(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示部は、現在製造されている製品の操業データが前記登録手段で登録された検索条件のいずれかを満足する場合に、当該満足する検索条件を表示するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の操業データ検索支援装置。
前記特徴抽出部は、前記選び出した2つ以上の操業データの間で、共通する特徴を抽出するに際して、決定木学習の手法を用いてクラスタリングを行う構成とされていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の操業データ検索支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の方法では、操業データを検索する前に操業変数を予めクラスわけしておくなどの前準備が必要となる。ところが、このような操業変数のクラスタわけには、経験豊富な操業者の知識が必要とされる。当然、若く、経験も浅い操業者には適切なクラスタ分けができない可能性があり、適正な操業知識が得られずに不良原因を満足に調査できなくなってしまう可能性もある。また、操業条件を変更した場合や新製品を製造する場合には、経験を利用して十分な前準備を行うことができなくなる可能性もあり、同様に不良原因の調査が困難となることもある。
【0006】
つまり、特許文献1の方法は、上述した前準備を確実に行うことができれば、操業データの調査を行う上で有益となるかもしれないが、実際には前準備に経験や知識が要求されることから製造現場などで利用する上で問題のあるものとなっていた。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、操業者が自らクラスわけのような複雑な操作を行う必要がなく、識別子を指定して操業データを検索するといった単純な作業を繰り返すだけで、検索結果に対する判断を支援する検索条件を自動的に入手でき、検索を簡便に且つ効率的に実施することができる操業データ検索支援方法及び操業データ検索支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の
操業データ検索支援装置が実行する方法は、製造設備で製造される製品の識別子と当該識別子に紐付けられた操業データ
が記憶
され、検索
する製品の識別子
が入力
され、入力された識別子に対応する操業データが、過去に登録された検索条件のいずれも満足しない場合は、前記入力された識別子の操業データと、過去に検索されたことがあるものであって且つ前記登録された検索条件のいずれも満足しない他の識別子の操業データと、
が選び出
され、選び出された2以上の操業データ同士の間でデータの共通点
が特徴として抽出
され、抽出された特徴
が検索条件案に変換
され、前記入力された識別子の操業データに加えて、前記変換された検索条件案
が表示
されることを特徴とする。
【0008】
なお、好ましくは、前記表示された検索条件案
が検索条件として登録
されるか否かが選択可能とされているとよい。
なお、好ましくは、現在製造されている製品の操業データが前記登録された検索条件のいずれかを満足する場合には、当該満足する検索条件
が表示
されるとよい。
なお、好ましくは、前記選び出した2つ以上の操業データの間で、共通する特徴
が抽出
されるに際して、決定木学習の手法を用いてクラスタリング
が行
われるとよい。
【0009】
また、本発明の操業データ検索支援装置は、製造設備で製造される製品の識別子と当該識別子に紐付けられた操業データを記憶する操業データ記憶部と、検索
する製品の識別子を入力する入力部と、前記入力部に入力された識別子に対応する操業データが、過去に登録された検索条件のいずれも満足しない場合は、前記入力部に入力された識別子の操業データと、過去に検索されたことがあるものであって、且つ前記登録された検索条件のいずれも満足しない他の識別子の操業データとを選び出し、選び出された2以上の操業データ同士の間でデータの共通点を特徴として抽出する特徴抽出部と、前記特徴抽出部で抽出された特徴を検索条件案に変換する検索条件案作成部と、前記入力部に入力された識別子の操業データを操業データ記憶部から呼び出して表示すると共に、前記検索条件案作成部で作成された検索条件案を新たな検索条件として表示する表示部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
なお、好ましくは、前記表示部に表示された検索条件案を新たな検索条件として登録する登録手段を備えているとよい。
なお、好ましくは、前記表示部は、現在製造されている製品の操業データが前記登録手段で登録された検索条件のいずれかを満足する場合に、当該満足する検索条件を表示するように構成されているとよい。
【0011】
なお、好ましくは、前記特徴抽出部は、前記選び出した2つ以上の操業データの間で、共通する特徴を抽出するに際して、決定木学習の手法を用いてクラスタリングを行う構成とされているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の
操業データ検索支援装置が実行する方法及び操業データ検索支援装置によれば、操業者が自らクラスわけのような複雑な操作を行う必要がなく、識別子を指定して操業データを検索するといった単純な作業を繰り返すだけで、検索結果に対する判断を支援する検索条件を自動的に入手でき、検索を簡便に且つ効率的に実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の
操業データ検索支援装置が実行する方法、すなわち操業データ検索支援方法及び装置の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本発明の操業データ検索支援装置1の構成を模式的に示したものである。
図1に示すように、本実施形態の操業データ検索支援装置1は、この操業データ検索支援装置1が設けられる製造設備Pのオペレータ(検索者S)が、自分より下工程で何らかの品質欠陥が発生したときに、膨大な操業データの記録の中から品質欠陥が生じた操業データを検索し、検索された操業データから品質欠陥の原因を調査するために用いるものである。
【0015】
具体的には、本発明の操業データ検索支援装置1は、マウスなどの入力部2を用いて検索したい製品のロット番号(識別子)が入力されると、このロット番号に紐付けられた操業データを表示部3に表示するだけでなく、品質欠陥の原因を究明する際に益する検索条件も表示する構成となっている。操業データ検索支援装置1では、このようにして表示された検索条件を利用することで品質欠陥の原因を究明しやすくしている。
【0016】
このような検索は、実際にはモニタやキーボードを備えたコンピュータを用いて行われる。
例えば、
図2の上側に例示するようなコンピュータのモニタ画面において左上の入力欄10に、キーボードやマウスなどを用いてロット番号を入力し、モニタ画面の右側に設けられた検索ボタン11をマウスでクリックすることで、検索が実施される。このようにして行われた検索の結果は、
図2の下側に例示するようなものとなる。つまり、コンピュータのハードディスクドライブ(HDD)のような記憶機器に予め記憶されていた操業データの中から、ロット番号に対応した操業データが呼び出され、モニタ画面に表示される。このとき、モニタ画面には、操業データだけでなく、上述した検索条件も表示されるようになっている。
【0017】
一方、
図3に示す如く、オペレータにより入力されたロット番号(ロット番号に紐付けられた操業データ)がどの検索条件も満足しない場合、言い換えれば今まで検索したことがないような新たな品質欠陥を検索する場合には、上述した「別の検索で得られた操業データ」が存在しないのであるから、検索条件は表示されない。このような場合は、
図3のモニタ画面に例示するような「検索条件案」が表示される。
【0018】
この「検索条件案」は、上述した検索条件と同様に、入力されたロット番号に紐付けられた操業データと、検索済みの操業データの中でどの検索条件をも満足しない操業データと、の間に作成された検索条件の候補である。操業データ検索支援装置1を操作するオペレータがこれらの操業データ同士の間に類似性を認めた場合、言い換えればこれらの操業データ同士が同じ欠陥に属すると考えた場合には、検索条件案を検索条件として正式に登録することで、次に同様な検索があった場合に登録された検索条件による識別が可能となる。
【0019】
上述したように検索を行う本発明の操業データ検索支援装置1は、具体的には次のような部分を組み合わせて構成されている。
すなわち、
図1に示すように、操業データ検索支援装置1は、検索したい製品のロット番号を入力する入力部2を有している。この入力部2は、コンピュータのキーボード、マウス、マイクなどに相当する。
【0020】
また、操業データ検索支援装置1は、製造設備Pで製造される製品のロット番号(識別子)とこのロット番号に紐付けられた操業データとを記憶する操業データ記憶部4と、過去に検索された製品のロット番号を記憶するロット番号記憶部5(識別子記憶部)と、過去に登録された検索条件を記憶する検索条件記憶部6とを備えている。
さらに、操業データ検索支援装置1には、上述した入力部2に入力されたロット番号に対応する操業データが、過去に登録された検索条件のいずれも満足しない場合は、入力部2に入力されたロット番号の操業データと、過去に検索されたことがあるものであって、且つ登録された検索条件のいずれも満足しない他のロット番号の操業データとを選び出し、選び出された2以上の操業データ同士の間でデータの共通点を特徴として抽出する特徴
抽出部が設けられている。
【0021】
また、操業データ検索支援装置1には、特徴抽出部で抽出された特徴を検索条件案に変換する検索条件案作成部が設けられている。
これらの操業データ記憶部4、ロット番号記憶部5、検索条件記憶部6、特徴抽出部及び検索条件案作成部は、コンピュータの本体部12に記憶されたプログラムで実現されている。
【0022】
さらに、操業データ検索支援装置1には、検索条件案作成部で作成された新たな検索条件を検索条件案として表示する表示部3、が設けられている。この表示部3は、コンピュータのモニタに相当する。そして、表示部3であるモニタの画面には、表示部3に表示された検索条件案を新たな検索条件として登録する登録ボタン9(登録手段)が設けられていて、登録ボタン9によって登録された検索条件が上述した検索条件記憶部6に逐次記憶されるようになっている。
【0023】
次に、本発明の操業データ検索支援装置1を構成する各部材について説明する。
まず、本発明の操業データ検索支援装置1が設けられる製造設備Pについて説明する。操業データ検索支援装置1が設けられる製造設備Pには、圧延、押出、鍛造、鋳造などの金属製造に関する設備、曲げや引き抜きなどの機械加工に関する設備などさまざまな設備が挙げられる。なお、以降では、製鋼の厚板設備(熱間圧延設備)に設けられたものの例を挙げて、本実施形態の操業データ検索支援装置1を説明する。
【0024】
入力部2は、検索しようとする製品のロット番号をオペレータ(検索者S)が操業データ検索支援装置1に入力するための部分であり、上述したコンピュータのキーボードやマウスなどから構成されている。具体的には、モニタ画面上に設けられたロット番号の入力欄10に、入力部2を用いて製品のロット番号を入力し、同じモニタ画面上に設けられた検索ボタン11をクリックすることで、入力されたロット番号が操業データ記憶部4に送られ、入力されたロット番号に紐付けられた操業データが操業データ記憶部4から出力される。
【0025】
操業データ記憶部4は、製品のロット番号と当該ロット番号に紐付けられた操業データとを記憶する部分である。
この操業データ記憶部4に記憶される操業データには、上述した製造設備Pから送られてきた運転状態を示すデータと、入力部2を介して直接入力された製品名、向け先、製品寸法、製品の材質、あるいは調質番号などの製品に関するデータとが含まれる。
図6に例示する操業データであれば、「製品幅」、「製品厚」、「成分構成区分」、「加熱温度誤差」といった項目を有するものとなっている。
【0026】
これらの操業データは、上述した操業データ記憶部4にロット番号毎に記憶されている。
検索条件記憶部6は、検索者Sによって過去に登録された検索条件を、記憶する部分である。
図7には、検索条件記憶部6に登録された検索条件の一例が示されている。
この検索条件記憶部6には、過去に検索者Sがモニタ画面上の登録ボタン9を押すことで登録された検索条件がすべて記憶されている。これらの検索条件にはそれぞれに1つの検索条件IDが割り当てられており、検索条件IDと検索条件とが1対1のデータ状態で記憶されている。
【0027】
図8に示すように、ロット番号記憶部5は、ロット番号と上述した検索条件IDとの組み合わせを記憶したものであり、過去に検索されたことのあるロット番号と、検索により得られた検索条件IDとがすべて記憶されている。
例えば、
図8のロット番号「1」や「25」の製品を見ると、まず過去に検索がすでに行われていることがわかる。そして、この過去の検索で得られた操業データが、過去に「1」の検索条件IDで登録された検索条件を満足することが分かる。また、ロット番号「9」、「13」、「16」の製品を見ると、過去に検索が行われたことと、「2」の検索条件IDが割り当てられていることが分かる。ところが、過去に検索された製品であっても、登録された検索条件のいずれをも満足しなかった場合には、登録された検索条件に対応するものがないことになる。この場合は、検索条件IDは「−1」となり、検索条件が
未登録となっていることが判断できる。つまり、ロット番号記憶部5は、過去に検索された製品のロット番号と、その製品の検索条件の登録状態とを記憶するものとなっている。
【0028】
上述したように入力部2に入力されたロット番号に対応して操業データ記憶部4から出力された操業データが、過去に検索条件記憶部6に登録された検索条件をいずれも満足しない場合には、操業データ検索支援装置1で新たに検索条件案が作成される。
すなわち、本発明の操業データ検索支援装置1は、新たな検索条件案を作成する際に必要となるような操業データ同士の共通点を特徴として抽出する構成となっている。具体的には、この特徴の抽出は特徴抽出部で行われる。特徴抽出部は、入力部2に入力されたロット番号の操業データと、過去に検索されたことがあるものであって且つ登録された検索条件のいずれも満足しない他のロット番号の操業データとを選び出し、選び出された2以上の操業データ同士の間でデータの共通点を特徴として抽出する構成とされている。
【0029】
この特徴抽出部では、
図4及び
図5に示すような流れでデータが処理され、操業データの共通点が特徴として抽出される(処理の詳細は後述する)。
その結果、操業データ記憶部4から出力された操業データが検索条件記憶部6に登録された検索条件を満足する場合には、この操業データが満足させる検索条件を「ヒットした検索条件」として表示部3で表示する。
【0030】
一方、操業データ記憶部4から出力された操業データが検索条件記憶部6に登録された検索条件をいずれも満足しない場合には、過去に登録されたどの検索条件も満足しないような操業データ、言い換えれば、今まで検索されたことがないような新たな品質欠陥が検索されていると判断できるので、「検索条件案」を作成する。つまり、この特徴抽出部では、ロット番号記憶部5に記憶されたロット番号の中から、検索条件IDが「−1」であるロット番号がすべて選び出される。この検索条件IDが「−1」のロット番号は、過去に検索は行われているが、登録された検索条件のいずれをも満足しないような製品に対応したものとなっている。
【0031】
このようにして検索条件IDが「−1」のロット番号が選び出されたら、選び出されたロット番号に対応する操業データを操業データ記憶部4から出力すると共に、今回の検索で入力(指定)されたロット番号に対応した操業データを操業データ記憶部4から出力する。そして、出力された操業データはすべてAグループ(Gr.A)に振り分けられる。
一方、上述したロット番号記憶部5に記憶されたロット番号は、いずれも過去に検索が行われたものである。言い換えれば、操業データ記憶部4に記憶された操業データのうち、ロット番号記憶部5にロット番号が記憶されていないものは、過去に検索が行われていないものであり、品質欠陥がない「正常な製品」であると考えることができる。そこで、特徴抽出部では、操業データ記憶部4に記憶された操業データのうち、ロット番号記憶部5にロット番号が記憶されていないものを抽出し、抽出された操業データをすべてBグループ(Gr.B)に振り分ける。
【0032】
このようにして2グループの操業データが得られたら、両データ群を類別(分離)する規則、具体的には操業データを構成する変数(操業変数)とその閾値を抽出する。この抽出には、情報量(エントロピー)計算を用い、決定木の作成などに活用される“C“などの手法を用いることができる。つまり、
図9のように操業データをグループAとグループBとに分ける場合であれば、「製品幅」、「製品厚」、「成分構成区分」、「加熱温度誤差」といったデータ項目ごとに、グループAのデータとグループBのデータとが最も例外が少なくなるように類別可能な閾値が決定される。このようにして決定された閾値を用いれば、例えば閾値より大きなものはグループA、小さなものはグループBといった仕分けが可能となる。このようにして決定された閾値は、検索条件案作成部に送られる。
【0033】
検索条件案作成部は、特徴抽出部で抽出された特徴を組み合わせて、組み合わされた特徴を検索条件案に変更している部分である。具体的には、検索条件案作成部では、特徴抽出部でデータ項目(操業変数)ごとに決定された閾値を用いて、Bグループに対してAグループを類別するような条件式を求めている。そして、データ項目毎に求められた条件式をすべて組み合わせ、すべての条件式の集合積に相当するものを検索条件案として作成している。検索条件作成部で作成された検索条件案は、表示部3で表示される。
【0034】
表示部3は、操業データ記憶部4から出力された操業データ、検索条件作成部で作成された検索条件案、検索条件記憶部6に記憶された検索条件などを表示する部分である。
具体的には、表示部3は、操業データ記憶部4から出力された操業データが検索条件記憶部6に登録された検索条件を満足する場合には、この操業データが満足させる登録済みの検索条件を「ヒットした検索条件」として表示部3で表示している。また、この操業データが検索条件記憶部6に登録された検索条件のいずれをも満足しない場合には、検索条件作成部で作成された検索条件を「検索条件案」として表示している。
【0035】
また、表示部3であるモニタ画面には、検索条件案を検索条件記憶部6に新たな検索条件として登録する登録手段(登録ボタン9)と、今回検索されたロット番号をロット番号記憶部5に登録するロット番号登録ボタン13とが設けられている。つまり、検索者Sが、表示部3に表示された検索条件案を登録した方がよいと判断した場合には登録ボタン9をクリックし、検索条件案を検索条件記憶部6に新たな検索条件として登録する。このようにすれば、同様な欠陥に対する検索が以降起こった場合には、新たに登録された検索条件を用いて対応することが可能となる。
【0036】
さらに、検索者Sが、今回検索されたロット番号と検索結果(検索条件ID)と登録した方がよいと判断した場合にはロット番号登録ボタン13をクリックし、ロット番号と検索IDとをロット番号記憶部5に記憶する。このようにすれば、記憶されたロット番号の検索データを用いて検索条件案の作成などを行うことが可能となる。
次に、上述した操業データ検索支援装置1を用いて検索を行う手順、言い換えれば本発明の操業データ検索支援方法について説明する。
【0037】
図4及び
図5に示すフローチャートは、一連の検索手順の流れを示したものである。
図4に示すように、操業者はまずモニタ画面のロット番号の入力欄10(
図2及び
図3の上側に示す黒抜きの部分)にロット番号をインプットする(STPE1)。
そうすると、インプットされたロット番号に対応する操業データが操業データ記憶部4から出力(抽出)される(STEP2)。
【0038】
次に、出力される操業データが検索条件記憶部6に登録(記憶)された検索条件を満足するかどうか、言い換えれば検索条件記憶部6に登録済みの検索条件(登録検索条件)で抽出可能か否かの判定が行われる(STEP3)。
判定の結果、出力される操業データが登録済みの検索条件のいずれかを満足する場合は、満足した登録済みの検索条件を表示部3であるモニタ画面に表示する(STEP6)。
【0039】
一方、判定の結果、出力される操業データが登録済みの検索条件をいずれも満足しない場合は、特徴抽出部で、過去に検索(指定)されたロット番号の操業データと、今回検索された操業データとに共通する特徴を抽出する(STEP4)。この特徴の抽出は、詳しくは、
図5に示すような手順で実施される。
図5に示すように、特徴抽出部では、まずロット番号記憶部5に記憶されたロット番号のうち、既存の検索条件ではヒットしないもの、言い換えれば検索条件が未登録であるものを選び出している。具体的には、ロット番号記憶部5に記録されている検索条件には、どの検索条件にも検索条件IDが割り振られている。そのため、未登録のロット番号を選び出す場合には、検索条件IDが未登録を示す「−1」のロット番号だけを抽出する(STEP4−1)。
【0040】
次に、抽出されたロット番号に対応する操業データと、今回入力されたロット番号に対応する操業データとを、操業データ記憶部4から出力する。このようにして出力された操業データを「検索履歴有」のグループを示すグループAと定義する(STEP4−2)。
また、操業データ記憶部4からロット番号記憶部5に登録されていないロット番号の操業データ、言い換えれば過去に検索が行われたことがないもの(欠陥がない正常な操業データであると考えられるもの)を抽出する。このようにして抽出された操業データを「検索履歴無し」のグループを示すグループBと定義する(STEP4−3)。つまり、このようにして定義されたグループA及びグループBは、例えば、
図9に示すように類別されることになる。
【0041】
こうして抽出されたグループA及びグループBの操業データを類別(分離)するデータ
項目(操業変数)とその値の閾値を抽出する。この抽出には、たとえば、情報量(エントロピー)計算を用い、決定木の作成などに活用される“C“などの手法を用いる。このような手法を用いれば、データ項目毎に閾値が得られ、閾値を用いてグループAのデータとグループBのデータとを例外なく抽出するための条件式(ルール)が得られる。このようにして得られた条件式が、上述した特徴として検索条件作成部に送られる(STEP4−4)。
【0042】
検索条件作成部では、送られてきた特徴を検索条件に変換する。たとえば、
図10に示すように、決定木の作成などに活用される“C“などの手法を用いた結果を、データベースアクセス用の言語である、SQLの条件句(WHEHRE句)の形で作成する。そうすれば、送られてきた特徴を検索条件に変換することが可能となる(STEP5)。
このようにして作成された検索条件は「検索条件案」として、
図3に示すモニタ画面の下側に表示される(STEP6)。
【0043】
なお、このモニタ画面には、今回入力されたロット番号に対応する操業データと、検索条件案を満足する別の操業データも表示される。また、検索条件案を表示する際には、検索条件案を満足する件数の比率およびノイズ件数(図中に「2/26」が比率、「0」がノイズ件数)もあわせて提示される。この比率は、すべての操業データの中でどの程度の操業データが検索条件案を満足するかを示している。また、ノイズ件数は、特徴抽出部でグループAに抽出されたロット番号のうち、検索条件案を満足しないものがどの程度あるかを示している。
【0044】
上述した
図3のモニタ画面に表示された検索条件案を見たオペレータが、提示された検索条件案を登録しても良いと考えた場合は、モニタ画面の下側に設けられた登録ボタン9をクリックする。そうすると、検索条件案が新たな検索条件として、検索条件記憶部6に登録される。また、今回検索に用いたロット番号を検索済みのロット番号として登録しておく場合も、同じく画面下側に設けられたロット番号登録ボタン13をクリックする。そうすれば、今回検索に用いたロット番号がロット番号記憶部5に登録される(STEP7)。
【0045】
このようなロット番号登録ボタン9を設ければ、例外的な操業データが登録されることを抑制することができるようになり、「検索条件作成に使いたくない操業データも登録されてしまう」という自動化のディメリットに対応することが可能となる。
また、
図3に示すモニタ画面には、「更新画面ボタン」が設けられている。この「更新画面ボタン」をクリックすると、操業データが新たに発生する都度、新たに発生した操業データに対して、検索条件記憶部6に記憶されている検索条件との比較が行われる。
【0046】
具体的には、
図11に示すように、「1」〜「31」までのロット番号の操業データに対して検索が行われている場合に、新たに「32」や「33」のロット番号の製品が製造(圧延)された場合を考える。このような「32」や「33」のロット番号(このロット番号に紐付けられる操業データ)が新たに発生すると、
図12に示すように、「32」や「33」のロット番号に対応する操業データが自動検索結果としてモニタ画面にリスト表示される。このリスト表示をクリックすると、手動で検索した場合と同様、操業データの一覧が表示される。このような自動検索結果を表示すれば、操業を行いつつ検索を行うことが可能となり、品質欠陥に迅速に対応できるようになる。
【0047】
上述した操業データ検索支援装置1では、入力部2にロット番号を入力して検索ボタン11を押すと、ロット番号に対応した操業データだけでなく、この操業データが過去に検索した他のロット番号の操業データとどのような関係になっているかを検索条件から判断できるようになり、検索結果である操業データを利用して検索者による欠陥原因の調査を支援できるようになる。
【0048】
また、登録された検索条件の中に入力部2に入力されたロット番号の操業データに対応したものがない場合は、すでに検索された操業データであって且つ検索条件が未登録な操業データとの間に検索条件の候補となる検索条件案を作成し、作成した検索条件案を表示部3に表示できるようになっている。このようにして表示部3に表示された検索条件案がオペレータから見て妥当なものである場合は、オペレータが登録ボタン9を押すことで検
索条件案を新たな検索条件として登録することが可能となる。
【0049】
つまり、上述した操業データ検索支援装置1では、繰り返し行われる操業データの検索から自動的に検索条件が作成されるため、操業者が自らクラスわけのような複雑な操作を行う必要がなく、ロット番号(識別子)を指定して操業データを検索するといった単純な作業を繰り返すだけで、検索結果に対する判断を支援する検索条件を自動的に入手できる。また、オペレータの経験の量によらず、日々の操業で発生する操業データに対して、大きなトラブルとなる前に問題となりやすい操業因子を用いた効果的なフィルタリングやチェックができるようになり、結果として検索を簡便に且つ効率的に実施することが可能となる。
【0050】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。