、第1スイッチング部11がオフにされる。なお、第3の処理が開始されるタイミングT3(火花放電を終了させるタイミング)は、内燃機関の現在の運転条件に基づいて、最適なタイミングがECU(または点火制御部14)によって算出される。
【0029】
以上説明した第1実施形態によれば、点火制御装置10に、第1スイッチング部11と第2スイッチング部12と、整流素子13とを設けることにより、スパークプラグ30の火花放電を強制的に遮断することができる回路を構成することができる。そのため、極めて簡易な構成によって、スパークプラグ30の省電力化および長寿命化を図ることができる。
【0030】
B.第2実施形態:
図3は、本発明の第2実施形態としての点火制御装置10aを含む点火システム100aの概略構成を示す説明図である。点火システム100aは、点火制御装置10aと、点火コイル20aと、スパークプラグ30と、直流電源40と、を備えている。
【0031】
第2実施形態と第1実施形態とで異なる点は、第1実施形態では、点火制御装置10が第1スイッチング部11を備えているのに対して、第2実施形態では、点火コイル20aが第1スイッチング部11を備えている点である。第1スイッチング部11は、イグナイタとも呼ばれる。このイグナイタを内蔵する点火コイル20aのことを、一般的にイグナイタ内蔵タイプの点火コイルという。
【0032】
本実施形態では、点火コイル20aに備えられた第1スイッチング部11のエミッタ端子に、点火制御装置10aに備えられた第2スイッチング部12のコレクタ端子と、整流素子13のアノード端子とが接続される。そして、点火コイル20aに備えられた一次コイル21の直流電源40側に、点火制御装置10aに備えられた整流素子13のカソード端子が接続される。つまり、本実施形態の点火制御装置10aは、イグナイタ内蔵タイプの点火コイル20aに改変を加えることなく容易に点火コイル20aに接続することができる。
【0033】
C.第3実施形態:
図4は、本発明の第3実施形態としての点火制御装置10bを含む点火システム100bの概略構成を示す説明図である。点火システム100bは、点火制御装置10bと、複数の点火コイル201,202,203と、複数のスパークプラグ301,302,303と、1つの直流電源40と、を備えている。
【0034】
第3実施形態と第1実施形態とで異なる点は、第1実施形態では、点火システム100が、点火コイル20とスパークプラグ30とをそれぞれ1つずつ備えているのに対して、第3実施形態では、点火システム100bが、複数の点火コイル201,202,203と、複数のスパークプラグ301,302,303とを備えている点である。
図4に示すように、点火コイル201の二次コイル側には、スパークプラグ301が接続され、点火コイル202の二次コイル側にはスパークプラグ302が接続され、点火コイル203の二次コイル側にはスパークプラグ303が接続されている。各スパークプラグ301,302,303は、内燃機関の1気筒につき1つ取り付けられる。
図4には、点火システム100bが、3気筒の内燃機関に搭載された例を示している。
【0035】
点火制御装置10bは、点火制御部14bと、3つの第1スイッチング部111,112,113と、3つの第2スイッチング部121,122,123と、3つの整流素子131,132,133と、を備えている。点火コイル201には、第1スイッチング部111と、第2スイッチング部121と、整流素子131とが、
図1に示した第1実施形態と同様の回路によって接続されている。点火コイル202には、第1スイッチング部112と第2スイッチング部122と整流素子132とが、
図1に示した第1実施形態と同様の回路によって接続されている。点火コイル203には、第1スイッチング部113と第2スイッチング部123と整流素子133とが、
図1に示した第1実施形態と同様の回路によって接続されている。点火制御部14bは、3つの第1スイッチング部111,112,113に対して、個別に制御信号Va1,Va2,Va3を出力し、3つの第2スイッチング部121,122,123に対して、個別に制御信号Vb1,Vb2,Vb3を出力する。本実施形態では、点火コイル201,202,203の一次コイル側が、1つの直流電源40に対して共通の電源ハーネス90によって接続されている。
【0036】
図5は、第3実施形態において実行される点火制御のタイミングチャートである。
図5には、3つのスパークプラグのうち、2つのスパークプラグに対する点火制御のタイミングチャートを代表して示している。この
図5に示すように、本実施形態では、
図2に示した第1実施形態のタイミングチャートと同様の制御が、各スパークプラグに対して、それぞれの点火時期に応じた周期で行われる。
【0037】
以上で説明した第3実施形態によれば、直流電源40に接続された1本の電源ハーネス90に対して、複数の点火コイル20を共通して接続することができる。そのため、点火システム100bの部品点数を削減することができる。
【0038】
なお、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、各点火コイル201(202,203)が、それぞれ、第1スイッチング部111(112,113)を備えることにより、イグナイタ内蔵タイプとして構成されてもよい。この場合、点火制御装置10bは、第1スイッチング部111,112,113を備えない構成となる。
【0039】
D.第4実施形態:
図6は、本発明の第4実施形態としての点火制御装置10cを含む点火システム100cの概略構成を示す説明図である。点火システム100cは、第1実施形態と同様に、点火制御装置10cと点火コイル20とスパークプラグ30と直流電源40とを備えている。
【0040】
第4実施形態と第1実施形態とで異なる点は、第4実施形態の点火制御装置10cに、第1実施形態にはない電流検出部60が備えられている点である。電流検出部60は、整流素子13のカソード端子と一次コイル21の間に設けられた抵抗器61(抵抗値R)に並列的に接続され、この抵抗器61に流れる電流を検出する回路である。電流検出部60は、抵抗器61に流れる電流を検出すると、その電流値Iaに応じた電圧値Vd(=R*Ia)を点火制御部14cに出力する。点火制御部14cは、この電圧値Vdに応じて、第2スイッチング部12をオンオフ制御する。
【0041】
図7は、点火制御部14cによって実行される点火制御のタイミングチャートである。本実施形態では、
図7に示すように、電流値Ia(電圧値Vd)が予め定められた値に到達すると、点火制御部14cは、制御信号Vbを一定の周期でオンオフさせる。そうすると、電流値Iaの最大値が、一定範囲内に収まるよう制限される。このように、電流値Iaの最大値が制限されれば、点火コイル20に蓄積するエネルギをほぼ一定にすることができる。よって、スパークプラグ30の省電力化および長寿命化をより促進することができる。
【0042】
なお、第4実施形態においても、第2実施形態と同様に、点火コイル20が、第1スイッチング部11を備えることにより、イグナイタ内蔵タイプとして構成されてもよい。この場合、点火制御装置10cは、第1スイッチング部11を備えない構成となる。また、第4実施形態においても、第3実施形態と同様に、1つの点火制御装置10cに対して、複数の点火コイル20およびスパークプラグ30が接続されてもよい。この場合、電流検出部60は、各点火コイルに対してそれぞれ用意されることになる。もちろん、第4実施形態に対して、第2実施形態と第3実施形態の両方を適用することも可能である。
【0043】
E.第5実施形態:
図8は、本発明の第5実施形態としての点火制御装置10dを含む点火システム100dの概略構成を示す説明図である。点火システム100dは、第1実施形態と同様に、点火制御装置10dと点火コイル20とスパークプラグ30と直流電源40と、を備えている。
【0044】
第5実施形態と第1実施形態とで異なる点は、第5実施形態の点火制御装置10dに、第1実施形態にはない電流制御部70が備えられている点である。電流制御部70は、整流素子13のカソード端子と一次コイル21の間に設けられた抵抗器71(抵抗値R1)に並列的に接続され、この抵抗器71に流れる電流を検出する。電流制御部70は、抵抗器71に流れる電流を検出し、その電流値Iaが所定の値を超えると、一定の周期でオンオフする電圧信号Veを、抵抗器72を介して第3スイッチング部73に出力する。
【0045】
第3スイッチング部73は、本実施形態では、NPN型のトランジスタによって構成されている。電流制御部70は、抵抗器72を介して、第3スイッチング部73のベース端子に接続されている。第3スイッチング部73のコレクタ端子は、第2スイッチング部12のベース端子と点火制御部14とを接続する電路に接続されている。第3スイッチング部73のエミッタ端子は、グランド50に接続されている。このような回路構成によれば、第3スイッチング部73が電流制御部70によってオフにされると、点火制御部14からの制御信号Vbの電圧値にかかわらず、第2スイッチング部12のベース端子がローレベルとなり、第2スイッチング部12がオフにされる。
【0046】
図9は、第5実施形態において実行される点火制御のタイミングチャートである。本実施形態では、
図9に示すように、電流値Iaが予め定められた値に到達すると、電流制御部70が、電圧信号Veを一定の周期でオンオフさせる。そうすると、第3スイッチング部73もオンオフされ、これに伴い、第2スイッチング部12もオンオフされる。そうすると、一次電流Iaの最大値が、一定範囲内に制限される。このように、本実施形態によっても、第4実施形態と同様に、電流値Iaの最大値が、一定範囲内に収まるよう制限される。このように、電流値Iaの最大値が制限されれば、点火コイル20に蓄積するエネルギをほぼ一定にすることができる。よって、スパークプラグ30の省電力化および長寿命化をより促進することができる。
【0047】
なお、第5実施形態においても、第2実施形態と同様に、点火コイル20が、第1スイッチング部11を備えることにより、イグナイタ内蔵タイプとして構成されてもよい。この場合、点火制御装置10dは、第1スイッチング部11を備えない構成となる。また、第5実施形態においても、第3実施形態と同様に、1つの点火制御装置10dに対して、複数の点火コイル20およびスパークプラグ30が接続されてもよい。この場合、電流制御部70は、各点火コイルに対してそれぞれ用意されることになる。もちろん、第5実施形態に対して、第2実施形態と第3実施形態の両方を適用することも可能である。
【0048】
F.実施形態と比較例との対比:
F1.第1比較例:
図10は、第1比較例としての点火システム200aの概略構成を示す説明図である。
図11は、第1比較例の点火システム200aにおける点火制御のタイミングチャートである。点火システム200aの回路構成は、特許第3322862号公報に示された点火装置の回路構成と同様である。点火システム200aの動作内容については、特許第3322862号公報に詳細に記載されているため説明は省略する。
図11に示すように、第1比較例の点火システム200aによっても、スパークプラグの火花放電を強制的に遮断することができる。しかし、点火システム200aは、火花放電を強制的に終了させるための回路として、スイッチング素子Tr2と、整流素子D1,D2と、コンデンサCと、抵抗器R、の計5個の素子を備えている。これに対して、上記第1実施形態の点火システム100では、火花放電を強制的に遮断するための回路として、第2スイッチング部12と整流素子13の計2個の素子を備えているに過ぎない。つまり、上記第1実施形態の方が、第1比較例よりも格段に低コストに点火システムを構成することができる。
【0049】
また、第1比較例の点火システム200aでは、火花放電を強制的に終了させるための回路を、一次コイルとイグナイタ(スイッチング素子Tr1)との間の接続部83aに接続する必要がある。そのため、点火システム200aを、
図3に示したようなイグナイタ内蔵タイプの点火コイル20aに対してそのまま適用することは困難である。これに対して、上記第2実施形態の点火制御装置10aは、イグナイタ(第1スイッチング部11)のグランド側に接続を行うため、イグナイタ内蔵タイプの点火コイル20aに容易に接続することができる。
【0050】
F2.第2比較例:
図12は、第2比較例としての点火システム200bの概略構成を示す説明図である。
図13は、第2比較例の点火システム200bにおける点火制御のタイミングチャートである。点火システム200bの回路構成は、特許第4358370号公報に示された点火装置の回路構成と同様である。点火システム200bの動作内容については、特許第4358370号公報に詳細に記載されているため説明は省略する。
図13に示すように、第2比較例の点火システム200bによっても、スパークプラグの火花放電を強制的に遮断することができる。しかし、第2比較例の点火システム200bにおいても、第1比較例と同様に、火花放電を強制的に終了させるための回路を、一次コイルとイグナイタ(スイッチング素子Tr1)との間の接続部83bに接続する必要がある。そのため、点火システム200bを、
図3に示したようなイグナイタ内蔵タイプの点火コイル20aに対してそのまま適用することは困難である。
【0051】
F3.第3比較例:
図14は、第3比較例としての点火システム200cの概略構成を示す説明図である。
図15は、第3比較例の点火システム200cにおける点火制御のタイミングチャートである。点火システム200cの回路構成は、特許第3982318号公報に示された点火装置の回路構成と同様である。点火システム200bの動作内容については、特許第3982318号公報に詳細に記載されているため説明は省略する。
図15に示すように、第3比較例の点火システム200bによっても、スパークプラグの火花放電を強制的に遮断することができる。
【0052】
図16は、
図14に示した点火システム200cを多気筒の内燃機関に適用した第1の構成例を示す図である。
図16に示したように、点火システム200cを多気筒の内燃機関に単純に適用すると、点火コイル毎に、1つのスイッチング素子と2つのダイオードとが一次コイルの直流電源側に必要になるため、電源ハーネスを共通化することができない。よって、点火システム200cを単純に多気筒の内燃機関に適用した場合には、部品点数が増加してしまう。
【0053】
図17は、
図14に示した点火システム200cを多気筒の内燃機関に適用した第2の構成例を示す図である。
図18は、
図17に示した点火システムにおける点火制御のタイミングチャートである。
図17に示した構成では、
図16に示した構成と異なり、点火コイルと直流電源との間に設けるスイッチング素子と2つのダイオードとを、複数の点火コイルで共通化している。そのため、電源ハーネスも共通化され、
図16に示した構成よりも、部品点数が削減されている。しかし、
図17に示した構成では、電源ライン上に配置されたスイッチング素子と2つのダイオードとを、複数の点火コイルで共通化しているため、内燃機関の回転数が一定以上に高まると、
図18に示すように、第1の気筒において再通電電流が流れるタイミングT3−1〜T4−1と、第2の気筒において火花放電を行うために通電が行われるタイミングT1−2〜T2−2とが重なり、第1の気筒に対応する点火コイルにエネルギが蓄積されてしまう場合が生じ得る。そうすると、第1の気筒において、制御信号Va1がローレベルになったタイミングT4−1で、誤放電(図中の楕円内に示した波形)が発生するおそれがある。
【0054】
図19は、以上で説明した本発明の実施形態と各比較例との比較結果を表す図である。この
図19に示すように、本発明の実施形態と各比較例とを以下の4つの評価基準(1)〜(4)によって対比した。
【0055】
(1)イグナイタ内蔵コイルで使用できるか否か
(2)多気筒に適用した場合に電源ハーネスを共通化できるか否か
(3)多気筒に適用した場合に正常動作するか否か(誤放電が生じるか否か)
(4)多気筒に適用した場合の部品点数
【0056】
この評価結果によれば、本発明の実施形態は、各比較例に対して、イグナイタ内蔵コイルでも問題なく使用できるため汎用性が高く、また、多気筒に適用した場合であっても電源ハーネスを問題なく共通化できる。更に、多気筒に適用した場合であっても誤放電等が生じることなく正常に動作し、部品点数もそれほど多くはならない、という優れた特徴を有することが確認された。
【0057】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、上記実施形態の点火システムは、スパークプラグの中心電極を正極として用いる回路と、負極として用いる回路とのどちらの回路にも適用可能である。また、上記実施形態の点火システムは、定置型ガスエンジンに用いてもよい。その他、上記実施形態では、1気筒および3気筒の内燃機関に点火システムを適用する例を示したが、2気筒、4気筒、6気筒、8気筒、12気筒、16気筒などの任意の気筒数の内燃機関に適用することももちろん可能である。