(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016741
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】エレベータ釣合おもり枠用連結部材およびその取付方法
(51)【国際特許分類】
B66B 11/00 20060101AFI20161013BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
B66B11/00 D
B66B7/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-189467(P2013-189467)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-54769(P2015-54769A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】千村 亮太
【審査官】
大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−035049(JP,U)
【文献】
実開昭55−023341(JP,U)
【文献】
特開2005−263351(JP,A)
【文献】
特開2001−253667(JP,A)
【文献】
特開2013−147336(JP,A)
【文献】
特開平10−129957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00− 7/12
B66B 11/00
B66B 11/04−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に並べられた複数の釣合おもりの中の隣り合う一対の前記釣合おもりの間に設けられる取付台と、
一対の縦枠に渡って設けられ、前記取付台が設けられた一対の前記釣合おもりの間を通る縦枠用連結部材と
を備え、
前記取付台の幅方向の寸法は、一対の前記縦枠の間の寸法よりも小さいことを特徴とするエレベータ釣合おもり枠用連結部材。
【請求項2】
前記釣合おもりの奥行方向についての前記取付台の寸法は、前記奥行方向についての前記釣合おもりの寸法以下であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ釣合おもり枠用連結部材。
【請求項3】
前記縦枠用連結部材は、それぞれの前記縦枠に取り付けられる一対の取付部材と、それぞれの前記取付部材に着脱可能に設けられ、それぞれの前記取付部材を連結する取付部材用連結部材とを有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ釣合おもり枠用連結部材。
【請求項4】
前記取付台の側面には、前記縦枠用連結部材が挿入可能な溝が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のエレベータ釣合おもり枠用連結部材。
【請求項5】
高さ方向に並べられた複数の釣合おもりの中の隣り合う一対の前記釣合おもりの間に設けられる取付台と、一対の縦枠に渡って設けられ、前記取付台が設けられた一対の前記釣合おもりの間を通る縦枠用連結部材とを備え、前記取付台の幅方向の寸法は、一対の前記縦枠の間の寸法よりも小さいエレベータ釣合おもり枠用連結部材をエレベータ釣合おもり装置に取り付けるエレベータ釣合おもり枠用連結部材の取付方法であって、
高さ方向に並べられた複数の前記釣合おもりの中の一部の前記釣合おもりを持ち上げる持上工程と、
前記持上工程によって隙間が形成された一対の前記釣合おもりの間に前記取付台を設置する取付台設置工程と、
前記持上工程によって隙間が形成された一対の前記釣合おもりの間を通るように前記縦枠用連結部材を一対の前記縦枠に渡って取り付ける縦枠用連結部材取付工程と
を備え、
前記取付台設置工程では、前記取付台を奥行方向に移動させながら、一対の前記釣合おもりの間に前記取付台を設置することを特徴とするエレベータ釣合おもり枠用連結部材の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水平地震動によって、釣合おもり枠における一対の縦枠が互いに広がる方向にたわみ変形することを抑制するエレベータ釣合おもり枠用連結部材およびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の縦枠と、それぞれの縦枠の上端部に渡って設けられる上枠と、それぞれの縦枠の下端部に渡って設けられる下枠とを有する釣合おもり枠と、釣合おもり枠の内側に積層されて保持される釣合おもりとを備えエレベータ釣合おもり装置においては、水平地震等による水平方向の揺れによって一対の縦枠が互いに広がる方向にたわみ変形して、釣合おもりが脱落してしまうことを防止するため、たわみ量が最大となる縦枠の高さ方向中間部付近にエレベータ釣合おもり枠用連結部材を設置する必要がある。従来、エレベータ釣合おもり枠用連結部材として、一対の縦枠におけるそれぞれの高さ方向中間部に渡って設けられ、釣合おもりを囲繞する前側連結体および後側連結体を有する連結体と、連結体をそれぞれの縦枠に固定するためのボルトとを備えたエレベータ釣合おもり枠用連結部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−143655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、連結体が釣合おもりを囲繞するように配置されるので、釣合おもりとかごとの隙間および釣合おもりと昇降路壁との隙間に十分な設置スペースがない場合には、エレベータ釣合おもり枠用連結部材を取り付けることができないという問題点があった。また、釣合おもり枠の内側には、縦枠の高さ方向中間部を越えて高さ方向上部にまで釣合おもりが積層される場合が多く、連結体とかごとの隙間および連結体と昇降路壁との隙間の寸法を釣合おもりとかごとの隙間および釣合おもりと昇降路壁との隙間の寸法に維持しつつエレベータ釣合おもり枠用連結部材を設置するためには、幅の狭い釣合おもりである幅狭おもりを所定数だけ縦枠の高さ方向中間部に設置し、その幅狭おもりを囲繞するように連結体を一対の縦枠に固定する必要がある。この場合、幅狭おもりを設置するために、一部の釣合おもりを釣合おもり枠から取り外して幅狭おもりを設置し、その後、取り外した釣合おもりを釣合おもり枠に取り付ける作業が必要となるため、エレベータ釣合おもり枠連結部材の取付作業に大変な労力を要するという問題点があった。
【0005】
この発明は、縦枠における高さ方向中間部により確実、かつ容易に取り付けることができるエレベータ釣合おもり枠用連結部材およびその取付方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ釣合おもり枠用連結部材は、高さ方向に並べられた複数の釣合おもりの中の隣り合う一対の釣合おもりの間に設けられる取付台と、一対の縦枠に渡って設けられ、取付台が設けられた一対の釣合おもりの間を通る縦枠用連結部材とを備え
、前記取付台の幅方向の寸法は、一対の前記縦枠の間の寸法よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータ釣合おもり枠用連結部材によれば、高さ方向に並べられた複数の釣合おもりの中の隣り合う一対の釣合おもりの間に設けられる取付台と、一対の縦枠に渡って設けられ、取付台が設けられた一対の釣合おもりの間を通る縦枠用連結部材とを備えているので、高さ方向に並べられた複数の釣合おもりの最上部が縦枠における高さ方向中間部よりも上方に位置する場合であっても、縦枠における上下方向中間部により確実、かつ容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ釣合おもり枠用連結部材が取り付けられるエレベータ釣合おもり装置を示す正面図である。
【
図2】
図1のエレベータ釣合おもり装置にエレベータ釣合おもり枠用連結部材が取り付けられた状態を示す拡大図である。
【
図3】
図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。
【
図8】
図2の縦枠用連結部材の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ釣合おもり枠用連結部材が取り付けられるエレベータ釣合おもり装置を示す正面図である。エレベータ釣合おもり装置は、一対のガイドレール1に沿って昇降する釣合おもり枠2と、釣合おもり枠2に取り付けられる複数の釣合おもり3とを備えている。釣合おもり枠2は、高さ方向に延びた一対の縦枠21と、一対の縦枠21の上端部を連結する上枠22と、一対の縦枠21の下端部を連結する下枠23とを有している。複数の釣合おもり3は、下枠23の上に高さ方向に並べて配置されている。
【0010】
図2は
図1のエレベータ釣合おもり装置にエレベータ釣合おもり枠用連結部材が取り付けられた状態を示す拡大図、
図3は
図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。エレベータ釣合おもり枠用連結部材は、2個の取付台4と、一対の縦枠21に渡って設けられる縦枠用連結部材5とを備えている。
【0011】
取付台4は、高さ方向に並べられた釣合おもり3の中の隣り合う一対の釣合おもり3の間に配置されている。取付台4は、縦枠21における上下方向中間部に隣り合うように一対の釣合おもり3の間に配置されている。
【0012】
釣合おもり3の奥行方向についての取付台4の寸法Aは、奥行方向についての釣合おもり3の寸法Bよりも小さい値となっている。この例では、釣合おもり3の奥行方向とは、釣合おもり3を上方から見た場合に、釣合おもり3の幅方向(長手方向)に対して垂直な方向である。なお、釣合おもり3の奥行方向についての取付台4の寸法Aは、奥行方向についての釣合おもり3の寸法Bと等しくてもよい。
【0013】
図4は
図2の取付台4を示す斜視図である。取付台4は、鉄から構成されている。取付台4は、円柱形状に形成されている。取付台4の幅方向の寸法は、一対の縦枠21の間の寸法よりも小さくなっている。これにより、取付台4を奥行方向に移動させながら、一対の釣合おもり3の間に取付台4を設置することができる。取付台4には、上下面に沿って延びた2本の貫通孔41が形成されている。取付台4は、貫通孔41の方向が釣合おもり3の幅方向と一致するように一対の釣合おもり3の間に配置される。なお、取付台4の形状は、円柱形状に限らず、例えば、直方体形状または立方体形状などであってもよい。
【0014】
図3に示すように、縦枠用連結部材5は、2本の通しボルト51と、それぞれの通しボルト51の両端部に取り付けられるナット52とを有している。縦枠21には、通しボルト51が挿入される貫通孔が形成されている。通しボルト51は、両端部が一対の縦枠21よりも幅方向外側に突出するように、一対の縦枠21に取り付けられている。ナット52が通しボルト51の端部に螺着することによって、縦枠用連結部材5が一対の縦枠21に固定される。
【0015】
図5は
図2の通しボルト51を示す斜視図である。通しボルト51の両端部には、ナット52に螺着されるためのねじ溝511が形成されている。
【0016】
図3に示すように、それぞれの通しボルト51は、取付台4の貫通孔41に挿入されている。これにより、取付台4がエレベータ釣合おもり装置から外れてしまうことを防止することができる。
【0017】
次に、エレベータ釣合おもり装置にエレベータ釣合おもり枠用連結部材を取り付ける取付方法について説明する。まず、高さ方向に並べられた複数の釣合おもり3の中の一部の釣合おもり3を持ち上げる(持上工程)。具体的には、先端部がくさび形となった油圧ジャッキを一対の釣合おもり3の間に挿入し、油圧ジャッキを駆動させることによって、一部の釣合おもり3を持ち上げる。
【0018】
持上工程の後、持上工程によって隙間C(
図2)が形成された一対の釣合おもり3の間に2個の取付台4を設置する(取付台設置工程)。このとき、貫通孔41の方向と釣合おもり3の幅方向とを一致させる。
【0019】
取付台設置工程の後、持上工程によって隙間Cが形成された一対の釣合おもり3の間を通るように縦枠用連結部材5を一対の縦枠21に渡って取り付ける(縦枠用連結部材取付工程)。このとき、貫通孔41に通しボルト51を挿入する。通しボルト51が挿入される貫通孔が縦枠21に形成されていない場合には、縦枠21に貫通孔を形成して、縦枠用連結部材5を一対の縦枠21に渡って取り付ける。以上により、エレベータ釣合おもり枠用連結部材の取付方法が終了する。
【0020】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエレベータ釣合おもり枠用連結部材によれば、高さ方向に並べられた複数の釣合おもり3の中の隣り合う一対の釣合おもり3の間に設けられる取付台4と、一対の縦枠21に渡って設けられ、取付台4が設けられた一対の釣合おもり3の間を通る縦枠用連結部材5とを備えているので、高さ方向に並べられた複数の釣合おもり3の最上部が縦枠21における高さ方向中間部よりも上方に位置する場合であっても、縦枠21における上下方向中間部により確実、かつ容易に取り付けることができる。
【0021】
また、釣合おもり3の奥行方向についての取付台4の寸法は、奥行方向についての釣合おもり3の寸法よりも小さいので、エレベータ釣合おもり装置の奥行方向外側に昇降路の壁などの部材が配置されている場合であっても、釣合おもり3がその部材に接触することを防止することができる。
【0022】
また、この発明の実施の形態1に係るエレベータ釣合おもり枠用連結部材の取付方法によれば、高さ方向に並べられた複数の釣合おもり3の中の一部の釣合おもり3を持ち上げる持上工程と、持上工程によって隙間Cが形成された一対の釣合おもり3の間に取付台4を設置する取付台設置工程と、持上工程によって隙間Cが形成された一対の釣合おもり3の間を通るように縦枠用連結部材5を一対の縦枠21に渡って取り付ける縦枠用連結部材取付工程とを備えているので、高さ方向に並べられた釣合おもり3の最上部が縦枠21における高さ方向中間部よりも上方に位置する場合であっても、縦枠21における上下方向中間部により確実、かつ容易に取り付けることができる。
【0023】
なお、上記実施の形態1では、先端部がくさび形となった油圧ジャッキを一対の釣合おもり3の間に挿入し、油圧ジャッキを駆動させることによって、一部の釣合おもり3を持ち上げる持上工程について説明したが、これに限らず、例えば、一対の釣合おもり3のそれぞれにアンカーボルトを取り付けて、それぞれのアンカーボルトの間を油圧ジャッキを用いて広げることによって、一部の釣合おもり3を持ち上げてもよく、また、一部の釣合おもり3とガイドレール1とを固定した状態で、釣合おもり枠2を下降させることによって、一部の釣合おもり3を持ち上げてもよい。
【0024】
また、上記実施の形態1では、貫通孔41が形成された取付台4の構成について説明したが、
図6に示すように、2つの取付台片42に分割された取付台4であってもよい。それぞれの取付台片42には、溝43が形成されており、それぞれの取付台片42が重ねられることによって、通しボルト51が挿入される貫通孔41が取付台4に形成される。また、
図7に示すように、側面に溝43が形成された取付台4であってもよい。これらの場合、取付台設置工程を縦枠用連結部材取付工程の後に行うことができる。
【0025】
また、上記実施の形態1では、通しボルト51と、通しボルト51の両端部に取り付けられるナット52とを有した縦枠用連結部材5の構成について説明したが、
図8に示すように、それぞれの縦枠21(
図3)に取り付けられる一対の連結ボルト(取付部材)53と、それぞれの連結ボルト53に着脱可能に設けられ、それぞれの連結ボルト53を連結する連結ボルト用連結部材(取付部材用連結部材)54と、連結ボルト53に取り付けられるナット52(
図3)を有した縦枠用連結部材5の構成であってもよい。連結ボルト用連結部材54としては、例えば、それぞれの連結ボルト53に渡って設けられるワイヤ541と、このワイヤ541の両端部が折り曲げられた状態を維持するバインド542とから構成される。連結ボルト53には、ワイヤ541が挿入されるワイヤ挿入孔531が形成されている。この場合、連結ボルト53を縦枠21に幅方向内側から取り付けることができる。その結果、縦枠21の幅方向外側における空間が小さい場合であっても、エレベータ釣合おもり枠用連結部材をエレベータ釣合おもり装置に容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ガイドレール、2 釣合おもり枠、3 釣合おもり、4 取付台、5 縦枠用連結部材、21 縦枠、22 上枠、23 下枠、41 貫通孔、42 取付台片、43 溝、51 通しボルト、52 ナット、53 連結ボルト(取付部材)、54 連結ボルト用連結部材(取付部材用連結部材)、511 ねじ溝、531 ワイヤ挿入孔、541 ワイヤ、542 バインド。